説明

光コネクタ

【課題】光コードの抗張力体に弛みや偏りが発生しない安定した組立作業を行うことができると共に、光コードの外被が収縮しても光ファイバ心線の突き出しを抑制できる光コネクタを提供する。
【解決手段】抗張力体を有する光コード11を取り付ける光コネクタにおいて、ハウジング20の後部に嵌合され、該ハウジング20の後部に抗張力体を挟んで係合する仮固定部材30と、該仮固定部材30の外周に光コード11の外被15の肉厚分のクリアランスを有し、仮固定部材30を覆うようにハウジング20の後部に固定されるとともに、該ハウジング20と一体的に抗張力体を固定する固定部材13と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗張力体を有する光コードを取り付ける光コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光コネクタには、抗張力体を有する光コードの先端に組み立てられ、抗張力体を引き留める構造を有するものがある(特許文献1参照)。
抗張力体は、光ファイバの長手方向に沿って延在しており、光コネクタを組み立てる際には、抗張力体を光コネクタに固定している。抗張力体を光コネクタに固定する方法には、抗張力体を一様に広げて金属部品でかしめる方法と、ねじで締め付けて固定する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−109978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記固定方法では、作業者が手作業で行うため、抗張力体を一様に広げたり、弛まないように引っ張る作業にバラツキが生じ、弛みや偏りが生じる。光コードの抗張力体に弛みや偏りがあると、光コードの引っ張りや曲げの特性が目標の性能に到達できない虞がある。
【0005】
また、光コードの外被は、製造時の残留加工歪が緩和されると収縮する傾向がある。光コードの外被が光コネクタに固定されていると、この外被の収縮の逃げ場がないため、内部の心線が突き出る可能性がある。すなわち、光コードの外被が収縮すると、光コード内の光ファイバ心線が光コネクタ内に突き出てしまい、曲げ損失を誘発する虞がある。
【0006】
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、光コードの抗張力体に弛みや偏りが発生しない安定した組立作業を行うことができると共に、光コードの外被が収縮しても光ファイバ心線の突き出しを抑制できる光コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、本発明に係る下記構成の光コネクタにより達成される。
(1)抗張力体を有する光コードを取り付ける光コネクタにおいて、前記コネクタ本体の後部に嵌合され、該コネクタ本体の後部に抗張力体を挟んで係合する仮固定部材と、該仮固定部材の外周に前記光コードの外被厚さ分の隙間を有し、前記仮固定部材を覆うように前記コネクタ本体の後部に固定されるとともに、該コネクタ本体と一体的に抗張力体を固定する固定部材と、を備えることを特徴としている。
【0008】
前記構成の光コネクタによれば、コネクタ本体の後部に抗張力体を挟んで係合する仮固定部材と、その外周に光コードの外被厚さ分の隙間を有し、仮固定部材を覆うようにコネクタ本体の後部に固定される固定部材とを備えている。これにより、抗張力体を仮固定部材によりコネクタ本体に仮固定できるとともに、固定部材により抗張力体をコネクタ本体に本固定する際に、作業者が抗張力体から手を離すことができ、安定した光コネクタの組立作業を行うことができる。
【0009】
(2)上記(1)に記載の光コネクタであって、前記コネクタ本体の後部は、前記光コードの外被を配置する外被用凹部を有することが好ましい。
前記構成の光コネクタによれば、外被を完全に固定していないので、外被が収縮した際に端部が収縮できるので、光ファイバ心線の突き出しを抑制できる。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)に記載の光コネクタであって、前記コネクタ本体の後部は、前記抗張力体を配置する抗張力体用凹部を有するとともに、前記仮固定部材の前部は、内周面に該抗張力体用凹部に係合可能な抗張力体用凸部を有することが好ましい。
前記構成の光コネクタによれば、仮固定部材がコネクタ本体の後部に強固に固定されるので、抗張力体を確実に仮固定することができる。
【0011】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の光コネクタであって、前記抗張力体を固定する固定手段が、前記コネクタ本体の後部および固定部材の内周面に形成されたねじ部であることが好ましい。
(5)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の光コネクタであって、前記抗張力体を固定する固定手段が、前記コネクタ本体の後部と固定部材を圧着により固定することであることが好ましい。
