説明

光ディスク装置および光ディスクの欠陥位置補正方法

【課題】光ディスクに欠陥がある場合に不良として検出される論理的な欠陥位置を決定する光ディスク装置を提供する。
【解決手段】サーボ部12によって検出された物理的欠陥の前側を補正する前補正量α1を設定する前補正設定部13、前補正量α1を付加する信号加算器14、物理的欠陥の後側を補正する後補正量α2を設定して付加する後補正設定部15、補正後物理的欠陥ゲート信号RDGを生成する補正後物理的欠陥ゲート部16、シンクロスタート信号SSとシンクロエンド信号SEから論理アドレスを生成する第1および第2カウンタ25および26、カウンタからの論理アドレスから補正後物理的欠陥ゲート部RDGを含む論理的欠陥ゲートLDGを記憶するレジスタ30を有する光ディスク装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置および光ディスクの欠陥位置補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクは、ディスク面に光を照射することで記録、再生を行っている。このため、ディスク面に欠陥(ディフェクト)があると、その部分への記録や再生ができない。そこで、欠陥が検出された部分では、記録時にはその部分を使用しないように設定し、再生時にはその部分を読み飛ばすか、信号レベルを上げて読み取るかしている。
【0003】
しかし、欠陥が検出された場合、それによる影響は、実際に光ディスクに生じている物理的な欠陥位置に対して、その欠陥によって記録または再生時の信号が悪影響を受ける位置が異なる。ここで、実際に光ディスクに存在する欠陥の位置や領域を物理的欠陥位置または領域という。
【0004】
従来、このような物理的欠陥位置と、それによる信号不良位置の違いを補正するために、欠陥を検出した時点で、その物理的欠陥位置から後ろに予め規定された量だけ欠陥があるものとして欠陥位置を決定し、その部分でAGCのゲインを上げるようにして、同じ部分をリトライし、なお欠陥が検出される場合には、始めに検出された物理的欠陥位置より前にも欠陥位置があるものと設定する。そして、これを繰りかえすことで信号不良が発生するような欠陥位置の始めと終わりを決定している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−120255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、欠陥がある場合には、その領域を何度も繰り返して記録または再生を実行しなければ、欠陥によって影響を受けた信号範囲を確定することができない。このため、光ディスクに欠陥があると、その部分の記録や再生に多くの時間がかかってしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、光ディスクに欠陥がある場合に記録乃至は再生の際に影響を受ける範囲を最小限の動作で確定することのできる光ディスク装置を提供することである。
【0008】
また、本発明の他の目的は、光ディスクに欠陥がある場合に記録乃至は再生の際に影響を受ける範囲を最小限の動作で確定することのできる光ディスクの欠陥位置補正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明による光ディスク装置は、光ディスク上の欠陥を前記光ディスクに規定された物理的単位で検出する欠陥検出手段と、前記欠陥検出手段が検出した物理的な欠陥の領域を前記光ディスクの回転速度と温度に対応して補正する物理的欠陥補正手段と、前記物理的単位よりも広く前記光ディスクの記録または再生単位である論理的単位で前記物理的欠陥補正手段によって前記補正された後の欠陥領域を含む論理的欠陥領域を設定する論理的欠陥領域設定手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
この結果、一度欠陥が検出されれば、検出された物理的な欠陥の領域を補正してから、補正後の物理的な欠陥領域を含むように論理単位での欠陥領域を設定するので、記録や再生動作においては何度も欠陥領域を通過することがなくて済む。
【0011】
上記目的を達成するための本発明による光ディスクの欠陥位置補正方法は、光ディスク上の欠陥を前記光ディスクに規定された物理的単位で検出する段階と、前記検出した物理的な欠陥の領域を前記光ディスクの回転速度と温度に対応して補正する段階と、前記物理的単位よりも広く前記光ディスクの記録または再生単位である論理的単位で前記補正された後の欠陥領域を含む論理的欠陥領域を設定する段階と、を有することを特徴とする。
【0012】
