説明

光ディスク検査装置および検査方法

【課題】光ディスクの欠陥の有無をより迅速に検出でき得る検査装置を提供する。
【解決手段】光ディスク検査装置10は、まず、光ディスクを高速で再生するとともに当該高速再生時に得られるエラー情報に基づいて第一閾値超過のエラーが発生しているか否かを判断する(S14、S16)。第一閾値超過のエラーが発生している場合は、当該範囲を高速再生するとともに第二閾値超過のエラーの有無を判定する高速本判定(S20、S22)、当該範囲を低速再生するとともに第二閾値超過のエラーの有無を判定する低速本判定(S24,S26)、を実施し、第二閾値超過のエラーが検出された場合は、欠陥があると判断し、NGを出力する(S30)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクにおける欠陥の有無を検査する光ディスク検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザ光を照射することによりデータの記録再生が可能な光ディスクが広く知られている。かかる光ディスクにおいては、記録面の傷などがあると、データの再生が困難になるなどの問題を招く。そのため、光ディスクの貸し出しや販売などを行う場合には、事前に、記録面の傷等の欠陥の有無を検査する必要がある。特に、光ディスクの品質の担保が困難な光ディスクのレンタルショップや中古販売店では、検査の必要性が高い。そのため、従来においても、光ディスクを検査するための装置が多数提案されている(例えば下記特許文献1,2など)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−243099号公報
【特許文献2】特開平10−21548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、光ディスクの検査は、通常、当該光ディスクを再生した際の再生品質などに基づいて判断されるが、この検査のための再生時間(検査時間)を短縮するために、光ディスクを高速(例えば24倍速など)で再生することが考えられる。しかし、記録面の傷に起因する問題は、高速再生の場合には発生しにくく、低速再生の場合に発生しやすい。そのため、高速再生では問題なしと判断された光ディスクであっても、低速(1倍速)で再生した場合には正常に再生できない、という恐れがあった。かかる恐れを避けるために、従来では、光ディスクにおける欠陥の有無を検査するために、当該光ディスクの全面を低速で再生していた。この場合、検査時間がかかるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、光ディスクの欠陥の有無をより迅速に検出でき得る検査装置および検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光ディスク検査装置は、光ディスクにおける欠陥の有無を検査する光ディスク検査装置であって、前記光ディスクを回転させつつレーザ光を照射した際の反射光に基づいて再生データを生成する再生手段であって、第一回転速度で前記光ディスクを再生する高速再生と第一回転速度よりも低速な第二回転速度で前記光ディスクを再生する低速再生とを実行可能な再生手段と、前記再生データに基づいて当該再生データに含まれるエラーの情報をエラー情報として算出するエラー情報算出手段と、前記再生手段およびエラー情報算出手段の駆動を制御するとともに、算出されたエラー情報に基づいて前記光ディスクの欠陥の有無を判定する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記再生手段に前記高速再生を実行させるとともに当該高速再生時に得られるエラー情報またはRF振幅に基づいて欠陥がある可能性が高い範囲を予備的に抽出する予備抽出処理と、前記再生手段に前記予備抽出された範囲の低速再生を実行させるとともに当該低速再生時に得られるエラー情報に基づいて欠陥の有無を本判定する低速本判定処理と、を実行する、ことを特徴とする。ここで、「第二回転速度で前記光ディスクを再生する低速再生」とは、光ディスクを第二回転速度で回転させつつ再生信号を取得する実低速再生の場合だけでなく、光ディスクを実低速再生させた場合と等価なエラー情報が得られるような値にサーボゲイン等の制御パラメータの値を設定しつつ、前記光ディスクを第二回転速度よりも高速で回転させる仮想的低速再生も含む。
