説明

光ディスクシステムの信号処理装置及び信号処理方法

【課題】光ディスク再生処理に適した光ディスクシステムの信号処理装置を提供する。
【解決手段】光ディスクから得られる再生処理を行うための光検出信号のレベルを第1の基準レベルへと一致させるべく第1の可変利得に基づいて増幅する第1の利得可変増幅部を有した光ディスクシステムの信号処理装置において、前記利得可変増幅部により増幅された光検出信号のレベルと前記第1の基準レベルとの比較を行う比較部と、前記比較の結果に応じて前記第1の可変利得を調整するための制御信号を生成して前記第1の利得可変増幅部へと供給する利得調整部と、前記増幅された光検出信号のレベルが前記第1の基準レベルを含んだレベル範囲内にあるとき、前記利得調整部における前記制御信号のレベルを前値保持させるための制御を行う利得調整制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクシステムの信号処理装置及び信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップは、光源・レンズ・光検出器等を組み合わせた光学系を利用して、光ディスクへの情報の記録又は再生を行う装置である。この光ピックアップによって光ディスクから得られる信号(以下、『光検出信号』と称する。)は、光ディスクの反射率等の特性ばらつき、光ピックアップの光検出器を含めた光学系の製造ばらつき、記録・再生・消去の動作モードの違いに基づく光量変化等によってレベル変動が生じ得る。このため、光ディスク記録又は再生を行う光ディスクシステムでは、通常、光検出信号のレベルを所定の基準レベルへと一致させるべくAGC(Auto Gain Control)回路(例えば、以下に示す特許文献1参照。)が設けられる。
【0003】
図10は、従来のAGC回路40を有する光ディスクシステムの構成を示す図である。光ディスク10上に記録された情報が光ピックアップ20によってレーザ光の戻り光として読み出され、さらに光電変換することによって光検出信号が得られる。この光検出信号は、DSP50における様々な光ディスク再生処理(デコード処理、サーボ処理等)を行うための信号源となり、この光検出信号からRF信号、FE(Focus Error)信号、TE(Tracking Error)信号等が生成されることとなる。
【0004】
なお、光ピックアップ20によって検出された段階での光検出信号のレベルは微小なレベルであるため、前段増幅器30によって後段のDSP(Digital Signal Processor)50等が取り扱い可能なレベルにまで増幅される。そして、前段増幅器30によって増幅された光検出信号がAGC回路40へと供給されてレベル変動が吸収される。この結果、略一定なレベルに安定化した光検出信号がDSP50へと供給され、光ディスク10に応じたデコード処理が施された後に、スピーカ60等へ再生信号(オーディオ信号、CD−ROM信号、ビデオ信号等)が出力されるのである。
【0005】
なお、AGC回路40は、制御電圧に応じた可変利得によって光検出信号を増幅又は減衰するVCA(Voltage Control Amplifier)41と、VCA41の出力を検波する検波器42と、検波器42において検波されたVCA41の出力を所定の基準レベルへと一致させるべくVCA41への制御電圧を生成してVCA41へと供給するVCA制御回路43と、を有したアナログ回路によって構成される。また、VCA制御回路43における基準レベルは、通常、電源電圧VCCを所定分圧した内部生成電圧が用いられる。
【特許文献1】特許第3272003号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図10に示したAGC回路40のような光検出信号のレベルを安定化させる従来の仕組みでは、光ディスクや光ピックアップの環境条件等による特性ばらつきや、光ディスク上の汚れや傷などによる反射光量の変化など、様々なノイズ要因によって光検出信号の予期せぬ微小なレベル変動が生じ得る。しかし、従来の仕組みでは、光検出信号の安定化の基準が、分圧回路等のアナログ構成によって固定されたレベルに確定されているので、光検出信号の微小なレベル変動に対して柔軟に対処しづらく、その微小なレベル変動に追従したレベル制御が行われてしまう。