説明

光ディスク装置及び半導体装置

【課題】環境変動によりサーボ制御に用いる信号のオフセット量が変化しても、光ディスク装置の安定した動作を可能とする。
【解決手段】光ディスク装置(1、5)は、光ディスク(3)に照射したレーザ光の反射光量に応じたアナログ信号(A〜H)に基づいてサーボ制御に用いる信号を生成し、前記サーボ制御に用いる信号に重畳されているオフセット量の変化量を検出する。光ディスク装置は、装填された光ディスクに応じた光検出の初期設定において前記オフセット量を低減するように設定されたオフセット調整量を、前記検出したオフセット量の変化量に応じて補正するとともに、補正後のオフセット調整量に基づいて前記サーボ制御に用いる信号を調整し、調整した信号に基づいてサーボ制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに対する情報の記録再生を行う光ディスク装置、及び前記光ディスク装置を制御するための半導体装置に関し、特に、サーボ制御に用いる信号に重畳されたオフセットの変動量が大きい光ディスク装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置では、光ディスクに記録されたデータを読み出したり、データを記録したりする際には、光ディスクに照射したレーザ光の焦点方向の制御を行うフォーカスサーボ制御と、レーザ光の半径方向の制御を行うトラッキングサーボ制御を行う。フォーカスサーボ制御では、主にフォーカスエラー(FE)信号に基づいて、目的とする情報記録層にレーザ光の焦点が合っているか否かが判断される。また、トラッキングサーボ制御では、主にトラッキングエラー(TE)信号に基づいて、レーザ光が目的とするトラックをトレースしているか否かが判断される。このフォーカスサーボ制御やトラッキングサーボ制御の安定化を図る従来技術として、光ディスクからの反射光量を基にフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号のゲインを自動的に調整する技術が、特許文献1乃至3に開示されている。
【0003】
特許文献1には、光総和信号のピーク値が目標電圧信号に等しくなるように光総和信号のゲインが制御され、総和信号のゲインと連動してフォーカスエラー信号のゲインも等しくされる方法が開示されている。特許文献2には、光総和信号のピーク値に基づいて、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号のゲインを設定する技術が開示されている。更に、特許文献3には、光総和信号のピーク値に基づいて、各受光素子からの受光信号のゲインを設定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−154336号公報
【特許文献2】特開2005−50410号公報
【特許文献3】特開2001−266371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年光ディスク装置の更なるコスト削減及び低消費電力化を図るための1つの手段として、光ディスク装置を制御するための半導体装置のチップサイズの削減がある。特に、チップ面積削減効果の大きいアナログ回路の小規模化が進められており、例えば、光ピックアップの受光素子で生成された電気信号からサーボ制御に用いる信号を生成するためのアナログ回路における素子サイズの縮小と素子数削減が進められている。しかしながら、アナログ回路における素子サイズの縮小化と素子数削減により、回路のオフセット量の増大や、温度変化や電源電圧の変化等の環境変動によるオフセット量の変動が無視できなくなっている。具体的には、オフセット量の増加や環境変動によるオフセット量の変化は、光ディスク装置の安定的な動作に悪影響を及ぼす。例えば、特許文献1乃至3のように、光総和信号のピーク値に基づいてフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号のゲイン制御を行う場合、受光素子における反射光量が少ないときは光総和信号のピーク値が小さくなるため、フォーカスエラー信号等のゲインを大きくするように制御される。しかし、光総和信号を生成するアナログ回路のオフセットが大きいと、反射光量が小さくても光総和信号のピーク値が大きくなる可能性がある。光総和信号のピーク値が大きければ、フォーカスエラー信号等のゲインが大きくなるように調整されることなくサーボ制御が実行されてしまう。その結果、例えばトラッキングサーボ制御が不能となって、誤った位置にデータを記録して再生不能な光ディスクを作成してしまったり、フォーカスサーボ制御が不能となって、フォーカスサーチの際に対物レンズを光ディスクにぶつけて傷をつけてしまったりする虞がある。仮に、光ディスクをマウントした段階でオフセット量を低減させるようにオフセット調整を行ったとしても、光ディスク装置の動作中に温度が変化してオフセット量が大きく変動してしまうと、上記と同様の問題が起こる。特に、多層のBD(Blu−ray Disc:登録商標)のような反射光量の少ない光ディスクでは、オフセット量の変動幅が相対的に大きく見えるため影響を受けやすい。
【0006】
本発明の目的は、環境変動によりサーボ制御に用いる信号のオフセット量が変化しても、光ディスク装置の安定した動作を可能とするための技術を提供することにある。
【0007】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0009】
すなわち、光ディスク装置は、光ディスクに照射したレーザ光の反射光量に応じたアナログ信号に基づいてサーボ制御に用いる信号を生成し、前記サーボ制御に用いる信号に重畳されているオフセット量の変化量を検出する。光ディスク装置は、装填された光ディスクに応じた光検出の初期設定において前記オフセット量を低減するように設定されたオフセット調整量を、前記検出したオフセット量の変化量に応じて補正するとともに、補正後のオフセット調整量に基づいて前記サーボ制御に用いる信号を調整し、調整した信号に基づいてサーボ制御を行う。
【発明の効果】
【0010】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0011】
すなわち、本光ディスク装置によれば、環境変動によりサーボ制御に用いる信号のオフセット量が変化しても、安定した動作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施の形態1に係る光ディスク装置の構成を例示するブロック図である。
【図2】図2は、データ処理制御部20におけるサーボ制御に係る機能部の一例を示すブロック図である。
【図3】図3は、フォーカスサーボ不能判定回路218による判定方法の一例を示す説明図である。
【図4】図4は、環境変動による総和信号の変化状態の一例を示す説明図である。
【図5】図5は、オフセット変化量検出回路207の回路構成の一例を示すブロックである。
【図6】図6は、光ディスク装置1の再生動作(又は記録動作)の流れの一例を示すフロー図である。
【図7】図7は、オフセット変化量を考慮したオフセット調整後のフォーカスサーボ不能判定の一例を示す説明図である。
【図8】図8は、実施の形態2に係る光ディスク装置の構成を例示するブロック図である。
【図9】図9は、環境変動による総和信号の変化状態の別の一例を示す説明図である。
【図10】図10は、オフセット変化量検出回路237の回路構成の一例を示すブロックである。
【図11】図11は、光ディスク装置5の再生動作(又は記録動作)の流れの一例を示すフロー図である。
【図12】図12は、実施の形態3に係る光ディスク装置の構成を例示するブロック図である。
【図13】図13は、データ処理制御部22におけるサーボ制御に係る機能部の一例を示すブロック図である。
【図14】図14は、オフセット回路240へのフィードバック経路を形成する機能部の詳細を示す説明図である。
【図15】図15は、実施の形態4に係る光ディスク装置の構成を例示するブロック図である。
【図16】図16は、データ処理制御部23におけるサーボ制御に係る機能部の一例を示すブロック図である。
【図17】図17は、オフセット回路253へのフィードバック経路を形成する機能部の詳細を示す説明図である。
【図18】図18は、電気信号A〜Hのオフセット調整のタイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面中の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0014】
〔1〕(オフセット変動を考慮してサーボ制御に用いるための信号のオフセット調整を行う光ディスク装置)
本発明の代表的な実施の形態に係る、光ディスク(3)にアクセスするための光ディスク装置(1、8)は、対物レンズを介して前記光ディスクにレーザ光を照射し、その反射光を受光素子(A〜H)の受光面に集光して反射光量に応じたアナログ信号(A〜H)を生成する光ピックアップ(10)と、前記光ピックアップを制御して前記光ディスクにおける光スポットの位置を制御するサーボ制御に用いる信号(総和信号、フォーカスエラー信号、及びトラッキングエラー信号)を、前記アナログ信号に基づいて生成する信号生成部(204、205、206)と、を有する。更に前記光ディスク装置は、前記サーボ制御に用いる信号に重畳されているオフセット量の変化量を検出するオフセット変化量検出部(207、237)と、前記サーボ制御に用いる信号を整形する信号整形部(208〜217)と、前記信号整形部によって整形された信号に基づいて前記サーボ制御を行うサーボ制御部(219)と、を有する。前記信号整形部(209)は、装填された光ディスクに応じた光検出のための初期設定において前記オフセット量を低減するように設定されたオフセット調整量を、前記検出されたオフセット量の変化量に応じて補正し、補正後のオフセット調整量に基づいて前記サーボ制御に用いる信号を調整する。
【0015】
これによれば、オフセット量の変化量に考慮して前記サーボ制御に用いる信号のオフセット調整を行うから、例えば温度や電源電圧等の環境変動によりオフセット量が変化した場合であっても、安定したサーボ制御を行うことが可能となる。
【0016】
〔2〕(オフセット変化量検出部の構成(実施の形態1))
項1の光ディスク装置において、前記オフセット変化量検出部(207)は、前記初期設定が完了後に検出した前記サーボ制御に用いる信号のピーク値と、前記サーボ制御に用いる信号のピーク値との差分を演算し、前記差分を前記オフセット変化量とする。
【0017】
これによれば、前記サーボ制御に用いる信号のオフセット量の変化量を容易に算出することができる。
【0018】
〔3〕(オフセット変化量検出部の構成(実施の形態2))
項1の光ディスク装置において、前記オフセット変化量検出部(237)は、前記初期設定の完了後からの前記サーボ制御に用いる信号の振幅の変化の割合を考慮して、前記サーボ制御に用いる信号のピーク値が前記初期設定の完了後からどの程度変化したかを示すピーク値の変化量を演算し、前記演算したピーク値の変化量を前記オフセット変化量とする。
【0019】
例えば、光ディスクの中心付近の情報記録面と外周付近の情報記録面では、光ディスクの歪み等の影響によりレーザ光の反射光量が異なる場合がある。この場合、前記サーボ制御に用いる信号の振幅が、光ディスクの内側と外側で異なる可能性が高い。このような光ディスクでは、光ディスクの内側と外側で前記サーボ制御に用いる信号の振幅が異なるため、前記サーボ制御に用いる信号のオフセット量が変化していないにもかかわらず、前記サーボ制御に用いる信号のピーク値が変化したように見える可能性がある。そこで、項3の光ディスク装置によれば、前記ピーク値の変化量を演算する際に前記振幅の変化量も考慮するため、オフセット量の変化量をより精度良く検出することができる。
【0020】
〔4〕(オフセット変化量の算出方法(実施の形態2))
項3の光ディスク装置において、前記オフセット変化量検出部(237)は、前記初期設定の完了後からの前記サーボ制御に用いる信号の振幅値の変化の割合(Vw/Vwref)を算出し、前記変化の割合と前記初期設定の完了後に検出した前記サーボ制御に用いる信号のピーク値(Vpref)とを乗算するとともに、乗算した値と前記サーボ制御に用いる信号のピーク値(Vp)との差分を算出し、前記差分を前記ピーク値の変化量とする。
