先端部交換式切削工具
【課題】工具本体の外径に関わらず確実に交換式工具先端部を保持して着脱可能とし、交換式工具先端部の切刃にも工具本体の軸線に沿ったクーラント穴からクーラントを供給する。
【解決手段】軸線O回りに回転させられる外形円柱状の工具本体1の外周に切屑排出溝2が形成されて、この切屑排出溝2の工具回転方向Tを向く壁面の外周側に切刃4Aが配設されるとともに、工具本体1の先端には、切屑排出溝2に連通する先端排出溝12が形成されて、この先端排出溝12の工具回転方向Tを向く壁面の外周側に先端切刃4Aが配設された交換式工具先端部11が、軸線Oから径方向外周側に離れた位置に周方向に間隔をあけて交換式工具先端部11に後端側に向けて挿通された複数のクランプネジ19が工具本体1にねじ込まれることにより、着脱可能に取り付けられている。
【解決手段】軸線O回りに回転させられる外形円柱状の工具本体1の外周に切屑排出溝2が形成されて、この切屑排出溝2の工具回転方向Tを向く壁面の外周側に切刃4Aが配設されるとともに、工具本体1の先端には、切屑排出溝2に連通する先端排出溝12が形成されて、この先端排出溝12の工具回転方向Tを向く壁面の外周側に先端切刃4Aが配設された交換式工具先端部11が、軸線Oから径方向外周側に離れた位置に周方向に間隔をあけて交換式工具先端部11に後端側に向けて挿通された複数のクランプネジ19が工具本体1にねじ込まれることにより、着脱可能に取り付けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具本体の先端部が着脱可能で交換式とされた先端部交換式切削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンドミルのような切削工具においては、外形円柱状の工具本体の先端部に配設された切刃が最も使用頻度が高く、これに伴い工具本体の損傷も、その先端部において著しくなるため、工具本体の先端部を着脱可能として交換式としたものが、例えば特許文献1、2に提案されている。特許文献1に記載された切削工具では、工具本体と着脱可能で交換式とされた工具先端部とが断面非円形状とされた嵌合凸部と嵌合凹部によって嵌合させられて、工具先端部の先端側からねじ込まれるネジ部材により締結させられており、また特許文献2に記載された切削工具では、断面円形の嵌合凸部と嵌合凹部にさらにキーとキー穴が形成されて嵌合させられ、やはりネジ部材によって工具本体と工具先端部とが締結させられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−78420号公報
【特許文献2】実開平5−88823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、これら特許文献1、2に記載の切削工具では、工具本体と工具先端部とを着脱可能に締結する上記ネジ部材が、円柱状の工具本体の軸線に沿って1本だけねじ込まれた構成とされており、工具先端部の脱落がないようにこれら工具本体と工具先端部とを十分な締結力で確実にネジ止めするには、ネジ部材やネジ穴の径も自ずと大きくせざるを得ない。そして、これに伴い、嵌合凹凸部の内外径も大きくならざるを得ないため、結果的に工具本体や交換式工具先端部の外径(直径)が例えば50mm以上の比較的大径の切削工具にしか適用することができないという問題があった。
【0005】
また、このような切削工具では、切刃に向けて開口するように工具本体内にクーラント穴を穿設し、切削加工時には工作機械側からクーラントを供給して切刃や被削材を冷却、潤滑するようにしており、このようなクーラント穴は、工具本体の軸線に沿って幹穴を形成し、この幹穴から工具本体外周の切刃に向けて枝穴を形成してクーラントを供給するように構成するのが一般的であるが、上述のように工具本体の軸線に沿ってネジ部材がねじ込まれていると、工具本体のネジ穴よりも先端側には幹穴を形成することができず、従って交換式の工具先端部の切刃にはクーラントを供給することが困難となる。
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたもので、工具本体の外径に関わらず確実に交換式の工具先端部を保持して着脱可能とすることができ、さらにはこうして着脱可能とされた交換式工具先端部の切刃にも工具本体の軸線に沿ったクーラント穴からクーラントを供給することが可能な先端部交換式切削工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、軸線回りに回転させられる外形円柱状の工具本体の外周に切屑排出溝が形成されて、この切屑排出溝の工具回転方向を向く壁面の外周側に切刃が配設されるとともに、上記工具本体の先端には、上記切屑排出溝に連通する先端排出溝が形成されてこの先端排出溝の工具回転方向を向く壁面の外周側に先端切刃が配設された交換式工具先端部が、上記軸線から径方向外周側に離れた位置に周方向に間隔をあけて該交換式工具先端部に後端側に向けて挿通された複数のクランプネジが上記工具本体にねじ込まれることにより、着脱可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
このように構成された先端部交換式切削工具においては、工具本体の軸線から径方向外周側に離れた位置に周方向に間隔をあけて交換式工具先端部に挿通された複数のクランプネジが工具本体にねじ込まれることにより、交換式工具先端部が工具本体に締結させられて着脱可能に取り付けられるので、交換式工具先端部を取り付けるための締結力をこれら複数のクランプネジで分散させることができる。従って、個々のクランプネジやクランプネジがねじ込まれるネジ穴の径も小さくすることができ、工具本体や交換式工具先端部の外径(直径)が例えば40mm以下の小径であっても、その工具先端部を確実に保持しつつ交換式とすることが可能となる。
【0009】
また、こうしてクランプネジが工具本体の軸線から径方向外周側に離れた位置に周方向に間隔をあけて挿通されて工具本体にねじ込まれるため、工具本体に上記軸線に沿って延びるクーラント穴が形成されている場合に、交換式工具先端部にはこのクーラント穴と連通して上記先端切刃にクーラントを供給する供給穴を形成することができ、工具先端部が交換式であっても、この交換式工具先端部に配設された先端切刃や、先端切刃によって切削される被削材の加工部位の確実かつ十分な冷却、潤滑を図ることができる。
【0010】
さらに、特にこうして工具本体にその軸線に沿って延びるクーラント穴を形成する場合には、上記クランプネジを、後端側に向かうに従い上記軸線に対する径方向外周側に向かうように交換式工具先端部に挿通して、工具本体にねじ込むようにする構成することにより、工具本体先端部におけるネジ穴も後端側に向かうに従い径方向外周側に向かうように穿設されるため、工具本体のクーラント穴の内径を大きく確保することができ、交換式工具先端部に十分な量のクーラントを供給することが可能となる。
【0011】
さらにまた、クランプネジを、後端側に向かうに従い上記工具回転方向の後方側に向かうように交換式工具先端部に挿通して、工具本体にねじ込むように構成することにより、工具本体先端部におけるネジ穴を上述のように後端側に向かうに従い径方向外周側に向けて穿設することが可能となるとともに、周方向において切削加工時に交換式工具先端部に切削負荷が作用する方向にクランプネジがねじ込まれることになるため、交換式工具先端部を一層確実に保持することが可能となる。
【0012】
また、工具本体の先端面と交換式工具先端部の後端面に、互いに嵌合可能な複数組のキーおよびキー溝を上記軸線から径方向外周側に離れた位置に周方向に間隔をあけて設けることにより、切削加工時の周方向の上記切削負荷をさらに確実に受け止めて交換式工具先端部を保持することができる。そして、このうち周方向に隣接する2組のキーおよびキー溝の周方向の間隔を、少なくとも1つの組の間隔が他の組の間隔と異なるものとすることにより、交換式工具先端部が周方向に間違った位置で工具本体先端部に取り付けられるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、工具本体や交換式工具先端部の外径が小径であっても、確実に工具先端部を保持して着脱可能な交換式とすることができ、また工具本体にその軸線に沿ってクーラント穴が形成されている場合に、交換式工具先端部の先端切刃にもクーラントを供給して効率的な冷却や潤滑を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す実施形態において交換式工具先端部を取り外した状態の分解斜視図である。