前記いずれかの構成の光コネクタによれば、ねじ部または圧着によって抗張力体を固定するので、固定部材をコネクタ本体の後部に簡易な組立作業により確実に固定できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る光コネクタによれば、コネクタ本体の後部に抗張力体を挟んで係合する仮固定部材と、その外周に光コードの外被厚さ分の隙間を有し、仮固定部材を覆うようにコネクタ本体の後部に固定される固定部材とを備えている。これにより、光コードの抗張力体に弛みや偏りが発生しない安定した組立作業を行うことができると共に、光コードの外被が収縮しても光ファイバ心線の突き出しを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る光コネクタの組立完了状態を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示した光コネクタの組立途中の要部を示す分解斜視図である。
【図3】図2に示した要部の嵌合状態の斜視図である。
【図4】図2に示した光コードの抗張力体を示す斜視図である。
【図5】図3に示した光コードの抗張力体を示す斜視図である。
【図6】図1に示した光コネクタの片側縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の光コネクタの一実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の光コネクタ10は、メカニカルスプライスを収容・保持するコネクタ本体であるハウジング20と、ハウジング20の外側に装着され、コネクタ接続する際に摘む把持部12と、ハウジング20の後端に後述する抗張力体16を有する光コード11を固定する円筒状の固定部材13と、該固定部13の後端に装着され、光コード11を挿通するブーツ部14と、を備えている。
【0015】
図2に示すように、本実施形態のハウジング20の後端部には、固定部材13が固定される第1固定部21と、該第1固定部21の後端に一体に形成され、後述する仮固定部材30が固定される第2固定部23と、中心軸上に光コード11を挿通する挿通孔24と、を有している。第1固定部21は、外周に雄ねじ部22を有している。
【0016】
第2固定部23は、外周部に複数の抗張力体用凹部25を有している。この抗張力体用凹部25によって多数の繊維体からなる抗張力体16を略等分配される。抗張力体16は、光コード11の外被15と光ファイバ心線18との間に配置されており、外被15を皮剥きすることで露出する(図4参照)。
【0017】
仮固定部材30は、第2固定部23に外嵌され、ハウジング20の後端部に抗張力体16を挟んで係合する。仮固定部材30は、中心軸上に光コード11の外径に略等しく、該光コード11が貫通する貫通孔33と、外周上に該貫通孔33に沿って延設され、光コード11の外被15の回転を防止する一対の回転防止リブ34と、を有している。
【0018】
回転防止リブ34,34間には、光コード11の外被15が配置される外被用凹部31を有している。この外被用凹部31により、固定部材13の内周面との間に光コード11の外被15の肉厚分のクリアランスが形成される。この外被用凹部31と回転防止リブ34とにより、切込み19によって光ファイバ心線18から分離された光コード11の外被15の回転を確実に抑制できる。例えば、固定部材13を第1固定部21に固定する際に、ねじ部22に抗張力体16が引っ張られてもねじ部22以外で捻じれる心配はない(図4参照)。
【0019】
また、仮固定部材30の内周には、上記第2固定部23の抗張力体用凹部25内に係合する抗張力体用凸部35が形成されている。ハウジング20の第2固定部23に仮固定部材30が嵌合することで、上記抗張力体用凸部35と抗張力体用凹部25が係合する。この係合により、光コード11の抗張力体16が抗張力体用凸部35と抗張力体用凹部25の間に仮固定される。
【0020】
ハウジング20の第2固定部23と仮固定部材30との嵌合構造は、第2固定部23側の複数の抗張力体用凹部25間に形成された係合突部26と、仮固定部材30側の複数の抗張力体用凸部35間に形成された係合孔32と、で形成されている。
【0021】
図3に示すように、第2固定部23の係合突部26が仮固定部材30の係合孔32に係合することで、仮固定部材30がハウジング20の後端部に固定される。
【0022】
固定部材13は、仮固定部材30の外周に光コード11の外被15の肉厚分のクリアランスを形成するとともに、仮固定部材30を覆うようにハウジング20の後端部に固定され、該ハウジング20と一体的に抗張力体16を固定する。固定部材13の内周には、上記第1固定部21の雄ねじ部22と螺合する雌ねじ部17が形成されている(図5参照)。
【0023】
次に、光コード11の抗張力体16をハウジング20に固定する光コネクタ10の組立手順を説明する。
【0024】
図2及び図4に示すように、先ず、所定長さの光ファイバ心線18と抗張力体16が露出され、外被15端部に短い切込み19を入れた光コード11に、仮固定部材30が外挿される。そして、光ファイバ心線18がハウジング20内に接続された後、抗張力体16をハウジング20の外周に揃える。このとき、第2固定部23に形成された抗張力体用凹部25内に略均等に分配するようにする。
