説明

光ディスク再生装置及び光ディスク再生方法

【課題】車両に搭載される光ディスク再生装置において、光ディスク再生装置に供給される電圧変化によって起こりうる光ディスクへの損傷を抑制する。
【解決手段】車両に搭載され、光ディスクに対してデータの読み出しとデータの書き込みとのうち少なくともいずれか一方を実行する光ディスク再生装置であって、光ディスクの記録面へのレーザ光の送出と受光を行うピックアップレンズを有するピックアップ部と、光ディスク再生装置への供給電圧に影響を与える情報であって、車両の運転状態に関する運転情報を取得する取得部202と、取得部で取得される運転情報に基づいて、ピックアップ部を、ピックアップ部と光ディスクとが接触しない位置に退避させる制御部203と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク再生装置及び光ディスク再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
楽曲等のコンテンツが格納された光ディスクを再生する光ディスク再生装置が知られている。従来の光ディスク再生装置では、光ディスクの非記録面(非鏡面側)の中心部を支持するクランパが光ディスクの非記録面の中心部(クランプ領域)のみを支持する構成である。その結果、従来の光ディスク再生装置では、光ディスクに反りや面振れや外部振動等があると、光ディスクとピックアップレンズとの距離が変化する虞がある。そして、この距離が短くなりすぎると、光ディスクとピックアップレンズが接触してしまい、光ディスク又はピックアップレンズが損傷するといったことが懸念される。そこで、光ディスクの損傷を抑制する技術として、ピックアップレンズの周囲にレンズプロテクタを設ける技術や、ピックアップレンズと光ディスクの距離をサーボモータを制御して一定に保つ技術等が開発されている。
【0003】
また、従来の光ディスク再生装置に関する従来技術として、アクセサリ電源がオフされ、再びオンされた場合、アクセサリ電源をオフした際のコンテンツが再生されるようにピックアップレンズの位置が制御される技術が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−109172号公報
【特許文献2】特開平10−124980号公報
【特許文献3】特開2001−307447号公報
【特許文献4】特開2001−202728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
楽曲等のコンテンツが格納された光ディスクを再生する光ディスク再生装置が知られている。ここで、車両に搭載される光ディスク再生装置は、電源の供給を車両から受けるため、光ディスク再生装置に供給される電圧が変化することがある。そして、電圧が変化すると、光ディスクとピックアップレンズとが接触することが懸念される。ここで、図1は、従来の光ディスク再生装置のタイミングチャートの一例を示す。図1では、車両のキーシリンダ、バッテリ電圧、アクセサリ(以下、ACCとも言う)電圧、デッキ(光ディスク再生装置)電源電圧、車両の状態、デッキの状態、サーボの状態、光ディスクの回転状態の夫々の関係が示されている。図1に示されているように、キーがONからOFFになると、アクセサリ電圧及びデッキ電圧が0Vになる。その後、再度キーシリンダにキーが差し込まれ、ACC→START→ONの順にキーが操作される。なお、図1において、ACCはアクセサリ電源がONとなる位置、STARTは車両のエンジンを始動させる位置、ONはエンジンが回転状態にある位置である。図1に示すように、ACC→STARTの順にキーが操作されると、エンジン始動時において一時的に多くの電力が必要となるため、バッテリ電圧が一時的に低下する。バッテリ電圧が一時的に低下すると、光ディスク再生装置への供給電圧が不足し、コンテンツの再生やサーボ機能が一時的に停止することが知られている。光ディスク再生装置への電源供給後に光ディスク再生装置への供給電圧が不足するため、ターンテーブルが一度回転した後の一時的な電源断の為に光ディスクが惰性で回転し続ける。このように光ディスク自体は、惰性によって回転しているが、サ
ーボ機能が停止している。その結果、光ディスクとピックアップレンズが接触し、光ディスクに円状の傷が付く虞がある。光ディスクが回転中における接触の場合、円状の線傷となる場合があり、光ディスクからの読取時に大きな支障となる。
