光アクセスシステム
【課題】光アクセスシステムにおいて、停電時においても通信を可能とする。
【解決手段】 光アクセスシステムでは、下り信号が周波数多重技術によってユーザ多重され、上り信号が局内装置より発振されてユーザ装置内で変調されて局内装置に折り返される。ユーザ装置12の搬送波抽出部35は、下り信号の搬送波を抽出し、搬送波変調部36は、抽出された搬送波を用いて、上り信号に変調を行う。局内装置の上り信号受信部25は、ユーザ装置から折り返された下り信号の搬送波により変調された上り信号を受信する。受信された上り信号は、下り信号の搬送波に基づいて復調され、ユーザ装置毎の信号に分離される。
【解決手段】 光アクセスシステムでは、下り信号が周波数多重技術によってユーザ多重され、上り信号が局内装置より発振されてユーザ装置内で変調されて局内装置に折り返される。ユーザ装置12の搬送波抽出部35は、下り信号の搬送波を抽出し、搬送波変調部36は、抽出された搬送波を用いて、上り信号に変調を行う。局内装置の上り信号受信部25は、ユーザ装置から折り返された下り信号の搬送波により変調された上り信号を受信する。受信された上り信号は、下り信号の搬送波に基づいて復調され、ユーザ装置毎の信号に分離される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停電時に通話可能とする光アクセスシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高速で大容量の情報が伝達可能な光アクセスサービスが提供されている。現在の光アクセスサービスは、PON(Passive Optical Network)システムと呼ばれる1対多接続のネットワークを利用して提供されている。
【0003】
PONシステムは、光ファイバ伝送路及び局内装置を複数のユーザで共用することから、費用効率の高いシステムである。
【0004】
図9は、このPONシステムの構成例を示すブロック図である。この例では、局内装置201と複数のユーザ装置202が、光ファイバ203及びパワースプリッタ204を介して接続されている。
【0005】
複数のユーザで共用するために、局内装置201からユーザ装置202に向かう下り通信には時分割多重技術が用いられ、ユーザ装置202から局内装置201に向かう上り通信には時分割多元接続技術が用いられている。最大32ユーザのユーザ多重が可能となっている。
【0006】
PONシステムを使った光アクセスサービスは、多数のユーザがおり、安価にブロードバンドサービスを提供できることから、今後ますますユーザ数の増加が見込め、通信システムのインフラとして注目されている。
【0007】
ところで、PONシステムのような光ファイバ伝送路を用いた光アクセスシステムでは、従来のメタリックケーブルを用いたネットワークで行われているユーザ装置への給電が困難である。そのため宅内のAC電源からの給電が不可能になる非常時には、ユーザ装置202の給電は、無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)によって行われる場合もある。
【0008】
無停電電源装置によるバックアップは、現状では3〜4時間程度が限度であり、非常時におけるライフラインとしての機能を十分に果たしうる状況にはなっていない。
【0009】
光アクセスシステムにおけるこの間題に対し、特許文献1には、光給電で供給できるわずかな電力を用いて通話のみを行う方法が開示されている。具体的には、下り通話では、フォトダイオードを無バイアスモードで受信し、ハイインピーダンスなスピーカで音声が再生される。
【0010】
上り通話については、音声−光強度直接変調器を用い、局内装置から伝送された光に対して、音声、すなわち音圧変化に比例した光強度変化に直接変換して折り返すループバック構成を採用することで、上り通話を実現している。
【0011】
しかしながら、特許文献1を用いた方法では、現在使用されているPONシステムにおいてユーザ多重を実現することができない。これは、時分割多重接続し、高速なインターネット接続サービスの提供を受ける現在のユーザ装置では、5W〜10Wの電力が必要とされるのに対し、光給電できる電力は1ユーザ装置あたり1mW程度という微小な電力であるためである。
【0012】
光通信において、ユーザ多重を実現する方式として、一般に、波長多重方式、時分割多重方式、及び周波数多重方式が挙げられる。
【0013】
これらのいずれの方式においても、ユーザ宅内の停電時に上り通信を可能にするには、パッシブデバイスを用いてユーザ多重を実現する必要がある。ユーザ装置内又は分岐部分にパッシブデバイスを設ける必要がある。
【0014】
波長多重方式では、それぞれ透過帯域が異なる32個のWDMフィルタが必要となる。WDMフィルタは、一般に高価なものであり、ユーザ装置1台に1つ具備するとユーザ装置が高価になるので、安価にサービスを提供する光アクセスサービスには適さない。
【0015】
周波数多重方式も波長多重方式と同様に、それぞれ透過周波数が異なる周波数フィルタが32個必要となる。周波数フィルタは安価であるが、ユーザ装置に、特定の周波数を発振する発振器、及び個々の発振周波数を制御するシステムが必要となり、それらのシステムのための電力供給が必要となる。
【0016】
時分割多重方式では、上り信号の発振を制御するシステムが必要となり、そのための電力供給が必要となる。
【0017】
即ち安価に、停電時に利用可能な光アクセスシステムを提供するためには、周波数多重方式及び時分割多重方式を用いた上で、ユーザ宅内で電力を使用しない方式を構築する必要がある。
【0018】
なお下り通信においても、パッシブデバイスを用いることにより、停電時においても、上述した方式によるユーザ多重での通信が可能であるが、パッシブデバイスを採用でき、かつ安価なデバイスを使用できる多重方式として、周波数多重方式がある。周波数多重方式の場合、各ユーザ装置の周波数を制御する必要があるが、その方法は、例えば非特許文献1に開示されている。
【0019】
【特許文献1】特開平11−154915号公報
【非特許文献1】電子情報通信学会2007年ソサイエティ大会B−8−12
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
このように従来の方式では、上り信号の多重方式に課題があり、停電時に通信可能な光アクセスシステムを提供することができない。
【0021】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、停電時においても通信可能な光アクセスシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の光アクセスシステムは、局内装置とユーザ装置が、光伝送路及びパワースプリッタを介して接続され、下り信号が周波数多重技術によってユーザ多重され、上り信号が局内装置より発振されてユーザ装置内で変調されて局内装置に折り返される光アクセスシステムであって、ユーザ装置は、下り信号の搬送波を抽出する抽出手段と、抽出された搬送波を用いて、上り信号に変調を行う変調手段とを有し、局内装置は、ユーザ装置から折り返された下り信号の搬送波により変調された上り信号を受信して、その下り信号の搬送波に基づいて復調し、ユーザ装置毎の信号に分離する受信手段を有することを特徴とする。