【0021】
これによれば、前記振幅の変化量を考慮した前記オフセット量の変化量の算出を容易に実現することができる。
【0022】
〔5〕(信号整形部の構成)
項1乃至4のいずれかの光ディスク装置において、前記サーボ制御に用いる信号は、前記反射光量の総和に応じた総和信号と、フォーカスサーボ制御のためのフォーカスエラー信号と、トラッキングサーボ制御のためのトラッキングエラー信号とを含む。また、前記オフセット変化量検出部は、前記総和信号の前記オフセット変化量を検出する。更に、前記信号整形部(209、217、213、216)は、前記総和信号の前記オフセット変化量に基づいて前記補正を行って前記総和信号を調整し、前記調整した総和信号に応じて、前記フォーカスエラー信号と前記トラッキングエラー信号の大きさを調整する。
【0023】
前記総和信号は、例えば光ピックアップの複数の受光素子で生成された複数のアナログ信号のオフセット成分の総和も含むため、フォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号等に比べて、前記アナログ信号のオフセット量の影響を受け易い。そのため、前述したように、総和信号の大きさに基づいてフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号の大きさ(ゲイン)を調整すると、フォーカスサーボ制御やトラッキングサーボ制御の精度の低下を招く。前記サーボ制御の精度低下の防止策として、フォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号のオフセット量の変化を個別に検出して夫々のオフセット量を調整する方法も考えられるが、前記オフセット変化量検出部の回路規模の増大を招く。そこで、項5の光ディスク装置では、前記総和信号におけるオフセット量の変化量を検出して前記総和信号のオフセット調整を行い、調整された総和信号に基づいて、フォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号の大きさを調整する。これにより、前記オフセット変化量検出部の回路規模を大きくすることなく、フォーカスサーボ制御やトラッキングサーボ制御の精度の低下を防ぐことができる。
【0024】
〔6〕(総和信号のオフセット変動を考慮して、前記光ピックアップからの前記電気信号のオフセット調整を行う光ディスク装置(実施の形態3))
本発明の別の代表的な実施の形態に係る、光ディスク(3)にアクセスするための光ディスク装置(6)は、対物レンズを介して光ディスクにレーザ光を照射し、その反射光を複数設けられた受光素子(A〜H)の受光面に集光して反射光量に応じたアナログ信号(A〜H)を前記受光素子毎に生成する光ピックアップと、前記アナログ信号を整形する信号整形部(240、202)と、を有する。更に、前記光ディスク装置は、前記光ピックアップを制御して前記光ディスクにおける光スポットの位置を制御するサーボ制御に用いる信号(総和信号、フォーカスエラー信号、及びトラッキングエラー信号)を、前記整形された前記アナログ信号に基づいて生成する信号生成部(204〜206)と、前記サーボ制御に用いる信号に重畳されているオフセット量の変化量を検出するオフセット変化量検出部(207)と、前記サーボ制御に用いる信号に基づいて前記サーボ制御のための処理を行い、前記光ピックアップを制御するサーボ制御部(219)と、を有する。前記信号整形部(240)は、装填された光ディスクに応じた光検出の初期設定において前記アナログ信号に重畳されているオフセット量を低減するように設定されたオフセット調整量を、前記検出されたオフセット量の変化量に応じて補正し、補正後のオフセット調整量に基づいて前記アナログ信号を調整する。
【0025】
項6の光ディスク装置では、前記補正したオフセット調整量に基づいて、複数の受光素子で生成された複数のアナログ信号に対するオフセット調整を行う。これにより、前記アナログ信号によって生成される前記サーボ制御に用いる信号のオフセット量の変化量も低減されるから、前記サーボ制御に用いる信号のオフセット量を調整するための回路が不要となり、且つ、項1と同様に、温度や電源電圧等の環境変動によりオフセット量が変化した場合であっても、安定したサーボ制御を行うことが可能となる。
【0026】
〔7〕(夫々のアナログ信号に補正後のオフセット調整量をフィードバック)
項6の光ディスク装置において、前記サーボ制御に用いる信号は、前記複数設けられた受光素子(A〜H)のうち所定の受光素子(A〜D)に対応するアナログ信号(A〜D)の総和に基づいて生成される総和信号を含む。また、前記オフセット変化量検出部は、前記総和信号の前記オフセット量の変化量を検出する。更に、前記信号整形部は、前記総和信号のオフセット量の変化量に基づいて、前記所定の受光素子に対応するアナログ信号毎のオフセット量の変化量を算出するとともに、前記算出した前記アナログ信号毎のオフセット量の変化量に基づいて、前記アナログ信号の調整を行う。
【0027】
これによれば、前記総和信号のオフセット量の変化量から前記所定の受光素子に対応するアナログ信号毎のオフセット量の変化量を算出することで、1つの前記アナログ信号あたりのオフセット量の変化量がわかる。これにより、総和信号の成分として含まれるアナログ信号のオフセット量をより精度良く低減することができるから、最もオフセット量の影響を受け易い総和信号のオフセット成分をより精度よく取り除くことができる。
【0028】
〔8〕(調整対象のアナログ信号は選択可能)
項7の光ディスク装置において、前記信号整形部による前記調整対象のアナログ信号は選択可能とされる。
【0029】
〔9〕(時分割でオフセット変化量をサンプリング(実施の形態4))
本発明の別の代表的な実施の形態に係る、光ディスク(3)にアクセスするための光ディスク装置(7)は、対物レンズを介して光ディスクにレーザ光を照射し、その反射光を複数設けられた受光素子(A〜H)の受光面に集光して反射光量に応じたアナログ信号(A〜H)を前記受光素子毎に生成する光ピックアップ(10)と、前記受光素子毎のアナログ信号を整形する信号整形部(252、253、202)と、を有する。更に、前記光ディスク装置は、前記光ピックアップを制御して前記光ディスクにおける光スポットの位置を制御するサーボ制御に用いる信号(総和信号、フォーカスエラー信号、及びトラッキングエラー信号)を、前記信号整形部によって整形されたアナログ信号に基づいて生成する信号生成部(204〜206)と、前記信号整形部によって整形された前記受光素子毎のアナログ信号に重畳されているオフセット量の変化量を、前記受光素子毎に時分割に検出するオフセット変化量検出部(250、251)と、前記サーボ制御に用いる信号に基づいて前記サーボ制御を行うサーボ制御部(219)と、を有する。前記信号整形部は、装填された光ディスクに応じた光検出の初期設定において、前記受光素子毎の前記アナログ信号に重畳されているオフセット量を低減するように前記受光素子毎に初期オフセット調整量が設定され、対応する受光素子毎に前記初期オフセット調整量を前記オフセット量の変化量に応じて補正し、補正後のオフセット調整量に基づいて対応する受光素子に係る前記アナログ信号を調整する。
【0030】
項9の光ディスク装置では、夫々の受光素子に対応するアナログ信号毎に時分割にオフセット量の変化量を検出し、アナログ信号毎にオフセット調整を行う。これにより、前記アナログ信号によって生成される前記サーボ制御に用いる信号のオフセット量の変化量も低減されるから、前記サーボ制御に用いる信号のオフセット量を調整するための回路が不要となり、且つ、項1と同様に、温度や電源電圧等の環境変動によりオフセット量が変化した場合であっても、安定したサーボ制御を行うことが可能となる。また、前記オフセット変化量検出部は、夫々の受光素子に対応するアナログ信号毎に時分割でオフセット量の変化量の検出を行うから、前記オフセット変化量検出部を検出対象の前記アナログ信号毎に設ける必要がなく、回路規模の低減に資する。
【0031】
〔10〕(半導体装置)
本発明の代表的な実施の形態に係る半導体装置(20〜23)は、光ピックアップ(10)を制御し、光ディスク(3)にアクセスするための処理を行う。前記半導体装置は、前記光ピックアップによって生成された、前記光ディスクに照射されたレーザ光の反射光量に応じたアナログ信号(A〜H)を入力して、前記光ディスクにおける光スポットを制御するサーボ制御に用いる信号(総和信号、フォーカスエラー信号、及びトラッキングエラー信号)を生成する信号生成部(204〜206)と、前記サーボ制御に用いる信号に重畳されているオフセット量の変化量を検出するオフセット変化量検出部(207、237)と、を有する。更に前記半導体装置は、前記サーボ制御に用いる信号を整形する信号整形部(208〜217)と、前記信号整形部によって整形された信号に基づいて前記サーボ制御を行うサーボ制御部(219)と、を有する。前記信号整形部は、装填された光ディスクに応じた光検出のための初期設定において前記オフセット量を低減するように設定されたオフセット調整量を、前記検出されたオフセット量の変化量に応じて補正し、補正後のオフセット調整量に基づいて前記サーボ制御に用いる信号を調整する。
【0032】
これによれば、項1と同様に、温度や電源電圧等の環境変動によりオフセット量が変化した場合であっても、安定したサーボ制御を行うことが可能となる。
【0033】
〔11〕(半導体装置:オフセット変化量検出部の構成(実施の形態1))
項10の半導体装置において、前記オフセット変化量検出部(207)は、前記初期設定の完了後に検出した前記サーボ制御に用いる信号のピーク値と、前記サーボ制御に用いる信号のピーク値との差分を演算し、前記差分を前記オフセット変化量とする。
【0034】
これによれば、前記サーボ制御に用いる信号のオフセット量の変化量を容易に算出することができる。
【0035】
〔12〕(半導体装置:オフセット変化量検出部の構成(実施の形態2))
項10の半導体装置において、前記オフセット変化量検出部(237)は、前記初期設定の完了後からの前記サーボ制御に用いる信号の振幅の変化の割合を考慮して、前記サーボ制御に用いる信号のピーク値が前記初期設定の完了後からどの程度変化したかを示すピーク値の変化量を演算し、前記演算したピーク値の変化量を前記オフセット変化量とする。
【0036】
これによれば、項3と同様に、前記ピーク値の変化量を演算する際に前記振幅の変化量も考慮するため、オフセット量の変化量をより精度良く検出することができる。
【0037】
2.実施の形態の詳細
実施の形態について更に詳述する。
【0038】
≪実施の形態1≫
図1は、本実施の形態に係る、光ディスクの記録再生を行う光ディスク装置の構成を例示するブロック図である。同図に示される光ディスク装置1は、例えば、BDシステムやDVDシステム、又はそれらのマルチディスクドライブシステムに適用される。
【0039】
1又は複数の情報記録層を有する光ディスク3はターンテーブルに搭載され、スピンドルモータ11によって回転される。スピンドルモータ11はデータ処理制御部20によってドライバIC12を介して制御される。この状態で光ピックアップ10はレーザ光を照射し、目標とされる情報記録層に対して情報の記録又は再生を実行する。
【0040】
光ピックアップ10は、半導体レーザであるレーザダイオードからのレーザ光を対物レンズを介して光ディスク3の情報記録層に照射し、反射した反射光を検出レンズにより集光して光検出器101、102に導く光学系が形成されている。光源であるレーザダイオード1から放射されるレーザ光は、レーザ制御部(LSR_CNT)103によって記録時のレーザパワーと再生時のレーザパワーが制御される。具体的には、レーザ制御部103と、後述する再生レーザパワー制御回路226及び記録レーザパワー制御回路231との間でフィードバックループが形成され、一定のレーザパワーとなるように制御される。
【0041】