【図3】図1に示す実施形態の工具本体を示す斜視図である。
【図4】図3に示す工具本体の正面図である。
【図5】図1に示す実施形態の交換式工具先端部の斜視図である。
【図6】図5に示す交換式工具先端部の正面図である。
【図7】図5に示す交換式工具先端部の側面図である。
【図8】図5に示す交換式工具先端部の背面図である。
【図9】図8におけるAA断面図である。
【図10】図3に示した工具本体のクーラント穴に止め栓をつけた状態の斜視図である。
【図11】図10に示した状態から止め栓を取り外した状態の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1ないし図11は、本発明を刃先交換式のエンドミルに適用した場合の一実施形態を示すものである。本実施形態において、工具本体1は、鋼材等の金属材料により形成されて軸線Oを中心とした外形円柱状をなしており、かかるエンドミルは工具本体1の後端側(図1ないし図3、図10および図11において右上側)部分が図示されない工作機械の主軸に把持されて、軸線O回りに工具回転方向Tに回転されつつ該軸線Oに交差する方向に送り出されることにより、被削材に切削加工を施してゆく。
【0016】
工具本体1の外周には、周方向に間隔をあけて複数条(本実施形態では3条)の切屑排出溝2が、工具本体1の先端面1Aに開口して後端側に向かうに従い工具回転方向Tの後方側に向かうように螺旋状に形成されている。また、これらの切屑排出溝2の工具回転方向Tを向く壁面の外周側には、複数(本実施形態では1つの切屑排出溝2について4つ)のインサート取付座3が同様に工具本体1の後端側に向かうに従い工具回転方向Tの後方側に向かうように階段状に形成されている。
【0017】
そして、これらのインサート取付座3には、超硬合金等の硬質材料により形成された切削インサート4が、その切刃(主切刃)4Aを工具本体1の外周側に突出させるようにして、インサート取付ネジ5により着脱可能に取り付けられている。なお、このうち最先端のインサート4は、上記切刃4Aの先端内周側に連なる副切刃4Bを、工具本体1の先端面1Aより僅かに先端側に突出させるようにして取り付けられている。
【0018】
また、工具本体1には軸線Oに沿って貫通するようにクーラント穴6が形成されていて、工具本体1においては、この軸線Oに沿ったクーラント穴6を幹穴として複数の枝穴6Aが径方向外周側に分岐させられている。これらの枝穴6Aは、上記切屑排出溝2の溝底に開口させられ、切削インサート4の外周側に突出させられた切刃4Aに向けてクーラントが供給可能とされている。
【0019】
工具本体1の先端面1Aは軸線Oに垂直な平面状とされていて、外周側には切屑排出溝2と最先端のインサート取付座3が、また中央部にはクーラント穴6がそれぞれ開口させられている。このうち、クーラント穴6の開口部には、断面円形のクーラント穴6の開口部の内周面から外周側に広がるように凹んだ複数ずつ(本実施形態では3つずつ)の凹部7、8が、周方向に交互に間隔をあけて図4に示すように花弁状に形成されている。従って、これらの凹部7、8は工具本体1の軸線Oから径方向外周側に離れた位置に形成される。
【0020】
これらの凹部7、8のうち、周方向に1つおきの3つの凹部7は、本実施形態において軸線Oから径方向外周側に離れた位置に周方向に間隔をあけて設けられたキー溝を兼ねており、軸線Oに垂直とされて先端側を向く底面7Aと、この底面7Aの周縁から軸線Oに平行に先端側に延びる壁面7Bとによって形成されている。また、底面7Aには軸線Oに平行に止め栓取付ネジ穴7Cが形成されている。
【0021】
さらに、軸線O方向先端側から見て図4に示すように壁面7Bは、外周側が止め栓取付ネジ穴7Cの中心線を中心とした1/2凹円筒面状とされるとともに、内周側は外周側がなす凹円筒と略等しい半径でクーラント穴6の内周面に接するように延びる略1/4凸円筒面状とされ、これら凹凸円筒面の間には該凹凸円筒面の双方に接する幅狭の平面が形成されている。
【0022】
なお、3つの凹部7は、本実施形態では互いに等しい大きさとされ、また軸線Oから径方向外周側に互いに等しい位置に形成されている。ただし、キー溝を兼ねた本実施形態の凹部7は、周方向に隣接する2組の凹部7の周方向の間隔、例えば止め栓取付ネジ穴7Cの中心線同士の周方向の間隔が、少なくとも1つの組で他の組と異なるものとされており、特に本実施形態では3つの組となる隣接する凹部7同士の周方向の間隔がすべて僅かに異なるものとされている。
【0023】
一方、これらの凹部7の間に形成されるやはり周方向に1つおきの3つの凹部8は、凹部7と同様に先端側を向く底面8Aと、この底面8Aの周縁から先端側に延びる壁面8Bとにより画成され、底面8Aにはクランプネジ穴8Cが形成されたものであるものの、このクランプネジ穴8Cの中心線は、工具本体1の後端側に向かうに従い外周側に向かうように傾斜し、特に本実施形態では工具本体1の後端側に向かうに従い工具回転方向Tの後方側に向かうようにも傾斜して延びている。すなわち、クランプネジ穴8Cは、軸線Oから径方向外周側に離れた位置からさらに外周側に向けて延びており、底面8Aはこのクランプネジ穴8Cの中心線に垂直とされ、また壁面8Bはクランプネジ穴8Cの中心線に平行とされている。
【0024】
なお、壁面8Bは、クランプネジ穴8Cの中心線方向に見たときに、外周側がこのクランプネジ穴8Cの中心線を中心とした1/2凹円筒面状とされるとともに、内周側はこの1/2凹円筒面に接してクーラント穴6の開口部に向けて延びる平面状とされている。また、これらの凹部8も、本実施形態では互いに等しい大きさとされるとともに、軸線Oから径方向外周側に互いに等しい位置に形成され、さらに周方向の間隔も凹部8同士は互いに等しくされている。
【0025】
さらにまた、クーラント穴6は、工具本体1の後端から先端面1A近くまでは一定内径の断面円形とされ、先端面1A近くの凹部7、8に達しない位置で内径が一段僅かに拡径されて、内周面が軸線Oを中心としたやはり一定内径の円筒面状の嵌合穴部6Bをなすようにされており、さらに凹部7、8の位置ではこの嵌合穴部6Bよりもさらに内径が一段僅かに拡径するように形成されている。また、これらクーラント穴6や凹部7、8の先端側開口部と工具本体1の先端面1Aとの間には、凹部7、8の先端側開口部を取り囲んで、ただし切屑排出溝2やインサート取付座3には達しないように、軸線Oに垂直な底面を有する座繰り部9が形成されている。
【0026】
この工具本体1の先端に取り付けられる交換式工具先端部11は、工具本体1と同じ金属材料により略等しい外径の円板状に形成されており、その外周には工具本体1の切屑排出溝2と同数で、後述するように交換式工具先端部11を工具本体1先端に装着した状態で各切屑排出溝2にそれぞれ螺旋状に連通する先端排出溝12が形成されるとともに、この先端排出溝12の工具回転方向T側を向く壁面の外周部には、工具本体1のインサート取付座3と階段状に連続する先端インサート取付座13が形成されている。このような交換式工具先端部11は、工具本体1の軸線Oと同軸となるように装着されて着脱可能に取り付けられ、工具本体1と一体に工具回転方向Tに回転させられて、先端インサート取付座13に取り付けられた切削インサートの切刃により被削材の切削に使用される。
【0027】
ここで、この先端インサート取付座13に取り付けられる切削インサートは、本実施形態では工具本体1に取り付けられるものと同形同大の切削インサート4とされ、従って先端インサート取付座13やインサート取付ネジ5も同形同大とされている。なお、先端インサート取付座13は各先端排出溝12に1つずつ形成され、従って取り付けられる切削インサート4も1つずつである。そして、この切削インサート4は、その切刃(主切刃)4Aを先端切刃として交換式工具先端部11の外周側に突出させるとともに、この切刃4Aの先端内周側に連なる副切刃4Bを交換式工具先端部11の先端面より僅かに先端側に突出させるようにして、インサート取付ネジ5により着脱可能に取り付けられている。
【0028】