【0023】
本発明の光アクセスシステムは、局内装置とユーザ装置が、光伝送路及びパワースプリッタを介して接続され、上り信号が局内装置より発振されてユーザ装置内で変調されて局内装置に折り返される光アクセスシステムであって、局内装置は、一定間隔のパルス波形を、上り信号として送信する送信手段と、ユーザ装置から折り返されてきた上り信号を受信し、そのタイミングをずらしながら、一定間隔でパルス波形を集めることによって、上り信号をユーザ装置毎の信号に分離する受信手段とを備えることを特徴とする。
【0024】
局内装置の送信手段により送信される上り信号は、複数の波長の信号で構成されるようにすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、例えばユーザ宅が停電しても通話することが可能な光アクセスシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態に係る光アクセスシステムを、図面に基づいて説明する。なおこの光アクセスシステムは、例えばPON(Passive Optical
Network)システムを構成する。
【0027】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る光アクセスシステムの構成例を示すブロック図である。この光アクセスシステムでは、局内装置11とN個のユーザ装置12−1〜12−N(以下、個々に区別する必要がない場合、単に、ユーザ装置12と称する。他の場合も同様である)とが、光ファイバ13及びパワースプリッタ14を介して接続されている。
【0028】
この光アクセスシステムでは、上り通信において、局内装置11から送出された上り信号光(無変調光)を、ユーザ装置12において、音声信号に応じて変調して、局内装置11に折り返すループバック構成が採用されている。また下り信号及び上り信号におけるユーザ多重は、周波数多重方式によって実現されている。
【0029】
図1において、局内装置11は、下り信号発振部21、変調部22、及びそれぞれのユーザ装置12に対応したN個の搬送波発振部23−1〜23−N、並びに上り信号発振部24、上り信号受信部25、上り信号の発振と受信を分ける方向性合分波部26、及び上り信号と下り信号を分波する合分波部27を有して構成されている。
【0030】
ユーザ装置12−1は、下り信号受信部31、周波数選択部32、復調部33、音声再生部34、搬送波抽出部35、搬送波変調部36、音声変調部37、上り信号光の上りと下りを合分波する方向性合分波部38、及び上り信号と下り信号を合分波する合分波部39を有して構成されている。
【0031】
周波数選択部32は、ユーザ装置12−1に割り当てられた所定の搬送波周波数(即ち同じ局内装置11に接続されている他のユーザ装置12とは異なる搬送波周波数(以下、搬送波周波数fcnと称する)を選択している。搬送波抽出部35は、周波数選択部32が選択している搬送波周波数fcnの帯域内の、音声信号の帯域を除いた搬送波周波数を選択している。
【0032】
ユーザ装置12−2(図示せぬ)〜12−Nも、ユーザ装置12−1と同様の構成を有しているので、その図示及びその説明を省略する。なおユーザ装置12−2〜12−Nの周波数選択部が選択している搬送波周波数についても、搬送波周波数fcnと称する。
【0033】
パワースプリッタ14は、局内装置11から光ファイバ13に送出された下り信号光又は上り信号光を、各ユーザ装置12が接続する光ファイバ13に分波する。パワースプリッタ14はまた、各ユーザ装置12から送出された上り信号光を混合し、光ファイバ13に送出する。
【0034】
(下り信号伝送)
局内装置11から各ユーザ装置12に向かう下り信号伝送について説明する。局内装置11の変調部22において、下り信号発振部21が発振した光が、最大N個の搬送波周波数を有した信号によって変調されて、下り信号光として、合分波部27を介して、光ファイバ13に送出される。光ファイバ13に送出された下り信号光は、パワースプリッタ14を介して各ユーザ装置12に到達する。
【0035】
各ユーザ装置12に到達した下り信号光は、それぞれのユーザ装置12において、合分波部39を介して下り信号受信部31により受信され、そこで、光電変換される。
【0036】
下り信号受信部31により光電変換された下り信号のうち、ユーザ装置12に割り当てられた搬送波周波数fcnを有した下り信号のみが周波数選択部32を透過して、復調部33及び搬送波抽出部35に入力される。復調部33に入力された下り信号は、そこで、音声信号に復調され、音声再生部34を介して、音声として出力される。
【0037】
このようにして、周波数多重方式によりユーザ多重された下り信号が、送受信される。
【0038】
なおユーザに割り当てられた搬送波周波数fcnを有した下り信号が入力された搬送波抽出部35は、入力された下り信号光から、周波数選択部32が選択している搬送波周波数fcnの帯域内の、音声信号の帯域を除いた搬送波周波数成分を選択(抽出)する。
【0039】
(上り信号伝送)
次に、ユーザ装置12から局内装置11に向かう上り信号伝送について説明する。局内装置11の上り信号発振部24が発振した光(無変調光)が上り信号光として、方向性合分波部26及び合分波部27を介して光ファイバ13に送出され、パワースプリッタ14を介して各ユーザ装置12に到達する。
【0040】
各ユーザ装置12に到達した上り信号光は、それぞれのユーザ装置12において、合分波部39及び方向性合分波部38を介して、音声変調部37に入力される。
【0041】
音声変調部37では、音声信号が直接光信号に変換され、音声信号の変調がかかった上り信号光が搬送波変調部36に入力される。なお音声信号を直接光信号に変換できるデバイスの1つとして、光マイクロフォンがある。
【0042】
搬送波変調部36は、下り信号受信時において上述したように搬送波抽出部35により抽出されている搬送波周波数fcnの帯域内の音声信号の帯域を除いた搬送波周波数を用い、光段で上り信号光に変調をかける。このようにユーザ装置12固有の搬送波周波数fcnを用いて変調することにより、ユーザ装置12固有の搬送波成分を有した上り信号光が生成される。
【0043】
搬送波変調部36は、例えばニオブ酸リチウム(LiNb03)等で構成された電気光学効果を有した変調器で構成することができる。
【0044】
搬送波変調部36で変調された上り信号光は、方向性合分波部38及び合分波部39を介して、光ファイバ13に送出され、パワースプリッタ14を介して局内装置11に到達する。
【0045】
局内装置11に到達した上り信号光は、合分波部27及び方向性合分波部26を介して、上り信号受信部25に入力され、光電変換される。上り信号はユーザ装置12固有の搬送波成分を有していることから、その搬送波成分に基づいて復調することにより、上り信号はユーザ装置12毎の信号に分離される。
【0046】
このようにして、周波数多重方式によりユーザ多重された上り信号の送受信が実現される。
【0047】