この結果、一度欠陥が検出されれば、検出された物理的な欠陥の領域を補正してから、補正後の物理的な欠陥領域を含むように論理単位での欠陥領域を設定するので、記録や再生動作においては何度も欠陥領域を通過することがなくて済む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光ディスクに欠陥がある場合でも記録再生動作を高速化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】光ディスク上に存在する欠陥と、その部分への記録および再生信号を説明するための説明図である。
【図2】欠陥補正を実施するための光ディスク装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図3】前補正量α1の値を、光ディスクの回転速度および温度をパラメータとして予め規定したテーブルデータの一例を示す図である。
【図4】後補正量α2の値を、光ディスクの回転速度および温度をパラメータとして予め規定したテーブルデータである。
【図5】学習機能を実施するためのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図6】学習機能を実施するための動作手順を示すフローチャートである。
【図7】ソフトウェアによって論理的欠陥ゲートを設定して記録する際の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付した図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態における光ディスク装置は、主に、記録可能なブルーレイディスク(以下BDという。BDにはBD−RE,BD−Rなどが含まれる)に対する再生、記録、または消去を行う装置である。しかし、ここで説明する装置構成や方法は、たとえば、コンパクトディスク(以下CDという。CDにはCD−ROM,CD−R,CD−RWなどが含まれる)、デジタル多目的ディスク(以下DVDという。DVDにはDVD−ROM,DVD−R,DVD+R,DVD−RW,DVD−RAMなどが含まれる)などにおいても適用可能である。また、これらの再生専用機においても適用可能である。
【0017】
ここで、本発明を適用した装置構成を説明する前に、光ディスク上の欠陥とその検出位置、および検出された欠陥位置の補正について説明する。
【0018】
図1は、光ディスク上に存在する欠陥と、その部分への記録および再生信号を説明するための説明図である。
【0019】
図1において(1)〜(3)は、光ディスク上の欠陥領域、記憶領域、再生領域を示している。ここで点線は物理的に読み書き可能な最小単位を区切る線(物理アドレス単位)、実線は論理的に読み書き可能な最小単位を区切る線(論理アドレス単位)である。
【0020】
物理的に読み書き可能な最小単位は、光ディスクの規格によって異なり、たとえば、CDはATIP/SUBQ frame単位、DVDはPID/DID sector単位、BDはPID/DID sector単位で構成されるセクターアドレス単位である。
【0021】
論理的な読み書き単位も光ディスクの規格により決まっていて、CDは16KB(1Sector)単位、DVDは32KB(1Cluster)単位、BDは64KB(1RUB)単位である。光ディスク装置では、この(論理アドレス単位)でバッファへ転送される。通常、論理アドレス単位(論理的単位)は複数の物理的単位を含むため、物理アドレス単位(物理的単位)より広い領域となる。
【0022】
図1に戻り説明する。
【0023】
図1の(1)は、物理的に欠陥がある領域を示している。ここで欠陥Dは、物理アドレスYからY+18とY+19の間まで生じている。このような欠陥は、たとえば、その部分の欠損(キズ)や指紋、汚れなどによって生じる。
【0024】
図1の(2)は、この欠陥Dが存在する部分に記録した場合の不良となる領域(記録不良領域WD)を示している。欠陥Dが存在する領域に書き込みを行うと、欠陥D部分の後ろにも記録不良領域(記録遅延欠陥WDDと称する)ができてしまう。これは、書き込みを行う際にレーザの強度を自動的に制御する自動制御機能(WriteAPC(Auto Power Control))によって、欠陥部分に対応してレーザ強度を変更した結果、欠陥領域から離れた後でも光強度が適正な値に戻るまでの間、正常な書き込みができずに不良となるのである。したがって、記録時に不良となる領域は、物理的な欠陥Dの領域+記録遅延欠陥WDDの分だけ不良となる。
【0025】
この記録遅延欠陥WDD部分の大きさは、WriteAPCの応答性能やライトストラテジー(Write Strategy)など光ディスク装置固有の特性と、光ディスクの回転速度および温度によって決まる。ここで温度が影響するのは光ディスクの素材が温度によって伸び縮みするためである。したがって、光ディスク装置固有の特性と光ディスクの回転速度および温度がわかれば、物理的な欠陥の検出終了位置からどのくらい記録遅延欠陥WDDが発生するかは推定できることになる。
【0026】