交換式工具先端部11の後端面11Aは、その中央部を除いて軸線Oに垂直な平面状とされて、上記先端排出溝12と先端インサート取付座13が開口させられている。ただし、この後端面11Aにおける先端インサート取付座13の開口部の工具回転方向T後方側には、工具本体1の最先端に取り付けられて先端面1Aから副切刃4Bが突出させられた切削インサート4との干渉を避けるための凹所11Bが形成されている。
【0029】
また、後端面11Aの中央部には、軸線Oを中心とした環状溝11Cが形成されるとともに、この環状溝11Cの内側には、後端面11Aよりも僅かに後端側に突出する軸線Oを中心とした円板状の座部14と、この座部14からさらに後端側に突出する嵌合突部15とキー16とが交換式工具先端部11と一体に形成されている。このうち、座部14は、その後端側を向く座面14Aが軸線Oに垂直な平面状とされており、後端面11Aからの突出高さが工具本体1の先端面1Aから上記座繰り部9の底面までの深さよりも小さくされるとともに、外径は座繰り部9の内径より小さくされていて、交換式工具先端部11の後端面11Aを工具本体1の先端面1Aに密着させた状態で座繰り部9内に収容可能とされている。
【0030】
さらに、嵌合突部15は、軸線Oを中心とした円筒状をなしており、その外径はクーラント穴6の嵌合穴部6B内周面に嵌合突部15外周面が摺接して嵌合可能な大きさとされていて、やはり交換式工具先端部11の後端面11Aを工具本体1の先端面1Aに密着させた状態で、この嵌合突部15がクーラント穴6の上記嵌合穴部6Bと嵌合することにより、上述のように工具本体1に交換式工具先端部11が同軸に装着される。
【0031】
また、キー16は、互いに等しい大きさのものが凹部7と同数、軸線Oから径方向外周側に離れた互いに等しい位置に、嵌合突部15の基端部から外周側に突出するように形成され、それぞれ軸線Oに垂直な平面状とされて後端側を向く端面16Aとこの端面16Aの周縁から軸線Oに平行に先端側に延びる側面16Bとにより形成されている。そして、これらのキー16は、キー溝を兼ねる凹部7にそれぞれ嵌合可能とされており、すなわち周方向の間隔が互いに対応する凹部6と等しくされる一方、周方向に隣接する2組のキー16の周方向の間隔が、少なくとも1つの組で他の組と異なるものとされており、特に本実施形態では3つの組となる隣接するキー16同士の周方向の間隔がすべて僅かに異なるものとされている。
【0032】
さらに、キー16の側面16Bは、軸線O方向後端側から見て図8に示すように、外周側が軸線Oに平行な中心線を有する1/2凸円筒面の外周側縁部を座部14の外周面と面一に切り欠いた形状とされるとともに、内周側はこの凸円筒面と略等しい半径で嵌合突部15の外周面に接するように延びる略1/4凹円筒面状とされ、これら凹凸円筒面の間には該凹凸円筒面の双方に接する幅狭の平面が形成されていて、上記嵌合突部15が嵌合穴部6Bに嵌合する際に、このキー16の側面16Bが、上記座部14の外周面と面一に切り欠いた部分を除いて、対応する凹部7の壁面8Bに摺接することにより、キー16がキー溝を兼ねる凹部7に嵌合させられる。
【0033】
そして、円筒状の嵌合突部15の内周部は、交換式工具先端部11の先端側には開口しない止まり穴状とされており、ただしその穴底からは、先端側に向かうに従い外周側に向かうように延びて各先端排出溝12の底面に開口する供給穴17が形成されており、上述のように嵌合突部15を嵌合穴部6Bに嵌合させるとともにキー16をキー溝を兼ねた凹部7に嵌合させて交換式工具先端部11を工具本体1の先端に装着したときに、これらの供給穴17が嵌合突部15の内周部を介して工具本体1のクーラント穴6と連通して、先端排出溝12の先端インサート取付座13に取り付けられた切削インサート4の先端切刃とされる切刃(主切刃)4Aおよび副切刃4Bに向けてクーラントが供給可能とされている。
【0034】
なお、嵌合突部15の外周面にはキー16の端面16Aの位置に環状溝15Aが形成されていて、嵌合突部15はこの環状溝15Aよりも後端側の部分が嵌合穴部6Bと嵌合させられる。また、軸線Oに垂直な平面とされた後端面11Aからキー16の端面16Aまでの高さは、同じく軸線Oに垂直な平面とされた工具本体1の先端面1Aから凹部7の底面7Aまでの深さよりも小さくされていて、これら嵌合突部15を嵌合穴部6Bに嵌合させるとともに互いに対応するキー16を凹部7に嵌合させて交換式工具先端部11を工具本体1先端部に装着した状態において、交換式工具先端部11の後端面11Aが工具本体1の先端面1Aに密着可能とされている。
【0035】
一方、交換式工具先端部11の先端面中央部には、軸線Oを中心とした断面円形の凹穴11Dが形成されるとともに、この凹穴11Dの先端側を向く底面の外周部から後端側に向けては、先端側が大径穴18Aとされるとともに後端側が大径穴18Aと同軸の小径穴18Bとされたクランプネジ挿通穴18が、工具本体1のクランプネジ穴8Cと同数、周方向に間隔をあけて形成されて交換式工具先端部11の後端側に貫通させられ、本実施形態では座部14の座面14Aにおいてキー16の間に開口させられている。従って、これらのクランプネジ挿通穴18も、軸線Oから径方向外周側に離れた位置に形成される。
【0036】
さらに、これらのクランプネジ挿通穴18の中心線は、上述のように嵌合突部15を嵌合穴部6Bに嵌合させるとともに互いに対応するキー16を凹部7に嵌合させて、後端面11Aが先端面1Aに密着するように交換式工具先端部11を工具本体1に装着した状態で、工具本体1のクランプネジ穴8Cの中心線と同軸となるようにされている。すなわち、本実施形態では、このクランプネジ挿通穴18も、後端側に向かうに従い外周側に向かうように延び、特に後端側に向かうに従い工具回転方向Tの後方側に向かうように傾斜して延びている。
【0037】
そして、こうして交換式工具先端部11を工具本体1に装着してクランプネジ挿通穴18とクランプネジ穴8Cとを同軸に配置したところで、上記大径穴18Aより小径で小径穴18Bより大径の頭部19Aと小径穴18Bより小径でクランプネジ穴8Cと螺合するネジ部19Bとを有するクランプネジ19を、凹穴11Dからクランプネジ挿通穴18に挿通してクランプネジ穴8Cにねじ込むことにより、交換式工具先端部11はその後端面11Aが上記先端面1Aに押し付けられるように密着させられ、軸線O方向に拘束されて工具本体1の先端に着脱可能に取り付けられる。
【0038】
上記構成の先端部交換式切削工具では、このように交換式工具先端部11を工具本体1に取り付けるクランプネジ19が、周方向に間隔をあけて複数、それぞれ工具本体1の軸線Oから径方向外周側に離れた位置に形成されたクランプネジ挿通穴18に挿通されて、やはり軸線Oから径方向外周側に離れた位置に形成されたクランプネジ穴8Cにねじ込まれるので、工具本体の軸線Oに沿って1本のクランプネジをねじ込んで交換式工具先端部を取り付けるのに比べ、個々のクランプネジ19に要求される締結力や強度を分散して小さくすることができる。
【0039】
このため、1つ1つのクランプネジ19やクランプネジ穴8Cのネジ径を小さくすることができるので、工具本体1や交換式工具先端部11の外径が小さい場合でも、この交換式工具先端部11を工具本体1の先端に着脱可能として交換式とすることができる。例えば、1本のクランプネジで交換式工具先端部を取り付ける場合では切削条件等にもよるが外径が50mm程度が限度であったのに対し、上記構成の先端部交換式切削工具では外径40mm以下のものでも交換式工具先端部11を着脱可能としつつ安定した切削加工を行うことができる。
【0040】
また、このようにクランプネジ19が軸線Oから径方向外周側に離れた位置にねじ込まれることにより、本実施形態のように工具本体1の軸線Oに沿ってクーラント穴6が形成されていても、このクーラント穴6と軸線O上で連通する穴部(本実施形態では円筒状の嵌合突部15の内周部)を介して先端切刃にクーラントを供給する供給穴17を交換式工具先端部11に形成することが可能となる。このため、交換式工具先端部11に取り付けられた切削インサート4においても、上記先端切刃となる切刃(主切刃)4Aや副切刃4Bおよびこれらによって切削される被削材の切削部位の確実かつ十分な冷却を図って、一層安定した切削を行うことができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、上記クランプネジ19が、工具本体1の後端側に向かうに従い軸線Oに対する径方向外周側に向かうように交換式工具先端部11に挿通されて工具本体1にねじ込まれており、これに伴い工具本体1のクランプネジ穴8Cも後端側に向かうに従い径方向外周側に向かうように斜めに形成されている。従って、クランプネジ穴8Cの後端側ではクーラント穴6との間隔を大きくすることができて、これによりクーラント穴6の内径を大きく確保することができるので、工具本体1に取り付けられた切削インサート4の切刃(主切刃)4Aには勿論、交換式工具先端部11の先端切刃となる切削インサート4の切刃(主切刃)4Aや副切刃4Bにも十分な量のクーラントを供給することが可能となる。
