説明

光チャネルモニタ

【課題】製造コストを増加させずに分解能を向上させたポリクロメータ方式の光チャネルモニタを提供する。
【解決手段】本発明の光チャネルモニタは、各フォトディテクタが検出する信号帯域を最適化し、さらにパワー補正演算を実施する。こうすることで、信号対雑音比が劣悪な環境においても、信号光のパワーを精度良く検出し、かつ、無信号時のフォトディテクタに入射するノイズ成分を少なくすることが出来る。その結果、本発明によれば、ポリクロメータ方式の光チャネルモニタにおけるダイナミックレンジを向上させることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光チャネルモニタに係り、特に、ポリクロメータ方式の光チャネルモニタに係る。
【背景技術】
【0002】
光通信システムでは、一本の光ファイバでより多くの情報を伝搬するために、波長分割多重化技術を用いる。すなわち、周波数領域を複数のチャネルに分割した上で、これら複数のチャネルにそれぞれ対応する異なる波長を有する複数の光信号を多重化し、同じ光ファイバで同時に伝搬する。
【0003】
ここで、それぞれのチャネルにおける光信号の光パワーが正常範囲内であるように監視する必要がある。光チャネルモニタ(Optical Channel Monitor、以下「OCM」と記す)は、光回路におけるチャネルごとの光パワーを監視する装置である。OCMには、大きく分けて、モノクロメータ方式と、ポリクロメータ方式の、2種類がある。
【0004】
モノクロメータ方式のOCMは、まず、内部に具備した光フィルタを波長掃引し、この光フィルタの出力をフォトディテクタで受光し、受光した入射光の各波長における光レベルをモニタする。モノクロメータ方式のOCMは、その構造上、光フィルタの経時変化を補正して波長精度を確保するために、外部に設けられた基準光源を必要とする。また、波長掃引を行う時間が必要であるため、データ収集にかかる時間が比較的長い。
【0005】
ポリクロメータ方式のOCMは、回折格子などの波長分波器の分波側に複数のフォトディテクタを配置して、各フォトディテクタにおける受光レベルを掃引することで、入射長の各波長における光レベルをモニタする。ポリクロメータ方式のOCMは、複数のフォトディテクタが同時にデータ収集を行うため、モノクロメータ方式のOCMよりも高速に動作する。その反面、従来技術によるポリクロメータ方式のOCMでは、増幅自然放出光(Amlified Spontaneous Emission、以下「ASE」と記す)成分と光信号成分とを識別するために、分解能をあげる必要がある。この必要性に伴い、1つのポリクロメータ方式のOCMに含まれるフォトディテクタの数量が多くなり、その結果、製造コストが上昇してしまう課題が知られている。
【0006】
上記に関連して、特許文献1(特開2000−292644号公報)には、光モジュールに係る記載が開示されている。この光モジュールは、コリメータと、分波手段と、受光手段とを備えたことを特徴としている。ここで、コリメータは、光伝送路から出射される多波長信号光を平行光線に変換する。分波手段は、通過波長が異なる複数の光学フィルタを有し、平行光線を複数の光学フィルタに通過させることにより、平行光線を波長の異なる複数の信号光に分波する。受光手段は、分波手段により分波された各波長の信号光を受光する。
【0007】
また、特許文献2(特開2001−168841号公報)には、波長多重光増幅器に係る記載が開示されている。この波長多重光増幅器は、少なくとも2つ以上の信号光波長を一括増幅する。この波長多重光増幅器は、光モニタ部と、光可変減衰部と、を備える。ここで、光モニタ部は、波長多重光増幅器がファイバ型の光増幅器であり、かつ、光増幅器は入力される波長数が最大数の時に所要のゲインかつ平坦なゲインプロファイルが得られるように不純物ドープトファイバの不純物材料、不純物濃度およびファイバ長と励起強度が設定されており、かつ、波長多重光の光レベルを波長毎にモニタすることができるとともに波長多重光の波長数を監視することができる。光可変減衰部は、波長多重光のゲインプロファイルを変化させることなく若しくはゲインプロファイルを平坦化しつつ各波長光の光レベルを減衰させる。この波長多重光増幅器は、光可変減衰部の減衰量が光モニタ部の検出信号によって決定されることを特徴とする。
【0008】
また、特許文献3(特開2002−319899号公報)には、波長モニタ装置に係る記載が開示されている。この波長モニタ装置は、波長多重化されて伝送される光信号を波長毎にモニタする。この波長モニタ装置は、インターリーバと、複数の波長モニタ回路とを具備したことを特徴とする。ここで、インターリーバは、波長多重化された光信号を、その波長の並びに従って複数の系統に分岐する。複数の波長モニタ回路は、このインターリーバを介して分岐された各系統の光信号をそれぞれ分波して各波長の光信号を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−292644号公報
