説明

光チャネルモニタのデータ収集方法およびプログラムならびに伝送装置

【課題】伝送路の光レベルの変動中に光チャネルモニタで測定したデータの誤差が大きくなった場合に、装置の誤動作を未然に防止する。
【解決手段】A/D変換器6にてトータル光パワーのA/D変換を行う。A/D変換されたトータル光パワーのデータは、変換の度に比較器8にて基準光パワーと比較され、その差分があらかじめ設定された閾値を超過した場合,変動検出フラグを発出(オンに)する。比較後,処理装置9は光チャネルモニタ3が各波長のデータの収集を完了するまで上記のA/D変換、比較を繰り返す。その後、処理装置9は、変動検出フラグの発出有無をモニタする。変動検出フラグが発出している場合は、処理装置9は、収集データを廃棄し、前値保持動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長多重光における各波長の信号光パワーをモニタする、波長多重伝送(WDM)用の光チャネルモニタに関し、特に光チャネルモニタのデータ収集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波長多重伝送技術の適用拡大に伴い、伝送路ファイバ内の各波長の信号光を合分波せずに直接モニタリングする手段として,光チャネルモニタの需要が拡大している。
【0003】
光チャネルモニタには大きく分けて2つの方式が存在する。1つは,内部に具備した光フィルタを波長掃引し,そのフィルタの出力をフォトディテクタで受光し,入射光の各波長における光レベルをモニタするモノクロメータ方式である。もう1つは,回折格子などの波長分波器の分波側に複数のフォトディテクタを配置し,各ディテクタの受光レベルを掃引することで,入射光の各波長における光レベルをモニタするポリクロメータ方式である。
【0004】
たとえば、特許文献1は、波長多重伝送システムに適用される光増幅装置を開示している。入力端から出力端にかけて、第1、第2、および第3の光分岐器が順に取付けられ、第2の光分岐器の分岐路では全ての複数波長の信号光のパワーがモニタされ、第3の光分岐器の分岐路では光チャネルモニタが接続され、信号光のパワーを波長毎に測定することが記載されている。
【0005】
どちらの方式も伝送路ファイバ内のすべての波長の信号光を同時にモニタすることは不可能である。そのため,掃引中に,伝送路の光レベルの変動などにより、光チャネルモニタに入射する光レベルが変化した場合,変動中に測定したデータの誤差が大きくなる問題があった。光チャネルモニタの収容されている伝送装置は,光チャネルモニタの検出結果を基にアラーム動作などを行っていることから、伝送装置が誤動作するという問題があった。また,上記誤動作を防止するためには、モニタ値をアベレージングするなどの処理が必要となり、その結果、光チャネルモニタの応答速度が犠牲となっていた。
【特許文献1】特開2006−286918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、伝送路の光レベルの変動中に測定したデータの誤差が大きくなった場合に、装置の誤動作を未然に防止する、光チャネルモニタのデータ収集方法およびプログラムならびに伝送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は,掃引中の光チャネルモニタへの全信号光の光パワーレベルを監視し、予め設定された閾値以上のレベル変動を検知した場合、光チャネルモニタから収集した、各チャネルの光パワー情報およびトータル光パワー情報を廃棄し、前値保持するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は下記の効果がある。
(1)装置の誤動作を未然に防止することが可能である。その理由は,光チャネルモニタに入射する光レベルの変動が大きい場合に,収集データを廃棄し、装置を前値保持動作させるためである。
(2)装置のアラーム動作の向上が可能である。その理由は,アベレージング,保護などによる過渡変動に対する誤動作対策を実施する必要がないためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0010】
[第1の実施形態]
図1を参照すると、本発明の第1の実施形態による伝送装置は、光カプラ1、2と、光チャネルモニタ3と、フォトディテクタ4と、I/変換器5と、A/D変換器6と、レジスタ7と、比較器8と、処理装置9とを有する。
【0011】
光カプラ1は,伝送路10内の波長多重信号光を分岐し,その一部を光チャネルモニタ3に引き込むための光カプラである。一般的には,引き込み側が10dBから20dBのタップレシオの光カプラを用いる。光カプラ2は,引き込んだ波長多重信号光を,トータル光パワー検出および入力レベル変動検出用のフォトディテクタ4と光チャネルモニタ3に分岐させるための光カプラである。一般的には本光カプラのタップレシオは3から20dBである。光チャネルモニタ3は,波長多重信号光における各波長の信号光パワーをモニタリングする光デバイスである。フォトディテクタ4は,波長多重信号光のトータル光パワーをモニタする。なお,光カプラ2とフォトディテクタ4が一体化したモジュール(TAP−PDモジュール)も市販されており、本発明に適用可能である。I/V変換器5は,フォトディテクタ4のフォトカレントを電圧に変換する回路である。一般的には抵抗分圧やトランスインピーダンスアンプを用いる。A/D変換器6はI/V変換器5の出力電圧を量子化する。レジスタ7は、基準光パワーおよびトータル光パワー情報を保持する。
