説明

光コネクタプラグ

【課題】シャッタ保持部材をプラグフレームに対して軸方向前方へ付勢するコイルばねを内蔵するとともに、全長を短く抑えた光コネクタプラグを提供する。
【解決手段】光コネクタプラグ10では、ハウジング20が軸方向へ相対移動可能なツマミ部材21とシャッタ保持部材22とで構成され、ツマミ部材21がシャッタ保持部材22の軸方向後方へ移動した伸長状態と、ツマミ部材21がシャッタ保持部材22の軸方向前方へ移動した縮小状態とを有する。シャッタ保持部材22には、シャッタ部材70が設けられ、ハウジング20の内部には、シャッタ保持部材22をプラグフレーム30に対して軸方向前方へ付勢する付勢手段90が設けられている。付勢手段90の軸方向後方には、プラグフレーム30と連接している付勢手段受け部材95が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの先端を保持し、光ファイバどうしを光接続させる光コネクタプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光通信に利用される光ファイバどうしの光接続は、光コネクタを用いて行われている。光コネクタは、光ファイバの先端を保持した光コネクタプラグと、光コネクタプラグどうしを固定して光ファイバの光接続を行う光コネクタアダプタとから形成される。
【0003】
このような光コネクタとしては、光ファイバを保持するフェルール用筒状体(外径2.5mm)を用いて光接続を行うSC形光コネクタ(日本工業規格F04形と同じ)、または、光ファイバを保持するフェルール用筒状体(外径1.25mm)を用いることによって小型化されたMU形光コネクタ(日本工業規格F14形と同じ)等がある。
【0004】
なお、近年、電話局から各家庭までの加入者線を結ぶアクセス網を光ファイバ化し、高速な通信環境を構築するFTTH(Fiber To The Home)が普及している。光ファイバ通信の通信光には、一般的に波長1.3〜1.55μmの赤外線レーザ光が使われており、その光出力は増加する傾向にある。
【0005】
高出力化された通信光が光ファイバ先端から出射されることにより、人体、特に目などの局部に当たると、悪影響を及ぼす危険性がある。特に、FTTHの普及により家庭内に引き込まれる光ファイバの先端を保持した光コネクタプラグには、高い安全性が求められている。
【0006】
このような要求から、光ファイバの先端面を遮蔽するシャッタを内蔵した光コネクタプラグの構造が開示されている(例えば、下記先行技術文献を参照)。このようなシャッタを内蔵した光コネクタプラグは、光コネクタアダプタ110に挿入することによってシャッタが開き、光ファイバ先端が露出し、光コネクタアダプタ110に結合するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−292777号公報(第24頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の段落「0163」には、「外筒(ツマミ部材)の保持孔の後端部側には、内筒(シャッタ保持部材)を先端部側に付勢するコイルばね等の内筒(シャッタ保持部材)付勢手段を設けている。この内筒(シャッタ保持部材)付勢手段によって、光コネクタアダプタから光コネクタプラグを引き抜いた際、つまみ部材(ハウジング)を伸長状態にすることによって、光コネクタプラグが、光コネクタアダプタに接続されていない単体の状態でも誤って縮小状態となるのを防止し、さらに安全性を高めることができる。」との記載がある。
【0009】
例えば、特許文献1の図23にある光コネクタプラグの内部に内筒(シャッタ保持部材)付勢手段を設ける場合、内筒(シャッタ保持部材)とプラグフレームおよびストップリングとの間の限られたスペースに、コイルの巻き外径が1mm程度の細径のコイルばねを内蔵することが考えられる。しかし、このようなコイルばねは所望のばね力とストロークを得ることは困難であり、内筒(シャッタ保持部材)を十分に付勢することができない。
【0010】
一方、光コネクタプラグの内筒(シャッタ保持部材)の後方に、ストップリングを内包するような大きなコイルばねを設けようとした場合、所望のばね力とストロークを容易に得られる。しかし、コイルばねを内蔵するためには光コネクタプラグの全長を長くしなければならなくなり、従来と同様な空間内で光コネクタプラグを係合することに支障が生じるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための本発明の前提は、軸方向へ延びる少なくとも1本の光ファイバ15を有するフェルール40を保持したプラグフレーム30と、プラグフレーム30を内部に保持するハウジング20とを備え、ハウジング20が軸方向へ相対移動が可能なツマミ部材21とシャッタ保持部材22とから形成され、シャッタ保持部材22が軸方向前方に位置する先端部71と軸方向後方に位置してシャッタ保持部材22に保持された基端部72とを有するシャッタ部材70を備え、プラグフレーム30が、ツマミ部材21と所定量の軸方向への移動量を許された状態で連動しつつ、シャッタ保持部材22に対して軸方向に相対移動可能であり、かつ、ツマミ部材21がシャッタ保持部材22の軸方向後方へ移動した伸長状態と、ツマミ部材21がシャッタ保持部材22の軸方向前方へ移動した縮小状態とを有し、ハウジング20が、縮小状態において光コネクタアダプタ110に結合する形状を有するとともに、プラグフレーム30の先端部の側の外周に設けられた結合凹部35が光コネクタアダプタ110の結合爪135に結合して光接続状態になるプッシュオン締結方式の光コネクタプラグである。
【0012】
前記前提における本発明の光コネクタプラグの特徴は、シャッタ保持部材22をプラグフレーム30に対して軸方向前方へ付勢する付勢手段90がハウジング20の内部に設置され、プラグフレーム30と連接している付勢手段受け部材95が付勢手段90の軸方向後方に配置され、光コネクタプラグの光非接続状態では、付勢手段90によってツマミ部材21がシャッタ保持部材22の軸方向後方へ移動した前記伸長状態が維持されることにある。
【0013】
本発明にかかる光コネクタプラグの一例としては、付勢手段90が軸方向へ延びるコイルばねである。
【0014】
本発明にかかる光コネクタプラグの他の一例としては、コイルばねが光ファイバコードの外径よりも大きな内径を有する。
【0015】
