説明

光ディスク装置の振動低減機構

【課題】光ディスク装置で偏重心ディスクを回転した場合の振動抑制のためにトラバースユニットに動吸振器を構成する場合、部品点数の増加と高さ方向の設計的な制約が生じていた。
【解決手段】スピンドルモータ12、光ヘッド14、ガイド軸16及びメインベース13を含むトラバースユニット11の上昇動作で、光ディスク10を載置したトレイ50が装置100にローディングされたとき、サブダンパA19を介してトレイ50を浮上支持することで、トレイ50を動吸振器のカウンターウェイトと兼用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD、DVDおよびBDディスクなど光ディスクの記録再生を行う装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光ディスク装置の振動低減機構としては、例えば特許文献1に記載されている動吸振器と称される機構があった。図9に振動低減機構である動吸振器を搭載した従来の光ディスク装置の側面断面図を示す。
【0003】
光ディスク10を回転するスピンドルモータの回転に追従するターンテーブル12と、光ディスク10のデータ記録面にレーザを照射する光ピックアップ14とを保持するメインベース13の上に、サブベース17がサブダンパ19で支持されている。サブベース17およびサブダンパ19の脱落防止のため、サブダンパ19は中空で空洞部に固定用の段付きネジが挿入されメインベース13に対して固定されている。
【特許文献1】特開平11−306747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の光ディスク装置の振動低減機構では、サブベース17をメインベース13で支持し、その上にトレイ50をローディングするため光ディスク装置の高さが高くなり、上下方向の配置に制約が生じていた。また、サブベース17の材料代がコストの増加要因となっていた。
【0005】
本発明は、係る従来の課題に鑑み、装置高さを抑制すると共に材料コストを低減することで装置を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の光ディスク装置の振動低減機構は、光ディスクを回転させるスピンドルモータと、装置上部に回転自在に保持されるクランパと、前記光ディスクのデータ記録面にレーザ光を照射し、データの記録再生を行う光ピックアップと、前記スピンドルモータと前記光ピックアップとを保持するメインベースと、前記トラバースベースを弾性的に支持するメインダンパと、前記光ディスクを上面に載置し、光ディスク装置内にローディング動作およびイジェクト動作を行うトレイと、前記トレイの前記ローディング動作および前記イジェクト動作を実現するローディング駆動手段と、前記メインベースの上下動作を実現する昇降手段と、前記トレイを前記メインベース対して弾性的に支持する第1のサブダンパとを有し、前記トレイはローディング完了後に、前記メインベースの上昇動作で前記第1のサブダンパだけを介して上方向に浮上支持される時、ほぼ同時に前記光ディスクは前記スピンドルモータによって前記トレイから浮上し、前記クランパによって前記スピンドルモータにチャッキングされる構成を有する。このため、偏重心を有する光ディスクを高速で回転した場合に発生する振動を低減する動吸振器を、専用のカウンタバランスを設けることなくトレイが兼用することで、部品点数を削減し、コストダウンと光ディスク装置の薄型化を可能とする。
【0007】
また、本発明の光ディスク装置の振動低減機構は、上記構成において、光ディスク装置の最高回転数において、前記トレイが弾性的に浮上支持された状態で、前記トレイの共振が前記第1のサブダンパによって生じるように設定する構成を有する。このため、動吸振器を振動エネルギーが最大となる光ディスクの最高回転数で、最も効果的に機能させることが可能となる。
【0008】
また、本発明の光ディスク装置の振動低減機構は、上記何れかの構成において、前記トレイが第1のサブダンパを介してメインベースに浮上支持された際に、前記光ディスク装置上面に設けられた第2のサブダンパによって前記トレイを上面から押圧され、前記トレイが前記第1のサブダンパと前記第2のサブダンパとによって上下から弾性的に支持される構成を有する。このため、動吸振器のカウンタバランスであるトレイの保持状態を確実なものとし、トレイが第1のサブダンパによる浮上支持だけでは光ディスク回転中に光ディスク装置に対して外部から衝撃振動が与えられた場合にトレイが上下にばたつきディスクや光ディスク装置内面と接触するような不具合を回避することが可能となる。