比較器8は、逐次実行されるA/D変換の結果と、レジスタ7に保持されている基準光パワーの差分を所定の閾値と比較し、該閾値を越えていた場合、トータル光パワーの変動有無フラグをオンにする。処理装置9は、CPU(Centrl Processor Unit)やDSP(Digital Signal Processor)などのプロセッサである。処理装置9は、光チャネルモニタ3でモニタされた各チャネル情報の収集、レジスタ7に保持されているトータル光パワー情報の入力、比較器8への閾値の設定、変動有無フラグがオンの場合の光チャネルモニタ3からの収集データの廃棄などの制御を行う。
【0012】
次に、本実施形態の動作を、図2を参照して説明する。
【0013】
はじめに,光カプラ1、2、フォトディテクタ4を経、I/V変換器5から出力され
た、波長多重信号光のフォトカレントをA/D変換器6にてA/D変換し(ステップ101)、その変換結果を基準光パワーとしてレジスタ7に保持する(ステップ102)。
【0014】
その後,光チャネルモニタ3は各波長のデータの収集を開始する(ステップ103)。同時にA/D変換器6にてトータル光パワーのA/D変換を行う(ステップ104)。A/D変換されたトータル光パワーのデータは、変換の度に比較器8にてレジスタ7に保持されている基準光パワーと比較され(ステップ105)、その差分があらかじめ設定された閾値を超過した場合,変動検出フラグを発出(オンに)する(ステップ106)。閾値は伝送路の変動要因により適宜決定するが,一般的な伝送路のレベル変動要因は,伝送路ファイバへの物理的接触によるマイクロベンディングであることから0.5dBから10dB程度の範囲となる。比較後,処理装置9は光チャネルモニタ3が各波長(各チャネル)のデータの収集を完了したかを監視し(ステップ107)、完了していない場合は光チャネルモニタのデータ収集が完了するまで上記のA/D変換、比較を繰り返す。前述のとおり光チャネルモニタ3のデータ収集時間は0ではないので,収集の間(一般的には数ms〜数sec)、上記変換および比較を繰り返し実施する。A/D変換の実施サイクルは短いほど望ましいが、サイクルとA/D変換精度はトレードオフのため、一般的には数us〜数十msの間である。その後、処理装置9は、変動検出フラグの発出有無をモニタする(ステップ110)。発出していないことを確認した場合、処理装置9は、各波長の信号光パワーおよびトータル光パワーを取り込み、アラーム処理など必要な処理を実施する(ステップ111)。もし変動検出フラグが発出している場合は、処理装置9は、収集データを廃棄し、前値保持動作を行う(ステップ112)。
【0015】
本実施形態は、光チャネルモニタ3に入射する光レベルの変動が大きい場合に,収集データを廃棄し、装置を前値保持動作させるため、装置の誤動作を未然に防止することが可能である。
【0016】
[第2の実施形態]
本実施形態は第1の実施形態と基本的構成は同じであるが、基準光パワーの設定方法が第1の実施形態と異なる。すなわち、処理装置9は、今回のデータ収集周期の最後にA/D変換され、かつ閾値以上のレベル変動がない変換結果を、次回のデータ収集周期の基準光パワーとしてレジスタ7に保持する(ステップ108、109’)。ステップ101、102の処理は最初のデータ収集周期のみ実行される。
【0017】
[第3の実施形態]
本実施形態は第1の実施形態と基本的構成は同じであるが、基準光パワーの設定方法が第1の実施形態と異なる。すなわち、処理装置9は、今回のデータ収集周期の最後にA/D変換され、かつ閾値以上のレベル変動がない変換結果と、過去1回以上のデータ収集周期の最後にアナログ/ディジタル変換され、かつ閾値以上のレベル変動がない変換結果の平均値を算出し、次回のデータ収集周期の基準光パワーとしてレジスタ7に保持する(ステップ113)。ステップ101、102の処理は最初のデータ収集周期のみ実行される。
【0018】
[第4の実施形態]
本実施形態は第1の実施形態と基本的構成は同じであるが、基準光パワーの設定方法が第1の実施形態と異なる。すなわち、A/D変換結果を逐次、レジスタ7に保持し(ステップ114)、レジスタ7に保持されているA/D変換結果を次回のデータ収集周期の基準光パワーとして用いる。ステップ101、102の処理は最初のデータ収集周期のみ実行される。
【0019】
[第5の実施形態]
なお、A/D変換器6とレジスタ7と比較器8と処理装置9の部分は、その機能を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行するものであってもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM等の記録媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク装置等の記憶装置を指す。さらに、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、インターネットを介してプログラムを送信する場合のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの(伝送媒体もしくは伝送波)、その場合のサーバとなるコンピュータ内の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものを含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態の伝送装置のブロック図である。
【図2】第1の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図3】第2の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図4】第3の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図5】第4の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0021】