本発明にかかる光コネクタプラグの他の一例としては、付勢手段受け部材95が光ファイバコードの外径よりも大きな内径を有する。
【0016】
本発明にかかる光コネクタプラグの他の一例としては、付勢手段受け部材95が軸方向前方と後方とへ所定の移動量を許された状態でツマミ部材21に係合している。
【0017】
本発明にかかる光コネクタプラグの他の一例としては、付勢手段受け部材95が、所定長さを有して軸方向へ延びる付勢手段第1支持部154と、付勢手段第1支持部154の周り方向外方に位置して軸方向へ延びる付勢手段第2支持部155とを有し、コイルばねが、付勢手段第1支持部154の外周面の外側に位置するとともに、付勢手段第2支持部155の内周面の内側に位置している。
【0018】
本発明にかかる光コネクタプラグの他の一例としては、コイルばねが付勢手段第1支持部154の外径よりもわずかに大きい内径を有し、コイルばねの後端部が付勢手段第1支持部154の外周面と付勢手段第2支持部155の内周面とに挟まれた状態で付勢手段受け部材95に支持されている。
【0019】
本発明にかかる光コネクタプラグの他の一例として、光コネクタプラグでは、付勢手段受け部材95と付勢手段受け部材95の軸方向後方へ延びるブーツ59とが一体成形され、付勢手段受け部材95とブーツ59とが一繋がりになっている。
【0020】
本発明にかかる光コネクタプラグの他の一例としては、光コネクタプラグが縮小状態においてSC形光コネクタアダプタに結合される形状を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明光にかかる光コネクタプラグによれば、付勢手段と付勢手段受け部とを光ファイバコードの上に位置させた状態で、光コネクタプラグの組み立て作業を進めることが可能であり、組み立て作業の最後に付勢手段と付勢手段受け部とをハウジング内に挿入することができる。これにより、付勢手段と付勢手段受け部とを、ストップリングやカシメリング、ブーツといった部品の外側に重ねて配置することができ、全長を極力短く抑えた光コネクタプラグを提供することができる。また、光コネクタプラグの光非接続状態において、付勢手段によってツマミ部材がシャッタ保持部材22の軸方向後方へ移動した伸長状態が維持されるから、光非接続状態におけるツマミ部材の伸長状態から縮小状態への不用意な移動を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例に係る光コネクタプラグの斜視図である。
【図2】本発明の実施例に係る光コネクタプラグの正面図および要部断面図である。
【図3】本発明の実施例に係る光コネクタプラグの正面図および要部断面図である。
【図4】本発明の実施例に係る光コネクタプラグの分解斜視図である。
【図5】本発明の実施例に係る光コネクタアダプタの一部を切り欠いた分解斜視図である。
【図6】本発明の実施例に係る光コネクタプラグと光コネクタアダプタとの結合動作を示す断面図である。
【図7】本発明の実施例に係る光コネクタプラグと光コネクタアダプタとの結合動作を示す断面図である。
【図8】本発明の実施例に係る光コネクタプラグの正面図および要部断面図である。
【図9】本発明の実施例に係る光コネクタプラグの正面図および要部断面図である。
【図10】本発明の実施例に係る光コネクタプラグの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の実施例にかかる光コネクタプラグ10の斜視図であり、図2および図3は、光コネクタプラグ10の正面図と、そのA−A′断面図と、そのB−B′断面図とである。図4は、光コネクタプラグ10の分解斜視図である。
【0025】
本実施形態の光コネクタプラグ10は、図1〜4に示すように、後述するSC形光コネクタアダプタに結合できる形状を有している。光コネクタプラグ10は、ハウジング20と、ハウジング20内に軸方向(軸方向前方および軸方向後方向)へ移動可能に保持されたプラグフレーム30と、光接続を行う光ファイバ15を保持するとともにプラグフレーム30の後方から挿入されるフェルール40と、先端部がプラグフレーム30の後端部と係合するストップリング50と、フェルール40とストップリング50との間に保持されてフェルール40を軸方向前方に向かって付勢するばね60とを備えている。
【0026】
フェルール40は、図2に示すように、外径が2.499mmで形成されたフェルール用筒状体41と、フェルール用筒状体41の一端部に嵌合されたつば部材42とから構成されている。
【0027】
フェルール用筒状体41は、略円筒形状を有する。フェルール用筒状体41の内部には、軸方向へ貫通して光ファイバ15を挿入保持する光ファイバ挿入孔41aが設けられている。この光ファイバ挿入孔41aの後端部には、内径が開口側に向かって漸大するテーパ部41bが設けられている。テーパ部41bを設けることにより、光ファイバ挿入孔41aに光ファイバ15を挿入した際、光ファイバ15の先端がフェルール用筒状体41の端面に接触することで欠けたり、折れたりするのを防止することができる。
【0028】
なお、このようなフェルール用筒状体41の材質としては、例えば、ジルコニア等のセラミックス材料、プラスチック材料および結晶化ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英等のガラス材料等を挙げることができる。本実施例では、フェルール用筒状態41をジルコニアで形成した。また、本実施例では、フェルール用筒状体41の外径を2.499mmとした。
【0029】
また、フェルール用筒状体41の後端部に嵌合するつば部材42には、軸方向にわたって光ファイバ15の外周に被覆を施した光ファイバ心線16を挿入保持する光ファイバ心線挿入孔42aと、外周の円周方向にわたって半径方向に所定量突出するように設けられたつば部43とが設けられている。
【0030】
つば部43の外周には、図4に示すように、円周方向に90度の間隔で2箇所ないしは4箇所のキー溝44が設けられている。キー溝44は、軸方向にわたって同等の幅を有する。フェルール40は、キー溝44がプラグフレーム30のキー溝用突部32aに係合することで、プラグフレーム30に対して軸を中心とした回転方向の移動が規制されている。
【0031】
なお、このようなキー溝44の数、位置、深さおよび形状等に特に限定はなく、フェルール40を位置決めさせるプラグフレーム30に応じて適宜決定することができる。