このため、従来の仕組みでは、光検出信号のレベルが整定しづらく、ひいては、光検出信号を用いた光ディスク再生処理が適切に行えないという課題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するための主たる本発明は、光ディスクから得られる再生処理を行うための光検出信号のレベルを第1の基準レベルへと一致させるべく第1の可変利得に基づいて増幅する第1の利得可変増幅部を有した光ディスクシステムの信号処理装置において、前記利得可変増幅部により増幅された光検出信号のレベルと前記第1の基準レベルとの比較を行う比較部と、前記比較の結果に応じて前記第1の可変利得を調整するための制御信号を生成して前記第1の利得可変増幅部へと供給する利得調整部と、前記増幅された光検出信号のレベルが前記第1の基準レベルを含んだレベル範囲内にあるとき、前記利得調整部における前記制御信号のレベルを前値保持させるための制御を行う利得調整制御部と、を有することとする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光ディスク再生処理を適切に行える光ディスクシステムの信号処理装置及び信号処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<光ディスクシステム>
図2を参照しつつ、図1をもとに、本発明の一実施形態にかかる光ディスクシステムの構成/動作を説明する。
【0010】
CD規格(CD−ROM、CD−R/RW等)やDVD規格(DVD±R/RW、DVD−RAM)等に準拠した光ディスク10に対して記録/再生を行う光ディスクシステムは、光ピックアップ20と、光ディスク用信号処理LSI70と、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと称する。)200と、フォーカス/トラッキング/スピンドル等の各種サーボ制御用アクチュエータ及びそのドライバ回路(いずれも不図示)と、スピーカ60等の外部の再生出力装置によって構成される。以下では、図10に示した従来の光ディスクシステムの構成と同様な構成については、同一の図番を付して説明は省略する。
【0011】
マイコン200は、光ディスクシステム全体の制御を司るものである。マイコン200は、特に、VCA82出力の安定化の判定基準となる第1の基準レベルを格納する第1の基準レベル・レジスタ201と、VCA制御部95によるVCA82の利得制御(以下、VCA制御と称する。)において不感帯(ホールドレンジ)を設定するためのホールドレンジ設定値を格納するホールドレンジ・レジスタ202と、を有することとする。
【0012】
光ディスク用信号処理LSI70は、アナログ信号処理部80及びデジタル信号処理部90を、CMOSプロセス技術によって1チップに集積化した集積回路のことである。なお、アナログ信号処理部80とデジタル信号処理部90を、それぞれ別個のチップとして実施してもよいが、図1に示すように1チップ化することで、低消費電力化や、チップ面積の削減、コストダウン等が図られる。
【0013】
アナログ信号処理部80は、光ピックアップ20において検出された光検出信号の波形整形や、光ピックアップ20のレーザ発光出力のAPC(Automatic Power Control)等といったアナログ信号処理を行う。なお、図1に示すアナログ信号処理部80は、特に、光検出信号のレベル変動を吸収するための仕組みとして、前段増幅部81、VCA82、ピークレベル検出部83、デコーダ84、を有することとする。
【0014】
前段増幅部81は、光ピックアップ20とVCA82との間、すなわちVCA82の前段に設けられ、光ピックアップ20から得られる光検出信号のレベルを、光ディスク用信号処理LSI70が取り扱い可能なレベルにまで増幅するものである。また、前段増幅部81は、後述のオフセット調整部99において設定されるオフセット調整量に基づいて、光ピックアップ20から得られる光検出信号の直流レベルを可変させることができる。なお、前段増幅部81は、本発明に係る『前段増幅部』の一実施形態である。
【0015】
VCA82は、制御電圧に応じた可変利得によって光検出信号のレベルを増幅又は減衰する。なお、VCA82は本発明に係る『第1の利得可変増幅部』の一実施形態であり、VCA82の可変利得が本発明に係る『第1の可変利得』に対応し、VCA82の可変利得を設定するための制御電圧が本発明に係る『制御信号』に対応する。
