説明

光ケーブル支持装置

【課題】 光ケーブルがクロージャから抜けるのを防止する。
【解決手段】 クロージャ101を支持するメッセン103に着脱自在に取り付けられる取付部2と、取付部2と連結され、光ケーブル102を着脱自在に把持する把持部4と、把持部4の内面側に配設され、空気が注入されることで膨張して、光ケーブル102の外周面を押圧する膨張チューブ5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クロージャに接続された光ケーブルを支持する光ケーブル支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電柱の建て替えなどを行う場合、光ケーブルの移設が必要な場合があり、このような場合、従来、クロージャもそのまま一緒に、光ケーブルを新たな電柱に移設していた。ところで、クロージャ内には、光ケーブルを把持、固定するための固定具が設けられているが(例えば、特許文献1参照。)、経年変化や劣化、あるいはヒューマンエラーなどの何らかの要因によって、固定具に固定不良・締め付け不良が生じている場合がある。そして、このような不良が発生していると、光ケーブルやクロージャの移設の際に、光ケーブルがクロージャから抜けて心線に損傷を与え、回線断に至るおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−311229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような光ケーブルの抜けを防止するには、移設などに先だって、クロージャを開けて固定具によるに固定・締め付けを確認することが有効ではあるが、クロージャを開けるには多大な時間と労力とを要し、現実的ではない。また、固定具が緩まない構造、つまり光ケーブルが抜けにくい構造にすることも有効ではあるが、ヒューマンエラーによる固定不良・締め付け不良が存在する場合には、光ケーブルの抜けを防止することができない。しかも、固定具による固定を強固にするために、固定具に突起物などを設けると、光ケーブルに損傷を与えるおそれがある。
【0005】
そこでこの発明は、光ケーブルがクロージャから抜けるのを防止可能な光ケーブル支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、クロージャに接続された光ケーブルを支持する光ケーブル支持装置であって、前記クロージャを支持する線状体に着脱自在に取り付けられる取付部と、前記取付部と連結され、前記光ケーブルを着脱自在に把持する把持部と、前記把持部の内面側に配設され、流体が注入されることで膨張して、前記光ケーブルの外周面を押圧する膨張部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、取付部を線状体に取り付け、把持部で光ケーブルを把持した状態で、流体を注入して膨張部を膨張させることで、膨張部が光ケーブルの外周面を押圧する。これにより、光ケーブル支持装置を介して線状体と光ケーブルとが連結された状態、つまり、光ケーブルが線状体で支持された状態となる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の光ケーブル支持装置において、前記取付部と把持部との距離が調整自在となっている、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の光ケーブル支持装置において、前記膨張部に、前記光ケーブルとの密着性を高める密着部が設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、光ケーブル支持装置を介して線状体と光ケーブルとが連結され、光ケーブルが線状体で支持された状態となる。つまり、クロージャと光ケーブルとが、ともに線状体で支持された状態となるため、光ケーブルがクロージャから抜けるのを防止することができる。しかも、膨張部が光ケーブルの外周面を押圧するため、把持部による光ケーブルの把持が強固となり、光ケーブルの抜けをより防止することが可能となる。さらに、膨張部が膨張して光ケーブルの外周面を押圧するだけであるため、光ケーブルに損傷を与えることがない。
【0011】
請求項2の発明によれば、取付部と把持部との距離が調整自在なため、線状体と光ケーブルとの距離が異なる場合であっても、ひとつの光ケーブル支持装置で対応することができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、膨張部に密着部が設けられているため、膨張部と光ケーブルとの密着性が高まり、把持部による光ケーブルの把持がより強固となって、光ケーブルの抜けをより防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に係る光ケーブル支持装置を示す構成図であり、(a)は把持部が開いた状態、(b)は把持部が閉じた状態、(c)は膨張チューブに空気が注入された状態を示す。
【図2】図1の光ケーブル支持装置の配設位置を示す図である。
【図3】図1の光ケーブル支持装置の膨張チューブの表面状態を示す図であり、(a)は平坦面で空気注入前の状態、(b)は平坦面で空気注入後の状態、(c)は凹凸状の密着部を有する空気注入前の状態、(d)は凹凸状の密着部を有する空気注入後の状態、(e)は吸盤状の密着部を有する空気注入前の状態、(f)は吸盤状の密着部を有する空気注入後の状態を示す。