以上のように、局内装置11が、無変調の上り信号をユーザ装置12に送信し、ユーザ装置12が、その上り信号を音声信号によって変調して局内装置11に折り返すループバック構成を採用し、そのループバック構成を、主としてパッシブデバイスを用いて構築しているので、停電時においても上り信号を送信することができる。
【0048】
また局内装置11が、周波数多重方式によってユーザ多重した下り信号を、ユーザ装置12に送信し、ユーザ装置12が、パッシブデバイスを用いてその送信されてきた下り信号を受信し、その下り信号からユーザ装置12に割り当てられた搬送波を抽出するとともに、上り信号をさらに、その搬送波周波数成分によって変調して局内装置11に折り返すようにしたので、ユーザ装置12に、特定の周波数を発振する発振器や個々の発振周波数を制御するシステムを設けなくても、上り信号の周波数多重方式によるユーザ多重が可能となる。その結果、安価な、停電時に利用可能な光アクセスシステム(例えばユーザ宅が停電しても通話することが可能な光アクセスシステム)を提供することができる。
【0049】
なお以上においては、ユーザ装置12の搬送波変調部36、音声変調部37、及び方向性合分波部38は、それぞれ別個に構成されていたが、反射型の変調器を用いることにより、1つのデバイスで構成することができる。
【0050】
図2は、搬送波変調部36、音声変調部37、及び方向性合分波部38に代えて用いられる反射型の変調器の構成例を示す図である。この変調器は、LN(LiNb03)のMZ(マッハツェンダ干渉計)型変調器と同様の構成となっている。
【0051】
一対の光導波路51,52の部分で終端し、Y分岐光導波路53に折り返す構造となっている。光導波路51の端部には、反射鏡が音声で振動するダイヤフラム54が設けられている。ダイヤフラム54で反射された光は、音声(音圧)に応じて位相が変化した光信号となる。一方、反対側の光導波路52の端部は、反射鏡55で固定されており、一定の位相の光が反射される(経路は、共通で、入射波と反射波の位相が逆転したものとなっている)。
【0052】
従って、ダイヤフラム54側の光導波路51は、位相変化が生じ、固定端側の光導波路52は、位相変化がない状態で合波されることになり、電気光学効果を用いた強度変調と同様に、音声(音圧)によって、強度変調された光が出力される。
【0053】
また以上においては、周波数選択部32からの配線は、搬送波抽出部35と復調部33に分かれているが、一般に電気光学効果を有する変調器は電流をほとんど必要としないことから、搬送波抽出部35側をハイインピーダンスにとることで、下り信号の損失なしに、上り信号への変調が可能となる。
【0054】
[第2の実施の形態]
図3は、本発明の実施の形態に係る光アクセスシステムの他の構成例を示すブロック図である。この光アクセスシステムでは、局内装置101とN個のユーザ装置102とが、光ファイバ13及びパワースプリッタ14を介して接続されている。
【0055】
この光アクセスシステムでは、図1の例の場合(即ち第1の実施の形態)と同様に、上り通信において、局内装置101から送出された上り信号光を、ユーザ装置102において、音声信号に応じて変調して、局内装置101に折り返すループバック構成が採用されている。一方上り信号のユーザ多重は、第1の実施の形態の場合と異なり、時分割多重方式によって実現されている。
【0056】
図3において、局内装置101は、下り信号発振部111、変調部112、及びN個の搬送波発振部113−1〜113−N、並びに上り信号発振部114、上り信号受信部115、上り信号の発振と受信を分ける方向性合分波部116、上り信号と下り信号を分波する合分波部117、及び送信タイミング調整部118で構成されている。送信タイミング調整部118は、上り信号発振部114と上り信号受信部115とに接続されている。
【0057】
ユーザ装置102−1は、下り信号受信部121、周波数選択部122、復調部123、音声再生部124、音声変調部125、上り信号光の上りと下りを合分波する方向性合分波部126、及び上り信号と下り信号を合分波する合分波部127によって構成されている。即ちこのユーザ装置102−1からは、図1に示すユーザ装置12の周波数選択部32及び搬送波抽出部35に相当する機能が排除されている。
【0058】
ユーザ装置102−2(図示せぬ)〜102−Nも、基本的に、ユーザ装置102−1と同様の構成を有しているので、その図示及びその説明を省略する。
【0059】
(下り信号伝送)
局内装置101からユーザ装置102に向かう下り信号伝送は、基本的に、図1の例(第1の実施の形態)と同様に、局内装置101の下り信号発振部111〜搬送波発振部113、及びユーザ装置102の下り信号受信部121〜音声変調部125等に基づいて行われるので、その説明は省略する。
【0060】
(上り信号伝送)
ユーザ装置102から局内装置101に向かう上り信号伝送について説明する。上り信号光は、局内装置101において、送信タイミング調整部118の制御に従ったタイミングで上り信号発振部114が発振した光が上り信号光として、方向性合分波部116及び合分波部117を介して光ファイバ13に送出される。光ファイバ13に送出された上り信号光(無変調の信号光)は、パワースプリッタ14を介して各ユーザ装置102に到達する。
【0061】
図4は、局内装置101から送出される上り信号光を模式的に示した図である。このように上り信号光は、所定の時間間隔(即ち送信間隔Ts)を持ってパルス信号で送出される。なおこの送信間隔Tsは、局内装置101と最も離れているユーザ装置102との距離によって決定される。
【0062】
ユーザ装置102に到達した上り信号光は、ユーザ装置102の合分波部127及び方向性合分波部126を介して、音声変調部125に入力される。
【0063】
音声変調部125では、入力された上り信号光が音声信号で変調され、方向性合分波部126及び合分波部127を介して、光ファイバ13に送出され、パワースプリッタ14を介して局内装置101に到達する。
【0064】
局内装置101に到達した上り信号光は、合分波部117及び方向性合分波部116を介して、上り信号受信部115に入力され、光電変換され、送信タイミング調整部118の制御に従ったタイミングでパルス信号が集められる。
【0065】
図5は、局内装置101により受信される上り信号を、模式的に示した図である。このように、あるユーザ装置102(この例の場合、ユーザ装置102−1と102−N)からの上り信号は、一定の時間(図5の例では時間Td)ずれながら一定間隔(図5の例では送信間隔Ts)で受信される。
【0066】
即ち、ユーザ装置102−1〜102−Nと局内装置101との間の距離が、その枝番が小さい方から大きい順に長いものとした場合、ユーザ装置102−1からの最初の上り信号S102−1−1を受信した時刻を基準としたとき、ユーザ装置102−2からの最初の上り信号S102−2−1は、その時刻から時間Td2だけ遅れて局内装置101に到達する。時間Td2は、ユーザ装置102−1と102−2の局内装置101との間の距離の差に応じた時間となる。同様に、ユーザ装置102−Nからの最初の上り信号S102−N−1は、基準の時刻から時間TdNだけ遅れて局内装置101に到達する。時間TdNも、ユーザ装置102−1と102−Nの局内装置101との間の距離の差に応じた時間となる。局内装置101より無変調の信号光は、時間Tsの間隔をあけて送信されることから、それぞれのユーザ装置102からの最初の上り信号から時間Ts間隔毎に信号を集めると、ユーザ装置102毎のPAM(Pulse Amplitude Modulation:パルス振幅変調)された信号を得ることができる。