【0009】
また、本発明の光ディスク装置の振動低減機構は、上記何れかの構成において、前記トレイにはカートリッジの位置決め手段と、カートリッジのシャッター開閉手段を有し、前記光ディスク装置上面には第3のサブダンパが設けられ、前記トレイのイジェクト動作完了後に、前記カートリッジ位置決め手段で前記トレイに位置決めされた光ディスクを内包する前記カートリッジは、前記トレイのローディング動作中に前記シャッター開閉手段で前記カートリッジのシャッターは開放され、ローディング完了後に前記トレイは下面から前記第1のサブダンパを介して弾性的に浮上支持される際に、前記第3のサブダンパは、前記カートリッジの上面を押圧し、前記カートリッジが位置決めされた前記トレイを上下から弾性的に浮上支持し、カートリッジに内包されない光ディスクをローディングした場合には、前記第3のサブダンパはトレイを押圧しない構成を有する。このため、カートリッジに内包されたディスクを光ディスク装置で記録再生を実施する際にも、動吸振器のカウンタバランスをトレイとカートリッジが兼用することで、部品点数を削減し、コストダウンと光ディスク装置の薄型化を可能とする。
【0010】
また、本発明の光ディスク装置の振動低減機構は、上記構成において、光ディスク装置の最高回転数において、光ディスクを内包するカートリッジを載置した前記トレイが弾性的に浮上支持された状態で、前記トレイの共振が前記第1のサブダンパと前記第3のサブダンパとによって生じるように設定され、カートリッジに内包されないディスクの場合には、前記トレイが弾性的に浮上支持された状態で、前記トレイの共振が前記第1のサブダンパによって生じるように設定する構成を有する。このため、光ディスクの形態がカートリッジの有無に関わらず、動吸振器を振動エネルギーが最大となる光ディスクの最高回転数で最も効果的に機能させることが可能となる。
【0011】
また、本発明の光ディスク装置の振動低減機構は、上記何れかの構成において、前記第1のサブダンパおよび前記第2のサブダンパは、前記トレイの支持面に向かって直径が小さくなるテーパ状の円錐台形状であり、前記トレイには、前記第1のサブダンパおよび前記第2のサブダンパに向かって直径が大きくなるカップ状の位置決め穴が設けられ、前記メインベースの上昇動作で、前記第1のサブダンパおよび前記第2のサブダンパが前記位置決め穴に挿入される構成を有する。このため、第1のサブダンパおよび第2のサブダンパのテーパがトレイの上下面のカップに挿入されることで、カートリッジが位置決めされたトレイとメインベースとが正確に水平方向に位置決めされる。その結果ディスクとカートリッジ内壁との接触を回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光ディスク装置の振動低減機構は上記構成を有し、偏重心の大きい光ディスクを高速で回転させて、記録または再生を実施する際に光ディスク装置に発生する振動を低減する動吸振器機構を光ディスク装置に搭載するに際して、従来の光ディスク装置では必須の部材であるカウンターウェイトがトレイと兼用されることで、部品点数を削減できる効果がある。その結果、コストダウンと光ディスク装置の薄型化実現が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の光ディスク装置の振動低減機構に関する好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0014】
(実施の形態1)
本発明の光ディスク装置の振動低減機構の一実施形態について、図1及び図2を用いて説明する。図1A、図1B及び図1Cは、本実施形態における振動低減機構を説明する要部側面断面図であり、動吸振器のカウンターウェイトを光ディスクを載置してローディング動作(搬入)およびイジェクト動作(搬出)を行うトレイと兼用した場合を示し、図2は、トラバースユニットに支持されたサブダンパとトレイ係合部との構成を示す部分断面図であり、共に100は光ディスク装置の本体、50は光ディスク装置100に対して光ディスクをローディング動作(搬入)およびイジェクト動作(搬出)するために載置するトレイ、10は光ディスク、12は光ディスク10を回転させるスピンドルモータ、13はスピンドルモータ12を支持するメインベース、14はディスク10のデータの記録再生を行う光ピックアップ、16は光ピックアップ14をディスク10の半径方向に移動を案内するガイド軸、11はメインベース13にスピンドルモータ12、光ピックアップ14及びガイド軸16などが一体に支持されたトラバースユニット、18はトラバースユニット11を弾性的に支持し光ディスク装置外部からの振動を遮断するメインダンパである。またメインベース13の上にはトレイ50をローディング動作後に弾性的に浮上支持するサブダンパA19が支持されている。トレイ50をローディング動作およびイジェクト動作するためのローディング駆動手段、トラバースユニット11を上下駆動するための昇降手段、光ピックアップをガイド軸16の案内で光ディスク10の半径方向に駆動するトラバース駆動手段は図示を省略している。