【0007】
また好適な態様では、前記制御手段は、さらに、前記再生手段に前記予備抽出された範囲の高速再生を実行させるとともに当該高速再生時に得られるエラー情報に基づいて欠陥の有無を本判定する高速本判定処理も実行する。
【0008】
他の好適な態様では、前記エラー情報は、前記再生データに含まれるエラー数であり、前記制御手段は、予備抽出処理時には前記エラー数が事前に規定された第一閾値を超過した範囲を欠陥がある可能性が高い範囲として予備抽出し、本判定処理時には前記エラー数が第二閾値を超過した場合に欠陥があると本判定し、前記第二閾値は、再生保証するディスク再生機において再生可能なエラー数であり、前記第一閾値は、前記第二閾値より小さい。この場合、前記光ディスクがCD系光ディスクの場合、前記第一閾値はC1訂正処理によって訂正が可能なエラー数であり、前記第二閾値はC1訂正処理および消失訂正しないC2訂正処理の両方を実行した際に訂正が可能なエラー数であり、前記光ディスクがDVD系ディスクの場合、前記第一閾値はPI訂正処理によって訂正が可能なエラー数であり、前記第二閾値はPI訂正処理および消失訂正しないPO訂正処理の両方を実行した際に訂正が可能なエラー数である。
【0009】
他の好適な態様では、前記第一回転速度は、前記光ディスクの再生を保証するディスク回転数の範囲のうちの最高速度以上であり、前記第二回転速度は、前記光ディスクの再生を保証するディスク回転数の範囲のうちの最低速度である。また、前記制御手段は、前記高速本判定処理により欠陥がないと判定された範囲についてのみ前記低速本判定処理を実行することも望ましい。
【0010】
他の好適な態様では、さらに、ピックアップの対物レンズを駆動するアクチュエータに流れる駆動電流値を検出する検出手段を備え、前記制御手段は、本判定時に前記検出された駆動電流値と予め規定された基準電流値との比較も行い、当該駆動電流値が基準電流値を超過した場合には前記予備抽出された範囲に欠陥があると判定する。
【0011】
他の本発明である光ディスク検査方法は、光ディスクにおける欠陥の有無を検査する光ディスク検査方法であって、前記光ディスクを第一回転速度で再生する高速再生を実行するとともに、当該高速再生時に得られるエラー情報またはRF振幅に基づいて欠陥がある可能性の高い範囲を予備的に抽出する予備抽出工程と、前記予備抽出工程において予備抽出された範囲について、第一回転速度よりも低速な第二回転速度で再生する低速再生を実行するとともに、当該低速再生時に得られるエラー情報に基づいて、前記予備抽出された範囲における欠陥の有無を本判定する低速本判定工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、欠陥発生箇所を高速で予備的に抽出し、当該抽出された範囲についてのみ低速本判定が実行される。その結果、光ディスクの欠陥の有無をより迅速に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態であるディスク検査装置10の構成を示すブロック図である。このディスク検査装置10は、光ディスクの再生を困難にする光ディスクの不具合(欠陥)、例えば、局部面振れやトラック蛇行、ディスク記録面の傷などといった欠陥の有無を検査する装置である。以下、このディスク検査装置10の構成について詳説する。
【0014】
検査対象であるCDやDVD等の光ディスク100はスピンドルモータ12(SP)により回転駆動される。スピンドルモータ12は、SPドライバ14で駆動され、SPドライバ14はサーボプロセッサ30により所望の回転速度となるようにサーボ制御される。
【0015】
