説明

光センサ装置及びその製造方法

【課題】所望の角度・方向から入射してくる光のみを受光面に到達させて検出することを可能とした光センサ装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】赤外線を検出するIR素子10と、IR素子10を覆うモールド樹脂49と、モールド樹脂49を覆う蓋体60と、を備え、IR素子10の受光面16は、モールド樹脂49の表面と同一平面に配置された状態でモールド樹脂49から露出しており、蓋体60には、受光面16の視野角を制限する貫通した開口部65が設けられている。また、リードフレーム30をさらに備えると共に、蓋体60には鉤状の係止部が設けられていてもよい。この場合は、蓋体60の係止部にリードフレーム30の外周部が嵌合することによって、蓋体60をリードフレーム30に固定することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線等の光を検出する光センサ素子と、この光センサ素子から出力される信号を処理する半導体素子とを備えた光センサ装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。かかる文献には、その図2に示されているように、赤外線のみを透過させる光学フィルタ付きのセンサ素子が、その端面(即ち、受光面)を除いて樹脂で覆われ、樹脂から露出している受光面は樹脂の表面と同一平面に配置された(即ち、面一となっている)構造の赤外線センサが開示されている。また、センサ素子は、赤外線によって光起電力効果を生じる量子型のフォトダイオードであることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/095834号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された赤外線センサでは、センサ素子の受光面は樹脂の表面と面一となっている。このため、センサ素子の受光面には、さまざまな角度・方向から赤外線が入射可能であり、意図しない角度・方向から入射してくる赤外線を検出してしまう可能性があった。
そこで、この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、所望の角度・方向から入射してくる光のみを受光面に到達させて検出できるようにした光センサ装置及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る光センサ装置は、光を検出する光センサ素子と、前記光センサ素子を覆う封止部材と、リードフレームと、前記リードフレームの第1の面に固定された蓋体と、を備え、前記光センサ素子の受光面は、前記リードフレームの第1の面と同一平面に配置された状態で前記封止部材から露出しており、前記蓋体には、前記受光面の視野角を制限する貫通した開口部が設けられていることを特徴とする。
ここで、「受光面の視野角」とは、受光面における光の入射可能(到達可能)な角度の範囲のことである。視野角は、例えば、受光面の法線方向を基準に規定することができる。例えば図19に示すように、視野角θ1は、受光面の法線方向から入射してくる光と、その法線方向との交差角度で規定することができる。
【0006】
これに対して、本発明の一態様に係る光センサ装置によれば、蓋体に設けられた開口部により、所望の角度・方向から入射してくる光のみを受光面に到達させて検出することができる。これにより、例えば、指向性のある光のみを検出したり、発光源を特定したりすることが可能である。なお、「光センサ素子」としては、例えば、後述するIR素子10が該当する。「封止部材」としては、例えば、後述するモールド樹脂49が該当する。また、「光センサ装置」としては、例えば、後述するハイブリッドIR100、200、400、又は、ディスクリートIR300が該当する。
【0007】
また、上記の光センサ装置において、前記光センサ素子の前記受光面を覆う光学フィルタ、をさらに備えることを特徴としてもよい。ここで、光学フィルタは、所望の波長範囲の光を選択的に(即ち、透過率高く)透過させる機能を有する。このような構成であれば、所望の波長範囲の光のみを光センサの受光面に到達させて検出することができ、その波長範囲から外れる光は光学フィルタで遮断することができるため、光電変換により光センサ素子から出力される電気信号(即ち、光の検出信号)について、S/N比の向上が可能である。
【0008】
また、上記の光センサ装置において、前記蓋体の前記開口部の周辺には前記光学フィルタの外形及び寸法に対応した凹部が設けられており、前記凹部に前記光学フィルタが収納されていることを特徴としてもよい。このような構成であれば、光学フィルタの光センサに対する位置合わせは、光学フィルタを凹部へ収納することにより完了する。このため、光学フィルタの取付け作業を簡単に、且つ精度高く行うことができる。
【0009】
また、上記の光センサ装置において、前記蓋体には鉤状の係止部が設けられており、前記係止部に前記リードフレームの外周部が嵌合することによって、前記蓋体が前記リードフレームに固定されていることを特徴としてもよい。このような構成であれば、例えば接着剤を用いることなく蓋体をリードフレームに固定することができる。
また、上記の光センサ装置において、前記蓋体と前記リードフレームの前記第1の面との間に介在する接着剤、をさらに備え、前記接着剤によって前記蓋体は前記リードフレームに固定されていることを特徴としてもよい。このような構成であれば、例えば蓋体に係止部が無くても、蓋体をリードフレームに固定することができる。
【0010】
また、上記の光センサ装置において、前記光センサ素子から出力される信号を処理する半導体素子、をさらに備え、前記半導体素子は、前記リードフレームと電気的に接続され、且つ前記封止部材で覆われていることを特徴としてもよい。このような構成であれば、光センサ素子と半導体素子とを1つのパッケージ内に備えた光センサ装置を提供することができる。なお、「半導体素子」としては、例えば、後述するIC素子20が該当する。
【0011】
また、上記の光センサ装置において、前記リードフレームは、前記第1の面の反対側に第2の面を有し、前記半導体素子は、前記リードフレームの前記第2の面に取り付けられていることを特徴としてもよい。このような構成であれば、当該光センサ装置は、後述の製造方法により製造することができるため、例えば、受光面にはエッチングダメージがなく、光の透過性などに関して、高い品質の光センサ装置を提供することができる。また、例えば、半導体素子上に光センサを積んだスタック構造ではなく、光センサ素子と半導体素子とをインターポーザを含めて樹脂封止した構造でもないため、厚みの小さな光センサ装置を提供することができる。なお、「第1の面」としては、例えば、後述するリードフレーム30の上面(裏面)30aが該当する。「第2の面」としては、例えば、後述するリードフレーム30の表面が該当する。
【0012】