【0042】
しかも、本実施形態におけるクランプネジ19は、後端側に向かうに従い工具回転方向Tの後方側に向かうようにも傾斜して交換式工具先端部11に挿通されて工具本体1にねじ込まれている。このため、交換式工具先端部11は、切削時に切刃4Aや副切刃4Bから切削負荷が作用する工具回転方向T後方側に押し付けられつつ後端面11Aが先端面1Aに密着して工具本体1の先端に取り付けられることになり、取り付け剛性の向上を図ってさらに安定した切削を行うことができる。
【0043】
また、本実施形態では、これら交換式工具先端部11の後端面11Aと工具本体1の先端面1Aに、互いに嵌合可能な複数組のキー16とキー溝を兼ねる凹部7が、軸線Oから径方向外周側に離れた位置に周方向に間隔をあけて形成されており、これらキー16と凹部7との嵌合によって交換式工具先端部11を工具本体1に対して回り止めして一層安定して取り付けることができる。
【0044】
そして、上述のようにクランプネジ19が後端側に向かうに従い工具回転方向Tの後方側に向けても傾斜してねじ込まれることにより、交換式工具先端部11のキー16が工具回転方向T後方側に向けて凹部7の壁面7Bに押し付けられるようにして嵌合させられるため、交換式工具先端部11にがたつき等が生じるのを防いで、さらに安定した切削を促すことが可能となる。
【0045】
さらにまた、本実施形態では、こうして互いに嵌合可能とされたキー16およびキー溝を兼ねる凹部7が3組形成されており、このうち周方向に隣接する2組のキー16および凹部7の周方向の間隔は、少なくとも1つの組の間隔が他の組の間隔と異なるものとされていて、特にすべての組の間隔が異なるものとされている。このため、周方向の間隔が対応しないキー16を凹部7に嵌合させることはできなくなるので、例えばビビリ振動を防止するために工具本体1および交換式工具先端部11の外周側に配設される切刃(主切刃)4Aの列の周方向の間隔を不等間隔とするときなどに、工具本体1の切刃4Aの列に対して交換式工具先端部11の切刃4Aが周方向に間違った位置となるように交換式工具先端部11が取り付けられるのを防ぐことができる。
【0046】
また、本実施形態では、これらキー16とキー溝を兼ねた凹部7との嵌合や、クランプネジ19のねじ込みによる締結のほかに、工具本体1のクーラント穴6に形成された嵌合穴部6Bに交換式工具先端部11に形成された嵌合突部15が嵌合することによっても、工具本体1と交換式工具先端部11とを高い取り付け剛性で一体化することができる。そして、軸線Oを中心とした断面円形の嵌合穴部6Bと嵌合突部15とが嵌合することにより、工具本体1に交換式工具先端部11を例えば±0.05mm以下程度の高い同軸度で取り付けることができ、精度の高い切削加工を図ることができる。
【0047】
ところで、本実施形態では上述のように工具本体1の先端に交換式工具先端部11をクランプネジ19によって着脱可能に取り付けて切削加工に使用するようにしているが、例えば切り込み深さが大きくない場合などには、交換式工具先端部11を取り付けずに工具本体1だけで切削加工を行うことも可能である。ただし、単に交換式工具先端部11を取り外しただけの状態で切削加工を行うと、クーラント穴6にクーラントを供給したときには工具本体1の先端面1Aにおけるクーラント穴6の開口部からクーラントが流れ出てしまう。
【0048】
そこで、このような場合には、工具本体1のキー溝を兼ねる上記凹部7に形成された止め栓取付ネジ穴7Cを利用して、図10および図11に示すように止め栓20を止め栓取付ネジ21によって工具本体1の先端部に着脱可能に取り付け、クーラント穴6の開口部を封止すればよい。ここで、止め栓20は、図11に示すように、交換式工具先端部11の上記嵌合突部15と等しい外径で嵌合穴部6Bと嵌合可能な円柱状の軸部20Aと、こうして軸部20Aを嵌合穴部6Bに嵌合させた状態で、工具本体1の先端面1Aに開口した座繰り部9の底面に全面的に密着して該座繰り部9に収容される平板状の封止部20Bとが一体に形成されており、封止部20Bには複数の凹部7の止め栓取付ネジ穴7Cの中心線とそれぞれ同軸となるように、凹部7と同数の後端側に向かうに従い漸次縮径するテーパ穴状の止め栓取付ネジ挿通穴20Cが形成されている。
【0049】
従って、このような止め栓20を、上述のように嵌合穴部6Bに軸部20Aを嵌合させるとともに封止部20Bを座繰り部9に収容してその底面に密着させた上で、各止め栓取付ネジ挿通穴20Cに挿通した皿頭を有する止め栓取付ネジ21を凹部7の止め栓取付ネジ穴7Cにねじ込むことにより固定することで、軸部20Aによる嵌合と封止部20Bによる座繰り部9底面への密着によってクーラント穴6の先端面1Aへの開口部は封止される。このため、クーラントを供給してもこの開口部から流れ出ることはなくなり、クーラント穴6の上記枝穴6Aから工具本体1に取り付けられた切削インサート4の切刃4Aに確実にクーラントを供給することができる。
【0050】
なお、上記実施形態では、工具本体1および交換式工具先端部11に着脱可能に取り付けられる切削インサート4に切刃4Aや副切刃4Bが形成された刃先交換式のエンドミルに本発明を適用した場合について説明したが、例えば工具本体および交換式工具先端部に切刃が一体に形成されたソリッドエンドミルや、切刃が形成された切刃チップがロウ付け等によって工具本体および交換式工具先端部に接合されたロウ付け工具などに本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 工具本体
1A 工具本体1の先端面
2 切屑排出溝
3 インサート取付座
4 切削インサート
4A 切刃(主切刃)
6 クーラント穴
6A 枝穴
6B 嵌合穴部
7 凹部(キー溝)
7C 止め栓取付ネジ穴
8 凹部
8C クランプネジ穴
9 座繰り部
11 交換式工具先端部
11A 交換式工具先端部11の後端面
12 先端排出溝
13 先端インサート取付座
15 嵌合突部
16 キー
17 供給穴
18 クランプネジ挿通穴
19 クランプネジ
20 止め栓
O 工具本体1の軸線
T 切削時の工具本体1の回転方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具本体の先端部が着脱可能で交換式とされた先端部交換式切削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンドミルのような切削工具においては、外形円柱状の工具本体の先端部に配設された切刃が最も使用頻度が高く、これに伴い工具本体の損傷も、その先端部において著しくなるため、工具本体の先端部を着脱可能として交換式としたものが、例えば特許文献1、2に提案されている。特許文献1に記載された切削工具では、工具本体と着脱可能で交換式とされた工具先端部とが断面非円形状とされた嵌合凸部と嵌合凹部によって嵌合させられて、工具先端部の先端側からねじ込まれるネジ部材により締結させられており、また特許文献2に記載された切削工具では、断面円形の嵌合凸部と嵌合凹部にさらにキーとキー穴が形成されて嵌合させられ、やはりネジ部材によって工具本体と工具先端部とが締結させられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−78420号公報
【特許文献2】実開平5−88823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、これら特許文献1、2に記載の切削工具では、工具本体と工具先端部とを着脱可能に締結する上記ネジ部材が、円柱状の工具本体の軸線に沿って1本だけねじ込まれた構成とされており、工具先端部の脱落がないようにこれら工具本体と工具先端部とを十分な締結力で確実にネジ止めするには、ネジ部材やネジ穴の径も自ずと大きくせざるを得ない。そして、これに伴い、嵌合凹凸部の内外径も大きくならざるを得ないため、結果的に工具本体や交換式工具先端部の外径(直径)が例えば50mm以上の比較的大径の切削工具にしか適用することができないという問題があった。
