説明

光コネクタ清掃具用ケース、及び、これを用いた光コネクタ清掃具

【課題】製造コスト、材料コスト、加工コスト及び廃棄コスト等を低減することができる光コネクタ清掃具用ケース、及び、光コネクタ清掃具を提供する。
【解決手段】本発明に係る光コネクタ清掃具用ケース2は、本体部4と、蓋部5とを含むであって、本体部4及び蓋部5は、一枚の板紙又はダンボール紙を折り曲げ成形したものである。本発明に係る光コネクタ清掃具用ケース2は、清掃布30と組み合わされて光コネクタ清掃具を構成する。清掃布30は、軸32に引き出し可能に巻装され、本体部4に収納されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタ清掃具用ケース、及び、光コネクタ清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブルを用いた光通信網の設置作業、及び、メインテナンス作業においては、光ファイバケーブルの接続端にコネクタを装着する作業、光ファイバケーブルが接続されたコネクタ(光コネクタ)同士をアダプタを介して接続する作業、光コネクタをアダプタから一旦外し再度接続する作業などが行われる。
【0003】
ところで、上述した各作業において、光コネクタのフェルール端面に油脂や塵埃等の付着物が付着すると、前記付着物によって光信号の挿入損失が増大し、正常に伝送できなくなることが知られている。そこで、光コネクタを取り扱う際には、特許文献1乃至3に開示されているような光コネクタ清掃具を用いてフェルール端面を清掃し、付着物を取り除くことが行われている。
【0004】
しかし、特許文献1乃至3の光コネクタ清掃具は、いずれもケース内に清掃布が巻装された供給リール及び巻き取りリールの一対のリールと、走行機構とを有しており、前記走行機構によって清掃布を走行させるという構造を有しているため、製造コスト高を招く。特に、特許文献1乃至3の光コネクタ清掃具を構成するケースは、その内面に、前記一対のリール及び走行機構のための複雑な取付機構が形成されなければならないから、合成樹脂材料を用いた一体成形物とならざるを得ず、製造コスト高、材料コスト高、加工コスト高及び廃棄コスト高等を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−129505号公報
【特許文献2】特開2003−290722号公報
【特許文献3】特開2004−170645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、製造コスト、材料コスト、加工コスト及び廃棄コスト等を低減することができる光コネクタ清掃具用ケース、及び、それを用いた光コネクタ清掃具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明は、2つの態様に係る光コネクタ清掃具用ケースを開示する。
【0008】
第1の態様に係る光コネクタ清掃具用ケースは、本体部と、蓋部とを含み、本体部と、蓋部とは、一枚の板紙又はダンボール紙を折り曲げ成形したものである。この構造によると、製造コスト、材料コスト、加工コスト及び廃棄コスト等を低減することができる。
【0009】
また、本体部及び蓋部は、一枚の板紙又はダンボール紙を折り曲げ成形したものであるから、形状や構造を適宜調節するなどのバリエーションの展開を容易に、且、安価に行うことができる。
【0010】
第2の態様に係る光コネクタ清掃具用ケースにおいて、本体部は、一枚の板紙又はダンボール紙を折り曲げ成形したものであり、収納空間と、収納空間に開口する開口部とを有している。蓋部は、板紙又はダンボール紙を折り曲げ成形したものであり、前記開口部を開閉するように、前記本体部分に開閉可能に取り付けられる。この構造によると、製造コスト、材料コスト、加工コスト及び廃棄コスト等を低減することができる。
【0011】
また、本体部と、蓋部とのそれぞれは、板紙又はダンボール紙を折り曲げ成形したものであるから、形状や構造を適宜調節するなどのバリエーションの展開を容易に、且、安価に行うことができる。例えば、蓋部を構成する開口部の形状や大きさ、位置を適宜調節するなどのバリエーションの展開を容易に、且、安価に行うことができる。
