説明

光ディスク装置および光ディスク装置の制御方法

【課題】三層以上にまたがるフォーカスジャンプを安定的に行う。
【解決手段】三層以上の記録層を有する多層光ディスクに対して、光ビームを照射して情報を再生または記録する光ディスク装置は、多層光ディスクに光ビームを照射する光ピックアップと、三層以上の記録層にまたがって光ビームの焦点を目標とする記録層に移動させるフォーカスジャンプ時に、フォーカスジャンプの開始位置、通過する記録層の通過位置、および、光ビームの焦点の着地予定位置のデータ記録状態を検出する記録状態検出部と、フォーカスジャンプの開始位置、通過する記録層の通過位置、および、光ビームの焦点の着地予定位置のデータ記録状態が異なる場合に、フォーカスジャンプの開始位置、通過する記録層の通過位置、および、光ビームの焦点の着地予定位置のデータ記録状態が同一となる位置まで光ピックアップを移動させてから、フォーカスジャンプを開始する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置に関し、特に、複数の記録層を有する多層光ディスクに対して、光ビームを照射して情報を記録または再生する際のフォーカス制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc)等の光ディスクに情報を記録する光学ディスク装置では、光ディスクを高速で回転させながらレーザ光を光ディスクの情報記録面に照射し、レーザ光の反射光を検出することによって情報の再生または記録を行う。
【0003】
特許文献1には、光ビームの焦点を別の記録層に移動させるフォーカスジャンプ制御時に、光ディスク上の記録領域と未記録領域との分布を検出し、フォーカス着地位置が未記録領域とならないようにフォーカスジャンプを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−63025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、二層の記録層で構成されている光ディスクしか考慮されておらず、三層以上の記録層で構成されている光ディスクは考慮されていなかった。ここで、三層以上の記録層にまたがるフォーカスジャンプを行う場合であって、フォーカスジャンプ開始層、通過層、および、フォーカス目標層の記録状態が異なる場合には、レーザ光の反射信号が安定しないため、フォーカスジャンプを安定的に行うのが難しくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、三層以上の記録層にまたがるフォーカスジャンプを安定的に行う技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、三層以上の記録層を有する多層光ディスクに対して、光ビームを照射して情報を再生または記録する光ディスク装置であって、前記多層光ディスクに光ビームを照射する光ピックアップと、三層以上の記録層にまたがって前記光ビームの焦点を目標とする記録層に移動させるフォーカスジャンプ時に、フォーカスジャンプの開始位置、通過する記録層の通過位置、および、前記光ビームの焦点の着地予定位置のデータ記録状態を検出する記録状態検出部と、前記フォーカスジャンプの開始位置、前記通過する記録層の通過位置、および、前記光ビームの焦点の着地予定位置のデータ記録状態が異なる場合に、前記フォーカスジャンプの開始位置、前記通過する記録層の通過位置、および、前記光ビームの焦点の着地予定位置のデータ記録状態が同一となる位置まで前記光ピックアップを移動させてから、前記フォーカスジャンプを開始する制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の代表的な実施の形態によれば、三層以上の記録層にまたがるフォーカスジャンプを安定的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態における光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図2】従来の光ディスク装置によるフォーカスジャンプ動作時に、再生処理回路で生成される和信号(RF信号)およびフォーカスエラー信号(FE信号)の一例を模式的に示した図である。
