説明

光ケーブル

【課題】車載等の低温から高温までの幅広い温度環境で使用された場合であっても伝送特性を低下させず、且つ光ケーブルコネクタに対する把持力も良好な光ケーブルを提供する。
【解決手段】ロッド型テンションメンバ31、32及び繊維型テンションメンバ4の2種類のテンションメンバと、光ファイバ21、22とをシース材5で覆い光ケーブル1を構成した

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを用いた光ケーブル(光ファイバケーブルと称されることもある)は、多量の情報の高速通信が可能であることから、家庭用、産業用の情報通信に広く利用されている。
【0003】
従来の光ケーブルは、例えば特許文献1に記載されているように、光ファイバ心線とテンションメンバが難燃ポリエチレンからなるシース材により被覆された構造が公知である。
【0004】
光ケーブルのテンションメンバは、例えば鋼線等のような高弾性のロッドからなるロッド型テンションメンバが公知である。また、光ケーブルのテンションメンバは、抗張力繊維からなる繊維型テンションメンバが公知である。すなわち従来の光ケーブルは、ロッド型及び繊維型テンションメンバのいずれか一方のテンションメンバを用いたものであった。
【0005】
光ケーブルを他の機器に接続する場合や、光ケーブルどうしを接続する際、光ケーブルコネクタが用いられる。光ケーブルは、光ケーブルコネクタに接続する場合、テンションメンバを各種の保持手段により保持することで固定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−202471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
室内用途の光ケーブルは、通常、−5℃〜+60℃程度の温度範囲で使用される。この場合、テンションメンバとして、ロッド型を用いても繊維型を用いても特に不具合はなかった。
【0008】
光ケーブルを例えば車載用等のように室外で使用する場合、−40℃〜+120℃程度の温度範囲で使用されることになる。このような温度範囲で使用されると、光ケーブルは、低温になるとシース材が収縮し、高温になるとシース材が膨張し、収縮と膨張が繰り返される。このような環境では、繊維型テンションメンバを使用した光ケーブルは、シース材の収縮を防止出来ず、内部の光ファイバが蛇行してしまい、伝送特性が低下してしまうという問題があった。そのため、車載用途のような広い温度範囲の環境で使用される光ケーブルは、ロッド型テンションメンバを使用せざるをえなかった。
【0009】
しかしながら、ロッド型テンションメンバを使用した光ケーブルは、光ケーブルコネクタに固定する場合、繊維型テンションメンバを使用した光ケーブルと比較して、光ケーブルコネクタによる把持力が弱く、光ケーブルがコネクタから抜けやすいという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決しようとするものであり、光ケーブルが室外等の低温から高温までの幅広い温度環境で使用された場合であっても伝送特性を低下させず、且つ光ケーブルコネクタに対する把持力も良好な光ケーブルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の光ケーブルは、光ファイバ及びテンションメンバがシース材に覆われている光ケーブルにおいて、前記テンションメンバがロッド型テンションメンバ及び繊維型テンションメンバを有することを要旨とするものである。
【0012】
本発明光ケーブルにおいて、前記ロッド型テンションメンバは鋼線又はFRPからなることが好ましい。
【0013】
本発明光ケーブルにおいて、前記繊維型テンションメンバはアラミド繊維又はポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維からなることが好ましい。また上記繊維型テンションメンバは、繊度が2000dtex以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光ケーブルは、ロッド型テンションメンバ及び繊維型テンションメンバの2種類のテンションメンバを有することにより、低温環境下で使用された場合のシース材の収縮をロッド型テンションメンバが防止して、光ファイバの蛇行等による伝送特性の低下を抑制できる。更に本発明光ケーブルは、繊維型テンションメンバを有するので、該光ケーブルを光ケーブルコネクタ等に接続固定する場合、繊維型テンションメンバを利用して固定することで高い把持力を確保することができる。このように本発明光ケーブルは、広い温度範囲で使用した場合に伝送特性を良好に維持することと、コネクタ等に対して高い把持力で光ケーブルを固定することを両立させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明の光ケーブルの一例を示す断面図である。