【0005】
また、このような切削工具では、切刃に向けて開口するように工具本体内にクーラント穴を穿設し、切削加工時には工作機械側からクーラントを供給して切刃や被削材を冷却、潤滑するようにしており、このようなクーラント穴は、工具本体の軸線に沿って幹穴を形成し、この幹穴から工具本体外周の切刃に向けて枝穴を形成してクーラントを供給するように構成するのが一般的であるが、上述のように工具本体の軸線に沿ってネジ部材がねじ込まれていると、工具本体のネジ穴よりも先端側には幹穴を形成することができず、従って交換式の工具先端部の切刃にはクーラントを供給することが困難となる。
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたもので、工具本体の外径に関わらず確実に交換式の工具先端部を保持して着脱可能とすることができ、さらにはこうして着脱可能とされた交換式工具先端部の切刃にも工具本体の軸線に沿ったクーラント穴からクーラントを供給することが可能な先端部交換式切削工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、軸線回りに回転させられる外形円柱状の工具本体の外周に切屑排出溝が形成されて、この切屑排出溝の工具回転方向を向く壁面の外周側に切刃が配設されるとともに、上記工具本体の先端には、上記切屑排出溝に連通する先端排出溝が形成されてこの先端排出溝の工具回転方向を向く壁面の外周側に先端切刃が配設された交換式工具先端部が、上記軸線から径方向外周側に離れた位置に周方向に間隔をあけて該交換式工具先端部に後端側に向けて挿通された複数のクランプネジが上記工具本体にねじ込まれることにより、着脱可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
このように構成された先端部交換式切削工具においては、工具本体の軸線から径方向外周側に離れた位置に周方向に間隔をあけて交換式工具先端部に挿通された複数のクランプネジが工具本体にねじ込まれることにより、交換式工具先端部が工具本体に締結させられて着脱可能に取り付けられるので、交換式工具先端部を取り付けるための締結力をこれら複数のクランプネジで分散させることができる。従って、個々のクランプネジやクランプネジがねじ込まれるネジ穴の径も小さくすることができ、工具本体や交換式工具先端部の外径(直径)が例えば40mm以下の小径であっても、その工具先端部を確実に保持しつつ交換式とすることが可能となる。
【0009】
また、こうしてクランプネジが工具本体の軸線から径方向外周側に離れた位置に周方向に間隔をあけて挿通されて工具本体にねじ込まれるため、工具本体に上記軸線に沿って延びるクーラント穴が形成されている場合に、交換式工具先端部にはこのクーラント穴と連通して上記先端切刃にクーラントを供給する供給穴を形成することができ、工具先端部が交換式であっても、この交換式工具先端部に配設された先端切刃や、先端切刃によって切削される被削材の加工部位の確実かつ十分な冷却、潤滑を図ることができる。
【0010】
さらに、特にこうして工具本体にその軸線に沿って延びるクーラント穴を形成する場合には、上記クランプネジを、後端側に向かうに従い上記軸線に対する径方向外周側に向かうように交換式工具先端部に挿通して、工具本体にねじ込むようにする構成することにより、工具本体先端部におけるネジ穴も後端側に向かうに従い径方向外周側に向かうように穿設されるため、工具本体のクーラント穴の内径を大きく確保することができ、交換式工具先端部に十分な量のクーラントを供給することが可能となる。
【0011】
さらにまた、クランプネジを、後端側に向かうに従い上記工具回転方向の後方側に向かうように交換式工具先端部に挿通して、工具本体にねじ込むように構成することにより、工具本体先端部におけるネジ穴を上述のように後端側に向かうに従い径方向外周側に向けて穿設することが可能となるとともに、周方向において切削加工時に交換式工具先端部に切削負荷が作用する方向にクランプネジがねじ込まれることになるため、交換式工具先端部を一層確実に保持することが可能となる。
【0012】
また、工具本体の先端面と交換式工具先端部の後端面に、互いに嵌合可能な複数組のキーおよびキー溝を上記軸線から径方向外周側に離れた位置に周方向に間隔をあけて設けることにより、切削加工時の周方向の上記切削負荷をさらに確実に受け止めて交換式工具先端部を保持することができる。そして、このうち周方向に隣接する2組のキーおよびキー溝の周方向の間隔を、少なくとも1つの組の間隔が他の組の間隔と異なるものとすることにより、交換式工具先端部が周方向に間違った位置で工具本体先端部に取り付けられるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、工具本体や交換式工具先端部の外径が小径であっても、確実に工具先端部を保持して着脱可能な交換式とすることができ、また工具本体にその軸線に沿ってクーラント穴が形成されている場合に、交換式工具先端部の先端切刃にもクーラントを供給して効率的な冷却や潤滑を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す実施形態において交換式工具先端部を取り外した状態の分解斜視図である。
【図3】図1に示す実施形態の工具本体を示す斜視図である。
【図4】図3に示す工具本体の正面図である。
【図5】図1に示す実施形態の交換式工具先端部の斜視図である。
【図6】図5に示す交換式工具先端部の正面図である。
【図7】図5に示す交換式工具先端部の側面図である。
【図8】図5に示す交換式工具先端部の背面図である。
【図9】図8におけるAA断面図である。
【図10】図3に示した工具本体のクーラント穴に止め栓をつけた状態の斜視図である。
【図11】図10に示した状態から止め栓を取り外した状態の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1ないし図11は、本発明を刃先交換式のエンドミルに適用した場合の一実施形態を示すものである。本実施形態において、工具本体1は、鋼材等の金属材料により形成されて軸線Oを中心とした外形円柱状をなしており、かかるエンドミルは工具本体1の後端側(図1ないし図3、図10および図11において右上側)部分が図示されない工作機械の主軸に把持されて、軸線O回りに工具回転方向Tに回転されつつ該軸線Oに交差する方向に送り出されることにより、被削材に切削加工を施してゆく。
【0016】
工具本体1の外周には、周方向に間隔をあけて複数条(本実施形態では3条)の切屑排出溝2が、工具本体1の先端面1Aに開口して後端側に向かうに従い工具回転方向Tの後方側に向かうように螺旋状に形成されている。また、これらの切屑排出溝2の工具回転方向Tを向く壁面の外周側には、複数(本実施形態では1つの切屑排出溝2について4つ)のインサート取付座3が同様に工具本体1の後端側に向かうに従い工具回転方向Tの後方側に向かうように階段状に形成されている。
【0017】
そして、これらのインサート取付座3には、超硬合金等の硬質材料により形成された切削インサート4が、その切刃(主切刃)4Aを工具本体1の外周側に突出させるようにして、インサート取付ネジ5により着脱可能に取り付けられている。なお、このうち最先端のインサート4は、上記切刃4Aの先端内周側に連なる副切刃4Bを、工具本体1の先端面1Aより僅かに先端側に突出させるようにして取り付けられている。
【0018】
また、工具本体1には軸線Oに沿って貫通するようにクーラント穴6が形成されていて、工具本体1においては、この軸線Oに沿ったクーラント穴6を幹穴として複数の枝穴6Aが径方向外周側に分岐させられている。これらの枝穴6Aは、上記切屑排出溝2の溝底に開口させられ、切削インサート4の外周側に突出させられた切刃4Aに向けてクーラントが供給可能とされている。
【0019】
工具本体1の先端面1Aは軸線Oに垂直な平面状とされていて、外周側には切屑排出溝2と最先端のインサート取付座3が、また中央部にはクーラント穴6がそれぞれ開口させられている。このうち、クーラント穴6の開口部には、断面円形のクーラント穴6の開口部の内周面から外周側に広がるように凹んだ複数ずつ(本実施形態では3つずつ)の凹部7、8が、周方向に交互に間隔をあけて図4に示すように花弁状に形成されている。従って、これらの凹部7、8は工具本体1の軸線Oから径方向外周側に離れた位置に形成される。