次に、図1の(3)は、欠陥Dの領域を読み出したときに再生不良となってしまう領域(再生不良RD)を示している。読み出し時(再生時)においても、記録時と同じように、物理的な欠陥Dが終了した位置よりも長く再生不良(再生遅延欠陥RDD)が発生している。図では欠陥によって書き込み不良が発生した領域を再生した場合を示している。したがって、再生時に不良となる領域は、物理的な欠陥Dの領域+記録遅延欠陥WDD+再生遅延欠陥RDDの分だけ不良となる。
【0027】
再生遅延欠陥RDDは、たとえば再生時におけるPLL制御の遅れなどによって生じる。したがって、この再生遅延欠陥RDDについても、光ディスク装置固有の特性と光ディスクの回転速度、および温度などの環境の影響から推定することが可能である。
【0028】
次に図1(4)のグラフ線は、RF信号から得られる欠陥検出ゲート信号DGを示している。欠陥検出ゲート信号DGは、物理的な欠陥を検出した時点でハイとなり、物理的欠陥がなくなることでローとなる。通常欠陥がなければこの信号はローである。ここで、この欠陥検出ゲート信号DGの始まりは、(1)で示した物理的欠陥Dの始まりである物理アドレスYより遅れて、Y+1のところからハイになっている。このためこの欠陥検出ゲート信号DGをもとに欠陥位置を確定した場合、物理的欠陥の本当の始まり(物理アドレスYの位置)から記録を開始してしまったり、再生してしまったりしてしまうことになる。このような場合、物理的欠陥上への記録やその部分の再生となるためエラーが発生する。この遅れは、サーボ系の検出遅れに起因するものである。したがって、この遅れ量は、装置固有の特性と光ディスクの回転速度および温度などによって決まってくる。ここで、温度が影響するのは、光ディスク装置の温度による特性変動や光ディスクの素材が温度によって伸び縮みするためなどである。
【0029】
次に、(5)で示すグラフ線は、物理的に存在する欠陥Dと上記(4)の欠陥検出ゲート信号DGがハイになるまでの遅れ分を補正するための補正量を示した信号である。ここでは前補正量α1と云う。この前補正量α1は、上述したように装置固有の特性と光ディスク回転速度および温度から求められた値を使用する。
【0030】
次に、(6)で示すグラフ線は、物理的に存在する欠陥Dの終了位置と上記(3)で示した再生不良RDの終了位置までの差を埋める後補正量α2を示している。この後補正量α2は、上述したように装置固有の特性と光ディスク回転速度および温度から求められた値を使用する。
【0031】
次に、(7)で示すグラフ線は、前補正量α1および後補正量α2を入れ補正した補正後物理的欠陥ゲート信号RDGを示している。補正後物理的欠陥ゲートRDGは物理的欠陥検出ゲートDG+前補正量α1+後補正量α2の領域となる。
【0032】
次に、(8)で示すグラフ線は、論理単位のスタートを示すシンクロスタート信号SSを示すものである。また、(9)で示すグラフ線は、論理単位の終わりを示すシンクロエンド信号SEを示すものである。
【0033】
次に、(10)で示すグラフ線は、論理的に欠陥として認識すべき領域を示すための論理的欠陥ゲート信号LDGを示している。論理的欠陥ゲート信号LDGは、補正後物理的欠陥ゲート信号RDGが含まれるシンクロスタート信号SSの立ち上がりからシンクロエンド信号SEの立ち上がりまでとなる。
【0034】
そして、本実施形態は、この論理的欠陥ゲート信号LDGがハイとなっている領域を欠陥領域として扱うようにするものである。たとえば、この論理的欠陥ゲート信号LDGの領域における記録や再生を予め行わないこととして設定することで、何度も繰り返して欠陥領域を記録したり再生したりすることがなくなる。
【0035】
特に、本実施形態では、論理的読み書き単位で欠陥位置(領域)を特定することができる。したがって、これまで物理的欠陥を検出するだけでは、論理的には不良となる区間であっても物理的に欠陥を検出しない部分(図1の物理アドレスYより前の部分およびY+19以降の部分など)では、その部分に書き込みや読み出しを行おうとして時間の無駄が発生していたが、本実施形態では少なくとも一度欠陥を検出すれば論理的不良箇所がわかるようになるので、次からはその論理的な区間すべてに対して記録や再生を行わないようにすることが可能となる。たとえば、記録の際に物理的な欠陥といて認識すればその欠陥を含む論理的な欠陥領域を論理的欠陥ゲート信号LDGとして記録しておくことで、その記録を検証(ベリファイ)する際には、始めからその論理区間の再生は行わないようにする。これにより検証時間の短縮を図ることができる。
【0036】
図2は、上述した欠陥補正を実施するための光ディスク装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。なお、ここに示した以外の記録/再生のための制御装置構成は、上述した各光ディスクへの記録や再生のための装置構成と同じでよく、周知の構成であるため説明を省略する。
【0037】
