説明

光ディスク装置

【課題】 光ディスク装置において、温度センサなどの部品を用いずに装置内の温度変化を検出し、OPCやサーボゲイン自動調整など温度変化に応じて、再調整が必要となる処理を適切なタイミングで行い、常に安定な記録再生動作を可能とする。
【解決手段】 光ディスク装置のアクチュエータの高次共振周波数の起動時からの変動量から温度変化量を検出し、検出した温度変化量に応じて、OPCやサーボゲイン自動調整を再度行うことで、常に安定な記録再生動作が可能となる。また温度変化を検出するのに温度センサなどの部品を必要としないので、装置のコストが抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクを記録媒体とした光ディスク装置に関するものである。
【0002】
特に、温度変化が起きてもサーボ特性、記録パワー、球面収差を記録再生に最適な状態へ調整できる光ディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来の光ディスク装置において、ディスク上の所望のトラックに記録或いは再生を開始するまでの基本的な構成を、図10を用いて説明する。
【0004】
光ディスク装置が記録または再生動作を始める際、まずスピンドルモータ3が回転し、その後ピックアップ2内の図示しない光源よりレーザ光が点灯する。レーザ光が点灯された後、このレーザ光は、図示しない対物レンズによってディスクに照射される。ディスク1からの反射光に基づき、フォーカスエラー生成回路4はフォーカスエラー信号を生成する。このフォーカスエラー信号は光スポットの焦点とディスク1の記録面とのずれ量を示す。フォーカス位相補償回路5はフォーカスエラーに対し、位相補償処理を行う。フォーカス位相補償回路5の出力はフォーカスサーボゲイン回路6により、フォーカスサーボループゲインの乗算処理が行われる。フォーカスサーボゲイン回路6の出力はフォーカスアクチュエータドライバ回路7に入力される。フォーカスアクチュエータドライバ回路7はフォーカスサーボゲイン回路6の出力からピックアップ2内の図示しないフォーカスアクチュエータの駆動信号を生成する。その駆動信号に基づきピックアップ内の図示しない対物レンズがフォーカス方向に駆動される。この様にして、レーザ光から出射されたスポット光の焦点がディスク1の記録面に照射される様にフォーカス制御が行われる。
【0005】
同様にトラッキングエラー生成回路8はトラッキングエラー信号を生成する。このトラッキングエラー信号の大きさはディスク1上のトラック中心と光スポットの焦点とのディスク1の半径方向のずれ量を示す。トラッキング位相補償回路9によりトラッキングエラー信号に位相補償処理が行われる。次にトラッキングサーボゲイン回路10により、サーボループゲインの乗算処理が行われ、トラッキングアクチュエータドライバ回路11によりピックアップ内の図示しないトラッキングアクチュエータの駆動信号が生成される。この駆動信号により、ディスク上の所望のトラック中心にスポット光が照射される様に対物レンズの位置が制御される。
【0006】
フォーカス/トラッキングサーボ制御を行った後、記録或いは再生動作に移行する前にシステムコントローラ12はサーボゲイン自動調整を行う。これはフォーカスアクチュエータ及びトラッキングアクチュエータの個体差などを吸収し、常に安定なサーボ制御を行う為の調整処理である。具体的な方法としては、正弦波発生回路15が例えばサーボループのゼロクロス周波数といった特定の周波数を持つ外乱信号を出力する。正弦波発生回路15の出力は、まず加算回路13に入力される。即ちゼロクロス周波数の外乱信号をフォーカスサーボループ内に印加する。ループゲイン測定回路16は外乱信号がフォーカスサーボループ内に印加されている状態で、加算回路13の前後の信号に含まれる外乱信号周波数成分を検出し、ゼロクロス周波数におけるループゲインを測定する。この測定結果に応じて、フォーカスサーボゲイン回路6の係数を変更することで常に安定なフォーカスサーボ制御が可能となる。トラッキングサーボループに関しても、加算回路14を用いて同様の処理を行い、トラッキングサーボゲイン回路10の係数を変更する。次にシステムコントローラ12はサーボオフセット調整を行う。これはフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号に信号品位が最良となるオフセット値を設定する処理である。