【特許文献2】特開2001−168841号公報
【特許文献3】特開2002−319899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、製造コストを増加させずに分解能を向上させたポリクロメータ方式のOCMを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による光チャネルモニタは、分波器と、複数の経路と、処理部とを具備する。ここで、分波器は、波長多重化された入力光信号を、多重化された波長ごとに分波して複数の光信号を生成する。複数の経路は、複数の光信号のそれぞれにおける光パワーを表す複数のデジタル信号をそれぞれ生成する。処理部は、複数のデジタル信号を入力して、光パワーの、分波器の特性に対応する補正値を算出する。分波器は、所定の範囲に含まれるFWHM(半値全幅)を有するフィルタを具備する。所定の範囲は、フィルタの通過中心波長精度と、入力光信号を生成したトランスポンダの発振波長精度とに基づいて設定されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のOCMは、各フォトディテクタが検出する信号帯域を最適化し、さらにパワー補正演算を実施する。こうすることで、信号対雑音比が劣悪な環境においても、信号光のパワーを精度良く検出し、かつ、無信号時のフォトディテクタに入射するノイズ成分を少なくすることが出来る。その結果、本発明によれば、ポリクロメータ方式のOCMにおけるダイナミックレンジを向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施形態によるOCMを利用する波長多重伝送システムの一例における全体的な構成を概略的に示すブロック回路図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態による光チャネルモニタ部の構成を概略的に示すブロック回路図である。
【図3A】図3Aは、トランスポンダの出力スペクトルの一例を示すグラフである。
【図3B】図3Bは、本実施形態による光チャネルモニタ部に用いられる光分波器の出力スペクトルを示すグラフである。
【図4】図4は、図3Aおよび図3Bに示した分波器およびトランポンダにおけるスペクトルを比較するグラフ群である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して、本発明によるOCMを実施するための形態を以下に説明する。
【0015】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態によるOCMを利用する波長多重伝送システム10の一例における全体的な構成を概略的に示すブロック回路図である。図1の波長多重伝送システム10における構成要素について説明する。図1の波長多重伝送システム10は、トランスポンダ部11と、光合波器12と、光増幅部13と、光アドドロップ装置14と、トランスポンダ15と、光チャネルモニタ部20とを具備している。トランスポンダ部11は、複数のトランスポンダ11a〜11xを具備している。トランスポンダ11a〜11xの総数は、多重化される波長の総数に等しいか、それ以上であることが望ましい。なお、トランスポンダ11a〜11xの総数について制限は特に無く、本発明を限定しないものとする。光増幅部13は、合計3つの光増幅器13a〜13cを具備している。なお、この数はあくまでも一例にすぎず、光増幅器13a〜13cの総数について制限は特に無く、本発明を限定しないものとする。光チャネルモニタ部20の詳細については、後述する。
【0016】
図1の波長多重伝送システム10における構成要素の接続関係について説明する。複数のトランスポンダ11a〜11xのそれぞれにおける出力部は、光合波器12における複数の入力部にそれぞれ接続されている。複数の光増幅器13a〜13cは、この順番に直列に接続されている。光合波器12における出力部は、光増幅部13における入力部、すなわち初段の光増幅器13aにおける入力部に接続されている。光増幅部13における出力部、すなわち最終段の光増幅器13cにおける出力部は、光アドドロップ装置14における第1の入力部に接続されている。光アドドロップ装置14における第1の出力部は、トランスポンダ15における入力部に接続されている。トランスポンダ15における出力部は、光アドドロップ装置14における第2の入力部に接続されている。光アドドロップ装置14における第2の出力部は、光チャネルモニタ部20における入力部に接続されている。なお、光素子同士は、光伝送路を介して接続されるのが一般的である。