この光ディスク装置は、光ディスクから反射光からの信号を取り出すRF部11、RF部11からの信号から物理的欠陥を検出するサーボ部12、検出された物理的欠陥の前側を補正するための前補正量α1を設定する前補正設定部13、前補正設定部13で設定された前補正量α1を付加する信号加算器14、検出された物理的欠陥の後側を補正するための後補正量α2を設定して付加する後補正設定部15、前補正設定部13および後補正設定部15へ基準となるチャネルクロック信号を供給するチャネルクロック生成部17、サーボ部12からの信号を前補正設定部13からの前補正量に基づいて遅延させる信号遅延部18を有する。ここで前補正設定部13、加算器14、および後補正設定部15により補正後物理的欠陥ゲート信号RDGが生成される(これらをまとめて補正後物理的欠陥ゲート信号部16という)。
【0038】
さらにこの装置は、システムクロックを生成するシステムクロック生成部21、システムクロックから論理単位のシンクロ信号(論理シンクロ信号)を生成する論理シンクロ信号生成部22、論理シンクロ信号からシンクロスタート信号SSを発生させるシンクロスタート信号発生部23、論理シンクロ信号からシンクロエンド信号SEを発生させるシンクロエンド信号発生部24、シンクロスタート信号SSをクロック入力としてカウントして論理アドレスを生成し、補正後物理的欠陥ゲート部RDGが入力されたときに論理アドレス値(スタート)を出力する第1カウンタ25、シンクロエンド信号SEをクロック入力としてカウントして論理アドレスを生成し、補正後物理的欠陥ゲート部RDGが入力されたときに論理アドレス値(エンド)を出力する第2カウンタ26、論理的欠陥ゲートLDGの論理アドレスと補正後物理的欠陥ゲート部RDGとを記憶するレジスタ30を備える。また、光ディスク装置は通常、装置内温度を測定するための温度センサ35を備えている。前補正設定部13および後補正設定部15は、温度センサ35からの温度データを利用して補正量α1およびα2を設定している(詳細後述)。
【0039】
なお、この光ディスク装置においては、サーボ部12が欠陥検出手段となり、補正後物理的欠陥ゲート部16が物理的欠陥補正手段となり、第1カウンタ25、第2カウンタ26、レジスタ30が論理的欠陥領域設定手段となる。
【0040】
この光ディスク装置による動作は、下記のとおりである。
【0041】
まず、サーボ部12が物理的に存在する欠陥Dを検出する。そうするとサーボ部12からの物理的欠陥ゲート信号DGがハイとなる。このハイ信号の立ち上がりエッジをトリガとして前補正設定部13が温度センサ35からの温度に基づいて前補正量α1を設定する。前補正量α1の設定については後述する。
【0042】
そして前補正設定部13からは、設定されたα1の値(チャネルクロック単位)が、信号遅延部18と加算器14に供給される。信号遅延部18では、供給されたα1分だけ物理的欠陥ゲート信号DGが遅延される。加算器14では、供給されたα1(ハイ信号区間)に遅延された物理的欠陥ゲート信号DGが加算される。α1+DGの信号は後補正設定部15に供給される。
【0043】
後補正設定部15では、温度センサ35からの温度に基づいて後補正量α2を設定して、物理的欠陥ゲート信号DGのハイ信号の立ち下がりエッジをトリガとしてα2を物理的欠陥ゲート信号DGの後に加算する。後補正量α2の設定については後述する。
【0044】
そして、足し合わされたα1+DG+α2の信号が補正後物理的欠陥ゲート部16から補正後物理的欠陥ゲート信号RDG(ハイ区間)として出力される。
【0045】
一方、シンクロスタート信号発生部23およびシンクロエンド信号発生部24では、システムクロックを基にしてシンクロスタート信号SSおよびシンクロエンド信号SEが生成される。そして、シンクロスタート信号SSおよびシンクロエンド信号SEは第1カウンタ25および第2カウンタ26にそれぞれ供給されている。第1カウンタ25では、シンクロスタート信号SSをクロック信号として受けてカウントすることで論理アドレス値が生成される。そして、補正後物理的欠陥ゲート信号RDGのハイ区間の間、そのアドレス値を出力する。同様に第2カウンタ26では、シンクロエンド信号SEをクロック信号として受けてカウントしてアドレス値を生成しており、補正後物理的欠陥ゲート信号RDGのハイ区間の間そのアドレス値を出力する。第1カウンタ25および第2カウンタ26から出力された論理アドレス値はレジスタ30に供給される。
【0046】
レジスタ30は少なくとも1論理単位分の物理アドレスと論理アドレスを記録できる容量を持つ。複数の欠陥箇所を一度に記憶しておくためには、容量大きい方が望ましい。もちろん、一枚の光ディスクに対して許容される欠陥の大きさや箇所数によって異なるし、レジスタにいり時臆しておいた欠陥お領域を示す論理アドレスを単メモリに移動させるなどしてより多くの欠陥に対応するようにしてもよい。ここでは、物理アドレス2論理単位分(32ビット分)とそれに対応する論理アドレス(2論理アドレス)が記憶できるようになっている。レジスタ30はまた、補正後物理的欠陥ゲート信号RDGの物理アドレス値も入力されていて、補正後物理的欠陥ゲート信号RDGがハイ区間の間の物理アドレスを記憶する。