【図3】L2層からL0層へ向かうフォーカスジャンプ時の駆動信号およびフォーカスエラー信号を示す図である。
【図4】第1の実施形態における光ディスク装置によって行われる処理を示すフローチャートである。
【図5】L2層からL0層に向かうフォーカスジャンプ時において、フォーカス位置の初期位置に対応するフォーカスジャンプ開始位置、通過層の通過位置、フォーカス着地位置を示す図である。
【図6】フォーカス初期位置がデータ未記録の状態であるが、フォーカス初期位置に対応する通過層(L1)層の通過位置がデータ記録済みの状態である場合のフォーカスジャンプ制御を説明するための図である。
【図7】通過層の通過位置がデータ記録済み領域とデータ未記録領域との境界付近である場合のフォーカスジャンプの方法を説明するための図である。
【図8】第2の実施形態における光ディスク装置によって行われる処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、各実施形態について説明する。
【0011】
−第1の実施形態−
図1は、第1の実施形態における光ディスク装置の構成を示すブロック図である。第1の実施形態における光ディスク装置は、ディスクモータ2、光ピックアップ3、スレッドモータ4、スレッドモータ駆動部5、ディスクモータ駆動部6、再生処理回路7、サーボ制御部8、レーザパワー制御部9、レーザドライバ10、マイクロプロセッサ11、および、メモリ12を備える。
【0012】
ディスクモータ2は、ディスクモータ駆動部6によって駆動され、光ディスク1を回転させる。光ディスク1は、三層以上の記録層を有する多層光ディスクであって、例えば、ブルーレイディスクである。ただし、光ディスク1がブルーレイディスクに限定されることはない。ディスクモータ駆動部6は、マイクロプロセッサ11からの指示によって、ディスクモータ2の回転(回転/停止、回転数)を制御する。
【0013】
光ピックアップ3は、アクチュエータ31、対物レンズ32、レーザ33、および、フロントモニタ34の他に、図示しない受光部やスプリッタを備える。レーザ33は、記録および再生のために所定の強度のレーザ光を発生する半導体レーザ(発光部)である。レーザ33から発光されたレーザ光は、対物レンズ32を介して、光ディスク1の記録面(光ディスク面)に照射される。受光部は、光ディスク1の記録面で反射したレーザ光を受光し、受光した反射光を電気信号に変換して、変換した電気信号を出力する。対物レンズ32は、アクチュエータ31によって駆動され、光ディスク面上にレーザ光が合焦するように調整される。アクチュエータ31は、サーボ制御部8によって駆動される。
【0014】
レーザ33で発生されたレーザ光は、例えばスプリッタで分離され、フロントモニタ34に導かれる。フロントモニタ34は、分離されたレーザ光によって、レーザ光のパワーを監視する。
【0015】
再生処理回路7は、光ピックアップ3から出力される電気信号に基づいて、データ(情報)の再生を行うとともに、トラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号などを生成する。トラッキングエラー信号は、光ディスク1のトラックに対するレーザ光の位置ずれを示す信号であり、フォーカスエラー信号は、光ディスク1の記録面(記録層)に対するレーザ光の焦点の位置ずれを示す信号である。
【0016】
サーボ制御部8は、フォーカスサーボ、トラッキングサーボを制御する。すなわち、フォーカスサーボは、アクチュエータ31を駆動することによって、レーザ光が光ディスク1の記録面上に合焦するように対物レンズ32を制御する。トラッキングサーボは、光ピックアップ3が光ディスク1のトラックに追従するように制御する。
【0017】
レーザパワー制御部9は、光ディスク1に予め記録されたレーザ出力、または、OPC(Optimum Power Control)によって決定されたレーザ出力に従って、レーザ光の出力強度を制御する。レーザパワー制御部9はまた、予め再生用として定めたレーザ出力にしたがって、レーザ光を制御する。レーザドライバ10は、レーザ33を駆動するドライバ回路である。レーザドライバ10は、レーザパワー制御部9によって制御される。
【0018】