【0015】
図1Aでは、光ディスク10を載置するためトレイ50が、光ディスク装置100の前面開口からイジェクトされた状態である。この時、トラバースユニット11は、光ディスク装置100内でトレイ50のイジェクト動作を妨げないように、下方に待避している。
【0016】
図1Bでは、光ディスク10を載置したトレイ50が、光ディスク装置100の終端まで完全にローディングされる直前の状態である。この時においても、トラバースユニット11は光ディスク装置100内で下方に待避した状態を保っている。トレイ50のローディング完了後、トラバースユニット11は図示を省略したトラバースユニットの昇降手段によって、トレイ50を押し上げる方向に上昇する。なお、トレイ50のローディング動作およびイジェクト動作に伴い、光ディスク装置100に対してトレイ50を前後方向にガイドするレールの図示は省略している。
【0017】
図1Cでは、トラバースユニット11上に支持されたサブダンパA19は、光ディスク10を載置したトレイ50を上方へ押上げ浮上支持する。同時にスピンドルモータ12はトレイ50に載置された光ディスク10をトレイ50から浮上支持する。合わせて上方からクランパ23が、光ディスク10をスピンドルモータ12に対してクランプ(固定)する。この時トレイ50は、光ディスク装置100に設けられたトレイのガイドとの係合から解放され、サブダンパA19だけで浮上支持された状態となる。
【0018】
スピンドルモータ12にクランプされた光ディスク10は、図示を省略したコントローラからの指令で回転し、光ピックアップ14によって光ディスク10裏面のデータを再生およびデータの記録を行う。光ディスク10の基板は透明な樹脂ディスクの貼り合わせで製造されるのが一般的であるが、基板成型時の厚さのバラツキによってアンバランスが発生する。光ディスク10を高速で回転した場合、通常トラバースユニット11に激しい振動が発生する。この振動によって、光ディスク10のデータの再生および記録の障害、光ディスク装置100の外部への振動および騒音の原因となる。
【0019】
光ディスク10のアンバランスによる振動を解消するため、サブダンパA19によって弾性的に浮上支持されるトレイ50が、動吸振器のカウンタウェイトとしてトラバースユニット11の振動方向と逆方向に振動し、トラバースユニット11、光ディスク10、光ピックアップ14および光ディスク装置100に発生する振動を低減する。
【0020】
図2を用いて、トレイ50とサブダンパA19との係合について詳細に説明する。図2(a)では、トラバースユニット11が下方に待避している状態で、トレイ50とサブダンパA19は係合していない。トレイ50の下面にはカップ形状のサブダンパ係合部30が設けられている。
【0021】
図2(b)では、トラバースユニット11が上昇し、ディスクをクランプしている状態で、サブダンパA19とサブダンパ係合部31とは隙間のない状態で係合してる。サブダンパA19およびトレイ50下面のサブダンパ係合部30は、共に円錐台の形状を有している。この形状を有することで、サブダンパA19とサブダンパ係合部30とが仮に水平方向に多少の位置ズレが生じていても、容易に係合することが可能となる。また、サブダンパA19とサブダンパ係合部30との係合完了後のガタ付きが生じない。併せて、トレイ50をイジェクトする前にトラバースユニット11の下降する時、サブダンパA19とサブダンパ係合部30との係合関係は容易に解放することが可能となる。
【0022】
メインダンパ18およびサブダンパA19は、メインベース13上にそれぞれ3個以上支持され、トラバースユニット11およびトレイ50の姿勢が不安定となることを防止している。メインダンパ18およびサブダンパA19は、シリコンゴムなどの化学的に安定した材料で成形されたものを使用する。なお、メインダンパ18およびサブダンパA19に用いられる材料はシリコンゴムに限定されるものではなく、ブチルゴム、クロロプレンゴム、EPDMなどのゴムを使用しても同等の効果を得ることができる。なお、メインダンパ18およびサブダンパA19は、単一のゴム材料だけでなくゴム材料と金属バネまたは樹脂バネとの複合であっても同等の効果を得ることができる。
【0023】