【0067】
なお図5には、ユーザ装置102−1からの上り信号と、ユーザ装置102−Nからの一部のパルス信号が、それぞれ矢印で示されている。またユーザ装置102−Nからの上り信号を集めた結果得られる信号も模式的に示されている。
【0068】
即ちこのように、そのタイミングをずらしながら、一定間隔ごとに、受信される信号を集め、そして復調することで、上り信号を、ユーザ装置102毎の信号に分離することができる。信号を集めるタイミングは、送信タイミング調整部118によって制御される。このPAM変調された信号の包括線を取ることで、送信された音声信号を得る(復元する)ことができる。
【0069】
[第3の実施の形態]
図6は、本発明の実施の形態に係る光アクセスシステムの他の構成例を示すブロック図である。この光アクセスシステムには、図3の局内装置101に代えて局内装置151が設けられている。
【0070】
局内装置151には、図3に示す局内装置101の上り信号発振部114、上り信号受信部115、及び方向性合分波部116が、M組設けられている。上り信号発振部114−1〜114−Mは、それぞれ異なる波長λの光を発振する。また方向性合分波部116と、合分波部117の間に、合分波部161が設けられている。他の部分は、図3における場合と同様である。
【0071】
光アクセスシステムの最大サービス長は通常20kmで、最小サービス長は距離0である。20kmだけ光が進むのに、約100nsecの時間がかかる。例えば図3の例(即ち第2の実施の形態)の場合、ループバック構成を採用しているので、上り信号が、局内装置101から送信され、ユーザ装置102で折り返されて局内装置101に戻るのに最大約200nsecかかる。即ち距離0から20kmまでの全ての距離を第2の実施の形態を用いてサービスを提供する場合、上り信号の送信間隔Tsは200nsecとなる。また受信する信号はPAM変調となることから、このときの信号のサンプリングレートは1/200nsec=5kSPSとなる。
【0072】
電話で用いられる音声信号は一般に300Hzから3.4kHzであることから、必要なサンプリング速度は6.8kSPSとなる。即ち第2の実施の形態では、全領域に渡ってサービスを提供することができない。
【0073】
そこで図6の例(即ち第3の実施の形態)では、複数の波長のパルス信号を上り信号として送信することでPAM変調信号のサンプリング速度を高くし、全領域にわたってサービスを適用可能とするものである。
【0074】
図7は、局内装置151から送出される上り信号光を模式的に示した図である。図7には、M=2であって、2つの波長λ1の信号(上り信号発振部114−1が発振した光信号)、及び波長λ2の信号(上り信号発振部114−2が発振した光信号)が、送信間隔Tsで送信される。波長λ2の信号は、波長λ1の信号の送信から、{(第n(=2)番目の波長−1)/M(=1/2)×送信間隔Ts}分の時間Tddだけ遅れて(ずれて)送信される。
【0075】
図8は、局内装置151により受信される上り信号を、模式的に示した図である。このように、あるユーザ装置102(この例の場合、ユーザ装置102−N)からの上り信号が、一定間隔で受信される。そして受信した上り信号について、波長λ毎の送信間隔Tsと送信タイミングにあった信号を集めることで、上り信号をユーザ装置102毎の信号に分離することができる。集めた信号の包括線を取ることで、送信させた音声信号を得る(復元する)ことができる。
【0076】
このように上り信号をM個の波長λの信号で構成することで、サンプリング速度をM倍にすることができる。例えば2個の波長λを利用すると、得られるサンプリング速度は、10KSPSとなり、電話における音声信号の伝播に十分なサンプリング速度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態に係る光アクセスシステムの構成例を示すブロック図である。
【図2】図1の搬送波変調部、音声変調部、及び方向性合分波部に代えて用いられる反射型の変調器の構成例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る光アクセスシステムの他の構成例を示すブロック図である。
【図4】図3に示す局内装置から送出される上り信号光を、模式的に示した図である。
【図5】図3に示す局内装置により受信される上り信号を、模式的に示した図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る光アクセスシステムの他の構成例を示すブロック図である。
【図7】図6に示す局内装置から送出される上り信号光を、模式的に示した図である。
【図8】図6に示す局内装置により受信される上り信号を、模式的に示した図である。
【図9】PONシステムの構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
11 局内装置, 12 ユーザ装置, 13 光ファイバ, 14 パワースプリッタ, 21 下り信号発振部, 22 変調部, 23 搬送波発振部, 24 上り信号発振部, 25 上り信号受信部, 26 方向性合分波部, 27 合分波部, 31 下り信号受信部, 32 周波数選択部, 33 復調部, 34 音声再生部, 35 搬送波抽出部, 36 搬送波変調部, 37 音声変調部, 38 方向性合分波部, 39 合分波部, 51 光導波路, 52 光導波路, 53 Y分岐光導波路, 54 ダイヤフラム, 55 反射鏡, 101 局内装置, 102 ユーザ装置, 114 上り信号発振部, 115 上り信号受信部, 116 方向性合分波部, 117 合分波部, 118 送信タイミング調整部, 125 音声変調部, 126 方向性合分波部, 127 合分波部, 161 合分波部
【技術分野】
【0001】
本発明は、停電時に通話可能とする光アクセスシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高速で大容量の情報が伝達可能な光アクセスサービスが提供されている。現在の光アクセスサービスは、PON(Passive Optical Network)システムと呼ばれる1対多接続のネットワークを利用して提供されている。
【0003】
PONシステムは、光ファイバ伝送路及び局内装置を複数のユーザで共用することから、費用効率の高いシステムである。
【0004】
図9は、このPONシステムの構成例を示すブロック図である。この例では、局内装置201と複数のユーザ装置202が、光ファイバ203及びパワースプリッタ204を介して接続されている。
【0005】
複数のユーザで共用するために、局内装置201からユーザ装置202に向かう下り通信には時分割多重技術が用いられ、ユーザ装置202から局内装置201に向かう上り通信には時分割多元接続技術が用いられている。最大32ユーザのユーザ多重が可能となっている。
【0006】