光ピックアップ16は、レーザ光を光ディスク100に照射するためのレーザダイオード(LD)や光ディスク100からの反射光を受光して電気信号に変換するフォトディテクタを含み、光ディスク100に対向配置される。光ピックアップ16はスレッドモータ18(SLD)により光ディスク100の半径方向に駆動され、スレッドモータ18はSLDドライバ20で駆動される。SLDドライバ20は、SPドライバ14と同様にサーボプロセッサ30によりサーボ制御される。また、光ピックアップ16のレーザダイオードはLDドライバ22により駆動され、LDドライバ22は、オートパワーコントロール回路(APC)24により、駆動電流が所望の値となるように制御される。APC24及びLDドライバ22は、システムコントローラ32からの指令によりレーザダイオードの発光量を制御する。なお、図ではLDドライバ22は光ピックアップ16と別個に設けられているが、LDドライバ22を光ピックアップ16に搭載してもよい。また、光ピックアップ16には、対物レンズを駆動するアクチュエータ(ACT)が設けられており、当該アクチュエータは、ACTドライバ25で駆動される。このACTドライバ25は、サーボプロセッサ30により所望の駆動量となるようにサーボ制御される。
【0016】
光ディスク100の検査に当たっては、光ディスク100に記録されたデータを再生するが、当該再生を実行する際には、光ピックアップ16のレーザダイオードから再生パワーのレーザ光が照射され、その反射光がフォトディテクタで電気信号に変換されて再生信号として出力される。なお、この再生信号生成に関与する、光ピックアップ16や、スピンドルモータ12、スレッドモータ18、各種ドライバ14,20,22,25などが再生手段として機能する。
【0017】
光ピックアップ16からの再生信号はRF回路26に供給される。RF回路26は、再生信号からフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号を生成し、サーボプロセッサ30に供給する。サーボプロセッサ30は、これらのエラー信号に基づいて光ピックアップ16をサーボ制御し、光ピックアップ16をオンフォーカス状態及びオントラック状態に維持する。また、RF回路26は、再生信号に含まれるアドレス信号をアドレスデコード回路28に供給する。アドレスデコード回路28はアドレス信号から光ディスク100のアドレスデータを復調し、サーボプロセッサ30やシステムコントローラ32に供給する。
【0018】
アドレス信号の1つの例はウォブル信号であり、光ディスク100の絶対アドレスを示す時間情報の変調信号で光ディスク100のトラックをウォブルさせ、このウォブル信号を再生信号から抽出しデコードすることでアドレスデータ(ATIP)を得ることができる。また、RF回路26は、再生RF信号を2値化回路34に供給する。2値化回路34は、再生信号を2値化し、得られた信号をデコード回路36に供給する。
【0019】
デコード回路36では、2値化信号を復調する。また、デコード回路36は、エラー情報算出手段としても機能するもので、入力された2値化信号に基づいて、当該2値化信号に含まれるエラーに関する情報であるエラー情報を算出する。ここで、本実施形態では、エラー情報として、C1訂正処理やC2二重訂正処理の成否、PI訂正処理やPO訂正処理の成否などの情報を用いる。
【0020】
ここで、C1/C2訂正処理は、CD系光ディスクにおいてデータエラーを訂正する機能であるCIRC(Cross Interleave Reed Solomon Code)において行われる2系列の訂正処理であり、1系列目は主にランダムエラーと呼ばれる短いエラー(C1)を、2系列目では主にバーストエラーと呼ばれる長いエラー(C2)を訂正し、長いエラー(C2)はデータを分散して短いエラーに変換してエラーを訂正しやすくする。そして、通常のディスク再生機は、得られた再生データに対して、C1訂正処理を施した後C2訂正処理を施すようになっている。また、PI/PO訂正処理は、DVD系のディスクにおいてデータエラーを訂正する上述と同様の機能であり、通常のディスク再生機は、PI訂正処理とPO訂正処理とを二回繰り返すようになっている。ここで、各訂正処理ごとに訂正可能なエラー数は決まっており、このエラー数を超えた場合、デコード回路36は、訂正処理実行不可能という情報をエラー情報としてシステムコントローラ32に出力する。なお、訂正処理の成否に代えて、エラー数自体をエラー情報としてシステムコントローラ32に出力してもよい。