【0012】
本発明に係る光コネクタ清掃具用ケースは、清掃布と組み合わされて光コネクタ清掃具を構成する。清掃布は、本体部に収納されているから、清掃布によってフェルール端面を清掃することができる。
【0013】
また、清掃布は、軸に引き出し可能に巻装され、前記本体部に収納されているから、清掃後は汚染された部分の清掃布を引き出して廃棄することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように、本発明によれば、製造コスト、材料コスト、加工コスト及び廃棄コスト等を低減することができる光コネクタ清掃具用ケース、及び、光コネクタ清掃具を提供することができる。
【0015】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る光コネクタ清掃具の斜視図である。
【図2】図1の光コネクタ清掃具の分解構造を示す斜視図である。
【図3】図1の3−3線に沿った縦断面図である。
【図4】図1の4−4線に沿った横断面図である。
【図5】図2のケースの展開図である。
【図6】図1乃至図5の光コネクタ清掃具の使用方法を示す平面図である。
【図7】図6に示した工程の後の工程を示す断面図である。
【図8】本発明のもう一つの実施形態に係る光コネクタ清掃具の縦断面図である。
【図9】本発明の更にもう一つの実施形態に係る光コネクタ清掃具の縦断面図である。
【図10】本発明の更にもう一つの実施形態に係る光コネクタ清掃具の分解構造を示す斜視図である。
【図11】本発明の更にもう一つの実施形態に係る光コネクタ清掃具の斜視図である。
【図12】図11の光コネクタ清掃具を構成するケースの展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1乃至図12において同一符号は、同一又は対応部分を示すものとする。また、図1乃至図12の説明において、清掃布30の引き出し方向、及び、ケース2の縦方向は一致するから符号Lに統一して示す。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る光コネクタ清掃具の斜視図、図2は図1の光コネクタ清掃具の分解構造を示す斜視図、図3は図1の3−3線に沿った縦断面図、図4は図1の4−4線に沿った横断面図である。図1乃至図4の光コネクタ清掃具は、ケース2と、クリーニング機構3を含む。クリーニング機構3は、清掃布30と、受け板31とで構成されている。
【0019】
ケース2は、本体部4と、蓋部5とを含む。本体部4と、蓋部5とは、折り曲げ辺61を介して一体的に連続している。本体部4は、収納空間40と、収納空間40に開口する開口部41と、台部42とを有している。
【0020】
本体部4は、4つの側壁と、底部45によって画定される内部空間を有している。台部42は、断面でみて角筒体であり、清掃布30の引き出し方向(L)の先側において、収納空間40に隣接して配置されている。収納空間40は、清掃布30の引き出し方向(L)の後側において、折り曲げ辺61に隣接している。違う言葉で表現すれば、収納空間40は、本体部4の内部空間から、台部42によって画定される領域を差し引いた空間である。
【0021】
台部42は、高さ方向Tでみた底部45の反対側に、底部45と平行する支持面46を有している。支持面46は、面内に一点鎖線で示す受け板31の載置領域47を有している。図1乃至図4からは必ずしも明確ではないが、支持面46は、高さ方向Tでみて、開口部41の開口端縁と同一の高さ位置、好ましくは開口部41の開口端縁から受け板31の厚み寸法分だけ低くなった高さ位置にある。
【0022】
収納空間40は、横方向Wでみた一対の側壁43、43のそれぞれに、軸受け溝48を有している。軸受け溝48は、側壁43の上端縁の中間部分から底部45に向かって直線状に下降し、その下降端縁が円弧状に成形され、側壁43の内面領域で閉じている。
【0023】
蓋部5は、第1の面領域51と、第2の面領域52と、第1の開口部53と、第2の開口部54とを有し、開口部41を開閉可能に覆っている。第1の面領域51は、縦方向Lの一端が折り曲げ辺61を介して本体部4と連続しており、縦方向Lの他端が折り曲げ辺62を介して第2の面領域52と連続している。第1の面領域51は、高さ方向Tでみて底部45と平行に向かい合い、且、第2の面領域52と互いに交差(直交)する配置となっている。
