説明

光ディスク装置

【課題】偏重心ディスク再生時の振動を抑え、騒音の小さな光ディスク装置を提供することである。
【解決手段】光ディスク装置は、メインシャーシと、該メインシャーシに組み付けられたトラバースシャーシと、該トラバースシャーシの嵌合ボス10aを嵌めるカム溝20bを有し、カム溝20bに沿って嵌合ボス10aを移動させることにより前記トラバースシャーシを昇降させるカムスライダ20とを備え、カムスライダ20に、再生位置にある前記トラバースシャーシの嵌合ボス10aの下面を支持するL字型で樹脂製の板バネ20eを一体成型する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DVD、CD等の光ディスクを再生、記録する光ディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DVD、CD等の光ディスクを再生、記録する光ディスク装置には種々の形態がある。例えば、ディスクトレイを有する形態やディスクトレイを持たないスロットインの形態などがある。そして、ディスクトレイを有する形態においては、ディスクトレイ上に載置された光ディスクがディスクトレイの駆動により装置内に収容され、トラバースシャーシの駆動によりチャッキングされて再生位置に移動させられる。
【0003】
上記の動作のうち、通常、ディスクトレイの駆動とトラバースシャーシの駆動とは1つのモータで行われる。そのため、トラバースシャーシの駆動にはカムスライダが用いられる。カムスライダにはトラバースシャーシの嵌合ボスを嵌めるカム溝が形成されており、カム溝に沿って嵌合ボスが移動することによりトラバースシャーシが昇降する。またスロットインの形態でも、同様にカムスライダやトラバースシャーシが用いられる。
【0004】
このトラバースシャーシの昇降時にはトラバースシャーシとトラバースシャーシが組み付けられたメインシャーシとの接触による騒音が発生する。そこで、特許文献1には、板バネを設けてトラバースの昇降時の衝撃を緩和するディスク装置が開示されている。
【特許文献1】特開2002−288914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光ディスクは大量生産されているため、各光ディスクの品質には誤差があり、光ディスクの中心に対して重心が偏ったディスクも存在する。この偏重心ディスクを再生しようとすると、回転がぶれるため装置へ伝わる振動が大きくなる。そして、その振動を原因とする騒音が生じ、ユーザに不快感を与える。
【0006】
この騒音、つまり振動はトラバースシャーシとそれを組み付けるメインシャーシとの接触によって生じるので、従来はトラバースシャーシとメインシャーシとの間にダンパーを設けるなどして振動を吸収していた。しかし、ダンパーを設けるとコストアップになるため、ダンパーレス設計にて対応することが望まれる。ダンパーレス設計において偏重心ディスクの再生性能を向上させようとすると、各嵌合箇所の寸法精度を上げる必要があるが、金型の面数が多いと寸法精度を上げることは困難である。
【0007】
ここで、特許文献1の構成によると、トラバースシャーシの昇降時の振動は解決できるが、トラバースシャーシが上がった後、偏重心ディスクを再生する際の振動については抑えることはできない。
【0008】
本発明は、偏重心ディスク再生時の振動を抑え、騒音の小さな光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、メインシャーシと、該メインシャーシに組み付けられたトラバースシャーシと、該トラバースシャーシの嵌合ボスを嵌めるカム溝を有し、該カム溝に沿って前記嵌合ボスを移動させることにより前記トラバースシャーシを昇降させるカムスライダとを備えた光ディスク装置において、前記カムスライダに、再生位置にある前記トラバースシャーシの嵌合ボスを支持する板バネを設けることを特徴とする。
【0010】
この構成によると、偏重心ディスクを再生する場合、その回転がぶれてトラバースシャーシへ振動が伝わり、その振動は板バネに伝わり、板バネの弾性力で振動は吸収される。
【0011】
また上記の光ディスク装置において、コスト削減のため、前記板バネはカムスライダに一体成型することが望ましい。
【0012】
また上記の光ディスク装置において、トラバースシャーシの振動を効率よく抑えるためには、板バネを前記嵌合ボスの下面を支持するように設けることが望ましい。
【0013】