【0006】
なお、ピックアップレンズの周囲にレンズプロテクタを設けることで、光ディスクとピックアップレンズが直接接触することを抑制することができる。しかしながら、レンズプロテクタと光ディスクとの接触そのものは回避できないことから、光ディスクに多少の傷が付く虞がある。また、クランパが光ディスクの非記録面の中心部(クランプ領域)のみを支持する従来の光ディスク再生装置では、光ディスクとピックアップレンズとの接触の可能性は、光ディスクの内側よりも外側の方が高くなる。そして、近年の光ディスク再生装置では、アクセサリ電源をオフした際のコンテンツが再生されるようにピックアップレンズの位置が制御されるものも多い。また、光ディスクの面振れは外側が内側よりも大きい。従って、仮に、光ディスクの外側に記録されているコンテンツから再生が再開された場合、光ディスクとピックアップレンズとの接触の可能性が高まる。その結果、光ディスクが損傷する可能性も高まる。
【0007】
本発明では、上記した背景に鑑み、車両に搭載される光ディスク再生装置において、光ディスク再生装置に供給される電圧変化によって起こりうる、光ディスクへの損傷を抑制する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上述した課題を解決するため、光ディスク再生装置に供給される電圧が変化する際、ピックアップレンズを光ディスクと接触しない位置へ退避させておくこととした。より詳細には、本発明は、車両に搭載され、光ディスクに対してデータの読み出しとデータの書き込みとのうち少なくともいずれか一方を実行する光ディスク再生装置に関する。具体的には、本発明に係る光ディスク再生装置は、光ディスクの記録面へのレーザ光の送出と受光を行うピックアップレンズを有するピックアップ部と、前記光ディスク再生装置への供給電圧に影響を与える情報であって、前記車両の運転状態に関する運転情報を取得する取得部と、前記取得部で取得される前記運転情報に基づいて、前記ピックアップ部を、該ピックアップ部と前記光ディスクとが接触しない位置に退避させる制御部と、を備える。
【0009】
本発明によれば、取得部で取得される運転情報に基づいて、制御部が、ピックアップ部を、ピックアップ部と光ディスクとが接触しない位置に退避させる。その結果、光ディスクとピックアップ部との接触が回避され、光ディスクの損傷が抑制される。
【0010】
ここで、本発明に係るピックアップ部は、光ディスクの記録面へのレーザ光の送出と受光を行うピックアップレンズを有する。本発明に係るピックアップ部は、ピックアップレンズと光ディスクとの接触による光ディスクの損傷を低減するレンズプロテクタを有していてもよい。ピックアップ部と光ディスクとの接触には、光ディスクとピックアップレンズとの接触や、光ディスクとレンズプロテクタとの接触が含まれる。
【0011】
光ディスクには、CD、CD−ROM、DVD、DVD−ROM、BD(ブルーレイ光ディスク)といった光ディスクが含まれる。従って、本発明に係る光ディスク再生装置は、このような種々の光ディスクを再生する装置に適用できる。但し、光ディスクの中でもBDは、光ディスクの記録面とピックアップレンズとの距離が、CD等に比べて近く、BDとピックアップレンズとの接触の可能性が高い。従って、本発明に係る光ディスク再生装置は、特にBDの再生装置として好適に用いることができる。
【0012】
上述したように、光ディスク再生装置を起動後に、光ディスク再生装置への供給電圧が
変化すると、光ディスクとピックアップ部との接触の可能性が高まるといった問題がある。そこで、本発明に係る光ディスク再生装置では、取得部が、運転情報を取得し、取得された運転情報に基づいて、制御部が、ピックアップ部を退避させる。運転情報とは、光ディスク再生装置への供給電圧に影響を与える情報であって、車両の運転状態に関する情報である。
【0013】
