説明

光ディスク装置及びディスク領域判定方法

【課題】光ディスク内のデータ領域とPIC領域の領域判定を高精度に行い、所望の領域へのアクセス時間を短縮すること。
【解決手段】ウォブル信号生成部10は、光ディスク1のトラックからウォブル信号を抽出する。波形解析部12は、抽出されたウォブル信号の波形が三角波に近いか方形波に近いかを解析して波形判定信号を出力する。マイコン13は、波形判定信号が三角波を示す場合は現在位置がデータ領域であり、方形波を示す場合は現在位置がPIC領域であると判定する。波形解析部12は、ウォブル信号をレベルの異なる第1、第2のスライスレベルで二値化して2つの二値化信号を生成し、2つの二値化信号のデューティ比の差を閾値と比較してウォブル信号の波形が三角波に近いか方形波に近いかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクにデータを記録再生する光ディスク装置及び光ディスク内のデータ領域を精度良く判定するディスク領域判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
BDディスクにおいては、トラックに刻まれたウォブル信号から光ディスク上の現在位置(アドレス情報)を読み取りながら、目的の位置にアクセス(シーク動作)を行いデータの記録再生を行う。このウォブル信号は、ユーザデータを記録するデータ領域だけでなく、当該光ディスクのディスク情報を永久に保存するためのPIC(Permanent Information Control)領域にも形成されている。PIC領域はデータ領域よりも内周側にあるがデータ領域の最内周から至近距離にある。このため、データ領域最内周にアクセスを行う際に、対物レンズが誤ってPIC領域に入り込んでしまうことが発生する。よって、データ領域とPIC領域とを識別する方法が要求される。
【0003】
特許文献1では、トラッキングエラー(TE)信号の振幅の大小からデータ領域とPIC領域とを識別する。すなわち、TE信号の振幅が所定値を超えたらPIC領域と判定するものである。これは、PIC領域はデータ領域よりもトラックピッチが大きく、よってTE振幅も大きくなることを利用したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−20925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、TE信号の振幅に基づきデータ領域とPIC領域とを識別するものであるが、TE振幅はトラックピッチだけでなくトラックの深さ(グルーブ深さ)にも影響されるので、トラック深さが規定値から外れた粗悪ディスクでは領域判定に誤りが発生する恐れがある。その結果、所望の領域へのシーク動作に失敗し再度シーク動作をやり直すことになり、アクセス時間が増大する原因となる。また、データ領域とPIC領域とでは異なる変調が施されているので、ウォブル信号に書き込まれたアドレス情報を読み取るためには、それぞれ異なる復調方式を用いなければならない。つまり、復調方式を選択するためにも、データ領域とPIC領域とを識別する必要がある。
【0006】
本発明の目的は上記課題を鑑み、光ディスク内のデータ領域とPIC領域の領域判定を高精度に行い、所望の領域へのアクセス時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光ディスク装置は、回転する光ディスクにレーザ光を照射し光ディスクから信号を検出する光ピックアップと、光ピックアップを光ディスクの半径方向に移動させるスレッドモータと、光ピックアップの検出信号を処理して、光ピックアップとスレッドモータとを制御するデジタルシグナルプロセッサと、を備え、デジタルシグナルプロセッサは、光ピックアップがトレースしている光ディスクのトラックからウォブル信号を抽出するウォブル信号生成部と、抽出されたウォブル信号の波形が三角波に近いか方形波に近いかを解析して波形判定信号を出力する波形解析部と、波形判定信号に基づきトレースしている位置が光ディスク内のどの領域であるかを判定するマイコンと、を有する。
【0008】
ここに前記波形解析部は、ウォブル信号をレベルの異なる第1、第2のスライスレベルで二値化し2つの二値化信号を生成する第1、第2のコンパレータと、生成された2つの二値化信号のデューティ比の差を求める差動アンプと、デューティ比の差を閾値と比較してウォブル信号の波形が三角波に近いか方形波に近いかを示す波形判定信号を出力する第3のコンパレータと、を有する。