本発明の別の態様に係る光センサ装置の製造方法は、光を検出する光センサ素子を備えた光センサ装置をリードフレームを用いて製造する方法であって、前記リードフレームの第1の面に粘着テープの粘着性を有する面を貼付する工程と、前記粘着テープの前記粘着性を有する面であって、前記リードフレームから露出している領域に光センサ素子の受光面を貼付する工程と、前記リードフレームと前記光センサ素子とを電気的に接続する工程と、前記光センサ素子を封止部材で覆う工程と、前記封止部材及び前記リードフレームから前記粘着テープを除去する工程と、前記封止部材及び前記リードフレームを切断してパッケージを形成する工程と、前記リードフレームの前記第1の面を覆う蓋体を取り付ける工程と、を備え、前記蓋体には、前記受光面の視野角を制限する貫通した開口部が設けられていることを特徴とする。
このような方法によれば、所望の角度・方向から入射してくる光のみを受光面に到達させて検出することができ、例えば、指向性のある光のみを検出したり、発光源を特定したりすることが可能な光センサ装置を作製することができる。
【0013】
また、封止部材をエッチングすることなく、光センサ素子に光を導入するための窓を封止部材に形成することができる。従来技術と比べて、封止部材に窓を形成するためのエッチング工程が不要であるため、工程数の増加や製造コストの上昇を抑えることができる。また、光センサ素子の受光面にエッチングダメージを与えずに済むため、例えば光の透過性など、受光に関する性能の品質低下を防ぐことができる。
【0014】
本発明のさらに別の態様に係る光センサ装置の製造方法は、光を検出する光センサ素子と、前記光センサ素子から出力される信号を処理する半導体素子と、を備えた光センサ装置をリードフレームを用いて製造する方法であって、前記リードフレームの第1の面に粘着テープの粘着性を有する面を貼付する工程と、前記粘着テープの前記粘着性を有する面であって、前記リードフレームから露出している領域に前記光センサ素子の受光面を貼付する工程と、前記リードフレームの前記第1の面の反対側の第2の面上に前記半導体素子を取り付ける工程と、前記リードフレームと前記半導体素子とを電気的に接続する工程と、前記光センサ素子と前記半導体素子とを封止部材で覆う工程と、前記封止部材及び前記リードフレームから前記粘着テープを除去する工程と、前記封止部材及び前記リードフレームを切断してパッケージを形成する工程と、前記リードフレームの前記第1の面を覆う蓋体を取り付ける工程と、を備え、前記蓋体には、前記受光面の視野角を制限する貫通した開口部が設けられていることを特徴とする。
【0015】
このような方法によれば、上記の光センサ装置の製造方法と同様の効果を奏することができる。また、上記の効果に加えて、当該方法により作製される光センサ装置の構造は、半導体素子上に光センサを積んだスタック構造ではなく、光センサ素子と半導体素子とをインターポーザを含めて樹脂封止した構造でもないため、比較的簡単な方法で厚みの小さい光センサ装置を提供することができる。
【0016】
また、本発明のさらに別の態様に係る光センサ装置は、光を検出する光センサ素子と、前記光センサ素子を覆う封止部材と、前記封止部材を覆う蓋体と、を備え、前記光センサ素子の受光面は前記封止部材の上面と同一平面に配置された状態で前記封止部材から露出しており、前記蓋体には、前記受光面の視野角を制限する貫通した開口部が設けられていることを特徴とする。このような構成であれば、蓋体に設けられた開口部により、所望の角度・方向から入射してくる光のみを受光面に到達させて検出することができる。これにより、例えば、指向性のある光のみを検出したり、発光源を特定したりすることが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、所望の角度・方向から入射してくる光のみを受光面に到達させて検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係るハイブリッドIR100の構成例を示す図。
【図2】第1実施形態に係るIR素子10の構成例を示す図。
【図3】第1実施形態に係るIC素子20の、信号処理回路21の構成例を示す図。
【図4】第1実施形態に係るリードフレーム30の構成例を示す図。
【図5】第1実施形態に係る蓋体60の構成例を示す図。
【図6】第1実施形態に係るハイブリッドIR100の製造方法を示す図(その1)。
【図7】ハイブリッドIR100の製造方法を示す図(その2)。
【図8】ハイブリッドIR100の製造方法を示す図(その3)。
【図9】ハイブリッドIR100の製造方法を示す図(その4)。
【図10】ハイブリッドIR100の製造方法を示す図(その5)。
【図11】ハイブリッドIR100の製造方法を示す図(その6)。
【図12】ハイブリッドIR100の製造方法を示す図(その7)。
【図13】ハイブリッドIR100の製造方法を示す図(その8)。
【図14】第2実施形態に係るハイブリッドIR200の製造方法を示す図。
【図15】第3実施形態に係るハイブリッドIR300の構成例を示す図。
【図16】第4実施形態に係るディスクリートIR400の構成例を示す図。
【図17】第5実施形態に係るハイブリッドIR500の構成例を示す図。
【図18】第6実施形態に係るハイブリッドIR600の構成例を示す図。
【図19】視野角を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明による実施形態を、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する各図において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合もある。
(1)第1実施形態
(1.1)ハイブリッドIRの概略構成
図1(a)及び(b)は、本発明の第1実施形態に係るハイブリッドIR100の構成例を示す斜視図である。図1(a)は蓋体が取り付けられた後(即ち、完成した状態)のハイブリッドIR100を示す図であり、図1(b)は蓋体が取り付けられる前の状態を示す図である。
【0020】
図1(a)及び(b)に示すように、このハイブリッドIR100は、IR素子10と、IC素子20と、リードフレーム30と、モールド樹脂49と、蓋体60と、を有する。図1(b)に示すように、このハイブリッドIR100において、IR素子10の受光面16は、モールド樹脂49から露出しており、リードフレーム30の上面30a及びモールド樹脂49の上面49aとそれぞれ同一平面となるように(即ち、面一となるように)配置されている。また、IC素子20は、リードフレーム30のダイパッド領域に固定されており、その全てがモールド樹脂49で覆われるように封止されている。蓋体60は、リードフレーム30又はモールド樹脂49の少なくとも一方に固定されており、リードフレーム30の上面30a及びモールド樹脂49の上面49aを覆っている。また、この蓋体60には、受光面16の視野角を制限する貫通した開口部65が設けられている。外界の光は、この開口部65を通って受光面16に到達するようになっている。以下、ハイブリッドIR100を構成する各要素と、その製造方法について詳しく説明する。
【0021】
(1.2)IR素子の構成
図2(a)及び(b)は、本発明の第1実施形態に係るIR素子10の構成例を示す図であり、図2(a)はIR素子10の表面側を示す図、図2(b)は光電変換素子13の断面を示す図である。図2(a)に示すIR素子10は、赤外線を検出する光センサ素子であり、赤外線等の光を透過する光透過基板11と、この光透過基板11の表面側に形成された受光部12と、を備える。
【0022】