【0016】
ピークレベル検出部83は、VCA82出力のピークレベルを検出する。なお、ピークレベル検出部83以外にも、VCA82出力のボトムレベルを検出する仕組みや、VCA82出力のピークレベルからボトムレベルでの差分レベルである波高レベルを検出する仕組みを採用しても勿論よい。
【0017】
デコーダ84は、VCA制御部95から出力される制御信号をデコードして、VCA82を制御するための制御電圧を生成するものである。
【0018】
デジタル信号処理部90は、EFM又はEFMPLUS復調や誤り訂正等のデコード処理やフォーカス/トラッキング等のサーボ制御等といった再生系のデジタル信号処理や、EFM変調や誤り訂正符号化等のエンコード処理やライトストラテジ制御等といった記録系のデジタル信号処理を行うものである。なお、デジタル信号処理部90の機能は、所謂DSPのハードウェアや、又は、DSPのMAC(Multiply and Accumulation)を利用したDSP専用プログラムによって実施される。
【0019】
デジタル信号処理部90は、特に、再生系のデジタル信号処理を行う仕組みとして、波形整形部91、デコード処理部92、D/A変換部93を有しており、光検出信号のレベル変動を補償(吸収)するための仕組みとして、A/D変換部94、VCA制御部95、を有しており、さらに、マイコン200との信号の授受を行うマイコンインタフェース部97を有することとする。
【0020】
まず、デジタル信号処理部90における再生系のデジタル信号処理を行う仕組みについて説明する。波形整形部91は、VCA82出力を2値化することによってEFM又はEFMPLUS信号へと変換する。デコード処理部92は、EFM又はEFMPLUS信号に対して光ディスク10の規格に応じた所定のデコード処理を施す。このデコード処理によって得られる再生信号として、例えば、Lch/Rchのオーディオ信号が、D/A変換部93によってアナログ信号へ変換されてスピーカ60へと出力される。
【0021】
つぎに、デジタル信号処理部90における光検出信号のレベル変動を吸収するための仕組みについて図2のフローチャートをもとに説明する。なお、以下の説明では、特に断らない限り、VCA制御部95が動作の主体とする。
【0022】
まず、VCA制御部95は、マイコン200からマイコンインタフェース部97を介して第1の基準レベルとホールドレンジ設定値が供給された状態で、VCA制御を開始することとなる(S200)。また、A/D変換部94では、ピークレベル検出部83において検出されたVCA82出力のピークレベルが、所定のサンプリング周波数に基づいてサンプリングされた後、所定の量子化数に基づいて量子化が行われることとなる。なお、以下の説明では、特に断らない限り、「VCA82出力のピークレベル」とは、A/D変換部94においてサンプリング及び量子化された後のVCA82出力のピークレベルとする。
【0023】
VCA制御部95は、VCA82出力のピークレベルが第1の基準レベルと略一致する場合(S201:YES)、VCA制御部95は、ホールドレンジを有効とさせるとともに、VCA82へと供給する制御電圧を前値保持(ホールド)させるべく制御を行うこととなる(S202)。すなわち、VCA82出力のピークレベルが第1の基準レベルと略一致して整定しているにも関わらずVCA制御が行われることによって、VCA82出力のピークレベルが第1の基準レベルから離れて不安定となる状況を回避できる。
【0024】
また、VCA82出力のピークレベルが第1の基準レベルと略一致しない場合(S201:NO)、且つ、ホールドレンジが有効な場合(S203:YES)において、VCA82出力のピークレベルがホールドレンジ内に含まれているときは(S204:YES)、VCA制御部95は、VCA82へと供給する制御電圧を前値保持させるべく制御を行い(S202)、VCA82出力のピークレベルがホールドレンジ外のときは(S204:NO)、VCA82へと供給する制御電圧の前値保持を解除して、ホールドレンジを無効とする(S205)。すなわち、VCA82出力のピークレベルが第1の基準レベルと略一致してないがホールドレンジ内に含まれる場合には、VCA82出力のピークレベルが整定しているものとして取り扱い、VCA82へと供給する制御電圧の前値保持させるための制御を行う。また、ホールドレンジ外の場合には、VCA82出力のピークレベルをまずは第1の基準レベルへと一致させるべく、ホールドレンジに依らない通常のVCA制御を行うのである。