【図2】図2は本発明の光ケーブルの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は本発明の光ケーブルの一例を示す断面図である。図1の光ケーブル1は、光信号を伝達する送信用と受信用の二本の光ファイバ21、22と、高弾性を有する二本のロッド型テンションメンバ31、32と、抗張力繊維からなる繊維型テンションメンバ4が、シース材5により被覆されている。シース材5は断面が略矩形状に形成され、図中左右方向の略中央の上下に、凹溝形状のノッチ51、52が上下対称に設けられている。図1の光ケーブルは、シース材5が厚み2mm、幅3.2mmに形成されている。
【0017】
光ケーブル1の二本のロッド型テンションメンバ31、32は、それぞれ光ファイバ21、22の外側の位置に、光ファイバ21、22に沿って配置されている。また繊維型テンションメンバ4は二本の光ファイバの周囲を覆うように設けられている。
【0018】
ロッド型テンションメンバ31、32は、温度変化によりシース材5が収縮することで光ファイバ21、22が蛇行して電線特性が低下するのを防止するために設けられている。ロッド型テンションメンバ31、32は、高弾性のロッドを用いることができる。ロッド型テンションメンバとしては例えばFRP(繊維強化プラスチック)のロッド、或いは鋼線等が挙げられる。またロッド型テンションメンバの太さ、数、配置等は、光ケーブルの断面の形状や大きさ等に応じて、適宜、選択することができる。例えば図1に示す寸法の光ケーブル1の場合、ロッド型テンションメンバとして、0.5mmのFRPロッド、0.4mmの鋼線等を用いることができる。
【0019】
抗張力繊維からなる繊維型テンションメンバ4は、光ケーブル1を光ケーブルコネクタ(図示せず)等に固定する際に、該光ケーブルコネクタ等の固定先における把持力を十分確保するために用いられる。繊維型テンションメンバ4として、例えばケブラー(デュポン社の登録商標)等のアラミド繊維、ザイロン(東洋紡績社の登録商標)等のポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維(PBO繊維)等が挙げられる。
【0020】
繊維型テンションメンバの繊度は、2000dtex以上が好ましく、更に好ましくは3000dtex以上である。繊度が高くなると、光ケーブルコネクタ等に固定する際の把持力が高くなる。例えば図1に示す寸法の光ケーブルの場合、繊維型テンションメンバとしては、3800dtexのアラミド繊維、3330dtexのPBO繊維等を用いることができる。
【0021】
シース材5は、通常の電線被覆材料を用いることができる。シース材5として例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンや、ポリ塩化ビニル樹脂等が挙げられる。シース材5には、樹脂成分以外に酸化防止剤、老化防止剤、充填剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0022】
光ファイバ21、22は、コアと、コアよりも低い屈折率を有しコアの外周を覆うクラッドを備える。光ファイバ21、22は、例えば、石英ガラス等のガラスファイバを用いることができる。ガラスファイバは、コアとクラッドの両方が石英ガラスを用いたものであってもよいし、コアのみを石英ガラスとし、クラッドにプラスチックを用いたものであっても、いずれでもよい。また光ファイバ21、22はガラスファイバの外側が紫外線硬化型樹脂等により被覆されていてもよい。
【0023】
光ケーブル1が室外で使用される場合、実際の使用状況を考慮すると100N以上の把持力で固定されるのが好ましい。光ケーブルを光ケーブルコネクタに固定する場合、抗張力繊維からなる繊維型テンションメンバを用いて光ケーブルコネクタに把持することで、100N以上の把持力で固定することができる。
【0024】
図2は本発明の光ケーブルの他の例を示す断面図である。図2に示す光ケーブル1は、シース材の断面形状を円形に形成したものである。図2の光ケーブル1は、中央に二本の光ファイバ21、22が設けられ、その周囲が繊維型テンションメンバ4で覆われ、該繊維型テンションメンバ4の外側に等間隔に4本のロッド型テンションメンバ3a、3b、3c、3dが配置されて構成されている。図2の光ケーブルの断面のサイズは、3.0mm径に形成されている。図2の光ケーブル1は、ロッド型テンションメンバとして、0.35mmのFRPを4本、或いは0.3mmの鋼線を4本用いることができる。
【0025】
本発明の光ケーブルは、シース材の形状、光ファイバ(心線)の数、ロッド型テンションメンバの数等は、図1及び図2に示す態様に特に限定されず、適宜変更することが可能である。
【0026】
本発明の光ケーブル1を用いて光ケーブルコネクタに固定する際、繊維型テンションメンバの上から光ケーブルコネクタの固定部材をかしめることで、100N以上の固着力を得ることができる。
【0027】