【0032】
また、つば部材42の材質に特に限定はなく、例えば、ステンレス鋼、真鍮、鉄等の金属材料やプラスチック等の樹脂材料等を使用することができる。本実施例では、つば部材42をステンレス鋼で形成した。
【0033】
プラグフレーム30は、図2に示すように、中空の四角柱形状を有している。プラグフレーム30には、軸方向にわたって貫通したフェルール40およびばね60を挿入可能なフェルール挿入孔31が設けられている。フェルール挿入孔31には、フェルール用筒状体41の先端部のみを突出させるように、フェルール突出孔32が設けられている。フェルール突出孔32は、フェルール用筒状体41の外径よりも大径、かつ、つば部43よりも小径の内径を有する。
【0034】
フェルール挿入孔31内には、フェルール40のキー溝44と係合する2つのキー溝用突部32aが半径方向内側に突出するように設けられている。フェルール40は、キー溝用突部32aがフェルール40のキー溝44に係合することで、プラグフレーム30に対して軸を中心とした回転方向の移動が規制されるとともに、軸方向へ移動可能に保持されている。
【0035】
さらに、プラグフレーム30の外周の対向する2面には、図2(b),(c)に示すように、フェルール挿入孔31と連通して外周に開口する係合孔33がそれぞれ形成されている。ストップリング50の外周に設けられた係合突起54が係合孔33に係合することで、プラグフレーム30とストップリング50とが係合している。
【0036】
また、プラグフレーム30の係合孔33が設けられた面とは交差する2面には、図4に示すように、後端部から軸方向に向かって所定長さで切り欠けられた切り欠き部34が設けられている。この切り欠き部34は、プラグフレーム30の後端部にストップリング50を係合させる際、プラグフレーム30を外側に開くように弾性変形させ易くするものである。
【0037】
さらに、プラグフレーム30の外周の対向する2面における軸方向中央には、プラグフレーム30の外面から径方向内方へ凹む1対の結合凹部35が設けられている。プラグフレーム30の結合凹部35は、光コネクタアダプタ110の結合爪135の先端に設けられた係止爪135aと結合することで、光コネクタアダプタ110と光コネクタプラグ10とを結合させるものである。
【0038】
このようなプラグフレーム30の後端部に係合するストップリング50は、図2に示すように、光ファイバ心線を挿通可能な貫通した光ファイバ心線挿通孔51を有する円筒形状の金属材料またはプラスチック等の樹脂材料で形成されている。この光ファイバ心線挿通孔51の先端側には、ばね60を挿入可能な連通孔52が設けられている。光ファイバ心線挿通孔51と連通孔52との内径差によって段差部53が設けられている。
【0039】
この連通孔52にばね60が保持され、保持されたばね60にフェルール40のつば部材42の後端部側が挿入されるようになっている。そして、ばね60の一端がつば部43の後端面に当接するとともに、他端がストップリング50の段差部53に当接することで、フェルール40がプラグフレーム30に対して前方に付勢された状態で保持される。このとき、フェルール40は、つば部43の先端面がフェルール突出孔32に当接することで、前方への移動が規制された状態で付勢保持されている。
【0040】
また、フェルール40は、上述のように、つば部43のキー溝44がフェルール挿入孔31のキー溝用突部32aに係合することで、軸を中心とした回転方向の移動が規制されるとともに、軸方向に移動可能に保持されている。このため、フェルール40は、プラグフレーム30に対して回転方向の移動が規制された状態で後方に移動可能に付勢保持されている。
【0041】
ストップリング50の前方外周には、プラグフレーム30の係合孔33内に突出する2つの係合突起54が相対向する位置に設けられている。この係合突起54は、先端に向かって外径が漸小するテーパ状の外周面を有する。係合突起54は、プラグフレーム30の後方からストップリング50を挿入した際、プラグフレーム30の後端部を外側に押し広げていき、プラグフレーム30の係合孔33に係合する。
【0042】
さらに、ストップリング50の後端部側には、カシメリング57が固定されている。このカシメリング57は、ストップリング50とカシメリング57との間で、光ファイバコード19の抗張力体17が挟まれた状態で、ストップリング50の後端部に圧着固定されている。抗張力体17は、一般に、光ファイバ15の外周に被覆を施した光ファイバ心線16の外周であって、外被18の内側の空間内に配置されている。
【0043】
また、カシメリング57の後端部には、リング58が固定されている。このリング58は、カシメリング57とリング58との間において、光ファイバコード19の外被18が挟まれた状態で、カシメリング57の後端部に圧着されて固定されている。光ファイバコード19は、ストップリング50、カシメリング57およびリング58によって、光コネクタプラグ10に固定されている。
【0044】
また、ストップリング50の後方には、内部にカシメリング57およびリング58を内包したブーツ59が嵌合している。ブーツ59の内部には、光ファイバコード19が挿通されている。ブーツ59は、ゴム、エラストマ等の弾性材料や、プラスチック等の樹脂材料で形成されている。
【0045】
一方、図2および図3に示すように、ハウジング20は、中空の四角柱形状を有するツマミ部材21と、ツマミ部材21内に軸方向前後に移動可能に収納された中空の四角柱形状を有するシャッタ保持部材22とで構成されている。ハウジング20は、図3に示すように、シャッタ保持部材22がツマミ部材21内に収納される縮小状態と、図2に示すように、シャッタ保持部材22が前方へ突出した伸長状態とを有する。
【0046】
図2および図3に示すように、ツマミ部材21には、その内部に付勢手段受け部材95が保持される保持孔23が設けられている。この保持孔23内に付勢手段受け部材95がツマミ部材21に対して所定量移動可能となるように係合保持されている。より詳しくは、保持孔23内の後端側には付勢手段受け部材95の外周に設けられた係合凸部96が係合する係合窓24が設けられており、付勢手段受け部材95の係合凸部96の後方面が係合窓24の後方面に当接することによって、付勢手段受け部材95の後方への移動が規制されている。さらに、付勢手段受け部材95の当接面97が保持孔23の内面にある当接段差23aに当接することによって、付勢手段受け部材95の前方への移動が規制されている。付勢手段受け部材95は、ストップリング50を介してプラグフレーム30に連結されている。プラグフレーム30がツマミ部材21に対して許される前後移動量は、付勢手段受け部材95がツマミ部材21に対して許される前後移動量と同等量である。