具体的な方法としては、例えばフォーカスエラー信号の場合、フォーカスオフセットが−1μm〜1μmに相当するオフセットを0.1μm毎に順次印加する。次にそれぞれのオフセット値における再生信号の振幅を測定して、再生信号の振幅が一番大きいオフセット値を最適のフォーカスオフセット値をし、システムコントローラ12は記憶する。これと同様の処理をトラッキングエラー信号にも行う。また、ディスク1に照射されるスポット光の球面収差の状態が記録再生に最適な状態になる様な調整処理も行われる。球面収差の調整方法としては、ピックアップ2内に光ディスク1に入射する光束の球面収差の状態を変える球面収差補正素子が備えられ、RF信号振幅が一番大きくなる様な球面収差補正素子の状態を検出する。
【0007】
また最適な記録パワーを得る為にOPC(Optimum Power Control)と呼ばれるパワーキャリブレーションを行う。光ディスク装置の起動時にはサーボ制御が行われた後に、以上の様な調整処理によって記録再生に最適な状態に設定されてから記録再生を開始する。しかし記録再生を続けていくと、装置内の温度やディスクの表面温度が変化し、アクチュエータの感度が変化してサーボ特性が起動時よりも不安定になったり、対物レンズの屈折率の変化して球面収差の量が変化したり、起動時に行ったOPCによる記録パワーが最適ではないものになってしまう場合がある。この温度変化に対応する為に、特開2001−344753号公報では装置内の温度を検出する温度検出回路17を備えている。この温度検出回路17による検出結果に応じてOPCを再度行うことにより、温度変化の影響を受けずに常に最適な記録パワーを設定できる構成が示されている。
【特許文献1】特開2001−344753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、先述の従来技術には以下に挙げる問題点がある。温度変化に対応し、OPCなどを再度行うことにより、常に最適な記録再生が行えるが、その温度変化を検出する為に、温度センサなどの部品が必要となる。温度センサなどの部品が必要となると、装置のコストが抑えられないという問題があった。
【0009】
また温度センサは通常ピックアップ内部に備えられることが多く、ピックアップ内に温度センサがあると、その分装置の小型化が難しくなる。また温度センサがピックアップ内部に取り付けられている為、温度センサによってディスクの表面温度を正確に測定することは難しい。よって温度変化に正確に追従できず、充分な記録再生性能が得られないことがある。
【0010】
そのため、本発明では、温度センサといった部品を必要としない上に装置内の温度変化を正確に検出し安定な記録再生動作を実現し、装置の小型化が可能とするための光ディスク装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、以下を提供する。
【0012】
光源と、光源からのレーザ光を光ディスクに集光する対物レンズと、前記対物レンズを駆動するためのアクチュエータと、前記アクチュエータを制御するサーボ制御手段と
を有する光ディスク装置において、前記アクチュエータの高次共振周波数を検出する周波数応答検出手段と、前記周波数応答検出手段の検出結果に基づいて、前記サーボ制御手段或いは記録・再生制御のパラメータを調整するための調整手段とを有する光ディスク装置。
【0013】
また、前記アクチュエータの高次共振周波数は、前記サーボ制御手段のゲイン特性または位相特性に基づいて検出される。
【0014】
また、前記調整手段は、前記パラメータとして前記光源からのレーザ光の強度を調整する。
【0015】
また、前記調整手段は、前記パラメータとして前記光源からのレーザ光の球面収差量を調整する。
【0016】
また、前記調整手段は、前記パラメ−タとして前記サーボ制御手段のゲインまたはオフセット値を調整する。
【0017】
また、前記調整手段は、予め検出された前記アクチュエータの高次共振周波数と最新の検出結果とを比較し、その比較結果に基づいて前記パラメータを調整する。
【0018】
また、前記予めとは光ディスク起動時であり、前記最新の検出結果は記録・再生動作の間欠駆動の休止時に検出される。
【0019】
また、前記予めとは工場出荷時であり、前記最新の検出結果は光ディスク起動時に検出される。
【0020】
また、前記予め及び最新の検出結果はともに記録・再生動作の間欠駆動の休止時に検出される。
【0021】