PONシステムを使った光アクセスサービスは、多数のユーザがおり、安価にブロードバンドサービスを提供できることから、今後ますますユーザ数の増加が見込め、通信システムのインフラとして注目されている。
【0007】
ところで、PONシステムのような光ファイバ伝送路を用いた光アクセスシステムでは、従来のメタリックケーブルを用いたネットワークで行われているユーザ装置への給電が困難である。そのため宅内のAC電源からの給電が不可能になる非常時には、ユーザ装置202の給電は、無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)によって行われる場合もある。
【0008】
無停電電源装置によるバックアップは、現状では3〜4時間程度が限度であり、非常時におけるライフラインとしての機能を十分に果たしうる状況にはなっていない。
【0009】
光アクセスシステムにおけるこの間題に対し、特許文献1には、光給電で供給できるわずかな電力を用いて通話のみを行う方法が開示されている。具体的には、下り通話では、フォトダイオードを無バイアスモードで受信し、ハイインピーダンスなスピーカで音声が再生される。
【0010】
上り通話については、音声−光強度直接変調器を用い、局内装置から伝送された光に対して、音声、すなわち音圧変化に比例した光強度変化に直接変換して折り返すループバック構成を採用することで、上り通話を実現している。
【0011】
しかしながら、特許文献1を用いた方法では、現在使用されているPONシステムにおいてユーザ多重を実現することができない。これは、時分割多重接続し、高速なインターネット接続サービスの提供を受ける現在のユーザ装置では、5W〜10Wの電力が必要とされるのに対し、光給電できる電力は1ユーザ装置あたり1mW程度という微小な電力であるためである。
【0012】
光通信において、ユーザ多重を実現する方式として、一般に、波長多重方式、時分割多重方式、及び周波数多重方式が挙げられる。
【0013】
これらのいずれの方式においても、ユーザ宅内の停電時に上り通信を可能にするには、パッシブデバイスを用いてユーザ多重を実現する必要がある。ユーザ装置内又は分岐部分にパッシブデバイスを設ける必要がある。
【0014】
波長多重方式では、それぞれ透過帯域が異なる32個のWDMフィルタが必要となる。WDMフィルタは、一般に高価なものであり、ユーザ装置1台に1つ具備するとユーザ装置が高価になるので、安価にサービスを提供する光アクセスサービスには適さない。
【0015】
周波数多重方式も波長多重方式と同様に、それぞれ透過周波数が異なる周波数フィルタが32個必要となる。周波数フィルタは安価であるが、ユーザ装置に、特定の周波数を発振する発振器、及び個々の発振周波数を制御するシステムが必要となり、それらのシステムのための電力供給が必要となる。
【0016】
時分割多重方式では、上り信号の発振を制御するシステムが必要となり、そのための電力供給が必要となる。
【0017】
即ち安価に、停電時に利用可能な光アクセスシステムを提供するためには、周波数多重方式及び時分割多重方式を用いた上で、ユーザ宅内で電力を使用しない方式を構築する必要がある。
【0018】
なお下り通信においても、パッシブデバイスを用いることにより、停電時においても、上述した方式によるユーザ多重での通信が可能であるが、パッシブデバイスを採用でき、かつ安価なデバイスを使用できる多重方式として、周波数多重方式がある。周波数多重方式の場合、各ユーザ装置の周波数を制御する必要があるが、その方法は、例えば非特許文献1に開示されている。
【0019】
【特許文献1】特開平11−154915号公報
【非特許文献1】電子情報通信学会2007年ソサイエティ大会B−8−12
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
このように従来の方式では、上り信号の多重方式に課題があり、停電時に通信可能な光アクセスシステムを提供することができない。
【0021】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、停電時においても通信可能な光アクセスシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の光アクセスシステムは、局内装置とユーザ装置が、光伝送路及びパワースプリッタを介して接続され、下り信号が周波数多重技術によってユーザ多重され、上り信号が局内装置より発振されてユーザ装置内で変調されて局内装置に折り返される光アクセスシステムであって、ユーザ装置は、下り信号の搬送波を抽出する抽出手段と、抽出された搬送波を用いて、上り信号に変調を行う変調手段とを有し、局内装置は、ユーザ装置から折り返された下り信号の搬送波により変調された上り信号を受信して、その下り信号の搬送波に基づいて復調し、ユーザ装置毎の信号に分離する受信手段を有することを特徴とする。
【0023】
本発明の光アクセスシステムは、局内装置とユーザ装置が、光伝送路及びパワースプリッタを介して接続され、上り信号が局内装置より発振されてユーザ装置内で変調されて局内装置に折り返される光アクセスシステムであって、局内装置は、一定間隔のパルス波形を、上り信号として送信する送信手段と、ユーザ装置から折り返されてきた上り信号を受信し、そのタイミングをずらしながら、一定間隔でパルス波形を集めることによって、上り信号をユーザ装置毎の信号に分離する受信手段とを備えることを特徴とする。
【0024】
局内装置の送信手段により送信される上り信号は、複数の波長の信号で構成されるようにすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、例えばユーザ宅が停電しても通話することが可能な光アクセスシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態に係る光アクセスシステムを、図面に基づいて説明する。なおこの光アクセスシステムは、例えばPON(Passive Optical
Network)システムを構成する。
【0027】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る光アクセスシステムの構成例を示すブロック図である。この光アクセスシステムでは、局内装置11とN個のユーザ装置12−1〜12−N(以下、個々に区別する必要がない場合、単に、ユーザ装置12と称する。他の場合も同様である)とが、光ファイバ13及びパワースプリッタ14を介して接続されている。
【0028】
この光アクセスシステムでは、上り通信において、局内装置11から送出された上り信号光(無変調光)を、ユーザ装置12において、音声信号に応じて変調して、局内装置11に折り返すループバック構成が採用されている。また下り信号及び上り信号におけるユーザ多重は、周波数多重方式によって実現されている。
【0029】
図1において、局内装置11は、下り信号発振部21、変調部22、及びそれぞれのユーザ装置12に対応したN個の搬送波発振部23−1〜23−N、並びに上り信号発振部24、上り信号受信部25、上り信号の発振と受信を分ける方向性合分波部26、及び上り信号と下り信号を分波する合分波部27を有して構成されている。
【0030】