マイクロプロセッサ11は、光ディスク装置の動作を制御する。例えば、サーボ制御部8に対して、フォーカスジャンプ制御の指示を行う。メモリ12は、マイクロプロセッサ11によって実行されるプログラムおよびプログラムの実行に必要なデータを格納する。
【0019】
図2は、従来の光ディスク装置によるフォーカスジャンプ動作時に、再生処理回路7で生成される和信号(RF信号)およびフォーカスエラー信号(FE信号)の一例を模式的に示した図である。ここでは、光ディスク1が三層の記録層を有するものとし、光ディスク1の記録面側の表面に対して最も奥の層をL0層、L0層の一つ手前の層をL1層、最もディスク表面に近い層をL2層と呼ぶ。なお、記録層の呼称によって本発明が限定されることはない。
【0020】
図2(a)〜図2(c)において、図中、上側の信号は、和信号(RF信号)であり、下側の信号は、フォーカスエラー信号(FE信号)である。また、和信号およびフォーカスエラー信号の波形が大きく動いている箇所は、左から順に、ディスク表面、L2層、L1層、L0層からの反射光に対応している。
【0021】
図2(a)は、三層全ての記録層がデータ未記録の状態である場合、図2(b)は、三層全ての記録層がデータ記録済みの状態である場合である。図2(a)および図2(b)を比較して分かるように、記録層にデータが記録されている場合の和信号およびフォーカスエラー信号の信号値は、記録層にデータが記録されていない場合の信号値よりも小さくなっている。
【0022】
図2(c)は、L0層のみにデータが記録されており、L1層およびL2層がデータ未記録の状態である場合である。すなわち、データが記録されている記録層とデータが記録されていない記録層とが混在している。この場合、L0層に対応する和信号は、隣のデータ未記録状態であるL1層の信号の影響を受けて、全ての記録層がデータ記録済みの場合(図2(b)参照)の信号値よりも大きくなる。図2(c)において、点線は、全ての記録層がデータ記録済みの場合の信号値の大きさを示している。また、L0層に対応する、L1層に近い側のフォーカスエラー信号は、全ての記録層がデータ記録済みの場合(図2(b)参照)の信号値よりも小さくなる。
【0023】
すなわち、フォーカスジャンプ時に、フォーカスジャンプ開始位置、通過層の通過位置、および、フォーカス着地位置のデータ記録状態が全て同じ場合には、図2(a)および図2(b)に示すように、和信号およびフォーカスエラー信号の振幅値は、ある一定の範囲内にあり、安定している。一方、フォーカスジャンプ開始位置、通過層の通過位置、および、フォーカス着地位置のデータ記録状態が異なる場合には、データ記録状態が異なる隣接層の信号の影響を受けて、信号が不安定になる。特に、隣接する記録層間の間隔が狭い場合には、隣接する記録層間の間隔が広い場合に比べて、隣接層の信号の影響が大きくなる。
【0024】
なお、図2(c)では、各記録層のデータ記録状態が異なる場合の一例として、L0層のみにデータが記録されており、L1層およびL2層がデータ未記録の状態である場合を挙げたが、この例に限定されることはない。
【0025】
ここで、フォーカスジャンプ時の制御について簡単に説明しておく。図3は、L2層からL0層へ向かうフォーカスジャンプ時の駆動信号およびフォーカスエラー信号を示す図である。
【0026】
図3において、しきい値Vaは、後述する加速信号の出力を終了するタイミングを判定するためのしきい値であり、加速終了しきい値と呼ぶ。この加速終了しきい値Vaは、フォーカスジャンプ時に、記録層を通過したか否かを判定するための記録層通過判定用しきい値も兼ねている。ただし、記録層通過判定用しきい値を、加速終了しきい値とは別の値に設定してもよい。
【0027】
また、しきい値Vbは、後述する減速信号を出力するタイミングを判定するためのしきい値であり、減速開始しきい値と呼ぶ。この減速開始しきい値Vbは、フォーカスジャンプ時に、記録層の検出を判定するための記録層検出用しきい値も兼ねている。ただし、記録層検出用しきい値を、減速開始しきい値とは別の値に設定してもよい。
【0028】
層間ジャンプ指令を受けると、マイクロプロセッサ11は、対物レンズ32を光ディスク1に近づける方向に移動させるための加速信号を出力する(時刻T31)。この加速信号に基づいて、対物レンズ32は、光ディスク1に近づく方向に移動し、フォーカスエラー信号がマイナス側に変化する。
【0029】