また、前記調整手段は、前記予め検出されたアクチュエータの高次共振周波数と最新の検出結果との差に応じて、警告を表示する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、温度センサといった部品を必要としない上に装置内の温度変化を正確に検出できる為、安定な記録再生動作が可能となり、また装置のコストが抑えられる。また温度センサが必要なくなるので、装置の小型化が可能となる。更にアクチュエータの特性変化を用いて温度変化を検出するので、ディスクの表面温度を正確に検出でき、適した記録再生が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第一の実施例)
図1に本発明による第一の実施例を示す。
【0024】
図中、従来技術と同じ機能を持つブロックは同じ番号を付してある。
【0025】
本実施例においても、装置の起動時はまずフォーカス/トラッキング制御を行う。
【0026】
次に記録再生を始める前に、従来技術と同様にフォーカス/トラッキングサーボ制御のパラメータであるサーボゲインやオフセットの調整、及び記録・再生制御のパラメータであるレーザ光の強度や球面収差量の自動調整を行う。
【0027】
サーボゲイン自動調整におけるループゲインの測定は本実施例では周波数応答検出回路19が行う。また本実施例では、システムコントローラ12はこの起動時に予めフォーカスアクチュエータの高次共振周波数を検出し、記憶しておく。
【0028】
装置起動時におけるフォーカスアクチュエータの高次共振周波数の検出方法について、詳述する。
【0029】
サーボゲイン自動調整の時と同じく正弦波発生回路15が出力する特定の周波数の外乱信号を、まず加算回路13を介してフォーカスサーボループに印加し、その周波数におけるループゲインを測定する。正弦波発生回路15が出力する外乱信号の周波数としてはフォーカスアクチュエータの高次共振周波数の設計中心値が例えば30kHzである場合、外乱信号の周波数をまず25kHzとしてループゲインを測定する。システムコントローラ12は25kHzにおけるループゲインを記憶した後に、外乱信号の周波数を26kHzとしてループゲインを再度測定し、そのループゲインを記憶する。引き続き外乱信号の周波数を1kHzおきに35kHzまで変えていき、それぞれの周波数におけるループゲインを記憶する。25kHzから35kHzまで測定したループゲインの結果は図4の様になる。システムコントローラ12は記憶したループゲインの内、ループゲインが最大となる周波数をフォーカスアクチュエータの高次共振周波数とする。
【0030】
図4の様な結果である場合は、30kHzをフォーカスアクチュエータの高次共振周波数とし、これをシステムコントローラ12は記憶する。
【0031】
次にサーボオフセット調整も行う。オフセット調整の方法としては、先述の従来技術と同様の方法で行う。これらの調整処理が終了したら、記録再生を開始する。記録再生を行う際は、まず記録或いは再生データをショックプルーフメモリ18に蓄える。そして、ショックプルーフメモリ18内の記録データ量が所定値以上もしくは再生データが所定値以下になると光ディスク1上の所望のトラックにフォーカス/トラッキング制御を行う。これにより光ディスク1へのデータの記録或いは光ディスク1からのデータの再生を行う。
【0032】
また光ディスク1への記録を最初に行う際には、先述のOPCを行い、最適な記録パワーを設定する。OPCの方法としては、まずピックアップをディスク内に設けられたOPC領域に移動する。次にOPC領域において、記録パワーのピークパワーをまず8mWに設定し、テストデータを記録する。更に記録パワーのピークパワーを9mW、10mWと1mWずつ上げながら、ピークパワーが16mWになるまでそれぞれテストデータを記録する。次にそれぞれのピークパワーで記録したテストデータを再生し、bERが一番良かった記録パワーを最適な記録パワーとし、設定する。
【0033】
例えばカムコーダの場合、映像撮影または再生中も光ディスク1への記録或いは光ディスク1からの再生を行っていない場合は、フォーカス/トラッキング制御は共にオフとなりサーボ制御は休止状態となっている。
【0034】
本発明による間欠記録動作中の休止状態における処理内容を、図2を用いて詳述する。
【0035】
まず記録再生動作中にショックプルーフメモリ内の記録再生データ量に応じて、光ディスク1への記録動作を終了する(図2におけるS101)。
【0036】
