説明

光ディスク装置

【課題】
光ディスク装置において、衝撃力が印加された場合にもクランパから光ディスクが外れないようにする。
【解決手段】
ディスクモータのボトムケース側への落ち込み変位量を抑える。具体的には、ディスクモータ3の裏面と対向するボトムケース面上の、該ディスクモータの正投影面の全部または一部を含む領域に、ボトムカバー方向に突出した凸状部15を設け、記録または再生状態時、ディスクモータの回転軸方向において、モータ固定板60とボトムカバー40との間の距離gと、該ボトムカバー40とボトムケース50の上記凸状部15との間の距離gとの和(g+g)を、光ディスク2とトレイ6との間の距離gと光ディスク2の中心孔へのクランパ3bの挿入深さhとの和(g+h)よりも小さくした構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置に係り、特に、記録または再生時における光ディスクのクランパからの外れをなくすための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばノートパソコンなどに搭載するための薄型の光ディスク装置の開発が進められている。近年は、薄型の光ディスク装置の用途も多様化し、これに対応して、装置のより一層の薄型化・軽量化が図られるとともに、衝撃に対する信頼性の確保も要求されるようになってきている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
光ディスク装置において、薄型化や軽量化のためには、部品の厚さ寸法の縮減や部品間クリアランスの縮小化などが行われるが、これらは装置の耐衝撃性を阻む要因となる。さらに、光ピックアップに青系レーザ用光学系と赤系レーザ用光学系の2つの光学系が搭載される機種などにおいては、光ピックアップの寸法や重量が増大し、これによってユニットメカ部全体の重量が増大して、装置に衝撃力が作用した場合の該ユニットメカ部の変位を増大させる。特に、記録または再生動作中におけるディスクモータの回転軸方向の変位の増大は、回転中の光ディスクのクランパからの外れを引き起こすことになり、該外れが生じた場合には、記録または再生動作を中断させてしまうだけでなく、光ディスクや装置も損傷される。
【0004】
図6〜図9は、従来の薄型の光ディスク装置100'の構成例を示す。図6は、光ディスク装置100'の表面側(光ディスクを搭載する側)(+Z軸方向側)の平面構成であって、トップカバーを外した場合の状態を示す図、図7は、トレイ6'を装置本体側のボトムケース50'から引き出した状態を示す斜視図、図8は、光ディスク装置100'の裏面側(−Z軸方向側)から見たトレイ6'及びシャーシ5'の構成図、図9は、トレイ6'とシャーシ5'の結合部の断面図である。
【0005】
光ディスク装置100'において、ユニットメカ部のシャーシ5'上には、光ピックアップ4'や、ピックアップ移動機構や、ディスクモータ3'が搭載され(図6、図7)、該シャーシ5'は、A、B、Cの3位置において、防振材を介してトレイ6'に結合されている(図6、図8、図9)。すなわち、ユニットメカ部はその一部を構成しているシャーシ5'により、防振材を介してトレイ6'に結合されている。図6、図7において、3a'は、光ディスクが載置されるターンテーブル、3b'は、光ディスク(図示なし)の中心孔に挿入され該光ディスクをクランプするクランパ、8'は、光ピックアップ4'とユニットメカ部上の回路基板(図示なし)との間を接続するフレキシブル配線基板(FPC)、50'は、装置の裏面側(−Z軸方向側)を覆うボトムケース、51'は、トレイ6'の側端部の外側に摺動可能に係合し該トレイ6'の引き出し移動や引き込み移動に付随して±X軸方向に移動するレール部材である。シャーシ5'は、A、B、Cの3位置において、図9に示す構成によって、ダンパーを介しトレイ6'に結合される。すなわち、該シャーシ5'は、A位置では、防振材としてのダンパーA11aを介してトレイ6'に結合され(図9(a))、C位置では、防振材としてのダンパーC11cを介してトレイ6に結合され(図9(b))、また、図示されないが、B位置では、C位置と同様の構成によりシャーシ5'がトレイ6'に結合される。A位置においては、シャーシ5'は、ダンパーA11aによりトレイ面Saから高さhの位置に支持され、また、トレイ6'には、ダンパーA11aの周囲に、シャーシ5'方向に突出した突起部としてのリブ13aが設けられている。リブ13aの先端面とシャーシ5'との間には距離gの隙間が形成されている(図9(a))。C位置では、シャーシ5'は、ダンパーC11cにより、トレイ面Scから高さhの位置に支持される。該ダンパーC11cの周辺部には突起部は設けられていない(図9(b))。シャーシ5'は、例えば、厚さ約1.0×10−3mの鋼板により構成される。また、ボトムケース50'の内側において、A、B、Cの3位置で、ボトムカバー40'がビス30によってトレイ6'側に固定され、該3位置において、防振材(ダンパー)はそれぞれ、その−Z軸方向側の端面を、該ボトムカバー20の平面により支持され、+Z軸方向側の端面(ダンパーA11aの場合はBa、ダンパーC11cの場合はBc)を、トレイ6'の平面により支持されている。