光ピックアップ10は、光ディスク3に照射したレーザ光の光スポット(ビームスポット)が目標とされる情報記録層に対して合焦するように焦点距離の位置が制御されるフォーカスサーボ制御と、光スポットが光ディスク3に設けられた溝(トラック)に追従するように制御されるトラッキングサーボ制御が行われる。フォーカスサーボ制御やトラッキングサーボ制御等のサーボ制御は、データ処理制御部20がドライバIC12を介して制御することにより実現される。
【0042】
光ディスク3に照射されるレーザ光は、例えば回折格子等により分割された複数のビームである。同図では、一例として、光ディスク3の再生時にメインビームとサブビームの2本のビームが生成され、メインビームの反射光が光検出部101に入射され、サブビームの反射光が光検出部102に入射される場合が示されている。
【0043】
光検出部101は、受光素子A〜Dによって構成される。受光素子A〜Dは、夫々の受光面に照射されたメインビームの反射光の光量に応じた電気信号(アナログ信号)を生成して出力する。以下、参照符号A〜Dは、受光素子及び前記受光素子によって生成された電気信号の双方を表すものとする。電気信号A〜Dは、データ処理制御部20に入力され、サーボ制御のための制御信号の生成に利用される。前記サーボ制御のための制御信号の詳細については後述する。
【0044】
差動信号生成部104は、正側のRF信号RFPと負側のRF信号RFNとを生成する。図示されないが、受光素子A〜D、E〜Gとは別個に設けられた受光素子によって生成された電気信号に基づいて正側のRF信号RFPと負側のRF信号RFNが生成される。正側のRF信号RFPは、例えば、演算式“A+B+C+D”と同様の信号成分から算出される信号であり、負側のRF信号RFNは、例えば、演算式“−(A+B+C+D)”と同様の信号成分から算出される信号である。正側のRF信号RFPと負側のRF信号RFNは、データ処理制御部20のRF信号生成回路233に入力され、光ディスク3に記録された情報に係る再生信号の生成に利用される。
【0045】
光検出部102は、受光素子E〜Hによって構成される。受光素子E〜Hは、前記受光素子A〜Dと同様に、入射したサブビームの反射光の光量に応じた電気信号(アナログ信号)を生成して出力する。以下、参照符号E〜Hは、受光素子及び前記受光素子によって生成された電気信号の双方を表すものとする。電気信号E〜Hは、データ処理制御部20に入力され、サーボ制御のための制御信号の生成に利用される。前記サーボ制御のための制御信号の詳細については後述する。
【0046】
上記のように、光ピックアップ10は、データ処理制御部20及びドライバIC12等の周辺回路によって制御される。
【0047】
ドライバIC12は、データ処理制御部20からのサーボ駆動信号301、302に応じて光ピックアップ10を駆動することでフォーカスサーボ制御とトラッキングサーボ制御を実現する。
【0048】
データ処理制御部20は、ドライバIC12を制御することにより光ディスク3に対する情報の記録又は再生を行うための統括的な制御を行う。またデータ処理制御部20は、光ディスク3に対するデータの記録のための記録信号の生成処理や光ディスク3から読み出した再生信号のデコード処理等を行うとともに、外部に設けられたホストPC2との間で通信を行う。同図に示されるデータ処理制御部20は、特に制限されないが、公知のCMOS集積回路の製造技術によって1個の単結晶シリコンのような半導体基板に形成されている。なお、データ処理制御部20は上記のように1つの集積回路で構成されたものである必要はなく、マルチチップで形成されたものでもよい。
【0049】
データ処理制御部20は、例えば、再生系、記録系、サーボ制御系、及び制御系、に分けられる。
【0050】
再生系は、例えば、RF信号生成回路233、ADコンバータ234、再生信号処理回路235、及び再生レーザパワー制御回路226から構成される。光ディスク3に記録された情報を再生するとき、RF信号生成回路233は、CPU220からの指示に基づいて、光ピックアップ10によって生成された正側のRF信号RFPと負側のRF信号RFNを入力して再生RF信号を生成する。再生RF信号は、ADコンバータ234によってデジタル信号に変換される。再生信号処理回路235は、CPU220からの指示に応じて、デジタル化された再生RF信号のデコード処理を実行し、デコードした再生データを内蔵SDRAM225に格納する。内蔵SDRAM225に格納された再生データは、CPU220によりSATA等の外部インターフェース(I/F)回路223を介してホストPC2に転送される。なお、前述したように、再生レーザパワー制御回路226は、レーザ制御部103との間でフィードバックループを形成することにより、再生時のレーザパワーが一定になるように制御する。
【0051】
記録系は、例えば、ウォブル信号生成部227、ADコンバータ228、アドレス情報取得部229、記録用信号処理部230、及び記録レーザパワー制御回路231から構成される。光ディスク3には予めトラックグルーブが形成されており、例えば追記型又は書き換え型の光ディスク(例えば、CD−R/RW、DVD−R1層/−RW/−R2層、DVD+R1層/+RW/+R2層、及びBD−R1層/−RE1層/−R2層/−RE2層/−R3層/−RE3層/−R4層)の場合にはウォブルと呼ばれる蛇行が施されている。ウォブルには記録再生位置のガイドとなるアドレス情報が埋め込まれている。光ディスク3に対するデータの記録では、ウォブルの周期に基づいて生成されたウォブルクロック信号を基準クロック信号としてデータの記録が行われる。先ず、ウォブル信号生成部227は、例えば、メインビームの反射光に係る電気信号A〜Dを入力し、アナログ信号処理を行ってウォブル信号を出力する。具体的には、ウォブル信号生成部227は、演算式“(A+D)−(B+C)”によってウォブル信号を生成する。生成されたウォブル信号は、ADコンバータ228によってデジタル信号に変換され、回転制御回路232及びアドレス情報取得部229に入力される。回転制御回路232は、ウォブル信号に基づいて、光ディスク3を回転するための駆動信号を生成してドライバIC12に出力することで、光ディスク3の回転制御を行なう。アドレス情報取得部229は、ウォブル信号に基づいてウォブルに埋め込まれたアドレス情報を解析し、光ディスク3上の位置を示す物理アドレスを検出する。検出された物理アドレスの情報は、記録用信号処理回路230に与えられる。記録用信号処理回路230は、外部I/F回路223を介して入力され、一旦内蔵SDRAM225に格納された記録データをエンコードする。そして、エンコードした記録データを前記物理アドレスの情報に基づいて記録信号に変換し、レーザ制御部103与える。なお、前述したように、記録レーザパワー制御回路231はレーザ制御部103との間でフィードバックループを形成することにより、記録時のレーザパワーが一定になるように制御する。
【0052】
制御系は、例えば、CPU220、内蔵フラッシュメモリ224、内蔵SDRAM225、回転制御回路232等から構成される。CPU220は、内蔵フラッシュメモリ224等に格納されたプログラムに基づいて、記録系、再生系、及びサーボ制御系の各機能部を制御することにより、光ディスク3に対する情報の記録と再生を実現する。CPU220は、光ディスク3が光ディスク装置1に装填されたら、装填された光ディスク3に応じた光検出のための初期設定を行う。具体的には、サーボ制御に用いる信号がサーボ制御を行う上で最適な状態となるように、CPU220は、後述するサーボ制御系の各機能部に設けられた各種レジスタに初期値を設定することで、サーボ制御に用いる信号(総和信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号)や電気信号A〜Hのオフセット調整や信号レベルの調整を行う。
【0053】
内蔵フラッシュメモリ224は、CPU220のためのプログラムや各種データを格納する記憶装置である。例えば、光ディスク装置500を駆動するためのプログラムと、サーボ制御パラメータ、ストラテジパラメータ、及びLD発光パラメータ等の各種データが格納され、必要に応じてCPU220からの制御命令によりアクセス制御される。内蔵SDRAM225は、CPU220による演算結果や再生信号処理回路235によってデコードされた再生データ等が一時的に格納される揮発性の記憶領域を有する記憶装置である。
【0054】
前記サーボ制御系では、受光素子からの電気信号A〜Hに基づいてサーボ制御に用いる信号(総和信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号)を生成し、生成したサーボ制御に用いる信号に基づいて各種サーボ制御を行う。
【0055】
一般に、光ディスクに照射したレーザ光の反射光量は、光ディスクの種類や、光ディスクの製造バラつき及び光ピックアップ10の受光素子の特性のバラつき等によって大きさが異なるため、データ処理制御部20に入力される電気信号A〜Hの振幅は常に一定というわけではない。また、半導体装置であるデータ処理制御部20内の電気信号A〜Hの信号処理等を行う機能部の回路特性のバラつき等によっても、信号処理仮定でオフセット成分が重畳される。その結果、電気信号A〜Hに基づいて生成される総和信号、フォーカスエラー信号、及びトラッキングエラー信号は、信号レベルが一定とならない。サーボ制御に用いるこれらの信号の信号レベルが一定でないと、装填された光ディスク3の種類やデータ処理制御部20の製造バラつき等によっては、安定したサーボ制御を行うことができない可能性がある。そこで、実施の形態1に係るデータ処理制御部20では、入力された電気信号A〜Hのオフセット成分の除去や信号レベルの調整を行うことによって電気信号A〜Hの波形整形を行うとともに、総和信号、フォーカスエラー信号、及びトラッキングエラー信号のオフセット成分の除去や信号レベルの調整を行うことによってこれらの信号の波形整形を行う。これにより、装填された光ディスクの種類やデータ処理制御部20の製造バラつき等によらず、総和信号、フォーカスエラー信号、及びトラッキングエラー信号の信号レベルが一定の範囲に収まるように調整される。
【0056】
サーボ制御系は、例えば、電気信号A〜Hの波形整形を行うオフセット回路201_A〜201_H及びゲイン回路202_A〜202_Hと、電気信号A〜Hをデジタル信号に変換するADコンバータ203と、サーボ制御に用いる信号を生成する総和信号演算回路204、フォーカスエラー信号演算回路205、及びトラッキングエラー信号演算回路206と、を含む。更に前記サーボ制御系は、例えば、サーボ制御に用いる信号の波形整形を行うローパスフィルタ(LPF)208、211、214、PE信号用オフセット回路209、PE信号用ゲイン回路210、FE信号用オフセット回路212、FE信号用ゲイン回路213、TE信号用オフセット回路215、TE信号用ゲイン回路216、及びゲイン制御回路217と、サーボ制御を行うためのサーボ信号処理回路219、トラッキング制御用DAコンバータ221、フォーカス制御用DAコンバータ222、及びフォーカスサーボ不能判定回路218と、を含む。
【0057】
図2は、データ処理制御部20におけるサーボ制御に係る機能部の一例を示すブロック図である。
【0058】
図2に示されるように、光検出器101、102によって生成された電気信号A〜Hは、オフセット回路201_A〜201_H(総称する場合は、オフセット回路201と表す。)に個別に入力される。オフセット回路201は、アナログ信号である電気信号A〜Hに重畳されているオフセット成分を低減するための回路であり、例えば、入力した電気信号を設定された抵抗比に応じて抵抗分圧して出力するDAC等によって構成される。例えば、オフセット回路201は、入力した電気信号のオフセット量を低減するためのオフセット調整量が設定されるレジスタを有する。CPU220は、前記初期設定において、光ディスク3を装填したときの電気信号のオフセット量が小さくなるようなオフセット調整量をレジスタに初期設定する。そして、オフセット回路201は、前記レジスタの設定値に応じた抵抗分圧比で電気信号の信号レベルをシフトさせて出力する。なお、オフセット回路201_A〜201_Hの各レジスタは、入力する電気信号A〜Hの夫々のオフセット量に応じて個別に設定される。
【0059】