また本発明の光ディスク装置は、メインシャーシと、該メインシャーシに組み付けられたトラバースシャーシと、該トラバースシャーシの嵌合ボスを嵌めるカム溝を有し、該カム溝に沿って前記嵌合ボスを移動させることにより前記トラバースシャーシを昇降させるカムスライダとを備えた光ディスク装置において、前記カムスライダに、再生位置にある前記トラバースシャーシの嵌合ボスの下面を支持するL字型で樹脂製の板バネを一体成型する構成とすることにより、具体化される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、偏重心ディスク再生時の振動をカムスライダの板バネで吸収することにより、トラバースシャーシとメインシャーシの接触による騒音を抑えることができ、騒音の小さな光ディスク装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1はトラバースシャーシ及びカムスライダ周辺の上面図、図2は嵌合ボスが嵌合した状態のカムスライダの背面図である。トラバースシャーシ10は、メインシャーシ(不図示)に昇降可能に組み付けられる。トラバースシャーシ10とメインシャーシとの間には振動を吸収するためのダンパーなどは設けられておらず、所謂ダンパーレス設計となっている。トラバースシャーシ10には、光ディスクを載置して回転させるターンテーブル11と、光ディスクに記録・再生する光ピックアップと、それらを駆動するためのモータ13とが備えられている。そして、トラバースシャーシ10はその昇降を行うカムスライダ20と嵌合している。カムスライダ20はメインシャーシに組み付けられている。
【0016】
図3はトラバースシャーシ10の上面図、図4はトラバースシャーシ10の正面図、図5はトラバースシャーシ10の右側面図である。トラバースシャーシ10は金属板を成型したものである。トラバースシャーシ10の正面側にはカムスライダ20と嵌合する板状の嵌合ボス10aが突設されている。この嵌合ボス10aは後述するカムスライダ20のカム溝に嵌合する。また嵌合ボス10aの両側端はカムスライダ20のカム溝との滑りをよくするために、上面側に折り曲げられている。
【0017】
図6はカムスライダ20の上面図、図7はカムスライダ20の正面図、図8はカムスライダ20の右側面図、図9はカムスライダ20の背面図、図10は図9のA−A線断面図である。カムスライダ20はPOM(ポリオキシメチレン)等の樹脂を金型で一体成型したものである。カムスライダ20の背面上部には左右方向に延びるラック20aが形成されている。このラック20aはメインシャーシに設けられたカムスライダ駆動用のピニオン(不図示)に噛合している。従ってピニオンの回転によりカムスライダ20は左右に駆動される。
【0018】
またカムスライダ20には正面から背面に貫通するカム溝20bが形成されている。カム溝20bは略S字型であり、その上端部20cに嵌合ボス10aが位置するとトラバースシャーシ10が昇った状態、つまり光ディスクの再生位置となる。一方、カム溝20bの下端部20dに嵌合ボス20aが位置するとトラバースシャーシ10が降りた状態となり、つまり光ディスクがトレイの上に載置された状態となり、光ディスクの出し入れが可能となる。
【0019】
またカムスライダ20の背面には再生位置にあるトラバースシャーシ10の嵌合ボス10aを支持する板バネ20eが設けられている。この板バネ20eはPOM等の樹脂製であり、カムスライダ20に一体成型されている。一体成型することでコストの削減となる。板バネ20eはカムスライダ20の背面から水平方向にL字型に突出し、その先端上面には凸部20fが形成されている。そして凸部20fが嵌合ボス10aの下面に当接する。その際、板バネ20eが撓むので、その反発力により嵌合ボス10aが支持される。
【0020】
なお、板バネ20eは上記の形状に限定されることはなく、カム溝20bの上端部20c、つまり再生位置にある嵌合ボス10aを支持できる形状であればよい。
【0021】
このような構成の光ディスク装置に偏重心ディスクが挿入された場合、降下状態のトラバースシャーシ10が再生位置まで上昇する。具体的には、カムスライダ20がスライドすることにより嵌合ボス10aがカム溝20bに沿って下端部20dから上端部20cまで移動する(図2の状態)。嵌合ボス10aがカム溝20bの上端部20cに近づくと、嵌合ボス10aの下面が板バネ20eの凸部20fに当接し、嵌合ボス10aが完全に上端部20bまで移動した状態では嵌合ボス10aが板バネ20eの反発力により支持される。
【0022】
その後、再生のため偏重心ディスクが回転し始めると、その回転がぶれてトラバースシャーシ10へ振動が伝わる。そして、トラバースシャーシ10の振動は板バネ20eに伝わり、板バネ20eの弾性力でその振動は吸収される。従って、トラバースシャーシ10の振動が抑えられる。故にトラバースシャーシ10の振動によるメインシャーシへの接触を抑制できる。
【0023】
このように、偏重心ディスク再生時の振動をカムスライダの板バネ20eで吸収することにより、トラバースシャーシ10とメインシャーシの接触による騒音を抑えることができ、騒音の小さな光ディスク装置を提供することができる。