【0020】
これらの凹部7、8のうち、周方向に1つおきの3つの凹部7は、本実施形態において軸線Oから径方向外周側に離れた位置に周方向に間隔をあけて設けられたキー溝を兼ねており、軸線Oに垂直とされて先端側を向く底面7Aと、この底面7Aの周縁から軸線Oに平行に先端側に延びる壁面7Bとによって形成されている。また、底面7Aには軸線Oに平行に止め栓取付ネジ穴7Cが形成されている。
【0021】
さらに、軸線O方向先端側から見て図4に示すように壁面7Bは、外周側が止め栓取付ネジ穴7Cの中心線を中心とした1/2凹円筒面状とされるとともに、内周側は外周側がなす凹円筒と略等しい半径でクーラント穴6の内周面に接するように延びる略1/4凸円筒面状とされ、これら凹凸円筒面の間には該凹凸円筒面の双方に接する幅狭の平面が形成されている。
【0022】
なお、3つの凹部7は、本実施形態では互いに等しい大きさとされ、また軸線Oから径方向外周側に互いに等しい位置に形成されている。ただし、キー溝を兼ねた本実施形態の凹部7は、周方向に隣接する2組の凹部7の周方向の間隔、例えば止め栓取付ネジ穴7Cの中心線同士の周方向の間隔が、少なくとも1つの組で他の組と異なるものとされており、特に本実施形態では3つの組となる隣接する凹部7同士の周方向の間隔がすべて僅かに異なるものとされている。
【0023】
一方、これらの凹部7の間に形成されるやはり周方向に1つおきの3つの凹部8は、凹部7と同様に先端側を向く底面8Aと、この底面8Aの周縁から先端側に延びる壁面8Bとにより画成され、底面8Aにはクランプネジ穴8Cが形成されたものであるものの、このクランプネジ穴8Cの中心線は、工具本体1の後端側に向かうに従い外周側に向かうように傾斜し、特に本実施形態では工具本体1の後端側に向かうに従い工具回転方向Tの後方側に向かうようにも傾斜して延びている。すなわち、クランプネジ穴8Cは、軸線Oから径方向外周側に離れた位置からさらに外周側に向けて延びており、底面8Aはこのクランプネジ穴8Cの中心線に垂直とされ、また壁面8Bはクランプネジ穴8Cの中心線に平行とされている。
【0024】
なお、壁面8Bは、クランプネジ穴8Cの中心線方向に見たときに、外周側がこのクランプネジ穴8Cの中心線を中心とした1/2凹円筒面状とされるとともに、内周側はこの1/2凹円筒面に接してクーラント穴6の開口部に向けて延びる平面状とされている。また、これらの凹部8も、本実施形態では互いに等しい大きさとされるとともに、軸線Oから径方向外周側に互いに等しい位置に形成され、さらに周方向の間隔も凹部8同士は互いに等しくされている。
【0025】
さらにまた、クーラント穴6は、工具本体1の後端から先端面1A近くまでは一定内径の断面円形とされ、先端面1A近くの凹部7、8に達しない位置で内径が一段僅かに拡径されて、内周面が軸線Oを中心としたやはり一定内径の円筒面状の嵌合穴部6Bをなすようにされており、さらに凹部7、8の位置ではこの嵌合穴部6Bよりもさらに内径が一段僅かに拡径するように形成されている。また、これらクーラント穴6や凹部7、8の先端側開口部と工具本体1の先端面1Aとの間には、凹部7、8の先端側開口部を取り囲んで、ただし切屑排出溝2やインサート取付座3には達しないように、軸線Oに垂直な底面を有する座繰り部9が形成されている。
【0026】
この工具本体1の先端に取り付けられる交換式工具先端部11は、工具本体1と同じ金属材料により略等しい外径の円板状に形成されており、その外周には工具本体1の切屑排出溝2と同数で、後述するように交換式工具先端部11を工具本体1先端に装着した状態で各切屑排出溝2にそれぞれ螺旋状に連通する先端排出溝12が形成されるとともに、この先端排出溝12の工具回転方向T側を向く壁面の外周部には、工具本体1のインサート取付座3と階段状に連続する先端インサート取付座13が形成されている。このような交換式工具先端部11は、工具本体1の軸線Oと同軸となるように装着されて着脱可能に取り付けられ、工具本体1と一体に工具回転方向Tに回転させられて、先端インサート取付座13に取り付けられた切削インサートの切刃により被削材の切削に使用される。
【0027】
ここで、この先端インサート取付座13に取り付けられる切削インサートは、本実施形態では工具本体1に取り付けられるものと同形同大の切削インサート4とされ、従って先端インサート取付座13やインサート取付ネジ5も同形同大とされている。なお、先端インサート取付座13は各先端排出溝12に1つずつ形成され、従って取り付けられる切削インサート4も1つずつである。そして、この切削インサート4は、その切刃(主切刃)4Aを先端切刃として交換式工具先端部11の外周側に突出させるとともに、この切刃4Aの先端内周側に連なる副切刃4Bを交換式工具先端部11の先端面より僅かに先端側に突出させるようにして、インサート取付ネジ5により着脱可能に取り付けられている。
【0028】
交換式工具先端部11の後端面11Aは、その中央部を除いて軸線Oに垂直な平面状とされて、上記先端排出溝12と先端インサート取付座13が開口させられている。ただし、この後端面11Aにおける先端インサート取付座13の開口部の工具回転方向T後方側には、工具本体1の最先端に取り付けられて先端面1Aから副切刃4Bが突出させられた切削インサート4との干渉を避けるための凹所11Bが形成されている。
【0029】
また、後端面11Aの中央部には、軸線Oを中心とした環状溝11Cが形成されるとともに、この環状溝11Cの内側には、後端面11Aよりも僅かに後端側に突出する軸線Oを中心とした円板状の座部14と、この座部14からさらに後端側に突出する嵌合突部15とキー16とが交換式工具先端部11と一体に形成されている。このうち、座部14は、その後端側を向く座面14Aが軸線Oに垂直な平面状とされており、後端面11Aからの突出高さが工具本体1の先端面1Aから上記座繰り部9の底面までの深さよりも小さくされるとともに、外径は座繰り部9の内径より小さくされていて、交換式工具先端部11の後端面11Aを工具本体1の先端面1Aに密着させた状態で座繰り部9内に収容可能とされている。
【0030】
さらに、嵌合突部15は、軸線Oを中心とした円筒状をなしており、その外径はクーラント穴6の嵌合穴部6B内周面に嵌合突部15外周面が摺接して嵌合可能な大きさとされていて、やはり交換式工具先端部11の後端面11Aを工具本体1の先端面1Aに密着させた状態で、この嵌合突部15がクーラント穴6の上記嵌合穴部6Bと嵌合することにより、上述のように工具本体1に交換式工具先端部11が同軸に装着される。
【0031】
また、キー16は、互いに等しい大きさのものが凹部7と同数、軸線Oから径方向外周側に離れた互いに等しい位置に、嵌合突部15の基端部から外周側に突出するように形成され、それぞれ軸線Oに垂直な平面状とされて後端側を向く端面16Aとこの端面16Aの周縁から軸線Oに平行に先端側に延びる側面16Bとにより形成されている。そして、これらのキー16は、キー溝を兼ねる凹部7にそれぞれ嵌合可能とされており、すなわち周方向の間隔が互いに対応する凹部6と等しくされる一方、周方向に隣接する2組のキー16の周方向の間隔が、少なくとも1つの組で他の組と異なるものとされており、特に本実施形態では3つの組となる隣接するキー16同士の周方向の間隔がすべて僅かに異なるものとされている。
【0032】
さらに、キー16の側面16Bは、軸線O方向後端側から見て図8に示すように、外周側が軸線Oに平行な中心線を有する1/2凸円筒面の外周側縁部を座部14の外周面と面一に切り欠いた形状とされるとともに、内周側はこの凸円筒面と略等しい半径で嵌合突部15の外周面に接するように延びる略1/4凹円筒面状とされ、これら凹凸円筒面の間には該凹凸円筒面の双方に接する幅狭の平面が形成されていて、上記嵌合突部15が嵌合穴部6Bに嵌合する際に、このキー16の側面16Bが、上記座部14の外周面と面一に切り欠いた部分を除いて、対応する凹部7の壁面8Bに摺接することにより、キー16がキー溝を兼ねる凹部7に嵌合させられる。
【0033】