【0021】
そして、本実施形態では、検査対象ディスクがCD系光ディスクの場合は、C1訂正処理やC2訂正処理の成否に基づいて光ディスクの良否を判定し、検査対象ディスクがDVD系光ディスクの場合は、PI訂正処理やPO訂正処理の成否に基づいて光ディスクの良否を判定する。
【0022】
システムコントローラ32は、システム全体の動作を制御する部位である。本実施形態のシステムコントローラ32は、光ディスク100の装填が検出された場合には、当該光ディスク100の良否、具体的には、再生を困難にし得る程度の光ディスク100の不具合、すなわち、欠陥の有無を判定するディスク検査処理を実行するべく、各部位の動作を制御する。
【0023】
ここで、このディスク検査処理の流れを説明する前に、光ディスク100に生じる欠陥について簡単に説明する。光ディスク100の再生を困難にする欠陥としては、光ディスク100の局部面振れやトラック蛇行などのディスク製造時に生じる欠陥(以下「製造時欠陥」という)と、光ディスクの記録面の傷といった光ディスク製造後の取り扱い不備などに起因して生じる欠陥(以下「製造後欠陥」という)と、がある。このうち、製造時欠陥は、低速再生(例えば1倍速再生)した場合より高速再生した場合のほうが、問題が発生しやすいことが知られている。一方、製造後欠陥は、高速再生した場合より低速再生した場合のほうが、問題が発生しやすいことが知られている。
【0024】
したがって、一般低速再生機およびPCなどに搭載されている高速再生ドライブのいずれでも問題なく再生できるか否かを判断するためには、従来、低速再生での検査および高速再生での検査の両方を行う必要があった。しかし、低速のみ、または、低速・高速の両方での検査は、時間や手間がかかるという問題があった。特に、従来の低速再生での検査は、光ディスクの全面を低速で再生しており、非常に時間がかかっていた。
【0025】
そこで、本実施形態では、まず、高速再生で得られるエラー数(あるいは訂正処理の成否)に基づいて欠陥のありそうな範囲を概略的に抽出し、当該抽出された箇所についてのみ、高速での欠陥有無検査および低速での欠陥有無検査を行うようにしている。以下、この欠陥検査処理の流れについて図2を参照して説明する。
【0026】
図2は、本実施形態における欠陥検査処理の流れを示すフローチャートである。検査装置10に検査対象となる光ディスク100の装填が検出された場合(S10でYes)、システムコントローラ32は、まず、ディスクの種類を判定する(S12)。判定の結果、装填された光ディスク100が、CD系光ディスクの場合はC1/C2訂正処理の成否を、DVD系光ディスクの場合はPI/PO訂正処理の成否を、それぞれ、エラー情報として設定する。
【0027】
次に、システムコントローラ32は、光ディスク100を高速再生するべく、サーボプロセッサ30やAPC24などに駆動指令を出力する(S14)。なお、このときの再生速度(ディスク回転数)は、少なくとも、再生を保証したい再生速度の範囲のうちの最高速度以上であることが望ましい。したがって、例えば、24倍速で再生可能な再生機においても再生でき得ることを保証したい場合には、このステップS14において24倍速以上の速度で光ディスク100の再生を行う。
【0028】
また、この高速再生の際、デコード回路36において、予め規定された第一閾値を超過するエラーが検出されたか否かを判定する(S16)。ここで、第一閾値とは、欠陥がある可能性が高い範囲を予備的に抽出する予備抽出処理に用いられる閾値で、製造時欠陥および製造後欠陥が存在している可能性が高い範囲を概略的に抽出するために設定される閾値である。別の言い方をすれば、製造時欠陥および製造後欠陥の両方を確実に検出できる程度の値で、比較的、軽度な品質不良も検出でき得る値に設定される。本実施形態では、C1訂正処理またはPI訂正処理で訂正可能なエラー数を第一閾値に設定している。
【0029】