なお、サブダンパA19は図2において中実形状で示しているが、使用するゴム硬度およびトレイ50の重量および動吸振器として効果を得たい光ディスク10の回転数に応じて、中空形状としても同等の効果を得ることができる。
【0024】
(実施の形態2)
本発明の別の実施形態について図3A、図3B、図3C及び図4を用いて説明する。図3A、図3B及び図3Cは、本発明実施の形態における振動低減機構の動吸振器のカウンターウェイトをトレイと兼用した場合の光ディスク装置の側面断面図で、図4は、トラバースユニットに支持されたサブダンパとトレイ係合部を示す部分断面図である。
【0025】
本実施形態の光ディスク装置は、トラバースユニット11の昇降手段と待避状態とが実施の形態1と異なる場合、すなわち実施の形態1ではトラバースユニット11が垂直に上下していたが、本実施形態ではトラバースユニット11は図示を省略したトラバースユニット昇降手段によって、前側だけが下方へ待避しトレイ50との干渉を回避する構成となっている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0026】
図3Aでは、トラバ−スユニット11のスピンドルモータ12の支持される前側が下方に大きく待避し、後側は下方への待避は小さい。このようなトラバースユニット11の待避状態でも、トレイのローディング動作およびイジェクト動作の妨げになることはない。
【0027】
図3Bでは、光ディスク10を載置したトレイ50が、光ディスク装置100の終端まで完全にローディングされる直前の状態である。図4A(a)に示すように、サブダンパA19とトレイ50のサブダンパ係合部30は前側では実施の形態1と同様に大きく待避しているのでサブダンパ係合部30は完全なカップ形状を有しており、後側では同図(b)に示すようにトラバースユニット11の下方への待避が小さくても、サブダンパB19がトレイ50のローディング動作の妨げとならないようにサブダンパ係合部B31は後側の壁がカットされたカップ形状を有している。 図4B(a)及び(b)はトラバースユニット11が上昇しディスクをクランプしている状態で、サブダンパA19とサブダンパ係合部30、およびサブダンパB20とサブダンパ係合部31は隙間のない状態で係合してる。
【0028】
図3Cでは、トラバースユニット11上に支持されたサブダンパA19は、光ディスク10の載置されたトレイ50を上方へ押上げ浮上支持する。同時にスピンドルモータ12はトレイ50に載置された光ディスク10をトレイ50から浮上支持する。合わせて上方からクランパ23が光ディスク10をスピンドルモータ12に対してクランプ(固定)する。この時トレイ50は光ディスク装置100に設けられたトレイのガイドとの係合から解放されサブダンパA19だけで浮上支持された状態となる。以下の動作は、実施の形態1と同様であるため省略する。
(実施の形態3)
本発明の他の実施形態について図5A、図5B、図5C、図6及び図7を用いて説明する。図5A、図5B及び図5Cは、本実施形態における振動低減機構である動吸振器のカウンターウェイトを、カートリッジ搭載が可能なトレイと兼用した場合の光ディスク装置の側面断面図、図6は、光ディスク装置のトレイ平面図と裏面図、図7は、カートリッジ搭載時の光ディスク装置のトレイ平面図である。
【0029】
図6(a)に、トレイ50の平面図を示す。トレイ50の上面にはディスクを内包したカートリッジ41(図5参照)を載置するためのトレイ50上の平面なカートリッジ載置面51と、カートリッジ載置面51より下側に大径のディスクが載置可能なディスク載置面A52および小径のディスクが載置可能なディスク載置面B53が形成されている。
【0030】
トレイ50の前側にはカートリッジ41の位置決め穴43と係合する位置決めピン55の突起が左右各1個設けられている。位置決め穴43を介してカートリッジ41をトレイ50の位置決めピン55に位置決めすることで、カートリッジ41の内壁と光ディスク10が接触することと、トレイ50に対してカートリッジ41が振動などで衝突音が発生することを防止する。図6(b)に、トレイ50のを裏面図を示す。トレイ50の裏面にはサブダンパ係合部30が4カ所に設けられている。
【0031】
図7(a)に、トレイ50に載置されたのカートリッジ41のシャッター42閉鎖時の平面図を示す。シャッター42を解放するためトレイ50には、シャッターオープナー56が設けられている。シャッターオープナー56はシャッター42と係合している。シャッターオープナー56の上には回転自在なオープナーローラー57が設けられており、光ディスク装置100の外装の上面にシャッターオープナー56を左右に駆動する図示を省略したガイドカムと係合している。ガイドカムの形状はトレイ50のローディング動作時にはシャッター42を開放し、イジェクト動作持にはシャッター42を閉鎖するカム形状を有している。シャッターオープナー56にはオープナースプリング58が設けられ、常時シャッター42を解放する方向に引張り力が働いている。