【0017】
図1の波長多重伝送システム10における構成要素の動作について概略的に説明する。トランスポンダ部11における複数のトランスポンダ11a〜11xのそれぞれは、電気信号を光信号に変換して出力する。光合波器12は、入力した複数の光信号を波長多重し、1つの光信号を生成出力する。光増幅器部13における複数の光増幅器13a〜13cのそれぞれは、入力した波長多重光信号を増幅して出力する。
【0018】
光アドドロップ装置14は、トランスポンダ15と連携して、入力した波長多重光信号に他の光信号を分岐挿入して出力する。なお、光アドドロップ装置14は、内部に光フィルタを含んでいる。この光フィルタは、出力する波長多重光信号のスペクトルに影響を与えてしまう。この影響については、後述する。また、光チャネルモニタ部20の動作についても、後述する。
【0019】
図2は、本発明の実施形態による光チャネルモニタ部20の構成を概略的に示すブロック回路図である。図2の光チャネルモニタ部20における構成要素について説明する。図2の光チャネルモニタ部20は、光増幅器21と、光タップ22と、光分波器23と、フォトディテクタ部24と、電流電圧変換部25と、アナログデジタル変換部26と、演算処理部27とを具備する。フォトディテクタ部24は、複数のフォトディテクタ24a〜24xを具備している。電流電圧変換器部25は、複数の電流電圧変換器25a〜25xを具備している。アナログデジタル変換部26は、複数のアナログデジタル変換器26a〜26xを具備している。演算処理部27は、演算部28と、記憶部29とを具備している。記憶部29は、ルックアップテーブル30を格納している。
【0020】
後述するように、同じ添え字iを有するフォトディテクタ24iと、電流電圧変換器25iと、アナログデジタル変換器26iとは、この順番に直列に接続されて、一つの経路を形成する。したがって、フォトディテクタ24a〜24x、電流電圧変換器25a〜25xおよびアナログデジタル変換器26a〜26xのそれぞれにおける総数は等しく、すなわち経路の総数にも等しい。経路の総数は、多重化された波長の総数に等しいか、それ以上であることが望ましいが、トランスポンダ11a〜11xの総数とは必ずしも一致しなくて良い。
【0021】
図2の光チャネルモニタ部20における構成要素の接続関係について説明する。光増幅器21における入力部は、光チャネルモニタ部20における入力部に接続されており、すなわち、光アドドロップ装置14における出力部に接続されている。光増幅器21における出力部は、光タップ22における入力部に接続されている。光タップ22における1つの出力部は、光分波器23における入力部に接続されている。光分波器23における複数の出力部は、複数のフォトディテクタ24a〜24xのそれぞれにおける入力部に並列に接続されている。複数のフォトディテクタ24a〜24xのそれぞれにおける出力部は、複数の電流電圧変換器25a〜25xのそれぞれにおける入力部に並列に接続されている。複数の電流電圧変換器25a〜25xのそれぞれにおける出力部は、複数のアナログデジタル変換器26a〜26xのそれぞれにおける入力部に並列に接続されている。複数のアナログデジタル変換器26a〜26xのそれぞれにおける出力部は、演算処理部27における複数の入力部に並列に接続されている。
【0022】
なお、光タップ22における他の出力部については、光伝送路を介して別の光素子に接続されていることが望ましいが、本発明の実施形態には関係しないのでさらなる説明を省略する。もしくは、本実施形態による光チャネルモニタ部20は、光タップ22を省略して、光増幅器21における出力部を直接、光分波器23における入力部に接続しても構わない。
【0023】
図2の光チャネルモニタ部20における構成要素の動作について説明する。光増幅器21は、入力した波長多重光信号を増幅して出力する。光タップ22は、入力した波長多重光信号を、同じ成分を有する2つまたはそれ以上の波長多重光信号に分けて、2つまたはそれ以上の出力部からそれぞれ出力する。
【0024】
光分波器23は、入力した波長多重光信号をチャネルごとに分波して、複数の光信号を出力する。このとき、生成される複数の光信号の特性は、光分波器23に内蔵されたフィルタの特性に依存する。このフィルタの詳細については後述する。
【0025】