【0025】
VCA82出力のピークレベルが第1の基準レベルと略一致しない場合(S201:NO)において、ホールドレンジがあらかじめ無効なときや(S203:NO)、VCA82出力のピークレベルがホールドレンジ外であるためホールドレンジが有効から無効へと切り替わったときには(S205)、VCA82へと供給する制御電圧のレベル調整がつぎのようにして行われる。すなわち、VCA82出力のピークレベルが第1の基準レベル以下であるときには(S206:YES)VCA82に供給する制御電圧を1ステップ上昇させ(S207)、VCA82出力のピークレベルが第1の基準レベルを超えるときには(S206:NO)VCA82に供給する制御電圧を1ステップ降下させるのである(S208)。
【0026】
VCA制御部95は、VCA制御が終了するまでの間(S209:YES)、前述したようなステップS201〜S208を繰り返し行うことによって、光検出信号のレベル変動を吸収できるのである。
【0027】
<VCA制御部>
図4、図5、図6を適宜参照しつつ、図3をもとに、本発明の一実施形態に係るVCA制御部95の構成/動作について説明する。なお、VCA制御部95は、本発明に係る『利得調整部』の一実施形態であり、VCA制御部95で用いられる第1の基準レベルが本発明に係る『第1の基準レベル』に対応し、VCA制御部95で用いられるホールドレンジが本発明に係る『レベル範囲』に対応する。
【0028】
図3に示すように、VCA制御部95は、比較部951、ホールドレンジ判定部952、カウンタ953によって構成される。
【0029】
比較部951は、A/D変換部94から供給されたVCA82出力のピークレベルと、マイコン200からマイコンインタフェース部97を介して供給された第1の基準レベルと、の比較を行う。比較部951は、図4に示すように、VCA82出力のピークレベルが第1の基準レベル以下である場合には、カウンタ953をカウントアップモードとさせるためのHレベルを出力する。一方、VCA82出力のピークレベルが第1の基準レベルを超える場合にはカウンタ953をカウントダウンモードとさせるためのLレベルを出力する。
【0030】
ホールドレンジ判定部952は、マイコン200からマイコンインタフェース部97を介して供給された第1の基準レベルとホールドレンジ設定値に基づいてホールドレンジを確定する。なお、ホールドレンジ設定値は、例えば、第1の基準レベルに対して相対的な値であり且つホールレンジの上限値/下限値とする。ホールドレンジ判定部952は、図5に示すように、A/D変換部94から供給されたVCA82出力のピークレベルが、第1の基準レベルと交差したとき及びその後においてホールドレンジ内にある場合には、カウンタ953出力を前値保持させるためのHレベルを出力する。一方。VCA82出力のピークレベルがホールドレンジ外にある場合には、カウンタ953から通常どおりカウント値を出力させるためのLレベルを出力する。
【0031】
なお、ホールドレンジ判定部952は、VCA82出力のピークレベルが、ホールドレンジ外から第1の基準レベルを交差するまでの間は、VCA82出力のピークレベルがホールドレンジ内にある場合であっても、カウンタ953出力を前値保持させるための制御を無効とすべく、Lレベルの出力を維持する。このことによって、VCA82出力のピークレベルの第1の基準レベルへの整定時間の短縮化等を図ることができる。
【0032】
カウンタ953は、アップ/ダウンカウンタによって構成されており、比較部951出力を入力するためのU/D端子、ホールドレンジ判定部952出力を入力するためのHOLD端子、所定のカウンタクロックを入力するためのCLK端子、カウントアップ/ダウンさせたカウント値を出力するためのQ端子を有する。カウンタ953は、図6に示すように、比較部951の出力とホールドレンジ判定部952の出力に基づいて、カウントアップ/カウントダウン/カウントホールド(『前値保持』)のいずれかの動作モードとなる。
【0033】