オフセット回路201によってオフセット調整がなされた電気信号A〜Hは、ゲイン回路202_A〜202_H(総称する場合は、ゲイン回路202と表す。)に個別に入力される。ゲイン回路202は、後段のADコンバータ202の分解能を有効利用してAD変換を精度よく行えるように、信号レベルの小さい電気信号A〜Hを最適な信号レベルに調整するための増幅器である。ゲイン回路202は、例えばOPアンプと抵抗等から構成される反転増幅器である。例えば、ゲイン回路202は、増幅率が設定されるレジスタを有する。CPU220は、前記初期設定において、光ディスク3を装填したときの電気信号の信号レベルが所定の信号レベルになるような増幅率を前記レジスタに設定する。そして、ゲイン回路202は、前記レジスタの設定値に応じた増幅率で電気信号を増幅させて出力する。なお、ゲイン回路202_A〜202_Hの各レジスタは、入力する電気信号A〜Hの夫々の信号レベルに応じて個別に設定される。
【0060】
信号レベルが調整された電気信号A〜Hは、ADコンバータ203によって個別にデジタル信号に変換される。総和信号演算回路204、フォーカスエラー信号演算回路205、及びトラッキングエラー信号演算回路206は、デジタル化された電気信号A〜Hに基づいてサーボ制御に用いる信号を生成する。具体的には、総和信号演算回路204は総和(PE)信号を生成し、フォーカスエラー信号演算回路205はフォーカスエラー(FE)信号を生成し、トラッキングエラー信号演算回路206はトラッキングエラー(TE)信号を生成する。以下、総和信号、フォーカスエラー信号、及びトラッキングエラー信号について詳細に説明する。
【0061】
総和信号は、メインビームの反射光量の総和に応じた信号であり、例えば、電気信号A〜Dの値を夫々加算することで算出される。具体的には、総和信号演算回路204が、デジタル化された電気信号A〜Dを入力し、“A+B+C+D”の演算を行うことにより総和信号を生成する。総和信号は、後述するフォーカスサーボ制御の不能判定やフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号の信号レベルの調整に利用される。
【0062】
総和信号演算回路204によって生成された総和信号は、ローパスフィルタ208によって平滑化され、PE信号用オフセット回路209に入力される。PE信号用オフセット回路209は、デジタル信号である総和信号に重畳されているオフセット成分を低減するための回路である。PE信号用オフセット回路209は、前段のオフセット回路201によって取り除けなかった残留オフセット成分がある場合や、前記オフセット回路201以降の回路ブロックによる処理でオフセット成分が重畳された場合に有効である。PE信号用オフセット回路209の詳細については後述する。
【0063】
オフセット調整された総和信号は、PE信号用ゲイン回路210に入力される。PE信号用ゲイン回路210は、総和信号が所定の信号レベルになるように信号レベルを調整する回路である。前述したように、レーザ光の反射光量は光ディスクの種類等によって異なるため、反射光量の総和である総和信号も振幅が一定にならない場合がある。そこで、PE信号用ゲイン回路210により、装填された光ディスクの種類等によらず、総和信号の信号レベルが所定の範囲の信号レベルになるように信号レベルを調整する。例えば、PE信号用ゲイン回路210は、入力した総和信号を所定の信号レベルになるように増幅するための増幅率が設定されるレジスタを有する。例えば、CPU220は、前記初期設定において、光ディスク3を装填したときの総和信号の信号レベルが所定の信号レベルになるような増幅率を前記レジスタに初期設定する。そして、PE信号用ゲイン回路210は、前記レジスタの設定値に応じた増幅率で総和信号を増幅させて出力する。
【0064】
PE信号用ゲイン回路210によって信号レベルが調整された総和信号は、フォーカスサーボ不能判定回路218及びゲイン制御回路217に入力される。ゲイン制御回路217は、総和信号の信号レベルに基づいて、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号の信号レベルを調整するための回路である。ゲイン制御回路217の詳細は後述する。
【0065】
フォーカスサーボ不能判定回路218は、目的とする情報記録層のレーザ光の合焦位置を基準とした対物レンズの位置に応じて総和信号の信号レベルが変化することを利用して、フォーカスサーボ制御が不能か否かを判定する回路である。
【0066】
図3は、フォーカスサーボ不能判定回路218による判定方法の一例を示す説明図である。同図に示されるように、総和信号は、レーザ光が目的とする情報記録層に合焦しているとき最大の信号レベルとなり、対物レンズが合焦位置から離れるにつれて信号レベルが低下する。例えば所謂フォーカスサーチでは、光ピックアップ内のアクチュエータが光ディスク3に近づく方向に対物レンズをスイープさせ、フォーカスエラー信号のゼロクロス点を検出した位置でフォーカスサーボが行われる。フォーカスサーチでは、ゼロクロス点を検出するまで対物レンズを移動させるため、フォーカスエラー信号の信号レベルが低いことなどが原因でゼロクロス点が検出できなかった場合には、対物レンズが光ディスク3に衝突し、対物レンズや光ディスク3が傷ついてしまうおそれがある。そこで、対物レンズが合焦位置から離れるほど総和信号の信号レベルが低下することを利用して、フォーカスサーボ不能判定回路218が総和信号を監視し、総和信号の信号レベルが所定の閾値(以下、判定閾値とも表す。)を下回ったらフォーカスサーボ制御が不能と判断し、判定結果をCPU220に通知する。同様にフォーカスサーチだけでなく、フォーカスサーボオン状態でも総和信号の信号レベルが所定の閾値を下回ったらフォーカスサーボ制御が不要と判断し、判定結果をCPU220に通知する。これにより、対物レンズを駆動させるアクチュエータ等の異常動作によって光ディスク3や対物レンズ等を傷つけないように、光ディスク装置1に対し緊急停止処理を行わせることができる。
【0067】
フォーカスエラー信号について説明する。
【0068】
フォーカスエラー信号は、光ピックアップ10内の対物レンズの光ディスク3に対する位置に応じて大きさが変化する信号であり、フォーカスサーボ制御に利用される。例えば所定の情報記録層に焦点が合う位置に対物レンズがある場合には、メインスポットは各受光素子A〜Dに均一に集光する円形とされるようになっている。対物レンズの位置が近すぎる場合には、メインスポットは一方の受光素子のペアに偏って集光する楕円形とされ、対物レンズの位置が遠すぎる場合には、メインスポットは他方の受光素子のペアに偏って集光する楕円形とされるようになっている。したがって、対物レンズが合焦点の中心位置にあるときフォーカスエラー信号は零となり、対物レンズを合焦点の前後に移動させると、フォーカスエラー信号は零から負の値となって、また零となり、その後零から正の値となって再度零となる、所謂S字波形となる。具体的には、フォーカスエラー信号演算回路205が、デジタル化された電気信号A〜D及び電気信号E〜Hを入力し、“(A+C)−(B+D)+k{(E+G)−(F+H)}”の演算を行うことによりフォーカスエラー信号を生成する。係数kは光ピックアップ10の仕様で決定される係数である。なお、光ピックアップ10の構成によっては、“(A+C)−(B+D)”の演算のみでフォーカスエラー信号を生成することができる。
【0069】
フォーカスエラー信号演算回路205によって生成されたフォーカスエラー信号は、ローパスフィルタ211によって平滑化され、FE信号用オフセット回路212に入力される。FE信号用オフセット回路212は、入力されたフォーカスエラー信号に重畳されているオフセット成分を低減するための回路である。例えば、FE信号用オフセット回路212は、入力したフォーカスエラー信号のオフセット量を低減するためのオフセット調整量が設定されるレジスタを有する。例えば、CPU220は、前記初期設定において、光ディスク3を装填したときのフォーカスエラー信号のオフセット量が小さくなるようなオフセット調整量を前記レジスタに初期設定する。そして、FE信号用オフセット回路212は、前記レジスタの設定値の分だけフォーカスエラー信号の信号レベルをシフトさせて出力する。
【0070】
オフセット調整されたフォーカスエラー信号は、FE信号用ゲイン回路213に入力される。FE信号用ゲイン回路213は、フォーカスエラー信号の信号レベルが一定になるように信号レベルを調整する回路である。前述したように、レーザ光の反射光量は光ディスクの種類等によって異なるため、フォーカスエラー信号も振幅が一定にならない場合がある。そこで、FE信号用ゲイン回路213により、装填された光ディスクの種類等によらず、フォーカスエラー信号の信号レベルが所定の信号レベルになるように信号レベルを調整する。例えば、FE信号用ゲイン回路213は、増幅率が設定されるレジスタを有する。例えば、CPU220は、前記初期設定において、光ディスク3を装填したときのフォーカスエラー信号の信号レベルが所定の信号レベルになるような増幅率を前記レジスタに初期設定する。そして、FE信号用ゲイン回路213は、前記レジスタの設定値に応じた増幅率でフォーカスエラー信号を増幅させて出力する。
【0071】
しかしながら、前記初期設定においてフォーカスエラー信号の信号レベルを調整したとしても、その後フォーカスエラー信号の信号レベルが変化する場合がある。例えば、光ディスクの製造バラつきによる光ディスクの歪み等によって光ディスクの中心付近の情報記録面と外周付近の情報記録面との間で反射光量に差が生じたり、光ディスクのデータが記録された領域と未記録の領域との間で反射光量に差が生じたりする場合がある。このような場合、光ディスクにアクセスする領域(例えば光ディスクの内側と外側)によって総和信号やフォーカスエラー信号の信号レベルに差が生じる。そこで、実施の形態1に係るデータ処理制御部20はゲイン制御部217を備える。前記ゲイン制御部217は、総和信号を監視し、総和信号の前記初期設定において調整された信号レベルからの変化の割合を算出する。そして、ゲイン制御部217は、算出した総和信号の変化の割合に応じて、FE信号用ゲイン回路213及びTE信号用ゲイン回路216の増幅率を調整する。例えば、前記初期設定時よりも反射光量が減って総和信号の信号レベルが小さくなった場合には、前記FE信号用ゲイン回路213のレジスタに設定された初期値の増幅率よりも前記変化の割合の分だけ大きくなるように増幅率を調整する。また、前記初期設定時よりも総和信号の信号レベルが大きくなった場合には、前記初期値の増幅率よりも前記変化の割合の分だけ小さくなるように前記FE信号用ゲイン回路213の増幅率を調整する。これにより、反射光量が変化した場合であっても、フォーカスエラー信号は一定範囲の信号レベルに収まるように制御される。
【0072】
トラッキングエラー信号について説明する。
【0073】
トラッキングエラー信号は、光ディスク3上のトラックと光ディスク3に照射されたレーザ光との相対的な位置関係を表わす信号であり、トラッキングサーボ制御に用いられる。具体的には、トラッキングエラー信号演算回路206が、デジタル化された電気信号A〜D及び電気信号E〜Hを入力し、“(A+D)−(B+C)+k{(E+H)−(F+G)}”の演算を行うことによりトラッキングエラー信号を生成する。
【0074】
トラッキングエラー信号演算回路206によって生成されたトラッキングエラー信号は、フォーカスエラー信号と同様に、ローパスフィルタ214によって平滑化された後、TE信号用オフセット回路215によってオフセット調整がなされ、TE信号用ゲイン回路216によって信号レベルが調整される。TE信号用オフセット回路215は、FE信号用オフセット回路212と同様に、前記初期設定においてCPU220によりフォーカスエラー信号のオフセット量が小さくなるようなオフセット調整量がレジスタに初期設定され、前記レジスタの設定値の分だけトラッキングエラー信号の信号レベルをシフトさせて出力する。TE信号用ゲイン回路216は、FE信号用ゲイン回路213と同様に、前記初期設定においてCPU220により、トラッキングエラー信号の信号レベルが所定の信号レベルになるような増幅率がレジスタに初期設定され、前記レジスタに設定された増幅率でトラッキングエラー信号を増幅させて出力する。また、総和信号のレベルが変化した場合には、FE信号用ゲイン回路213と同様に、TE信号用ゲイン回路216の増幅率はゲイン制御部217により総和信号の信号レベルの変化に応じて調整される。