【0047】
レジスタ30が記憶した論理アドレスのスタートとエンドの値をそのまま出力すれば、図1に示した論理的欠陥ゲート信号LDGハイ区間とすることができる。また、たとえば、レジスタ30に記憶された欠陥位置を示す論理アドレスの値を、記録または再生時に、データを記録または再生する制御装置が読み出して、その論理アドレスに達した時点で欠陥発生時に必要な処理を行うようにしてもよい。この場合たとえば、記録時にはこの間の論理アドレス区間では記録を行わずに代替セクターへの記録を行い、また、再生時にはゲインを上げたり、読み飛ばしてデータの補間処理をしたりする処理を行うことになる。なお、実際の記録および再生時に論理アドレスと物理アドレスとの対応付けはそれぞれの制御装置が行う。
【0048】
ここで前補正設定部13において設定される前補正量α1、および後補正量設定部において設定される後補正量α2についてさらに説明する。
【0049】
前補正量α1も後補正量α2も、既に説明したように、装置固有の特性、光ディスクの回転速度および温度によって決まる値である。そこで、本実施形態では、これらについて予め光ディスクの回転速度および温度をパラメータとした補正量α1およびα2の値をテーブルデータとして用意して前補正設定部13および後補正設定部15にそれぞれ記憶させておくこととした。
【0050】
図3は前補正設定部13で設定される前補正量α1の値を、光ディスクの回転速度および温度をパラメータとして予め規定したテーブルデータの一例を示す図である。図示するように、おおむね0から10℃近辺で最も補正量が少なくなる。なお、この値は装置固有のチャネルクロック数によって示した値である。したがって、装置や記録再生する光ディスクの規格などが変わることで、それらに合わせて異なる値となる。
【0051】
また、図4は後補正設定部15で設定される後補正量α2の値を、光ディスクの回転速度および温度をパラメータとして予め規定したテーブルデータの一例を示す図である。ここでも、図示するようにおおむね0から10℃近辺で最も補正量が少なくなる。なお、この値も、装置固有のチャネルクロック数によって示した値である。したがって、装置や記録再生する光ディスクの規格などが変わることで、それらに合わせて異なる値となる。
【0052】
これらテーブルデータとして記憶される補正量α1およびα2は、たとえば、同じ仕様で製作される装置において、実験により物理的欠陥ゲートDGからの補正量α1およびα2を求めておいて、図3および図4のようなテーブルデータを作成すればよい。もちろん実際の装置に組み込む場合には、たとえば同一仕様の複数の装置固体により実験して、適宜適切な補正量(たとえば最も補正量が大きくなる値、標準偏差3σの範囲内の最大値、算術平均値など)をテーブルデータとして使用することになる。
【0053】
そして前補正設定部13および後補正設定部15は、それぞれのテーブルデータの中から温度センサ35からの温度と現在の回転速度にあった補正量α1およびα2を設定することになる。
【0054】
なお、図3および4に示したテーブルデータでは光ディスクの回転速度として予め決められている基準速度の倍数(倍速)で示したが、これは、回転数/秒など、その他パラメータとして回転速度を示すものであればよい。
【0055】
以上のようにして、物理的な欠陥に対して論理的な欠陥となる範囲を決定することができる。しかし、装置固有の特性は固体ごとに微妙に異なっていたり、また、扱う光ディスクのメディアの特性が異なっていたりする。このような場合、装置やメディアの特性ばらつきすべてに対応することのできる補正量のテーブルデータ用意しておくことは難しいものとなる。そこで、本実施形態では、さらに上記テーブルデータを用いた補正量から論理的欠陥ゲート信号LDGを生成した後、さらに欠陥起因の再生不良が検出された場合は、その欠陥の量を学習して、上記テーブルデータの補正量をさらに補正することとした。
【0056】
図5は、この学習機能を実施するためのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0057】
この図において前述した図2のブロック図で示したハードウェア構成と異なるのは、学習機能を実行するためのCPU40と、前補正設定部13の出力の後および後補正設定部15内に、係数kを乗算するための乗算器41および42を追加した点である。その他の構成は既に説明したとおりであるので説明を省略する。ここでCPU40および乗算器41および42が補正量再設定手段となる。
【0058】
図6は、学習機能を実施するための動作手順を示すフローチャートである。
【0059】
