説明

光イメージング用プローブ

【課題】 安定した観察画像を得ることができる光イメージング用プローブを提供する。
【解決手段】 中心軸回りに回転するロータ2を有する回転駆動源と、前記ロータ2を該ロータの軸方向の両側で回転自在に支持する回転支持部材3,4と、前記ロータ2及び前記回転支持部材3,4に対し軸方向へ挿通された光ファイバ5と、前記光ファイバ5により導かれる光の方向を前記軸方向に対して略交差方向へ変換するように、前記ロータ2の一端側に支持された光路変換素子8と、を具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を照射して被検体を観察する光イメージング用プローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像診断技術(光イメージング技術)は、装置機械・半導体・医療などのあらゆる現場において広く利用されている技術である。例えば、精密機器や半導体などの製造現場や医療現場において、一般的な顕微観察に加えて断層画像を撮影することが可能なX線CT、核磁気共鳴、超音波観察などがその一例として挙げられる。
【0003】
特に、医療現場における画像診断技術は、患者の病態を外科的手法を用いることなく診断する目的で広く利用されている。例えば、X線CTでは患者の体内を輪切りにしたような断層画像が得られるため、患者の負担を小さく抑えつつ、より正確な診断を可能にしてきた。
【0004】
しかし、X線を用いる以上、放射線による被曝は避けて通れない問題であることから、詳細な断層画像を撮影するには限界があり、その空間分解能は数100μm程度に留まる。故に、微細な病態や患部の詳細を得ることができず、見落としなどの原因となってしまう。
【0005】
放射線による影響のない断層画像診断技術としては、超音波診断による手法が挙げられる。しかしながら、その空間分解能はやはり数100μm程度に留まることから、微細な病態や患部の詳細を得ることができず、見落としなどの原因となってしまう。
【0006】
微細な病態や患部の詳細を得るためには、医師の先見性に基づいた外科的手法に頼らざるを得ない。以上のことから、より空間分解能が高い画像診断技術を用いた、患者への負担が少ない診断技術が求められている。
【0007】
そこで近年、画像診断の手法に光の干渉性を利用したOCT(光干渉断層撮影)技術が注目されている。光源として波長1300nm程度の近赤外線を用いることが多いが、近赤外線は生体に対して非侵襲性であり、また超音波よりも波長が短いために空間分解能に優れており、おおよそ10〜20μmの識別が可能となることから、特に医療現場での活躍が期待されている。OCT技術を用いた内視鏡(以下OCT内視鏡とする)の一例として、以下の特許文献を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3885114号公報
【特許文献2】US2005/0143664号公報
【特許文献3】特許第4461216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に示すOCT内視鏡では、モータの回転力を、ベルトを介して回転シャフトに伝達し、さらにフレキシブルシャフトを介してレンズユニットへ伝達するようにしている。そのため、前記フレキシブルシャフトのねじれ弾性や、前記ベルトの弾性等に起因して回転伝達遅れやトルク損失等を生じたり、フレキシブルシャフトの撓みによりレンズユニットが偏心して回転するなど、安定した観察画像を得られないおそれがある。
【0010】
前記のような問題点を解決する従来技術として、特許文献2や特許文献3に記載される発明では、モータの回転軸の先端に反射鏡を直結するようにしている。しかしながら、この発明では、前記モータの本体部が、前記反射鏡よりも前方側に位置するため、モータ用の給電配線が光ファイバ側へ折れ曲がったり、前記給電配線が前記反射鏡の側部に位置して、反射鏡によって反射された光を遮ってしまい、360度全周のうちの一部が影となり画角制限が生じてしまったり、反射鏡よりも前方側に突出する部分(モータ本体部を内在する部分)が、被検体に当接してしまい、プローブ軸方向の撮像範囲が制限されたり等の不具合を生じる場合がある。