【0075】
以上のように波形整形がなされたフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号は、サーボ信号処理回路219に入力される。サーボ信号処理回路219は、CPU220からの指示に応じて、入力されたフォーカスエラー信号に基づいて光スポットの焦点方向の位置制御を行うためのフォーカスサーボ制御信号を生成するとともに、入力されたトラッキングエラー信号に基づいて光スポットの半径方向の位置制御を行うためのトラッキングサーボ制御信号を生成する。生成されたフォーカスサーボ制御信号は、フォーカス制御用DAコンバータ222によってアナログ信号に変換された後、ドライバIC12に入力される。同様に、生成されたトラッキングサーボ制御信号はトラッキング制御用DAコンバータ221によってアナログ信号に変換された後、ドライバIC12に入力される。そして、ドライバIC12がフォーカスサーボ制御信号に基づいて光ピックアップ10内のアクチュエータ等の駆動を制御することでフォーカスサーボ制御が実現され、同様に、トラッキングサーボ制御信号に基づいて前記アクチュエータ等の駆動を制御することでトラッキングサーボ制御が実現される。
【0076】
以上のように、電気信号A〜Hに重畳されたオフセット成分は、オフセット回路201が前記初期設定時に設定されたオフセット調整量に基づいてオフセット調整を行うことにより低減される。同様に、総和信号、フォーカスエラー信号、及びトラッキングエラー信号に重畳されているオフセット成分も、PE信号用オフセット回路209、FE信号用オフセット回路212、及びTE信号用オフセット回路215が前記初期設定時に設定されたオフセット調整量に基づいてオフセット調整を行うことにより低減される。しかしながら、前述したように、オフセット回路201やゲイン回路202のようなアナログ信号処理を行うアナログ回路における素子サイズの縮小化や素子数削減を行うと、温度変化や電源電圧の変化等の環境変動によるオフセット量の変化量が大きくなり、光ディスク装置の安定的な動作に悪影響を及ぼす虞がある。そこで、光ディスク装置1では、データ処理制御部20内にオフセット変化量検出回路207を設け、オフセット量の変化量に基づいて総和信号のオフセット量を調整する。
【0077】
図4は、環境変動による総和信号の変化状態の一例を示す説明図である。同図の(A)には、前記初期設定の完了後の総和信号401と、当該総和信号をローパスフィルタ208によって平滑化した信号402が示される。同図の(B)には、温度等の環境変化後の総和信号403と、当該総和信号をローパスフィルタ208によって平滑化した信号404が示される。
【0078】
図4の(A)に示されるように、総和信号401は、例えば、光ディスクに形成された記録マークにレーザ光が当たった場合にはその信号レベルが小さくなり、記録マーク以外の部分にレーザ光が当たった場合にはその信号レベルが大きくなる。したがって、総和信号401は、光ディスクにおける情報が記録されている記録済み領域では正弦波状に信号レベルが変化し、光ディスクにおける情報が記録されていない未記録領域では信号レベルが最大且つ略一定となる。前記記録済み領域での総和信号401の最大値(ピーク値)と、未記録領域での総和信号の値は、同程度の値となる。また、光ディスク装置1の内部温度や電源電圧等の変化に伴いオフセット量が変化すると、図4の(B)に示されるように、総和信号は、信号レベルがシフトして参照符号403の信号となる。
【0079】
そこで、総和信号の信号レベルが前記初期設定時に調整されることと、光ディスクの前記記録済み領域及び未記録領域のいずれにおいても総和信号のピーク値が同程度の大きさであることを利用し、オフセット変化量検出回路207が、環境変化前の総和信号401のピーク値と環境変化後の総和信号403のピーク値との差分を算出する。これにより、前記初期設定の完了後から総和信号401のオフセット量がどの程度変化したかを検出することができる。
【0080】
図5は、オフセット変化量検出回路207の回路構成の一例を示すブロックである。同図に示されるように、オフセット変化量検出回路207は、例えば、ピーク検波回路2071と、ピーク基準値用レジスタ2072と、減算器2073と、から構成される。ピーク検波回路2071は、総和信号のピーク値を検出してホールドし、減算器2073に出力する。ピーク基準値用レジスタ2072には、前記初期設定の完了後の総和信号のピーク値(以下、ピーク基準値、とも表す。)が格納される。例えば、CPU220による前記初期設定が完了した直後に、ピーク検出回路2071によって検出された値が格納される。減算器2073は、ピーク基準値用レジスタ2072の値からピーク検出回路2071によって検出された値を減算し、減算した値をオフセット変化量として出力する。
【0081】
PE信号用オフセット回路209は、例えば、加算器2091と、オフセット調整用レジスタ2092とから構成される。光ディスク3の装填後の前記初期設定において、オフセット調整用レジスタ2092には、光ディスク3を装填した段階で総和信号に重畳されているオフセット量が小さくなるようなオフセット調整量がCPU220によって初期設定される。そして、加算器2091は、ローパスフィルタ208を介して入力された総和信号と、オフセット調整用レジスタ2092の値と、オフセット変化量検出回路207によって検出された前記オフセット変化量とを加算することで、総和信号の信号レベルをシフトさせて出力する。これにより、環境変動によるオフセット量の変化を考慮したオフセット調整が実現される。
【0082】
図6は、光ディスク装置1の再生動作(又は記録動作)の流れの一例を示すフロー図である。
【0083】
光ディスク3が光ディスク装置1に装填されると、CPU220は光検出のための初期設定を開始する。先ず、CPU220は電気信号A〜Hの信号レベルを参照することで電気信号A〜Hに重畳されているオフセット量を把握し、そのオフセット量に基づいて、オフセット回路201_A〜201_Hの各レジスタにオフセット調整量の最適値(初期値)を設定する(S101)。また、CPU220はゲイン回路202_A〜202_Hの各レジスタに増幅率の最適値(初期値)を設定する(S102)。次に、CPU220は総和信号の信号レベルを参照することで総和信号に重畳されているオフセット量を把握し、そのオフセット量に基づいて、PE信号用オフセット回路209のレジスタ2092にオフセット調整量の最適値(初期値)を設定する(S103)。また、CPU220はフォーカスエラー信号の信号レベルを参照することでフォーカスエラー信号に重畳されているオフセット量を把握し、そのオフセット量に基づいて、FE信号用オフセット回路212のレジスタにオフセット調整量の最適値(初期値)を設定する(S104)。
【0084】
次に、CPU220はPE信号用ゲイン回路210のレジスタに増幅率の最適値(初期値)を設定する(S105)。また、CPU220はFE信号用ゲイン回路213のレジスタに増幅率の最適値(初期値)を設定する(S106)。そして、CPU220がフォーカスサーボ制御の開始をサーボ信号処理回路219に指示することで、フォーカスサーボが実行される(S107)。その後、CPU220は、トラッキングエラー信号の信号レベルを参照することでトラッキングエラー信号に重畳されているオフセット量を把握し、そのオフセット量に基づいて、TE信号用オフセット回路215のレジスタにオフセット調整量の最適値(初期値)を設定する(S108)。また、CPU220はTE信号用ゲイン回路216のレジスタに増幅率の最適値(初期値)を設定する(S109)。その後、光スポットを光ディスク3の内側(中心方向)に移動させる(S110)。そして、CPU220がトラッキングサーボ制御の開始をサーボ信号処理回路219に指示することで、トラッキングサーボが実行される(S111)。その後、オフセット変化量検出回路207が、総和信号のピーク値を検波してホールドし、ホールドした値をピーク基準値として、ピーク基準値用レジスタ2072に設定する(S112)。これにより、環境変動前の総和信号の状態が保持される。
【0085】
その後、光ディスク3の認識が完了すると、CPU220は光ディスク3の再生処理(又は記録処理)の開始を再生系(又は記録系)の機能部に指示することで、再生動作(又は記録動作)が開始される(S113)。再生動作中(又は記録動作中)は、オフセット変化量検出回路207が、常に総和信号のピーク値を検出する(S114)。オフセット変化量検出回路207は、検出したピーク値とピーク基準値とに基づいて前記オフセット変化量を算出し、算出した前記オフセット変化分をPE信号用オフセット回路209に与える(S115)。また、フォーカスサーボ不能判定回路218が、オフセット調整がなされた総和信号に基づいてフォーカスサーボ制御の不能判定を行う(S116)。再生動作中(又は記録動作中)は、ステップ113〜ステップ115の処理が常に実行される。
【0086】
図7は、オフセット変化量を考慮したオフセット調整後のフォーカスサーボ不能判定の一例を示す説明図である。同図の(A)は、CPU220による前記初期設定の完了後の総和信号と判定閾値との関係を示し、同図の(B)は、温度等の環境変化後の総和信号と判定閾値との関係を表す。
【0087】
図7の(A)に示されるように、前記初期設定の完了後の総和信号は参照符号405に示される信号である。環境変動によりオフセット量が変化した場合、図7の(B)に示されるように、信号レベルがシフトし、総和信号は参照符号406に示される信号となる。この場合、対物レンズが合焦位置から離れたとしても前記判定閾値を総和信号406が下回ることがないため、仮にフォーカスサーボが異常になって対物レンズが光ディスクに近づき過ぎた場合であってもフォーカスサーボ不能を検出できず、光ディスクを傷つけてしまう虞がある。そこで、光ディスク装置1によるオフセット調整によれば、環境変動によるオフセット量の変化分を考慮して総和信号のオフセット調整を行うから、参照符号407に示されるように、総和信号は環境変動前と略変わらない信号レベルになるように制御される。これにより、対物レンズが合焦位置から離れると総和信号406が前記判定閾値を下回るようになるから、フォーカスサーボの不能の正常に検出することができる。
【0088】
以上、実施の形態1に係る光ディスク装置1によれば、データ処理制御部20内のアナログ回路における素子サイズの縮小化と素子数削減することで回路のオフセット量の環境変動による変化量が大きくなったとしても、環境変動によるオフセット変化量を考慮してリアルタイムに総和信号のオフセット成分を除去することができる。これにより、環境変動の影響を受けない総和信号を生成することができるから、環境変動によらずフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号を最適な信号レベルに保つことができ、反射光量の少ない光ディスクであっても、安定したフォーカスサーボ制御及びトラッキングサーボ制御を実現することができる。また、環境変動の影響を受けない総和信号を生成することで、環境変動によらずフォーカスサーボ不能を正常に検出すること可能となる。
【0089】