そして、円筒状の嵌合突部15の内周部は、交換式工具先端部11の先端側には開口しない止まり穴状とされており、ただしその穴底からは、先端側に向かうに従い外周側に向かうように延びて各先端排出溝12の底面に開口する供給穴17が形成されており、上述のように嵌合突部15を嵌合穴部6Bに嵌合させるとともにキー16をキー溝を兼ねた凹部7に嵌合させて交換式工具先端部11を工具本体1の先端に装着したときに、これらの供給穴17が嵌合突部15の内周部を介して工具本体1のクーラント穴6と連通して、先端排出溝12の先端インサート取付座13に取り付けられた切削インサート4の先端切刃とされる切刃(主切刃)4Aおよび副切刃4Bに向けてクーラントが供給可能とされている。
【0034】
なお、嵌合突部15の外周面にはキー16の端面16Aの位置に環状溝15Aが形成されていて、嵌合突部15はこの環状溝15Aよりも後端側の部分が嵌合穴部6Bと嵌合させられる。また、軸線Oに垂直な平面とされた後端面11Aからキー16の端面16Aまでの高さは、同じく軸線Oに垂直な平面とされた工具本体1の先端面1Aから凹部7の底面7Aまでの深さよりも小さくされていて、これら嵌合突部15を嵌合穴部6Bに嵌合させるとともに互いに対応するキー16を凹部7に嵌合させて交換式工具先端部11を工具本体1先端部に装着した状態において、交換式工具先端部11の後端面11Aが工具本体1の先端面1Aに密着可能とされている。
【0035】
一方、交換式工具先端部11の先端面中央部には、軸線Oを中心とした断面円形の凹穴11Dが形成されるとともに、この凹穴11Dの先端側を向く底面の外周部から後端側に向けては、先端側が大径穴18Aとされるとともに後端側が大径穴18Aと同軸の小径穴18Bとされたクランプネジ挿通穴18が、工具本体1のクランプネジ穴8Cと同数、周方向に間隔をあけて形成されて交換式工具先端部11の後端側に貫通させられ、本実施形態では座部14の座面14Aにおいてキー16の間に開口させられている。従って、これらのクランプネジ挿通穴18も、軸線Oから径方向外周側に離れた位置に形成される。
【0036】
さらに、これらのクランプネジ挿通穴18の中心線は、上述のように嵌合突部15を嵌合穴部6Bに嵌合させるとともに互いに対応するキー16を凹部7に嵌合させて、後端面11Aが先端面1Aに密着するように交換式工具先端部11を工具本体1に装着した状態で、工具本体1のクランプネジ穴8Cの中心線と同軸となるようにされている。すなわち、本実施形態では、このクランプネジ挿通穴18も、後端側に向かうに従い外周側に向かうように延び、特に後端側に向かうに従い工具回転方向Tの後方側に向かうように傾斜して延びている。
【0037】
そして、こうして交換式工具先端部11を工具本体1に装着してクランプネジ挿通穴18とクランプネジ穴8Cとを同軸に配置したところで、上記大径穴18Aより小径で小径穴18Bより大径の頭部19Aと小径穴18Bより小径でクランプネジ穴8Cと螺合するネジ部19Bとを有するクランプネジ19を、凹穴11Dからクランプネジ挿通穴18に挿通してクランプネジ穴8Cにねじ込むことにより、交換式工具先端部11はその後端面11Aが上記先端面1Aに押し付けられるように密着させられ、軸線O方向に拘束されて工具本体1の先端に着脱可能に取り付けられる。
【0038】
上記構成の先端部交換式切削工具では、このように交換式工具先端部11を工具本体1に取り付けるクランプネジ19が、周方向に間隔をあけて複数、それぞれ工具本体1の軸線Oから径方向外周側に離れた位置に形成されたクランプネジ挿通穴18に挿通されて、やはり軸線Oから径方向外周側に離れた位置に形成されたクランプネジ穴8Cにねじ込まれるので、工具本体の軸線Oに沿って1本のクランプネジをねじ込んで交換式工具先端部を取り付けるのに比べ、個々のクランプネジ19に要求される締結力や強度を分散して小さくすることができる。
【0039】
このため、1つ1つのクランプネジ19やクランプネジ穴8Cのネジ径を小さくすることができるので、工具本体1や交換式工具先端部11の外径が小さい場合でも、この交換式工具先端部11を工具本体1の先端に着脱可能として交換式とすることができる。例えば、1本のクランプネジで交換式工具先端部を取り付ける場合では切削条件等にもよるが外径が50mm程度が限度であったのに対し、上記構成の先端部交換式切削工具では外径40mm以下のものでも交換式工具先端部11を着脱可能としつつ安定した切削加工を行うことができる。
【0040】
また、このようにクランプネジ19が軸線Oから径方向外周側に離れた位置にねじ込まれることにより、本実施形態のように工具本体1の軸線Oに沿ってクーラント穴6が形成されていても、このクーラント穴6と軸線O上で連通する穴部(本実施形態では円筒状の嵌合突部15の内周部)を介して先端切刃にクーラントを供給する供給穴17を交換式工具先端部11に形成することが可能となる。このため、交換式工具先端部11に取り付けられた切削インサート4においても、上記先端切刃となる切刃(主切刃)4Aや副切刃4Bおよびこれらによって切削される被削材の切削部位の確実かつ十分な冷却を図って、一層安定した切削を行うことができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、上記クランプネジ19が、工具本体1の後端側に向かうに従い軸線Oに対する径方向外周側に向かうように交換式工具先端部11に挿通されて工具本体1にねじ込まれており、これに伴い工具本体1のクランプネジ穴8Cも後端側に向かうに従い径方向外周側に向かうように斜めに形成されている。従って、クランプネジ穴8Cの後端側ではクーラント穴6との間隔を大きくすることができて、これによりクーラント穴6の内径を大きく確保することができるので、工具本体1に取り付けられた切削インサート4の切刃(主切刃)4Aには勿論、交換式工具先端部11の先端切刃となる切削インサート4の切刃(主切刃)4Aや副切刃4Bにも十分な量のクーラントを供給することが可能となる。
【0042】
しかも、本実施形態におけるクランプネジ19は、後端側に向かうに従い工具回転方向Tの後方側に向かうようにも傾斜して交換式工具先端部11に挿通されて工具本体1にねじ込まれている。このため、交換式工具先端部11は、切削時に切刃4Aや副切刃4Bから切削負荷が作用する工具回転方向T後方側に押し付けられつつ後端面11Aが先端面1Aに密着して工具本体1の先端に取り付けられることになり、取り付け剛性の向上を図ってさらに安定した切削を行うことができる。
【0043】
また、本実施形態では、これら交換式工具先端部11の後端面11Aと工具本体1の先端面1Aに、互いに嵌合可能な複数組のキー16とキー溝を兼ねる凹部7が、軸線Oから径方向外周側に離れた位置に周方向に間隔をあけて形成されており、これらキー16と凹部7との嵌合によって交換式工具先端部11を工具本体1に対して回り止めして一層安定して取り付けることができる。
【0044】
そして、上述のようにクランプネジ19が後端側に向かうに従い工具回転方向Tの後方側に向けても傾斜してねじ込まれることにより、交換式工具先端部11のキー16が工具回転方向T後方側に向けて凹部7の壁面7Bに押し付けられるようにして嵌合させられるため、交換式工具先端部11にがたつき等が生じるのを防いで、さらに安定した切削を促すことが可能となる。
【0045】
さらにまた、本実施形態では、こうして互いに嵌合可能とされたキー16およびキー溝を兼ねる凹部7が3組形成されており、このうち周方向に隣接する2組のキー16および凹部7の周方向の間隔は、少なくとも1つの組の間隔が他の組の間隔と異なるものとされていて、特にすべての組の間隔が異なるものとされている。このため、周方向の間隔が対応しないキー16を凹部7に嵌合させることはできなくなるので、例えばビビリ振動を防止するために工具本体1および交換式工具先端部11の外周側に配設される切刃(主切刃)4Aの列の周方向の間隔を不等間隔とするときなどに、工具本体1の切刃4Aの列に対して交換式工具先端部11の切刃4Aが周方向に間違った位置となるように交換式工具先端部11が取り付けられるのを防ぐことができる。
【0046】
また、本実施形態では、これらキー16とキー溝を兼ねた凹部7との嵌合や、クランプネジ19のねじ込みによる締結のほかに、工具本体1のクーラント穴6に形成された嵌合穴部6Bに交換式工具先端部11に形成された嵌合突部15が嵌合することによっても、工具本体1と交換式工具先端部11とを高い取り付け剛性で一体化することができる。そして、軸線Oを中心とした断面円形の嵌合穴部6Bと嵌合突部15とが嵌合することにより、工具本体1に交換式工具先端部11を例えば±0.05mm以下程度の高い同軸度で取り付けることができ、精度の高い切削加工を図ることができる。