【0024】
第1の開口部53は、第1の面領域51に開口している。より詳細に説明すると、第1の開口部53は、光コネクタ清掃窓となる部分であって、載置領域47と重なり合う部分において、第1の面領域51を高さ方向T(又は板厚方向)に貫通し、支持面46を外部に露出させる。第1の開口部53は、好ましくは、載置領域47よりも小さい開口領域であって、且、横方向Wでみた清掃布30のシート幅寸法W30よりも狭い開口幅寸法W53となっている。第1の開口部53は、第1の面領域51に開口し、蓋部5が開口部41を覆っている閉状態において、支持面46上に引き出された清掃布30を外部に露出する。
【0025】
第2の開口部54は、第2の面領域52に開口している。より詳細に説明すると、第2の開口部54は、清掃布30の引き出し窓となる部分であって、第2の面領域52において折り曲げ辺61に沿ってスリット状、又は、線状に開口している。第2の開口部54は、高さ方向Tでみて清掃布30の厚み以上の間隔で開口し、且、横方向Lでみて清掃布30のシート幅寸法W30より大きな幅寸法を有している。
【0026】
図1乃至図4のクリーニング機構3を構成する清掃布30は、好ましくは極細の繊維材料を用いた不織布であって、ゴミを少なくするための無塵処理が施されている。清掃布30のシート幅寸法W30は、支持面46の幅寸法以下であって、且、第1の開口部53の幅寸法W53より大きい。
【0027】
清掃布30は、軸32に巻装されたロール体の状態で、収納空間40に引き出し可能に収納されている。清掃布30は、一面が第1の開口部53を通じて外部に露出し、且、引き出し側の端縁33が第2の開口部54を通じて外部に引き出される。軸32は、両端が軸受け溝48に回転可能に取り付けられている。軸受け溝48の溝長さは、清掃布30が収納空間40に収納された状態で使用され、巻き数が減少し、直径寸法が小さくなったときの軸32の高さ位置の変位に対応するものである。
【0028】
清掃布30は、下巻きとなる状態で収納空間40に収納されている。違う言葉で表現すれば、清掃布30は、端縁33が、高さ方向Tでみた底部45の側から支持面46の上に引き上げられ、第1の面領域51と受け板31との相対向面間Gを引き回され、さらに第2の開口部54を通じてケース2外に引き出される。この構造によると、例えば、高さ方向Tから押し圧力F1が加えられた場合、清掃布30は、縦方向Lでみた支持面46の端縁P1に接触して引っ掛かるとともに、第1の面領域51の内面と、受け板31の表面とによって挟持されることにより、不正移動F2が規制される。
【0029】
受け板31は、好ましくは弾性を有する材料で構成された薄板体である。用いられる弾性材料としては、合成ゴム、天然ゴム、合成樹脂材料などを用いることができる。板面のすべり止め効果(摩擦力)、弾力性、材料コストの観点からは、合成ゴムが好ましい。又、プラスチックなど硬質の合成樹脂材料を用いた場合には表面を粗面加工し、摩擦係数を高めるよう調整する。
【0030】
受け板31は、支持面46に取り付けられており、蓋部5が開口部41を覆っている閉状態において、第1の開口部53と向かい合い、且、第1の開口部53の開口端が受け板31の面領域内にある
図1乃至図4に示した光コネクタ清掃具の特徴の一つは、ケース2が、一枚の板紙、又は、ダンボール紙を折り曲げ成形したものである(図5参照)点にある。ケース2に用いられる紙材料について、材料コストの観点からは通常の板紙が好ましく、機械的強度の観点からはダンボール紙が好ましい。本明細書において「ダンボール紙」とは、「複数の板紙を張り合わせて多層構造としたもの、又は、波状に成形した中心紙の片面または両面に板紙をはり合わせたもの」をいう。図5の展開図において、破線は全て同じ側に折り曲げられる、谷折り線、又は、山折り線を示している。
【0031】
図5を参照して、図1乃至図4のケース2の構造について補足説明すると、ケース2は、一対の側壁43(となる部分)において、それぞれの上端縁に差し込み片71を有し、底部45(となる部分)に差し込み溝81を有している。ケース2の組立に当たっては側壁43となる部分を谷折りし、差し込み片71を差し込み溝81に差し込むことにより、側壁43を立設する。