これらの中で、光透過基板11としては、GaAs基板が用いられる。また、GaAs基板の他に、例えば、Si、InAs、InP、GaP、Geなどの半導体基板、若しくは、GaN、AlN、サファイヤ基板、ガラス基板などの基板が用いられる。このような基板によれば、赤外線等の特定波長の光を、光透過基板11の裏面から表面にかけて効率的に透過させることができる。
【0023】
また、受光部12は、複数の光電変換素子13と、光電変換素子13で光電変換された電気信号を出力するためのパッド部14と、配線15と、を有する。光電変換素子13はいずれも量子型のフォトダイオードであって、配線15によって直列に接続されている。接続される光電変換素子13の数が大きいほど発生する起電力は大きくなり、センサとしての感度が高まる。
【0024】
図2(b)に示すように、光電変換素子13は、例えば、光透過基板11上に形成されたインジウム(ln)及びアンチモン(Sb)を含むInSbのようなn型化合物半導体層(n層)13aと、このn層13a上に形成されたノンドープの化合物半導体層層(π層)13bと、このπ層13b上に形成され、バンドギャップがn層13a及びπ層13bよりも大きいAlInSbのような化合物半導体層13cと、この化合物半導体層13c上に形成され、p型の不純物が高濃度にドーピングされているp型化合物半導体層(p層)13dとにより構成されている。このように、n層13aと、π層13bと、n層13a及びπ層13bよりもバンドギャップが大きい化合物半導体層13cと、p層13dとが順次積層されてなる光電変換素子13は、2000nm〜7400nmの赤外線を検出することができる。
【0025】
図2(a)に示すパッド部14は、受光部12の光電変換で得られた電気信号をIC素子に出力するために設けられている。このパッド部14は、例えば、互いに離間して配置された一対のパッド電極14a及び14bを有する。一方のパッド電極14aと複数の光電変換素子13からなる列の一端との間、及び、他方のパッド電極14bと上記列の他端との間がそれぞれ、配線15によって電気的に接続されている。
【0026】
ところで、このIR素子10において、パッド部14は、IR素子10の表面のより中心に近い一部範囲(中心部)に配置されている。また、複数の光電変換素子13は、このパッド部14の周囲に配置されている。このような配置によれば、パッド電極14a、14bにワイヤーボンディングする際、圧力や超音波が加わっても光透過基板11が欠損し難いという利点がある。また、光透過基板11が欠損し難いため、パッド電極14a、14bに対して、Au等からなるワイヤーを充分な圧力や超音波で接合することができる。このため、ワイヤーをパッド電極14a、14bにより確実に圧着することができ、ワイヤーボンディングの信頼性を高めることができる。次に、このIR素子10と同一のパッケージ内に配置されるIC素子20の構成例について説明する。
【0027】
(1.3)IC素子の構成
図3は、本発明の第1実施形態に係るIC素子20の、信号処理回路21の構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、IC素子20が有する信号処理回路21は、IR素子10やその他の各回路に対して必要に応じてバイアス電流若しくは電圧を与える電源回路22と、IR素子10からの電気信号を増幅する増幅回路23と、増幅された電気信号を予め設定した電圧と比較する判定回路24と、基準値としての予め設定した電圧を判定回路24に入力する基準値発生回路25とを含み、判定回路24は外部へ判定結果となるデジタル信号を出力する。信号処理回路21に含まれる上記の各要素はそれぞれ対応する要素と電気的に接続されている。
【0028】
一般に、IR素子を含む光センサ素子の出力信号の振幅、若しくは変動量は数μVから数mV以下と小さいため、電気信号は信号処理回路の増幅回路により増幅される。よって、IR素子10の受光部12に光が入射すると、該入射光は電気信号に変換されて増幅回路23へと出力される。増幅回路23では、電気信号を増幅して出力する。その後、増幅回路23から出力された電気信号は、人体や炎からの赤外線を感知したか否かを判断するための判定回路24に入力される(なお、この電気信号は、外部にアナログ出力しても良い。)。
【0029】
このとき、判定回路24には、基準値発生回路25により、判定回路24にて判定すべき波長の光、例えば、人体や炎からの赤外線に応じて設定された電圧(基準値電圧)が入力されており、判定回路24は、該基準値電圧と増幅された電気信号とを比較することにより、該比較結果の電気信号を外部へデジタル出力する。
なお、図3に示したような信号処理回路21を有するIC素子20は、量産性、設計の自由度等の観点から最も一般的なシリコン基板にCMOSプロセスやBiCMOSプロセス、若しくはバイポーラプロセス等により形成するのが好ましいが、GaAs基板をはじめとする化合物半導体基板に形成してもよく、用途や、使用環境等に応じて最適な材料とプロセスを選択することができる。次に、リードフレームの構成例について説明する。
【0030】
(1.4)リードフレームの構成
図4(a)及び(b)は、本発明の第1実施形態に係るリードフレーム30の構成例を示す平面図である。図4(a)はリードフレーム30の表面側を示し、図4(b)はリードフレーム30の裏面側を示している。
図4(a)及び(b)に示すリードフレーム30は、例えば、銅(Cu)板を、フォトリソグラフィ技術により、その表面及び裏面の側からそれぞれ選択的にエッチングし、ニッケル(Ni)−パラジウム(Pd)−金(Au)等のめっき(鍍金)処理を施すことにより形成されたものである。
【0031】
図4(a)において、リードフレーム30内の白色の領域は表面と裏面との間で貫通している領域(以下、貫通領域ともいう。)31を示し、ハッチングを付した領域は表面の側からハーフエッチングされた領域(以下、ハーフエッチング領域ともいう。)32aを示す。また、グレーの領域はエッチング時にフォトレジスト等でマスクされることにより、エッチングされなかった領域(以下、非エッチング領域)33aを示す。同様に、図4(b)において、リードフレーム30内の白色の領域は貫通領域31を示し、ハッチングを付した領域は裏面の側からハーフエッチングされた、ハーフエッチング領域32bを示す。また、グレーの領域はエッチング時にフォトレジスト等でマスクされことによりエッチングされなかった、非エッチング領域33bを示す(なお、この裏面側の非エッチング領域33bが、図1(b)に示したリードフレーム30の上面30aである。)。
【0032】
また、図4(a)に示すように、リードフレーム30の表面側のハーフエッチング領域32aには、IC素子を取り付けるためのダイパッド領域34が設定されている。さらに、このダイパッド領域34の隣(図4(a)では、右隣)にある貫通領域には、IR素子10を配置するための領域35が設定されている。
さらに、図4(a)及び(b)に示すリードフレーム30の外周部は、後述のダイシング工程で、ダイシングブレード等により切断される領域(カーフ幅という。)36となっている。
【0033】