【0047】
付勢手段受け部材95は、所定長さを有して軸方向へ延びる略円柱状の付勢手段第1支持部154と、付勢手段第1支持部154の周り方向外方に位置して軸方向へ延びる付勢手段第2支持部155とを有する。付勢手段受け部材95では、付勢手段第1支持部154と付勢手段第2支持部155とがツマミ部材21の保持孔23に挿入されている。付勢手段第1支持部154には、ブーツ59の前端部が着脱可能に挿入されている。
【0048】
図2および図3に示すように、ツマミ部材21の内部における付勢手段受け部材95とシャッタ保持部材22との間には、付勢手段90が設けられている。付勢手段90は、シャッタ保持部材22を前方に押し出す方向に付勢している。付勢手段90は、ステンレス鋼やピアノ線などの金属材料から作られた軸方向へ延びるコイルばねで構成されている。本実施例では、ステンレス鋼製のコイルばねを使用した。付勢手段90がシャッタ保持部材22を前方に押し出すばね力は、光コネクタプラグ10の光コネクタアダプタ110への挿入に支障ない大きさに抑えるとともに、確実にシャッタ保持部材22を押し出してハウジング20を伸長状態にするために十分な大きさとしている。具体的には、0.5〜4Nの範囲としている。
【0049】
付勢手段90であるコイルばねは、付勢手段受け部材95の付勢手段第1支持部154の外周面の外側に位置するとともに、付勢手段第2支持部155の内周面の内側に位置している。換言すると、コイルばねが付勢手段第1支持部154と付勢手段第2支持部155との間に挟まれた状態で付勢手段受け部材95に支持されている。これにより、ツマミ部材21の保持孔23からのコイルばねの不用意な脱落を防止することができる。付勢手段90であるコイルばねは、その内径が付勢手段第1支持部154の外径よりもわずかに大きい。
【0050】
また、付勢手段90および付勢手段受け部材95は、カシメリング57および光ファイバコード19の外径よりも大きな内径を有している。付勢手段90および付勢手段受け部材95は、カシメリング57の外周に重ねて配置されている。本実施例における付勢手段90は、コイル内径をφ7.0以上、φ7.4以下のコイルばねとしている。
【0051】
これにより、光コネクタプラグ10を組立てる際には、ストップリング50の後端部側に光ファイバコード19の抗張力体17を挟んでカシメリング57を圧着固定させた後、後方の光ファイバコード19上に通しておいた付勢手段90および付勢手段受け部材95を前方に移動させ、付勢手段受け部材95をストップリング50に連結するとともに、ツマミ部材21と係合させることができる。
【0052】
図3(b)および図4に示すように、ツマミ部材21のプラグフレーム30の結合凹部35に対向する領域には、結合凹部35を外部に露出させる第1の露出孔25が設けられている。第1の露出孔25が外部に開口する側の側面には、ツマミ部材21の後端部側に向かって傾斜した結合解除部25aが設けられている。この結合解除部25aは、光コネクタアダプタ110の結合爪135とプラグフレーム30の結合凹部35とを結合させた状態から、ツマミ部材21を持って引き抜こうとする動作による後方への移動によって、結合爪135を押し広げて結合爪135と結合凹部35との結合を解除するものである。
【0053】
図1および図2(b)に示すように、ツマミ部材21の第1の露出孔25が設けられていない対向する面の一方側の外周には、光コネクタプラグ10を光コネクタアダプタ110に接続した際、光コネクタアダプタ110に対して軸を中心とした回転方向の位置決めを行う突出したキー26が設けられている。シャッタ保持部材22の外周におけるツマミ部材21のキー26と同じ方向の面には、キー26が設けられた面と同方向であることを認識しやすくするために、表示部28を設けている。
【0054】
図2および図4に示すように、ツマミ部材21の内部に軸方向前後に移動可能に設けられたシャッタ保持部材22には、軸方向にわたってプラグフレーム30が前後移動される挿通孔22aが設けられている。シャッタ保持部材22の後端部側の外周面には、突出した抜け防止突部22bが設けられている。この抜け防止突部22bは、ツマミ部材21の内面に設けられた段差部105に当接することで、引き抜く方向の移動を規制している。なお、抜け防止突部22bは、シャッタ保持部材22の後方に向かって厚さが漸小するテーパ状に形成されている。ツマミ部材21とシャッタ保持部材22とを組み立てる際には、ツマミ部材21にシャッタ保持部材22を挿入することで、抜け防止突部22bがツマミ部材21の段差部105を乗り超えて収納され、シャッタ保持部材22がツマミ部材21から抜け出ることを防止している。
【0055】
光コネクタプラグ10と光コネクタアダプタ110との結合を外すことができれば、特に限定はないが、例えば、SC形光コネクタアダプタ110を用いた場合においてプラグフレーム30は、ツマミ部材21に対して軸方向(前後方向)へ約2mm移動できるようにすればよい。
【0056】
シャッタ保持部材22の先端部側には、ハウジング20が縮小状態となった際、ツマミ部材21の第1の露出孔25と連通してプラグフレーム30の結合凹部35を外部に露出させる第2の露出孔29が設けられている。すなわち、ハウジング20は、シャッタ保持部材22がツマミ部材21に収納された縮小状態で、プラグフレーム30の結合凹部35が第1および第2の露出孔25、29によって露出され、光コネクタアダプタ110の結合爪135と結合されるようになっている。
【0057】
シャッタ保持部材22の先端部側には、光コネクタアダプタ110の係合爪135が引っ掛かることなく通過できるような結合爪通過部27が形成されている。これにより、光コネクタプラグ10を光コネクタアダプタ110へ挿入していく際、シャッタ保持部材22が結合爪135に当接することがなく、光コネクタアダプタ110の中心部まで進入することができる。
【0058】
シャッタ保持部材22には、挿通孔22aの一方面22cに基端部72を介して傾斜または変形可能に保持されたシャッタ部材70が設けられている。
【0059】