すなわち、カウンタ953は、比較部951の出力とホールドレンジ判定部952の出力がともにLレベルの場合にはカウントダウンを行い、比較部951の出力がHレベルであり且つホールドレンジ判定部952の出力がLレベルの場合にはカウントアップを行う。また、カウンタ953は、ホールドレンジ判定部952の出力がHレベルの場合には比較部951の出力によらないでカウント値を前値保持させるのである。
【0034】
<動作の具体例>
図7をもとに、VCA制御部95の動作に焦点をあてた光ディスク用信号処理LSI70の動作の具体例を説明する。なお、図中において、(a)はピークレベル検出部83の出力波形、(b)はA/D変換部94のサンプリング制御信号の波形、(c)は比較部951の出力波形、(d)はホールドレンジ判定部952の出力波形、(e)はカウンタ953のカウンタクロックの波形、(f)はカウンタ953の出力波形を示すこととする。
【0035】
=== サンプリングポイントA〜D ===
光ピックアップ20によって光ディスク10から情報が読み出された信号のVCA82出力のピークレベルが“A”だったとする。このとき、VCA制御が開始すると、ピークレベル検出部83において検出されるVCA82出力のピークレベルが段階的に上昇し始める。このとき、A/D変換部94では、ピークレベル検出部83において検出されるVCA82出力のピークレベルが、所定のサンプリング周波数によって定まるサンプリングポイント毎にサンプリング及び量子化が行われる。また、比較部951では、A/D変換部94と同期して、当該サンプリングポイント毎にVCA82出力のピークレベルと第1の基準レベルとの比較が行われる。カウンタ953では、比較部951における比較結果に基づいて、各サンプリングポイントから若干位相が遅れたサンプリング周波数と同一周波数のカウンタクロックによってカウントアップ又はカウントダウンが行われる。
【0036】
ここで、サンプリングポイントAからサンプリングポイントDまでの間は、VCA82出力のピークレベルが第1の基準レベル以下であるため、比較部951出力はHレベルを継続する。なお、ホールドレンジ判定部952の出力については、サンプリングポイントCの段階でVCA82出力のピークレベルがホールドレンジ内に収まっている。しかしながら、VCA82出力のピークレベルを速やかに第1の基準レベルへと近づけるために、ホールドレンジ判定部952の出力は、サンプリングポイントA〜Dまでの間はLレベルを維持することとし、サンプリングポイントDの時点でLレベルからHレベルへと切り替わる。
【0037】
よって、サンプリングポイントA〜Dまでの間は、比較部951出力はHレベル且つホールドレンジ判定部952出力はLレベルであるため、所定のクロック周波数を有したカウンタクロックによって、カウンタ953のカウント値がカウントアップを継続することとなる。そして、サンプリングポイントDの時点以後、カウンタ953におけるカウント値が前値保持される。
【0038】
=== サンプリングポイントE〜F ===
サンプリングポイントEでは、VCA82出力のピークレベルがホールドレンジ内であり且つ第1の基準レベルを超えた状態にある。よって、サンプリングポイントEでは、比較部951の出力がHレベルからLレベルへと切り替わり、ホールドレンジ判定部952の出力はHレベルのままである。よって、カウンタ953では、カウント値の前値保持が継続される。
【0039】
サンプリングポイントFでは、VCA82出力のピークレベルがホールドレンジ内であり且つ第1の基準レベルを超えない状態にある。よって、サンプリングポイントFでは、比較部951の出力がLレベルからHレベルへと切り替わり、ホールドレンジ判定部952の出力はHレベルのままである。よって、カウンタ953では、カウント値の前値保持が継続される。
【0040】
=== サンプリングポイントG〜J ===
サンプリングポイントGでは、VCA82出力のピークレベルがホールドレンジ外であり且つ第1の基準レベルを超えた状態にある。よって、サンプリングポイントGでは、比較部951の出力がHレベルからLレベルへと切り替わるとともに、ホールドレンジ判定部952の出力がHレベルからLレベルへと切り替わる。すなわち、カウンタ953では、カウント値がカウンタクロックによってカウントダウンされる。また、この結果として、ピークレベル検出部83においてVCA82出力のピークレベルが段階的に下降し始める。
【0041】
サンプリングポイントHでは、VCA82出力のピークレベルがサンプリングポイントGと同じ状態であるため、カウンタ953では、カウント値のカウントダウンが継続する。