記録動作が終了した際、システムコントローラ12は、直ちにサーボ制御をオフ状態にしないで、ピックアップ2内のフォーカスアクチュエータの高次共振周波数を検出する(S102)。
【0037】
この検出方法は先述した処理内容と同じで、25kHz〜35kHzにおけるループゲインを各々測定し、そのループゲインが最大となる周波数をアクチュエータの高次共振周波数とする。図2におけるS102の処理時間について詳述する。25kHzにおけるループゲインの決定方法として、外乱信号を100周期分印加したループゲインの平均値をもって25kHzのループゲインとした場合でも、測定時間は100×1/25kHz=4msecとなる。これを残りの26kHzから35kHzまで1kHz刻みで行ったとしても、合計で40msec程度となる。この時間は秒単位で行う間欠記録動作には殆ど影響を与えない処理時間となっている。
【0038】
次にシステムコントローラ12は起動時に検出し記憶したフォーカスアクチュエータの高次共振周波数とS102において検出した高次共振周波数の変化量が所定値以上かどうか判断する(S103)。アクチュエータの高次周波数は温度変化に応じて変動する。アクチュエータの高次共振周波数付近の周波数特性は図3に示す様な特性となっており、温度が起動時よりも上昇すれば高次共振周波数は低くなる。温度が低下すれば高次共振周波数は高くなる。この高次共振周波数の変化量は例えば5kHz/60℃ほどの感度を持つ。この温度上昇に依る高次共振周波数の変動量はアクチュエータの仕様を把握しておけば予測できる。
【0039】
そこでS103において、装置の起動時から、例えば10℃の温度上昇または低下に相当する高次共振周波数の変化が生じていないかS103において判断する。つまり0.83KHz以上の高次共振周波数の変化を検出すれば良い。必要な精度を考えれば、例えば1KHzの変化を検出すれば十分である。本実施例ではフォーカスアクチュエータの高次共振周波数変化により温度変化を検出しているが、アクチュエータの仕様に応じてフォーカス、トラッキングアクチュエータの内、温度変化に対して高次共振周波数の変動が大きい方を用いて温度変化を検出すれば良い。S103において、所定以上の温度変化がないと判断された場合は直ちにサーボ制御をオフ状態とし(S107)、次の光ディスク1への記録動作に備える。
【0040】
これに対し、所定以上の温度変化があったと判断された場合、温度変化によりアクチュエータの感度が低下し、サーボ制御が不安定になるという問題がある。これに対応するためにシステムコントローラ12はフォーカス/トラッキングサーボゲイン自動調整及びフォーカス/トラッキングオフセット調整を各々再度行う(S104)。
【0041】
サーボゲイン自動調整及びサーボオフセット調整を再度行うことで、温度変化によるアクチュエータの感度変化を吸収し、常に安定且つ信号品位が最良な状態でのサーボ制御が可能となる。
【0042】
サーボゲイン自動調整及びサーボオフセット調整が終了したら、システムコントローラ12は球面収差調整処理を行う(S105)。ここで球面収差補正処理を再度行うことで、温度変化による影響を低減し、最適な球面収差の状態で記録再生が行える。なお、球面収差補正処理は、光源を光軸方向に駆動したり、図示しない球面収差補正用のレンズを駆動したり、球面収差補正用の液晶素子を駆動することで達成できる。
【0043】
起動時に決定した記録パワーが、温度上昇により最適な記録パワーでなくなっている場合もある。温度変化に応じて、最適な記録パワーを再設定する為にOPCを再度行い、記録パワーを更新する(S106)。また高次共振周波数付近のループゲインを測定し、装置の起動時に記憶した高次共振周波数よりも低い周波数に変動していた場合、装置の起動時より温度が上昇したと判断できる。その場合、OPCの記録パワーのテスト範囲を高温側でのみ行う構成にしても良い。これは装置の起動時のOPCにおいて、記録ピークパワーを8mW〜16mWで変化させつつ、信号品位が最も良い記録ピークパワーを探し、その最適記録パワーが12mWにされたとする。
【0044】
この後、本実施例の様に高次共振周波数の変化から装置の温度が上昇していると判断された場合に行うOPCは記録パワーの範囲を8mW〜12mWで変化させつつ、最適記録パワーを検出する。これは装置の温度が上昇すると、最適な記録パワーは小さくなる傾向にあることに基づく。この様に高次共振周波数から検出した温度変化の結果に応じて、OPCの範囲を決定すればOPCにかかる処理時間を短縮できる。