【0032】
ケース2は、台部42(となる部分)の中間部分に差し込み片72を有し、底部45(となる部分)に差し込み溝82を有している。ケース2の組立に当たっては台部42(となる部分)を谷折りし、その過程で差し込み片72を差し込み溝82に差し込むことにより台部42を立設する。
【0033】
蓋部5を構成する第1の面領域51と、第2の面領域52とは、折り曲げ辺62によって画定されており、組み立てられた状態で互いに交差する配置となっている。ケース2は、第2の面領域52(となる部分)において、横方向Wでみた両端に扇形の差し込み片73を有し、一対の側壁部分43は、縦方向Lでみた先端側に差し込みスペース83を有している(図2参照)。ケース2の組立に当たっては蓋部5(となる部分)を谷折りし、最後に差し込み片73を差し込みスペース83に差し込むことにより、開口部41が蓋部5によって開閉可能に覆われる(図1参照)。
【0034】
図1乃至図5を参照して説明したケース2、及び、これを用いた光コネクタ清掃具の利点について、図6及び図7を参照しながら説明する。まず、図6に示すように、光コネクタ清掃具1を左手で持つ場合には、予め第2の開口部54から清掃布30の引き出し端縁33を数センチ程度引き出し、第2の開口部54を右手側に配置する。この状態で、右手で光コネクタ9を支持し、第1の開口部53に露出する清掃布30に、フェルール端面90を円運動させながら螺旋状にこすりつけることにより、付着物を取り除く。
【0035】
左手の親指は、第1の面領域51に対し、高さ方向Tから押し圧力F1を加える。これにより、清掃布30は、縦方向Lでみた支持面46の端縁P1に接触して引っ掛かるとともに、第1の面領域51の内面と、受け板31の表面とによって挟持されることにより、不正移動F2が規制される(図7参照)。
【0036】
次に、図7に示す工程は、図6に示した工程の後の工程であって、拭き取り作業終了後、端縁33を右手でつまみながら、拭き取りに使用した領域が第1の開口部53に露出しない位置まで、清掃布30を引き出したのち、端縁33を上に持ち上げて第2の開口部54の開口端縁を構成する上端縁55にこすりつけることにより、不要な清掃布30を切断する。切断した清掃布30の切れ端は、ゴミ箱などに廃棄する。
【0037】
図は省略するが、図6及び図7の清掃工程を所定の回数繰り返し、清掃布30が無くなった場合、蓋部5を開けて軸32を取り出し、該軸32に新たな清掃布30を巻装するか、又は、取り替え用の新たな清掃布30のロール体を準備して、収納空間40に設置する。
【0038】
既に述べたように、光ファイバケーブルを用いた光通信網の設置作業、及び、メインテナンス作業においては、光ファイバケーブルの接続端にコネクタを装着する作業、光ファイバケーブルが接続されたコネクタ(光コネクタ)同士をアダプタを介して接続する作業、光コネクタをアダプタから一旦外し再度接続する作業において、フェルール端面に油脂や塵埃等が付着すると、付着物によって光信号の挿入損失が増大し、正常に伝送できなくなる不具合が生じる。そこで、光コネクタの接続作業の際には、フェルール端面を清掃し、付着物を取り除かなければならない。
【0039】
従来、この種の光コネクタ清掃具は、ケース内に清掃布が巻装された供給リール及び巻き取りリールの一対のリールと、走行機構とを有し、前記走行機構によって清掃布を走行させるという構造を有しているため、製造コスト高を招く。特に、ケースの内面に、前記一対のリール及び走行機構のための複雑な取付機構が形成されなければならないから、合成樹脂材料を用いた一体成形物とならざるを得ず、製造コスト高、材料コスト高、加工コスト高及び廃棄コスト高等を招く。
【0040】
これに対し、図1乃至図7のケース2は、一枚の板紙又はダンボール紙を折り曲げ成形したものである。この構造によると、ケース2を合成樹脂材料で構成する場合に必要となる金型コストが不要となるから、製造コストを低減することができるとともに、材料コスト、加工コスト、廃棄コスト等を低減することができる。例えば、ケース2は、板紙又はダンボール紙を折り曲げ成形したものであるから、使い捨て可能である。
【0041】