【0011】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、回転伝達遅れやトルク損失等の発生を軽減すること、光学変換素子が回転中に偏心するのを低減すること、安定した観察画像を得ること、給電配線の取り回しを簡素化すること、プローブ周方向及び軸方向の撮像範囲が制限されるのを防ぐこと等が、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための技術的手段は、中心軸回りに回転するロータを有する回転駆動源と、前記ロータを該ロータの軸方向の少なくとも一端側で回転自在に支持する回転支持部材と、前記ロータ及び前記回転支持部材に対し軸方向へ挿通された光ファイバと、前記光ファイバにより導かれる光の方向を前記軸方向に対して略交差方向へ変換するように、前記ロータの一端側に支持された光路変換素子と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ロータの一端側に光路変換素子を支持する構造としているため、フレキシブルシャフトやベルト等を介在するようにした従来技術(特許文献1)と比較し、回転伝達遅れやトルク損失等の発生を軽減することができる。しかも、光路変換素子と一体的なロータを、該ロータの軸方向の両側で支持するようにすれば、光学変換素子が偏心して回転するようなことを一層低減することができ、ひいては、安定した観察画像を得ることができる。
【0014】
また、ロータの一端側に光路変換素子を配置する構造であるため、従来技術(特許文献2及び3)のように光路変換素子よりも前方側に回転駆動源を具備する必要がなく、ひいては、給電配線の取り回しを簡素化できる上、給電配線によってプローブ周方向の撮像範囲が制限されたり、光路変換素子よりも前方側の部分により撮像範囲が制限されたりすること等を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る光イメージング用プローブの実施例1を示す断面図である。
【図2】本発明に係る光イメージング用プローブの実施例2を示す断面図である。
【図3】本発明に係る光イメージング用プローブの実施例3を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための一形態として、中心軸回りに回転するロータを有する回転駆動源と、前記ロータを該ロータの軸方向の少なくとも一端側で回転自在に支持する回転支持部材と、前記ロータ及び前記回転支持部材に対し軸方向へ挿通された光ファイバと、前記光ファイバにより導かれる光の方向を前記軸方向に対して略交差方向へ変換するように、前記ロータの一端側に支持された光路変換素子と、を具備した。
【0017】
さらに好ましい形態として、前記ロータの中心側に貫通孔を設け、該ロータの少なくとも一端側を前記回転支持部材によって回転自在に支持し、この貫通孔内に前記光ファイバを挿通して、前記光ファイバの一端から軸方向へ光が出射されるようにし、前記光路変換素子を、前記光ファイバの一端から軸方向へ間隔を置くようにして、前記ロータの一端側に固定した。
さらに、前記回転駆動源を、ステータ内に前記ロータを有するインナーロータモータとすると、より好ましい。
【0018】
また、他の好ましい形態として、前記ロータの中心側に、前記ロータから軸方向の少なくとも一端側へ突出するように前記光ファイバを固定し、この光ファイバの少なくとも一端側を前記回転支持部材によって回転自在に支持し、前記光路変換素子を、前記光ファイバの一端側に固定した。
さらに、前記回転駆動源を、ステータ内に前記ロータを有するインナーロータモータとするとより好ましい。
【0019】
また、他の好ましい形態として、前記回転支持部材の中心側に前記光ファイバを回転不能に支持するとともに、同回転支持部材の外周側には前記ロータの少なくとも一端側を回転自在に支持し、前記光路変換素子を、前記光ファイバの一端から軸方向へ間隔を置くようにして、前記ロータの一端側に固定した。
さらに、前記回転駆動源が、前記光ファイバを回転不能に挿通するステータと、該ステータの周囲で回転する前記ロータとを具備するアウターロータモータとすると、より好ましい。
【0020】
また、上述すべてに適用可能な好ましい形態として、前記一端側に対して他端側に位置するとともに前記光ファイバの端部に対し光学的に接続される他の光ファイバと、前記他の光ファイバを支持する固定支持部材とを備え、かつ前記固定支持部材を、前記他端側の回転不能部位に固定し、前記他の光ファイバを支持した。
【0021】
さらに、上述すべてに適用可能な好ましい形態として、前記回転支持部材を、前記ロータの軸方向の両側に設けた。
【0022】