1 光カプラ
2 光カプラ
3 光チャネルモニタ
4 フォトディテクタ
5 I/V変換器
6 A/D変換器
7 レジスタ
8 比較器
9 処理装置
10 伝送路
101〜114 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長多重光における各波長の信号光パワーをモニタする、掃引中の光チャネルモニタへの全信号光の光パワーレベルを監視し、予め設定された閾値以上のレベル変動を検知した場合、前記光チャネルモニタから収集した、各チャネルの光パワー情報およびトータル光パワー情報を廃棄し、前値保持する、光チャネルモニタのデータ収集方法。
【請求項2】
波長多重光における各波長の信号光パワーをモニタする、掃引中の光チャネルモニタへの全信号光の光パワーレベルをアナログ/ディジタル変換し、その変換結果を所定の基準光パワーと比較し、その差分が所定の閾値を越えているかどうか判定するステップと、
前記差分が前記閾値を越えていた場合、前記光チャネルモニタから収集した、各チャネルの光パワー情報およびトータル光パワー情報を廃棄し、前値保持するステップと
を有する、光チャネルモニタのデータ収集方法。
【請求項3】
各データ収集周期の最初のアナログ/ディジタル変換結果を前記所定の基準光パワーとして保持するステップをさらに有する、請求項2に記載の光チャネルモニタのデータ収集方法。
【請求項4】
今回のデータ収集周期の最後にアナログ/ディジタル変換され、かつ閾値以上のレベル変動がない変換結果を、次回のデータ収集周期の前記基準光パワーとして保持するステップをさらに有する、請求項2に記載の光チャネルモニタのデータ収集方法。
【請求項5】
今回のデータ収集周期の最後にアナログ/ディジタル変換され、かつ閾値以上のレベル変動がない変換結果と、過去1回以上のデータ収集周期の最後にアナログ/ディジタル変換され、かつ閾値以上のレベル変動がない変換結果の平均値を算出し、次回のデータ収集周期の基準光パワーとして保持するステップをさらに有する、請求項2に記載の光チャネルモニタのデータ収集方法。
【請求項6】
前記基準光パワーとして、直前にアナログ/ディジタル変換された結果を用いる、請求項2に記載の光チャネルモニタのデータ収集方法。
【請求項7】
伝送路内の波長多重光を分岐させる第1の光カプラと、
フォトディテクタと、
前記第1の光カプラにより分岐された波長多重光を、該波長多重光における各波長の信号光パワーをモニタする光チャネルモニタと、前記フォトディテクタに分岐させる第2の光カプラと、
前記フォトディテクタのフォトカレントを電圧に変換するI/V変換器と、
前記I/V変換器の出力電圧を量子化するA/D変換器と、
所定の基準光パワーを保持するレジスタと、
前記A/D変換器によって逐次実行されたアナログ/ディジタル変換結果を前記レジスタに保持されている基準光パワーと比較し、その差分が、予め設定された閾値を超過したかどうか判定する比較器と、
前記比較器に前記閾値を設定し、前記比較器から判定結果を入力し、該判定結果が、前記差分が前記閾値を超過していたことを示していた場合、前記光チャネルモニタから収集した、各チャネルの光パワー情報およびトータル光パワー情報を廃棄し、前値保持する処理装置と
を有する伝送装置。
【請求項8】
前記処理装置は、各データ収集周期の最初のアナログ/ディジタル変換結果を前記所定の基準光パワーとして前記レジスタに保持する、請求項7に記載の伝送装置。
【請求項9】
前記処理装置は、今回のデータ収集周期の最後にアナログ/ディジタル変換され、かつ閾値以上のレベル変動がない変換結果を、次回のデータ収集周期の前記基準光パワーとして前記レジスタに保持する、請求項7に記載の伝送装置。
【請求項10】
前記処理装置は、今回のデータ収集周期の最後にアナログ/ディジタル変換され、かつ閾値以上のレベル変動がない変換結果と、過去数回のデータ収集周期の最後にアナログ/ディジタル変換され、かつ閾値以上のレベル変動がない変換結果の平均値を算出し、次回のデータ収集周期の基準光パワーとして前記レジスタに保持する、請求項7に記載の伝送装置。
【請求項11】
前記レジスタは、記A/D変換器によって逐次実行されたアナログ/ディジタル変換結果を保持し、前記比較器は、前記基準光パワーとして、前記レジスタに保持されている、直前にアナログ/ディジタル変換された結果を用いる、請求項7に記載の伝送装置。
【請求項12】
波長多重光における各波長の信号光パワーをモニタする、掃引中の光チャネルモニタのへの全信号光の光パワーレベルをアナログ/ディジタル変換し、その変換結果を所定の基準光パワーと比較し、その差分が所定の閾値を越えているかどうか判定する手順と、
前記光チャネルモニタから、各チャネルの光パワー情報およびトータル光パワー情報を収集する手順と、
前記差分が前記閾値を越えていた場合、前記光チャネルモニタから収集した、各チャネルの光パワー情報およびトータル光パワー情報を廃棄し、前値保持する手順と
をコンピュータに実行させるための、光チャネルモニタのデータ収集プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−152967(P2009−152967A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330059(P2007−330059)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】