上述したように、フォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号の演算式には2つの電気信号の和を減算する項が含まれる。そのため、電気信号A〜Hのオフセット量が一律に同一方向にオフセット変化したとすると、生成されるフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号に含まれるオフセット成分は相対的に小さくなる。一方、総和信号の演算式には、減算の項は含まれていないため、総和信号に含まれるオフセット成分は相対的に大きくなる。また、総和信号は、上述したように、フォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号の信号レベルの調整にも利用される。したがって、実施の形態1のように、サーボ制御に用いる信号のうち環境変動によるオフセット量の変動の影響を最も受けやすい総和信号について、環境変動によるオフセット変化量を考慮したオフセット調整を行うことは、上記の理由からも特に有効である。一方、総和信号のみならずフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号についても同様に、夫々のオフセット変化量を検出し、検出したオフセット変化量をFE信号用オフセット回路212とTE信号用オフセット回路215の夫々にフィードバックして、オフセット変化量を考慮したオフセット調整を行うことも可能である。これにより、フォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号のオフセット成分をより精度良く除去することが可能となる。
【0090】
≪実施の形態2≫
図8は、実施の形態2に係る光ディスク装置の構成を例示するブロック図である。同図に示される光ディスク装置5は、オフセット変化量検出回路207の代わりにオフセット変化量検出回路237を有し、オフセット変化量検出回路237は、総和信号の振幅の変化量も考慮して総和信号のオフセット変化量を検出する。
【0091】
同図に示されるデータ処理制御部21は、データ処理制御部20と同様に、特に制限されないが、公知のCMOS集積回路の製造技術によって1個の単結晶シリコンのような半導体基板に形成されている。なお、データ処理制御部21は上記のように1つの集積回路で構成されたものである必要はなく、マルチチップで形成されたものでもよい。光ディスク装置5において、実施の形態1に係る光ディスク装置1と同様の構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0092】
図9は、環境変動による総和信号の変化状態の別の一例を示す説明図である。同図の(A)には、前記初期設定の完了後の総和信号501と、当該総和信号をローパスフィルタ208によって平滑化した信号502が示される。同図の(B)には、温度等の環境変化後の総和信号503と、当該総和信号をローパスフィルタ208によって平滑化した信号504が示される。
【0093】
前述したように、光ディスク装置1の内部の温度等が変化することで総和信号のピーク値が変化する。また、アクセス対象の光ディスクの位置が内側から外側に移動したこと等により、レーザ光の反射光量が変化すると、総和信号のピーク値だけでなく振幅値も変化する。例えば、図9の(A)において、前記初期設定の完了後の総和信号501のピーク値(ピーク基準値)が2.0Vであり、前記初期設定の完了後の総和信号501の振幅値(以下、振幅基準値、とも表す。)が1.0Vであるとする。また、図9の(B)において、例えば、環境変化後の総和信号503のピーク値が2.3Vであり、総和信号503の振幅値が1.1Vであるとする。この場合に、環境変化前の総和信号501のピーク基準値(2.0V)と環境変化後の総和信号503のピーク値(2.3V)との差分を算出すると、算出した差分(0.3V)にはオフセット変化量だけでなく振幅の変化分まで含まれる。そのため、算出した差分をそのままPE信号用オフセット回路237にフィードバックすると、過度のオフセット調整となってしまう虞がある。そこで、オフセット変化量検出回路237は、環境変化前後の総和信号の振幅の変化の割合を考慮して、総和信号のオフセット変化量を算出する。具体的には、オフセット変化量検出回路237は、ピーク基準値をVpref、振幅基準値をVwref、振幅値をVw、ピーク値をVpとしたとき、演算式“Vpref × Vw/Vwref − Vp”によってオフセット変化分を算出する。例えば上記の数値例の場合、2.0×(1.1/1.0)−2.3=−0.1〔V〕となり、オフセット変化量だけを検出することができる。
【0094】
図10は、上記演算を実現するためのオフセット変化量検出回路237の回路構成の一例を示すブロックである。同図に示されるように、オフセット変化量検出回路237は、例えば、ピーク検波回路2071、ピーク基準値用レジスタ2072、振幅基準値用レジスタ2075、ボトム検波回路2076、減算器2077、2080、除算器2078、及び乗算器2079から構成される。
【0095】
ボトム検波回路2076は、総和信号の最小値(ボトム値)を検出してホールドし減算器2077に出力する。減算器2077は、ピーク検波回路2071によって検出されたピーク値から、ボトム検波回路2076によって検出されたボトム値を減算することで、総和信号の振幅値を算出する。振幅基準値用レジスタ2075には、例えば、前記初期設定の完了直後に前記減算器2077によって算出された総和信号の振幅値が振幅基準値として格納される。除算器2078は、減算器2077によって算出された総和信号の振幅値を、振幅基準値用レジスタ2075に設定された振幅基準値で除算して出力する。乗算器2079は、ピーク基準値用レジスタ2072に格納されたピーク基準値に、前記除算器2078で算出された値を乗算して出力する。減算器2080は、乗算器2079によって算出された値からピーク検出回路2071によって検出された値を減算し、減算した値をオフセット変化分として出力する。以上の回路構成とすることで、振幅の変動分を含まずに、オフセット量の変化分のみを検出することができる。
【0096】
PE信号用オフセット回路209は、実施の形態1と同様に、ローパスフィルタ208を介して入力された総和信号と、オフセット調整用レジスタ2092の値と、オフセット変化量検出回路237によって検出された前記オフセット変化量とを加算することで、総和信号の信号レベルをシフトさせて出力する。これにより、環境変動によるオフセット量の変化を考慮したオフセット調整が実現される。
【0097】
図11は、光ディスク装置5の再生動作(又は記録動作)の流れの一例を示すフロー図である。
【0098】
光ディスク3が光ディスク装置5に装填されると、CPU220は光検出のための初期設定を開始する。ステップ101〜111の処理は、光ディスク装置1の処理フロー(図6)と同様である。ステップ111でトラッキングサーボが実行されると、オフセット変化量検出回路237が総和信号のピーク値を検波し、その値をピーク基準値としてピーク基準値用レジスタ2072に設定するともに、振幅値を算出し、その値を振幅基準値として振幅基準値用レジスタ2075に設定する(S201)。これにより、環境変動前の総和信号の状態が保持される。
【0099】
その後、光ディスク3の認識が完了すると、CPU220は光ディスク3の再生処理(又は記録処理)の開始を再生系(又は記録系)の機能部に指示することで、再生動作(又は記録動作)が開始される(S113)。再生動作中(又は記録動作中)は、オフセット変化量検出回路237が、常に総和信号のピーク値と振幅値を検出する(S202)。オフセット変化量検出回路237は、検出したピーク値及び振幅値と、ピーク基準値及び振幅基準値とに基づいて前記オフセット変化量を算出し、算出した前記オフセット変化分をPE信号用オフセット回路209に与える(S203)。また、フォーカスサーボ不能判定回路218が、オフセット調整がなされた総和信号に基づいてフォーカスサーボ制御の不能判定を行う(S116)。再生動作中(又は記録動作中)は、ステップ202、203、116の処理が常に実行される。
【0100】
以上、実施の形態2に係る光ディスク装置5によれば、実施の形態1と同様に、環境変動によるオフセット変化量を考慮してリアルタイムに総和信号のオフセット成分を除去することができる。また、再生動作又は記録動作中にレーザ光の反射光量が変化して総和信号の振幅が変化した場合であっても、環境変動によるオフセット変化量のみを検出することができるから、より精度よく総和信号のオフセット成分を除去することができる。これにより、環境変動の影響を受けない総和信号を生成することができるから、環境変動によらずフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号を最適な信号レベルに保つことができ、反射光量の少ない光ディスクであっても、安定したフォーカスサーボ制御及びトラッキングサーボ制御を実現することができる。また、環境変動の影響を受けない総和信号を生成することで、環境変動によらずフォーカスサーボ不能を正常に検出すること可能となる。
【0101】
≪実施の形態3≫
図12は、実施の形態3に係る光ディスク装置の構成を例示するブロック図である。同図に示される光ディスク装置6は、電気信号A〜Hのオフセット調整を行うオフセット回路240_A〜240_Hに、検出した総和信号のオフセット変化量をフィードバックすることで、電気信号A〜Hの環境変動によるオフセット変化量を考慮したオフセット調整を行う。
【0102】
同図に示されるデータ処理制御部22は、データ処理制御部20と同様に、特に制限されないが、公知のCMOS集積回路の製造技術によって1個の単結晶シリコンのような半導体基板に形成されている。なお、データ処理制御部22は上記のように1つの集積回路で構成されたものである必要はなく、マルチチップで形成されたものでもよい。光ディスク装置6において、光ディスク装置1及び5と同様の構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0103】
図13は、データ処理制御部22におけるサーボ制御に係る機能部の一例を示すブロック図である。
【0104】
図13に示されるように、オフセット変化量検出回路207、及びフィードバック部239によって総和信号のオフセット変化分をオフセット回路240_A〜240_H(総称する場合は、オフセット回路240と表す。)にフィードバックする経路が形成される。
【0105】
図14は、オフセット回路240へのフィードバック経路を形成する機能部の詳細を示す説明図である。
【0106】
オフセット変化量検出回路207で検出された総和信号の前記オフセット変化量は、フィードバック部239に入力される。フィードバック部239は、例えば、ゲイン回路243と、スイッチ回路241_A〜241_H(総称する場合は、スイッチ回路241と表す。)から構成される。ゲイン回路243は、前記オフセット変化量から1つの電気信号あたりのオフセット変化量(以下、単位オフセット変化量、とも表す。)を算出する。ゲイン回路243は、例えば乗算器2431及びレジスタ2432から構成される。乗算器2431は、オフセット変化量検出回路207から出力された前記オフセット変化量と、前記レジスタ2432の値とを乗算することで、前記単位オフセット変化量を算出する。前記レジスタ2432には、例えば、フィードバックするオフセット変化量の割合を決定するための値が格納される。例えば、前述したように、前記総和信号は4つの電気信号A〜Dの総和であるから、前記総和信号には4つの電気信号の夫々のオフセット量が加算されていることになる。そこで、1つの電気信号あたりのオフセット変化量をフィードバックするためにゲインを調整する。例えば、総和信号のオフセット変化量の4分の1の量を単位オフセット変化量としてフォードバックしたい場合には、レジスタ2422には“0.25”を設定する。このように必要に応じてレジスタ2432に設定する値を変えることによって、フィードバックするオフセット変化量を減らすこともできるし、増やすこともできる。
【0107】
前記ゲイン回路243によって生成された前記単位オフセット変化量は、スイッチ回路241によって選択されたオフセット調整回路240_A〜240_Hに入力される。スイッチ回路241は、CPU220によってオン・オフが制御される。例えば、総和信号に係る電気信号A〜Dについてのみ環境変動によるオフセット変化量を考慮したオフセット調整を行う場合には、CPU220は、スイッチ241_A〜241_Dのスイッチをオンし、スイッチ241_E〜241_Hのスイッチをオフする。また、全ての電気信号A〜Hについて環境変動によるオフセット変化量を考慮したオフセット調整を行う場合には、スイッチ241_A〜241_Hの全てのスイッチをオンする。これにより、環境変動によるオフセット変化量を考慮したオフセット調整を行う電気信号を任意に選択することができる。
【0108】