ユーザ装置12−1は、下り信号受信部31、周波数選択部32、復調部33、音声再生部34、搬送波抽出部35、搬送波変調部36、音声変調部37、上り信号光の上りと下りを合分波する方向性合分波部38、及び上り信号と下り信号を合分波する合分波部39を有して構成されている。
【0031】
周波数選択部32は、ユーザ装置12−1に割り当てられた所定の搬送波周波数(即ち同じ局内装置11に接続されている他のユーザ装置12とは異なる搬送波周波数(以下、搬送波周波数fcnと称する)を選択している。搬送波抽出部35は、周波数選択部32が選択している搬送波周波数fcnの帯域内の、音声信号の帯域を除いた搬送波周波数を選択している。
【0032】
ユーザ装置12−2(図示せぬ)〜12−Nも、ユーザ装置12−1と同様の構成を有しているので、その図示及びその説明を省略する。なおユーザ装置12−2〜12−Nの周波数選択部が選択している搬送波周波数についても、搬送波周波数fcnと称する。
【0033】
パワースプリッタ14は、局内装置11から光ファイバ13に送出された下り信号光又は上り信号光を、各ユーザ装置12が接続する光ファイバ13に分波する。パワースプリッタ14はまた、各ユーザ装置12から送出された上り信号光を混合し、光ファイバ13に送出する。
【0034】
(下り信号伝送)
局内装置11から各ユーザ装置12に向かう下り信号伝送について説明する。局内装置11の変調部22において、下り信号発振部21が発振した光が、最大N個の搬送波周波数を有した信号によって変調されて、下り信号光として、合分波部27を介して、光ファイバ13に送出される。光ファイバ13に送出された下り信号光は、パワースプリッタ14を介して各ユーザ装置12に到達する。
【0035】
各ユーザ装置12に到達した下り信号光は、それぞれのユーザ装置12において、合分波部39を介して下り信号受信部31により受信され、そこで、光電変換される。
【0036】
下り信号受信部31により光電変換された下り信号のうち、ユーザ装置12に割り当てられた搬送波周波数fcnを有した下り信号のみが周波数選択部32を透過して、復調部33及び搬送波抽出部35に入力される。復調部33に入力された下り信号は、そこで、音声信号に復調され、音声再生部34を介して、音声として出力される。
【0037】
このようにして、周波数多重方式によりユーザ多重された下り信号が、送受信される。
【0038】
なおユーザに割り当てられた搬送波周波数fcnを有した下り信号が入力された搬送波抽出部35は、入力された下り信号光から、周波数選択部32が選択している搬送波周波数fcnの帯域内の、音声信号の帯域を除いた搬送波周波数成分を選択(抽出)する。
【0039】
(上り信号伝送)
次に、ユーザ装置12から局内装置11に向かう上り信号伝送について説明する。局内装置11の上り信号発振部24が発振した光(無変調光)が上り信号光として、方向性合分波部26及び合分波部27を介して光ファイバ13に送出され、パワースプリッタ14を介して各ユーザ装置12に到達する。
【0040】
各ユーザ装置12に到達した上り信号光は、それぞれのユーザ装置12において、合分波部39及び方向性合分波部38を介して、音声変調部37に入力される。
【0041】
音声変調部37では、音声信号が直接光信号に変換され、音声信号の変調がかかった上り信号光が搬送波変調部36に入力される。なお音声信号を直接光信号に変換できるデバイスの1つとして、光マイクロフォンがある。
【0042】
搬送波変調部36は、下り信号受信時において上述したように搬送波抽出部35により抽出されている搬送波周波数fcnの帯域内の音声信号の帯域を除いた搬送波周波数を用い、光段で上り信号光に変調をかける。このようにユーザ装置12固有の搬送波周波数fcnを用いて変調することにより、ユーザ装置12固有の搬送波成分を有した上り信号光が生成される。
【0043】
搬送波変調部36は、例えばニオブ酸リチウム(LiNb03)等で構成された電気光学効果を有した変調器で構成することができる。
【0044】
搬送波変調部36で変調された上り信号光は、方向性合分波部38及び合分波部39を介して、光ファイバ13に送出され、パワースプリッタ14を介して局内装置11に到達する。
【0045】
局内装置11に到達した上り信号光は、合分波部27及び方向性合分波部26を介して、上り信号受信部25に入力され、光電変換される。上り信号はユーザ装置12固有の搬送波成分を有していることから、その搬送波成分に基づいて復調することにより、上り信号はユーザ装置12毎の信号に分離される。
【0046】
このようにして、周波数多重方式によりユーザ多重された上り信号の送受信が実現される。
【0047】
以上のように、局内装置11が、無変調の上り信号をユーザ装置12に送信し、ユーザ装置12が、その上り信号を音声信号によって変調して局内装置11に折り返すループバック構成を採用し、そのループバック構成を、主としてパッシブデバイスを用いて構築しているので、停電時においても上り信号を送信することができる。
【0048】
また局内装置11が、周波数多重方式によってユーザ多重した下り信号を、ユーザ装置12に送信し、ユーザ装置12が、パッシブデバイスを用いてその送信されてきた下り信号を受信し、その下り信号からユーザ装置12に割り当てられた搬送波を抽出するとともに、上り信号をさらに、その搬送波周波数成分によって変調して局内装置11に折り返すようにしたので、ユーザ装置12に、特定の周波数を発振する発振器や個々の発振周波数を制御するシステムを設けなくても、上り信号の周波数多重方式によるユーザ多重が可能となる。その結果、安価な、停電時に利用可能な光アクセスシステム(例えばユーザ宅が停電しても通話することが可能な光アクセスシステム)を提供することができる。
【0049】
なお以上においては、ユーザ装置12の搬送波変調部36、音声変調部37、及び方向性合分波部38は、それぞれ別個に構成されていたが、反射型の変調器を用いることにより、1つのデバイスで構成することができる。
【0050】
図2は、搬送波変調部36、音声変調部37、及び方向性合分波部38に代えて用いられる反射型の変調器の構成例を示す図である。この変調器は、LN(LiNb03)のMZ(マッハツェンダ干渉計)型変調器と同様の構成となっている。
【0051】
一対の光導波路51,52の部分で終端し、Y分岐光導波路53に折り返す構造となっている。光導波路51の端部には、反射鏡が音声で振動するダイヤフラム54が設けられている。ダイヤフラム54で反射された光は、音声(音圧)に応じて位相が変化した光信号となる。一方、反対側の光導波路52の端部は、反射鏡55で固定されており、一定の位相の光が反射される(経路は、共通で、入射波と反射波の位相が逆転したものとなっている)。
【0052】
従って、ダイヤフラム54側の光導波路51は、位相変化が生じ、固定端側の光導波路52は、位相変化がない状態で合波されることになり、電気光学効果を用いた強度変調と同様に、音声(音圧)によって、強度変調された光が出力される。
【0053】
また以上においては、周波数選択部32からの配線は、搬送波抽出部35と復調部33に分かれているが、一般に電気光学効果を有する変調器は電流をほとんど必要としないことから、搬送波抽出部35側をハイインピーダンスにとることで、下り信号の損失なしに、上り信号への変調が可能となる。
