説明

光ディスク装置

【課題】 記録開始直後に発生するウォブル信号の乱れの影響を受けずに、その一方で、偏心等の影響に対しては追従するように構成されているクロック生成手段を有する光ディスク装置を提供する。
【解決手段】 本発明の光ディスク装置は、光ディスク1に形成されたウォブリングから読み出された抽出ウォブル信号を、データ記録時にデータ記録時以外より小さな増幅度で増幅できる増幅ヘッド4と、上記増幅ヘッド4から出力された増幅ウォブル信号の振幅が目標値となるように利得制御を行うAGC5と、上記AGC5から出力された利得制御ウォブル信号の振幅に比例した変動幅で、上記抽出ウォブル信号へウォブルクロックを追従させることのできるPLL6とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスク装置に関し、より具体的には、光ディスク等のディスク記録媒体に対して記録および再生を行うディスクドライブ装置に適用されるクロック生成手段を備えている光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、データの記録および再生を行える様々な光ディスクが提案されている。このような光ディスクの具体例として、CD−R(Compact Disc - Recordable)、CD−RW(Compact Disc - ReWritable)、DVD−R(Digital Versatile Disc - Recordable)、DVD−RW(Digital Versatile Disc - ReWritable)、DVD+RW(Digital Versatile Disc + ReWritable)等が挙げられる。
【0003】
これらの光ディスクではデータを記録するために、ディスク上に予め溝(グルーブ)を形成し、データ記録のためのデータトラックとしている。
【0004】
上記グルーブは一定の周期で蛇行(ウォブリング)して形成されており、ウォブリングからウォブル信号を読み出すことができる。このウォブル信号は記録用のクロックを生成するのに使われる。
【0005】
すなわち、光ディスク記録/再生装置(光ディスク装置)では、記録クロックを発振するPLL(Phase Lock Loop)が構成されており、この記録クロックの調整の基準としてウォブル信号が用いられるのである。つまり、PLLで、ウォブル信号に同期したウォブルクロックを生成し、このウォブルクロックを逓倍して記録用クロックを生成し、この記録クロックに基づいてデータの記録を行う。このように、記録用のクロックはウォブル信号に基づいて生成されるため、上記ウォブル信号は精度よく検出する必要がある。
【0006】
しかしながら、一般的に、ウォブル信号は、図9(a)に示すように、再生動作から記録動作に切り替わってからしばらくの期間(同図中の切り替わり時刻T1からT2で示される期間)、つまり光ディスクに照射されるレーザーパワーが切り替わる期間に、波長が乱れる。図9(b)はその時のウォブル信号を2値化した信号である。これによると、記録開始直後はウォブル信号が乱れるため、その2値化信号も乱れている。このため、2値化信号を用いて生成する記録用のクロックも乱される。上述のような問題点に対して、対策の一例が特許文献1に開示されている。以下、特許文献1に開示されている技術の概略を説明する。
【0007】
特許文献1に開示されている発明によれば、図9(c)に示すように再生動作から記録動作に移行する時点T1の、直前からある一定の期間(時刻T0からT3の間)だけウォブルイネーブル信号を低電圧値“L”とする。そして、クロック生成用PLLでは、このウォブルイネーブル信号が高電圧値“H”の場合のみウォブル信号の引き込み動作を行い、ウォブルイネーブル信号が“L”の場合はウォブル信号のPLLへの入力は無視される。つまり、再生動作から記録動作へ移行する前後のウォブル信号は無視され、位相比較の出力はホールドされるというものである。
【0008】
これにより、記録開始直後の波長が乱れたウォブル信号は無視され、ウォブルクロックが乱されることがなくなる。
【特許文献1】特開2001−118244(公開日:2001年4月21日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した技術では以下のような問題が生じる。
【0010】
一般に、光ディスクはその製造時にある一定の範囲内で中心ずれが起こることが許容されている。また、光ディスク装置においてもスピンドルモータ等の軸中心ずれが必ず存在する。このため、ディスクが1回転する間でも、レーザ光が照射されている部分の回転中心からの距離は変動している。つまり、レーザ光が照射されている部分の線速が偏心に応じて変動しており、このため再生されるウォブル信号の周波数も変動する。また、光ディスク装置に外乱が加わることによってモータの回転が乱れ、ウォブル信号の周波数が変動することもあり得る。
【0011】
しかしながら、特許文献1に示されているPLLでは、再生動作から記録動作に切り替わる期間(時刻T0からT3の間)は、入力であるウォブル信号を無視しPLLは自走する構成となっている。このため、時刻T1からT3の期間(実際の記録は時刻T1から開始される)、すなわち、データの記録開始部分は、ディスクの回転に同期していない記録用クロックで記録が行われることになる。通常、データの記録開始部分は、再生時にデータに同期したクロックを抽出するための再生用のPLLを引き込むために重要な部分である。それゆえ、ディスクに同期していないPLLクロックでデータが記録された場合、データを再生できない恐れがある。
【0012】