その後、マイクロプロセッサ11は、フォーカスエラー信号のマイナス側のピークを検出した後、フォーカスエラー信号の信号値が加速終了しきい値Vaを上回ると、加速信号の出力を停止する(時刻T32)。上述したように、加速終了しきい値Vaは、記録層通過判定用しきい値も兼ねており、フォーカスエラー信号の信号値が記録層通過判定用しきい値Vaを上回ると、L2層を通過したと判定する。
【0030】
加速信号の出力停止後も、対物レンズ32は慣性で動き続けており、フォーカスエラー信号は、その後プラス側に変化する。フォーカスエラー信号が記録層検出用しきい値Vbを上回ると、焦点位置がL1層に入ったと判定する(時刻T33)。その後、フォーカスエラー信号のプラス側のピーク、および、マイナス側のピークを検出し、フォーカスエラー信号の信号値が記録層通過判定用しきい値Vaを上回ると、L1層を通過したと判定する(時刻T34)。
【0031】
その後、フォーカスエラー信号が記録層検出用しきい値Vbを上回ると、焦点位置がL0層に入ったと判定する(時刻T35)。上述したように、記録層検出用しきい値Vbは、減速開始しきい値も兼ねている。すなわち、フォーカスエラー信号が減速開始しきい値Vbを上回ると、対物レンズ32を停止させるための減速信号を出力する(時刻T35)。その後、フォーカスエラー信号がゼロになると、減速信号の出力を停止し、フォーカスサーボをオンする(時刻T36)。この一連の動作により、レーザ光の焦点をL2層からL0層へと移動させる。
【0032】
図2(a)および図2(b)に示したように、記録層にデータが記録されている場合と、データが記録されていない場合とでは、フォーカスエラー信号の信号値の大きさが異なる。従って、しきい値Vaは、データの記録・未記録の有無に関わらず、記録層の通過を判定できる値に設定しておく。同様に、しきい値Vbは、データの記録・未記録の有無に関わらず、記録層の検出を判定できる値に設定しておく。
【0033】
ただし、図2(c)に示したように、フォーカスジャンプ時に、データが記録されている領域とデータが記録されていない領域とが混在している場合、フォーカスエラー信号の大きさが変化する。図2(c)に示した例では、L0層に対応する、L1層に近い側のフォーカスエラー信号は、全ての記録層がデータ記録済みの場合(図2(b)参照)の信号値よりも小さくなっている。
【0034】
従って、第1の実施形態における光ディスク装置では、フォーカスジャンプ開始位置、通過層の通過位置、および、フォーカス着地位置のデータ記録状態が同じとなる位置において、フォーカスジャンプを行う。データ記録状態が同じとは、全ての記録層にデータが記録されている場合、または、全ての記録層がデータ未記録の場合である。
【0035】
図4は、第1の実施形態における光ディスク装置によって行われる処理を示すフローチャートである。光ディスク1が装着されると、光ディスク装置は、ステップS10の処理を開始する。
【0036】
ステップS10において、所定のディスク認識動作を行った後、ステップS20において、各データ領域の記録状態の情報を取得する。各データ領域の記録状態の情報には、データが記録済みであるか、または、未記録であるかを示す情報が少なくとも含まれる。例えばブルーレイディスクの場合、この各データ領域の記録状態の情報は、光ディスク1の内周または外周に設けられるディスク管理領域に含まれる情報の一つ、SRRI(Sequential Recording Range Information)に基づいて、取得することができる。すなわち、例えば記録済みデータがディスク上に存在する場合は、SRRIには、データが記録済みである領域の先頭と終了の位置情報(アドレス)が1ないし複数含まれているので、記録済み領域の先頭と終了の位置情報を把握することにより、各データ領域の記録状態を把握することができる。
【0037】
ステップS30において、データのRead(読み出し)指令またはWrite(書き込み)指令を受信すると、ステップS40に進む。ステップS40では、レーザ光の焦点をアクセス目標アドレスに移動させるために、層間ジャンプ、すなわち、他の記録層への移動が必要であるか否かを判定する。層間ジャンプが必要ではないと判定すると、ステップS90に進む。ステップS90では、レーザ光の焦点を同じ記録層の目標位置に移動させる制御を行う。