まずCPU40は、再生動作において、欠陥を検出したか否かを判断する(S1)。欠陥を検出した場合、続いてCPU40は、レジスタ30を参照して当該検出した欠陥がレジスタ30に登録されている補正後物理的欠陥ゲートRDGに連続する欠陥であるか否かを判断する(S2)。
【0060】
これらS1およびS2の処理により、既に論理的欠陥ゲート信号LDGがレジスタ30に設定された後の再生において再度欠陥が検出された場合に、既に検出された欠陥が設定されている論理的欠陥ゲート信号LDGの区間では対応できなかったことを意味している。すなわち、前回設定した前補正量α1では、前補正量が足りないということである。なお、このステップS1でNoの場合は、そのまま通常の再生動作が継続され、ステップS4の処理へ移る。
【0061】
なお、S2においては、検出した欠陥の論理アドレスがレジスタ30に記憶されている論理的欠陥ゲート信号LDGの論理アドレスと隣接するか否かにより、前に検出した欠陥を同じ欠陥に起因するものであるかどうかを判断してもよい。
【0062】
続いてCPU40は、S1およびS2において既に論理的欠陥ゲートが設定されているにもかかわらず、前補正量が足りないと判断された場合、補正量を拡張するための係数kの値を増加させる。この係数kは補正量を拡張するためのものとなるので、もとのkの値が「1」の場合(すなわち補正量がα1のまま)に、これに0.1加算、あるいは0.2加算するなどの処理を行うものである。これにより、たとえばもともと設定されているα1が1.1倍、1.2倍などの値となる。
【0063】
そして、係数kの値を乗算部41に設定する(S4)。これにより、欠陥が検出されたときの回転速度と温度における前補正量α1の値に係数kを乗算した値S1が加算器14に入ることになる。
【0064】
一方、ステップS2においてNoの場合は、ステップS3および4がスキップされる。これにより、係数kの値はそれまでに乗算部41に設定されている値のまま使用されることになる。
【0065】
その後、CPU40は、欠陥の後ろで欠陥が検出されたか否かを判断し(S5)、欠陥が検出されれば、レジスタ30を参照して検出した欠陥がレジスタ30に登録されている補正後物理的欠陥ゲートRDGに連続する欠陥であるか否かを判断する(S6)。ここでYesであれば続いてS3においてkの値を増加させたか非かを判断する(S7)。S7の判断は、同じ連続する欠陥で係数kの値を重複して増加させないようにするためである。
【0066】
S7において、S3でkを増加していないと判断されたなら、CPU40は前記S3同様に係数kを増加する(S8)。一方S7において、S3でkを増加していると判断されたなら、CPU40はS8をスキップして次のS9へ移行する。
【0067】
続いてCPU40は、乗算部42に係数kの値を設定する(S9)。この処理により、後補正量は再補正された後補正量S2=α2×kとなる。その後、処理はS1に戻る。
【0068】
なお、このステップS5および6でNoの場合は、そのまま再生動作が継続され、処理はS1に戻る。
【0069】
これらの処理により、係数kの値として予め「1」を設定しておけば、初めて欠陥が検出された位置、すなわちレジスタ30に補正後物理的欠陥ゲートRDGに連続する欠陥ではない場合はもともと記憶されているテーブルデータのα1またはα2の値が補正量としてそのまま設定されることになる(すなわちk=1のとき、S1=α1×1、S2=α2×1である)。一方、一度検出した物理的欠陥位置に連続する欠陥が検出された場合は、係数kの値が増加して補正量が拡大する。この再度の欠陥検出がさらに続くようであれば、同じ処理が繰り返されることになるので、その時点のkの値がステップS2またはS6の処理によって増加されるため、欠陥検出が繰り返された場合にはそれに応じて係数kの値が増加して補正量も拡大してゆくことになる。
【0070】
以上のようにして、補正後にもし再度欠陥が検出された場合は、補正量が再設定されることとなるので、装置やメディアの個体差によるばらつきにも、このような学習機能によって適切な補正量を設定することができるようになる。
【0071】
しかも、このような補正量の再設定においては、もともとテーブルデータなどとして記憶している補正量α1およびα2にそれを拡大するための係数kを乗算することとしているので、補正量の個体ばらつきなどのために新たなテーブルデータなどを用意する必要がない。
【0072】
なお、係数kの値は、装置が起動されるたびに毎回設定するのではなく、たとえばフラッシュメモリなどの不揮発性メモリに、最後に設定されたkの値を記憶しておくとよい。これにより、装置の個体差によるばらつきによって補正量がテーブルデータとして記憶された値と異なる場合に、一度係数kの値が確定すれば、その値を使用して、前補正量S1=α1×k、後補正量S2=α2×kの値で補正した論理的欠陥ゲートLDGを設定することができる。
【0073】