シャッタ部材70は、挿通孔22aをほぼ塞ぐような形状を有する板状部材から形成されている。シャッタ部材70は、その基端部72が第2の露出孔29が設けられていない相対向する2面の一方である一方面22cに保持されている。シャッタ部材70の先端部71は、基端部72が保持されている一方面22cとは反対の他方面22dに向かって傾斜または変形するように設けられている。シャッタ部材70の先端部71は、基端部72が保持されている一方面22cに向かって移動したときに、基端部72よりもハウジング20の前方に位置するように設けられている。シャッタ部材70は、先端部71が他方面22dの側に傾斜または変形した際、所定の傾斜角度で先端部71が他方面22dに当接するような長さを有する。
【0060】
シャッタ部材70は、その先端部71が挿通孔22aの他方面22dに当接することによって挿通孔22aを塞ぐ。シャッタ部材70は、先端部71が一方面22cに向かって移動することによって、プラグフレーム30の移動を許容し、フェルール40の先端面を前方に露出させる。シャッタ部材70は、フェルール40の先端面を遮蔽する遮蔽位置と、フェルール40の先端面を前方に露出させる非遮蔽位置との間において、傾斜または変形するようになっている。
【0061】
シャッタ部材70は、遮蔽位置でフェルール40およびプラグフレーム30に干渉しない位置に設けられている。さらに、光コネクタプラグ10を光コネクタアダプタ110に接続する際、後述する光コネクタアダプタ110の第1の保持部132(保持部)や第2の保持部145(保持部)、結合爪135等の部材に接触してシャッタ部材70が変形や破壊されないように設けられている。
【0062】
光コネクタアダプタ110と結合した非遮蔽位置では、図3に示すように、シャッタ部材70の先端部71がプラグフレーム30の結合凹部35よりも軸方向後方に位置するように設けられている。これは、光コネクタアダプタ110の保持部132や第2の保持部145が、結合爪135の係止爪135aよりも光コネクタアダプタ110の中心側(光コネクタプラグ10の軸方向前方の側)に位置ことによる。
【0063】
それによって、シャッタ保持部材22が光コネクタアダプタ110の中心部まで進入した状態で、シャッタ部材70が遮蔽位置と非遮蔽位置との間で傾斜または変形したとしても、シャッタ部材70が変形や破損することはない。
【0064】
シャッタ部材70の材料は、耐久性がある材料であれば、特に限定はないが、例えば、ステンレス鋼等の金属材料を挙げることができる。本実施例では、シャッタ部材70としてばね弾性を有するステンレス鋼を使用している。本実施例では、プラグフレーム30が軸方向後方へ移動してハウジング20が伸長状態になったときに、シャッタ部材70自身が有するばね弾性によって先端部71が他方面22dの側へ付勢され、非遮蔽位置に移動する。
【0065】
なお、シャッタ部材70は、フェルール40の先端面を遮蔽する手段と、先端部71を他方面22dの側へ付勢する手段とで構成してもよい。例えば、基端部72が一方面22cに傾斜回転可能に保持され、先端部71が他方面22dへ当接するまで傾斜可能なシャッタ板と、一方面22c上に設けられ、シャッタ板70の先端部71を他方面22dに向かって付勢するトーションばねとから構成してもよい。
【0066】
本実施例では、シャッタ部材70が非遮蔽位置となった際、シャッタ部材70がプラグフレーム30に当接してプラグフレーム30の移動を規制しないように、シャッタ部材70を収容する収容部22eがシャッタ保持部材22の挿通孔22aの一方面22cに設けられている。
【0067】
このような構成の光コネクタプラグ10は、図2に示すように、ハウジング20が伸長状態となることで、シャッタ部材70が遮蔽位置まで傾斜または変形する。それにより、シャッタ部材70は、フェルール40の先端面を遮蔽し、光が光コネクタプラグ10の先端から出射されないようにしている。
【0068】
また、図3に示すように、ハウジング20を縮小状態とすることで、プラグフレーム30の先端縁部39がシャッタ部材70を倒していき、シャッタ部材70が収容部22e内に収容され、非遮蔽位置まで傾斜または変形する。それにより、シャッタ部材70は、フェルール40の先端面を遮蔽することなく、光ファイバ15どうしが光接続可能な状態となる。そして、ハウジング20の伸長状態および縮小状態は、ツマミ部材21を持って光コネクタアダプタ110に着脱することのよって変化させることができる。
【0069】
ここで、本実施例の光コネクタプラグ10が接続される光コネクタアダプタ110について説明する。なお、図5は、光コネクタアダプタ110の一部を切り欠いた分解斜視図である。
【0070】
図5に示すように、本発明に光コネクタプラグ10が接続される光コネクタアダプタ110はSC形であり、光接続用スリーブ120と保持部材150とを備えている。保持部材150は、光接続用スリーブ120を内部に挟持するスリーブホルダ130と外郭部材140とから形成されている。
【0071】
光接続用スリーブ120は、金属またはセラミックで形成された円筒形状を有し、軸方向にわたって貫通したスリット121が設けられている。光接続用スリーブ120は、光ファイバを保持する光コネクタプラグ10のフェルール用筒状体41の外径よりも若干小さな内径を有する。光接続用スリーブ120は、スリット121によって弾性変形することにより、フェルール用筒状体41を内面に密着させて保持し、対向接続させるようになっている。本実施例では、フェルール用筒状体41が2.499mmであるため、例えば、光接続用スリーブ120の内径をφ2.495、外径をφ3.0〜3.2mmとなるようにした。
【0072】
この光接続用スリーブ120を保持する保持部材150であるスリーブホルダ130は、光接続用スリーブ120の一端側を保持する第1の貫通孔131が設けられた円筒形状を有する第1の保持部132を備えている。第1の保持部132の長手方向一端には、光接続用スリーブ120の一端部を係止する第1のストッパ突起133が径方向内側に突出して設けられている。
【0073】
第1の保持部132の第1のストッパ突起133とは反対側の他端部の外周には、矩形状の第1のフランジ部134が設けられている。
【0074】