【0038】
一方、ステップS40において層間ジャンプが必要であると判定すると、ステップS50に進む。ステップS50では、レーザ光のフォーカス位置の初期位置に対応する、フォーカスジャンプ開始位置、通過層の通過位置、および、フォーカス着地位置のデータ記録状態を、ステップS20で取得した情報に基づいて確認する。
【0039】
図5は、L2層からL0層に向かうフォーカスジャンプ時において、フォーカス位置の初期位置51に対応するフォーカスジャンプ開始位置51、通過層の通過位置52、フォーカス着地位置53を示す図である。フォーカス初期位置51はL2層にあり、アクセス目標位置54はL0層にある。また、L1層は通過層である。フォーカス初期位置(フォーカスジャンプ開始位置)51近傍で再生処理回路7によって光ディスク1から読み出されたアドレス情報からフォーカス初期位置51近傍の半径を計算により求め、その半径に基づいて計算することで、通過層の通過位置52およびフォーカス着地位置53のアドレスを取得できる。この取得したアドレスに基づいて、ステップS20で取得した各データ領域の記録状態の情報を参照することにより、フォーカス位置の初期位置に対応する、フォーカスジャンプ開始位置、通過層の通過位置、および、フォーカス着地位置のデータ記録状態を確認する。
【0040】
ステップS60では、ステップS50で確認したフォーカスジャンプ開始位置、通過層の通過位置、および、フォーカス着地位置のデータ記録状態は同じであるか否かを判定する。フォーカス位置の初期位置に対応する、フォーカスジャンプ開始位置、通過層の通過位置、および、フォーカス着地位置のデータ記録状態が同じ場合、すなわち、全てデータ記録済みである場合、または、データ未記録である場合には、ステップS70に進む。
【0041】
ステップS70では、フォーカスジャンプ開始位置、通過層の通過位置、および、フォーカス着地位置のデータ記録状態が同じなので、フォーカス初期位置においてフォーカスジャンプを行う。続くステップS80では、フォーカス着地位置から、目標位置へとレーザ光の焦点を移動させるために、光ピックアップ3を移動させる。
【0042】
一方、ステップS60において、フォーカスジャンプ開始位置、通過層の通過位置、および、フォーカス着地位置のデータ記録状態が同じではないと判定すると、ステップS100に進む。ステップS100では、フォーカスジャンプ開始領域、通過層の通過領域、および、フォーカス着地領域のデータ記録状態が同じとなる位置であって、初期位置から半径方向に最短の位置を算出する。
【0043】
図6は、フォーカス初期位置61がデータ未記録の状態であるが、フォーカス初期位置61に対応する通過層(L1)層の通過位置がデータ記録済みの状態である場合のフォーカスジャンプ制御を説明するための図である。図6において、斜線を付した領域65は、データが記録されている領域であり、それ以外の領域は、データが記録されていない領域である。フォーカス初期位置61はL2層にあり、アクセス目標位置64は、L0層にある。
【0044】
この場合、フォーカスジャンプ開始位置、通過層の通過位置、および、フォーカス着地位置のデータ記録状態が同じであって、初期位置61から最短の位置を算出する。ここでは、フォーカスジャンプ開始位置、通過層の通過位置、および、フォーカス着地位置のデータ記録状態が全て同じ位置であって、かつ、データが記録されている領域とデータが記録されていない領域との境界から、所定距離D離れた位置62を、初期位置61から最短の位置とする。所定距離Dは、各記録層ごとに定められたアドレスの位置ずれ量や、光ディスク1固有の偏芯、ディスクモータ2の装着時に発生する偏芯等に基づいて設定しておく。例えば、各記録層ごとに定められたアドレスの位置ずれ量に対して、若干の余裕を持たせた距離を所定距離Dに設定する。
【0045】
ステップS110では、ステップS100で算出した位置にレーザ光の焦点を移動させるために、光ピックアップ3を移動させる。
【0046】
ステップS120では、レーザ光の焦点を移動させた位置を基準に、フォーカスジャンプを行う。これにより、フォーカスジャンプ開始位置、通過層の通過位置、および、フォーカス着地位置のデータ記録状態が同じ位置において、安定的なフォーカスジャンプを行うことができる。続くステップS130では、フォーカス着地位置から、目標位置へとレーザ光の焦点を移動させるために、光ピックアップ3を移動させる。