【0042】
サンプリングポイントIでは、VCA82出力のピークレベルが段階的に下降した結果、再びホールドレンジ内に含まれる。ここで、VCA82出力のピークレベルを速やかに第1の基準レベルへと近づけるために、ホールドレンジ判定部952の出力はLレベルを維持することで、カウンタ953におけるカウント値を前値保持させるための制御を無効とさせる。この結果、VCA82出力のピークレベルが第1の基準レベルと一致するサンプリングポイントJまでの間は、カウンタ953におけるカウント値のカウントダウンが継続して行われる。
【0043】
<DCオフセット調整>
光ディスク用信号処理LSI70は、前述したように、アナログ信号処理部80及びデジタル信号処理部90をCMOSプロセス技術によって1チップに集積化した集積回路として提供されるものである。ここで、CMOSプロセス技術におけるアナログ回路は、バイポーラ型のアナログ回路の場合と比べて低電圧動作するため、アナログ信号処理部80におけるダイナミックレンジが確保しづらい。
【0044】
さらに、光検出信号に含まれるDC(直流)レベルが要因となって、光ディスク10から得られる光検出信号のレベルが前段増幅部81やVCA82のダイナミックレンジ内に納まらず、光検出信号の波形の一部がカットされる恐れがある。これによって、ピークレベル検出部83の検出レベルがずれてしまい、第1の基準レベルへ略一致させるためのVCA制御が適切に行われない恐れがある。そこで、光ディスク用信号処理LSI70において、光検出信号に含まれるDCレベルを所定の基準レベルへと調整するためのDCオフセット調整機能を設けることとする。
【0045】
図9を参照しつつ、図8をもとに、DCオフセット調整機能を有した本発明に係る光ディスクシステムの構成/動作について説明する。なお、図1に示した本発明にかかる光ディスクシステムの実施形態と同様な構成については、同一の図番を付して説明は省略する。
【0046】
マイコン200は、VCA82出力のDCレベルの基準となる、第2の基準レベルを格納する第2の基準レベル・レジスタ203を新たに設ける。なお、第2の基準レベルは、マイコンインタフェース部97を介してオフセット調整部99へと供給される。
アナログ信号処理部80は、LPF(Low Pass Filter)85を新たに設ける。LPF85は、VCA82出力に含まれるDCレベルを検出するものである。
デジタル信号処理部90は、A/D変換部98、オフセット調整部99、D/A変換部100を新たに設ける。
A/D変換部98は、LPF85において検出されたVCA82出力のDCレベルを、所定のサンプリング周波数によってデジタル信号へと変換するものである。
【0047】
オフセット調整部99は、A/D変換部98においてA/D変換されたVCA82出力のDCレベルと、マイコン200からマイコンインタフェース部97を介して供給された第2の基準レベルとの比較を行う。そして、図9に示すように、VCA82出力のDCレベルを、例えば、電源電圧VCCの1/2とする第2の基準レベルへと略一致させるべく、前段増幅部81におけるDCオフセット成分をレベルシフトさせるための調整量(以下、オフセット調整量と称する。)を設定する。
【0048】
D/A変換部100は、オフセット調整部99において設定されたオフセット調整量を、D/A変換して前段増幅部81へと供給する。この結果、前段増幅部81におけるDCオフセット成分が調整されて、前段増幅部81及びVCA82を経由した光検出信号のDCレベルが、第2の基準レベルへと略一致するのである。
【0049】
なお、前述した実施形態において、デジタル信号処理部90のオフセット調整部99における機能をマイコン200において実施してもよい。この場合、A/D変換部98においてA/D変換されたVCA82出力のDCレベルは、マイコンインタフェース部97を介してマイコン200へと供給されることとする。そして、マイコン200は、VCA82出力のDCレベルを第2の基準レベルへと一致させるべくオフセット調整量を設定し、マイコンインタフェース部97を介してD/A変換部100へと供給する。この結果、マイコン200によって、前段増幅部81におけるDCオフセット調整がなされる。
【0050】