【0009】
さらに前記波形解析部は、ウォブル信号からトップエンベロープ値を検出するトップエンベロープ検出部と、ウォブル信号からボトムエンベロープ値を検出するボトムエンベロープ検出部とを有し、検出されたトップエンベロープ値とボトムエンベロープ値に基づき、ウォブル信号の振幅に対して所定の割合のレベルを有する第1、第2のスライスレベルを生成する。
【0010】
前記マイコンは、波形判定信号が三角波を示す場合はトレースしている位置がデータ領域であり、方形波を示す場合はトレースしている位置がPIC(Permanent Information Control)領域であると判定する。
【0011】
前記デジタルシグナルプロセッサは、ウォブル信号を再生してアドレス情報を検出するアドレス検出部を有し、前記マイコンは、光ピックアップがトレースしている領域に応じてアドレス検出部の再生条件を設定する。
【0012】
また本発明は、光ピックアップがトレースしている光ディスク内の領域を判定するディスク領域判定方法であって、光ピックアップがトレースしている光ディスクのトラックからウォブル信号を抽出するステップと、抽出されたウォブル信号の波形が三角波に近いか方形波に近いかを解析するステップと、解析結果に基づきトレースしている位置が光ディスク内のどの領域であるかを判定するステップと、を備える。
【0013】
また本発明は、光ピックアップがトレースしている光ディスクのトラックからアドレス情報を取得するアドレス情報取得方法であって、光ピックアップがトレースしている光ディスクのトラックからウォブル信号を抽出するステップと、抽出したウォブル信号の波形が三角波に近いか方形波に近いかを解析するステップと、解析結果に基づきトレースしている位置がデータ領域であるかPIC領域であるかを判定するステップと、判定した領域に応じてウォブル信号の再生条件を設定するステップと、ウォブル信号からアドレス情報を取得するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光ディスク内のデータ領域とPIC領域との領域判定を高精度に行うことができ、所望の領域へのアクセス時間が短縮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による光ディスク装置の一実施例を示す構成ブロック図である。
【図2】光ディスクのレイアウトとこれに刻まれたウォブル形状を説明する図である。
【図3】波形判定信号生成部の内部構成の一例を示す図である。
【図4】図3の波形判定信号生成部の各位置での信号波形を示す図である。
【図5】従来のシーク動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】本実施例によるシーク動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明による光ディスク装置の一実施例を示す構成ブロック図である。
光ディスク装置は、BDなどの光ディスクの所望位置にデータを記録および再生するものであるが、この図では、主に光ディスクのウォブル信号からアドレス情報を読み出して光ピックアップを目的アドレスに移動させるシーク機能に関わる構成要素を示し、他の要素については省略している。
【0017】
装着された光ディスク1はスピンドルモータ2により回転駆動される。光ピックアップ3は、対物レンズを介して光ディスク1にレーザ光を照射しデータを記録再生し、その反射光を光検出器にて電気信号に変換して出力する。光ピックアップ3の出力信号は、デジタルシグナルプロセサ(DSP)7に送られる。光ピックアップ3の位置は、スレッドモータ4の回転により光ディスク1の半径方向に移動する。スレッドモータ駆動部5は、スレッドモータ4を回転駆動する。アクチュエータ駆動部6は光ピックアップ3内のアクチュエータを駆動し、光ディスク1に対する対物レンズの位置(トラッキング位置、フォーカス位置)を調整する。
【0018】