【0047】
第1の実施形態における光ディスク装置によれば、三層以上の記録層にまたがるフォーカスジャンプ時に、フォーカスジャンプの開始位置、通過する記録層の通過位置、および、光ビームの焦点の着地予定位置のデータ記録状態を検出し、各位置のデータ記録状態が異なる場合に、全てのデータ記録状態が同一となる位置まで光ピックアップを移動させてから、フォーカスジャンプを開始する。これにより、フォーカスエラー信号が安定するので、フォーカスジャンプを安定的に行うことができる。
【0048】
特に、フォーカスジャンプの開始位置、通過する記録層の通過位置、および、光ビームの焦点の着地予定位置のデータ記録状態が異なる場合に、各位置のデータ記録状態が同一であって、かつ、データの記録されている領域とデータの記録されていない領域との境界から所定距離D離れた位置まで光ピックアップを移動させてから、フォーカスジャンプを開始するので、安定したフォーカスエラー信号が得られる位置にて、フォーカスジャンプを安定的に行うことができる。
【0049】
また、所定距離Dを、各記録層ごとに定められた位置アドレスの位置ずれ量や、光ディスク1固有の偏芯、ディスクモータ2の装着時に発生する偏芯等に基づいて設定することにより、フォーカスジャンプの開始位置、通過する記録層の通過位置、および、光ビームの焦点の着地予定位置のデータ記録状態が確実に同一となる位置にて、フォーカスジャンプを行うことができる。また、各位置のデータ記録状態が異なる場合に、光ピックアップを移動させる距離を短くすることができるので、レーザ光の焦点を目標位置に移動させるまでの時間を短くすることができる。
【0050】
−第2の実施形態−
第1の実施形態における光ディスク装置では、フォーカス開始位置、通過層の通過位置、および、フォーカス着地位置のデータ記録状態が全て同じとなる位置において、フォーカスジャンプを行った。ここで、フォーカス開始位置や、通過層の通過位置、または、フォーカス着地位置がデータ記録済み領域とデータ未記録領域との境界付近である場合、フォーカスジャンプ時に各位置のデータ記録状態が異なる可能性があり、安定的なフォーカスジャンプを行うことができなくなる。
【0051】
従って、第2の実施形態における光ディスク装置では、フォーカス開始位置、通過層の通過位置、または、フォーカス着地位置がデータ記録済み領域とデータ未記録領域との境界付近である場合に、その境界を避けて、フォーカスジャンプを行う。ここでは、データ記録済み領域とデータ未記録領域との境界から、所定距離Dの範囲内を境界付近とする。所定距離Dは、第1の実施形態で説明した方法によって予め定めておく。なお、第2の実施形態における光ディスク装置の構成は、図1に示す第1の実施形態における光ディスク装置の構成と同じである。
【0052】
図7は、通過層の通過位置がデータ記録済み領域とデータ未記録領域との境界付近である場合のフォーカスジャンプの方法を説明するための図である。図7において、斜線を付した領域75は、データが記録されている領域であり、それ以外の領域は、データが記録されていない領域である。現在の光ビームの焦点位置71はL2層にあり、フォーカス目標位置74はL0層にある。
【0053】
図7に示すように、光ビームの現在の焦点位置71からフォーカスジャンプを行うと、通過層の通過予定位置が記録済み領域75とデータ未記録領域76との境界付近になってしまう。従って、まず初めに、フォーカス開始位置、通過層の通過位置、および、フォーカス着地位置がデータ記録済み領域とデータ未記録領域との境界付近にならず、かつ、データ記録状態が全て同一となる最短の位置72まで光ビームの焦点位置を移動させる。最短となる位置は、第1の実施形態と同様に、フォーカスジャンプ開始位置、通過層の通過位置、および、フォーカス着地位置のデータ記録状態が全て同じ位置であって、かつ、データが記録されている領域とデータが記録されていない領域との境界から所定距離D離れた位置とする。
【0054】
その後、光ビームの焦点を移動させた位置72からフォーカスジャンプを行い、フォーカス着地位置73からフォーカス目標位置74まで、光ビームの焦点を移動させる。
【0055】