第1のフランジ部134の両短辺側には、第1の保持部132を中心に挟むように一対の係止爪135が設けられているとともに、後述する外郭部材140の第2の保持部145を中心に挟むようにもう一対の結合爪135が設けられている。結合爪135の先端には、係止爪135aが対向するようにそれぞれ一対ずつ設けられている。それら結合爪135は、光コネクタプラグ10のプラグフレーム30の結合凹部35に結合し、光コネクタプラグ10と光コネクタアダプタ110との結合を行うためのものである。また、第1のフランジ部134の短辺側端部には、それぞれ一対の係止突起137が設けられている。
【0075】
一方、保持部材150の外郭部材140は、スリーブホルダ130を内部に保持する貫通孔である貫通部141を有する。貫通部141の両短辺側には、スリーブホルダ130の第1のフランジ部134の端部と嵌合する溝部143が設けられている。また、貫通部141内の軸方向中央部から第1のフランジ部134の挿入方向とは反対側には、第1のフランジ部134と面どうしを当接させる第2のフランジ部144と、円筒形状を有する第2の保持部145とが設けられている。第2の保持部145は、第2のフランジ部144から軸方向に延設されて第1の貫通孔131と連通している。第2の保持部145には、光接続用スリーブ120の他端部側を保持する第2の貫通孔142が設けられている。第2の保持部145の端部には、光接続用スリーブ120の端部を係止する第2のストッパ突起146が径方向内側に突設されている。
【0076】
一方、外郭部材140の両短辺側外周面の軸方向中央部には、固定用フランジ148が設けられている。固定用フランジ148には、ハウジング140をパネル等(図示せず)にねじ止め固定するための固定溝148aが設けられている。また、ハウジング140の軸方向の一方側の相対向する短辺側の側面およびこれらの間の表面には、それぞれを連続するプレート用凹部149が形成されている。このプレート用凹部149には、金属製の係合爪152を有するコ字状のプレート153が嵌合するようになっている。
【0077】
以上説明した本実施例の光コネクタアダプタ110を組み立てる手順は、以下のとおりである。光接続用スリーブ120を第1の保持部132と第2の保持部145との間に挟み、スリーブホルダ130を外郭部材140内に挿入し、外郭部材140に係止ピン151を腕部151aがスリーブホルダ130の係止突起137と係合するように挿入することで、スリーブホルダ130とハウジング140とを係合させ、内部に光接続用スリーブ120を挟持することができる。
【0078】
以下、このような光コネクタアダプタ110に光コネクタプラグ10を接続する動作について詳細に説明する。なお、図6,7は、光コネクタの接続動作を示す断面図であり、図6(b)は、図6(a)のC−C′断面図である。図7(b)は、図7(a)のC−C′断面図である。
【0079】
図6では、ハウジング20の伸長状態において、シャッタ保持部材22が光コネクタアダプタ110の軸方向へ突出する保持部132に係入したときに、保持部132の先端157とシャッタ部材70の先端部71とが軸方向へ離間対向している。換言すれば、シャッタ部材70の基端部72がシャッタ保持部材22の軸方向後方に固定され、シャッタ部材70の先端部71がシャッタ保持部材22の軸方向中央に位置している。図6に示すように、ハウジング20が伸長状態であり、シャッタ部材70がフェルール40の先端面を遮蔽した遮蔽位置にある状態から、光コネクタプラグ10がそのツマミ部材21を持たれて光コネクタアダプタ110の貫通部141に挿入されていく。すると、結合爪135が結合爪通過部27を通過していき、シャッタ保持部材22が結合爪135と当接することなく光コネクタアダプタ110の中心部に進入し、シャッタ保持部材22の前方端面22fが第1のフランジ部134に当接する。
【0080】
さらに、光コネクタプラグ10が挿入されていくと、シャッタ保持部材22が付勢手段90を押し縮めていくと同時に、ツマミ部材21とともに軸方向前方へ移動するプラグフレーム30の先端縁部39がシャッタ部材70を倒していくことによって、シャッタ部材70が収容部22e内に収容される。すなわち、光コネクタプラグ10が光コネクタアダプタ110に挿入されるだけで、ハウジング20は伸長状態から縮小状態へ徐々に縮小し、シャッタ部材70は遮蔽位置から非遮蔽位置まで傾斜または変形する。光コネクタプラグ10では、シャッタ保持部材22が光コネクタアダプタ110の軸方向へ突出する保持部132,145に係入し、ツマミ部材21が伸長状態から縮小状態に移動する過程において、シャッタ部材70の先端部71が保持部132,145の先端157に対して軸方向へ離間対向する。
【0081】
また、ハウジング20が徐々に縮小状態となると同時に、プラグフレーム30が対向する結合爪135の間隔を押し広げながら光コネクタアダプタ110の中心部へ進入していき、プラグフレーム30の結合凹部35がハウジング20の第1および第2の露出孔25、29によって外部に露出した状態となる。これと同時に、フェルール40が光接続用スリーブ120に挿入される。
【0082】
そして、図7に示すように、光コネクタアダプタ110の係止爪135aが第1および第2の露出孔25、29を介して結合凹部35と結合される。これにより、光コネクタプラグ10が光コネクタアダプタ110に接続される。また、図示はしていないが、光コネクタアダプタ110の他方側からも同様にもう1つの光コネクタプラグ10を接続することによって、光コネクタプラグ10どうしが光コネクタアダプタ110を介して光接続される。
【0083】
このように、光コネクタプラグ10が光コネクタアダプタ110に挿入されるだけで、ハウジング20は縮小状態となり、シャッタ部材70が非遮蔽位置まで移動する。また、光コネクタプラグ10が光コネクタアダプタ110に挿入され、接続されるまでの一連の動作のなかで、フェルール40がハウジング20の外部へ露出することがない。そのため、通信光が光コネクタプラグ10の外部に漏れることがなく、光コネクタプラグ10が高い安全性を有する。
【0084】
一方、光コネクタプラグ10が光コネクタアダプタ110からツマミ部材21を持って引き抜かれようとすると、ツマミ部材21がプラグフレーム30に対して後退し、結合解除部25aが結合爪135を押し広げ、結合爪135の係止爪135aと結合凹部35との結係合が解除される。これにより、プラグフレーム30が後退し、これと同時に、シャッタ保持部材22が付勢手段90によって前方に押し出されていき、ハウジング20が縮小状態から伸長状態へと徐々に伸長していく。
【0085】