【図4】図1の光ケーブル支持装置の膨張チューブの把持部への組付手順を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る光ケーブル支持装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態に係る光ケーブル支持装置1を示す構成図であり、図2は、光ケーブル支持装置1の配設位置を示す図である。この光ケーブル支持装置1は、クロージャ101に接続された光ケーブル102を支持する装置であり、主として、取付部2と、把持部4と、膨張チューブ(膨張部)5とを備えている。ここで、クロージャ101は、水平方向に延びるメッセン(線状体)103にぶら下げられた状態で支持されている。また、クロージャ101内には、光ケーブル102を把持、固定するための把持金物(固定具)が設けられている。
【0016】
取付部2は、メッセン103に着脱自在に取り付けられるものであり、取付板21とクランプ22とを備えている。取付板21は、金属製の板材で、クランプ22の両端部を挿入するための挿入孔が形成され、下端部に、後述する連結棒3の第1の連結部31が接続されている。クランプ22は、金属製の丸材が略U字状に形成されたもので、両端部に雄ネジが形成されている。そして、取付板21とクランプ22とでメッセン103を挟み、クランプ22の両端部を取付板21の挿入孔に挿入して、クランプ22の雄ネジにナット23を締め付けることで、取付部2がメッセン103に取り付けられる。また、ナット23を外して、クランプ22を取付板21から分離させることで、取付部2をメッセン103から取り外せるものである。
【0017】
把持部4は、光ケーブル102を着脱自在に把持するものであり、金属製で、半円筒状の第1の筒部41と第2の筒部42とを備え、これらの筒部41、42がヒンジ43によって開閉自在となっている。また、第1の筒部41と第2の筒部42とが閉じた状態では、把持部4の内周面(膨張チューブ5)と光ケーブル102との間に隙間が形成されるように、把持部4の内径が設定されている。さらに、第1の筒部41と第2の筒部42とを閉じた状態を維持するために、ボルトやバンドなどの固定手段が設けられ、この固定手段を解除することで把持部4を開けられるようになっている。
【0018】
このような把持部4は、連結棒3を介して取付部2に連結されている。すなわち、連結棒3は、棒状の第1の連結部31と筒状の第2の連結部32とを備え、第2の連結部32の下端部に把持部4が接続されている。また、第2の連結部32内に第1の連結部31が挿入され、その挿入量を変えることで連結棒3が伸縮自在で、これにより、取付部2と把持部4との距離が調整自在となっている。さらに、第2の連結部32に対する第1の連結部31の移動を規制・固定するためのボルトやくさびなどの固定手段が設けられている。
【0019】
膨張チューブ5は、把持部4の内周面に配設され、空気(流体)が注入されることで膨張して、光ケーブル102の外周面を押圧するチューブである。すなわち、ゴム製のチューブで、把持部4の全内周面に沿うように形成、配設され、把持部4が閉じた状態では、図1(b)に示すように、光ケーブル102との間に隙間が形成され、空気が注入されることで膨張して、図1(c)に示すように、光ケーブル102の外周面を押圧するようになっている。一方、空気を抜くと、収縮するものである。ここで、膨張チューブ5の膨張代は、直径が異なる複数の光ケーブル102を適正に押圧できるように設定されている。
【0020】
また、この膨張チューブ5の光ケーブル102側の接触面には、光ケーブル102の大きさ・直径や数、表皮の材質などに応じて、光ケーブル102との密着性を高める密着部が設けられている。すなわち、図3(a)、(b)に示すように、密着部がない場合には、膨張チューブ5の接触面は平坦となっている。これに対して、図3(c)、(d)に示すような凹凸状の密着部5aや、図3(e)、(f)に示すような吸盤状の密着部5bを設けることで、光ケーブル102との密着性が高められるものである。ここで、例えば、光ケーブル102がFTTH(Fiber To The Home)などの細径のケーブルの場合には、平坦面の膨張チューブ5を用いるか、あるいは凹凸状の密着部5aが設けられた膨張チューブ5を用いる。
【0021】
このような膨張チューブ5は、次のようにして把持部4に組み付けられている。すなわち、図4に示すように、まず、膨張チューブ5(a)に設けられたバルブ本体51を把持部4(b)に形成されたバルブ孔44に挿入しながら、把持部4の内面側に膨張チューブ5を配設する(c)。次に、バルブ本体51に虫ゴム52を装着して(d、e)、バルブ本体51にバルブナット53を取り付ける(f)。そして、虫ゴム52に空気入れを装着して空気を注入することで、膨張チューブ5が膨張する(f)ものである。
【0022】
次に、このような構成の光ケーブル支持装置1の作用などについて説明する。
【0023】
まず、光ケーブル支持装置1を配設するには、上記のようにして取付部2をメッセン103に取り付け、取付部2と把持部4との距離に合わせて連結棒3の長さを調整する。次に、図1(a)に示すように、第1の筒部41と第2の筒部42とを開けて、筒部41、42間に光ケーブル102を位置させた状態で、図1(b)に示すように、第1の筒部41と第2の筒部42とを閉じる。続いて、上記のようにして、膨張チューブ5に空気を注入することで、図1(c)に示すように、膨張チューブ5が膨張して、全面にわたって光ケーブル102に対して密着、押圧する。
【0024】
このようにして光ケーブル支持装置1を配設した状態では、光ケーブル支持装置1を介してメッセン103と光ケーブル102とが連結された状態、つまり、光ケーブル102がメッセン103で支持された状態となる。そして、このような状態で、光ケーブル102やクロージャ101の移設作業などを行うものである。