【0032】
図7(b)に、トレイ50に載置されたのカートリッジ41のシャッター42開放時の平面図を示す。トレイ50がローディング動作を完了した場合、オープナースプリング58によって、シャッターオープナー56はガイドカムに沿って移動するることでシャッター42を開放する。この時、ガイドカムとシャッターオープナー56の係合が離れても、オープナースプリング58の引張り力でシャッター42の解放状態を保つことが可能となっている。
【0033】
図5Aでは、トレイ50上に設けられた位置決めピン55に位置決め穴43を係合させながらカートリッジ41を載置し、トレイ50を押し込むか図示を省略したローディング/イジェクトスイッチを押すと、トレイ50はカートリッジ41を保持したまま光ディスク装置内100にローディングされる。カートリッジ41に内包されることで光ディスク10は、記録面にほこりや指紋の付着することから回避することが可能となる。データの記録および再生を行うために光ディスク装置100にローディングされた時、カートリッジ41中央部のシャッター42を解放してディスク10を露出させる。
【0034】
図5Bでは、ディスク10を内包するカートリッジ40の載置されたトレイ50が、光ディスク装置100の終端まで完全にローディングされる直前の状態である。トレイ50がローディング動作を完了させる直前にカイドカムの案内はなくなり、オープナーローラー57はオープナースプリング58の引張り力だけでシャッター42の開放状態を維持している。この時には、トラバースユニット11は光ディスク装置100内で下方に待避した状態を保っている。トレイ50のローディング完了後、トラバースユニット11は図示を省略したトラバースユニットの昇降手段によって、トレイ50を押し上げる方向に上昇する。トレイ50のローディング動作およびイジェクト動作に伴い、光ディスク装置100に対してトレイ50を前後方向にガイドするレールの図示は省略している。
【0035】
図5Cでは、トラバースユニット11上に支持されたサブダンパA19は、光ディスク10の載置されたトレイ50を上方へ押上げ浮上支持する。光ディスク装置100の内側の天井面にはサブダンパC21が設けられており、トレイ50と一体的に浮上支持されたカートリッジ41の上面を押圧する。この時トレイ50は光ディスク装置100に設けられたトレイのガイドとの係合から解放されサブダンパA19とサブダンパC21だけで浮上支持された状態となる。なお、図5Bに示したように、トレイ50にカートリッジ41が載置されていない場合、サブダンパC21はトレイ50を押圧することなく、トレイ50はサブダンパA19だけで浮上支持される。
【0036】
トレイ50の浮上支持と同時にスピンドルモータ12は、カートリッジ41に内包された光ディスク10をカートリッジ41内で浮上支持する。合わせて上方からクランパ23が光ディスク10をスピンドルモータ12に対してクランプ(固定)する。
【0037】
光ディスク10のアンバランスによる振動を解消するため、サブダンパA19とサブダンパC21によって弾性的に浮上支持されるトレイ50およびカートリッジ41が、動吸振器のカウンタウェイトとしてトラバースユニット11の振動方向と逆方向とに振動し、トラバースユニット11、光ディスク10、光ピックアップ14および光ディスク装置100に発生する振動を低減する。
【0038】
サブダンパC21は円柱の形状を有している。この形状を有することで、カートリッジ41上面に対して安定した接触状態を保つことが可能となる。なおサブダンパC21は図5において円柱形状で示しているが、使用するゴム硬度およびトレイ50の重量および動吸振器として効果を得たい光ディスク10の回転数に応じて、角柱または円錐台形状としても同等の効果を得ることができる。
【0039】
サブダンパC21はシリコンゴムなどの化学的に安定した材料で成形されたものを使用する。なおサブダンパC21に用いられる材料は、メインダンパ18およびサブダンパA19と同様にシリコンゴムに限定されるものではなく、ブチルゴム、クロロプレンゴム、EPDMなどのゴムを使用しても同等の効果を得ることができる。なお、サブダンパC21は、単一のゴム材料だけでなくゴム材料と金属バネまたは樹脂バネとの複合であっても同等の効果を得ることができる。
【0040】