【0054】
[第2の実施の形態]
図3は、本発明の実施の形態に係る光アクセスシステムの他の構成例を示すブロック図である。この光アクセスシステムでは、局内装置101とN個のユーザ装置102とが、光ファイバ13及びパワースプリッタ14を介して接続されている。
【0055】
この光アクセスシステムでは、図1の例の場合(即ち第1の実施の形態)と同様に、上り通信において、局内装置101から送出された上り信号光を、ユーザ装置102において、音声信号に応じて変調して、局内装置101に折り返すループバック構成が採用されている。一方上り信号のユーザ多重は、第1の実施の形態の場合と異なり、時分割多重方式によって実現されている。
【0056】
図3において、局内装置101は、下り信号発振部111、変調部112、及びN個の搬送波発振部113−1〜113−N、並びに上り信号発振部114、上り信号受信部115、上り信号の発振と受信を分ける方向性合分波部116、上り信号と下り信号を分波する合分波部117、及び送信タイミング調整部118で構成されている。送信タイミング調整部118は、上り信号発振部114と上り信号受信部115とに接続されている。
【0057】
ユーザ装置102−1は、下り信号受信部121、周波数選択部122、復調部123、音声再生部124、音声変調部125、上り信号光の上りと下りを合分波する方向性合分波部126、及び上り信号と下り信号を合分波する合分波部127によって構成されている。即ちこのユーザ装置102−1からは、図1に示すユーザ装置12の周波数選択部32及び搬送波抽出部35に相当する機能が排除されている。
【0058】
ユーザ装置102−2(図示せぬ)〜102−Nも、基本的に、ユーザ装置102−1と同様の構成を有しているので、その図示及びその説明を省略する。
【0059】
(下り信号伝送)
局内装置101からユーザ装置102に向かう下り信号伝送は、基本的に、図1の例(第1の実施の形態)と同様に、局内装置101の下り信号発振部111〜搬送波発振部113、及びユーザ装置102の下り信号受信部121〜音声変調部125等に基づいて行われるので、その説明は省略する。
【0060】
(上り信号伝送)
ユーザ装置102から局内装置101に向かう上り信号伝送について説明する。上り信号光は、局内装置101において、送信タイミング調整部118の制御に従ったタイミングで上り信号発振部114が発振した光が上り信号光として、方向性合分波部116及び合分波部117を介して光ファイバ13に送出される。光ファイバ13に送出された上り信号光(無変調の信号光)は、パワースプリッタ14を介して各ユーザ装置102に到達する。
【0061】
図4は、局内装置101から送出される上り信号光を模式的に示した図である。このように上り信号光は、所定の時間間隔(即ち送信間隔Ts)を持ってパルス信号で送出される。なおこの送信間隔Tsは、局内装置101と最も離れているユーザ装置102との距離によって決定される。
【0062】
ユーザ装置102に到達した上り信号光は、ユーザ装置102の合分波部127及び方向性合分波部126を介して、音声変調部125に入力される。
【0063】
音声変調部125では、入力された上り信号光が音声信号で変調され、方向性合分波部126及び合分波部127を介して、光ファイバ13に送出され、パワースプリッタ14を介して局内装置101に到達する。
【0064】
局内装置101に到達した上り信号光は、合分波部117及び方向性合分波部116を介して、上り信号受信部115に入力され、光電変換され、送信タイミング調整部118の制御に従ったタイミングでパルス信号が集められる。
【0065】
図5は、局内装置101により受信される上り信号を、模式的に示した図である。このように、あるユーザ装置102(この例の場合、ユーザ装置102−1と102−N)からの上り信号は、一定の時間(図5の例では時間Td)ずれながら一定間隔(図5の例では送信間隔Ts)で受信される。
【0066】
即ち、ユーザ装置102−1〜102−Nと局内装置101との間の距離が、その枝番が小さい方から大きい順に長いものとした場合、ユーザ装置102−1からの最初の上り信号S102−1−1を受信した時刻を基準としたとき、ユーザ装置102−2からの最初の上り信号S102−2−1は、その時刻から時間Td2だけ遅れて局内装置101に到達する。時間Td2は、ユーザ装置102−1と102−2の局内装置101との間の距離の差に応じた時間となる。同様に、ユーザ装置102−Nからの最初の上り信号S102−N−1は、基準の時刻から時間TdNだけ遅れて局内装置101に到達する。時間TdNも、ユーザ装置102−1と102−Nの局内装置101との間の距離の差に応じた時間となる。局内装置101より無変調の信号光は、時間Tsの間隔をあけて送信されることから、それぞれのユーザ装置102からの最初の上り信号から時間Ts間隔毎に信号を集めると、ユーザ装置102毎のPAM(Pulse Amplitude Modulation:パルス振幅変調)された信号を得ることができる。
【0067】
なお図5には、ユーザ装置102−1からの上り信号と、ユーザ装置102−Nからの一部のパルス信号が、それぞれ矢印で示されている。またユーザ装置102−Nからの上り信号を集めた結果得られる信号も模式的に示されている。
【0068】
即ちこのように、そのタイミングをずらしながら、一定間隔ごとに、受信される信号を集め、そして復調することで、上り信号を、ユーザ装置102毎の信号に分離することができる。信号を集めるタイミングは、送信タイミング調整部118によって制御される。このPAM変調された信号の包括線を取ることで、送信された音声信号を得る(復元する)ことができる。
【0069】
[第3の実施の形態]
図6は、本発明の実施の形態に係る光アクセスシステムの他の構成例を示すブロック図である。この光アクセスシステムには、図3の局内装置101に代えて局内装置151が設けられている。
【0070】
局内装置151には、図3に示す局内装置101の上り信号発振部114、上り信号受信部115、及び方向性合分波部116が、M組設けられている。上り信号発振部114−1〜114−Mは、それぞれ異なる波長λの光を発振する。また方向性合分波部116と、合分波部117の間に、合分波部161が設けられている。他の部分は、図3における場合と同様である。
【0071】
光アクセスシステムの最大サービス長は通常20kmで、最小サービス長は距離0である。20kmだけ光が進むのに、約100nsecの時間がかかる。例えば図3の例(即ち第2の実施の形態)の場合、ループバック構成を採用しているので、上り信号が、局内装置101から送信され、ユーザ装置102で折り返されて局内装置101に戻るのに最大約200nsecかかる。即ち距離0から20kmまでの全ての距離を第2の実施の形態を用いてサービスを提供する場合、上り信号の送信間隔Tsは200nsecとなる。また受信する信号はPAM変調となることから、このときの信号のサンプリングレートは1/200nsec=5kSPSとなる。
【0072】
電話で用いられる音声信号は一般に300Hzから3.4kHzであることから、必要なサンプリング速度は6.8kSPSとなる。即ち第2の実施の形態では、全領域に渡ってサービスを提供することができない。
