説明

光ディスク再生装置

【課題】
オンスクリーン表示部分の輪郭が過度に強調されることを回避し、自然な輪郭強調を行うことのできる光ディスク再生装置を提供する。
【解決手段】
光ディスクから映像信号を読み出すデジタル映像信号読み出し手段9と、再生装置の動作状態を文字あるいは図形を用いて再生装置の表示画面に表示するオンスクリーン表示信号発生手段13と、前記読み出し手段が読み出したデジタル映像信号及びオンスクリーン表示信号生成手段が生成したオンスクリーン表示信号の合成信号に輪郭強調信号を付加する輪郭強調回路11と、再生装置全体を制御する制御部14を備え、該制御部14は、前記オンスクリーン表示信号生成手段がオンスクリーン表示信号を生成している期間、輪郭強調回路の出力を加算制御回路11dにより所定レベル以下に制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク再生装置に係り、特に光ディスクから読み出した映像信号に輪郭強調を施すことのできる光ディスク再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスク再生装置では「PLAY」や「STOP」など、再生装置の動作状態を表す表示や、リモコン操作を行ったことがわかる表示を、文字や記号、図形などを用いて表示装置の画面上に分かり易く表示するオンスクリーン表示(OSD;On Screen Display)が行われている。オンスクリーン表示によって示する表示内容は、通常、光ディスクから読み出した映像信号との関連性が全くない。
【0003】
このため、輪郭強調回路を用いて、輪郭部が不鮮明(ぼけている)な映像信号の輪郭部分の補正を行って画質を改善している場合には、通常の映像信号による表示とオンスクリーン表示信号による表示の境界部分に対して、水平及び垂直の輪郭強調を強く行うことになる。このため、オンスクリーン表示部周辺が過度に輪郭強調され、使用者にとって見苦しい映像となる。
【0004】
なお、使用者が再生装置の映像出力を好みの画質に調整するための設定を行うためには、リモコンなどを用いて調整項目やその調整レベルなどをオンスクリーン表示によって確認し、更に、表示装置の映像出力を視聴してその調整効果を見ながら調整する必要があるため、オンスクリーン表示周辺に過度の輪郭強調がなされることは、画質調整の妨げになる。
【0005】
図4は、従来の光ディスク再生装置の映像出力回路を説明する図である。図4において、光ディスクは光ディスク再生装置に装填されたDVD(Digital Versatile Disc)などの映像信号を記録した光ディスクであり、MPEG(Moving Picture Experts Group)ビデオデコーダ9はDVDから読み出されたデータからメインピクチャビットストリームを分離し、復号化してデジタル映像信号を出力する。
【0006】
オンスクリーン表示信号発生回路13は、再生装置の動作状態やリモコンによる操作内容を画面表示するための文字や記号、図形などの映像信号を発生する回路であり、制御部14によって、その表示内容の選択や表示位置と表示するタイミングの指定がなされる。加算器10は上記映像信号とオンスクリーン表示信号を加算して、映像出力を行う。
【0007】
輪郭強調回路11は、水平輪郭強調回路11a、垂直輪郭強調回路11b、加算器11cから構成される。
【0008】
輪郭強調回路11は、MPEGビデオデコーダ9からの映像信号、または加算器10によってオンスクリーン表示信号が加算された映像信号を入力する。さらに輪郭強調回路11は、入力された映像信号における輝度信号、色差信号のそれぞれについて、水平方向及び垂直方向における変化の大きな箇所を強調するための信号を、水平輪郭強調回路11a及び垂直輪郭強調回路11bで生成する。生成された信号は加算器11cによって元の映像信号に加算して輪郭強調を実現する。
このような輪郭強調回路を用いて画質を改善する場合、前述の通り、オンスクリーン表示が表示されると、映像信号と、この映像信号と関連性のないオンスクリーン表示部の境界部を輪郭部分と判断してしまうため、オンスクリーン表示の周辺に不自然な輪郭強調がなされてしまうことになる。
【0009】