DSP7には、トラッキングエラー信号/フォーカスエラー信号生成部8、ウォブル信号生成部10を有し、光ピックアップ3の検出信号からそれぞれトラッキングエラー(TE)信号/フォーカスエラー(FE)信号、ウォブル信号を生成する。TE信号及びFE信号は、アンプ/フィルター部9によりゲインと位相が補正されて、トラッキング制御信号およびフォーカス制御信号となってアクチュエータ駆動部6に送られる。一方ウォブル信号は、アドレス検出部11にてPLLがかけられた後で復調されてアドレス情報が検出される。また波形解析部12は、ウォブル信号を入力してその波形が三角波に近いか方形波に近いかを解析して、波形判定信号を出力する。マイコン13は、波形判定信号に基づき当該領域がデータ領域かPIC(Permanent Information Control)領域かを判定する。そして、領域の判定結果とアドレス情報に基づき、スレッドモータ駆動部5及びアクチュエータ駆動部6に制御信号を送る。またマイコン13は、領域の判定結果に応じて、アドレス検出部11の再生条件を設定する。さらにマイコン13は、ホストPC(パーソナルコンピュータ)14との間で、光ディスク1に記録または再生するデータやコマンドを伝送する。
【0019】
次に、本実施例の光ディスク装置におけるシーク動作の概要を説明する。
アクチュエータ駆動部6には、トラッキング制御信号とフォーカス制御信号によりサーボがかけられ(サーボON状態)、光ピックアップ3からのレーザ光は特定のトラック上に結像しているとする。ホストPC14から、光ディスク上の指定されたアドレス(目的アドレス)にデータを記録(または再生)するコマンド(指示)を受けたとする。指示を受けたマイコン13は現在アドレスを読み出し、目的アドレスと現在のアドレスとの距離(トラック数)を計算する。
【0020】
目的アドレスまでの距離(トラック数)が所定値より大きい場合は、マイコン13は一旦アクチュエータ駆動部6へのサーボ制御を中断させ(サーボOFF)、スレッドモータ駆動部5を介してスレッドモータ4を駆動し、光ピックアップ3を目的アドレス付近のトラックに移動させる。その後アクチュエータ駆動部6を介しトラッキングサーボをかけてトラックをトレースさせる(サーボON)。
【0021】
ウォブル信号生成部10により現在のトラックからウォブル信号を抽出し、アドレス検出部11にてアドレス情報を検出する。検出したアドレス値が目的アドレスから何トラック離れているかを計算し、マイコン13は一旦サーボ制御を中断させ、アクチュエータ駆動部6を介して対物レンズを目的アドレス付近に移動させる(トラックジャンプ)。その後トラッキングサーボをかけてトラックをトレースさせる。再度ウォブル信号からアドレス情報を検出し、検出したアドレス値が目的アドレスならシーク動作を終了する。目的アドレスからずれている場合は再度対物レンズを移動させ、目的アドレスに達するまで繰り返す。
【0022】
このようにシーク動作では、現在アドレスから目的アドレスまでの距離(トラック数)を計算し、その距離に応じてスレッドモータ4とアクチュエータ駆動部6を使い分けることで、光ピックアップ3の対物レンズを目的アドレスまで到達させることができる。このとき、現在のアドレス情報はウォブル信号から取得するが、ウォブル信号は、ユーザデータを記録するデータ領域だけでなく、当該光ディスクのディスク情報を永久に保存するためのPIC領域にも形成されているので、これらを正しく識別して取得する必要がある。
【0023】
図2は、光ディスクのレイアウトとこれに刻まれたウォブル形状を説明する図である。
光ディスク(BD)1は、内周側から外周側に向かってBCA(Burst Cutting Area)、リードイン、ユーザデータ31、リードアウトの各領域で構成され、リードイン領域はPIC領域32を含んでいる。PIC領域32はデータ領域31よりも内周側にあるが、データ領域31の最内周からは至近距離にある。このため、データ領域31の最内周付近へシーク動作を行おうとしたとき、誤ってPIC領域32まで移動する恐れがある。
【0024】
ユーザデータ領域(データ領域)31およびリードイン領域内のPIC領域32とINFO1 INFO2 OPC領域にはウォブルが形成されている。データ領域31とINFO1 INFO2 OPC領域におけるウォブル形状はsin形状(三角形状)であるのに対し、PIC領域32におけるウォブル形状は方形状となっている。よって、両者を再生したときのウォブル信号の波形は異なるものとなる。本実施例では、データ領域31とPIC領域32のウォブル信号の波形の違いを利用して、データ領域であるかPIC領域であるかを判定する。
【0025】