ところで、VCA82においてDCオフセット調整を実施してもよい。しかしながら、光ピックアップ20において検出された直後の光検出信号のレベルは不安定であるため、前段増幅部81の段階で光検出信号の波形の一部がカットされてしまい、VCA82におけるDCオフセット調整が適切に行われない恐れがある。このため、前述した実施形態のように、前段増幅部81においてDCオフセット調整を実施することが好ましい。
【0051】
<効果の実例>
前述した実施形態において、ノイズ等による光検出信号の微小なレベル変動が生じた場合であっても、VCA82出力としての光検出信号のピークレベルがホールドレンジ内に収まっていれば、VCA82に供給する制御電圧、すなわちVCA82の可変利得を前値保持させる。この結果、VCA82から出力される光検出信号のレベルの安定化を図ることができ、VCA82後段のデジタル信号処理部90における様々な再生処理を適切に行えることとなる。
【0052】
また、前述した実施形態において、例えば、容量素子を用いたホールド回路によって制御電圧のレベルを前値保持させるその他の仕組みと比較した場合、容量素子の容量値や時定数等の煩雑なアナログ調整が不要となる。
【0053】
また、前述した実施形態において、VCA制御部95は、光検出信号のピークレベルがホールドレンジ内に含まれたとき、まず、第1の基準レベルへと近づけることに専念する。このことによって、光検出信号のピークレベルが、第1の基準レベルへと整定される時間を短縮できる。
【0054】
また、前述した実施形態において、マイコン200によるソフトウェア処理によって第1の基準レベル及びホールドレンジを任意に調整可能とする。このことによって、VCA82出力としての光検出信号のレベルを、光ディスクシステムの仕様に応じた適切なレベルへと容易に調整できる。
【0055】
また、前述した実施形態において、VCA82の前段部にある前段増幅部81のDCオフセット成分を、所定の第2の基準レベルへと略一致させるべく制御を行う。このことによって、前段増幅部81からVCA82へと供給される光検出信号のレベルが、VCA82のダイナミックレンジ内に納まり易くなり、VCA82から出力される光検出信号のレベルの更なる安定化を図れるとともに、VCA82後段のデジタル信号処理部90における様々な再生処理をより適切に行えることとなる。
【0056】
以上、本実施の形態について説明したが、前述した実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態にかかる光ディスクシステムの構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるVCA制御部の動作の概要を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態にかかるVCA制御部の構成を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる比較部の動作を説明するための図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかるホールドレンジ判定部の動作を説明するための図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかるカウンタの動作を説明するための図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかるデジタル信号処理部の動作を説明するための図である。
【図8】本発明のその他の一実施形態にかかる光ディスクシステムの構成を示す図である。
【図9】本発明のその他の一実施形態にかかるオフセット調整部の動作を説明するための図である。
【図10】従来の光ディスクシステムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
10 光ディスク 20 光ピックアップ
30 前段増幅器 40 AGC回路
41 VCA 42 検波器
43 VCA制御回路 50 DSP
60 スピーカ 70 光ディスク用信号処理LSI
80 アナログ信号処理部 81 前段増幅部
82 VCA 83 ピークレベル検出部
84 デコーダ 85 LPF
90 デジタル信号処理部 91 波形整形部
92 デコード処理部 93 D/A変換部
94 A/D変換部
95 VCA制御部 951 比較部