なお、カートリッジ41が載置されていない場合、トレイ50はサブダンパA19だけでトレイ50を浮上支持し、動吸振器のカウンタウェイトとしてトラバースユニット11の振動方向と逆方向に振動しトラバースユニット11、光ディスク10、光ピックアップ14および光ディスク装置100に発生する振動を低減する。
【0041】
カートリッジ41の有無でサブダンパC21によるトレイ50の支持形態を変更する理由は、第1に、動吸振器のカウンターウェイトとしてトレイ50が振動した場合、トレイ50に対してカートリッジ41の水平方向および垂直方向の振動が発生しトレイとの間で衝突音が発生することを防止するためである。第2に、カートリッジ41の有無によってサブダンパA19で浮上支持されたトレイ50の重量が変化することで、サブダンパA19の共振周波数が変化し、トレイ50の振動による動吸振器の性能低下を防止するためである。もう少し詳細に説明すれば、カートリッジ41の重量増加分によるサブダンパA19の共振周波数の低下をサブダンパC21の補助によって防止し、カートリッジ41のない場合と同一の共振周波数でトレイ50とカートリッジ41が共振する構成を提供するものである。
(実施の形態4)
本発明の別の実施形態について図8A、図8B及び、図8Cを用いて説明する。図8A、図8B及び図8Cは、本実施形態における振動低減機構である動吸振器のカウンターウェイトを、カートリッジ搭載が可能なトレイと兼用した場合の光ディスク装置の側面断面図である。本実施形態は、トラバースユニット11の昇降手段と待避状態が実施の形態3と異なる場合である。すなわち、実施の形態3ではトラバースユニット11が垂直に上下していたが、本実施形態ではトラバースユニット11は図示を省略したトラバースユニット昇降手段によって、前側だけが下方へ待避しトレイ50との干渉を回避する構成となっている。その他の構成及び動作は実施の形態3と同様であるため省略する。
【0042】
また、サブダンパA19とサブダンパ係合部30およびサブダンパB20とサブダンパ係合部B31の形状および動作は実施の形態2と同等であるため省略する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の光ディスク装置の振動低減機構は、偏重心の大きい光ディスクを高速で回転させ記録再生を実施する際の光ディスク装置に発生する振動を低減する機構において部品点数の削減と光ディスク装置の薄型化実現に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1A】本発明の光ディスク装置の一実施形態におけるローディング前の側面断面図
【図1B】同実施形態におけるローディング完了時の側面断面図
【図1C】同実施形態におけるチャッキング完了時の側面断面図
【図2】(a)は同実施形態におけるサブダンパとトレイとの係合前を示す部分断面図、(b)はサブダンパとトレイとの係合後を示す部分断面図
【図3A】本発明の光ディスク装置の他の実施形態におけるローディング前の側面断面図
【図3B】同実施形態におけるローディング完了時の側面断面図
【図3C】同実施形態におけるチャッキング完了時の側面断面図
【図4A】(a)は同実施形態における前側のサブダンパとトレイとの係合前を示す部分断面図、(b)は後側のサブダンパとトレイとの係合前を示す部分断面図
【図4B】(a)は同実施形態における前側のサブダンパとトレイとの係合後を示す部分断面図、(b)は後側のサブダンパとトレイとの係合後を示す部分断面図
【図5A】本発明の光ディスク装置の別の実施形態におけるローディング前の側面断面図
【図5B】同実施形態におけるローディング完了時の側面断面図
【図5C】同実施形態におけるチャッキング完了時の側面断面図
【図6】(a)は同実施形態における光ディスク装置のトレイ平面図、(b)はトレイ裏面図
【図7】(a)は同実施形態におけるシャッタ閉塞時のトレイ平面図、(b)はシャッタ開放時のトレイ平面図
【図8A】本発明の光ディスク装置の他の実施形態におけるローディング前の側面断面図
【図8B】同実施形態におけるローディング完了時の側面断面図
【図8C】同実施形態におけるチャッキング完了時の側面断面図
【図9A】従来の光ディスク装置におけるローディング前の側面断面図
【図9B】同光ディスク装置におけるローディング完了時の側面断面図
【図9C】同光ディスク装置におけるチャッキング完了時の側面断面図
【符号の説明】
【0045】
10 光ディスク
11 トラバースユニット
12 スピンドルモータ
13 メインベース
14 光ピック
16 ガイド軸
18 メインダンパ
19 サブダンパA
20 サブダンパB
22 中間シャーシ
23 クランパ