データ領域31でのアドレス情報はトラックに埋め込まれてあり、ウォブル信号から抽出が可能である。PIC領域32も同様にトラックにアドレス情報が埋め込まれてあり、ウォブル信号から抽出が可能である。しかしながら、データ領域31とPIC領域32ではフォーマットが異なるため、それぞれのフォーマットに合った設定をしなければ、アドレス情報を正常に検出することはできない。具体的には、データ領域31ではMSK変調を復調するための設定をする必要があり、PIC領域32では、バイフェーズ変調を復調するための設定をする必要がある。本実施例では、データ領域であるかPIC領域であるかの判定結果に応じて、マイコン13はアドレス検出部11の再生条件を設定する。
【0026】
図3は、波形解析部12の内部構成の一例を示す図である。
波形解析部12は、入力するウォブル信号のトップエンベロープを検出するトップエンベロープ検出部21と、ボトムエンベロープを検出するボトムエンベロープ検出部22、2つのスライスレベルで二値化する第1、第2のコンパレータ23,24、第1、第2のLPF25,26、差動アンプ27、およびスレッシュ電圧(閾値)と比較して波形判定信号Kを出力する第3のコンパレータ28で構成される。波形判定信号Kはマイコン13へ送られ、現在の領域がデータ領域であるかPIC領域であるかが判定される。
【0027】
波形解析部12では、ウォブル信号の波形が三角波に近いか方形波に近いかを解析して、波形判定信号を出力する。そのため、入力するウォブル信号をレベルの異なる2つのスライスレベルで二値化し、2つの二値化信号を生成する。そして、2つの二値化信号のデューティ比の差を閾値と比較して三角波に近いか方形波に近いかを判定して、それを示す波形判定信号を出力する。すなわち、ウォブル波形が三角波の場合デューティ比の差が大きくなるのに対し、ウォブル波形が方形波の場合デューティ比の差が小さくなることを利用する。トップエンベロープ検出部21とボトムエンベロープ検出部22は、入力するウォブル信号の振幅が変動しても振幅に対して所定の割合のスライスレベルを生成するためのものである。よって、光ディスク上のトラックの深さが変動してウォブル信号の振幅が変動しても、得られるデューティ比は影響を受けることがなく、データ領域とPIC領域とでそれぞれ決まった値を示す。その結果、データ領域とPIC領域の領域判定を高精度に行うことができる。
【0028】
図4は、図3の波形解析部の各位置(A〜K)での信号波形を示す図であり、左側はPIC領域、右側はデータ領域の場合である。以下、各信号波形を波形解析部12の動作とともに説明する。
【0029】
信号Wは入力するウォブル信号の波形であり、PIC領域では方形波となり、データ領域では三角波となる。信号Aはトップエンベロープ検出部21で検出したトップエンベロープ値を、信号Bはボトムエンベロープ検出部22で検出したボトムエンベロープ値を示す。信号Cは第1のスライスレベル、信号Dは第2のスライスレベルであり、これらは、入力するウォブル信号の振幅(A−B)を抵抗により分圧することで生成される。例えば第1のスライスレベル(信号C)は振幅(A−B)の70%のレベル、第2のスライスレベル(信号D)は振幅(A−B)の30%のレベルとし、振幅(A−B)が変動しても所定の割合に設定される。
【0030】
信号Eは、第1のコンパレータ23にてウォブル信号Wを第1のスライスレベルCによりスライスした二値化信号であり、信号Fは、第2のコンパレータ24にてウォブル信号Wを第2のスライスレベルDによりスライスした二値化信号である。PIC領域においてはウォブル信号が方形波のため、信号EのHi期間(信号Wがスライスレベルより高い期間)のデューティ比と信号FのHi期間のデューティ比とはほぼ等しくなる。これに対しデータ領域においてはウォブル信号が三角波のため、信号EのHi期間のデューティ比は信号FのHi期間のデューティ比よりも小さくなる。
【0031】
信号Gは、第1のLPF25にて二値化信号Eを直流電圧に変換したもので、信号Hは、第2のLPF26にて二値化信号Fを直流電圧に変換したものである。変換後の直流電圧は、デューティ比の大きさに比例する。信号Iは、差動アンプ27にて信号Gと信号Hの電圧差(H−G)を算出したものである。第3のコンパレータ28では、信号Iを予め設定されたスレッシュ電圧Jと比較し、波形判定信号Kを出力する。
【0032】
PIC領域においては波形判定信号KはLoレベルとなる。PIC領域では信号電圧I、すなわち電圧差(H−G)が低く、スレッシュ電圧Jを越えないからである。一方、データ領域においては波形判定信号Kは、Hiレベルとなる。データ領域では信号電圧I、すなわち電圧差(H−G)が高くなり、スレッシュ電圧Jを越えるからである。