ここで、前記回転駆動源には、電動モータや、超音波モータ、あるいは空圧式や油圧式等の流体式モータをはじめとした、中心軸回りに回転可能なあらゆるアクチュエータを適用することが可能である。また、前記光路変換素子には、反射鏡や、プリズム、レンズ等をはじめとした、光路を変換しうるすべての素子を適用することが可能である。
【0023】
また、上述した形態の一部は、先の形態の構成要件を一部含まない独立した発明とすることが可能である。
この独立した発明の一つは、中心軸回りに回転するロータを有する回転駆動源と、前記ロータを回転自在に支持する回転支持部材と、前記ロータ及び前記回転支持部材に対し軸方向へ挿通された光ファイバと、前記光ファイバにより導かれる光の方向を前記軸方向に対して略交差方向へ変換するように、前記ロータの一端側に支持された光路変換素子とを具備した光イメージング用プローブであって、前記ロータの回転軸方向へ貫通孔を設け、該ロータの少なくとも一端側を前記回転支持部材によって回転自在に支持し、この貫通孔内に前記光ファイバを挿通して、前記光ファイバの一端から軸方向へ光が出射されるようにし、前記光路変換素子を、前記光ファイバの一端から軸方向へ間隔を置くようにして、前記ロータの一端側に固定したことを特徴とする。
【0024】
この独立した発明によれば、光路変換素子を回転させる際に、貫通孔内の光ファイバを回転させなくてもよいため、回転伝達遅れやトルク損失等の発生をより効果的に軽減することができ、ひいてはより安定した観察画像を得ることができ、さらには、給電配線の取り回しを簡素化すること、プローブ周方向及び軸方向の撮像範囲が制限されるのを防ぐこと等の作用効果を得ることができる。
【0025】
また、他の独立した発明としては、中心軸回りに回転するロータを有する回転駆動源と、前記ロータを回転自在に支持する回転支持部材と、前記ロータ及び前記回転支持部材に対し軸方向へ挿通された光ファイバと、前記光ファイバにより導かれる光の方向を前記軸方向に対して略交差方向へ変換するように、前記ロータの一端側に支持された光路変換素子とを具備した光イメージング用プローブであって、前記回転支持部材の中心側に前記光ファイバを回転不能に支持するとともに、同回転支持部材の外周側には前記ロータの少なくとも一端側を回転自在に支持し、前記光路変換素子は、前記光ファイバの一端から軸方向へ間隔を置くようにして、前記ロータの一端側に固定したことを特徴とする。
【0026】
この独立した発明においても、光路変換素子を回転させる際に光ファイバが回転しないため、回転伝達遅れやトルク損失等の発生をより効果的に軽減することができ、ひいてはより安定した観察画像を得ることができ、さらには、給電配線の取り回しを簡素化すること、プローブ周方向及び軸方向の撮像範囲が制限されるのを防ぐこと等の作用効果を得ることができる。
【0027】
以下、上記形態を具体化した好ましい実施例について、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明に係る光イメージング用プローブの実施例1を示す。
この光イメージング用プローブAは、回転不能なステータ1と、該ステータ1の中心軸回りで回転するロータ2と、該ロータ2から軸方向の両側へ突出するように固定された中空シャフト11で構成されたロータアセンブリ(本発明におけるロータに相当)と、中空シャフト11を介して前記ロータ2の軸方向の両側で回転自在に支持する複数(図示例によれば二つ)の回転支持部材3,4と、前記ロータ2及び前記回転支持部材3,4に対し軸方向へ挿通された光ファイバ5と、前記光ファイバ5により導かれる光の方向を前記軸方向に対する交差方向へ変換するように、前記ロータ2の一端側に中空シャフト11及びブラケット15等を介して支持された光路変換素子8とを具備している。そして、この光イメージング用プローブAは、可撓性を有する長尺筒状のシース(図示せず)の前端側に収納され、前記シースの基端側(図1によれば左端側)が光源を有するOCT(Optical Coherence Tomography)装置(図示せず)に接続される。
【0029】
なお、図1におけるステータ1及びロータ2は、磁気作用によってロータ2を回転させるインナーロータタイプの回転駆動源(電動機)を構成した場合の構造例として示している。
【0030】
ステータ1は、円筒状の電磁コイルからなり、その外周部が積層鋼板やパーマロイなど磁気回路を形成する材料を用いた管状ケース9の内周面に固定される。該ステータ1は、円環状のスペーサ12に設けられた接続端子(図示せず)を介して給電配線10に接続される。給電配線10は、前記スペーサ12の外周側から後方へ延設され、シース(図示せず)内を通ってOCT装置(図示せず)に接続される。また、管状ケース9はステータ1よりも一回り程大きく、且つステータ1よりも軸方向へ長い円筒状に形成される。