【0073】
そこで図6の例(即ち第3の実施の形態)では、複数の波長のパルス信号を上り信号として送信することでPAM変調信号のサンプリング速度を高くし、全領域にわたってサービスを適用可能とするものである。
【0074】
図7は、局内装置151から送出される上り信号光を模式的に示した図である。図7には、M=2であって、2つの波長λ1の信号(上り信号発振部114−1が発振した光信号)、及び波長λ2の信号(上り信号発振部114−2が発振した光信号)が、送信間隔Tsで送信される。波長λ2の信号は、波長λ1の信号の送信から、{(第n(=2)番目の波長−1)/M(=1/2)×送信間隔Ts}分の時間Tddだけ遅れて(ずれて)送信される。
【0075】
図8は、局内装置151により受信される上り信号を、模式的に示した図である。このように、あるユーザ装置102(この例の場合、ユーザ装置102−N)からの上り信号が、一定間隔で受信される。そして受信した上り信号について、波長λ毎の送信間隔Tsと送信タイミングにあった信号を集めることで、上り信号をユーザ装置102毎の信号に分離することができる。集めた信号の包括線を取ることで、送信させた音声信号を得る(復元する)ことができる。
【0076】
このように上り信号をM個の波長λの信号で構成することで、サンプリング速度をM倍にすることができる。例えば2個の波長λを利用すると、得られるサンプリング速度は、10KSPSとなり、電話における音声信号の伝播に十分なサンプリング速度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態に係る光アクセスシステムの構成例を示すブロック図である。
【図2】図1の搬送波変調部、音声変調部、及び方向性合分波部に代えて用いられる反射型の変調器の構成例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る光アクセスシステムの他の構成例を示すブロック図である。
【図4】図3に示す局内装置から送出される上り信号光を、模式的に示した図である。
【図5】図3に示す局内装置により受信される上り信号を、模式的に示した図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る光アクセスシステムの他の構成例を示すブロック図である。
【図7】図6に示す局内装置から送出される上り信号光を、模式的に示した図である。
【図8】図6に示す局内装置により受信される上り信号を、模式的に示した図である。
【図9】PONシステムの構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
11 局内装置, 12 ユーザ装置, 13 光ファイバ, 14 パワースプリッタ, 21 下り信号発振部, 22 変調部, 23 搬送波発振部, 24 上り信号発振部, 25 上り信号受信部, 26 方向性合分波部, 27 合分波部, 31 下り信号受信部, 32 周波数選択部, 33 復調部, 34 音声再生部, 35 搬送波抽出部, 36 搬送波変調部, 37 音声変調部, 38 方向性合分波部, 39 合分波部, 51 光導波路, 52 光導波路, 53 Y分岐光導波路, 54 ダイヤフラム, 55 反射鏡, 101 局内装置, 102 ユーザ装置, 114 上り信号発振部, 115 上り信号受信部, 116 方向性合分波部, 117 合分波部, 118 送信タイミング調整部, 125 音声変調部, 126 方向性合分波部, 127 合分波部, 161 合分波部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局内装置とユーザ装置が、光伝送路及びパワースプリッタを介して接続され、下り信号が周波数多重技術によってユーザ多重され、上り信号が上記局内装置より発振されて上記ユーザ装置内で変調されて上記局内装置に折り返される光アクセスシステムにおいて、
上記ユーザ装置は、
上記下り信号の搬送波を抽出する抽出手段と、
抽出された搬送波を用いて、上記上り信号に変調を行う変調手段と
を有し、
上記局内装置は、
上記ユーザ装置から折り返された上記下り信号の搬送波により変調された上り信号を受信して、その上記下り信号の搬送波に基づいて復調し、上記ユーザ装置毎の信号に分離する受信手段を有する
ことを特徴とする光アクセスシステム。
【請求項2】
局内装置とユーザ装置が、光伝送路及びパワースプリッタを介して接続され、上り信号が上記局内装置より発振されて上記ユーザ装置内で変調されて上記局内装置に折り返される光アクセスシステムにおいて、
上記局内装置は、
一定間隔のパルス波形を、前記上り信号として送信する送信手段と、
上記ユーザ装置から折り返されてきた上記上り信号を受信し、そのタイミングをずらしながら、上記一定間隔でパルス波形を集めることによって、上記上り信号を上記ユーザ装置毎の信号に分離する受信手段と
を備えることを特徴とする光アクセスシステム。
【請求項3】
前記局内装置の前記送信手段により送信される前記上り信号は、複数の波長の信号で構成される
ことを特徴とする請求項2記載の光アクセスシステム。
【請求項1】
局内装置とユーザ装置が、光伝送路及びパワースプリッタを介して接続され、下り信号が周波数多重技術によってユーザ多重され、上り信号が上記局内装置より発振されて上記ユーザ装置内で変調されて上記局内装置に折り返される光アクセスシステムにおいて、
上記ユーザ装置は、
上記下り信号の搬送波を抽出する抽出手段と、
抽出された搬送波を用いて、上記上り信号に変調を行う変調手段と
を有し、
上記局内装置は、
上記ユーザ装置から折り返された上記下り信号の搬送波により変調された上り信号を受信して、その上記下り信号の搬送波に基づいて復調し、上記ユーザ装置毎の信号に分離する受信手段を有する
ことを特徴とする光アクセスシステム。
【請求項2】
局内装置とユーザ装置が、光伝送路及びパワースプリッタを介して接続され、上り信号が上記局内装置より発振されて上記ユーザ装置内で変調されて上記局内装置に折り返される光アクセスシステムにおいて、
上記局内装置は、
一定間隔のパルス波形を、前記上り信号として送信する送信手段と、
上記ユーザ装置から折り返されてきた上記上り信号を受信し、そのタイミングをずらしながら、上記一定間隔でパルス波形を集めることによって、上記上り信号を上記ユーザ装置毎の信号に分離する受信手段と
を備えることを特徴とする光アクセスシステム。
【請求項3】
前記局内装置の前記送信手段により送信される前記上り信号は、複数の波長の信号で構成される
ことを特徴とする請求項2記載の光アクセスシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2010−93565(P2010−93565A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261847(P2008−261847)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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