制御部は、取得部で取得される運転情報に基づいて、ピックアップ部を、ピックアップ部と光ディスクとが接触しない位置に退避させる。ピックアップ部と光ディスクとが接触しない位置には、光ディスクの中央や外側、光ディスクの記録面から十分な間隔が確保された位置が含まれる。ピックアップ部が記録面が設けられていない光ディスクの中央や外側まで退避することで、ピックアップ部と光ディスクとの接触が回避される。また、ピックアップ部を光ディスクの中央や外側に退避しなくても、ピックアップ部と光ディスクの記録面との距離を十分に確保することで、ピックアップ部と記録面との接触が回避できる。なお、十分な距離は、光ディスクの面振量、換言すると光ディスクの外周端部における光ディスクの記録面と直交する方向の移動量に基づいて算出することができる。
【0014】
ここで、上記発明において、前記取得部は、前記運転情報として、前記車両の駆動部の始動又は停止に関する情報を取得してもよい。前記制御部は、前記車両の駆動部の始動又は停止に関する情報としての前記運転情報が取得されると、前記ピックアップ部を、該ピックアップ部と前記光ディスクとが接触しない位置に退避させるようにしてもよい。車両の駆動部の始動時には、車両のバッテリの電圧が一時的に低下する。従って、車両の駆動部の始動時にピックアップ部を退避させることで、ピックアップ部と光ディスクとの接触を抑制することができる。また、車両の駆動部が停止する際、予めピックアップ部を退避させておくことで、駆動部の始動時においてバッテリの電圧が一時的に低下しても、ピックアップ部と光ディスクとの接触を抑制することができる。
【0015】
また、本発明に係る光ディスク再生装置において、前記取得部は、前記運転情報として、前記光ディスク再生装置への供給電圧が安定する安定情報を取得してもよい。また、前記制御部は、前記安定情報が取得されると、前記ピックアップ部の退避を解除して前記光ディスク再生装置による光ディスクの再生を開始させるようにしてもよい。安定情報には、光ディスク再生装置への供給電圧が安定する車両の情報が含まれる。安定情報は、光ディスク再生装置への供給電圧が安定する時間に関する情報でもよい。
【0016】
また、本発明に係る光ディスク再生装置において、前記取得部は、前記運転情報として、前記車両の駆動部の始動又は停止に関する情報を取得すると共に、前記ピックアップ部の位置に関する位置情報を取得してもよい。そして、前記制御部は、前記車両の駆動部の始動又は停止に関する情報としての運転情報を取得し、かつ、前記位置情報に基づいて該ピックアップ部と前記光ディスクとの接触の有無を判断し、該ピックアップ部と前記光ディスクとが接触すると判断した場合、前記ピックアップ部を、該ピックアップ部と前記光ディスクとが接触しない位置に退避させるようにしてもよい。ピックアップ部と前記光ディスクとが接触すると判断した場合のみ、ピックアップ部を退避させることで、無駄な動作を低減することができる。
【0017】
なお、本発明は、上述した光ディスク再生装置を搭載するナビゲーション装置等の電子機器であってもよい。また、本発明は、上述した光ディスク再生装置で実行される処理を実現させる方法であってもよい。具体的には、本発明は、車両に搭載され、光ディスクに対してデータの読み出しとデータの書き込みとのうち少なくともいずれか一方を実行する光ディスク再生方法装置による光ディスク再生方法であって、前記光ディスク再生装置は、光ディスクの記録面へのレーザ光の送出と受光を行うピックアップレンズを有するピックアップ部を備え、前記光ディスク再生装置への供給電圧に影響を与える情報であって、
前記車両の運転状態に関する運転情報を取得する取得ステップと、前記取得ステップで取得される前記運転情報に基づいて、前記ピックアップ部を、該ピックアップ部と前記光ディスクとが接触しない位置に退避させる制御ステップと、をコンピュータが実行する、光ディスク再生方法である。また、本発明は、上述した光ディスク再生装置で実行される処理を実現させるプログラムであってもよい。更に、本発明は、そのようなプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体であってもよい。この場合、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。なお、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、又は化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両に搭載される光ディスク再生装置において、光ディスク再生装置に供給される電圧変化によって起こりうる、光ディスクへの損傷を抑制する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の光ディスク再生装置のタイミングチャートの一例を示す。