これにより、プラグフレーム30によって収容部22cに収容されていたシャッタ部材70が遮蔽位置に向かって傾斜または変形をはじめる。光コネクタプラグ10が光コネクタアダプタ110から取り外されるとともに、ハウジング20が伸長状態となり、シャッタ部材70が遮蔽位置まで傾斜または変形し、シャッタ部材70の先端部71が挿通孔22aの内面に当接することで、シャッタ部材70が遮蔽位置に位置決めされ、フェルール40の先端面を遮蔽する。
【0086】
本実施例の光コネクタプラグ10は、光コネクタアダプタ110へ挿入される動作または引き抜かれる動作に連動し、シャッタ部材70の先端部71が遮蔽位置および非遮蔽位置に移動するため、光コネクタアダプタ110との接続を容易に行うことができる。
【0087】
シャッタ部材70の先端部71が遮蔽位置と非遮蔽位置との間を移動するすべての状態で、シャッタ部材70が光コネクタアダプタ110と干渉(接触または衝突)する可能性が全くないため、シャッタ部材70が変形または破損することがない。そのため、光コネクタアダプタ110の結合爪135の弾性力が弱くなっている場合、結合爪135の間隔が規格より広い場合、誤って光コネクタプラグ10のシャッタ保持部材22を持って光コネクタアダプタ110へ挿入した場合等でも、光コネクタプラグ10の挿入または引き抜きが可能である。
【0088】
光コネクタプラグ10が光パワー測定器やフェルール端面形状測定器などの測定器への接続されるとき、あるいは、フェルール端面清掃道具などに挿入されるときのように、光コネクタアダプタ110の結合爪135に相当する形状がない相手に挿入される場合であっても、シャッタ部材70が破損することがなく着脱が可能であり、高い利便性をもっている。
【0089】
光コネクタプラグ10は、それが光コネクタアダプタ110に接続されていない状態でも、付勢手段90(コイルばね)がハウジング20を常に伸長状態とするように付勢しているため、誤って縮小状態となってシャッタ部材70が非遮蔽位置のままとなることを防止して、安全性を高めることができる。
【0090】
光コネクタプラグ10は、付勢手段受け部材95を設けることによって、光コネクタプラグの組立を困難にすることなく、カシメリング57の外周に付勢手段90(コイルばね)および付勢手段受け部材95を配置することができ、光コネクタプラグ10の全長を短く抑えることができる。
【0091】
図8および図9は、他の一例として示す光コネクタプラグ10の正面図と、そのA−A′断面図と、B−B′断面図とである。図10は、光コネクタプラグ10の分解斜視図である。なお、この光コネクタプラグ10の外観形状は図1と同一である。
【0092】
図8,9に示す光コネクタプラグ10が図2〜図4のそれと異なるところは、付勢手段受け部材95とブーツ59とが一体となったブーツ付き付勢手段受け部材156を採用している点にあり、その他の構成は図1の光コネクタプラグ10と同一であるから、図2〜図4と同一の符号を付すとともに、図2〜図4の光コネクタプラグ10の説明を援用することで、図8〜図10の光コネクタプラグ10におけるその他の構成の説明は省略する。
【0093】
ブーツ付き付勢手段受け部材156は、付勢手段受け部材96とブーツ59とから形成され、付勢手段受け部材95とブーツ59とが一体成形されて一繋がりになっている。ブーツ付き付勢手段受け部材156は、ゴムやエラストマ等の弾性材料から作られ、弾性変形可能である。ブーツ付き付勢手段受け部材156は、図2〜図4の光コネクタプラグ10のブーツ59と同様に、その内部にカシメリング57およびリング58を内包し、光ファイバコード19を保持する。
【0094】
ブーツ付き付勢手段受け部材156のうちの付勢手段受け部材95は、ツマミ部材21の保持孔23に係合保持されている。保持孔23内の後端側には付勢手段受け部材95の外周に設けられた係合凸部96が係合する係合窓24が設けられており、付勢手段受け部材95の係合凸部96の後方面が係合窓24の後方面に当接することによって、ブーツ付き付勢手段受け部材156の後方への移動が規制されている。さらに、付勢手段受け部材95の当接面97が保持孔23の内面にある当接段差23aに当接することによって、ブーツ付き付勢手段受け部材156の前方への移動が規制されている。ブーツ付き付勢手段受け部材156は、ストップリング50を介してプラグフレーム30に連結されている。プラグフレーム30がツマミ部材21に対して許される前後移動量は、ブーツ付き付勢手段受け部材156がツマミ部材21に対して許される前後移動量と同等量である。
【0095】
付勢手段受け部材95は、所定長さを有して軸方向へ延びる略円柱状の付勢手段第1支持部154と、付勢手段第1支持部154の周り方向外方に位置して軸方向へ延びる付勢手段第2支持部155とを有する。付勢手段第1支持部154および付勢手段第2支持部155は、ツマミ部材21の保持孔23に挿入されている。
【0096】
図8および図9に示すように、ツマミ部材21の内部における付勢手段受け部材59とシャッタ保持部材22との間には、付勢手段90が設けられている。付勢手段90は、シャッタ保持部材22を前方に押し出す方向に付勢している。付勢手段90は、ステンレス鋼やピアノ線などの金属材料から作られた軸方向へ延びるコイルばねで構成されている。付勢手段90がシャッタ保持部材22を前方に押し出すばね力は、光コネクタプラグ10の光コネクタアダプタ110への挿入に支障ない大きさに抑えるとともに、確実にシャッタ保持部材22を押し出してハウジング20を伸長状態にするために十分な大きさとしている。具体的には、0.5〜4Nの範囲としている。
【0097】
付勢手段90であるコイルばねは、付勢手段受け部材95の付勢手段第1支持部154の外周面の外側に位置するとともに、付勢手段第2支持部155の内周面の内側に位置している。換言すると、コイルばねが付勢手段第1支持部154と付勢手段第2支持部155との間に挟まれた状態で付勢手段受け部材95に支持されている。これにより、ツマミ部材21の保持孔23からのコイルばねの不用意な脱落を防止することができる。付勢手段90であるコイルばねは、その内径が付勢手段第1支持部154の外径よりもわずかに大きい。
【0098】
また、付勢手段90および付勢手段受け部材95は、カシメリング57および光ファイバコード19の外径よりも大きな内径を有している。付勢手段90および付勢手段受け部材95は、カシメリング57の外周に重ねて配置されている。本実施例における付勢手段90は、コイル内径をφ7.0以上、φ7.4以下のコイルばねとしている。