図8は、第2の実施形態における光ディスク装置によって行われる処理を示すフローチャートである。図4に示すフローチャートの処理と同一の処理を行うステップについては、同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0056】
ステップS700では、フォーカス初期位置に対応する、フォーカス開始位置、通過層の通過位置、および、フォーカス着地位置の各位置を中心とする所定距離Dの範囲内における領域のデータ記録状態を確認する。
【0057】
ステップS710では、ステップS700の確認結果に基づいて、フォーカス初期位置に対応する、フォーカス開始位置、通過層の通過位置、および、フォーカス着地位置がデータ記録済み領域とデータ未記録領域との境界付近であるか否かを判定する。具体的には、ステップS20で確認した各領域の記録状態の情報を参照することにより、フォーカス初期位置に対応するフォーカス開始位置、通過層の通過位置、および、フォーカス着地位置の各位置を中心とする所定距離Dの範囲内に、データ記録済み領域とデータ未記録領域との境界があるか否かを判定する。データ記録済み領域とデータ未記録領域との境界があると判定するとステップS100に進み、無いと判定するとステップS60に進む。ステップS60〜ステップS80の処理、および、ステップS100〜ステップS130の処理は、図4に示すフローチャートと同じである。
【0058】
第2の実施形態における光ディスク装置によれば、フォーカスジャンプの開始位置、通過する記録層の通過位置、および、光ビームの焦点の着地予定位置のうちのいずれか一つの位置がデータの記録されている領域とデータの記録されていない領域との境界から所定範囲内にある場合に、その境界から所定範囲内とならない位置であって、フォーカスジャンプの開始位置、通過する記録層の通過位置、および、光ビームの焦点の着地予定位置の記録状態が同じとなる位置まで光ピックアップを移動させてから、フォーカスジャンプを開始する。これにより、データ記録済み領域とデータ未記録領域との境界を避けて、安定的なフォーカスジャンプを行うことができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計なども含まれる。例えば、上述した実施形態では、光ディスク1の特性として、データが記録されている記録層に対応する和信号およびフォーカスエラー信号はそれぞれ、データが記録されていない記録層に対応する和信号およびフォーカスエラー信号の信号値よりも小さくなるものとして説明した。しかし、データが記録されていない記録層に対応する和信号およびフォーカスエラー信号がそれぞれ、データが記録されている記録層に対応する和信号およびフォーカスエラー信号の信号値よりも小さい光ディスクに対して、本発明を適用することもできる。
【0060】
第1の実施形態における光ディスク装置では、フォーカス開始位置、通過層の通過位置、および、フォーカス着地位置のデータ記録状態が全て同じとなる位置において、フォーカスジャンプを行った。しかし、四層以上の記録層にまたがるフォーカスジャンプ時に、全ての通過層の通過位置のデータ記録状態が同じであれば、フォーカスジャンプを行うようにしてもよい。この方法によれば、通過層の数を安定的に検出することができる。
【0061】
また、四層以上の記録層にまたがるフォーカスジャンプ時に、全ての通過層の通過位置、および、フォーカス着地位置のデータ記録状態が同じとなる位置において、フォーカスジャンプを行うようにしてもよい。この方法によれば、通過層の数を安定的に検出するとともに、フォーカス目標層に安定的にフォーカス着地させることができる。
【0062】
しきい値Vaは、データの記録・未記録の有無に関わらず、記録層の通過を判定できる値に設定しておくとともに、しきい値Vbは、データの記録・未記録の有無に関わらず、記録層の検出を判定できる値に設定しておくものとした。しかし、しきい値Va,Vbを、記録層のデータ記録状態に応じて設定してもよい。すなわち、フォーカスエラー信号の大きさに応じて、しきい値Va,Vbを設定するようにしてもよいし、各層別々に設定してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 光ディスク
2 ディスクモータ
3 光ピックアップ
4 スレッドモータ
5 スレッドモータ駆動部
6 ディスクモータ駆動部
7 再生処理回路