【0031】
ロータ2は、ステータ1の内周面に対し所定のエアギャップを空けて配置された円筒状の部材であり、ステータ1の磁気作用によって回転するように永久磁石を装着している。なお、ロータ2を構成する中空シャフト11は、剛性を有する長尺円筒状の部材であり、例えば、金属製の管体等により形成される。この中空シャフト11の内径は、光ファイバ5を遊びを有する状態で挿入可能な程度、すなわち光ファイバ5の外径よりも若干大きい寸法に設定される。そして、この中空シャフト11の前後端側の部分は、それぞれ、回転支持部材3,4によって回転自在に支持される。
【0032】
回転支持部材3,4は、その内周面側の部材(図1の一例では中空シャフト11)を回転自在に支持する円筒状の部材であり、例えば、ボールベアリングやスリーブベアリング等が用いられる。一端側(図1によれば右端側)の回転支持部材3は、管状ケース9の内周面に嵌合固定される。また、他端側(図1によれば左端側)の回転支持部材4は、後端キャップ13の内周面に嵌合固定されている。後端キャップ13は、管状ケース9の後端に接続された有底筒状の部材であり、その中心部に、光ファイバ5を挿通している。
【0033】
光ファイバ5は、例えば石英ガラスやプラスチックによって細い繊維状に形成された周知構造のものであり、基端側をOCT装置の光源(図示せず)に接続するとともに、先端側を中空シャフト11内に挿通しており、その最先端部には、軸方向へ光を導くレンズ部5aが設けられる。
【0034】
また、中空シャフト11の一端側(図1によれば右端部)は、回転支持部材3及び管状ケース9の一端から軸方向の前方へ突出しており、その外周部には、ブラケット15を介して光路変換素子8が固定支持される。
【0035】
ブラケット15は、中空シャフト11の外周面に固定される円形状の基板部15aと、該基板部15aの外周縁から軸方向の前方(図1によれば右方)へ突出する筒部15bとから一体に構成される。基板部15aは、管状ケース9の前端部に対し、スラストベアリング等の軸受部材14を介して当接することで、ブラケット15及び光路変換素子8の回転が軸方向へ振れるのを防いでいる。筒部15bは、その周方向の一部分に、光路変換素子8を傾斜状に固定するとともに、中心軸を挟んで光路変換素子8と逆側となる部分に、光路変換素子8によって光路を変換された光xを通過する窓部15b1を有する。
【0036】
なお、中空シャフト11の両端に存在する部材16は、中空シャフト11の外周面に固定される円環状の係止部材であり、回転支持部材3,4に接触又は近接させることで、中空シャフト11及び光路変換素子8が軸方向へ移動しないように保持している。
【0037】
光路変換素子8は、略平板状の反射鏡であり、光ファイバ5先端のレンズ部5aから軸方向へ間隔を置いて傾斜状に配置され、前記レンズ部5aから軸方向へ放出される光xの光路を略直角に曲げる。なお、光路の変換については、光路変換素子8を取り付ける角度に応じて自在に変更することも可能である。
また、光xを通過する窓部15b1は、光路を妨げないように貫通させるか、あるいは、透明または透光性を有する板材を配置する。
【0038】
次に、上記構成の光イメージング用プローブAについて、その作用効果を詳細に説明する。
図示しないOCT装置から光ファイバ5の基端部に供給される光x(詳細には近赤外線光)は、光ファイバ5内を通り、該光ファイバ5先端のレンズ部5aから軸方向の前方へ放出され、光路変換素子8により略直交方向へ導かれて、被検体pに照射される。そして、被検体pにより反射した光xは、前記と逆の経路を通り、先ず光路変換素子8により反射されてレンズ部5aから光ファイバ5内に入り、光ファイバ5を伝ってOCT装置に戻される。OCT装置は、戻された反射光xを解析して画像化する。
【0039】
また、必要に応じて、給電配線10への供給電力を制御すれば、ロータ2、中空シャフト11、ブラケット15及び光路変換素子8が回転するため、当該光イメージング用プローブAの周方向の全周にわたって被検体pを撮像することができる。また、光イメージング用プローブA全体を進退させる操作を行えば、当該光イメージング用プローブAの軸方向へわたる範囲において被検体pを撮像することができる。
【0040】