【0045】
また起動時から所定値以上の高次共振周波数の変化を検出し、サーボゲイン、オフセット調整、球面収差調整、またはOPCを再度行った後は、再度各種調整処理を行った時点における高次共振周波数と現在の高次共振周波数を比較する。例えば起動時に30kHzと検出された高次共振周波数が28kHzに変化したと検出され、各種調整を再度行ったとする。これ以降は28kHzという周波数と現在の高次共振周波数を比較するようにする。この様に再度各種調整処理を行った時点からの高次共振周波数の所定値以上の変化を検出した場合に、再度各種調整処理を行うようにすれば、常に最適な状態での記録・再生が可能となる。
【0046】
以上の様に本発明では、間欠記録再生動作を行う光ディスク装置において、記録再生動作の休止状態において、アクチュエータの高次共振周波数の変動から温度変化を検出し、検出結果に応じて、温度変化に応じて再度調整が必要な処理を再度行う。高次共振周波数の変動によって、温度変化を検出することで温度センサなどの部品を要せず、且つ常に最適な状態で記録再生を行える。
【0047】
また高次共振周波数の変化を検出する処理時間は数10msecで可能であるので、間欠記録再生動作における休止状態になる度に高次共振周波数の検出を行っても、記録再生動作には時間的な影響が殆どない。反面、休止状態になる度に行えば、温度変化を正確に検出でき、常に最適な状態での記録再生が可能となる。
【0048】
また所定値以上の温度変化が検出された場合、OPC、サーボゲイン自動調整などのすべての処理を再度行う構成を示したが、温度変化量に応じて再度行う調整処理を限定しても良い。例えば20℃の温度上昇が検出されたらOPCのみ、40℃の温度上昇が検出されたらOPCとサーボゲイン自動調整を行うという構成にすれば、処理時間に無駄が生じることなく、且つ常に安定な記録再生動作が可能となる。
【0049】
また温度の変化量に依っては、OPCやサーボゲイン自動調整などを再度行っても、正常に記録再生が行えない場合がある。この様な温度変化を検出した場合、例えば起動時から60℃の温度上昇を検出した場合は、システムコントローラ12は液晶モニタ21に警告を表示し、正常に記録再生が行えない可能性がある旨をユーザに伝える。
【0050】
以上の様に本発明は温度センサといった部品を必要とせず、アクチュエータの周波数応答の変化を検出し、装置の温度変化を検出し、温度変化に応じて再調整が必要となる処理を行うタイミングを計る。本発明により、装置のコストが下げられるという利点が生じる。また温度センサが必要なくなるので、装置の小型化が可能となる。更にアクチュエータの特性変化を用いて温度変化を検出するので、ディスクの表面温度を正確に検出でき、最適な記録再生が可能となる。
【0051】
(第二の実施例)
本発明による第二の実施例について詳述する。
【0052】
本実施例の基本的な構成は第一の実施例で示した図1と同様の構成となる。本実施例においても、装置の起動時はフォーカス/トラッキング制御を行った後に、OPC、サーボゲイン自動調整及びサーボオフセット調整、球面収差調整処理を行う。これらの調整処理が終わった後に、本実施例では予め起動時において、第一の実施例と同様にフォーカスアクチュエータの高次共振周波数を検出する。次に検出した高次共振周波数におけるフォーカスサーボループの位相を周波数応答検出回路19が測定し、システムコントローラ12が記憶する。アクチュエータの高次共振周波数付近の周波数特性は図3に示す様な特性となるのは先述した通りである。この温度変化による高次共振周波数の変化に伴い、アクチュエータの位相特性も大きく変化する。アクチュエータの位相は高次共振周波数付近において、急激に遅れの方向に回る特徴があり、高次共振周波数の変動により、位相が回る周波数も変動する。図3の様にアクチュエータの周波数特性が変化した時のサーボループ全体の周波数特性は図5の様になる。装置の起動時から温度が上昇すれば、起動時に検出した高次共振周波数において、サーボループ全体の位相は起動時より遅れており、また起動時から温度が低下していれば、位相は進んでいる。この特徴を利用して温度変化を検出する為にアクチュエータの高次共振周波数におけるフォーカスサーボループの位相を測定し、記憶する。
【0053】