【図2】光ディスク再生装置が搭載されるナビゲーション装置の概略構成を示す。
【図3】光ディスク再生装置の構成を示す。。
【図4】光ディスク再生制御部のブロック図を示す。
【図5】キーシリンダの外観を示す。
【図6】制御パターン1の制御フローを示す。
【図7】光ディスク再生装置のタイミングチャートを示す。
【図8】制御パターン2の制御フローを示す。
【図9】制御パターン3の制御フローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明に係る光ディスク再生装置の実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、光ディスク再生装置を有するナビゲーション装置を例に説明する。但し、以下の実施例に限定されるものではない。例えば、本発明に係る光ディスク再生装置は、光ディスク再生装置としてのデッキそのものでもよい。
【0021】
(第一実施形態)
<ナビゲーション装置の構成>
図2は、光ディスク再生装置100が搭載されるナビゲーション装置300の概略構成を示す。ナビゲーション装置300は、光ディスク再生装置200と、メモリーカード再生部22と、TV受信部23と、ラジオ受信部24と、TFT(Thin Film Transistor)モジュール125と、GPS情報受信部26と、操作部27と、通信部28と、これらと電気的に接続される制御部20と、により構成されている。
【0022】
まず、光ディスク再生装置2以外の構成について簡単に説明する。メモリーカード再生部22は、USBメモリ、SDメモリーカードといった移動型記憶媒体に格納されているコンテンツを再生する。TV受信部23は、DTV(Digital Television)放送やワンセグ放送を受信する。TV受信部23は、既存のチューナによって構成することができる。ラジオ受信部24は、FM放送、AM放送、VICS情報等を受信する。ラジオ受信部24は、既存のチューナによって構成することができる。GPS情報受信部26は、GPS情報を受信する。GPS情報受信部26は、既存のGPS用受信アンテナによって構成することができる。操作部27は、ユーザの操作に応じて、操作ボタンに対応する電気信号を制御部20へ送信する。操作部27は、ナビゲーション装置300に設けてもよく、ま
た、遠隔操作を可能とするリモートコントローラであってもよい。
【0023】
TFTモジュール125は、光ディスク再生装置200やTV受信部23から供給される映像データに基づいて画面に映像を表示する。また、ナビゲーション機能を実行中は、ナビ地図情報や現在位置情報を表示する。
【0024】
通信部28は、例えば携帯端末から出力される赤外線を受信する。通信部28は、有線、無線を問わない。通信部28は、無線通信を可能とする、赤外線ポート、Bluetooth(
登録商標)でもよく、また、有線通信を可能とするケーブルを接続するコネクタであってもよい。
【0025】
制御部20は、光ディスク再生装置200、メモリーカード再生部22、TV受信部23、ラジオ受信部24、TFTモジュール125、GPS情報受信部26、操作部27、通信部28を制御する。制御部20は、CPU、メモリ等を含むコンピュータとコンピュータ上で実行される上記各プログラムによって実現することができる。CPUは、バスを介して上述したTFTモジュール125等の各ハードウェアと接続されている。CPUは、各ハードウェアを制御すると共に、例えばROM等のメモリに格納された制御プログラムに従って、所定の処理を実行する。
【0026】
<光ディスク再生装置>
次に光ディスク再生装置200について説明する。光ディスク再生装置200は、CDやDVD、又はBD(ブルーレイ光ディスク)等に記録されているコンテンツを再生する。光ディスク再生装置200は、CD/DVD/BDデッキによって構成することができる。なお、光ディスクには、CD−ROMやDVD−ROMといった読み出し専用のメディアの他、CD−RW、DVD−RW、BD(ブルーレイ光ディスク)のように書き換え可能なメディアも含まれる。また、光ディスクは、CD−RやDVD−Rといった一度だけ書き込み可能なメディアであってもよい。