【0025】
以上のように、この光ケーブル支持装置1によれば、光ケーブル102がメッセン103で支持された状態、つまり、クロージャ101と光ケーブル102とが、ともにメッセン103で支持された状態となる。このため、光ケーブル102やクロージャ101の移設作業などを行ったとしても、クロージャ101と光ケーブル102とが一体化しているため、光ケーブル102がクロージャ101から抜けるのを効果的に防止することができる。
【0026】
具体的には、クロージャ101を開ける必要がないため、時間と労力とを削減して効率的に作業を行うことができる。また、クロージャ101内の把持金物による固定に不具合があったとしても(ヒューマンエラーによる固定不良・締め付け不良があったとしても)、光ケーブル102の抜けを防止することができる。
【0027】
しかも、膨張チューブ5が光ケーブル102の外周面を押圧するため、把持部4による光ケーブル102の把持が強固となる。さらに、膨張チューブ5に密着部5a、5bを設けることで、膨張チューブ5と光ケーブル102との密着性が高まり、把持部4による光ケーブル102の把持がより強固となる。この結果、光ケーブル102の抜けをより防止することが可能となる。
【0028】
また、膨張チューブ5が膨張して光ケーブル102の外周面を押圧するだけであるため、光ケーブル102に損傷を与えることがない。しかも、膨張チューブ5が膨張して光ケーブル102を把持するため、直径が異なる複数の光ケーブル102を適正に把持することができる。さらに、取付部2と把持部4との距離が調整自在なため、メッセン103と光ケーブル102との距離が異なる場合であっても、ひとつの光ケーブル支持装置1で対応することができる。
【0029】
(実施の形態2)
図5は、この実施の形態に係る光ケーブル支持装置10を示す構成図である。この実施の形態では、実施の形態1の光ケーブル支持装置1を2つ連結している点で、実施の形態1と構成が異なり、同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0030】
すなわち、この光ケーブル支持装置10は、2つの光ケーブル支持装置1を連結体11で連結して構成されている。この連結体11は、水平方向に延びるブロック体で、両取付板21の上面に配設され、ボルトで両取付板21に接続されている。一方、ボルトを外すことで、2つの光ケーブル支持装置1が分離され、実施の形態1のようにそれぞれが単体で使用できるようになっている。
【0031】
そして、クロージャ101に2本の光ケーブル102が接続されている場合に、各光ケーブル支持装置1の把持部4で光ケーブル102を1本ずつ把持するものである。
【0032】
このような実施の形態によれば、2つの光ケーブル支持装置1が連結されているため、それぞれの把持部4で光ケーブル102を把持しても、クロージャ101と2本の光ケーブル102と光ケーブル支持装置10とメッセン103とが、固定化・一体化される。この結果、それぞれの光ケーブル102がクロージャ101から抜けるのを、より効果的に防止することができるものである。
【0033】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、膨張チューブ5のバルブが虫ゴムタイプの場合について説明したが、空気注入時の逆流や経時的漏れを抑制したスーパーバルブであってもよい。また、把持部4で1本の光ケーブル102を把持する場合について説明したが、光ケーブル102の直径や配設位置などに応じて、把持部4で複数本の光ケーブル102を把持してもよい。さらに、実施の形態2では、2つの光ケーブル支持装置1を連結した場合について説明したが、光ケーブル102の本数に応じて、3つ以上の光ケーブル支持装置1を連結してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 光ケーブル支持装置
2 取付部
3 連結棒
4 把持部
5 膨張チューブ(膨張部)
5a 密着部
5b 密着部
101 クロージャ
102 光ケーブル
103 メッセン(線状体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロージャに接続された光ケーブルを支持する光ケーブル支持装置であって、
前記クロージャを支持する線状体に着脱自在に取り付けられる取付部と、
前記取付部と連結され、前記光ケーブルを着脱自在に把持する把持部と、
前記把持部の内面側に配設され、流体が注入されることで膨張して、前記光ケーブルの外周面を押圧する膨張部と、
を備えることを特徴とする光ケーブル支持装置。
【請求項2】
前記取付部と把持部との距離が調整自在となっている、ことを特徴とする請求項1に記載の光ケーブル支持装置。
【請求項3】
前記膨張部に、前記光ケーブルとの密着性を高める密着部が設けられている、ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の光ケーブル支持装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−88749(P2013−88749A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231504(P2011−231504)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】