【0033】
第3のコンパレータ28の出力である波形判定信号Kは、マイコン13に入力される。マイコン13は信号KがHiレベルならデータ領域であり、LoレベルならPIC領域であると判定する。
【0034】
上記した図3と図4は波形解析部12の構成・動作の一例であり、入力するウォブル信号の波形が三角波に近いか方形波に近いかを判定できるものであれば適用できる。
【0035】
次に、本実施例の領域判定機能を利用した光ディスク装置の動作の例を説明する。具体例として、データ領域最内周へシークしようとして誤ってPIC領域に進入してしまった場合を想定し、従来方法と本実施例の方法とを比較する。
【0036】
図5は、比較のために従来のシーク動作の一例を示すフローチャートである。
データ領域最内周位置へのシーク動作開始の指示を受けると、現在の光ピックアップ位置(レンズ位置)と目的アドレス位置との距離を算出し、光ピックアップを移動させる。(S101)。光ピックアップの移動が完了したら、トラッキングサーボをONする(S102)。そして、現在トレース中のトラックからウォブル信号を抽出し(S103)、抽出したウォブル信号から現在アドレスを検出する(S104)。ここで、アドレスの取得に成功したかどうかを判定する(S105)。アドレス取得に成功していれば(S105でYes)、現在アドレスが目的アドレスかどうか判定する(S106)。目的アドレスであればシーク動作を終了する。目的アドレスでなければ(S106でNo)、トラッキングサーボをOFFし(S109)、現在アドレスから目的アドレスにレンズを移動させる(S110)。そしてS102に戻り、アドレスを検出し目的アドレスに到達するまで繰り返す。
【0037】
ここで上記S101の工程で、光ピックアップがデータ領域ではなく誤ってPIC領域に進入したとする。その場合、S102の工程でトラッキングサーボONに成功しても、アドレスを取得することはできない(S105でNo)。これは、アドレス再生条件の設定がデータ領域用の設定となっているからである。アドレス取得に失敗した場合は、S103に戻り、リトライ動作として再度アドレス検出を試みる。その際、リトライ回数をカウントする(S107)。しかし、アドレス再生条件がデータ領域用に設定されたままなので、アドレスを正常に取得することはできない。このようにして、S107でのリトライ回数が規定回数(例えば4回)に達すると、特殊リカバー処理に切り替える(S108)。特殊リカバー処理では、フォーカスサーボを外し、光ピックアップを基準位置に戻してシーク動作を最初から行うことになる。
【0038】
このように、従来のシーク動作では、データ領域に移動すべき光ピックアップが誤ってPIC領域に進入した場合には、現在アドレスの取得ができず(誤ってPIC領域に進入したことが分からない)、リトライ動作や特殊リカバー処理のために多大な時間を費やすことになる。
【0039】
図6は、本実施例によるシーク動作を示すフローチャートである。
データ領域最内周位置へのシーク動作開始の指示を受けると、現在の光ピックアップ位置(レンズ位置)と目的アドレス位置との距離を算出し、光ピックアップを移動させる。(S201)。光ピックアップの移動が完了したら、トラッキングサーボをONする(S202)。そして、現在トレース中のトラックからウォブル信号を抽出する(S203)。ここまでは、前記図5の工程S101〜S103と同様である。
【0040】
次に、波形解析部12により、抽出したウォブル信号の波形を示す波形判定信号Kを取得する(S204)。マイコン13は、波形判定信号Kのレベル(Hi/Lo)から現在の領域を判定する(S205)。判定の結果現在位置がデータ領域であれば、アドレス検出部11に対しデータ領域用の再生条件を設定する(S206)。判定の結果現在位置がPIC領域であれば、アドレス検出部11に対しPIC領域用の再生条件を設定する(設定を変更する)(S209)。
【0041】
現在位置がデータ領域の場合は(S205でYes)、アドレス検出部11によりウォブル信号から現在アドレスを検出する(S207)。ここで、アドレス検出部11はデータ領域用の再生条件が設定されているので、アドレス取得に成功することが期待される。そして、現在アドレスが目的アドレスかどうか判定する(S208)。目的アドレスであればシーク動作を終了する。目的アドレスでなければ(S208でNo)、トラッキングサーボをOFFし(S211)、現在アドレスから目的アドレスにレンズを移動させる(S212)。そしてS202に戻り、アドレスを検出し目的アドレスに到達するまで繰り返す。