前記のようにして、光路変換素子8を回転させる際、ロータ2の回転力が直接的に光路変換素子8に伝達されるため、回転伝達遅れやトルク損失等の発生を軽減することができる。しかも、光路変換素子8と一体のロータ2及び中空シャフト11を、軸方向の両側で支持するようにしているため、光学変換素子8が偏心して回転するようなことを低減することができ、ひいては、安定した観察画像を得ることができる。
【0041】
また、光路変換素子8よりも前方側に、回転駆動源等の主要な構成を配置しない構造となっているため、給電配線10の取り回しを簡素化できる上、給電配線10によってプローブ周方向の撮像範囲が制限されたり、光路変換素子8よりも前方側の部分が被検体pに当接して撮像範囲が制限されたりすること等を防ぐことができる。
【0042】
なお、上記実施例1の光イメージング用プローブAでは、特に好ましい態様として、ロータ2と一体の中空シャフト11をその両側の二つの回転支持部材3,4によって回転自在に支持するようにしたが、他例として、中空シャフト11の剛性を、材質や肉厚等の設定により高めたり、回転支持部材3あるいは4の軸方向の長さを調整したりすれば、二つの回転支持部材3,4のうち、何れか一方を省くことも可能である。
【0043】
次に、本発明に係る光イメージング用プローブの他例について説明する。
以下に示す光イメージング用プローブの他例は、上記した光イメージング用プローブAの一部を変更したものであるため、主にその変更部分について詳細に説明し、上記光イメージング用プローブAと略同様の部分については、同一の符号を付けることで重複する詳細説明を省略する。
【実施例2】
【0044】
図2は、本発明に係る光イメージング用プローブの実施例2を示す。
この光イメージング用プローブBは、回転不能なステータ1と、該ステータ1内の中心軸回りで回転するロータ2と、該ロータ2の中心側に挿通され、かつ該ロータ2に固定されてロータ2の両端から軸方向の両側へ突出する第1の光ファイバ17と、この第1の光ファイバ17の両端側を回転自在に支持する複数(図示例によれば二つ)の回転支持部材3,4と、第1の光ファイバ17の一端側に対する他端側(図2によれば左端側)に位置するとともに第1の光ファイバ17の端部に対し光学的に接続される第2の光ファイバ18と、前記第2の光ファイバ18を支持する固定支持部材19とを具備し、前記第1の光ファイバ17の先端部に、第1の光ファイバ17により導かれる光の方向を前記軸方向に対する交差方向(図示例によれば直交方向)へ変換する光路変換素子17aを有する。そして、この光イメージング用プローブBは、上記光イメージング用プローブAと略同様に、可撓性を有する長尺筒状のシース(図示せず)の前端側に収納され、前記シースの基端側(図2によれば左端側)が光源を有するOCT装置(図示せず)に接続される。
【0045】
なお、図2におけるステータ1及びロータ2は、磁気作用によってロータ2を回転させるインナーロータタイプの回転駆動源(電動機)を構成した場合の構造例として示している。
【0046】
第1の光ファイバ17は、ロータ2よりも長い所定長さの光ファイバであり、ロータ2に挿入され固定されている。この第1の光ファイバ17の両端側は、複数(図示例によれば3つ)の回転支持部材3,4,20によって支持される。特に、最も後端側(図2の左端側)を支持する回転支持部材20は、第1の光ファイバ17が回転した際の後端部の偏心を抑制し、第2の光ファイバ18に対する光伝達性を良好にする。
【0047】
第1の光ファイバ17の材質は、第1の光ファイバ17が回転中に撓んで偏心を生じないように、比較的剛性の高い材料とするのが好ましい。他例としては、金属やセラミック等の剛性材料からなる管体に、前記第1の光ファイバ17を挿入し、一体回転するようにしてもよい。
【0048】
第1の光ファイバ17の最先端部には、光路変換素子17aが設けられている。この光路変換素子17aは、第1の光ファイバ17に沿う軸方向の光路を、該軸方向に略直角な方向へ変換するプリズム又はレンズ等から構成される。
【0049】
また、第2の光ファイバ18は、可撓性を有する長尺状の光ファイバであり、その基端側をOCT装置(図示せず)の光源に接続するとともに、第1の光ファイバ17に対し光を伝達するように、最先端部を第1の光ファイバ17の後端部に近接させて、固定支持部材19によって固定されている。
【0050】
固定支持部材19は、底部19aと筒部19bとからなる有底筒状の部材であり、筒部19bの前端部を、後端キャップ13(回転不能部位)の後端部に接続固定している。