また、ケース2は、板紙又はダンボール紙を折り曲げ成形したものであるから、形状や構造を適宜調節する場合に、金型を準備する必要がない。従って、例えば第1、第2の開口部53、54の形状や幅寸法、位置を適宜調節するなどのバリエーションの展開を容易に、且、安価に行うことができる。
【0042】
ケース2は、清掃布30と組み合わされて光コネクタ清掃具1を構成する。清掃布30は、本体部4に収納された状態で、第1の開口部53に露出しているから、第1の開口部53に露出する清掃布30にフェルール端面90をこすり付けることにより、付着物を取り除くことができる。
【0043】
しかも、清掃布30は、底部45の側から支持面46上に引き上げられ、第1の面領域51と、受け板31との相対向面間Gを引き回され、さらに第2の開口部54を通じてケース2外に引き出される。この構造によると、例えば、光コネクタ清掃具1を左手で持つ場合、親指で高さ方向Tから押し圧力F1が加えることにより、清掃布30が、支持面46の端縁P1に接触して引っ掛かるとともに、第1の面領域51の内面と、受け板31の表面とによって挟持されることにより、不正移動F2が規制される。従って、フェルール端面90のこすり付けによって、清掃布30がフェルール端面90の先端とともに不正移動F2する不都合は生ぜず、付着物を確実に取り除くことができる。
【0044】
第1の開口部53に露出する清掃布30は、弾性を有する材料で構成された受け板31によって裏側から支持されている。この構成によると、フェルール端面90を清掃布30にこすり付たる際に生じる余分な押し圧力は、受け板31の弾性によって適宜緩和される。従って、光ファイバーの先端の削れや破損を防止し、信頼性に優れた光コネクタ清掃具を提供することができる。もっとも、受け板31としてプラスチックなど硬質板を用いた場合には、清掃布30の厚み寸法を厚くすることで、同様の押し圧力緩和効果を実現することができる。
【0045】
また、受け板31としてゴム板が用いられている場合、受け板31の表面と、これに接触する清掃布30の裏面との間で生じる摩擦力によって、清掃布30の不正移動F2が規制される。従って、フェルール端面90のこすり付けによって清掃布30が不正移動F2する不都合は生ぜず、付着物を確実に取り除くことができる。
【0046】
上述したように、図1乃至図7の光コネクタ清掃具1において、清掃布30は、支持面46の端縁P1に接触する構造と、第1の面領域51と受け板31とに挟持される構造、及び、受け板31と間で生じる摩擦力により、不正移動F2が確実に阻止されている。この構成によると、第1の開口部53を大きく形成し、清掃布30を広く外部に露出させることが可能となる結果、図6に示すように、円運動させながら螺旋状にこすりつけることにより、フェルール端面90に拭き取り残りのスジができることなく、付着物を完全に除去することができる。
【0047】
さらに光コネクタ清掃具1において、第2の開口部54は、折り曲げ辺61にそって形成されている。この構造によると、従来技術とは異なり、巻き取りリールが不要となり、1つの供給リールで足りることとなる。しかも、ケース2が、機械的強度に優れたダンボールで形成されている場合、上端縁55そのものが強靭なエッジ機能を奏し、カッター歯の役割を果たす。従って、巻き取りリール、及び、カッター歯が必要ではなくなる分だけ部品点数を削減し、製造コストを低減することができる。
【0048】
上述したエッジ機能は、ダンボール特有の構造を考慮して上端縁55を形成することにより向上される。具体的に、ダンボールを構成する中心紙(図示しない)の波形が連続する方向に対し、上端縁55が交差する方向に延びていることが好ましい。違う言葉で表現すれば、上端縁55の端面(切断端面)に、凹凸を繰り返す中心紙の波形形状があらわれているとき、ダンボールの構造的強度によって、上端縁55に、強靭なエッジ機能が付与される。
【0049】
清掃布30は、軸32に巻装され、端縁33を第2の開口部54から引き出し可能な状態で本体部4に収納されているから、端縁33の側を片手でつまんで引き出すだけで、付着物によって汚染された部分を簡単に廃棄することができる。
【0050】