【0042】
ここで上記S201の工程で、光ピックアップがデータ領域ではなく誤ってPIC領域に進入したとする。現在位置がPIC領域の場合にも(S205でNo)、抽出したウォブル信号から現在アドレスを検出する(S210)。そのときアドレス検出部11はPIC領域用の再生条件が設定されているので、アドレス取得に成功することが期待される。その結果、誤ってPIC領域に進入したことが判明する。この場合にはS201に戻り、現在の光ピックアップ位置と目的アドレス位置との距離を算出し、光ピックアップをPIC領域からデータ領域内の目的アドレスに移動させ、再度シーク動作を実行する。
【0043】
このように本実施例によれば、上記S201の工程で光ピックアップがデータ領域ではなく誤ってPIC領域に進入したとしても、S209の工程でPIC領域用の再生条件に変更することで、PIC領域内の現在アドレスを正しく取得することができる(誤ってPIC領域に進入したことが分かる)。よって、図5で述べたアドレス取得の失敗に伴うリトライ動作や特殊リカバー処理が不要となるので、シーク動作における無駄な時間が発生することがなくなる。
【0044】
上記実施例では、目的アドレスがデータ領域内であって誤ってPIC領域に進入した場合を想定したが、逆の場合、すなわち目的アドレスがPIC領域内であって誤ってデータ領域に進入した場合にも適用できることは言うまでもない。また、光ディスクとしてBDディスクを例に取り上げたが、光ディスク内でウォブル信号の波形が異なる複数の領域が存在する光ディスクであれば、本実施例の領域判定方法が適用できることは言うまでもない。
【0045】
本実施例によれば、ウォブル信号の波形形状の違いからデータ領域とPIC領域を容易に判定し、また判定結果に応じてデータ領域とPIC領域それぞれに適した再生条件を設定するので、アドレス取得の失敗がなくなり、シーク動作を迅速に実行することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…光ディスク、
2…スピンドルモータ、
3…光ピックアップ、
4…スレッドモータ、
5…スレッドモータ駆動部、
6…アクチュエータ駆動部、
7…デジタルシグナルプロセサ(DSP)、
8…トラッキングエラー信号/フォーカスエラー信号生成部、
9…アンプ/フィルター部、
10…ウォブル信号生成部、
11…アドレス検出部、
12…波形解析部、
13…マイコン、
14…ホストPC、
21…トップエンベロープ検出部、
22…ボトムエンベロープ検出部、
23…第1のコンパレータ、
24…第2のコンパレータ、
25…第1のLPF、
26…第2のLPF、
27…差動アンプ、
28…第3のコンパレータ、
31…ユーザデータ領域(データ領域)、
32…PIC領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクにデータを記録再生する光ディスク装置において、
回転する上記光ディスクにレーザ光を照射し該光ディスクから信号を検出する光ピックアップと、
該光ピックアップを上記光ディスクの半径方向に移動させるスレッドモータと、
上記光ピックアップの検出信号を処理して、上記光ピックアップと上記スレッドモータとを制御するデジタルシグナルプロセッサと、を備え、
該デジタルシグナルプロセッサは、
上記光ピックアップがトレースしている上記光ディスクのトラックからウォブル信号を抽出するウォブル信号生成部と、
抽出されたウォブル信号の波形が三角波に近いか方形波に近いかを解析して波形判定信号を出力する波形解析部と、
該波形判定信号に基づきトレースしている位置が上記光ディスク内のどの領域であるかを判定するマイコンと、
を有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1記載の光ディスク装置であって、
前記波形解析部は、
前記ウォブル信号をレベルの異なる第1、第2のスライスレベルで二値化して2つの二値化信号を生成する第1、第2のコンパレータと、
上記生成された2つの二値化信号のデューティ比の差を求める差動アンプと、
上記デューティ比の差を閾値と比較して前記ウォブル信号の波形が三角波に近いか方形波に近いかを示す前記波形判定信号を出力する第3のコンパレータと、