したがって、光ディスク装置は、このような偏心や外乱による線速度の変動には追従し、その一方で、記録開始直後のウォブル信号の乱れからは影響をほとんど受けないという、相反する要求を満たすことが望まれている。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、記録開始時のウォブル信号の乱れの影響を殆ど受けず、かつ、ディスク及び光ディスク装置のスピンドルモータの偏心や外乱等に起因するウォブル信号の周波数変動には追従することができるクロック生成手段を有する光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の光ディスク装置は、上記課題を解決するために、光ディスクに形成されているウォブリングから読み出された抽出ウォブル信号を、データ記録時に非データ記録時より小さい増幅度で増幅する増幅手段と、上記増幅手段によって増幅された増幅ウォブル信号の振幅を、所定期間が経過した後に、予め設定された目標値となるように利得制御して、利得制御ウォブル信号を出力する自動利得制御手段と、上記利得制御ウォブル信号の振幅に比例した変動幅で、上記抽出ウォブル信号に追従するように修正したウォブルクロックを生成することができるクロック生成手段と、を備えていることを特徴としている。
【0015】
なお、「抽出ウォブル信号に追従する」とは、抽出ウォブル信号に同期する方向へ、ウォブルクロックの位相を変更することを示す。
【0016】
上記構成によれば、ウォブリングから読み出された抽出ウォブル信号は、記録時に非記録時よりも小さい増幅度で増幅される。すなわち、記録開始時には、自動利得制御手段に入力される増幅ウォブル信号の振幅が急に小さくなることになる。そして、自動利得制御手段では、増幅ウォブル信号の振幅を、所定時間が経過した後目標値になるように利得制御するので、非記録時から記録動作に切り替わった(記録開始)直後は、急激に小さいままである。つまり、増幅ウォブル信号の振幅の変化に伴って、利得制御手段が利得制御されるまで、および完全に目標値に達するまでの間、利得ウォブル信号が、目標値よりも小さくなる。したがって、利得制御ウォブル信号は、記録状態における記録開始直後にだけ振幅が小さくなる。
【0017】
さらに、クロック生成手段において生成されるウォブルクロックは、利得制御ウォブル信号の振幅に比例した変動幅で、抽出ウォブル信号に位相が近づくように修正される構成である。したがって、記録開始直後のウォブルクロックは、低い割合でしか、抽出ウォブル信号に追従修正されなくなる。
【0018】
従って、ウォブルクロックは、記録開始直後の、乱れている可能性の高い抽出ウォブル信号に対しては、低い割合で抽出ウォブル信号に追従し、それ以外の利得制御ウォブル信号が目標値に達した後は、より高い割合で正確に追従する。
【0019】
また、修正する割合は小さいものの、クロック生成手段は記録開始直後から抽出ウォブル信号に追従したウォブルクロックを生成することが可能であるため、記録開始直後の偏心や外乱等に起因するウォブル信号の周波数の変化に対しても、ウォブルクロックを追従させることができる。
【0020】
以上のことから、本発明は、ウォブルクロックを生成する際に、記録開始直後の抽出ウォブル信号の乱れの影響を減らしつつ、抽出ウォブル信号に追従し、かつ、それ以外の期間は抽出ウォブル信号の変化に対しては従来どおり追従することができるという効果を奏する。
【0021】
なお、上記「所定期間」は、使用する光ディスク装置に応じて、少なくとも抽出ウォブル信号が大きく乱れる期間を含む任意の期間に設定すればよい。また、「予め設定された目標値」も、使用する光ディスク装置に応じて、クロック生成手が通常どおりの抽出ウォブル信号への追従ができる程度の振幅に設定すればよい。また、所定期間が経過した後にウォブル信号の振幅があらかじめ設定された目標値になるようにする方法としては、例えば、目標値になるまでに振幅が段階的に変化するように利得を設定したり、所定期間経過後に振幅を増幅させる設定とすればよい。
【0022】
また、本発明の光ディスク装置は、上記自動利得制御手段は、増幅ウォブル信号を、段階的に利得制御することを特徴としている。
【0023】
これによれば、後段のクロック生成手段へ出力される利得制御ウォブル信号の振幅が、記録開始からある一定の時間後の目標値となるまでの間、連続的に大きくなる。したがって、この間は、クロック生成手段での修正の割合(追従帯域)も、連続的に大きくなる。よって、記録開始直後の、抽出ウォブル信号に乱れが生じている可能性が高い期間は、小さな割合で周波数を修正し、その後時間が経過するにしたがって、修正の変動幅が連続的に大きくなる。
【0024】
抽出ウォブル信号の乱れの発生頻度は、記録開始直後に最も多くそれからだんだん減っていく。本発明では、この乱れの発生頻度に対応して、発生頻度が高いときはウォブルクロックの修正を少しずつ行い、発生頻度が低くなるにつれてその修正割合を大きくできる。すなわち、クロック生成手段は、記録開始時のウォブル信号の乱れに対する意図しない追従を減少させ、時間と共に追従を大きくしていくとこができるという効果を奏する。
【0025】
さらに、増幅ウォブル信号を段階的に利得制御して、利得制御ウォブル信号をなだらかに変化させた方が、ウォブルクロックの位相変化がなだらかになり、再生データ用のPLLにとっては追従しやすい。
【0026】
本発明の光ディスク装置は、上記構成に加えて、上記自動利得制御手段は、データ記録以外の動作からデータ記録動作に切り替わる際の上記抽出ウォブル信号の波形が乱れる期間よりも後に、上記利得制御ウォブル信号の振幅が目標値となるように利得制御することを特徴とする。
【0027】