例えばフォーカスアクチュエータの高次共振周波数が30kHzであると検出された場合、30kHzにおけるフォーカスサーボループの位相を測定、記憶する。位相の測定方法としては、フォーカスアクチュエータの高次共振周波数の外乱信号を、加算回路13を介してフォーカスサーボループ内に印加する。外乱信号が印加されている状態で、周波数応答検出回路19には加算回路13の前後の信号が入力される。この前後の信号の位相差を周波数応答検出回路19が測定する。測定結果をフォーカスアクチュエータの高次共振周波数におけるフォーカスサーボループの位相とする。この測定した位相をシステムコントローラ12が記憶する。検出した高次共振周波数における位相の記憶まで終了したら、続いて先述した構成と同様に記録再生を開始する。
【0054】
位相特性を利用した本発明の処理内容を、図6を用いて詳述する。本実施例においても間欠記録時の休止状態に入ったら、即座にサーボ制御をオフ状態とせず、サーボ制御を行った状態で、装置の起動時に検出した高次共振周波数の外乱信号をサーボループに印加し、サーボループの位相を測定する(図6のS202)。先の例だと30kHzにおけるサーボループの位相を測定する。次に測定した位相と起動時に測定した位相の変化が所定値以上でないか判断する(S203)。ここで起動時と比べて、温度変化が少なかったら、30kHzにおける位相は起動時に測定したものと殆ど変わらない。しかし、例えば温度がある程度上昇していたら、30kHzにおけるフォーカスサーボループの位相は起動時に測定したものに比べて大きく遅れている。この起動時からの位相の遅れ量が例えば起動時よりも10℃の温度上昇に相当する位相遅れがあった時、温度上昇が10℃以上であると判断できる。逆に温度が低下すれば、30kHzにおけるフォーカスサーボループの位相は起動時に測定したものに比べて大きく進んでいる。この位相の変化からの温度変化の検出が可能となり、温度変化が所定以上と判断すれば先述と同様にサーボゲイン自動調整及びサーボオフセット調整、球面収差調整処理、OPCを再度行う(S204−S206)。
【0055】
また起動時から所定値以上の高次共振周波数における位相特性の変化を検出し、サーボゲイン、オフセット調整、球面収差調整、またはOPCを再度行った後は、再度各種調整処理を行った時点における位相特性から更なる変化がないか検出する。例えば起動時に30kHzと検出された高次共振周波数において−540°だった位相特性の変化が10℃上昇に相当する位相遅れが生じ−630°になったと検出され、各種調整処理が行われたとする。これ以降は再度調整が行われた−630°という位相特性から所定値以上の位相特性の変化がないか検出する様にする。この様に再度各種調整処理を行った時点からの高次共振周波数の所定値以上の変化を検出した場合に、再度各種調整処理を行うようにすれば、常に最適な状態での記録・再生が可能となる。
【0056】
この方法で温度変化を検出すれば、先述の方法の様に外乱信号の周波数をスイープしてループゲインを測定する必要がない。装置の起動時において検出した高次共振周波数における位相特性のみを測定すれば良いので、より短時間で温度変化の検出が可能となる。
【0057】
以上の様に本実施例は温度センサといった部品を必要とせず、アクチュエータの周波数応答の変化を検出し、装置の温度変化を検出し、温度変化に応じて再調整が必要となる処理を行うタイミングを計る。本発明により、装置のコストが下げられるという利点が生じる。
【0058】
またアクチュエータの高次共振周波数におけるサーボループの位相特性の変化を検出し、温度変化を検出しているので、第一の実施例の様に外乱信号の周波数をスイープさせて周波数応答の変化を検出しなくて済むので、より短時間での温度検出が可能となる。
【0059】
(第三の実施例)
図7に本発明による第三の実施例を示す。
【0060】
図中、従来技術と同じ機能を持つブロックは同じ番号を付してある。まず図7中のメモリ20には予め工場出荷時に常温時に測定したフォーカスアクチュエータの高次共振周波数の値が標準の高次共振周波数として、記憶されている。
【0061】
本実施例における工場出荷後のユーザによる装置の起動時の光ディスク1への記録を行う前の処理内容を、図8を用いて詳述する。
【0062】
まず装置が起動された後(図8におけるS301)、フォーカス/トラッキングサーボを行う(S302)。その後、サーボゲイン自動調整及びサーボオフセット調整を行う(S303)。
【0063】