を有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項2記載の光ディスク装置であって、
前記波形解析部は、さらに、
前記ウォブル信号からトップエンベロープ値を検出するトップエンベロープ検出部と、
前記ウォブル信号からボトムエンベロープ値を検出するボトムエンベロープ検出部とを有し、
検出されたトップエンベロープ値とボトムエンベロープ値に基づき、前記ウォブル信号の振幅に対して所定の割合のレベルを有する前記第1、第2のスライスレベルを生成することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項1記載の光ディスク装置であって、
前記マイコンは、前記波形判定信号が三角波を示す場合はトレースしている位置がデータ領域であり、方形波を示す場合はトレースしている位置がPIC(Permanent Information Control)領域であると判定することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
請求項1記載の光ディスク装置であって、
前記デジタルシグナルプロセッサは、前記ウォブル信号を再生してアドレス情報を検出するアドレス検出部を有し、
前記マイコンは、前記光ピックアップがトレースしている領域に応じて上記アドレス検出部の再生条件を設定することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
光ピックアップがトレースしている光ディスク内の領域を判定するディスク領域判定方法において、
上記光ピックアップがトレースしている上記光ディスクのトラックからウォブル信号を抽出するステップと、
抽出されたウォブル信号の波形が三角波に近いか方形波に近いかを解析するステップと、
該解析結果に基づきトレースしている位置が光ディスク内のどの領域であるかを判定するステップと、
を備えることを特徴とするディスク領域判定方法。
【請求項7】
請求項6記載のディスク領域判定方法であって、
前記ウォブル信号の波形を解析するステップは、
前記ウォブル信号をレベルの異なる第1、第2のスライスレベルで二値化して2つの二値化信号を生成するステップと、
上記生成された2つの二値化信号のデューティ比の差を求めるステップと、
上記デューティ比の差を閾値と比較して前記ウォブル信号の波形が三角波に近いか方形波に近いかを判定するステップと、
を有することを特徴とするディスク領域判定方法。
【請求項8】
請求項7記載のディスク領域判定方法であって、
前記ウォブル信号の波形を解析するステップは、さらに、
前記ウォブル信号からトップエンベロープ値とボトムエンベロープ値を検出するステップと、
検出されたトップエンベロープ値とボトムエンベロープ値に基づき、前記ウォブル信号の振幅に対して所定の割合のレベルを有する前記第1、第2のスライスレベルを生成するステップと、
を有することを特徴とするディスク領域判定方法。
【請求項9】
請求項6記載のディスク領域判定方法であって、
前記領域を判定するステップでは、前記ウォブル信号の波形を解析した結果、三角波に近い場合はトレースしている位置がデータ領域であり、方形波に近い場合はトレースしている位置がPIC領域であると判定することを特徴とするディスク領域判定方法。
【請求項10】
光ピックアップがトレースしている光ディスクのトラックからアドレス情報を取得するアドレス情報取得方法において、
前記光ピックアップがトレースしている前記光ディスクのトラックからウォブル信号を抽出するステップと、
抽出したウォブル信号の波形が三角波に近いか方形波に近いかを解析するステップと、
該解析結果に基づきトレースしている位置がデータ領域であるかPIC領域であるかを判定するステップと、
該判定した領域に応じて上記ウォブル信号の再生条件を設定するステップと、
上記ウォブル信号からアドレス情報を取得するステップと、
を備えることを特徴とする光ディスクのアドレス情報取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−243262(P2011−243262A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116221(P2010−116221)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】