上記構成によれば、利得制御によって目標の振幅に収束した時点では、記録開始直後に発生したウォブル信号の乱れはすでに発生しなくなっている。言い換えれば、ウォブル信号が乱れている間は、利得制御ウォブル信号の振幅は目標値より低くなっている。従って、ウォブル信号が乱れている間は、利得制御ウォブル信号の振幅は定常状態の振幅よりも小さくなり、それによって、クロック生成手段における位相の変動幅(追従帯域)も定常状態より小さくすることができる。よって、ウォブル信号の乱れは、ウォブルクロックに影響しにくくなる。
【0028】
本発明の光ディスク装置は、上記構成に加えて、上記クロック生成手段は、上記抽出ウォブル信号に追従させたウォブルクロックを発振する発振手段と、上記ウォブルクロックと自動利得制御手段により生成された利得制御ウォブル信号とを比べて位相誤差信号を生成する位相誤差検出手段と、を備えており、上記発振手段は、上記位相誤差信号に基づいて位相誤差を修正されることにより、抽出ウォブル信号に追従したウォブルクロックを生成することを特徴としている。
【0029】
上記構成によれば、発振手段は、常に抽出ウォブル信号に対して追従しているウォブルクロックを発振することができる。
【0030】
また、上記位相誤差検出手段は、ウォブルクロックの波形に対して直交関係にある比較信号を用いて位相誤差信号を生成していることを特徴としている。
【0031】
これによれば、良好にウォブルクロックの位相誤差の修正を行える。
【0032】
また、上記位相誤差検出手段は、上記ウォブルクロックの波形に対して直交関係にある比較信号を出力する直交変換手段と、上記比較信号と上記利得制御ウォブル信号とを乗算して、位相誤差検出用信号を出力する乗算手段と、上記位相誤差検出用信号を平滑化して位相誤差信号を出力する平滑化手段と、を備えていることを特徴としている。
【0033】
直交変換手段は、発振手段により出力されたウォブルクロックの波形に対して直交関係にある比較信号を出力する。例えば、ウォブルクロックがそれぞれ正弦波または余弦波の場合、対応する比較信号は、それぞれ余弦波または正弦波となる。さらに、上記乗算手段は、上記比較信号と上記利得制御されたウォブル信号とを乗算して位相誤差検出用信号を出力する。上記比較信号は、上記ウォブルクロックに対して位相が90°異なる関係(直交関係)にあることから、上記利得制御されたウォブルクロックと上記比較信号との乗算値である位相誤差検出用信号には、正弦値である(A/2)×sinθ(ただし、θは上記ウォブルクロックと上記ウォブル信号との位相差を表し、Aは入力される上記利得制御ウォブル信号の振幅を表す)が含まれる。従って、平滑化手段により上記乗算値を平滑化して和信号(高周波成分)を取り除けば、上記正弦値で表される位相誤差信号を得ることができる。
【0034】
つまり、本発明によってクロック生成手段は上述のように、利得制御ウォブル信号の振幅に比例し、ウォブルクロックと利得制御ウォブル信号との位相誤差に基づいた位相誤差信号を得ることができるという効果を奏する。
【0035】
なお、ここで、位相誤差信号は正弦値であるので、0<θ≦180°の範囲で正の値を示し、−180°≦θ<0の範囲で負の値を示す。従って、位相誤差信号が正の値であれば、ウォブル信号よりもウォブルクロックの位相が進んでいると判断でき、位相誤差信号が負の値であれば、ウォブルクロックの位相が遅れていると判断できる。
【0036】
従って、位相誤差信号の電圧の正/負およびその絶対値に応じた割合で、ウォブルクロックの周波数を修正することにより、ウォブルクロックを抽出ウォブル信号と同じ位相である利得制御ウォブル信号に追従させることができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0037】
本発明における光ディスク装置は、上述のように、光ディスクに形成されているウォブリングから読み出された抽出ウォブル信号を、データ記録時に、非データ記録時より小さい増幅度で増幅する増幅手段と、上記増幅手段によって増幅された増幅ウォブル信号を、所定時間が経過した後に、上記増幅ウォブル信号の振幅が予め設定された目標値となるように利得制御して、利得制御ウォブル信号を出力する自動利得制御手段と、上記利得制御ウォブル信号の振幅に比例した変動幅で、上記抽出ウォブル信号に追従するように修正したウォブルクロックを生成するクロック生成手段と、を備えている。
【0038】
これにより、非データ記録時からデータ記録時に切り替わるときに発生する抽出ウォブル信号の乱れが、ウォブルクロックの周波数調整にあまり影響しないようにしつつ、抽出ウォブル信号に追従でき、かつ、それ以外の期間のウォブル信号の変化に対しては従来どおり追従することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の実施の一形態について、図1から図8に基づいて以下に説明する。
【0040】
図1は本実施の形態における光ディスク装置の主要部分を示す構成図である。
【0041】
なお、光ディスクには、従来例に示した如くウォブリングが形成されているものとする。光ディスクの具体例としては、CD−R,CD−RW,DVD−R,DVD−RW,DVD+RW等が挙げられる。
【0042】
上記光ディスク装置は、図1に示すように、スピンドルモータ2、光ピックアップ3、増幅ヘッド(HEAD、増幅手段)4、AGC(Auto Gain Control、自動利得制御手段)5、PLL(Phase Lock Loop、クロック生成手段)6、制御部7、記録部8を備えている。
【0043】
スピンドルモータ2は、光ディスク1を装填し、回転駆動させるためのものである。光ピックアップ3は、光ディスク1にレーザ光を照射すると共に、光ディスク1からの反射光を受光して、データの記録/再生を行うものである。また、光ピックアップ3は、光ディスク1のウォブリングから読み出した信号である抽出ウォブル信号を、後段の増幅ヘッド4に出力する。
【0044】