【0025】
図3及び図5に示すように、次に、仮固定部材30を前方に移動させて、ハウジング20の第2固定部23に嵌合させる。このとき、第2固定部23の抗張力体用凹部25と係合突部26に、仮固定部材30側の抗張力体用凸部35と係合孔32を合わせて嵌め込む。その後、切込み19を入れて2分割された外被15を回転防止リブ34間の外被用凹部31上に摺動させる。これにより、抗張力体16は、ハウジング20に固定する前に、仮固定部材30により仮固定される。
【0026】
このとき、固定部材13をハウジング20の後端部にねじ締めする際に、抗張力体16から作業者が手を離しても、抗張力体16が弛んだり偏ったりする心配はない。したがって、作業者のスキルに差がある場合でも、安定した光コネクタ10の組立作業を行うことができる。
【0027】
図1及び図6に示すように、次に、固定部材13を前方に移動させて、ハウジング20の第1固定部21の雄ねじ部22に、固定部材13の雌ねじ部17を螺合させる。最後に、はみ出した抗張力体16を切断して組立作業が完了する。これにより、抗張力体16は、固定部材13の螺合によりハウジング20の後端部に本固定される。このとき、外被15は弱い力で長手方向に若干摺動することができ、外被15が収縮した場合に、光コード11の端部も収縮できるので、光ファイバ心線18の突出を押えることができる。
【0028】
また、仮固定部材30の一対の回転防止リブ34により、光コード11が捻じられても捻じれが抑制され、捻じれが元に戻るようになる。これにより、切込み19により光ファイバ心線18から分離された光コード11の外被15の回転を確実に抑制できるとともに、外被15が完全に固定されていなくても、光コード11の捻じれを防止することができる。
【0029】
次に、上記実施形態の光コネクタの変形例を説明する。
上記実施形態と異なる点は、固定手段をねじ固定に変えてカシメ固定によって行う点である。すなわち、ハウジング20の後部の第1固定部21に固定部材13を挿着してから、圧着治具により第1固定部21と固定部材13をカシメ固定する。これにより、仮固定部材30により仮固定状態であった抗張力体16を簡易な組立作業により強固に固定することができる。その他の構成は上記実施形態と同じであるので、説明は省略する。
【0030】
なお、本発明の光コネクタは、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0031】
10…光コネクタ、11…光コード、13…固定部材、14…ブーツ部、15…外被、16…抗張力体、17…雌ねじ部、20…ハウジング(コネクタ本体)、21…第1固定部、22…雄ねじ部、23…第2固定部、24…挿通孔、25…抗張力体用凹部、26…係合突部、30…仮固定部材、31…外被用凹部、32…係合孔、33…貫通孔、34…回転防止リブ、35…抗張力体用凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗張力体を有する光コードを取り付ける光コネクタにおいて、
前記コネクタ本体の後部に嵌合され、該コネクタ本体の後部に抗張力体を挟んで係合する仮固定部材と、
該仮固定部材の外周に前記光コードの外被厚さ分の隙間を有し、前記仮固定部材を覆うように前記コネクタ本体の後部に固定されるとともに、該コネクタ本体と一体的に抗張力体を固定する固定部材と、
を備えることを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載の光コネクタであって、
前記コネクタ本体の後部は、前記光コードの外被を配置する外被用凹部を有することを特徴とする光コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の光コネクタであって、
前記コネクタ本体の後部は、前記抗張力体を配置する抗張力体用凹部を有するとともに、
前記仮固定部材の前部は、内周面に該抗張力体用凹部に係合可能な抗張力体用凸部を有することを特徴とする光コネクタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の光コネクタであって、
前記抗張力体を固定する固定手段が、前記コネクタ本体の後部および前記固定部材の内周面に形成されたねじ部であることを特徴とする光コネクタ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の光コネクタであって、
前記抗張力体を固定する固定手段が、前記コネクタ本体の後部と前記固定部材を圧着により固定することであることを特徴とする光コネクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−194255(P2012−194255A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56668(P2011−56668)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000110309)SEIオプティフロンティア株式会社 (80)
【Fターム(参考)】