特に、装置の個体差によって補正量のばらつきを吸収するためだけであれば、装置の仕様としては同じ前補正量α1、後補正量α2によるテーブルデータを使用し、個々の装置の出荷検査などにおいて係数kを確定して個体差を吸収することも可能である。
【0074】
以上本実施形態を主にハードウェア構成として実施する場合(一部学習機能などはソフトウェアを併用する)について説明したが、本実施形態はソフトウェアによっても実施可能である。
【0075】
図7は、ソフトウェアによって論理的欠陥ゲートを設定して記録する際の手順を示すフローチャートである。なお、図示しないが、この手順はたとえば記録動作を行うためのハードウェア(マイクロコンピュータやDSPなどである。ここでは記録装置という)が実行するプログラムの一部として提供されるものである。
【0076】
記録動作においては、通常の処理として、まず、ライトコマンド(記録指示)がホストから発せられると、それを受けた記録装置がライトデータのバッファリング(S11)、ライトスピード(回転速度)の設定(S12)、エンコーダーの初期設定(S13)、ライトパワーおよびライトストラテジーの設定(S14)を行う(ここまでは通常の処理)。
【0077】
その後、記録装置は、温度センサ35からの温度を取得する(S15)。その後、係数kの値を予め決められた値に設定する(S16)。
【0078】
続いて、物理的に欠陥を検出した否かを判断する(S17)。ここで欠陥を検出していなければ、バッファに蓄えられたデータを記録する(S23)。
【0079】
一方、S17において欠陥が検出されたなら、光ディスクの回転速度と温度に基づいた前補正量α1および後補正量α2をテーブルデータから取得する(S18)。そして、取得した前補正量α1および後補正量α2にそれぞれ係数kを乗算して、実際に補正する前補正量S1および後補正量S2を算出する(S19)。
【0080】
続いて、補正後物理的欠陥ゲートRDGとなるS1+物理的欠陥領域+S2を算出する(S20)。そしてこの補正後物理的欠陥ゲートRDGが含まれる論理的欠陥ゲートLDGとなる論理アドレスを算出する(S21)。
【0081】
算出した論理アドレスに対応する分、現在のライトターゲット位置を移動する(S22)。そして移動した先にバッファに蓄えられたデータを書き込む(S23)。このS22においては、欠陥領域をリペアする領域が予め定められている場合には、S21で求めた論理アドレスに対応した領域分のデータを代替領域に書き込むことになる。
【0082】
以上により物理的な欠陥がある場合にそれを含む論理アドレス分の欠陥領域が移動して記録されることになる。したがって、これにより記録された光ディスクを再生する際は、論理的欠陥領域に対応する位置のデータは代替領域などに記録されることになるので、通常の再生動作において初めからその部分を読み飛ばして再生することができる。
【0083】
なお、単純に再生のみを行う光ディスクの場合も、上記記録の際の手順と同様にして論理的欠陥領域を確定することで、一度論理的欠陥領域を確定しさえすれば次からは同じ位置を再生せずに読み飛ばしたり、または論理的欠陥領域に差し掛かる直前で読み出しゲインを上げたりするなどの処理を行うことができる。
【0084】
以上説明した本実施形態によれば、物理的に検出した欠陥領域を回転速度と温度に対応した補正量によって補正して拡張し、補正後の欠陥領域が入る論理的な欠陥領域を、それによって不良が発生する可能性のある領域として設定することにしたので、一度欠陥が検出されれば、それ以後、その領域を論理アドレス単位で使用しなくなる。このため、記録再生動作において何度も欠陥領域を通過したり、その補間動作を繰り返したりせずに済むようになり、記録再生動作を高速化することができる。特に、記録動作で欠陥を検出した場合にはその欠陥を含む位置には記録せずに論理アドレス単位で記録位置を移動するため、以後の検証動作や再生動作において、初めから欠陥領域を読み飛ばすことが可能となり、データの高速再生を可能にすることができる。
【0085】
また、物理的欠陥を補正する際の補正量は学習型として、一度補正量を設定したにもかかわらず再度欠陥として検出された場合には、補正量を再設定することとしたので、装置やメディアの固体ばらつきにも対応することが可能となる。
【0086】
以上本発明を適用した実施形態を説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではない。
【0087】
たとえば、上述した実施形態では、前補正と後補正を行うこととしたが、必ずしもこの両方を行うことに限定されない。たとえば、前補正は、多くの場合欠陥を検出する際の処理にかかわる誤差であるため、この処理が高速に行うことができれば(誤差が無視できる程度に小さい場合)はなくてもよい。また、補正量は予めテーブルデータをして記憶することとしたが、回転速度と温度により決まる関数として、補正量を設定するようにしてもよい。さらに、学習型とする場合には、係数kを設定するかわりに、再設定後の補正量(S1およびS2)を算出した結果をテーブルデータの中の該当する回転速度および温度の位置に書き込むようにしてもよい。