【0027】
ここで、図3は、光ディスク再生装置200の構成を示す。本実施形態の光ディスク再生装置200は、ターンテーブル1、ピックアップレンズ2を有するピックアップ部3、スピンドルモータ4、を備える。また、光ディスク再生装置100は、上記に加えて、図示しないCPU(中央演算処理装置)や記憶部によって構成される光ディスク再生制御部201を備える。なお、光ディスク再生制御部201は、光ディスク再生装置200内に設けてもよく、また、制御部20内に設けてもよい。
【0028】
ターンテーブル1は、光ディスク4の記録面側(鏡面側)を支持すると共に光ディスク4を回転させる。スピンドルモータ2は、ターンテーブル1が支持する光ディスク4に回転力を与える。すなわち、スピンドルモータ2は、光ディスク4を回転させる駆動源として機能する。
【0029】
ピックアップ部3は、光ディスク4に対してレーザ光を送出する。本実施形態に係る光ディスク再生装置100は、CDやDVD用のピックアップレンズ2aと、BD用のピックアップレンズ2bとを備える。なお、以下の説明では、CDやDVD用のピックアップレンズ2aとBD用のピックアップレンズ2bとは、特に区別する必要がある場合を除いて、単にピックアップレンズ2と称する。ピックアップレンズ2は、光ディスク4の記録面(紙面下側)にレーザ光を送出し、受光するものであり、レーザ光源及び受光部として機能する。また、ピックアップレンズ2は、レーザ光の送出又は受光時に光ディスク4の外側から中心に向けてスライド可能である。なお、ピックアップ部3のスライドは、ピックアップ部3の近傍に設けられたモータ7からの駆動力によって行われる。なお、本実施形態に係る光ディスク再生装置100では、ピックアップレンズ2の外側にレンズプロテ
クタ5が設けられている。レンズプロテクタ5は、ピックアップレンズ2よりも光ディスク4側に突出し、ピックアップレンズ2と光ディスク4との接触を抑制する。
【0030】
<光ディスク再生制御部>
図4は、光ディスク再生制御部201のブロック図を示す。本実施形態に係る光ディスク再生制御部201は、取得部202、ピックアップ制御部203、記憶部204を備える。光ディスク再生制御部201は、CPU(Central Processing Unit)205、揮発
性のRAM(Random Access Memory)や不揮発性のROM(Read Only Memory)等のメモリ206によって構成され、メモリに格納された所定のプログラムに基づいて、取得部202、ピックアップ制御部203、記憶部204を機能させる
【0031】
取得部202は、光ディスク再生装置100への供給電圧に影響を与える情報であって、車両の運転状態に関する運転情報を取得する。より詳細には、取得部202は、アクセサリ電源のON/OFF、エンジンスタータの始動の有無(クランキング状態か否か)、エンジンのON/OFFに関する情報を取得する。これらの情報は、車両のキーが挿入されるキーシリンダ8の電源回路部より取得可能である。
【0032】
ここで、図5は、本実施形態に係るキーシリンダ8の外観を示す。図5に示すように、本実施形態に係るキーシリンダ8は、OFF(アクセサリ(以下、ACCとも言う)電源とエンジンの双方がOFF)、ACC(アクセサリ電源のみがON)、ON(アクセサリ電源とエンジンの双方がON)、START(アクセサリ電源がONで、エンジンがクランキング状態)を備える。キーシリンダ8にキーが挿入され、キーが所定の位置へ回転することで、アクセサリ電源のON/OFFやエンジンのON/OFF等が実現される。
【0033】
ピックアップ制御部203は、取得部202で取得される運転情報に基づいて、ピックアップ部3を、ピックアップ部3と光ディスク4とが接触しない位置、本実施形態では光ディスク4の中心側へ退避させる。なお、ピックアップ部3の退避位置は、光ディスク4の外側、光ディスクの記録面から十分な間隔が確保された位置でもよい。ピックアップ制御部203による具体的な制御処理については、後述する。
【0034】