【0024】
本発明の光ディスク装置は、CDやDVD等の光ディスクを再生、記録する。光ディスク装置の一例としてDVDプレーヤを例にその構成を説明する。DVDプレーヤは、DVDにデジタル記録された画像データをデータ・ビット・ストリームとして読み出すディスクドライブ装置と、読み出されたデータ・ビット・ストリームから圧縮変換前の画像データと音声データとを復元して画像と音声を再生するデコーダと、DVDプレーヤ全体の動作を制御する制御部と、視聴制限の基準となる所定の周波数を格納するEEPROMと、リモコンからの赤外線の明滅信号による操作指示を入力する受光回路と、ユーザがDVDプレーヤに対する操作指示をDVDプレーヤ側にて実施可能な操作パネルとから構成されている。付属品として上記の操作指示を入力するリモコンがある。
【0025】
ディスクドライブ装置は、フォーカス用の磁気駆動部等に対して制御信号を送出することにより光ピックアップを所定位置に駆動させるサーボ信号処理部と、光ピックアップからの読み取り信号を増幅して所定の制御信号を生成するRFアンプと、増幅された信号の中から記録されているデジタルデータを復元してデータ・ビット・ストリームに変換して出力するCD信号処理部とから構成されている。
【0026】
そして、制御部による制御のもとでこれらが相互に作動し、DVDに記録されたデータ・ビット・ストリームをデコーダに出力可能となっている。デコーダはデータ・ビット・ストリームをビデオ成分とオーディオ成分とに分離するとともにMPEG復調し、ビデオ信号と音声信号とに復元しつつそれらを同期させて出力する。
【0027】
制御部の内部には演算処理の主体となるCPUとともに、所定の制御プログラムが記録されたROMやワークエリアなどとして利用されるRAMが備えられているとともに、外部機器を制御するための制御回路が備えられている。この制御部による制御のもとで上述したようにディスクドライブ装置やデコーダが画像及び音声を再生する。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、CDやDVD等の光ディスクを再生、記録する光ディスク装置であって、トラバースシャーシとカムスライダとを備えたものに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】トラバースシャーシ及びカムスライダ周辺の上面図である。
【図2】嵌合ボスが嵌合した状態のカムスライダの背面図である。
【図3】トラバースシャーシの上面図である。
【図4】トラバースシャーシの正面図である。
【図5】トラバースシャーシの右側面図である。
【図6】カムスライダの上面図である。
【図7】カムスライダの正面図である。
【図8】カムスライダの右側面図である。
【図9】カムスライダの背面図である。
【図10】図9のA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 トラバースシャーシ
10a 嵌合ボス
20 カムスライダ
20b カム溝
20e 板バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインシャーシと、該メインシャーシに組み付けられたトラバースシャーシと、該トラバースシャーシの嵌合ボスを嵌めるカム溝を有し、該カム溝に沿って前記嵌合ボスを移動させることにより前記トラバースシャーシを昇降させるカムスライダとを備えた光ディスク装置において、
前記カムスライダに、再生位置にある前記トラバースシャーシの嵌合ボスの下面を支持するL字型で樹脂製の板バネを一体成型することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
メインシャーシと、該メインシャーシに組み付けられたトラバースシャーシと、該トラバースシャーシの嵌合ボスを嵌めるカム溝を有し、該カム溝に沿って前記嵌合ボスを移動させることにより前記トラバースシャーシを昇降させるカムスライダとを備えた光ディスク装置において、
前記カムスライダに、再生位置にある前記トラバースシャーシの嵌合ボスを支持する板バネを設けることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
前記板バネはカムスライダに一体成型することを特徴とする請求項2記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記板バネは前記嵌合ボスの下面を支持するように設けることを特徴とする請求項2又は3記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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