この固定支持部材19は、その底部19aに、第2の光ファイバ18の先端側を挿通し固定するとともに、筒部19bの前端側内周面に回転支持部材20を介して第1の光ファイバ17の後端部を回転自在に支持している。この固定支持部材19によれば、回転することのない第2の光ファイバ18と、回転自在な第1の光ファイバ17とを、これらの軸心が略一致するように近接させ対向させることができ、ひいては、両光ファイバ間の光の伝達性を良好に維持することができる。
【0051】
なお、部材21は、第1の光ファイバ17の先端側の外周面に固定されるとともに、回転支持部材3の前端面に近接又は摺接する円環状の係止部材である。また、部材22は、第1の光ファイバ17の後端側の外周面に固定されるとともに、後端キャップ13の後端面に近接又は摺接する円環状の係止部材である。これら係止部材21,22は、第1の光ファイバ17が軸方向へ移動しないように保持している。
【0052】
よって、上記構成の光イメージング用プローブBによれば、図示しないOCT装置から第2の光ファイバ18に供給される光x(詳細には近赤外線光)は、第2の光ファイバ18内を通り、該第2の光ファイバ18の先端部から回転する第1の光ファイバ17へ伝達され、第1の光ファイバ17前端の光路変換素子17aにより略直交方向へ導かれて、被検体pに照射される。そして、被検体pにより反射した光xは、前記と逆の経路を通り、先ず光路変換素子17aに反射されることで、第1の光ファイバ17の軸方向へ光路が変換され、第1の光ファイバ17から第2の光ファイバ18へ伝達されてOCT装置に戻される。OCT装置は、戻された反射光xを解析して画像化する。
【0053】
また、必要に応じて、給電配線10への供給電力を制御すれば、ロータ2、第1の光ファイバ17及び光路変換素子17aが回転するため、当該光イメージング用プローブBの全周にわたる範囲において被検体pを撮像することができる。また、光イメージング用プローブB全体を進退させる操作を行えば、当該光イメージング用プローブBの軸方向へわたる範囲において被検体pを撮像することができる。
【0054】
前記のようにして、光路変換素子17aを回転させる際、ロータ2の回転力が直接的に光路変換素子17aに伝達されるため、回転伝達遅れやトルク損失等の発生を軽減することができる。しかも、光路変換素子17aと一体のロータ2及び第1の光ファイバ17を、軸方向の両側で支持するようにしているため、光路変換素子17aが偏心して回転するようなことを低減することができ、ひいては、安定した観察画像を得ることができる。
【0055】
また、光路変換素子17aよりも先端側に、回転駆動源等の主要な構成を配置しない構造となっているため、給電配線10の取り回しを簡素化できる上、給電配線10によってプローブ周方向の撮像範囲が制限されたり、光路変換素子17aよりも先端側の部分が被検体pに当接して撮像範囲が制限されたりすること等を防ぐことができる。
【0056】
なお、上記実施例2の光イメージング用プローブBでは、特に好ましい態様として、ロータ2と一体の第1の光ファイバ17をその両側の複数(図示例によれば三つ)の回転支持部材3,4,20によって回転自在に支持するようにしたが、他例として、第1の光ファイバ17の材質を剛性のより高いものにした場合や、第1の光ファイバ17の外周に剛性の比較的高い補強管(例えば金属やセラミック等の管体)を設けた場合等には、複数の回転支持部材3,4,20のうち、何れか一つ又は二つを省くことも可能である。
【実施例3】
【0057】
図3は、本発明に係る光イメージング用プローブの実施例3を示す。
この光イメージング用プローブCは、中心軸側に回転不能に配置されたステータ30と、該ステータ30の周囲で回転する略筒状のロータ31と、該ロータ31を回転自在に支持する複数(図示例によれば二つ)の回転支持部材3,4と、ステータ30に挿通されるとともに回転支持部材3,4の中心側に回転不能に支持された光ファイバ32と、該光ファイバ32の一端から軸方向へ間隔を置くとともに、ロータ31の一端側に管状ケース9及びブラケット33を介して固定される光路変換素子34とを備える。そして、この光イメージング用プローブCは、上記光イメージング用プローブA及びBと略同様に、可撓性を有する長尺筒状のシース(図示せず)の前端側に収納され、前記シースの基端側(図3によれば左端側)が光源を有するOCT装置(図示せず)に接続される。
【0058】
なお、図3におけるステータ30及びロータ31は、磁気作用によって外周側の筒状のロータ31を回転させるアウターロータタイプの回転駆動源(電動機)を構成した場合の構造例として示している。
【0059】