なお、後述の図6(b)に示すように、リードフレーム30の表面側が非エッチング領域33aであり、且つその裏面側も非エッチング領域33bである部位(以下、第1の部位ともいう。)37の厚さをT1とし、リードフレーム30の表面側がハーフエッチング領域32aで裏面側が非エッチング領域である部位(以下、第2の部位ともいう。)38の厚さをT2としたとき、これらの大小関係は、T1>T2となっている。T1は例えば0.4[mm]であり、T2は例えば0.2[mm]である。また、第2の部位38は、第1の部位37と比べて、その表面が断面視で凹んでいる(即ち、第2の部位38の表面は、第1の部位37の表面よりも低い位置にある。)。ダイパッド領域34は、このような第2の部位38の表面に設定されている。次に、このリードフレーム30を用いて、光センサ装置の一種であるハイブリッドIR100を製造する方法について説明する。
【0034】
(1.5)蓋体の構成
図5(a)及び(b)は、本発明の第1実施形態に係る蓋体60の構成例を示す斜視図と、この斜視図をX4−X´4線で切断した断面図である。
図5(a)及び(b)に示すように、この蓋体60は、例えば、ハイブリッドIR100のパッケージの平面視による形状(即ち、平面形状)と同じ形状で同じ寸法(実際には、パッケージに対する蓋体60の取付けを容易にするために、パッケージよりも若干大きめの寸法)を有するプレート部61と、このプレート部61の外周の側面に設けられた(即ち、プレート部61を囲むように設けられた)ガイド部62と、このガイド部62に設けられた鉤状の係止部63と、を有する。このプレート部61のIR素子に対応する部分(即ち、蓋体60をパッケージに取り付けたときに、IR素子の受光面と向かい合う部分)には、受光面の視野角を制限するための、貫通した開口部65が設けられている。
このような構成を有する蓋体60は、例えば、射出成型で使用される液晶ポリマーで、熱変形温度が250°以上の材質で構成されている。これにより、実装時のリフロー条件(例えば、炉温260℃、時間10秒)に耐えることができる。
【0035】
また、図1(a)に示したように、この蓋体60をパッケージに被せると、ガイド部62によってパッケージの側面は覆われる。これにより、パッケージの4つの側面(即ち、4辺)からIR素子10の側へ、光が漏れ入らないようにすることができる。
また、後述するように、この鉤状の係止部63が、リードフレームの外周部に掛止されることによって、蓋体60はリードフレームに固定される。この掛止を容易にする(即ち、係止部63がリードフレームの外周に掛り易くする)ために、係止部63のリードフレームの表面側と接触する面63aは、水平面(図5では、プレート部61の表面)に対して傾斜している。この傾斜の角度θ2は、例えば、10°である。
【0036】
なお、図5(b)では、開口部65の側面65aが水平面に対して垂直である場合を示しているが、これはあくまで一例である。この第1実施形態において、開口部65の側面65aは水平面に対して傾斜していてもよい。例えば、IR素子の受光面から上側(即ち、光が入射してくる方向)に向かって徐々に径が広がるように、開口部65の側面65aは傾斜していてもよい。この側面65aの水平面に対する角度は、所望の視野角に応じて任意に設定可能である。
【0037】
また、図5(a)及び(b)では、ガイド部62の4辺のうちの1辺にのみ(即ち、断面視でプレート部61の片側にのみ)係止部63を設けた構成を図示したが、これはあくまで一例である。本発明の各実施形態では、例えば後述の図13に示すように、ガイド部62の4辺のうちの向かい合う2辺に(即ち、断面視でプレート部61の両側に)係止部63を設けた構成であってもよい。
【0038】
(1.6)ハイブリッドIRの製造方法
図6(a)〜図13は、本発明の第1実施形態に係るハイブリッドIR100の製造方法を示す工程図である。図6〜図12の各図において、(a)は表面側(即ち、第2の面の側)から見た平面図であり、(b)は(a)をX6−X´6〜X12−X´12線でそれぞれ切断したときの断面図である。なお、図10(a)では、図面の複雑化を回避するために金型の図示を省略している。
【0039】
図6(a)及び(b)に示すように、まず始めに、リードフレーム30´の裏面側(即ち、第1の面の側)に粘着テープ41を貼付する。ここでは、図4(a)及び(b)に示したリードフレーム30を1つの単位パターンとし、この単位パターンが平面視で縦方向及び横方向にそれぞれ連続して並ぶように配置されたリードフレーム30´を用意する。そして、この用意されたリードフレーム30´の裏面に粘着テープ41を貼付する。リードフレーム30´の裏面側に粘着テープ41を貼付することによって、貫通領域31の底面に粘着テープ41の粘着層が露出した状態となる。
【0040】
なお、粘着テープ41としては、粘着性を有すると共に、耐熱性を有する樹脂製のテープが用いられる。粘着性については、粘着層の糊厚がより薄いほうが好ましい。また、耐熱性については、約150℃〜200℃の温度に耐えることが必要とされる。このような粘着テープ41として、例えばポリイミドテープを用いていることができる。ポリイミドテープは、約280℃に耐える耐熱性を有している。このような高い耐熱性を有するポリイミドテープは、後のモールドやワイヤーボンディング時に加わる高熱にも耐えることが可能である。また、粘着テープ41としては、ポリイミドテープの他に、以下のテープを用いることも可能である。
【0041】
・ポリエステルテープ 耐熱温度、約130℃(但し使用条件次第で耐熱温度は約200℃にまで達する)。
・テフロン(登録商標)テープ 耐熱温度:約180℃
・PPS(ポリフェニレンサルファイド) 耐熱温度:約160℃
・ガラスクロス 耐熱温度:約200℃
・ノーメックペーパー 耐熱温度:約150〜200℃
・他に、アラミド、クレープ紙が粘着テープ41として利用し得る。
【0042】
次に、図7(a)及び(b)に示すように、粘着テープ41の粘着性を有する面であって、リードフレーム30´から露出している領域(その中でも、図4(a)及び(b)に示した、IR素子を配置するための領域35)にIR素子10を貼付する。この貼付(即ち、IR素子のダイボンディング)は、IR素子10の裏面16を貼り付け面として行う。なお、この貼付に際して、IR素子10の裏面16には予め保護膜(図示せず)を形成しておいてもよい。保護膜としては、例えばフォトレジストを用いることができる。このような保護膜は、例えば、IR素子10の基材である光透過基板11をダイシングする前に成膜しておくことができる。
【0043】
次に、図8(a)及び(b)に示すように、リードフレーム30´の表面に設定されているダイパッド領域にIC素子20を取り付ける。この取付け(即ち、IC素子のダイボンディング)は、例えば、IC素子20の裏面(即ち、上述の信号処理回路21などが形成された面の反対側の面)を取付け面として、銀(Ag)ペースト等の接着剤を介して行う。
【0044】
次に、図9(a)及び(b)に示すように、IC素子20とリードフレーム30´、及び、IC素子20とIR素子10をそれぞれ電気的に接続する。ここでは、IC素子20の表面にあるパッド電極26とリードフレーム30´のボンディング用端子部39とをAu等からなるワイヤー45で接続すると共に、IC素子20の表面にあるパッド電極27とIR素子10の表面にあるパッド電極14a、14bとをAu等からなるワイヤー46で接続する(即ち、ワイヤーボンディングを行う)。
【0045】