図8及び図9は、本発明のもう一つの実施形態に係る光コネクタ清掃具の縦断面図である。図8及び図9の実施形態は、第2の開口部54の開設位置が異なる以外は、図1乃至図7の実施形態と同一の基本的構成を有する。以下、相違点を中心に説明する。
【0051】
図8の光コネクタ清掃具1は、第2の開口部54が、第1の面領域51において、折り曲げ辺62に沿って設けられている。清掃布30は、縦方向Lでみた支持面46の端縁P1、第2の開口部54を構成する上端縁(一方端縁)55の内側P2、同上端縁55に向かい合う他方端縁の外側P3に接触して引っ掛かるとともに、第1の面領域51の内面と、受け板31の表面とによって挟持される。
【0052】
図9の光コネクタ清掃具1は、第2の開口部54が、第2の面領域52において、折り曲げ辺62から離れた中間部に設けられている実施形態である。清掃布30は、縦方向Lでみた支持面46の一方端縁P1及び他方端縁P4、第2の開口部54を構成する上端縁55の内側P5に接触して引っ掛かるとともに、第1の面領域51の内面と、受け板31の表面とによって挟持される。
【0053】
図8及び図9の実施形態によっても、図1乃至図7を参照して説明した利点を全て奏することができる。さらに、図8及び図9では、清掃布3と、本体部4及び蓋部5との接触点P1〜P5が増えることにより、清掃布30の不正移動F2が確実に抑制される。
【0054】
図10は、本発明の更にもう一つの実施形態に係る光コネクタ清掃具の分解構造を示す斜視図である。図10の光コネクタ清掃具1は、本体部4と、蓋部5とが別体となっている点に特徴がある実施形態であって、端的に言えば図1乃至図9のケース2を、折り曲げ辺61に沿って切断した構造となっている。
【0055】
すなわち、図10のケース2は、本体部4と、蓋部5とを含む。本体部4は、一枚の板紙又はダンボール紙を折り曲げ成形したものであり、収納空間40と、収納空間40に開口する開口部41とを有している。蓋部5は、一枚の板紙又はダンボール紙を折り曲げ成形したものであり、開口部41に開閉可能に取り付けられ、取り付けられた状態で本体部4が内部に収納される。
【0056】
図10の実施形態によっても、図1乃至図9を参照して説明した利点を全て奏することができる。
【0057】
図11は本発明の更にもう一つの実施形態に係る光コネクタ清掃具の斜視図、図12は図11の光コネクタ清掃具を構成するケースの展開図である。図12の展開図において、破線は全て同じ側に折り曲げられる谷折り線、又は、山折り線を示している。
【0058】
図11及び図12の実施形態は、図1乃至図9の実施形態と同一の基本的構成を有する。以下、相違点を中心に説明する。まず、ケース2は、一枚のダンボール紙を折り曲げ成形したものである。このダンボール紙は、折り曲げたときにケース内面となる側の板紙が、静電気防止機能を有する素材で構成されている。この構造によると、ケース2の内部において、清掃布30に塵埃が付着する不具合が防止される。従って、光コネクタ(9)のクリーニング作業において、フェルール端面(90)が、清掃布30の塵埃により、かえって汚染されてしまうとの不具合を回避することができる。
【0059】
蓋部5は、第1の開口部53の開口領域内に、開閉扉56を有している。開閉扉56は、折り曲げ辺63を介して第1の面領域51と一体的に連続しており、第1の開口部53、及び、第1の開口部53に露出する清掃布30を開閉可能に覆っている。この構造によると、第1の開口部53に露出する清掃布30に、塵埃等が付着する不具合が防止される。
【0060】
蓋部5は、上端縁55が、第2の開口部54の開口端面よりも清掃布30の引き出し方向(L)に突出している。この構造によると、清掃布30を上端縁55にこすりつけて切断したとき、第2の開口部54の開口端面から突出した位置に切断された端縁33が残るから、切断後の端縁33の引き出し作業を容易に行うことができる。
【0061】
図11及び図12からは必ずしも明らかではないが、ケース2を構成するダンボールは、端縁がテープ材21によって被覆されている。この構造によると、清掃布30との摩擦や、開閉扉56の開閉動作などによって、ダンボールの端縁から塵埃などが発生する不具合を防止することができる。
【0062】