記憶部204は、アクセサリ電源がOFFされた際のピックアップ部3の位置に関する位置情報を記憶する。ここで、ピックアップ部3の移動は、モータ7(例えば、パルスモータやステッピングモータ)によって行うことができる。パルスモータでは、入力されるパルス量によってピックアップ部3の移動量が決定される。従って、記憶部204は、これらのモータの移動量、換言するとパルス量を記憶する。これにより、ACCがOFFされた際のピックアップ部3の位置の記憶が可能となる。パルスモータについて言及したが、他のモータでも現在の原点からの移動量を認識可能であり、更には移動量を記憶可能である。
【0035】
<制御>
次に、ピックアップ制御部203によって行われるピックアップ部3の位置の 制御について説明する。なお、以下の処理は、ピックアップ制御部203のC PU205によって実行される。
【0036】
(制御パターン1)
図6は、制御パターン1の制御フローを示す。また、図7は、本実施形態に係る光ディスク再生装置200のタイミングチャートを示す。ステップS01では、エンジンのON/OFFに関する情報が取得され、エンジンがONからOFFになったか否かが判断される。エンジンがONからOFFになったと判断された場合、ステップS02へ進む。一方、エンジンがONからOFFになったと判断されなかった場合、再度ステップS01の処
理が実行される。なお、図7のタイミングチャートに示すように、エンジンがONの状態では、バッテリ電圧が13.2V、アクセサリ電圧が13.2V、光ディスク再生装置(デッキ)電源電圧が5V/8Vである。そして、車両の状態は、エンジンがONであり、光ディスク再生装置100は、演奏中であり、サーボはON(面振れ制御実行状態)、光ディスクは、回転状態である。そして、エンジンがOFFの状態では、バッテリ電圧は、13.2Vであるが、アクセサリ電圧が0V、光ディスク再生装置(デッキ)電源電圧が0Vとなる。そして、車両の状態は、エンジンがOFFであり、光ディスク再生装置100は、演奏停止中であり、サーボはOFF、光ディスクは、空転した後停止する。
【0037】
ステップS02では、ピックアップ部3の位置に関する位置情報が記憶部204へ記憶されるとともにピックアップ部3が光ディスク4の中央側へ移動される。以下、ステップS02の処理は、退避処理ともいう。このとき、キーシリンダ8は、差し込まれたキーがOFFの位置にあるか、又は、キーが抜き取られた状態である。なお、図7のタイミングチャートのデッキの状態における「A」は、ピックアップ部3の位置の記憶及び移動が実行されることを意味する。
【0038】
ステップS03では、エンジンの始動が完了したか否かが判断される。より詳細には、キーが(1)ACC→(2)ON→(3)START→(4)ONの順に回され、クランキング状態が終わり、通常のエンジンON状態であるか否かが判断される。上記判断は、本実施形態では、キーシリンダ8の電源回路部からの情報に基づいて判断することができる。エンジンの始動が完了したと判断された場合、ステップS04へ進む。一方、エンジンの始動が完了していないと判断された場合、再度ステップS03の処理が実行される。なお、図7のタイミングチャートに示すように、アクセサリ電源がONの状態では、バッテリ電圧が13.2V、アクセサリ電圧が13.2V、光ディスク再生装置(デッキ)電源電圧が5V/8Vである。そして、車両の状態は、アクセサリ電源がONであり、光ディスク再生装置100は、待機中(図においてBで示す)であり、サーボはON(面振れ制御実行状態)、光ディスク4は、回転状態である。そして、キーがSTARTに回されると、バッテリ電圧は、一時的に低下(例えば、3から7Vまで低下してその後8から10Vまで回復)する。この時、アクセサリ電圧は、一時的に0Vとなり、これに付随して、光ディスク再生装置(デッキ)電源電圧も0Vとなる。そして、車両の状態は、クランキング状態であり、光ディスク再生装置100は、停止中(待機状態維持)であり、サーボはOFF、光ディスクは、空転状態となる。なお、従来の技術では、図1で説明したように、この車両がクランキング状態において、ピックアップ部と光ディスクとの接触が発生した。しかしながら、本実施形態に係る光ディスク再生装置100では、ピックアップ部3が待機状態、すなわち、中央側へ退避した状態であるので、ピックアップ部3と光ディスク4との接触が抑制される。その結果、光ディスクの損傷を抑制することができる。
【0039】