なお、IC素子20とリードフレーム30´との接続は、リードフレーム30´のボンディング用端子部39からIC素子20のパッド電極26に向かってワイヤー45を伸ばす、所謂逆ボンディングによって行うことが好ましい。即ち、ボールの形成を伴う1stボンドをリードフレーム30´のボンディング用端子部39に対して行い、2ndボンドをIC素子20のパッド電極26に対して行う。このような方法であれば、IC素子20のパッド電極27よりも、リードフレーム30´のボンディング用端子部39の方が低い位置にあるため、IC素子20のパッド電極26からリードフレーム30´のボンディング用端子部39に向かってワイヤー45を伸ばす、所謂正ボンディングの場合と比較して、ボンディング後のワイヤー45の高さを低くすることができる。
【0046】
また、IR素子10とIC素子20との接続は、IR素子10のパッド電極14a、14bからIC素子20のパッド電極27に向かってワイヤー46を伸ばすこと(つまり、IC素子20から見て逆ボンディング)によって行うことが好ましい。即ち、ボールの形成を伴う1stボンドをIR素子10のパッド電極14a、14bに対して行い、2ndボンドをIC素子20のパッド電極26に対して行う。このような方法であれば、IC素子20のパッド電極27よりも、IR素子10のパッド電極14a、14bの方が低い位置にあるため、ボンディング後のワイヤー46の高さを低くすることができる。
【0047】
次に、図10(a)及び(b)に示すように、リードフレーム30´の表面側に上金型47を配置すると共に、リードフレーム30´の裏面側にした下金型48を配置する。そして、上金型47と下金型48とによりリードフレーム30´を挟み込み、上金型47と下金型48とに挟まれた空間内にサイドからモールド樹脂を注入し、充填する。これにより、図11(a)及び(b)に示すように、リードフレーム30´の表面側において、IR素子10とIC素子20及びワイヤー45、46をモールド樹脂49で封止する。
【0048】
なお、モールド樹脂49としては、例えばエポキシ樹脂を用いることが可能である。また、この樹脂封止の工程では、上金型とリードフレーム30´の表面側の非エッチング領域33aとが隙間無く接触し、且つ、下金型とリードフレーム30´の裏面側の非エッチング領域33bとが隙間無く接触した状態で、両金型の重ね合わせにより形成される空間のサイドからモールド樹脂49が供給される。このため、図11(a)に示すように、樹脂封止後は、非エッチング領域33aはモールド樹脂49から露出した状態となる。また、この非エッチング領域33aで囲まれているハーフエッチング領域32aにもモールド樹脂49は供給されないため、この領域32aもモールド樹脂49から露出した状態となる。
【0049】
次に、リードフレーム30´の裏面側から粘着テープを除去する。粘着テープの除去後、ポストキュア、ウェットブラストを施し、さらに、IR素子10の裏面に図示しない保護膜が形成されている場合は、当該保護膜を除去する。
その後、モールド樹脂49及びリードフレーム30´を、ダイシング装置によりダイシングし、カーフ幅36を切断する。これにより、図12(a)及び(b)に示すように、モールド樹脂及びリードフレームは個々の製品(即ち、個々のハイブリッドIR100)に切り離されて、パッケージ化される。
【0050】
次に、このパッケージの表面に蓋体を取り付ける(蓋体の取付け工程)。ここで、図12(a)及び(b)に示したように、パッケージ化された個々のハイブリッドIR100の外周の側面には、リードフレーム30の第2の部位38であって、モールド樹脂49から露出している第2の部位38aが存在する。そこで、図13に示すように、この蓋体60の取付け工程では、蓋体60の内側(即ち、係止部63が存在する側)をパッケージの表面(即ち、リードフレーム30の上面30aであり、モールド樹脂49の上面49a)に向かい合わせ、この状態で、係止部63をリードフレーム30の第2の部位38aに引っ掛けて止める。即ち、断面視で水平方向に突き出ている第2の部位38aを、鉤状の係止部63に嵌合させる。これにより、蓋体60をリードフレーム30に固定する。このように固定した後は、IR素子10の受光面16の真上に、視野角制限用の開口部65が位置することとなる。
【0051】
なお、リードフレーム30は、上記したようにIC素子20が固定されるダイパッド領域と、このIC素子20と電気的に接続される複数の端子部とを有する。これら端子部には、モールド樹脂49で覆われたボンディング用端子部39と、このボンディング用端子部39と一体に形成されており、その一部がモールド樹脂49から露出している外部配線基板接続用端子部42(例えば、図12(a)を参照。)とがある。ハイブリッドIR100を、各種の機器に組み込む際は、この外部配線基板接続用端子部42を、例えばインターポーザ等の配線基板の端子部に電気的に接続する。これにより、受光面16が遮られることなく、ハイブリッドIR100を配線基板に実装することができる。
以上説明したように、本発明の第1実施形態によれば、蓋体60が有する視野角制限用の開口部65により、所望の角度・方向から入射してくる光のみをIR素子10の受光面16に到達させて検出することができる。これにより、例えば、指向性のある光のみを検出したり、発光源を特定したりすることが可能である。
【0052】
また、リードフレーム30の上面30aが蓋体60により覆われているため、例えば、パッケージの上方から液滴等が滴下された場合でも、この液滴がリードフレーム30の上面30aに付着することを防ぐことができるため、この液滴を介してIR素子10とリードフレーム30とがショートしてしまうことを防ぐことができる。さらに、リードフレーム30の上面30aは蓋体60で覆われて外部から視認することができないので、例えば、ユーザーがリードフレーム30の上面30aをIR素子10の受光面16であると誤認してしまうようなこともない。なお、図示しないが、この蓋体60の表面には、ハイブリッドIR100の品種名やロット番号等をレーザー又は印刷等の方法でマーキングすことも可能である。
【0053】
さらに、本発明の第1実施形態は、上記以外にも種々の効果を奏する。
即ち、本発明の第1実施形態によれば、IR素子10の受光面16を貼り付け面として、IR素子10を粘着テープ41に貼付した状態で樹脂封止を行い、その後、粘着テープ41を除去する。これにより、モールド樹脂49をエッチングすることなくIR素子10の受光面に光を入射させることができる。従来技術と比べて、光を導入するための窓を形成するために、モールド樹脂49をエッチングする必要はなく、エッチング工程とこれに付随するフォトリソグラフィ工程が不要であるため、工程数の増加や製造コストの上昇を抑えることができる。また、IR素子10の受光面16にエッチングダメージを与えずに済むため、例えば光の透過性など、受光に関する性能の品質低下を防ぐことができる。
【0054】
さらに、本発明の第1実施形態によれば、IC素子20上にIR素子10を積んだスタック構造ではなく、IR素子10とIC素子20とをインターポーザを含めて樹脂封止した構造でもないため、比較的簡単な方法で厚みの小さいハイブリッドIR100を作製することができる。