すなわち、CD系光ディスクでは、元データにバーストエラーに対応するための訂正用リードソロモン符号(C2符号)を付け、それを複数のフレームに分散する。そして、各フレーム毎に再びリードソロモン符号(C1符号)を付ける。デコード回路36は、読み取ったデータに対して、まず、C1符号でのフレーム内の訂正処理(C1訂正処理)を行う。このC1訂正処理で訂正でき得る1フレーム内のエラー数(C1訂正限界値)は、予め規定されており、このC1訂正限界値を超えたエラーが発生しているフレームは訂正されることなく、C1訂正不能エラーとして、そのまま残る。C1訂正不能エラーが発生したデータの訂正は、通常、C2符号で訂正される。換言すれば、C1訂正不能エラーが発生したとしても、通常、C2訂正処理で訂正できるのであれば、問題はない。なお、C2訂正処理でも訂正できないエラーは、C2訂正不能エラーと呼ばれる。
【0030】
ステップS14では、この通常行われるC2訂正処理は行わず、C1訂正処理のみを行う。そして、C1訂正処理が出来ない場合、すなわち、1フレーム内に、C1訂正限界値を超えるエラーが存在する場合には、第一閾値を超過していると判断する。より具体的には、システムコントローラ32は、デコード回路36から、C1訂正処理の失敗(C1訂正不能エラーの発生)が通知された場合には、第一閾値を超過するエラーが発生していると判断する。
【0031】
同様に、DVD系光ディスクの場合は、通常のディスク再生機ではPI訂正処理した後に、PO訂正処理を行う。しかし、ステップS14においては、PO訂正処理を行わず、PI訂正処理のみを行い、当該PI訂正処理で訂正しきれないエラーが発生した場合には、第一閾値を超過していると判断する。ただし、上述した形態は、あくまで一例であり、製造時欠陥および製造後欠陥の両方を確実に検出でき得る値であれば、他の値を第一閾値に設定してもよい。
【0032】
第一閾値を超過することなく、光ディスク100の最外周まで高速再生が実行できた場合(S16でNo,S28でYes)、当該光ディスク100には、欠陥は生じていないと判断して、欠陥検査処理を終了する。
【0033】
一方、第一閾値超過のエラーが検出された場合には、当該エラー検出範囲に製造時欠陥または製造後欠陥が存在している可能性が高いと判断する。この場合、システムコントローラ32は、高速再生の一時中断を指示するとともに、当該エラー検出された範囲の開始アドレスおよび終了アドレスを記憶する(S18)。そして、記憶されたアドレスに従って、第一閾値超過のエラー検出された範囲を再度、高速再生する(S20)。ここで、このときの再生速度は、S14と同じく、再生を保証したい再生速度範囲のうちの最高速度以上である。
【0034】
また、この高速再生の際、デコード回路36において、予め規定された第二閾値を超過するエラー数が検出されたか否かを判定する(S22)。ここで、第二閾値としては、通常のディスク再生機において、問題なく再生でき得る程度のエラー数が設定される。より具体的には、C2訂正処理(あるいはPO訂正処理)により訂正可能な程度のエラー数が第二閾値として設定できる。すなわち、ステップS20における高速再生では、C1訂正処理をするとともに、当該C1訂正処理で訂正し切れなかったエラーをC2訂正処理で訂正する。なお、ここでのC2訂正処理では、消失訂正をしない。これは、次の理由による。一般に、市場に流通している再生機のエラー訂正能力にはバラツキがある。また、実際に再生する際の条件(粉塵の有無等)によってもエラー訂正能力にバラツキが生じる。したがって、本検査装置10のエラー訂正能力をフルに活用してエラー訂正が出来た(データ再生が可能であっても)光ディスクであっても、市場に流通している再生機では再生不可能となるおそれもある。そこで、本実施形態では、エラー訂正能力を若干落とし、消失訂正をしないC2訂正処理を行う。そして、この消失訂正をしないC2訂正処理で訂正しきれないエラー(C2訂正処理限界値超過のエラー)が発生した場合、デコード回路36は、C2訂正処理の失敗をシステムコントローラ32に通知する。この通知を受けたシステムコントローラ32は、当該範囲には、第二閾値超過のエラーが存在していると判断する(S22でYes)。なお、この消失訂正をしないC2訂正処理(PO訂正処理)限界値は一例であり、通常のディスク再生機において、問題なく再生でき得ると判断できる値であれば、他の値を第二閾値として設定してもよい。いずれにしても、このステップS20,S22では、高速再生で欠陥検出を行っているため、高速再生時、例えば、リッピング処理時に問題となりやすい局部面振れやトラック蛇行などの製造時欠陥を効果的に検出することができる。