ステータ30は、円筒状の電磁コイルからなり、その内周部に光ファイバ32を挿通させ固定し、回転不能に保持されている。このステータ30の後端側(図3によれば左端側)は、円環状のスペーサ35に設けられた接続端子(図示せず)を介して給電配線10に接続される。
【0060】
ロータ31は、ステータ30の外周面に対して所定のエアギャップを空けて配置された円筒状の部材であり、ステータ30の磁気作用によって回転するように永久磁石を装着している。このロータ31の外周面には、該ロータ31と一体的に回転するように管状ケース9が固定される。この管状ケース9は、ロータ31よりも軸方向へ長く形成され、その先端側が回転支持部材3の外周部に回転自在に支持されるとともに、後端キャップ36を介して後側の回転支持部材4の外周部に回転自在に支持される。
【0061】
光ファイバ32は、ステータ30及びその前後の回転支持部材3,4内に回転不能に挿通され、その基端側を図示しないOCT装置の光源に接続するとともに、先端側を回転支持部材3よりも前方へ突出させている。この光ファイバ32の最先端部には、該先端部に入出する光を軸方向へ導くためのレンズ部32aが設けられる。
【0062】
なお、回転支持部材3,4、ステータ30、スペーサ35、及び光ファイバ32は、該光ファイバ32の両端側外周面に圧入や接着等により固定される二つの円環状の係止部材37によって、回転支持部材3,4に近接又は接触させて挟み込まれることにより、軸方向に固定されている。また、ブラケット33及び後端キャップ36のそれぞれ一端面を回転支持部材3,4に近接又は摺接させることで、光路変換素子8が軸方向へ移動しないように保持している。
【0063】
また、ブラケット33は、管状ケース9の前端部に嵌合固定された円筒状の部材であり、その周方向の一部分に、光路変換素子34を傾斜状に固定するとともに、中心軸を挟んで光路変換素子34と逆側となる部分に、光路変換素子34によって光路を変換された光xを通過する窓部33aを有する。
【0064】
光路変換素子34は、略平板状の反射鏡であり、前記レンズ部32aから軸方向へ放出される光xの光路を略直角に曲げるように、光ファイバ32先端のレンズ部32aから軸方向へ間隔を置いて傾斜状に固定される。
また、光xを通過する窓部33aは、光路を妨げないように貫通させるか、あるいは、透明または透光性を有する板材を配置する。
【0065】
よって、上記構成の光イメージング用プローブCによれば、図示しないOCT装置から光ファイバ32の基端部に供給される光x(詳細には近赤外線光)は、光ファイバ32内を通り、該光ファイバ32先端のレンズ部32aから軸方向へ放出され、光路変換素子34により略直交方向へ導かれて、被検体pに照射される。そして、被検体pにより反射した光xは、前記と逆の経路を通り、先ず光路変換素子34により反射されてレンズ部32aから光ファイバ32内に入り、光ファイバ32を伝ってOCT装置に戻される。OCT装置は、戻された反射光xを解析して画像化する。
【0066】
回転支持部材3,4は、その内周面側の部材(図1の一例では中空シャフト11)を回転自在に支持する円筒状の部材であり、例えば、ボールベアリングやスリーブベアリング等が用いられる。一端側(図1によれば右端側)の回転支持部材3は、管状ケース9の内周面に嵌合固定される。また、他端側(図1によれば左端側)の回転支持部材4は、後端キャップ13の内周面に嵌合固定されている。後端キャップ13は、管状ケース9の後端に接続された有底筒状の部材であり、その中心部に、光ファイバ5を挿通している。
【0067】
また、必要に応じて、給電配線10への供給電力を制御すれば、ロータ31、管状ケース9、ブラケット33、光路変換素子34及び後端キャップ36が回転するため、当該光イメージング用プローブCの全周にわたる範囲において被検体pを撮像することができる。また、光イメージング用プローブC全体を進退させる操作を行えば、当該光イメージング用プローブCの軸方向へわたる範囲において被検体pを撮像することができる。
【0068】
前記のようにして、光路変換素子34を回転させる際、ロータ31の回転力が直接的に光路変換素子34に伝達されるため、回転伝達遅れやトルク損失等の発生を軽減することができる。しかも、光路変換素子34と一体に回転するロータ31及び管状ケース9等を、軸方向の両側で支持するようにしているため、光路変換素子34が偏心して回転するようなことを低減することができ、ひいては、安定した観察画像を得ることができる。
【0069】