【0099】
これにより、光コネクタプラグ10を組立てる際には、ストップリング50の後端部側に光ファイバコード19の抗張力体17を挟んでカシメリング57を圧着固定させた後、後方の光ファイバコード19上に通しておいた付勢手段90およびブーツ付き付勢手段受け部材156を前方に移動させ、ブーツ付き付勢手段受け部材156をストップリング50に連結するとともに、ツマミ部材21と係合させることができる。
【0100】
光コネクタアダプタ110に図8〜図10に示す光コネクタプラグ10を接続する動作は、図2〜図4の光コネクタプラグ10のそれと同一であり、図6,7を援用するとともに、図6,7の説明を援用することで、その説明は省略する。
【0101】
図8〜図10に示す光コネクタプラグ10は、それが光コネクタアダプタ110に接続されていない状態でも、付勢手段90(コイルばね)がハウジング20を常に伸長状態とするように付勢しているため、誤って縮小状態となってシャッタ部材70が非遮蔽位置のままとなることを防止して、安全性を高めることができる。
【0102】
図8〜図10に示す光コネクタプラグ10は、付勢手段受け部材95を設けることによって、光コネクタプラグの組立を困難にすることなく、カシメリング57の外周に付勢手段90(コイルばね)および付勢手段受け部材95を配置することができ、光コネクタプラグ10の全長を短く抑えることができる。
【符号の説明】
【0103】
10 光コネクタプラグ
15 光ファイバ
20 ハウジング
21 ツマミ部材
22 シャッタ保持部材
30 プラグフレーム
35 結合凹部
40 フェルール
41 フェルール用筒状体
50 ストップリング
57 カシメリング
58 リング
59 ブーツ
60 ばね
70 シャッタ部材
71 先端部
72 基端部
90 付勢手段
95 付勢手段受け部材
110 光コネクタアダプタ
120 光接続用スリーブ
130 スリーブホルダ
135 結合爪
140 外郭部材
150 保持部材
151 係止ピン
153 プレート
154 付勢手段第1支持部
155 付勢手段第2支持部
156 ブーツ付き付勢手段受け部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向へ延びる少なくとも1本の光ファイバ15を有するフェルール40を保持したプラグフレーム30と、前記プラグフレーム30を内部に保持するハウジング20とを備え、前記ハウジング20が、前記軸方向へ相対移動が可能なツマミ部材21とシャッタ保持部材22とから形成され、前記シャッタ保持部材22が、軸方向前方に位置する先端部71と軸方向後方に位置して該シャッタ保持部材22に保持された基端部72とを有するシャッタ部材70を備え、前記プラグフレーム30が、前記ツマミ部材21と所定量の軸方向への移動量を許された状態で連動しつつ、前記シャッタ保持部材22に対して軸方向に相対移動可能であり、かつ、前記ツマミ部材21が前記シャッタ保持部材22の軸方向後方へ移動した伸長状態と、前記ツマミ部材21が前記シャッタ保持部材22の軸方向前方へ移動した縮小状態とを有し、前記ハウジング20が、前記縮小状態において光コネクタアダプタ110に結合する形状を有するとともに、前記プラグフレーム30の先端部の側の外周に設けられた結合凹部35が前記光コネクタアダプタ110の結合爪135に結合して光接続状態になるプッシュオン締結方式の光コネクタプラグであって、
前記シャッタ保持部材22を前記プラグフレーム30に対して軸方向前方へ付勢する付勢手段90が、前記ハウジング20の内部に設置され、前記プラグフレーム30と連接している付勢手段受け部材95が、前記付勢手段90の軸方向後方に配置され、
前記光コネクタプラグの光非接続状態では、前記付勢手段90によって前記ツマミ部材21が前記シャッタ保持部材22の軸方向後方へ移動した前記伸長状態が維持されることを特徴とする光コネクタプラグ。
【請求項2】
前記付勢手段90が、前記軸方向へ延びるコイルばねである請求項1に記載の光コネクタプラグ。
【請求項3】
前記コイルばねが、光ファイバコードの外径よりも大きな内径を有する請求項2に記載の光コネクタプラグ。
【請求項4】
前記付勢手段受け部材95が、光ファイバコードの外径よりも大きな内径を有する請求項1ないし請求項3いずれかに記載の光コネクタプラグ。
【請求項5】
前記付勢手段受け部材95が、前記軸方向前方と後方とへ所定の移動量を許された状態で前記ツマミ部材21に係合している請求項1ないし請求項4いずれかに記載の光コネクタプラグ。
【請求項6】
前記付勢手段受け部材95が、所定長さを有して軸方向へ延びる付勢手段第1支持部154と、前記付勢手段第1支持部154の周り方向外方に位置して軸方向へ延びる付勢手段第2支持部155とを有し、前記コイルばねが、前記付勢手段第1支持部154の外周面の外側に位置するとともに、前記付勢手段第2支持部155の内周面の内側に位置している請求項3ないし請求項5いずれかに記載の光コネクタプラグ。
【請求項7】
前記コイルばねが、前記付勢手段第1支持部154の外径よりもわずかに大きい内径を有し、前記コイルばねの後端部が、前記付勢手段第1支持部154の外周面と前記付勢手段第2支持部155の内周面とに挟まれた状態で前記付勢手段受け部材95に支持されている請求項6に記載の光コネクタプラグ。
【請求項8】
前記光コネクタプラグでは、前記付勢手段受け部材95と該付勢手段受け部材95の軸方向後方へ延びるブーツ59とが一体成形され、前記付勢手段受け部材95と前記ブーツ59とが一繋がりになっている請求項1ないし請求項7いずれかに記載の光コネクタプラグ。
【請求項9】
前記光コネクタプラグが、前記縮小状態においてSC形光コネクタアダプタに結合される形状を有する請求項1ないし請求項8いずれかに記載の光コネクタプラグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−78792(P2012−78792A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170819(P2011−170819)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000147350)株式会社精工技研 (154)
【Fターム(参考)】