次に、フォーカスアクチュエータの高次共振周波数を検出する(S304)。高次共振周波数の検出方法としては、先述した方法と同様に25kHz〜35kHzのループゲインを1kHz毎に測定し、一番ループゲインが大きかった周波数を高次共振周波数とする。システムコントローラ12は検出した高次共振周波数と工場出荷時に測定した標準の高次共振周波数からの変化量が所定値以上かどうかを判断する(S305)。標準の高次共振周波数に対して、所定以上の変化がなければ、出荷時に設定されたデフォルトの記録パワー、球面収差の状態で直ちに記録動作を開始する。S305において算出した変化が所定値以上であれば、その変化量から装置の絶対温度を算出する(S306)。メモリ20に記憶された工場出荷時の常温における高次共振周波数の測定結果と装置の起動時における高次共振周波数の差から、装置の温度が算出できる。算出方法は、工場出荷時に25℃で測定したフォーカスアクチュエータの高次共振周波数が5kHz/60℃の感度で変化する仕様の場合、工場出荷時より高次共振周波数が5kHz低くなっていたら、装置の温度が常温より60℃高い85℃になっていると判断する。次にこの絶対温度が所定値T1以上または所定値T2以下かを判断する(S307)。この所定値T1またはT2とはこの後、記録動作に移行しても正常な記録動作が見込めない様な高温(例えば常温+60℃)または低温(例えば常温−30℃)とする。絶対温度が所定値以上または以下と判断された場合には、システムコントローラ12は、ユーザに正常な記録が出来ない可能性がある旨を液晶モニタ21に表示する(S311)。絶対温度がT2より大きくT1未満であった場合は、通常の記録動作に移行する為に球面収差調整処理(S308)、OPCによる記録パワーの更新(S309)を行う。以上の処理が終わったら、記録再生動作を開始する(S310)。
【0064】
次にショックプルーフメモリを用いた間欠記録動作時における処理内容を詳述する。本実施例における記録時の処理内容を図9を用いて詳述する。
【0065】
まずショックプルーフメモリ18内のデータ量に応じて、光ディスク1への記録動作を休止した場合(S401)、本実施例でも直ちにサーボをオフ状態にしないで、周波数応答検出回路19はフォーカスアクチュエータの高次共振周波数を検出する(S402)。システムコントローラ12は工場出荷時にメモリ20に蓄積された常温時における標準の高次共振周波数と、S402において検出された高次共振周波数の所定値以上か判定する(S403)。これはOPCによる記録パワーの更新が必要とされる温度変化、例えば常温から10℃の温度上昇に相当する高次共振周波数の変化量をS403において設定する。高次共振周波数の変化量が所定値以下の場合は、温度変化は殆どないと判断し、直ちにサーボ制御をオフ状態にする(S409)。変化量が所定値以上であった場合は、S402において検出した高次共振周波数と工場出荷時に測定した高次共振周波数から現在の装置温度を算出する(S404)。算出方法としては、先述した起動時と同様である。次に算出した絶対温度が所定値T1以上またはT2以下でないかを判定する(S405)。この所定値は例えば常温より60℃上昇または−30℃低下している状態では記録再生を中止しなければならない場合、S405における所定値T1を常温より55℃大きい値、T2を常温より−25℃低い値に設定する。S405において、装置の絶対温度がT2より大きくT1未満の場合、先述の実施例と同様にサーボゲイン自動調整及びサーボオフセット調整(S408)、球面収差調整処理(S409)、OPCによる記録パワーの更新(S410)を行う。この後にサーボ制御をオフ状態にし、次の記録動作に備える。対して、装置内の温度がT1以上またはT2以下と判断された場合、システムコントローラ12は、このまま使用を継続すると装置内の温度が上昇し、正常な記録再生が不可となり得る可能性がある旨を液晶モニタ21にユーザに対して表示する。この警告により、ユーザは記録が正常にできなくなる前に装置の冷却を行ったり、しばらくの間装置の使用を控えることで、正常な記録動作を再開できる。もし警告表示をせず、温度上昇が継続されれば、アクチュエータの特性が著しく悪化してサーボ制御が不能となり発振してしまい、最悪の場合光ディスク1が傷付いてしまう場合がある。本実施例によれば、温度変化に応じて予め警告表示を行う為、データの損失等が未然に防げる。
【0066】
以上の様に、本発明では高次共振周波数の変動を利用して、装置内の異常な温度上昇または低下を検出してユーザに警告表示をすることで、ユーザデータの破壊などを未然に防げる。また温度検出に温度センサを必要としないので、装置のコストが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明による、第一の実施例の構成を示すブロック図