ステップS04では、退避処理が解除される。すなわち、ステップS02において、中央側へ移動されたピックアップ部3が再生位置へ移動する。再生位置への移動は、記憶部204に記憶されているパルス量に基づいて行われる。そして、光ディスク再生装置100による、コンテンツの再生が行われる。なお、図7のタイミングチャートに示すように、エンジンがONの状態では、バッテリ電圧が13.2V、アクセサリ電圧が13.2V、光ディスク再生装置(デッキ)電源電圧が5V/8Vである。そして、車両の状態は、アクセサリ電源とエンジンは、共にONであり、光ディスク再生装置100は、演奏中であり、サーボはON(面振れ制御実行状態)、光ディスクは、回転状態である。
【0040】
以上説明した制御パターン1によれば、ピックアップ制御部203により、エンジンがOFFとされる際、予めピックアップ部3が光ディスク4の中央側へ移動される。そして、アクセサリ電源がONとなっても、クランキング状態が終了するまで、換言すると、バッテリ電圧が安定するまで、ピックアップ部3が光ディスクの中央側へ移動した状態(退
避状態)を維持する。これにより、ピックアップ部3と光ディスク4との接触を抑制することができ、光ディスク4への損傷、特に従来技術で懸念されていた円状の損傷が抑制される。
【0041】
(制御パターン2)
図8は、制御パターン2の制御フローを示す。ステップS11では、アクセサリ電源がONになったことが検知される。アクセサリ電源がONになると、上述したステップS02以降の処理が実行される。すなわち、ステップS02の退避処理、ステップ03のエンジンの始動が完了したか否かの判断処理、ステップS04の退避処理の解除処理が実行される。
【0042】
以上説明した制御パターン2によれば、ピックアップ制御部203により、アクセサリ電源がONとされる際に、ピックアップ部3が光ディスクの中央側へ移動される。そして、移動した状態、すなわち退避状態は、クランキング状態が終了するまで維持される。これにより、ピックアップ部3と光ディスク4との接触を抑制することができ、光ディスク4への損傷が抑制される。
【0043】
(制御パターン3)
図9は、制御パターン3の制御フローを示す。制御パターン3では、制御パターン2の処理に加えて、退避処理(ステップS02)の前に、退避処理が必要か否かを判断する処理が実行される。すなわち、アクセサリ電源がONになったことが検知されると、ステップS12へ進む。そして、ステップS12では、退避処理が必要か否か、換言すると、ピックアップ部3と光ディスク4とが接触するか否かが判断される。そして、退避処理が必要と判断された場合、ステップS02へ進む。一方、退避処理が必要ではないと判断された場合、ステップS11の処理が再度実行される。
【0044】
ここで、退避処理が必要か否かは、ピックアップ部3の位置に基づいて判断することができる。ピックアップ部3と光ディスク4との接触は、ピックアップ部3の取付工程における取付精度、部品の寸法誤差によっても異なるが、サーボ制御なし若しくはサーボ制御機能なしの条件では、光ディスク4の面振れ量が±5mm、ピックアップ部3の位置が光ディスクの中心から45mm以上外側で発生する。そこで、例えば、ピックアップ部3の位置が光ディスクの中心から45mm以上外側にある場合に、退避処理が必要と判断することができる。なお、この光ディスク4の中心から45mmといった値は、モータの移動量すなわちパルス量に変換することが好ましい。ステッピングモータやパルスモータの場合、上述したようにピックアップ部3の位置をパルス量として記憶することができる。従って、退避処理の判断基準も、パルス量に基づくことが好ましい。
【0045】
以上説明した制御パターン3によれば、制御パターン2と同じく、ピックアップ制御部203により、アクセサリ電源がONとされる際に、ピックアップ部3が光ディスクの中央側へ移動される。そして、移動した状態、すなわち退避状態は、クランキング状態が終了するまで維持される。これにより、ピックアップ部3と光ディスク4との接触を抑制することができ、光ディスク4への損傷が抑制される。そして、更に、退避処理が、必要なときだけ行われるので、無駄な制御を低減することができる。なお、制御パターン3におけるステップS12の処理は、制御パターン1においても適用可能である。
【0046】
<効果>