不自然な輪郭強調を除去する技術として、特許文献1が知られている。この文献に示される映像信号処理回路では、ハイビジョン受信機やワイドテレビ受信機等の高アスペクト比の受信機を用いて従来の低アスペクト比の映像信号を表示する場合に、水平の映像信号の開始部分と終了部分に発生する見苦しい輪郭強調信号を除去する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平6−22242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記従来技術は、画面の両端部から一定の固定した箇所においてのみ、不要な輪郭強調信号を除去することのできる手段であり、汎用性に欠ける。すなわち、オンスクリーン表示の表示内容は文字、記号、図形などのひとつ、またはそれらの組み合わせに構成される。このため、表示位置や表示範囲は一定しない。また、オンスクリーン表示は必要な時にだけ表示を行い、常時表示するものではない。このため、表示画面上の一定の場所を輪郭強調の対象から外すことは不自然であり、かえって使用者に違和感を与えることになる。
【0011】
本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたもので、光ディスクから読み出した映像信号に対して輪郭強調を行う際に、機器の状態を示す表示やリモコンによる繰作を示す表示などのオンスクリーン表示があった場合に、オンスクリーン表示部分の輪郭が過度に強調されることを回避し、自然な輪郭強調を行うことのできる光ディスク再生装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記課題を解決するため、次のような手段を採用した。
【0013】
光ディスクから映像信号を読み出す映像信号読み出し手段と、再生装置の動作状態を文字あるいは図形を用いて装置の表示画面に表示するオンスクリーン表示信号を発生するオンスクリーン表示信号発生手段と、前記映像信号読み出し手段が読み出した映像信号及びオンスクリーン表示信号発生手段が発生したオンスクリーン表示信号の合成信号に輪郭強調信号を付加する輪郭強調回路と、再生装置全体を制御する制御部を備え、該制御部は、前記オンスクリーン表示信号発生手段がオンスクリーン表示信号を発生している期間、前記輪郭強調回路の出力を所定レベル以下に制限する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上の構成を備えるため、光ディスクから読み出した映像信号に対して輪郭強調を行う際に、機器の状態を示す表示やリモコンによる繰作を示す表示などのオンスクリーン表示があった場合に、オンスクリーン表示部分の輪郭が過度に強調されることを回避し、自然な輪郭強調を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、最良の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は、光ディスク再生装置の構成を説明する図である。図1に示すようにスピンドルモータ2に固定されたターンテーブル1は、DVD等の光ディスクを保持する。操作部15から再生開始の指示があると、サーボ制御部3は、スピンドルモータ2を所定の線速度で回転駆動する。また、サーボ制御部3は、図示しないフォーカスサーボ回路とトラッキングサーボ回路を制御して、光ピックアップ4からのレーザ光を光ディスクのピット列に正しくトレースさせる。
【0016】
光ピックアップ4が読み取った信号は、RF(Radio Frequency)アンプ5により波形整形及び増幅されて信号処理部6に入力される。信号処理部6は、入力された信号からMPEGデータ等を復調するとともに、誤り訂正処理、MPEGビデオデータとオーディオデータとの分離処理及びアドレス情報の抽出処理等のデジタル信号処理を行う。
【0017】
オーディオデコーダ7は、信号処理部6から入力されたオーディオデータをデコードし、デコードされたオーディオデータは、デジタルアナログ変換器(DAC)8によりアナログオーディオ信号に変換して外部に出力する。
【0018】
MPEGビデオデコーダ9は、信号処理部6から入力されたMPEGビデオデータをデコードする。加算器10は、MPEGビデオデコーダ9によりデコードされたビデオデータとオンスクリーン表示信号発生部13により発生された文字や図形等のオンスクリーン表示信号とを加算する。オンスクリーン表示信号が加算されたビデオデータは、輪郭強調回路11により輪郭強調処理を施し、更にデジタルアナログ変換器(DAC)12を介して輝度信号Yおよび色差信号Cb、Crを含むアナログビデオ信号に変換する。
【0019】