【0035】
ステップS22において第二閾値を超過するエラーが生じていると判断した場合、システムコントローラ32は、装填された光ディスク100が、再生困難な程度の欠陥が存在する欠陥ディスクである旨をインターフェース42(I/F)を介してユーザに通知し、処理を終了する(S30)。なお、この欠陥ディスクである旨の通知の形態は、特に限定されず、例えば、ランプの点灯やアラーム音で通知してもよいし、当該検査装置に液晶パネルを設けると共に当該液晶パネルに表示する文字列で通知してもよい。また、このとき、欠陥発生箇所のアドレス情報や欠陥種類なども可能な限り通知するようにしてもよい。
【0036】
一方、高速再生時において第二閾値超過のエラーが検出されなかった場合には、ステップS24に進む。ステップS24では、ステップS18において記憶されたエラー検出範囲を、低速で再生する。なお、この低速再生における再生速度は、再生を保証したい再生速度の範囲のうちの最低速度であり、通常は、1倍速である。そして、システムコントローラ32は、低速再生の状態で、第二閾値超過のエラーが検出されるか否かを判定する(S26)。すなわち、第二閾値を、C2訂正処理(あるいはPO訂正処理)により訂正可能なエラー数であるC2訂正(PO訂正)限界値に設定した場合、ステップS24において、デコード回路36は、C1訂正処理するとともに、C1訂正処理で訂正し切れなかったエラーをC2訂正処理で訂正する。なお、ここでのC2訂正処理でも消失訂正は行わない。そして、この消失訂正をしないC2訂正処理で訂正しきれないエラーが発生した場合には、C2訂正処理失敗の通知をシステムコントローラ32に送る。この通知を受けたシステムコントローラ32は、当該範囲に第二閾値超過のエラーが発生していると判断する。ここで、このステップS24、S26では、低速再生で欠陥検出を行っているため、低速再生時、例えば、通常の音楽やビデオ再生時に問題となりやすいディスク記録面への傷などの製造後欠陥を効果的に検出することができる。
【0037】
なお、本実施形態では、低速での再生、すなわち、ディスク回転数を1倍速相当の速度に設定した状態で再生を行っている。しかし、実際に光ディスク100を低速回転させるのではなく、光ディスク100を高速回転させつつも、サーボゲイン等の制御パラメータの値を、低速再生と等価なエラー数が得られるような値に設定する仮想的な低速再生にしてもよい。かかる構成とすることで、より迅速に欠陥検査を行うことができる。
【0038】
そして、ステップS26において、第二閾値超過のエラーが検出された場合は、ステップS30に進み、欠陥ディスクである旨を通知するとともに欠陥検査処理を終了する。一方、ステップS26において、第二閾値超過のエラーが検出されなかった場合は、ディスクの最外周まで再生できたか、を判断する(S28)。そして、最外周に到達していない場合は、最外周に到達するまで、再度、ステップS14〜S26を繰り返す。
【0039】
以上の説明から明らかなとおり、本実施形態では、最初に高速再生により欠陥発生の可能性の高い範囲を予備的に抽出した後に、当該抽出範囲に対して、製造時欠陥の検出精度が高い高速再生での欠陥検出(高速本判定)と製造後欠陥の検出精度の高い低速再生での欠陥検出(低速本判定)とを順に行っている。その結果、高速再生での欠陥検出と低速再生での欠陥検出とを個別に行っていた従来に比べて、欠陥検査に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、再生時のエラー数のみで欠陥の有無を判断しているが、他のパラメータの値も判断基準に加えてもよい。例えば、ピックアップの対物レンズを駆動するアクチュエータの駆動電流値も欠陥有無の判断基準として取り扱ってもよい。すなわち、光ディスク100に発生する欠陥の中には、許容でき得る程度の再生品質は得られるもののアクチュエータの駆動電流値が過大となるような欠陥がある。かかる欠陥に起因して過大な駆動電流が発生すると、ディスク再生機に致命的な悪影響を与えるおそれがある。