増幅ヘッド4は、光ピックアップ3から入力される抽出ウォブル信号を、記録時には非記録時より小さな増幅度で増幅し、増幅ウォブル信号として、AGC5に出力するものである。AGC5は、入力された増幅ウォブル信号が制御部7により設定された振幅目標値になるように、振幅の利得制御を行って利得制御ウォブル信号としている。PLL6はPLL回路で構成されており、入力された利得制御ウォブル信号に同期した、ウォブルクロックを生成するためのものである。
【0045】
制御部7は、増幅ヘッド4、AGC5、記録部8を制御するものである。記録部8は、ピックアップ3に光ディスク1へのデータの記録をさせるものである。
【0046】
ここで、データを光ディスク1に記録する場合の制御動作を説明する。記録動作指示に応じて、制御部7は、記録部8に対してデータを出力すると共に、記録状態を示す記録コマンド信号を生成して、増幅ヘッド4に送る。記録コマンド信号は、記録状態でない場合は高電圧値‘H’を示し、記録状態である場合低電圧値‘L’を出力する信号である。増幅ヘッド4は、この記録コマンド信号を受けて、記録コマンドが記録状態を示すイネーブルか、記録状態でないことを示すディスエーブルかによって、ウォブル信号の増幅度を切り替えて出力する。具体的には、記録コマンドがイネーブルの場合は、ディスエーブルの場合よりも小さい増幅度で抽出ウォブル信号が増幅されるようになっている。つまり、イネーブルの場合の方が、ディスエーブルの場合に比べて後段に出力される増幅ウォブル信号の振幅は小さくなる。
【0047】
AGC5は、このように記録状態か否かによって異なる振幅を有する増幅ウォブル信号を、制御部7により予め設定された目標の振幅(振幅目標値)に向けて、連続的あるいは段階的に変化するように利得制御している。そして、PLL6は、このようにして生成された利得制御ウォブル信号を利用してウォブルクロックを生成する。記録部8は、PLL6によって生成されたウォブルクロックに同期させて、制御部7から送られてきたデータを光ピックアップ3に出力している。
【0048】
次に、図2を用いて増幅ヘッド4について説明する。図2は、図1における増幅ヘッド4の具体的な構成を示すブロック図である。
【0049】
増幅ヘッド4は、第1増幅器41、第2増幅器42、切り替え部43からなる。第1増幅器41、第2増幅器42は共に増幅器であり、入力されるウォブル信号をそれぞれ異なる増幅度で増幅するものである。なお、仮に増幅器41の増幅度をα倍、増幅器42の増幅度をβ倍とすると、α>βとなるように設定されている。抽出ウォブル信号は、それぞれの増幅器に供給され、それぞれの増幅度で増幅された2種の信号が生成される。切り替え部43は、制御部7の記録コマンド信号がイネーブル('L’)かディスエーブル('H')かによって、上記2種の信号から後段に増幅ウォブル信号として出力する信号を選択する。具体的には、記録コマンドがディスエーブル、つまり記録状態でない場合は、増幅度の大きい第1増幅器41から出力された信号を選択し、記録コマンドがイネーブル、つまり記録状態の場合は増幅度の低い第2増幅器42から出力された信号を選択する。このようにして、増幅ヘッド4は記録状態の場合とそれ以外の場合とで出力する増幅ウォブル信号の振幅を変化させている。
【0050】
なお、増幅度αは、PLL6が通常通りの変動幅で位相誤差を修正できる増幅度(例えば10倍)であり、増幅度βは、それよりは小さいが、位相誤差の修正がある程度の効果を発揮する変動幅になる増幅度(例えば1倍)である。また、α:βは10:1程度とすることが好ましい。
【0051】
次に、図3を用いてAGC5について説明する。図3は、図1におけるAGC5の具体的な構成を示すブロック図である。
【0052】
AGC5は、電圧制御増幅器(VCA:Voltage Controlled Amplifier)51と、AGC(AGC:Auto Gain Control)制御部52を有する。電圧制御増幅器51は、設定された電圧に従って、入力された増幅ウォブル信号の振幅を増幅させて利得制御ウォブル信号とするものである。AGC制御部52は、電圧制御増幅部51から出力された信号の振幅を検出し、検出された振幅と、制御部7より設定された目標値と、から誤差を検出し、電圧制御増幅器51にフィードバックをする。電圧制御増幅器51は、このフィードバックされた誤差に基づいて、設定電圧を変更し、誤差を修正するよう利得制御を行う。AGC5では、このようなフィードバックループを構成することにより、出力振幅が目標値に収束するように制御される。
【0053】
なお、AGC5の利得制御の方法は、以下のとおりである。
【0054】
AGC5のフィードバックループ系の伝達特性G(s)、すなわち、増幅ウォブル信号が変化してから利得制御ウォブル信号が定常状態になるまでの時間は、(1)式
G(s)=1/(1+sT) ・・・(1)
で示されるような一次遅れ系によって構成されている。
【0055】
ただし、ここでTは増幅ウォブル信号の入力に対する利得ウォブル信号の応答の速さを示す時定数で、sは複素数を示す。
【0056】
これにより、増幅ウォブル信号は、その信号の変化に遅れて(所定時間が経過した後)目標値となる。この所定時間は、例えば、数msecから数十msec秒程度とすれば十分である。また、振幅の目標値によりPLLの帯域(変動幅)が左右されるため、後段のVCOのゲイン等を鑑みながら、PLLの帯域が所望の値(例えば数kHz)となるように設定する。
【0057】
また、上記の(1)式のように示される応答特性で、AGC5へ入力される増幅ウォブル信号の振幅は、連続的あるいはステップ的に変化するように、利得制御の修正値(AGC制御部52が電圧制御増幅器51に与える電圧の修正値)の設定している。このときのインディシャル応答A(t)は(2)式
A(t)=1−exp(−t/T) ・・・(2)