【0047】
ところで、本実施形態では上述のように工具本体1の先端に交換式工具先端部11をクランプネジ19によって着脱可能に取り付けて切削加工に使用するようにしているが、例えば切り込み深さが大きくない場合などには、交換式工具先端部11を取り付けずに工具本体1だけで切削加工を行うことも可能である。ただし、単に交換式工具先端部11を取り外しただけの状態で切削加工を行うと、クーラント穴6にクーラントを供給したときには工具本体1の先端面1Aにおけるクーラント穴6の開口部からクーラントが流れ出てしまう。
【0048】
そこで、このような場合には、工具本体1のキー溝を兼ねる上記凹部7に形成された止め栓取付ネジ穴7Cを利用して、図10および図11に示すように止め栓20を止め栓取付ネジ21によって工具本体1の先端部に着脱可能に取り付け、クーラント穴6の開口部を封止すればよい。ここで、止め栓20は、図11に示すように、交換式工具先端部11の上記嵌合突部15と等しい外径で嵌合穴部6Bと嵌合可能な円柱状の軸部20Aと、こうして軸部20Aを嵌合穴部6Bに嵌合させた状態で、工具本体1の先端面1Aに開口した座繰り部9の底面に全面的に密着して該座繰り部9に収容される平板状の封止部20Bとが一体に形成されており、封止部20Bには複数の凹部7の止め栓取付ネジ穴7Cの中心線とそれぞれ同軸となるように、凹部7と同数の後端側に向かうに従い漸次縮径するテーパ穴状の止め栓取付ネジ挿通穴20Cが形成されている。
【0049】
従って、このような止め栓20を、上述のように嵌合穴部6Bに軸部20Aを嵌合させるとともに封止部20Bを座繰り部9に収容してその底面に密着させた上で、各止め栓取付ネジ挿通穴20Cに挿通した皿頭を有する止め栓取付ネジ21を凹部7の止め栓取付ネジ穴7Cにねじ込むことにより固定することで、軸部20Aによる嵌合と封止部20Bによる座繰り部9底面への密着によってクーラント穴6の先端面1Aへの開口部は封止される。このため、クーラントを供給してもこの開口部から流れ出ることはなくなり、クーラント穴6の上記枝穴6Aから工具本体1に取り付けられた切削インサート4の切刃4Aに確実にクーラントを供給することができる。
【0050】
なお、上記実施形態では、工具本体1および交換式工具先端部11に着脱可能に取り付けられる切削インサート4に切刃4Aや副切刃4Bが形成された刃先交換式のエンドミルに本発明を適用した場合について説明したが、例えば工具本体および交換式工具先端部に切刃が一体に形成されたソリッドエンドミルや、切刃が形成された切刃チップがロウ付け等によって工具本体および交換式工具先端部に接合されたロウ付け工具などに本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 工具本体
1A 工具本体1の先端面
2 切屑排出溝
3 インサート取付座
4 切削インサート
4A 切刃(主切刃)
6 クーラント穴
6A 枝穴
6B 嵌合穴部
7 凹部(キー溝)
7C 止め栓取付ネジ穴
8 凹部
8C クランプネジ穴
9 座繰り部
11 交換式工具先端部
11A 交換式工具先端部11の後端面
12 先端排出溝
13 先端インサート取付座
15 嵌合突部
16 キー
17 供給穴
18 クランプネジ挿通穴
19 クランプネジ
20 止め栓
O 工具本体1の軸線
T 切削時の工具本体1の回転方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転させられる外形円柱状の工具本体の外周に切屑排出溝が形成されて、この切屑排出溝の工具回転方向を向く壁面の外周側に切刃が配設されるとともに、上記工具本体の先端には、上記切屑排出溝に連通する先端排出溝が形成されてこの先端排出溝の工具回転方向を向く壁面の外周側に先端切刃が配設された交換式工具先端部が、上記軸線から径方向外周側に離れた位置に周方向に間隔をあけて該交換式工具先端部に後端側に向けて挿通された複数のクランプネジが上記工具本体にねじ込まれることにより、着脱可能に取り付けられていることを特徴とする先端部交換式切削工具。
【請求項2】
上記工具本体には上記軸線に沿って延びるクーラント穴が形成されており、上記交換式工具先端部には上記クーラント穴と連通して上記先端切刃にクーラントを供給する供給穴が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の先端部交換式切削工具。
【請求項3】
上記クランプネジは、後端側に向かうに従い上記軸線に対する径方向外周側に向かうように上記交換式工具先端部に挿通されて、上記工具本体にねじ込まれていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の先端部交換式切削工具。
【請求項4】
上記クランプネジは、後端側に向かうに従い上記工具回転方向の後方側に向かうように上記交換式工具先端部に挿通されて、上記工具本体にねじ込まれていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の先端部交換式切削工具。
【請求項5】
上記工具本体の先端面と上記交換式工具先端部の後端面には、互いに嵌合可能な複数組のキーおよびキー溝が上記軸線から径方向外周側に離れた位置に周方向に間隔をあけて設けられており、このうち周方向に隣接する2組のキーおよびキー溝の周方向の間隔は、少なくとも1つの組の間隔が他の組の間隔と異なるものとされていることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の先端部交換式切削工具。
【請求項1】
軸線回りに回転させられる外形円柱状の工具本体の外周に切屑排出溝が形成されて、この切屑排出溝の工具回転方向を向く壁面の外周側に切刃が配設されるとともに、上記工具本体の先端には、上記切屑排出溝に連通する先端排出溝が形成されてこの先端排出溝の工具回転方向を向く壁面の外周側に先端切刃が配設された交換式工具先端部が、上記軸線から径方向外周側に離れた位置に周方向に間隔をあけて該交換式工具先端部に後端側に向けて挿通された複数のクランプネジが上記工具本体にねじ込まれることにより、着脱可能に取り付けられていることを特徴とする先端部交換式切削工具。
【請求項2】
上記工具本体には上記軸線に沿って延びるクーラント穴が形成されており、上記交換式工具先端部には上記クーラント穴と連通して上記先端切刃にクーラントを供給する供給穴が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の先端部交換式切削工具。
【請求項3】
上記クランプネジは、後端側に向かうに従い上記軸線に対する径方向外周側に向かうように上記交換式工具先端部に挿通されて、上記工具本体にねじ込まれていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の先端部交換式切削工具。
【請求項4】
上記クランプネジは、後端側に向かうに従い上記工具回転方向の後方側に向かうように上記交換式工具先端部に挿通されて、上記工具本体にねじ込まれていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の先端部交換式切削工具。
【請求項5】
上記工具本体の先端面と上記交換式工具先端部の後端面には、互いに嵌合可能な複数組のキーおよびキー溝が上記軸線から径方向外周側に離れた位置に周方向に間隔をあけて設けられており、このうち周方向に隣接する2組のキーおよびキー溝の周方向の間隔は、少なくとも1つの組の間隔が他の組の間隔と異なるものとされていることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の先端部交換式切削工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−94874(P2013−94874A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238734(P2011−238734)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】
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