そこで、あらかじめ、許容でき得る駆動電流値を基準電流値として設定するとともに、ステップS20、S24などの再生実行時における駆動電流を検出し、基準電流値と比較する。そして、検出された駆動電流値が基準電流値を超過した場合には、エラー数が第二閾値以下(C2訂正処理またはPO訂正処理成功)であっても、装填されたディスクを欠陥ディスクと判定するようにしてもよい。また、本実施形態では、エラー数(C1訂正処理の成否)に基づいて予備抽出処理(S14〜S18)を行っているが、RF回路26で得られた再生信号振幅(RF振幅)に基づいて、予備抽出するようにしてもよい。すなわち、高速再生時(S14)に得られるRF振幅が規定の閾値以下となった場合には、その範囲に製造時欠陥または製造後欠陥が存在している可能性が高いと判断し、当該範囲に対して高速本判定(S20,S22)、および、低速本判定(S24,S26)を行うようにしてもよい。なお、装填された光ディスク100の欠陥が酷く、エラー発生箇所のアドレスすら読み取れず、アドレスを記憶できない場合も、欠陥ディスクである旨を通知するとともに、欠陥検査処理を終了してもよい。
【0041】
また、本実施形態では、検査時間の短縮を目的として、高速本判定(S20,S22)の後に低速本判定(S24,S26)を行っているが、この順番は逆であってもよい。また、上述した光ディスク検査装置は、単体の検査装置として構成されてもよいし、光ディスク記録・再生機などに組み込まれてもよい。また、本実施形態では、音楽やビデオ再生における低速再生だけでなく、リッピングなどの高速再生も保証するために、高速本判定と低速本判定の両方を行っている。しかし、高速再生を保証する必要性がない、あるいは、低い場合には、高速本判定(S20,S22)を省略してもよい。すなわち、高速で問題のある範囲を予備的に抽出(S14〜S18)した後、即座に、当該抽出範囲に対して低速本判定(S24,S26)を行うようにしてもよい。この応用例の場合であっても、従来の検査装置に比して、欠陥検査に要する時間を大幅に短縮することができる。すなわち、従来の検査装置は、低速再生のみを保証する場合には、ディスク全面を低速再生して欠陥の有無検査を行っていた。一方、上記応用例では、予備的に抽出された範囲のみを低速再生することになるため、従来の検査装置に比して、検査時間が大幅に短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態である光ディスク検査装置の概略構成図である。
【図2】本実施形態におけるディスク検査処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
10 光ディスク検査装置、12 スピンドルモータ、16 光ピックアップ、18 スレッドモータ、26 RF回路、28 アドレスデコード回路、30 サーボプロセッサ、32 システムコントローラ、34 2値化回路、36 デコード回路、100 光ディスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクにおける欠陥の有無を検査する光ディスク検査装置であって、
前記光ディスクを回転させつつレーザ光を照射した際の反射光に基づいて再生データを生成する再生手段であって、第一回転速度で前記光ディスクを再生する高速再生と第一回転速度よりも低速な第二回転速度で前記光ディスクを再生する低速再生とを実行可能な再生手段と、
前記再生データに基づいて当該再生データに含まれるエラーの情報をエラー情報として算出するエラー情報算出手段と、
前記再生手段およびエラー情報算出手段の駆動を制御するとともに、算出されたエラー情報に基づいて前記光ディスクの欠陥の有無を判定する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記再生手段に前記高速再生を実行させるとともに当該高速再生時に得られるエラー情報またはRF振幅に基づいて欠陥がある可能性が高い範囲を予備的に抽出する予備抽出処理と、前記再生手段に前記予備抽出された範囲の低速再生を実行させるとともに当該低速再生時に得られるエラー情報に基づいて欠陥の有無を本判定する低速本判定処理と、を実行する、