オンスクリーン表示信号発生部13は、制御部14の制御により、装置の動作状態や操作部15の操作指示を示す文字や図形等のオンスクリーン表示信号を発生する。
【0020】
制御部14は、サーボ制御部3、信号処理部6、輪郭強調回路11、オンスクリーン表示信号発生部13、表示部16等を制御する。また、操作部15は、再生ボタン、再生停止ボタン、早送りボタン、早戻しボタン、イジェクトボタンを備える。また、表示部16は、現在再生しているトラックの再生時間、トラックナンバー等を表示する。
【0021】
図2は、輪郭強調回路11の詳細を説明する図である。図2に示すように、輪郭強調回路11は、水平輪郭強調回路11a、垂直輪郭強調回路11b、水平輪郭強調回路及び垂直輪郭強調回路の出力を加算して所定の係数(k)を積算して出力する加算制御部、及び加算部出力を元のビデオデータに加算する加算器11cを備える。
【0022】
図2において、光ディスクは、前述したように光ディスク再生装置に装填されたDVDなどの映像信号を記録した光ディスクであり、MPEGビデオデコーダ9はDVDから読み出されたデータからメインピクチャビットストリームを分離し、復号化してデジタル映像信号を出力する。
【0023】
オンスクリーン表示信号発生回路13は、機器の動作状態やリモコンによる操作内容を画面表示するための文字や記号、図形などのオンスクリーン表示を発生する回路であり、制御部14によって、その表示内容の選択や表示位置と表示するタイミングの指定がなされる。加算器10は上記映像信号とオンスクリーン表示信号を加算してビデオデータを生成する。
【0024】
水平輪郭強調回路11a及び垂直輪郭強調回路11bは、それぞれ前記ビデオデータ(輝度信号、あるいは輝度信号及び色差信号)について、水平方向及び垂直方向における変化の大きな箇所を映像の輪郭であるして検出する。そして、この輪郭部分を強調するための信号を水平輪郭強調信号及び垂直輪郭強調信号として生成する。
【0025】
生成された水平輪郭強調信号及び垂直輪郭強調信号は加算制御回路11dを通して加算器11c元の映像信号(ビデオデータ)に加算する。これにより輪郭強調を実現することができる。
【0026】
加算制御回路11dは、制御部14からのオンスクリーン表示位置を表す制御信号が入力されると、輪郭強調回路11a、11bの輪郭強調信号のうち、オンスクリーン表示位置における輪郭強調信号を除去する。なお、この除去操作に際しては前記係数kを例えば0に設定すればよい。
【0027】
図3は、オンスクリーン表示を説明する図である。この図の例では、枠で囲んだ「ENHANCER LEVEL:+2」をオンスクリーン表示として表示するものとする。ここで、図2に示す制御部14は、オンスクリーン表示における上記表示内容が予め定められた位置に表示されるようにオンスクリーン表示信号発生回路を制御する。
【0028】
なお、制御部14は、オンスクリーン表示する文字や図形等の画像情報と該画像情報を表示する位置を示す表示位置情報を予め記憶している。そして、操作部15から操作指示入力があると、該操作指示の内容に応じて、記憶した前記画像情報を前記表示位置情報に従って表示する。このとき、前記表示位置情報を、表示するオンスクリーン表示の表示位置あるいは表示範囲として特定し、特定した表示位置情報を、例えば(水平方向:HA〜HB、垂直方向:VA〜VB)あるいは(始点:HA/VA、範囲:HB−HA/VB−VA)の形式で加算制御回路11dに供給する。
【0029】
すなわち、表示位置情報は、水平方向の範囲(HAからHB)及び垂直方向の範囲(VAからVB)、あるいは水平方向HA、垂直方向VAの位置を始点として、この始点から水平方向の範囲(HBからHA)及び垂直方向の範囲(VBからVA)で表すことができる。なお、HA、HBは図2に示す水平有効表示範囲の開始位置0点からの時間的な距離として画素数で表すことができる。また、VA、VBは、図2に示す垂直有効表示範囲の開始位置0点からの時間的な距離として走査線数で表すことができる。
【0030】
加算制御回路11dは、オンスクリーン表示の表示位置情報を制御部から取得し、輪郭強調回路11a、11bが出力する輪郭強調信号の加算を制御する。すなわち、オンスクリーン表示の表示範囲外では水平及び垂直の輪郭強調回路11a、11bから出力される輪郭強調信号を減衰させることなく加算器11c出力して、もとのビデオデータに加算することによって輪郭強調の効果を与える。一方、オンスクリーン表示の表示範囲内、特に境界部分においては水平及び垂直の輪郭強調回路から出力される輪郭強調信号の出力を禁止させることによって、加算器11cにおいてはこの信号をもとのビデオデータに加算させないようにして輪郭強調の効果をなくすることができる。