また、上記の第1実施形態では、リードフレーム30のダイパッド領域34は、ハーフエッチングが施された第2の部位38の表面(即ち、ハーフエッチング領域32a)に設定されている。このため、例えば、厚さが全体的に均一な(即ち、表面にハーフエッチングが施されていない)リードフレームにIC素子を取り付ける場合と比較して、IC素子20の取付け位置を低くすることができる。これにより、ハイブリッドIR100の厚さをより薄くすることができる。上記の逆ボンディングと共に、ハイブリッドIR100のさらなる小型、薄型化に寄与することができる。
【0055】
さらに、上記の第1実施形態では、IR素子10とIC素子20とが1つのパッケージ内に配置されている。このため、これらを別々に用意し、インターポーザ等の配線基板に対してそれぞれ実装する場合と比べて、IR素子10とIC素子20との離間距離を短くすることができ、実装密度の向上が寄与することができる。また、配線基板に対する実装の部品点数を減らすことができるため、実装にかかるコストの低減が可能である。さらに、IR素子10とIC素子20とを電気的に接続する配線(例えば、図9(a)に示したワイヤー46)の全てをモールド樹脂49で封止できるため、IR素子10とIC素子20との電気的接続の信頼性を高めることができる。
【0056】
(2)第2実施形態
ところで、本発明では、IR素子の受光面上に、所望の波長の光を選択的に(即ち、透過率高く)透過させる機能を有する光学フィルタを配置し、この光学フィルタによって所望の波長範囲の光のみを受光面に到達させるようにしてもよい。この場合、光学フィルタは例えば接着剤を用いてIR素子の受光面に取り付けてもよい。或いは、上記の蓋体とIR素子との間で光学フィルタを挟持するようにしてもよい。
【0057】
図14(a)〜(c)は、本発明の第2実施形態に係るハイブリッドIR200の製造方法を示す工程図である。この第2実施形態では、図14(a)に示すように、蓋体70を用意する。この蓋体70において、例えば図5(a)及び(b)に示した蓋体60との違いは、IR素子10を収納するための凹部67を蓋体60の内側に有する点である。この凹部67は、光学フィルタの外形と同じ形で、同じ寸法(実際には、光学フィルタの凹部67への嵌め込みを容易に行うために、光学フィルタよりも若干大きめの寸法)を有する。
【0058】
次に、図14(b)に示すように、この凹部に光学フィルタ68を嵌め込む。上述のように、凹部の外形及びその寸法は光学フィルタ68の外形及び寸法に対応している。このため、光学フィルタ68を凹部へ嵌め込むことにより、光学フィルタ68の取付けと、IR素子10に対する位置合わせとが同時に完了する。凹部の形状と大きさが光学フィルタ68のそれらに対応していることにより、光学フィルタ68の取付け作業を簡単に、且つ精度高く行うことができる。
【0059】
次に、図14(c)に示すように、ダイシングによりパッケージ化されたハイブリッドIR100)に、光学フィルタ68が嵌め込まれた蓋体70を取り付ける。この蓋体70の取付け方法は例えば第1実施形態と同じである。即ち、蓋体60の内側をパッケージの表面に向かい合わせ、この状態で、係止部63をリードフレーム30の第2の部位38aに引っ掛けて止める。これにより、光学フィルタ68を有するハイブリッドIRが完成する。
【0060】
なお、光学フィルタ68の種類に特に制限はなく、赤外線を透過する機能を有するものであればよい。或いは、赤外線の中でも、特定の波長の赤外線を選択的に透過する機能を有するものでもよい。例えば、光学フィルタ68は、光学部材と、この光学部材上に多層で形成された薄膜とで、長波長又は短波長、又はその両方の波長の赤外線を透過させない機能を有するものであり、これらの透過機能を組み合わせて結果的に、特定の波長の赤外線のみを透過させる機能を有するものでもよい。
【0061】
この光学フィルタ68は、特定の波長の赤外線のみを透過させる機能を1枚で行っても良いし、場合によっては複数枚を使用することもできる。また、この光学部材の材料としては、シリコン(Si)、硝子(SiO)、サファイヤ(Al)、Ge、ZnS、ZnSe、CaF、BaFなどの所定の赤外線が透過する材料が用いられ、また、これに蒸着される薄膜材料としては、シリコン(Si)、硝子(SiO)、サファイヤ(Al)、Ge、ZnS、TiO、MgF、SiO、ZrO、Taなどが使用される。また、光学部材上に異なる屈折率を有する誘電体を層状に積層した誘電体多層膜フィルタは、表面、裏面異なる所定の厚み構成で両面に作られていてもよいし、また、片面のみに形成されていてもよい。また、不要な反射を防止する目的で反射防止膜が表面、裏面の両面、又は片面の最表層に形成されていても構わない。
【0062】
以上説明したように、本発明の第2実施形態によれば、所望の波長範囲の光(例えば赤外線、又は、赤外線の中でも特定の波長の赤外線)のみをIR素子10の受光面に到達させて検出することができ、その波長範囲から外れる光は光学フィルタ68で遮断することができるため、光電変換によりIR素子10から出力される電気信号(即ち、赤外線の検出信号)について、S/N比の向上が可能である。
【0063】
(3)第3実施形態
なお、上記の第1、第2実施形態では、蓋体60の取付けを、係止部63をリードフレーム38に引っ掛けることにより行う場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られることはない。例えば、接着剤を用いて蓋体60をパッケージの上面に取り付けてもよい。具体的には、図15(a)〜(c)に示すような構成であってもよい。
【0064】
図15(a)〜(c)は、本発明の第3実施形態に係るハイブリッドIR300の構成例を示す斜視図と、断面図である。図15(a)は蓋体60を取り付ける前の状態を示し、図15(b)及び(c)は蓋体60を取り付けた後の状態を示している。
このハイブリッドIR300において、例えば図1(a)及び(b)や、図12(a)〜図14(c)に示したハイブリッドIR100、200との違いは、リードフレーム38に対する蓋体60の固定方法と、その固定方法の違いによる蓋体60の構造だけである。
【0065】
即ち、図15(c)に示すように、この第3実施形態において、蓋体60には係止部が設けられておらず、係止部にリードフレーム30の外周部は嵌合していない。その代わりに、図15(a)に示すように、リードフレーム30の上面30aに接着剤69を塗布し、その後、蓋体60をパッケージに載せて樹脂を加熱硬化する。又は、図示しないが、蓋体60(光学フィルタが予め取り付けられていてもよい)の内側の面に接着剤69を滴下し、その後、蓋体60をパッケージに載せて樹脂を加熱硬化する。これらの方法により、図15(b)及び(c)に示すように、蓋体60をリードフレーム30に固定する。
【0066】
つまり、蓋体60とリードフレーム30の上面30aとの間に接着剤69を介在させることによって、蓋体60をリードフレーム30に固定する。なお、蓋体60の内側の面に接着剤69を滴下する場合は、接着剤69の周囲への広がりを抑制するために、蓋体60の内側の面に若干の凹み(蓋体の外側から見れば、若干の膨らみ)を持たせてもよい。このように、接着剤69を用いた形態であっても、上記の第1、第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0067】