また、本体部4は、幅方向Wでみた一対の側壁部43、43のそれぞれに、周知のストラップを取り付けるための貫通孔84を有しているから、光コネクタ清掃具を使用する際には、貫通孔84にストラップを取り付けることにより、首から提げて携行し、使用することができる。
【0063】
一対の側壁部43、43のそれぞれは、幅方向Wに向かい合う内面に軸受け孔49を有している。軸受け孔は49は、平面からみて三角錐状の内部空間を有する有底孔である。違う言葉で表現すると、軸受け孔49は3つの内面で構成され、3つの内面は、軸受け孔49の開口端縁の一辺を底辺とする三角形形状となっている。この構造によると、例えば断面でみて円形状の軸(32)と組み合わされたとき、軸(32)の外面が、軸受け孔49の内面と接触し、軸(32)の回転が規制される。従って、軸(32)に巻装されている清掃布30の繰り出し速度を適宜減速し、清掃布30に余分な弛みが生じる不具合を回避することができる。
【0064】
図11及び図12の実施形態では、図1乃至図9を参照して説明した利点に加え、上述した利点を奏することができる。しかも、ケース2は、板紙又はダンボール紙を折り曲げ成形したものであるから、図11乃至図12に係る本体部4及び蓋部5の設計変更は切断加工によって実現され、金型を準備する必要もない。従って、バリエーションの展開を容易に、且、安価に行うことができる。
【0065】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。例えば、本願発明の特徴の一つは、清掃布30を収納するためのケース2を、板紙又はダンボール紙を折り曲げ成形したもので構成した点にあるから、必ずしも光コネクタに限られず、例えば文房具や医療用器具、その他同種の清掃布30を用いて付着物の拭き取り作業を行うべき物品のための清掃具用ケースとして用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 光コネクタ清掃具
2 ケース
30 清掃布
32 軸
4 本体部
40 収納空間
41 収納空間に開口する開口部
5 蓋部
51 第1面領域
52 第2面領域
53 第1開口部
54 第2開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、蓋部とを含む光コネクタ清掃具用ケースであって、
前記本体部及び前記蓋部は、一枚の板紙又はダンボール紙を折り曲げ成形したものである、
ケース。
【請求項2】
本体部と、蓋部とを含む光コネクタ清掃具用ケースであって、
前記本体部は、一枚の板紙又はダンボール紙を折り曲げ成形したものであり、収納空間と、前記収納空間に開口する開口部とを有しており、
前記蓋部は、板紙又はダンボール紙を折り曲げ成形したものであり、前記開口部を開閉するように、前記本体部分に開閉可能に取り付けられる、
ケース。
【請求項3】
ケースと、清掃布とを含む光コネクタ清掃具であって、
前記ケースは、請求項1又は2に記載されたものでなり、
前記清掃布は、軸に引き出し可能に巻装され、前記本体部に収納されている、
光コネクタ清掃具。
【請求項4】
請求項3に記載された光コネクタ清掃具であって、
前記蓋部は、第1の面領域と、第2の面領域と、第1の開口部と、第2の開口部とを有しており、
前記第1の面領域は、折り曲げ辺を介して前記第2の面領域と連続しており、
前記第1の開口部は、前記第1の面領域に開口しており、
前記第2の開口部は、前記第2の面領域に開口しており、
前記清掃布は、一面が第1の開口部を通じて外部に露出し、且、引き出し側の端縁が第2の開口部を通じて外部に引き出される、
光コネクタ清掃具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−211(P2013−211A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132092(P2011−132092)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【特許番号】特許第4870235号(P4870235)
【特許公報発行日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【出願人】(511144516)株式会社オプトゲート (1)
【Fターム(参考)】