【0031】
なお、使用者が輪郭強調を強くかける等の操作を行った場合などにおいて、加算制御回路11dの出力を禁止して輪郭強調の効果を全て除去すると、違和感が発生することがある。このような場合には、加算制御回路11dにおいて水平及び垂直の輪郭強調回路11a、11bから出力されるオンスクリーン表示の表示範囲内の輪郭強調信号のレベルを減衰してから元のビデオデータに加算することも可能である。この場合、使用者は、表示装置に表示された映像を見ながら、輪郭強調のレベルを可変(前記kを可変)する操作をすることができる。
【0032】
また、輪郭強調を行わない範囲、または、輪郭調整の効果を少なくする範囲をオンスクリーン表示の表示範囲内だけでなく、その境界部分の近傍となる範囲、例えば、水平方向はHA−X1〜HB+X2(Xl、X2は任意の画素数)、垂直方向はVA−Y1〜VB+Y2(Yl、Y2は任意の走査線致)としても良い。なお、輪郭強調回路を各回路はプログラム等で実現可能である。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によれば、オンスクリーン表示の表示位置情報に従って加算制御回路を制御して、光ディスクから読み出した映像信号に加算する輪郭強調信号の割合を切り替えるようにしている。このため、光ディスク再生装置の状態あるいはリモコンによる操作の状態を表示する場合に、オンスクリーン表示部分が過度に強調されることを回避し、自然な輪郭強調を実現することができる。また、オンスクリーン表示周辺に不必要な輪郭強調がないため、違和感なく画質の調整を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】光ディスク再生装置の構成を説明する図である。
【図2】輪郭強調回路11の詳細を説明する図である。
【図3】オンスクリーン表示を説明する図である。
【図4】従来の光ディスク再生装置の映像出力回路を説明する図である。
【符号の説明】
【0035】
1 ターンテーブル
2 スピンドルモータ
3 サーボ制御部
4 光ピックアップ
5 RFアンプ
6 信号処理部
7 オーディオデコーダ
8,12 デジタルアナログ変換器
9 MPEGビデオデコーダ
10 加算器
11 輪郭強調回路
11a 水平輪郭強調回路
11b 垂直輪郭強調回路
11c 加算器
11d 加算制御回路
13 OSD信号発生回路
14 制御部
15 操作部
16 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクから映像信号を読み出す映像信号読み出し手段と、
再生装置の動作状態を文字あるいは図形を用いて再生装置の表示画面に表示するオンスクリーン表示信号を発生するオンスクリーン表示信号発生手段と、
前記映像信号読み出し手段が読み出した映像信号及びオンスクリーン表示信号発生手段が発生したオンスクリーン表示信号の合成信号に輪郭強調信号を付加する輪郭強調回路と、
再生装置全体を制御する制御部を備え、
該制御部は、前記オンスクリーン表示信号発生手段がオンスクリーン表示信号を発生している期間、前記輪郭強調回路の出力を所定レベル以下に制限することを特徴とする光ディスク再生装置。
【請求項2】
請求項1記載の光ディスク再生装置において、
前記制御部は、輪郭強調回路の出力を制限するレベルを可変制御するレベル可変制御部を備えたことを特徴とする光ディスク再生装置。
【請求項3】
請求項1記載の光ディスク再生装置において、
前記輪郭強調回路の出力を所定レベル以下に制限する範囲は、前記オンスクリーン表示信号発生手段がオンスクリーン表示信号を発生している範囲とその近傍の範囲であることを特徴とする光ディスク再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−222541(P2006−222541A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−31853(P2005−31853)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(301066006)株式会社デノン (61)
【Fターム(参考)】