(ただし、tは時間を示す。)
のように表される。なお、インディシャル応答Aとは、目標値への追従特性を示し、つまり、増幅ウォブル信号入力から時間tが経過したときの利得制御ウォブル信号の振幅の相対値(目標振幅を1とした場合の振幅値)である。
【0058】
図4はこの(2)式のインディシャル応答A(t)を示している。図4に示されているように、一次遅れ系によって構成されている制御系のステップ応答は、時定数Tの大きさに応じて目標値に収束する時間が変化する。すなわち、時定数Tを適当な値に設定することにより応答の時間を制御することができる。なお、この時定数TはAGC制御部52もしくは電圧制御増幅器51によって予め設計できることは言うまでもない。
【0059】
続いて、図5を用いてPLL6について詳細に説明を行う。図5は、図1におけるPLL6の具体的な構成を示すブロック図である。
【0060】
PLL6は、位相差検出器(位相差検出手段)68と、電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator,発振手段)66を備えている。PLL6はPLL回路となっており、ウォブルクロックのフィードバック制御を行って、利得制御ウォブル信号に同期したウォブルクロックを生成する。
【0061】
位相差検出器68は、A/Dコンバータ61、位相比較器(乗算手段)62、ローパスフィルタ(平滑化手段)63、極性反転器64、ループフィルタ65、直交成分発生器(直交変換手段)67を備えている。
【0062】
A/Dコンバータ61は、アナログ信号をデジタル信号に変換するためのものである。つまり、アナログ信号としてPLL6に入力した利得制御ウォブル信号は、A/Dコンバータ61によりデジタル化したデジタルウォブル信号に変換される。
【0063】
位相比較器62は、A/Dコンバータ61から送られてくるデジタルウォブル信号と、後述する直交成分発生器67から出力される比較信号との乗算結果である位相誤差検出用信号を出力するための回路である。
【0064】
ローパスフィルタ63は、位相比較器62からの出力である位相誤差検出用信号を平滑化することにより、位相誤差検出用信号から高周波数成分を除去した位相誤差信号を出力するための回路である。すなわち、位相誤差検出用信号は、利得制御ウォブル信号と上記比較信号との乗算結果であり、利得制御ウォブル信号と比較信号との和信号および差信号が含まれている。ローパスフィルタ63によって、上記位相誤差検出用信号から、利得制御ウォブル信号と比較信号との和信号(高周波成分)を除去することによって、利得制御ウォブル信号と比較信号との差信号からなる平滑化位相誤差信号を出力している。
【0065】
極性反転器64は、ローパスフィルタ63からの出力である位相誤差信号の極性を反転して極性反転位相誤差信号を生成する回路であり、極性反転位相誤差信号をループフィルタ65を介して電圧制御発振器66へ送ることで、位相誤差信号を負帰還させる。
【0066】
ループフィルタ65は、極性反転器64によって生成された極性反転済位相誤差信号を、電圧制御発振器66へ出力するものであり、このとき、ループフィルタ65の特性が、定常状態におけるPLL6の帯域(変動幅)およびダンピング数に影響する。
【0067】
電圧制御発振器66は、光ディスク1のウォブリングに同期したウォブルクロックを発振するためのものである。つまり、電圧制御発振器66は、ループフィルタ65から送られてきた極性反転位相誤差信号に応じて、ウォブルクロックの位相を変更することで、ウォブリングの周波数に追従させている。出力されたウォブルクロックは、逓倍されて記録クロックとして記録部8に出力されるとともに、フィードバック制御のために、直交成分発生手段67にも出力される。
【0068】
直交成分発生手段67は、電圧制御発振器66から出力されるウォブルクロックに基づいて、上記ウォブルクロックと直交する関係にある波形信号を比較信号として位相比較器62へ出力する回路である。例えば、電圧制御発振器66から出力されるウォブルクロックの波形が余弦波(コサイン波)である場合、余弦波(コサイン波)の位相を90°進めた波形は正弦波(サイン波)となるので、直交成分発生手段67は、正弦波(サイン波)を比較信号として生成し、位相比較器62へ出力する。なお、電圧制御発振器66から出力されるウォブルクロックの波形が正弦波である場合、直交成分発生手段67は90°位相を進めた余弦波を比較信号として生成する。
【0069】
続いて、非記録状態から時刻T4にて記録状態になった場合の、各部で出力される信号の波形について説明する。
【0070】
図6(a)の波形図は、制御部7によって増幅ヘッド4に出力される記録コマンド信号を示している。図6(a)において、時刻T4以前は非記録状態であり、高電圧レベルの'H’(ディスエーブル状態)を示している。一方、時刻T4以降は記録状態では、低電圧レベルの'L’(イネーブル状態)を示している。
【0071】
図6(b)は増幅ヘッド4から出力される増幅ウォブル信号を示している。増幅ヘッド4は、上記したように、記録コマンド信号に応じて採用する増幅器を変える。従って、記録状態ではない時刻T4までは、記録コマンド信号のディスエーブル状態に対応して、増幅度の高い第1増幅器41の出力信号が増幅ヘッド4の出力信号(増幅ウォブル信号)として選択されている。時刻T4以降は記録状態なので、記録コマンド信号のイネーブル状態に対応して、増幅度の低い第2増幅器42の出力信号が増幅ヘッド4の出力信号(増幅ウォブル信号)として選択されている。よって、増幅ウォブル信号は、T4以前は大きな振幅を、T4以後はよりも大きな振幅となる。
【0072】