30 サブダンパ係合部
31 サブダンパ係合部B
41 カートリッジ
42 シャッター
43 位置決め穴
50 トレイ
51 カートリッジ載置面
52 ディスク載置面A
53 ディスク載置面B
54 開口部
55 位置決めピン
56 シャッターオープナー
57 オープナーローラー
58 オープナースプリング
100 光ディスク装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクを回転させるスピンドルモータと、
装置上部に回転自在に保持されるクランパと、
前記光ディスクのデータ記録面にレーザ光を照射し、データの記録再生を行う光ピックアップと、
前記スピンドルモータと前記光ピックアップとを保持するメインベースと、
前記トラバースベースを弾性的に支持するメインダンパと、
前記光ディスクを上面に載置し、光ディスク装置内にローディング動作およびイジェクト動作を行うトレイと、
前記トレイの前記ローディング動作および前記イジェクト動作を実現するローディング駆動手段と、
前記メインベースの上下動作を実現する昇降手段と、
前記トレイを前記メインベース対して弾性的に支持する第1のサブダンパとを有し、
前記トレイはローディング完了後に、前記メインベースの上昇動作で前記第1のサブダンパだけを介して上方向に浮上支持される時、ほぼ同時に前記光ディスクは前記スピンドルモータによって前記トレイから浮上し、前記クランパによって前記スピンドルモータにチャッキングされることを特徴とする光ディスク装置の振動低減機構。
【請求項2】
光ディスク装置の最高回転数において、前記トレイが弾性的に浮上支持された状態で、前記トレイの共振が前記第1のサブダンパによって生じるように設定されていることを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置の振動低減機構。
【請求項3】
前記トレイが第1のサブダンパを介してメインベースに浮上支持された際に、前記光ディスク装置上面に設けられた第2のサブダンパによって前記トレイを上面から押圧され、
前記トレイが前記第1のサブダンパと前記第2のサブダンパとによって上下から弾性的に支持されることを特徴とする請求項1または2何れかに記載の光ディスク装置の振動低減機構。
【請求項4】
前記トレイにはカートリッジの位置決め手段と、カートリッジのシャッター開閉手段を有し、
前記光ディスク装置上面には第3のサブダンパが設けられ、
前記トレイのイジェクト動作完了後に、前記カートリッジ位置決め手段で前記トレイに位置決めされた光ディスクを内包する前記カートリッジは、前記トレイのローディング動作中に前記シャッター開閉手段で前記カートリッジのシャッターは開放され、ローディング完了後に前記トレイは下面から前記第1のサブダンパを介して弾性的に浮上支持される際に、前記第3のサブダンパは、前記カートリッジの上面を押圧し、前記カートリッジが位置決めされた前記トレイを上下から弾性的に浮上支持し、カートリッジに内包されない光ディスクをローディングした場合には、前記第3のサブダンパはトレイを押圧しないことを特徴とする請求項1または2何れかに記載の光ディスク装置の振動低減機構。
【請求項5】
光ディスク装置の最高回転数において、光ディスクを内包するカートリッジを載置した前記トレイが弾性的に浮上支持された状態で、前記トレイの共振が前記第1のサブダンパと前記第3のサブダンパとによって生じるように設定され、カートリッジに内包されないディスクの場合には、前記トレイが弾性的に浮上支持された状態で、前記トレイの共振が前記第1のサブダンパによって生じるように設定されていることを特徴とする請求項4記載の光ディスク装置の振動低減機構。
【請求項6】
前記第1のサブダンパおよび前記第2のサブダンパは、前記トレイの支持面に向かって直径が小さくなるテーパ状の円錐台形状であり、
前記トレイには、前記第1のサブダンパおよび前記第2のサブダンパに向かって直径が大きくなるカップ状の位置決め穴が設けられ、
前記メインベースの上昇動作で、前記第1のサブダンパおよび前記第2のサブダンパが前記位置決め穴に挿入されることを特徴とする請求項1から5何れかに記載の光ディスク装置の振動低減機構。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【公開番号】特開2006−252632(P2006−252632A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65251(P2005−65251)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】