また、この接着剤69を用いた形態においても、蓋体60はガイド部62を有していてもよい。このガイド部62によって、パッケージの側面は覆われるため、パッケージの側面からIR素子10の側へ、光が漏れ入らないようにすることができる。
なお、図15(b)と図1(a)とを比較して分かるように、この第3実施形態において、蓋体60には、視野角制限用の開口部65以外には開口部は設けられていない。これは、開口部を介して接着剤69が蓋体60の上にはみ出ることを防ぐためである。
このような接着剤69を用いた形態は、次に説明するディスクリートIR400にも適用可能である。
【0068】
(4)第4実施形態
上記の第1、第2実施形態では、本発明をIR素子とIC素子とを混載したハイブリッドIRに適用する場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られることはない。本発明は、赤外線検出用の個別部品(所謂、ディスクリート)にも適用可能である。
図16(a)及び(b)は、本発明の第4実施形態に係るディスクリートIR400の構成例を示す平面図と、断面図である。図16(a)は蓋体70が取り付けられる前のディスクリートIR400の表面側(即ち、第2の面の側)を示す図であり、図16(b)は蓋体70が取り付けられた後のディスクリートIR400の断面を示す図である。
【0069】
図16(a)に示すように、このディスクリートIR400において、例えば、図1(a)及び(b)や、図12(a)〜図14(c)、図15(a)〜(c)に示したハイブリッドIR100、200、300との違いは、IC素子を有さない点と、このIC素子が取り付けるためのダイパッド領域がリードフレームにない点である。このディスクリートIR400では、Au等からなるワイヤー46によって、IR素子10とリードフレームのボンディング用端子部39とが電気的に接続されている。
【0070】
このような構成であっても、蓋体70が有する視野角制限用の開口部65により、所望の角度・方向から入射してくる光のみをIR素子10の受光面16に到達させて検出することができる。これにより、例えば、指向性のある光のみを検出したり、発光源を特定したりすることが可能である。また、光学フィルタ68が配置されることによって、所望の波長範囲の光のみをIR素子10の受光面に到達させて検出することができ、その波長範囲から外れる光は光学フィルタ68で遮断することができるため、例えば、赤外線の検出信号について、S/N比の向上が可能である。
【0071】
(5)第5実施形態
また、上記の第1実施形態では、ワイヤーボンディング工程で、IR素子10とIC素子20とをワイヤー46のみを介して電気的に接続する場合について説明した。しかしながら、本発明において、IR素子10とIC素子20との接続方法はこれに限定されることはない。
図17は、本発明の第5実施形態に係るハイブリッドIR500の構成例を示す平面図である。図17に示すように、本発明では、IR素子10のパッド電極14a、14bとリードフレーム30のボンディング用端子部40とをAu等からなるワイヤー46aで電気的に接続すると共に、このボンディング用端子部40とIC素子20のパッド電極27とをAu等からなるワイヤー46bで電気的に接続してもよい。つまり、リードフレーム30のボンディング用端子部40を経由して、IR素子10とIC素子20とを電気的に接続してもよい。このような方法であっても、上記の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0072】
また、図17に示すように、IR素子10とIC素子20とをリードフレーム30のボンディング用端子部40を経由して接続する場合は、IR素子10とボンディング用端子部40との接続、及び、IC素子20とボンディング用端子部40との接続を、それぞれ逆ボンディングによって行うことが好ましい。即ち、リードフレーム30のボンディング用端子部40からIR素子10のパッド電極14a、14bに向かってワイヤー46aを伸ばすことが好ましく、リードフレーム30のボンディング用端子部40からIC素子20のパッド電極27に向かってワイヤー46bを伸ばすことが好ましい。
このような方法であれば、正ボンディングの場合と比較して、ボンディング後のワイヤー46a、46bの高さを低くすることができるため、ハイブリッドIRの小型、薄型化に寄与することができる。
【0073】
(6)第6実施形態
図18(a)〜(d)は、本発明の第6実施形態に係るハイブリッドIR600の構成例を示す斜視図と平面図及び断面図である。図18(a)〜(c)は蓋体60を取り付ける前の状態を示し、図18(d)は蓋体60を取り付けた後の状態を示している。
図18(a)〜(d)に示すように、このハイブリッドIR600は、例えばインターポーザ等の配線基板70と、この配線基板70にフェースダウンで実装されたIR素子10と、この配線基板70にフェースアップで実装されたIC素子20と、配線基板70上においてIR素子10とIC素子20とを覆って封止するモールド樹脂49と、モールド樹脂49の上面(即ち、パッケージの上面)を覆う蓋体60と、を備える。
【0074】
IR素子10と配線基板70は例えばバンプ電極17を介して電気的に接続されている。また、IC素子20と配線基板70は、Au等からなるワイヤー45と、配線基板70上に設けられた電極71を介して電気的に接続されている。つまり、IR素子10とIC素子20は配線基板70を介して電気的に接続されており、IR素子10から出力される電気信号をIC素子20が処理するようになっている。
【0075】
また、このハイブリッドIR600においても、図18(c)に示すように、IR素子10の裏面(即ち、受光面)16は、モールド樹脂69の上面と同一平面に配置された状態で、モールド樹脂69から露出している。また、この蓋体60には、IR素子10の受光面16の視野角を制限する貫通した開口部65が設けられている。なお、この蓋体60は例えば接着剤69によって、モールド樹脂49の上面に取り付けられている。
【0076】
このような構成であっても、蓋体60が有する視野角制限用の開口部65により、所望の角度・方向から入射してくる光のみをIR素子10の受光面16に到達させて検出することができる。従って、他の実施形態と同様に、指向性のある光のみを検出したり、発光源を特定したりすることが可能である。
また、配線基板70は、PLP(Plating Lead Package)によって作製される場合を含む。
【0077】
(7)その他の実施形態
なお、上記の第1実施形態では、例えば図2(a)に示したように、IR素子10のパッド部14として、IR素子10の表面の中心部に一対のパッド電極14a、14bを配置した構造を示したが、これはあくまで一例である。本発明において、IR素子10のパッド部14は、例えば、IR素子10の表面の中心部で互いに離間して配置された3つ以上のパッド電極で構成されていてもよい。また、各パッド電極の配置位置も、IR素子10の表面の中心部ではなく、例えば、受光部12の周縁部であってもよい。このような構成であっても、IR素子10とIC素子20とを電気的に接続することが可能であり、IR素子10から電気信号を出力させることができる。
【0078】