本発明の光ケーブルは、車載用等の低温から高温までの幅広い温度範囲の環境で使用される用途に最適に用いることができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例、比較例を示す。[実施例1] 2本の光ファイバ、該光ファイバの周囲を覆う3800dtexのアラミド繊維、0.5mm径の2本のFRPロッドを光ファイバの外側に配置し、難燃ポリエチレンからなるシース材を押し出し成形して、厚み2mm、幅3.2mmの図1に示す断面形状を有する実施例1の光ケーブルを得た。
【0029】
[比較例1] 実施例1の光ケーブルのテンションメンバを、ロッド型テンションメンバのみ用いて、繊維型テンションメンバを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして作製して比較例1の光ケーブルを得た。
【0030】
[比較例2] 実施例1の光ケーブルのテンションメンバを、繊維型テンションメンバのみを用いてロッド型テンションメンバを使用しなかった以外は実施例1と同様にして作製して比較例2の光ケーブルを得た。
【0031】
[温度評価]下記の方法で実施例、比較例の光ケーブルの温度評価を行った。光ケーブルを温度調節可能な恒温槽の内部に入れ、下記の条件(A)、(B)の環境とした後、伝送特性を測定し評価した。その結果を表1に示す。試験条件(A):−10℃4時間放置した後恒温槽を+60℃まで昇温し4時間放置するのを1サイクルとし、このサイクルを3回繰り返した。試験条件(B):−40℃4時間放置した後恒温槽を+120℃まで昇温し4時間放置するのを1サイクルとし、このサイクルを3回繰り返した。
【0032】
尚、伝送特性の試験方法と評価は以下の通りである。[伝送特性の試験方法] 片端を端子圧着した光ケーブルについて、ケーブル内の光ファイバへ入射した光源からの光信号を逆端側でパワーメータにて受光し信号損失を測定する。試験の結果、試験中に伝送特性が最大5dB/km以内であった場合を○とし、試験中に伝送特性が最大5dB/kmを超えた場合を×とした。
【0033】
[把持力評価]下記の方法で実施例、比較例の光ケーブルの把持力評価を行った。実施例1、比較例1〜2の光ケーブルの端末を皮むきし、アラミド繊維の外側に、光ケーブルコネクタの取付け部品をかしめて、光ケーブルを光ケーブルコネクタに把持して試験用光ケーブルを作製した。この試験用光ケーブルを用いて把持力を測定し評価した。その結果を表1に示す。 尚、把持力の試験方法と評価は以下の通りである。
【0034】
[把持力の試験方法] 片端を端子圧着した光ケーブルを、端子より小さい穴が空いた目板に通し、目板と光ケーブルを引張った際の力をロードセルで測定し最大値を把持力とする。把持力が100N以上の場合を○とし、把持力が100N未満の場合を×とした。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示すように実施例1の光ケーブルは、条件(A)及び条件(B)のいずれの環境であっても、伝送特性が良好で、且つ把持力も良好であった。これに対しロッド型テンションメンバのみを用いた比較例1の光ケーブルは、条件(A)及び条件(B)のいずれの場合も、伝送特性が良好であったが、把持力が不良であった。また繊維型テンションメンバのみを用いた比較例2は、温度条件が+60℃の条件(A)の場合の伝送特性及び把持力はいずれも良好であったが、温度条件の厳しい条件(B)の場合に伝送特性が不良であった。
【符号の説明】
【0037】
1 光ケーブル
21、22 光ファイバ
3a、3b、3c、3d、31、32 ロッド型テンションメンバ
4 繊維型テンションメンバ
5 シース材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ及びテンションメンバがシース材に覆われている光ケーブルにおいて、前記テンションメンバがロッド型テンションメンバ及び繊維型テンションメンバを有することを特徴とする光ケーブル。
【請求項2】
前記ロッド型テンションメンバが鋼線又は/及びFRPからなることを特徴とする請求項1記載の光ケーブル。
【請求項3】
前記繊維型テンションメンバがアラミド繊維又は/及びポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維からなることを特徴とする請求項1又は2記載の光ケーブル。
【請求項4】
前記繊維型テンションメンバの繊度が2000dtex以上であることを特徴とする請求項3記載の光ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−2912(P2012−2912A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135971(P2010−135971)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】