図6(c)はAGC5から出力される利得制御ウォブル信号を示している。時刻T4までは、非記録状態であり、さらに非記録状態が十分続いている定常状態であるので、利得制御ウォブル信号の振幅は、自動利得制御5の修正により目標値に収束している。一方、時刻T4において記録が開始された直後は、上述したように、記録コマンド信号のイネーブル状態に対応して増幅ヘッド4の増幅度が急に低下するので、AGC5に入力される信号(図6(b)に示す増幅ウォブル信号)の振幅も急に小さくなる。このとき、AGC5はフィードバック系により振幅目標値に近づくように利得を制御するが、この制御は、図4に示すような一次遅れ系の応答を示すため、記録開始直後の振幅は目標値に比べて小さくなり、その後、目標値に向かって振幅が増大していく。
【0073】
ここで、定数Tは、AGC5から出力される利得制御ウォブル信号が、目標値に収束する時間が、記録開始直後のウォブル信号が乱れる期間よりも後になるように設定することが好ましい。後述する構成のPLL6では、入力振幅(つまり、利得制御ウォブル信号の振幅)が小さくなると誤差検出ゲインが小さくなり、ひいてはウォブルクロックの抽出ウォブル信号への追従帯域(追従の変動幅)が小さくなる。このため、記録開始直後のウォブル信号が乱れる期間は、利得制御ウォブル信号の振幅を目標値より小さくして、PLL6での追従帯域を小さくしてやることで、抽出ウォブル信号の乱れに対してウォブルクロックが影響を受けにくくなる。一方、PLL6は、低い誤差検出ゲインながらもウォブルクロックの抽出ウォブル信号への追従は続けているため、記録開始直後の外乱等の影響に対しても追従を行う。このため、本発明の構成によれば、記録直後に、ウォブル信号の乱れの影響は受けにくく、その一方で、外乱、偏心等の乱れに対してある程度の追従ができる。
【0074】
次に、PLL6のウォブルクロックの補正動作について、図7に示す波形図を用いて説明する。
【0075】
図7(a)は、利得制御された後にPLL6へ入力され、A/Dコンバータ61によってデジタル化されたデジタルウォブル信号の波形を示している。なお、この実施例においては、一例としてデジタルウォブル信号を余弦波とするが、これに限定されるものではなく、正弦波等であってもよい。
【0076】
このデジタルウォブル信号は、位相差比較部62で比較信号と比較される。ここで、この比較信号の生成方法について説明する。図7(b)は電圧制御発振器66が出力するウォブルクロックの波形を示している。図7においては、一例として、電圧制御発振器66からの出力であるウォブルクロックの位相が、デジタルウォブル信号の位相よりも30°進んでいるもの(誤差が生じている)と仮定する。電圧制御発振器66からの出力であるウォブルクロックは、直交成分発生手段67に出力され、図7(c)に示すような、位相を90°進めた波形の比較信号に変換される。
【0077】
この比較信号は位相比較器62に出力され、位相差比較器62は、図7(a)のデジタルウォブル信号の波形と図7(c)の比較信号の波形とを乗算して図7(d)に示す波形の位相誤差検出用信号を出力する。この位相誤差検出用信号は、デジタルウォブル信号と比較信号との位相差に対応した波形となる。この例の場合、ウォブルクロックがデジタルウォブル信号より30°進んでいるので、30°に対応した値だけ0Vより+側に偏る。
【0078】
位相差誤差検出用信号は、LPF63にて平滑化されて高周波成分を除去され、図7(d)の太線のような+電圧の位相誤差信号となる。すなわち、デジタルウォブル信号の位相よりも電圧制御発振器66の出力であるウォブルクロックの位相が進んでいる場合、位相誤差検出用信号を平滑化した位相誤差信号は正の値を持つ。
【0079】
一方、デジタルウォブル信号の位相よりも電圧制御発振器66の出力であるウォブルクロックの位相が30°遅れている場合、つまり、デジタルウォブル信号が図8(a)、ウォブルクロックが図8(b)のような波形を示している場合、比較信号は図8(c)のような波形となり、位相誤差検出用信号は図8(d)の波形のように−側に偏る。この場合、位相誤差検出用信号を平滑化した位相誤差信号は図8(d)の太線に示すように負の値を持つ。
【0080】
この平滑化された位相誤差信号は、極性反転手段64により極性が反転されると共にループフィルタ65を介して電圧制御発振器66へ入力される。そして、電圧制御発振器66は、極性の反転された上記位相誤差信号の値に応じて、上記ウォブルクロックの位相差のずれを修正することで、デジタルウォブル信号へ追従したウォブルクロックを新たに出力している。
【0081】
このように、電圧制御発振器66は、デジタルウォブル信号と同期したウォブルクロックを生成するよう制御されているので、この例において出力されるウォブルクロックの波形は必然的に余弦波となる。
【0082】
なお、PLL6に構成されているPLL回路がロックしている状態とは、図7(a)に示す入力ウォブル信号の位相と図7(b)に示すウォブルクロックの位相とが一定の関係になっている状態をいう。
【0083】
次に、上記の位相誤差検出について数式を用いて説明する。
【0084】
まず、A/Dコンバータ61からの余弦波の入力ウォブル信号は(3)式:
入力ウォブル信号=A×cos2πft ・・・(3)
のように表すことができる。
ただし、fはウォブリングの単一周波数部分に対応する周波数であり、tは時間を示し、Aは入力されるウォブル信号の振幅を示す。そして、電圧制御発振器66の出力であるウォブルクロックの位相が、PLL6へ入力するウォブル信号の位相よりもθだけ進んでいる(誤差が生じている)ものとする。
【0085】
PLL6に入力するウォブル信号は(3)式で仮定したように余弦波であるため、電圧制御発振器66から出力するウォブルクロックは(4)式:
ウォブルクロック=cos(2πft+θ) ・・・(4)
(−180°<θ≦180°)
のように表される。
【0086】