【図2】第一の実施例における処理内容を示すフローチャート
【図3】光ディスク装置のアクチュエータの温度に依る特性変化を示す図
【図4】本発明による、高次共振周波数の検出方法を示すグラフ
【図5】アクチュエータの特性変化に依るサーボループの特性変化を示す図
【図6】第ニの実施例の別の処理内容を示すフローチャート
【図7】本発明による、三の実施例の構成を示すブロック図
【図8】第三の実施例における装置の起動時における処理内容を示すフローチャート
【図9】第三の実施例における装置の記録時における処理内容を示すフローチャート
【図10】従来の光ディスク装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0068】
1 光ディスク
2 ピックアップ
3 スピンドルモータ
4 フォーカスエラー生成回路
5 フォーカス位相補償回路
6 フォーカスサーボゲイン回路
7 フォーカスアクチュエータドライバ回路
8 トラッキングエラー生成回路
9 トラッキング位相補償回路
10 トラッキングサーボゲイン回路
11 トラッキングアクチュエータドライバ回路
12 システムコントローラ
13 加算回路
14 加算回路
15 正弦波発生回路
16 ループゲイン測定回路
17 温度検出回路
18 ショックプルーフメモリ
19 周波数応答検出回路
20 メモリ
21 液晶モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、光源からのレーザ光を光ディスクに集光する対物レンズと、前記対物レンズを駆動するためのアクチュエータと、
前記アクチュエータを制御するサーボ制御手段と
を有する光ディスク装置において、
前記アクチュエータの高次共振周波数を検出する周波数応答検出手段と、
前記周波数応答検出手段の検出結果に基づいて、前記サーボ制御手段或いは記録・再生制御のパラメータを調整するための調整手段とを有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記アクチュエータの高次共振周波数は、前記サーボ制御手段のゲイン特性または位相特性に基づいて検出されることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記調整手段は、前記パラメータとして前記光源からのレーザ光の強度を調整することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記調整手段は、前記パラメータとして前記光源からのレーザ光の球面収差量を調整することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記調整手段は、前記パラメ−タとして前記サーボ制御手段のゲインまたはオフセット値を調整することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記調整手段は、予め検出された前記アクチュエータの高次共振周波数と最新の検出結果とを比較し、その比較結果に基づいて前記パラメータを調整することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項7】
前記予めとは光ディスク起動時であり、前記最新の検出結果は記録・再生動作の間欠駆動の休止時に検出されることを特徴とする請求項6に記載の光ディスク装置。
【請求項8】
前記予めとは工場出荷時であり、前記最新の検出結果は光ディスク起動時に検出されるであることを特徴とする請求項6に記載の光ディスク装置。
【請求項9】
前記予め及び最新の検出結果はともに記録・再生動作の間欠駆動の休止時に検出されることを特徴とする請求項6に記載の光ディスク装置。
【請求項10】
前記調整手段は、前記予め検出されたアクチュエータの高次共振周波数と最新の検出結果との差に応じて、警告を表示することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−140503(P2008−140503A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327025(P2006−327025)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】