また、光路変換素子34よりも前方側に、回転駆動源等の主要な構成を配置しない構造となっているため、給電配線10の取り回しを簡素化できる上、給電配線10によってプローブ周方向の撮像範囲が制限されたり、光路変換素子34よりも前方側の部分が被検体pに当接して撮像範囲が制限されたりすること等を防ぐことができる。
【0070】
なお、上記記載によれば、実施例2の光イメージング用プローブBのみ、二つの光ファイバ17,18を、固定支持部材19内で光学的に接続するようにしたが、実施例1及び3においても、同様の接続構造を採用し、光ファイバ5(又は32)を複数の光ファイバから構成することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1,30:ステータ 2,31:ロータ
3,4,20:回転支持部材 5,32:光ファイバ
5a,32a:レンズ部 8,17a,34:光路変換素子
9:管状ケース 10:給電配線
11:中空シャフト 12,35:スペーサ
13,36:後端キャップ 14:軸受部材
15,33:ブラケット 15a:ブラケット基板部
15b:ブラケット筒部 15b1,33a:窓部
16,21,22,37:係止部材 17:第1の光ファイバ
18:第2の光ファイバ 19:光ファイバ固定支持部材
19a:光ファイバ固定支持部材底部 19b:光ファイバ固定支持部材筒部
A,B,C:光イメージング用プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸回りに回転するロータを有する回転駆動源と、
前記ロータを該ロータの軸方向の少なくとも一端側で回転自在に支持する回転支持部材と、
前記ロータ及び前記回転支持部材に対し軸方向へ挿通された光ファイバと、
前記光ファイバにより導かれる光の方向を前記軸方向に対して略交差方向へ変換するように、前記ロータの一端側に支持された光路変換素子と、を具備したことを特徴とする光イメージング用プローブ。
【請求項2】
前記ロータの中心側に貫通孔を設け、該ロータの少なくとも一端側を前記回転支持部材によって回転自在に支持し、この貫通孔内に前記光ファイバを挿通して、前記光ファイバの一端から軸方向へ光が出射されるようにし、
前記光路変換素子を、前記光ファイバの一端から軸方向へ間隔を置くようにして、前記ロータの一端側に固定したことを特徴とする請求項1記載の光イメージング用プローブ。
【請求項3】
前記ロータの中心側に、前記ロータから軸方向の両側へ突出するように前記光ファイバを固定し、この光ファイバの少なくとも一端側を前記回転支持部材によって回転自在に支持し、
前記光路変換素子を、前記光ファイバの一端側に固定したことを特徴とする請求項1記載の光イメージング用プローブ。
【請求項4】
前記回転駆動源を、ステータ内に前記ロータを有するインナーロータモータとしたことを特徴とする請求項1乃至3記載の光イメージング用プローブ。
【請求項5】
前記回転支持部材の中心側に前記光ファイバを回転不能に支持するとともに、同回転支持部材の外周側には前記ロータの少なくとも一端側を回転自在に支持し、
前記光路変換素子を、前記光ファイバの一端から軸方向へ間隔を置くようにして、前記ロータの一端側に固定したことを特徴とする請求項1記載の光イメージング用プローブ。
【請求項6】
前記回転駆動源を、前記光ファイバを回転不能に挿通するステータと、該ステータの周囲で回転する前記ロータとを具備するアウターロータモータとしたことを特徴とする請求項5記載の光イメージング用プローブ。
【請求項7】
前記一端側に対する他端側に位置するとともに前記光ファイバの端部に対し光学的に接続される他の光ファイバと、前記他の光ファイバを支持する固定支持部材とを備え、
前記固定支持部材を、前記他端側の回転不能部位に固定し、前記他の光ファイバを支持したことを特徴とする請求項1乃至6何れか1項記載の光イメージング用プローブ。
【請求項8】
前記回転支持部材を、前記ロータの軸方向の両側に設けたことを特徴とする請求項1乃至7何れか1項記載の光イメージング用プローブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−22414(P2013−22414A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163104(P2011−163104)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000240477)並木精密宝石株式会社 (210)
【Fターム(参考)】