ことを特徴とする光ディスク検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク検査装置であって、
前記制御手段は、さらに、前記再生手段に前記予備抽出された範囲の高速再生を実行させるとともに当該高速再生時に得られるエラー情報に基づいて欠陥の有無を本判定する高速本判定処理も実行する、ことを特徴とする光ディスク検査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ディスク検査装置であって、
前記エラー情報は、前記再生データに含まれるエラー数であり、
前記制御手段は、予備抽出処理時には前記エラー数が事前に規定された第一閾値を超過した範囲を欠陥がある可能性が高い範囲として予備抽出し、本判定処理時には前記エラー数が第二閾値を超過した場合に欠陥があると本判定し、
前記第二閾値は、再生保証するディスク再生機において再生可能なエラー数であり、
前記第一閾値は、前記第二閾値より小さい、
ことを特徴とする光ディスク検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光ディスク検査装置であって、
前記光ディスクがCD系光ディスクの場合、前記第一閾値はC1訂正処理によって訂正が可能なエラー数であり、前記第二閾値はC1訂正処理および消失訂正しないC2訂正処理の両方を実行した際に訂正が可能なエラー数であり、
前記光ディスクがDVD系ディスクの場合、前記第一閾値はPI訂正処理によって訂正が可能なエラー数であり、前記第二閾値はPI訂正処理および消失訂正しないPO訂正処理の両方を実行した際に訂正が可能なエラー数である、
ことを特徴とする光ディスク検査装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の光ディスク検査装置であって、
前記第一回転速度は、前記光ディスクの再生を保証するディスク回転数の範囲のうちの最高速度以上であり、
前記第二回転速度は、前記光ディスクの再生を保証するディスク回転数の範囲のうちの最低速度である、
ことを特徴とする光ディスク検査装置。
【請求項6】
請求項2に記載の光ディスク検査装置であって、
前記制御手段は、前記高速本判定処理により欠陥がないと判定された範囲についてのみ前記低速本判定処理を実行することを特徴とする光ディスク検査装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の光ディスク検査装置であって、
前記低速再生は、再生に関与する制御パラメータの値を、前記光ディスクを第二回転速度で回転させた場合と等価なエラー情報が得られるような値に設定しつつ、前記光ディスクを第二回転速度よりも高速で回転させる仮想的な低速再生であることを特徴とする光ディスク検査装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の光ディスク検査装置であって、
さらに、ピックアップの対物レンズを駆動するアクチュエータに流れる駆動電流値を検出する検出手段を備え、
前記制御手段は、本判定時に前記検出された駆動電流値と予め規定された基準電流値との比較も行い、当該駆動電流値が基準電流値を超過した場合には前記予備抽出された範囲に欠陥があると判定する、
ことを特徴とする光ディスク検査装置。
【請求項9】
光ディスクにおける欠陥の有無を検査する光ディスク検査方法であって、
前記光ディスクを第一回転速度で再生する高速再生を実行するとともに、当該高速再生時に得られるエラー情報またはRF振幅に基づいて欠陥がある可能性の高い範囲を予備的に抽出する予備抽出工程と、
前記予備抽出工程において予備抽出された範囲について、第一回転速度よりも低速な第二回転速度で再生する低速再生を実行するとともに、当該低速再生時に得られるエラー情報に基づいて、前記予備抽出された範囲における欠陥の有無を本判定する低速本判定工程と、
を備えることを特徴とする光ディスク検査方法。

【図1】
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【図2】
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