複数のフォトディテクタ24a〜24xのそれぞれは、入力した光信号を光電変換して電気信号を出力する。複数のフォトディテクタ24a〜24xのそれぞれとして、例えば、一般的な赤外線用PIN−PD(P−Instrinsic−N PhodoDiode:PIN型フォトダイオード)などを用いても良い。
【0026】
複数の電流電圧変換器25a〜25xのそれぞれは、入力した電流を電圧に変換して出力する。複数の電流電圧変換器25a〜25xのそれぞれとしては、例えば、トランスインピーダンスアンプ、ログアンプまたはCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)などを用いても良い。
【0027】
複数のアナログデジタル変換器26a〜26xのそれぞれは、入力したアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換して出力する。
【0028】
演算処理部27は、記憶部29に格納されたルックアップテーブル30を参照して、チャネルごとに入力したデジタル電気信号に対応する光パワー補正値を、演算部28を用いて生成し、図示しない出力部から出力する。本実施形態における演算処理部27の構成としては、例えば、一般的なDSP(Digital Signal Processor:デジタル信号処理装置)やCPU(Central Processing Unit:中央演算装置)などのデジタル演算器を用いることが出来る。
【0029】
なお、複数のフォトディテクタ24a〜24x、複数の電流電圧変換器25a〜25xおよび複数のアナログデジタル変換器26a〜26xのうち、同じ添え字a〜xを有するもの同士は、直列に接続されている。したがって、同じ添え字iを有するフォトディテクタ24i、電流電熱変換器25iおよびアナログデジタル変換器26iは、光分波器23が出力する1つのチャネルの光信号を1つのデジタル電圧信号に変換する動作を行う経路として捉えることが出来る。
【0030】
光分波器23における分波について、詳細に説明する。光分波器23は、入力した波長多重光信号を、波長分割多重通信としてのチャネルごとに分波する。各チャネルに対応する波長を、短い方から順にλ1〜λmと記す。ここで、添え字の最大値mは、経路の総数xに等しいか、それ以下であることが望ましい。ここで、λmは、本実施形態による波長多重伝送システム10における最大波長である。
【0031】
本実施形態において、各チャネルは、例えば、ITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector:電気通信標準化部門)で規定されたDWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing:高密度波長分割多重方式)の信号光波長に準拠しているものとする。この規定によれば、例えば、L−bandでは、波長λ1は191.9テラヘルツに対応し、波長λ41は196.9テラヘルツに対応し、波長間隔は100ギガヘルツに設定される。ただし、これはあくまでも一例であって、本発明を限定しない。
【0032】
図3Aは、トランスポンダ11a〜11xの出力スペクトルの一例を示すグラフである。図3Aのグラフにおいて、横軸は波長を示し、縦軸はトランスポンダ11a〜11xの出力を示している。トランスポンダ11a〜11xの出力スペクトルは、環境変化や経時変化などの原因により、本来の中心波長からシフトされてしまう場合がある。この波長シフト量をΔλ(sig)と置く。
【0033】
図3Bは、本実施形態による光チャネルモニタ部20に用いられる光分波器23の出力スペクトルを示すグラフである。図3Bのグラフにおいて、横軸は波長を示し、縦軸は分波器特性を示している。光分波器23の出力スペクトルは、光分波器23が内蔵するフィルタの設計に依存する。例えば、一般的な光分波器であるAWG(Array Waveguide Gratings:アレイ導波路グレーティング)を用いる場合には、そのスペクトル形状はガウス分布で表されるガウシアン関数の形状や、3次バターワース形状で近似されるフラットトップ形状などになる。
【0034】
このフィルタの半値全幅(Full Width at Half Maximum、以下「FWHM」と記す)を、FWHM(fil)と置く。このフィルタの通過中心波長における、光分波器23における環境変化および経時変化による波長シフト量をΔλ(fil)と置く。
【0035】