以上説明した実施形態に係る光ディスク再生装置100によれば、取得部202で取得される運転情報(エンジンのON/OFF、ACCのON/OFF等)に基づいて、ピックアップ部3が、ピックアップ部3と光ディスク4とが接触しない位置に退避させる。その結果、光ディスク4とピックアップ部3との接触が回避され、光ディスク4の損傷を抑
制することができる。その結果、従来技術において懸念されていた、光ディスクへの円状の損傷を抑制することができる。
【符号の説明】
【0047】
1・・・ターンテーブル
2a、2b・・・ピックアップレンズ
3・・・ピックアップ部
4・・・スピンドルモータ
5・・・レンズプロテクタ
8・・・キーシリンダ
20・・・制御部
22・・・メモリーカード再生部
23・・・TV受信部
24・・・ラジオ受信部
25・・・TFTモジュール
26・・・GPS情報受信部
27・・・操作部
28・・・通信部
200・・・光ディスク再生装置
201・・・光ディスク再生制御部
202・・・取得部
203・・・ピックアップ制御部
204・・・記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、光ディスクに対してデータの読み出しとデータの書き込みとのうち少なくともいずれか一方を実行する光ディスク再生装置であって、
光ディスクの記録面へのレーザ光の送出と受光を行うピックアップレンズを有するピックアップ部と、
前記光ディスク再生装置への供給電圧に影響を与える情報であって、前記車両の運転状態に関する運転情報を取得する取得部と、
前記取得部で取得される前記運転情報に基づいて、前記ピックアップ部を、該ピックアップ部と前記光ディスクとが接触しない位置に退避させる制御部と、を備える
光ディスク再生装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記運転情報として、前記車両の駆動部の始動に関する始動情報又は停止に関する停止情報を取得し、
前記制御部は、前記始動情報又は停止情報が取得されると、前記ピックアップ部を、該ピックアップ部と前記光ディスクとが接触しない位置に退避させる、請求項1に記載の光ディスク再生装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記運転情報として、前記光ディスク再生装置への供給電圧が安定する安定情報を取得し、
前記制御部は、前記安定情報が取得されると、前記ピックアップ部の退避を解除して前記光ディスク再生装置による光ディスクの再生を開始させる、請求項1又は2に記載の光ディスク再生装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記運転情報として、前記車両の駆動部の始動又は停止に関する情報を取得すると共に、前記ピックアップ部の位置に関する位置情報を取得し、
前記制御部は、前記車両の駆動部の始動又は停止に関する情報としての運転情報を取得し、かつ、前記位置情報に基づいて該ピックアップ部と前記光ディスクとの接触の有無を判断し、該ピックアップ部と前記光ディスクとが接触すると判断した場合、前記ピックアップ部を、該ピックアップ部と前記光ディスクとが接触しない位置に退避させる、請求項1から3のいずれか一に記載の光ディスク再生装置。
【請求項5】
車両に搭載され、光ディスクに対してデータの読み出しとデータの書き込みとのうち少なくともいずれか一方を実行する光ディスク再生装置による光ディスク再生方法であって、
前記光ディスク再生装置は、光ディスクの記録面へのレーザ光の送出と受光を行うピックアップレンズを有するピックアップ部を備え、
前記光ディスク再生装置への供給電圧に影響を与える情報であって、前記車両の運転状態に関する運転情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得される前記運転情報に基づいて、前記ピックアップ部を、該ピックアップ部と前記光ディスクとが接触しない位置に退避させる制御ステップと、をコンピュータが実行する、光ディスク再生方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−238281(P2010−238281A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82924(P2009−82924)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】