オフセット回路240_A〜240_Hは、電気信号A〜Hの夫々に対応して設けられ、対応する電気信号のオフセット調整を行うための回路である。オフセット回路240_A〜240_Hの回路構成は夫々同一とされるため、ここでは代表的にオフセット回路253_Aについて説明する。
【0109】
オフセット回路240_Aは、例えば、レジスタ244_A、及びオフセット調整部242_Aから構成される。レジスタ244_Aには、光ディスク3を装填したときの電気信号のオフセット量が小さくなるようなオフセット調整量が、前記初期設定においてCPU220により設定される。オフセット調整部242_Aは、レジスタ244_Aの値とスイッチ回路241_Aを介して入力された単位オフセット変化量に基づいてオフセット調整量を決定し、決定したオフセット調整量に基づいて電気信号Aの信号レベルをシフトしてゲイン回路202_Aに出力する。オフセット調整部242_Aは、具体的には、入力した電気信号Aを設定された抵抗比に応じて抵抗分圧して出力するDAC等によって構成される。例えば、オフセット調整部242_Aは、前記レジスタ244_Aに初期設定されたオフセット調整量に前記単位オフセット変化分を加算することでオフセット調整量を補正し、補正後のオフセット調整量に応じた抵抗分圧比で電気信号の信号レベルをシフトさせて出力する。これにより、電気信号A〜Hの環境変動によるオフセット変化量を考慮したオフセット調整が可能となる。
【0110】
例えば、電気信号A〜Hに対応する夫々のアナログ回路(オフセット回路240_A〜240_Hやゲイン回路202_A〜202_H)が、同一の回路構成且つ同一の素子サイズで設計されていれば、環境変化に応じてオフセット量が同じ方向にドリフトする可能性が高い。そこで、光ディスク装置6のように、総和信号の環境変動によるオフセット変化量を検出して、検出したオフセット変化量に基づいて前記単位オフセット変化量を算出することで、電気信号A〜Hのオフセット変化量を容易に取り除くことができる。これにより、前記サーボ制御に用いる信号に対するオフセット調整を行わなくとも、前記サーボ制御に用いる信号のオフセット成分を低減することができるので、PE信号用オフセット回路209、FE信号用オフセット回路213、及びTE信号用オフセット回路215が不要となり、データ処理制御部20のチップ面積を低減することができる。また、実施の形態1と同様に、環境変動の影響を受けない総和信号を生成することができるから、環境変動によらずフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号を最適な信号レベルに保つことができ、反射光量の少ない光ディスクであっても、安定したフォーカスサーボ制御及びトラッキングサーボ制御を実現することができる。更に、環境変動の影響を受けない総和信号を生成することで、環境変動によらずフォーカスサーボ不能を正常に検出すること可能となる。
【0111】
≪実施の形態4≫
図15は、実施の形態4に係る光ディスク装置の構成を例示するブロック図である。同図に示される光ディスク装置7は、電気信号A〜Hのオフセット変化分を時分割で検出し、電気信号A〜Hのオフセット調整を行うオフセット回路253_A〜253_Hにフィードバックすることで、電気信号A〜Hの環境変動によるオフセット変化量を考慮したオフセット調整を行う。
【0112】
同図に示されるデータ処理制御部23は、データ処理制御部20と同様に、特に制限されないが、公知のCMOS集積回路の製造技術によって1個の単結晶シリコンのような半導体基板に形成されている。なお、データ処理制御部23は上記のように1つの集積回路で構成されたものである必要はなく、マルチチップで形成されたものでもよい。光ディスク装置7において、光ディスク装置1、5、及び6と同様の構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0113】
図16は、データ処理制御部23におけるサーボ制御に係る機能部の一例を示すブロック図である。
【0114】
図16に示されるように、選択回路(MUX)250、オフセット変化量検出回路251、及びフィードバック部252により、電気信号A〜Hのオフセット変化量をオフセット回路253_A〜253_Hにフィードバックする経路が形成される。
【0115】
図17は、オフセット回路253_A〜253_Hへのフィードバック経路を形成する機能部の詳細を示す説明図である。
【0116】
ADコンバータ203によってデジタル化された電気信号A〜Hは選択回路250に入力される。選択回路250は、CPU220からの選択信号により電気信号A〜Hのうちいずれか1つを選択して出力する。選択される電気信号は、例えば電気信号A、電気信号B、・・・、電気信号G、電気信号Hの順に切り替わるが、その順序に特に制限はない。
【0117】
オフセット変化量検出回路251は、選択回路250で選択された電気信号のオフセット変化量を検出して出力する。前記オフセット変化量の検出は、オフセット変化量検出回路207と同様に、前記選択された電気信号のピーク値の変化分を検出することにより行う。検出された前記オフセット変化量は、ゲイン回路254に入力される。ゲイン回路254は、例えば乗算器2541及びレジスタ2542から構成される。乗算器2541は、オフセット変化量検出回路251によって検出された電気信号のオフセット変化量と、レジスタ2542の値と乗算することで、オフセット回路253にフィードバックするオフセット変化量を算出して出力する。前記レジスタ2542には、例えば、フィードバックするオフセット変化量の割合を決定するための値が格納される。例えば、デジタル化された電気信号A〜Hは、前述したようにゲイン回路202によって増幅されているため、前記デジタル化された電気信号A〜Hに含まれるオフセット変化分も増幅されていることになる。そこで、オフセット変化量をフィードバックする際には、ゲイン回路202によって増幅された分を取り除く。例えば、ゲイン回路202_Aの増幅率が2倍である場合には、ゲイン回路254の増幅率を0.5倍にするようにレジスタ2542の値を設定する。また、必要に応じてレジスタ2542に設定する値を変えることによって、フィードバックするオフセット変化分を減らすこともできるし、増やすこともできる。
【0118】
ゲイン回路254によって算出されたオフセット変化分は選択回路255に入力される。選択回路255は、オフセット変化分をフィードバックするオフセット回路253_A〜253_H(総称する場合は、オフセット回路253と表す。)をCPU220からの選択信号に応じて選択する。選択されたオフセット回路253にはゲイン回路254によってゲイン調整がなされたオフセット変化量が入力される。
【0119】
オフセット回路253_A〜253_Hは、電気信号A〜Hの夫々に対応して設けられ、対応する電気信号のオフセット調整を行うための回路である。オフセット回路253_A〜253_Hの回路構成は夫々同一とされるため、ここでは代表的にオフセット回路253_Aについて説明する。
【0120】
オフセット回路253_Aは、例えば、第1レジスタ256_A、スイッチ回路257_A、第2レジスタ258_A、オフセット調整部259_A、及び第3レジスタ260_Aから構成される。第1レジスタ256_Aは、選択回路255を介して入力されたオフセット変化量を一時的に格納する。当該レジスタの値は、選択回路255によって選択される毎に更新される。スイッチ回路257_Aは、CPU220によりオン・オフが制御される。第2レジスタ258_Aは、スイッチ回路257_Aがオンしたときに第1レジスタ256_Aの値を取り込み、スイッチ回路257_Aがオフしている間は取り込んだ値を保持する。前記第3レジスタ260_Aには、光ディスク3を装填したときの電気信号のオフセット量が小さくなるようなオフセット調整量(初期値)が、前記初期設定においてCPU220により初期設定される。オフセット調整部259_Aは、第2レジスタ258_Aの値と第3レジスタ260_Aの値に基づいてオフセット調整量を決定し、決定したオフセット調整量に基づいて、電気信号Aの信号レベルをシフトしてゲイン回路202_Aに出力する。オフセット調整部259_Aは、具体的には、入力した電気信号Aを設定された抵抗比に応じて抵抗分圧して出力するDAC等によって構成される。例えば、オフセット調整部259_Aは、前記第3レジスタ260_Aに初期設定されたオフセット調整量に第2レジスタ258_Aの設定値を加算することでオフセット調整量を補正し、補正後のオフセット調整量に応じた抵抗分圧比で電気信号の信号レベルをシフトさせて出力する。これにより、電気信号A〜Hの環境変動によるオフセット変化量を考慮したオフセット調整が可能となる。
【0121】
図18は、電気信号A〜Hのオフセット調整のタイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【0122】
CPU220は、選択回路250及び選択回路255の選択信号を時分割で切り替える。例えば、参照符号600で示されるタイミングで選択回路250に電気信号Aを選択させ、その後、電気信号B、電気信号C、・・・、電気信号G、電気信号Hの順番で各電気信号を選択させることで、夫々の電気信号のオフセット変化量を検出させる。また、CPU220は、選択回路250と同様の順序及びタイミングで選択回路255の選択信号を切り替えることで、オフセット回路253_A〜253_Hの各第1レジスタ256_A〜256_Hに、電気信号A〜Hのオフセット変化量が順次格納される。その間、スイッチ回路257_A〜257_Hはオフさせておく。そして、全ての第1レジスタ256_A〜256_Hにオフセット変化量が格納されたタイミング601において、CPU220は選択回路250及び選択回路255のスイッチをオフさせるとともに、スイッチ回路257_A〜257_Hの全てをオンする。これにより、オフセット回路253_A〜253_Hの各第2レジスタ258の値が一括して更新され、オフセット調整部260_A〜260_Hは、更新された値に基づいて、対応する電気信号A〜Hのオフセット調整を行う。その後CPU220は、タイミング602において、選択回路250及び選択回路255の選択信号の時分割に切り替える処理を再開する。その後は上記と同様の処理が繰り返される。
【0123】
以上、実施の形態4に係る光ディスク装置7によれば、実施の形態3の光ディスク装置6と同様に、総和信号等のサーボ制御に用いる信号を生成する前の段階で、電気信号A〜Hの環境変動によるオフセット変化量を考慮したオフセット調整を行うことができる。これによれば、前記サーボ制御に用いる信号に対するオフセット調整を行わなくとも、オフセット成分を低減することができるので、PE信号用オフセット回路209、FE信号用オフセット回路213、及びTE信号用オフセット回路215が不要となり、データ処理制御部20のチップ面積を低減することができる。また、デジタル化された電気信号A〜Hのオフセット変化量を時分割に検出するから、オフセット変化量検出回路251を電気信号の数に応じて設ける必要がなく、データ処理制御部23の小面積化に資する。
【0124】
また、実施の形態1と同様に、環境変動の影響を受けない総和信号を生成することができるから、環境変動によらずフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号を最適な信号レベルに保つことができ、反射光量の少ない光ディスクであっても、安定したフォーカスサーボ制御及びトラッキングサーボ制御を実現することができる。更に、環境変動の影響を受けない総和信号を生成することで、環境変動によらずフォーカスサーボ不能を正常に検出すること可能となる。
【0125】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0126】
例えば、実施の形態1乃至4のデータ処理装置20〜23において、ADコンバータ203によって信号をデジタル化する位置はゲイン回路202の後段に限られない。また、ADコンバータ203を取り除き、アナログ信号処理で総和信号等のサーボ制御に用いる信号を生成してもよい。この場合、総和信号演算回路204、フォーカスエラー信号演算回路205、及びトラッキングエラー信号演算回路206はアナログ回路となるので、これらの演算回路で生じるオフセット分も考慮する必要がある。例えば、実施の形態3及び4において、前記演算回路204〜206がアナログ回路で構成される場合には、PE信号用オフセット回路209、FE信号用オフセット回路213、及びTE信号用オフセット回路215を設けることで、前記演算回路204〜206で重畳されるオフセット成分をより精度良く除去することができる。