図4は、図3Aおよび図3Bに示した分波器およびトランポンダ11a〜11xにおける出力スペクトルを比較するグラフ群である。図4において、分波器のスペクトルを示すグラフを第1のグラフ4aと呼ぶ。同じく、トランポンダのスペクトルを示すグラフを第2のグラフ4bと呼ぶ。図4の各グラフにおいて、横軸は波長λを示し、縦軸は光強度を示している。図4には、第1および第2のグラフ4aおよび4bに分けられて、以下に示す4つの領域が存在する。第1の領域P(det)は、第1およびのグラフ4aおよび4bの両方の下側にある領域であって、フォトディテクタによって検出される信号成分を示す。第2の領域Lは、第1のグラフ4aより下側にあって、かつ、第2のグラフ4bより上側にある領域であって、分波器を通過し得るがフォトディテクタでは検出されない成分、すなわち損失を示す。第3および第4の領域P(sup)は、第1のグラフ4aより上側にあって、かつ、第2のグラフ4bより下側にある領域であって、分波器によって抑圧される信号成分を示す。このような抑圧は、フィルタとしての分波器におけるFWHMが、入力信号のFWHMと比較して狭い場合に発生し、図4の例では左右に2つに分かれている。
【0036】
その結果、フォトディテクタによって実際に検出される光強度は、ノイズ成分が存在しない理想的な条件下において、以下のように求められる。
P0+L=P(det)+P(sup)
P0=P(det)−L+P(sup)
P0=(1+k)P(det)−L
ここで、P0は、1波のみ入射した際にフォトディテクタが検出する光強度である。Lは、分波器のデッドロス、すなわち図4における損失Lを示す。係数kは、P(det)およびP(sup)の比である。
k=P(sup)/P(det)
信号およびフィルタのスペクトル形状で一意に決定し、また、フィルタの波長シフトΔλ(fil)およびトランスポンダの波長シフトΔλ(sig)によって変動する。
【0037】
フィルタの波長シフトΔλ(fil)およびトランスポンダの波長シフトΔλ(sig)によって係数kに発生する変動をΔkと呼ぶ。この変動Δkは、OCMのパワー検出精度に直接的に影響する。そのため、一般的には、変動Δkの許容レベルは0.5dB程度とされている。
【0038】
変動Δkを抑圧するためには、フィルタのFWHMを大きくすることが望ましい。ここで、フィルタの通過中心波長精度の半値全幅を、以下、FWHM(fil)と置く。しかし、その一方で、FWHMを大きくすることは、波長方向のRBW(Resolution BandWidth:パワー積分範囲)を大きく取ることと同義である。このため、ASEが付加された波長多重信号において、フォトディテクタのダイナミックレンジ、すなわち信号のオンオフでフォトディテクタが検出する光強度の差が圧縮される弊害がある。したがって、フィルタの通過中心波長精度の半値全幅のFWHM(fil)を、変動Δkが許容される範囲内で可能な限り小さく設定することが望ましい。
【0039】
変動Δkを0.5dB以下とする条件を満足する、フィルタの通過中心波長精度の半値全幅のFWHM(fil)について、本発明によるアルゴリズムで数値シミュレーションを行った結果、以下の結果を得た。すなわち、フィルタの通過中心波長精度の半値全幅FWHM(fil)を、以下の不等式を満足する範囲内で、出来る限り小さく設定することで、フォトディテクタのダイナミックレンジおよび変動Δkを両立するに望ましい結果が得られる。なお、フィルタの通過中心波長精度の半値全幅のFWHM(fil)が取り得る値に範囲が存在するのは、トランスポンダのスペクトルに応じて、最適となる値が異なるためである。
フィルタスペクトルが、フラットトップ形状の場合:
1.5(Δλ(fil)+Δλ(sig))≦FWHM(fil)≦10(Δλ(fil)+Δλ(sig))
フィルタスペクトルが、ガウシアン形状の場合:
2(Δλ(fil)+Δλ(sig))≦FWHM(fil)≦10(Δλ(fil)+Δλ(sig))
【0040】
上述した、本発明によるアルゴリズムおよびその数値シミュレーションについて説明する。ガウシアンフィルタの場合は、ガウス分布で表される形状の伝達関数を用いてシミュレーションを行い、FWHMの最適値を求める。フラットトップフィルタの場合は、フィルタの伝達関数を、例えば3次のバターワース形状で近似する。この場合、伝達関数をH(jω)と置き、その利得をG(ω)と置くと、両者は以下の式で定義される。
(ω)=|H(jω)|=G/(1+(ω/ω(2×3)
ここで、ωは遮断周波数であり、Gはゼロ周波数における利得である。本実施形態では、遮断周波数ωを振ってシミュレーションを行い、FWHMの最適値を求める。
【0041】
なお、上記のシミュレーション結果では、現在一般的に用いられている下記3つの信号フォーマットの全てにおいて、FWHMが0.5dB以下となる。これら3つの信号フォーマットとは、10G−OOK(10Gbpsのオンオフキーイング)方式、40G−DQPSK(40ギガビット毎秒の差動四相位相偏移変調)方式および40G−DPSK(40ギガビット毎秒の差動位相偏移変調)方式である。また、上記シミュレーションでは、