そして、直交成分発生手段67はウォブルクロックの位相を90°進めた比較信号を出力するので、該比較信号は(5)式:
比較信号=sin(2πft+θ) (−180°<θ≦180°) ・・・(5)
のようになる。
【0087】
さらに、位相比較器62は(3)式と(5)式の乗算結果を出力するので、位相比較器62が出力する位相誤差検出用信号は(6)式:
位相誤差検出用信号=A×cos2πft×sin(2πft+θ)
=(A/2)×{sin(4πft+θ)+sinθ} ・・・(6)
のようになる。
【0088】
そして、ローパスフィルタ63は、上記位相誤差検出用信号から高周波成分(広域成分)を除去した位相誤差信号を出力する。つまり、(6)式から高周波成分が除去されるため、(6)式の第1項は無視できる。このため、ローパスフィルタ43が出力する位相誤差信号は(7)式:
位相誤差信号=(A/2)×sinθ ・・・(7)
のようになる。上記(7)式が検出される位相誤差である。
【0089】
なお、位相誤差信号はθの正弦値に比例するので、θが0°<θ≦180°の範囲(進んでいる状態)で正の値を示し、−180°≦θ<0°の範囲(遅れている状態)で負の値を示す。すなわち、入力ウォブル信号の位相よりも電圧制御発振器66が出力するウォブルクロックの位相が進んでいる場合、位相誤差信号は正の値になる。一方、入力ウォブル信号の位相よりも電圧制御発振器66の出力するウォブルクロックの位相が遅れている場合、上記位相誤差信号は負の値になる。よって、位相誤差信号の正/負により、ウォブルクロックの位相が遅れているのか、進んでいるのかがわかり、これに基づいてウォブルクロックの位相を調整できる。
【0090】
また、位相誤差信号は、デジタルウォブル信号の振幅Aに比例する。したがって、デジタルウォブル信号の振幅に応じてウォブルクロックの位相の修正割合(すなわち、追従の変動幅)が決定することになる。よって、記録開始に振幅が小さく、それから、所定時間(抽出ウォブル信号が乱れる期間)後に、目標の振幅値になる利得制御ウォブル信号に基づいて、ウォブルクロックの修正割合も初めに小さく、それからだんだんと大きくなる。
【0091】
これにより、記録開始直後のウォブル信号が乱れる期間は、利得制御ウォブル信号の振幅を目標値より小さくなっているので、PLL6での追従の変動幅が小さくなり、抽出ウォブル信号の乱れに対してウォブルクロックが影響を受けにくくなる。一方、PLL6は、低い割合ではあるが、ウォブルクロックの抽出ウォブル信号への追従は続けているため、記録開始直後の外乱等の影響に対しても追従を行う。このため、本発明の構成によれば、記録直後に、ウォブル信号の乱れの影響は受けにくく、その一方で、外乱、偏心等の乱れに対してある程度の追従ができるようになる。
【0092】
さらに、ウォブルクロックの抽出ウォブル信号への追従の変動幅はなだらかに変化するので、再生用のPLLも追従しやすくなる。
【0093】
以上のような構成により、容易に位相誤差を検出することができ、検出した位相誤差信号を極性反転手段64によって極性を反転して、電圧制御発振器66にフィードバックすることによって、電圧制御発振器66が出力するウォブルクロックは、入力ウォブル信号との位相差がゼロに収束するようにフィードバック制御される。
【0094】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0095】
また、本発明は、以下の構成とすることもできる。
【0096】
光ディスクに形成されたウォブリングから読み出されたウォブル信号の増幅度をデータ記録時とデータ記録時以外とで異なった増幅度に設定することができる増幅手段と、上記増幅手段の出力である増幅されたウォブル信号を入力とし、入力信号の振幅が予め設定された目標値となるよう利得制御を行う自動利得制御手段と、自動利得制御手段の出力である利得制御されたウォブル信号を入力とし、入力信号の振幅に比例してその入力信号への追従帯域が変化する構成のクロック生成手段とが備えられていることを特徴とする第1の光ディスク装置。
【0097】
上記増幅手段は、記録動作時の増幅度は記録動作時以外の増幅度よりも小さいように設定されていることを特徴とする第1の光ディスク装置。
【0098】
上記自動利得制御手段は、ある一定の時定数で目標の振幅となるように入力信号の利得制御を行い、上記ある一定の時間とは記録時以外の状態から記録状態に変化する際に入力されるウォブル信号波形が乱れる期間よりも長く設定されていることを特徴とする第1の光ディスク装置。
【0099】
上記クロック生成手段は、光ディスクに形成されたウォブリングから読み出されたウォブル信号と同期するウォブルクロックを発振する発振手段と、上記ウォブルクロックの波形に対して直交関係にある波形である比較信号を出力する直交変換手段と、上記比較信号と上記ウォブル信号とを乗算する乗算手段と、上記乗算した結果を平滑化して、平滑化した乗算結果を位相誤差信号として出力する平滑化手段とが備えられていることを特徴とする第1の光ディスク装置。
【0100】
上記発振手段は、上記位相誤差信号に基づいて、ウォブルクロックの周波数を制御することを特徴とする第1の光ディスク装置。
【0101】
上記クロック生成手段は光ディスクに形成されたウォブリングから読み出されたウォブル信号を入力し、該ウォブル信号と同期するウォブリングクロックを発振するクロック生成手段であって、上記ウォブリングクロックに直交する波形信号をフィードバック制御するPLLが構成されていることを特徴とする第1の光ディスク装置。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明に係る光ディスク装置は、再生動作等の記録以外の動作から記録動作への切り替わり直後に発生するウォブル信号の乱れの影響を受けず、その一方で、偏心等の外乱の影響に対しては追従を行うクロック生成手段を有する。従って、記録が可能な光ディスク装置、特にCD−R、CD−RW、DVD−R、DVD−RW、DVD+RW等の光ディスク記録/再生装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、光ディスク装置の構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施形態を示すものであり、光ディスク装置の増幅ヘッドの構成を示したブロック図である。