【0088】
そのほか、本願の特許請求の範囲に記載した技術思想の範囲でさまざまな変形形態が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0089】
11 RF部、
12 サーボ部、
13 前補正設定部、
14 信号加算器、
15 後補正設定部、
16 補正後物理的欠陥ゲート部、
17 チャネルクロック生成部、
18 信号遅延部、
21 システムクロック生成部、
22 論理シンクロ信号生成部、
23 シンクロスタート信号発生部、
24 シンクロエンド信号発生部、
25 第1カウンタ、
26 第2カウンタ、
30 レジスタ、
35 温度センサ、
40 CPU、
41、42 乗算器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスク上の欠陥を前記光ディスクに規定された物理的単位で検出する欠陥検出手段と、
前記欠陥検出手段が検出した物理的な欠陥の領域を前記光ディスクの回転速度と温度に対応して補正する物理的欠陥補正手段と、
前記物理的単位よりも広く前記光ディスクの記録または再生単位である論理的単位で前記物理的欠陥補正手段によって前記補正された後の欠陥領域を含む論理的欠陥領域を設定する論理的欠陥領域設定手段と、
を有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
さらに、前記論理的欠陥領域設定手段が前記論理的欠陥領域を設定した後、以前検出した物理的欠陥の前記補正された後の欠陥領域に連続する欠陥を検出した場合に、前記物理的欠陥補正手段で前記補正する補正量を拡張する補正量再設定手段を有することを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記補正量再設定手段は、回転速度と温度に対応して予め規定された補正量を拡大するための係数を設定するものであり、
前記物理的欠陥補正手段は、前記予め規定された補正量に前記係数を乗じた値を補正量として前記物理的な欠陥の領域を前記補正することを特徴とする請求項2記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記予め規定された補正量は、回転速度と温度に対応した補正量が規定されたテーブルデータであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記物理的欠陥補正手段は、前記欠陥検出手段が検出した前記物理的な欠陥領域に対して、前側の前補正量と後側の後補正量をそれぞれ設定して前記補正することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の光ディスク装置。
【請求項6】
光ディスク上の欠陥を前記光ディスクに規定された物理的単位で検出する段階と、
前記検出した物理的な欠陥の領域を前記光ディスクの回転速度と温度に対応して補正する段階と、
前記物理的単位よりも広く前記光ディスクの記録または再生単位である論理的単位で前記補正された後の欠陥領域を含む論理的欠陥領域を設定する段階と、
を有することを特徴とする光ディスクの欠陥位置補正方法。
【請求項7】
前記論理的欠陥領域を設定した後、以前検出した物理的欠陥の前記補正された後の欠陥領域に連続する欠陥を検出した場合に、以前の補正量よりも補正量が大きくなるように補正量を設定する段階を、さらに有することを特徴とする請求項6記載の光ディスクの欠陥位置補正方法。
【請求項8】
前記補正する段階は、回転速度と温度に対応して予め規定された補正量を拡大するための係数を設定するものであり、
前記予め規定された補正量に前記係数を乗じた値を補正量として前記物理的な欠陥の領域を前記補正することを特徴とする請求項7記載の光ディスクの欠陥位置補正方法。
【請求項9】
前記予め規定された補正量は、回転速度と温度に対応した補正量が規定されたテーブルデータであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一つに記載の光ディスクの欠陥位置補正方法。
【請求項10】
前記補正は、前記物理的な欠陥領域に対して、前側の前補正量と後側の後補正量をそれぞれ設定して前記補正することを特徴とする請求項6〜9のいずれか一つに記載の光ディスクの欠陥位置補正方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−134396(P2011−134396A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293422(P2009−293422)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】