Δλ(fil)=±0.04nm
Δλ(sig)=±0.02nm
の値を用いている。
【0042】
以上に説明したように、本発明によれば、精度が高く、かつ、ダイナミックレンジの広いOCMが実現可能である。その理由は、OCMのパワー検出制度およびフィルタ帯域幅を最適化しているからである。
【符号の説明】
【0043】
10 波長多重伝送システム
11 トランスポンダ部
11a〜11x トランスポンダ
12 光合波器
13 光増幅器部
13a〜13c 光増幅器
14 光アドドロップ装置
15 トランスポンダ
20 光チャネルモニタ部
21 光増幅器
22 光タップ
23 光分波器
24 フォトディテクタ部
24a〜24x フォトディテクタ
25 電流電圧変換部
25a〜25c 電流電圧変換器
26 アナログデジタル変換部
26a〜26c アナログデジタル変換器
27 演算処理部
28 演算部
29 記憶部
30 ルックアップテーブル
L 損失
P(det) フォトディテクタによって検出される信号成分
P(sup) 分波器によって抑圧される信号成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長多重化された入力光信号を、多重化された波長ごとに分波して複数の光信号を生成する分波器と、
前記複数の光信号のそれぞれにおける光パワーを表す複数のデジタル信号をそれぞれ生成する複数の経路と、
前記複数のデジタル信号を入力して、前記光パワーの、前記分波器の特性に対応する補正値を算出する処理部と
を具備し、
前記分波器は、
所定の範囲に含まれるFWHM(半値全幅)を有するフィルタ
を具備し、
前記所定の範囲は、前記フィルタの通過中心波長精度と、前記入力光信号を生成したトランスポンダの発振波長精度とに基づいて設定されている
光チャネルモニタ。
【請求項2】
請求項1に記載の光チャネルモニタにおいて、
前記FWHMは、−50GHz〜+50GHzの範囲で積分した値をP(0)と置き、前記範囲で積分した値をP(det)と置くとき、10G−OOK(10ギガビット毎秒のオンオフキーイング)方式、40G−DQPSK(40ギガビット毎秒の差動四相位相偏移変調)方式および40G−DPSK(40ギガビット毎秒の差動位相偏移変調)方式の全ての信号フォーマットにおいて、前記P(0)および前記P(det)の比を0.5dB以下とする条件を満たすように設定されている
光チャネルモニタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光チャネルモニタにおいて、
前記フィルタは、
ガウス分布で表されるガウシアンフィルタ
を具備し、
前記FWHMは、前記通過中心波長精度をΔλ(fil)と置き、前記発振波長精度をΔλ(sig)と置くとき、
2(Δλ(fil)+Δλ(sig))≦FWHM≦10(Δλ(fil)+Δλ(sig))
を満たす
光チャネルモニタ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の光チャネルモニタにおいて、
前記フィルタは、
3次バターワース形状で近似されるフラットトップフィルタ
を具備し、
前記FWHMは、前記通過中心波長精度をΔλ(fil)と置き、前記発振波長精度をΔλ(sig)と置くとき、
1.5(Δλ(fil)+Δλ(sig))≦FWHM≦10(Δλ(fil)+Δλ(sig))
を満たす
光チャネルモニタ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の光チャネルモニタにおいて、
前記処理部は、
前記デジタル信号および前記光パワーの、前記フィルタの特性に対応する補正値を含む対応関係が定義されているルックアップテーブルを格納する記憶部と、
前記デジタル信号および前記ルックアップテーブルを参照して前記光パワーの補正値を算出するパワー補正演算部と
を具備する
光チャネルモニタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光チャネルモニタにおいて、
前記複数の経路のそれぞれは、
前記複数の光信号のそれぞれについて、光パワーを電流に変換する光電変換部と、
前記電流を電圧に変換する電流電圧変換部と、
前記電圧をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換部と
を具備する
光チャネルモニタ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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