【0127】
また、実施の形態3において、オフセット変化量検出回路207の代わりにオフセット変化量検出回路237を適用することも可能である。これにより、実施の形態2と同様に、より精度よく総和信号のオフセット成分を除去することができる。更に、実施の形態4のオフセット変化量検出回路251において、オフセット変化量237と同様に、入力する電気信号A〜Hの振幅値を考慮して電気信号A〜Hのオフセット変化量を算出してもよい。これによれば、反射光量の変化により電気信号A〜Hの振幅が変化した場合であっても、より精度よく電気信号A〜Hのオフセット成分を除去することができる。
【符号の説明】
【0128】
1、5、6、7 光ディスク装置
2 ホストPC
3 光ディスク
11 スピンドルモータ
12 ドライバIC
10 光ピックアップ
101、102 光検出器
A〜H 受光素子、電気信号
103 レーザ制御部(LSR_CNT)
104 差動信号生成部
RFP 正側のRF信号
RFN 負側のRF信号
20 データ処理制御部
233 RF信号生成回路
234 ADコンバータ
235 再生信号処理回路
226 再生レーザパワー制御回路
227 ウォブル信号生成部
228 ADコンバータ
229 アドレス情報取得部
230 記録用信号処理部
231 記録レーザパワー制御回路
220 CPU
224 内蔵フラッシュメモリ
225 内蔵SDRAM
232 回転制御回路
201_A〜201_H オフセット回路
202_A〜202_H ゲイン回路
203 ADコンバータ
204 総和信号演算回路
205 フォーカスエラー信号演算回路
206 トラッキングエラー信号演算回路
208、211、214 ローパスフィルタ(LPF)
209 PE信号用オフセット回路
210 PE信号用ゲイン回路
212 FE信号用オフセット回路
213 FE信号用ゲイン回路
215 TE信号用オフセット回路
216 TE信号用ゲイン回路
217 ゲイン制御回路
219 サーボ信号処理回路
221 トラッキング制御用DAコンバータ
222 フォーカス制御用DAコンバータ
218 フォーカスサーボ不能判定回路
223 外部I/F回路
301、302 サーボ駆動信号
2071 ピーク検波回路
2072 ピーク基準値用レジスタ
2073 減算器
2091 加算器
2092 オフセット調整用レジスタ
401 初期設定の完了後の総和信号
402 初期設定の完了後の平滑化した総和信号
403 環境変化後の総和信号
404 環境変化後の平滑化した総和信号
405 初期設定の完了後の総和信号
406 オフセット調整前の総和信号
407 オフセット調整後の総和信号
21 データ処理制御部
237 オフセット変化量検出回路
501 初期設定の完了後の総和信号
502 初期設定の完了後の平滑化した総和信号
503 環境変化後の総和信号
504 環境変化後の平滑化した総和信号
2075 振幅基準値用レジスタ
2076 ボトム検波回路
2077、2080 減算器
2078 除算器
2079 乗算器
22 データ処理制御部
239 フィードバック部
240_A〜240_H オフセット回路
243 ゲイン回路
2431 乗算器
2432 レジスタ
241_A〜241_H スイッチ回路
242_A〜242_H オフセット調整部
244_A〜244_H レジスタ
23 データ処理制御部
250、255 選択回路
251 オフセット変化量検出回路
252 フィードバック部
253_A〜253_H オフセット回路
254 ゲイン回路
2541 乗算器
2542 レジスタ
256_A〜256_H 第1レジスタ
257_A〜257_H スイッチ回路
258_A〜258_H 第2レジスタ
259_A〜259_H オフセット調整部
260_A〜260_H 第3レジスタ
600〜602 タイミング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクにアクセスするための光ディスク装置であって、
対物レンズを介して前記光ディスクにレーザ光を照射し、その反射光を受光素子の受光面に集光して反射光量に応じたアナログ信号を生成する光ピックアップと、
前記光ピックアップを制御して前記光ディスクにおける光スポットの位置を制御するサーボ制御に用いる信号を、前記アナログ信号に基づいて生成する信号生成部と、
前記サーボ制御に用いる信号に重畳されているオフセット量の変化量を検出するオフセット変化量検出部と、
前記サーボ制御に用いる信号を整形する信号整形部と、
前記信号整形部によって整形された信号に基づいて前記サーボ制御を行うサーボ制御部と、を有し、
前記信号整形部は、装填された光ディスクに応じた光検出のための初期設定において前記オフセット量を低減するように設定されたオフセット調整量を、前記検出されたオフセット量の変化量に応じて補正し、補正後のオフセット調整量に基づいて前記サーボ制御に用いる信号を調整する、光ディスク装置。
【請求項2】
前記オフセット変化量検出部は、前記初期設定が完了後に検出した前記サーボ制御に用いる信号のピーク値と、前記サーボ制御に用いる信号のピーク値との差分を演算し、前記差分を前記オフセット変化量とする、請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記オフセット変化量検出部は、前記初期設定の完了後からの前記サーボ制御に用いる信号の振幅の変化の割合を考慮して、前記サーボ制御に用いる信号のピーク値が前記初期設定の完了後からどの程度変化したかを示すピーク値の変化量を演算し、前記演算したピーク値の変化量を前記オフセット変化量とする、請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記オフセット変化量検出部は、前記初期設定の完了後からの前記サーボ制御に用いる信号の振幅値の変化の割合を算出し、前記変化の割合と前記初期設定の完了後に検出した前記サーボ制御に用いる信号のピーク値とを乗算するとともに、乗算した値と前記サーボ制御に用いる信号のピーク値との差分を算出し、前記差分を前記ピーク値の変化量とする、請求項3記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記サーボ制御に用いる信号は、前記反射光量の総和に応じた総和信号と、フォーカスサーボ制御のためのフォーカスエラー信号と、トラッキングサーボ制御のためのトラッキングエラー信号とを含み、
前記オフセット変化量検出部は、前記総和信号の前記オフセット変化量を検出し、
前記信号整形部は、前記総和信号の前記オフセット変化量に基づいて前記補正を行って前記総和信号を調整し、前記調整した総和信号に応じて、前記フォーカスエラー信号と前記トラッキングエラー信号の大きさを調整する、請求項2記載の光ディスク装置。
【請求項6】
光ディスクにアクセスするための光ディスク装置であって、
対物レンズを介して光ディスクにレーザ光を照射し、その反射光を複数設けられた受光素子の受光面に集光して反射光量に応じたアナログ信号を前記受光素子毎に生成する光ピックアップと、
前記アナログ信号を整形する信号整形部と、
前記光ピックアップを制御して前記光ディスクにおける光スポットの位置を制御するサーボ制御に用いる信号を、前記整形された前記アナログ信号に基づいて生成する信号生成部と、
前記サーボ制御に用いる信号に重畳されているオフセット量の変化量を検出するオフセット変化量検出部と、
前記サーボ制御に用いる信号に基づいて前記サーボ制御のための処理を行い、前記光ピックアップを制御するサーボ制御部と、を有し、
前記信号整形部は、装填された光ディスクに応じた光検出の初期設定において前記アナログ信号に重畳されているオフセット量を低減するように設定されたオフセット調整量を、前記検出されたオフセット量の変化量に応じて補正し、補正後のオフセット調整量に基づいて前記アナログ信号を調整する、光ディスク装置。
【請求項7】
前記サーボ制御に用いる信号は、前記複数設けられた受光素子のうち所定の受光素子に対応するアナログ信号の総和に基づいて生成される総和信号を含み、
前記オフセット変化量検出部は、前記総和信号の前記オフセット量の変化量を検出し、
前記信号整形部は、前記総和信号のオフセット量の変化量に基づいて、前記所定の受光素子に対応するアナログ信号毎のオフセット量の変化量を算出するとともに、前記算出した前記アナログ信号毎のオフセット量の変化量に基づいて、前記アナログ信号の調整を行う、請求項6記載の光ディスク装置。
【請求項8】
前記信号整形部による前記調整対象のアナログ信号は選択可能とされる、請求項7記載の光ディスク装置。
【請求項9】
光ディスクにアクセスするための光ディスク装置であって、
対物レンズを介して光ディスクにレーザ光を照射し、その反射光を複数設けられた受光素子の受光面に集光して反射光量に応じたアナログ信号を前記受光素子毎に生成する光ピックアップと、
前記受光素子毎のアナログ信号を整形する信号整形部と、
前記光ピックアップを制御して前記光ディスクにおける光スポットの位置を制御するサーボ制御に用いる信号を、前記信号整形部によって整形されたアナログ信号に基づいて生成する信号生成部と、
前記信号整形部によって整形された前記受光素子毎のアナログ信号に重畳されているオフセット量の変化量を、前記受光素子毎に時分割に検出するオフセット変化量検出部と、
前記サーボ制御に用いる信号に基づいて前記サーボ制御を行うサーボ制御部と、を有し、
前記信号整形部は、装填された光ディスクに応じた光検出の初期設定において、前記受光素子毎の前記アナログ信号に重畳されているオフセット量を低減するように前記受光素子毎に初期オフセット調整量が設定され、対応する受光素子毎に前記初期オフセット調整量を前記オフセット量の変化量に応じて補正し、補正後のオフセット調整量に基づいて対応する受光素子に係る前記アナログ信号を調整する、光ディスク装置。
【請求項10】
光ピックアップを制御し、光ディスクにアクセスするための処理を行う半導体装置であって、
前記光ピックアップによって生成された、前記光ディスクに照射されたレーザ光の反射光量に応じたアナログ信号を入力して、前記光ディスクにおける光スポットを制御するサーボ制御に用いる信号を生成する信号生成部と、
前記サーボ制御に用いる信号に重畳されているオフセット量の変化量を検出するオフセット変化量検出部と、
前記サーボ制御に用いる信号を整形する信号整形部と、
前記信号整形部によって整形された信号に基づいて前記サーボ制御を行うサーボ制御部と、を有し、
前記信号整形部は、装填された光ディスクに応じた光検出のための初期設定において前記オフセット量を低減するように設定されたオフセット調整量を、前記検出されたオフセット量の変化量に応じて補正し、補正後のオフセット調整量に基づいて前記サーボ制御に用いる信号を調整する半導体装置。
【請求項11】
前記オフセット変化量検出部は、前記初期設定の完了後に検出した前記サーボ制御に用いる信号のピーク値と、前記サーボ制御に用いる信号のピーク値との差分を演算し、前記差分を前記オフセット変化量とする、請求項10記載の半導体装置。
【請求項12】
前記オフセット変化量検出部は、前記初期設定の完了後からの前記サーボ制御に用いる信号の振幅の変化の割合を考慮して、前記サーボ制御に用いる信号のピーク値が前記初期設定の完了後からどの程度変化したかを示すピーク値の変化量を演算し、前記演算したピーク値の変化量を前記オフセット変化量とする、請求項10記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−20664(P2013−20664A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151530(P2011−151530)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】