952 ホールドレンジ判定部 953 カウンタ
97 マイコンインタフェース部 98 A/D変換部
99 オフセット調整部 100 D/A変換部
200 マイコン 201 第1の基準レベル・レジスタ
202 ホールドレンジ・レジスタ 203 第2の基準レベル・レジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクから得られる再生処理を行うための光検出信号のレベルを第1の基準レベルへと一致させるべく第1の可変利得に基づいて増幅する第1の利得可変増幅部を有した光ディスクシステムの信号処理装置において、
前記利得可変増幅部により増幅された光検出信号のレベルと前記第1の基準レベルとの比較を行う比較部と、
前記比較の結果に応じて前記第1の可変利得を調整するための制御信号を生成して前記第1の利得可変増幅部へと供給する利得調整部と、
前記増幅された光検出信号のレベルが前記第1の基準レベルを含んだレベル範囲内にあるとき、前記利得調整部における前記制御信号のレベルを前値保持させるための制御を行う利得調整制御部と、
を有することを特徴とする光ディスクシステムの信号処理装置。
【請求項2】
前記利得調整部は、
前記比較の結果が、前記光検出信号のレベルが前記第1の基準レベルを超えない旨を示す場合にはカウントアップを行うとともに前記第1の基準レベルを超える旨を示す場合にはカウントダウンを行うカウンタによって構成され、前記カウンタのカウント値によって前記制御信号のレベルを設定しており、
前記利得調整制御部は、
前記増幅された光検出信号のレベルが前記レベル範囲内にあるとき、前記カウンタのカウント値を前値保持させるための制御を行うこと、を特徴とする請求項1に記載の光ディスクシステムの信号処理装置。
【請求項3】
前記利得調整制御部は、前記増幅された光検出信号のレベルが、前記レベル範囲内に含まれたときから前記第1の基準レベルを交差するまでの間、前記前値保持させるための制御を無効とすること、を特徴とする請求項1又は2に記載の光ディスクシステムの信号処理装置。
【請求項4】
前記信号処理装置は、光ディスクシステムを統括制御するマイクロコンピュータと接続されており、前記比較部において用いられる前記第1の基準レベルと、前記利得調整制御部において用いられる前記レベル範囲が、前記マイクロコンピュータによって設定されること、を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光ディスクシステムの信号処理装置。
【請求項5】
前記光ディスクから前記光検出信号を得るための光ピックアップと前記第1の利得可変増幅部との間に設けられ、前記光ピックアップから得られる前記光検出信号のレベルを増幅して前記第1の利得可変増幅部へと供給するとともにオフセット調整可能な前段増幅部と、
前記第1の利得可変増幅部において増幅された光検出信号の直流レベルを第2の基準レベルへと一致させるべく、前記前段増幅部におけるオフセット調整を行うオフセット調整部と、
を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光ディスクシステムの信号処理装置。
【請求項6】
光ディスクから得られる再生処理を行うための光検出信号のレベルを第1の基準レベルへと一致させるべく第1の可変利得に基づいて増幅する第1の利得可変増幅部を有した光ディスクシステムの信号処理方法において、
前記利得可変増幅部により増幅された光検出信号のレベルと前記第1の基準レベルとの比較を行うステップと、
前記比較の結果に応じて前記第1の可変利得を調整するための制御信号を生成して前記第1の利得可変増幅部へと供給するステップと、
前記増幅された光検出信号のレベルが前記第1の基準レベルを含んだレベル範囲内にあるとき、前記利得調整部における前記制御信号のレベルを前値保持させるための制御を行うステップと、
を有することを特徴とする光ディスクシステムの信号処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−24271(P2006−24271A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201033(P2004−201033)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】