8 サーボ制御
9 レーザパワー制御
10 レーザドライバ
11 マイクロプロセッサ
12 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三層以上の記録層を有する多層光ディスクに対して、光ビームを照射して情報を再生または記録する光ディスク装置であって、
前記多層光ディスクに光ビームを照射する光ピックアップと、
三層以上の記録層にまたがって前記光ビームの焦点を目標とする記録層に移動させるフォーカスジャンプ時に、フォーカスジャンプの開始位置、通過する記録層の通過位置、および、前記光ビームの焦点の着地予定位置のデータ記録状態を検出する記録状態検出部と、
前記フォーカスジャンプの開始位置、前記通過する記録層の通過位置、および、前記光ビームの焦点の着地予定位置のデータ記録状態が異なる場合に、前記フォーカスジャンプの開始位置、前記通過する記録層の通過位置、および、前記光ビームの焦点の着地予定位置のデータ記録状態が同一となる位置まで前記光ピックアップを移動させてから、前記フォーカスジャンプを開始する制御部と、
を備えることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記フォーカスジャンプの開始位置、前記通過する記録層の通過位置、および、前記光ビームの焦点の着地予定位置のデータ記録状態が同一であって、かつ、データの記録されている領域とデータの記録されていない領域との境界から所定距離離れた位置まで前記光ピックアップを移動させてから、前記フォーカスジャンプを開始することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記フォーカスジャンプの開始位置、前記通過する記録層の通過位置、および、前記光ビームの焦点の着地予定位置が全てデータ未記録状態である位置にて、前記フォーカスジャンプを開始することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記フォーカスジャンプの開始位置、前記通過する記録層の通過位置、および、前記光ビームの焦点の着地予定位置が全てデータ記録状態である位置にて、前記フォーカスジャンプを開始することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記フォーカスジャンプの開始位置、前記通過する記録層の通過位置、および、前記光ビームの焦点の着地予定位置のうちのいずれか一つの位置がデータの記録されている領域とデータの記録されていない領域との境界から所定範囲内にある場合、前記フォーカスジャンプの開始位置、前記通過する記録層の通過位置、および、前記光ビームの焦点の着地予定位置が前記境界から所定範囲内とならない位置まで前記光ピックアップを移動させてから、前記フォーカスジャンプを開始することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
光ディスクに光ビームを照射する光ピックアップを有し、三層以上の記録層を有する多層光ディスクに対して前記光ビームを照射して情報を再生または記録する光ディスク装置の制御方法であって、
三層以上の記録層にまたがって前記光ビームの焦点を目標とする記録層に移動させるフォーカスジャンプ時に、フォーカスジャンプの開始位置、通過する記録層の通過位置、および、前記光ビームの焦点の着地予定位置のデータ記録状態を検出し、
前記フォーカスジャンプの開始位置、前記通過する記録層の通過位置、および、前記光ビームの焦点の着地予定位置のデータ記録状態が異なる場合に、前記フォーカスジャンプの開始位置、前記通過する記録層の通過位置、および、前記光ビームの焦点の着地予定位置のデータ記録状態が同一となる位置まで前記光ピックアップを移動させてから、前記フォーカスジャンプを開始する、
ことを特徴とする光ディスク装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−175700(P2011−175700A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38517(P2010−38517)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】