さらに、上記の各実施形態では、光センサ素子の一例として、2000nm〜7400nmの赤外線を検出可能なIR素子を例示した。しかしながら、本発明において光センサ素子はこれに限定されるものではない。本発明において、光センサ素子は例えば紫外線のみを検出する素子であってもよく、又は、紫外線と赤外線の両方を検出する素子であってもよい。
【0079】
一例を挙げると、光透過基板11上にn層と、π層と、n層及びπ層よりもバンドギャップが大きい化合物半導体層と、p層とが順次積層されてなる光電変換素子13において、n層にInSbではなく、AlN、InGaP、InGaAsP、InAsSbといった他の材料を用いれば、波長が約250nmの紫外線から、波長が約12μmの赤外線までを検出可能な光センサ素子を作成することが可能である。このような場合は、紫外線から赤外線までを検出する光センサ素子と、この光センサ素子から出力される電気信号を処理するIC素子20とを、1つのパッケージ内に備えた光センサ装置を提供することができる。
【0080】
また、この場合は、光学フィルタ68も例えば紫外線のみを透過させる機能を有するものであってもよく、又は、紫外線と赤外線の両方を透過させるものであってもよい。光学フィルタ68の透過可能な波長範囲は、光センサ素子の検出可能な波長範囲に応じて、任意に設定可能である。
【符号の説明】
【0081】
10 IR素子
11 光透過基板
12 受光部
13 光電変換素子
14 パッド部
14a パッド電極
14b パッド電極
15 配線
16 裏面(受光面)
17 バンプ電極
20 IC素子
21 信号処理回路
22 電源回路
23 増幅回路
24 判定回路
25 基準値発生回路
26、27 パッド電極
30、30´ リードフレーム
30a リードフレームの上面(裏面)
31 貫通領域
32a ハーフエッチング領域
32b ハーフエッチング領域
33a 非エッチング領域
33b 非エッチング領域
34 ダイパッド領域
35 IR素子を配置するための領域
36 ダイシングストリート
37 第1の部位
38 第2の部位
39、40 リードフレームのボンディング用端子部
41 粘着テープ
42 リードフレームの外部配線基板接続用端子部
45、46、46a、46b ワイヤー
47 上金型
48 下金型
49 モールド樹脂
49a モールド樹脂の上面
60 蓋体
61 プレート部
62 ガイド部
63 係止部
65 開口部
68 光学フィルタ
69 接着剤
70 配線基板
71 電極
100、200、300、500 ハイブリッドIR
400 ディスクリートIR

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を検出する光センサ素子と、
前記光センサ素子を覆う封止部材と、
リードフレームと、
前記リードフレームの第1の面に固定された蓋体と、を備え、
前記光センサ素子の受光面は、前記リードフレームの第1の面と同一平面に配置された状態で前記封止部材から露出しており、
前記蓋体には、前記受光面の視野角を制限する貫通した開口部が設けられていることを特徴とする光センサ装置。
【請求項2】
前記光センサ素子の前記受光面を覆う光学フィルタ、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の光センサ装置。
【請求項3】
前記蓋体の前記開口部の周辺には前記光学フィルタの外形及び寸法に対応した凹部が設けられており、前記凹部に前記光学フィルタが収納されていることを特徴とする請求項2に記載の光センサ装置。
【請求項4】
前記蓋体には鉤状の係止部が設けられており、
前記係止部に前記リードフレームの外周部が嵌合することによって、前記蓋体が前記リードフレームに固定されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の光センサ装置。
【請求項5】
前記蓋体と前記リードフレームの前記第1の面との間に介在する接着剤、をさらに備え、
前記接着剤によって前記蓋体は前記リードフレームに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の光センサ装置。
【請求項6】
前記光センサ素子から出力される信号を処理する半導体素子、をさらに備え、
前記半導体素子は、前記リードフレームと電気的に接続され、且つ前記封止部材で覆われていることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の光センサ装置。
【請求項7】
前記リードフレームは、前記第1の面の反対側に第2の面を有し、
前記半導体素子は、前記リードフレームの前記第2の面に取り付けられていることを特徴とする請求項6に記載の光センサ装置。
【請求項8】
光を検出する光センサ素子を備えた光センサ装置をリードフレームを用いて製造する方法であって、
前記リードフレームの第1の面に粘着テープの粘着性を有する面を貼付する工程と、
前記粘着テープの前記粘着性を有する面であって、前記リードフレームから露出している領域に光センサ素子の受光面を貼付する工程と、
前記リードフレームと前記光センサ素子とを電気的に接続する工程と、
前記光センサ素子を封止部材で覆う工程と、
前記封止部材及び前記リードフレームから前記粘着テープを除去する工程と、
前記封止部材及び前記リードフレームを切断してパッケージを形成する工程と、
前記リードフレームの前記第1の面を覆う蓋体を取り付ける工程と、を備え、
前記蓋体には、前記受光面の視野角を制限する貫通した開口部が設けられていることを特徴とする光センサ装置の製造方法。
【請求項9】
光を検出する光センサ素子と、前記光センサ素子から出力される信号を処理する半導体素子と、を備えた光センサ装置をリードフレームを用いて製造する方法であって、
前記リードフレームの第1の面に粘着テープの粘着性を有する面を貼付する工程と、
前記粘着テープの前記粘着性を有する面であって、前記リードフレームから露出している領域に前記光センサ素子の受光面を貼付する工程と、
前記リードフレームの前記第1の面の反対側の第2の面上に前記半導体素子を取り付ける工程と、
前記リードフレームと前記半導体素子とを電気的に接続する工程と、
前記光センサ素子と前記半導体素子とを封止部材で覆う工程と、
前記封止部材及び前記リードフレームから前記粘着テープを除去する工程と、
前記封止部材及び前記リードフレームを切断してパッケージを形成する工程と、
前記リードフレームの前記第1の面を覆う蓋体を取り付ける工程と、を備え、
前記蓋体には、前記受光面の視野角を制限する貫通した開口部が設けられていることを特徴とする光センサ装置の製造方法。
【請求項10】
光を検出する光センサ素子と、
前記光センサ素子を覆う封止部材と、
前記封止部材を覆う蓋体と、を備え、
前記光センサ素子の受光面は前記封止部材の上面と同一平面に配置された状態で前記封止部材から露出しており、
前記蓋体には、前記受光面の視野角を制限する貫通した開口部が設けられていることを特徴とする光センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−114168(P2012−114168A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260534(P2010−260534)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】