【図3】本発明の実施形態を示すものであり、光ディスク装置のAGCの構成を示したブロック図である。
【図4】本発明の実施形態を示すものであり、AGCが一次の遅れ要素により構成されている場合のインディシャル応答の様子を示した図である。
【図5】本発明の実施形態を示すものであり、図1の増幅手段4、AGC5の記録動作を開始する直前と直後のそれぞれの出力波形をあらわした図である。
【図6】本発明の実施形態を示すものであり、図1のPLL6の構成を示したブロック図である。
【図7】本発明の実施形態を示すものであり、図6のクロック生成手段において、ウォブルクロックの位相がウォブル信号の位相よりも30°進んでいる場合の、各ブロックの入出力信号の波形を示した図であり、(a)はクロック生成回路に入力する入力ウォブル信号を示し、(b)は電圧制御発振器の出力するウォブルクロックを示し、(c)は直交成分発生手段が出力する比較信号を示し、(d)は位相比較器が出力する位相誤差検出用信号およびループフィルタが出力する位相誤差信号を示す。
【図8】本発明の実施形態を示すものであり、図6のクロック生成手段において、ウォブルクロックの位相がウォブル信号の位相よりも30°遅れている場合の、各ブロックの入出力信号の波形を示した図であり、(a)はクロック生成回路に入力する入力ウォブル信号を示し、(b)は電圧制御発振器の出力するウォブルクロックを示し、(c)は直交成分発生手段が出力する比較信号を示し、(d)は位相比較器が出力する位相誤差検出用信号およびループフィルタが出力する位相誤差信号を示す。
【図9】従来技術を示すものであり、(a)は記録動作を開始した直後のウォブル信号の乱れを示し、(b)は(a)のウォブル信号を2値化した場合の信号を示し、(c)は従来の光ディスク装置においてPLLをホールドするウォブルイネーブル信号を示す。
【符号の説明】
【0104】
4 増幅ヘッド(増幅手段)
5 AGC(自動利得制御手段)
6 PLL(クロック生成手段)
7 制御手段
8 記録手段
62 位相比較器(乗算手段)
63 ローパスフィルタ(平滑化手段)
66 電圧制御発振器(発振手段)
67 直交成分発生手段(直交変換手段)
68 位相誤差検出部(位相誤差検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに形成されているウォブリングから読み出された抽出ウォブル信号を、データ記録時に、非データ記録時より小さい増幅度で増幅する増幅手段と、
上記増幅手段によって増幅された増幅ウォブル信号の振幅を、所定時間が経過した後に、予め設定された目標値となるように利得制御して、利得制御ウォブル信号を出力する自動利得制御手段と、
上記利得制御ウォブル信号の振幅に比例した変動幅で、上記抽出ウォブル信号に追従するように修正したウォブルクロックを生成するクロック生成手段と、を備えていることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
上記自動利得制御手段は、増幅ウォブル信号を、段階的に利得制御することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
上記自動利得制御手段は、データ記録以外の動作からデータ記録動作に切り替わる際の、上記抽出ウォブル信号の波形が乱れる期間よりも後に、上記利得制御ウォブル信号の振幅が目標値となるように利得制御することを特徴とする請求項1または2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
上記クロック生成手段は、
上記抽出ウォブル信号に追従させたウォブルクロックを発振する発振手段と、
上記ウォブルクロックと自動利得制御手段により生成された利得制御ウォブル信号とを比べて位相誤差信号を生成する位相誤差検出手段と、を備えており、
上記発振手段は、上記位相誤差信号に基づいて位相誤差を修正されることにより、抽出ウォブル信号に追従したウォブルクロックを生成することを特徴とする請求項1、2、または3に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
上記位相誤差検出手段は、
ウォブルクロックの波形に対して直交関係にある比較信号を用いて位相誤差信号を生成することを特徴とする請求項4に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
上記位相誤差検出手段は、
上記ウォブルクロックの波形に対して直交関係にある比較信号を出力する直交変換手段と、
上記比較信号と上記利得制御ウォブル信号とを乗算して、位相誤差検出用信号を出力する乗算手段と、
上記位相誤差検出用信号を平滑化して位相誤差信号を出力する平滑化手段と、を備えていることを特徴とする請求項5に記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−12278(P2006−12278A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186946(P2004−186946)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】