【0006】
また、図7において、ボトムケース50'の平坦状の内面50a'には、装置のメイン回路基板85'や、該メイン回路基板85'とユニットメカ部上の回路基板(図示なし)との間を接続するフレキシブル配線基板(FPC)80'が取付けられている。特に、該フレキシブル配線基板(FPC)80'は平面がU字状に形成され、該U字状平面のうちの一方の部分80a'がボトムケース50'の平坦な内面50a'上に固定されている。ディスクモータ3'は、シャーシ5'の裏面側(−Z軸方向側)でモータ固定板(図示なし)によりシャーシ5'に取付けられている。該モータ固定板の下方(−Z軸方向)には、トレイ6'に固定されたボトムカバー(図示なし)がある。該ボトムカバーは、トレイ6'がボトムケース50'に対して引き出しや引き込みの移動をするとき、所定寸法の空隙を介して該フレキシブル配線基板(FPC)80'の上記一方の部分80a'の上方を該トレイ6'とともに移動する。10'はトレイ6'に結合された前面パネルである。
【0007】
かかる構成において、光ディスク装置100'に対し−Z軸方向に衝撃力が加わった場合には、ユニットメカ部に−Z軸方向に衝撃力が作用し、防振材が圧縮変形して該ユニットメカ部全体がトレイ6'に対して−Z軸方向に落ち込む。このとき、クランパ3b'に係合されている光ディスクも落ち込み移動してトレイ6'に近づく。該落ち込み量が大きい場合は、光ディスクの外周側の面がトレイ6'のディスク載置面に接触し、さらに、落ち込み量が大きい場合には、該接触状態で、クランパ3b'が該光ディスクの中心孔から抜け出てしまうため、光ディスクがクランパ3b'から外れる。
【0008】
図10、図11は、光ディスク装置100'における記録または再生時のディスク支持状態を示す断面図である。図10は、光ディスク装置100'に対し衝撃力が作用しない場合の状態、図11は、ディスク装置100'に対し−Z軸方向に衝撃力が加わった場合の状態を示す。
【0009】
図10において、光ディスク2はその中心孔にクランパ3b'が挿入されクランプされている。ディスクモータ3'はモータ固定板60'に固定され、該モータ固定板60'はシャーシ5'に固定され、該シャーシ5'は、防振材を介してトレイ6'に結合されている。また、ボトムカバー40'(厚さt)はトレイ6'に固定されている。光ディスク装置100'においては、ディスクモータ3'の回転軸方向(±Z軸方向)において、モータ固定板60'とボトムカバー40'との間の距離(空隙g')と、該ボトムカバー40'とボトムケース50'との間の距離(空隙g')との和は、光ディスク2とトレイ6'のディスク載置面6a'との間の距離(空隙g')と上記クランパ3b'の上記光ディスク2の中心孔内への挿入深さh'との和以上となっている。すなわち、
'+g'≧g'+h' …(数1)
の関係にある。
【0010】
光ディスク装置100'に対し−Z軸方向に衝撃力が加わった場合には、ユニットメカ部に−Z軸方向に衝撃力が作用し、防振材(ダンパーA11a、ダンパーB11b、ダンパーC11c)がそれぞれ圧縮変形して該ユニットメカ部全体がトレイ6'に対して−Z軸方向に距離g'+g'だけ落ち込む。このとき、光ディスク2もクランパ3b'とともに落ち込み移動(変位)し,距離g'移動(変位)したところでその外周側の面がトレイ6'のディスク載置面6a'に接触する。また、ユニットメカ部が距離g'移動したところでは、モータ固定板60'がボトムカバー40'に接触する。ユニットメカ部が距離g'よりもさらに移動することによっては、クランパ3b'の光ディスク2の中心孔への挿入深さが減少し始める。また、ユニットメカ部が距離g'よりもさらに移動することによっては、モータ固定板60'はボトムカバー40'を−Z軸方向に押して変形させ始める。最終的に、ユニットメカ部が−Z軸方向に距離g'+g'を移動した状態では、ボトムカバー40'が、モータ固定板60'に押された状態でボトムケース50'の内面50a'に当接する。このときは上記数1の関係が満たされるため、図11に示すように、クランパ3b'が光ディスク2の中心孔から抜け出た状態すなわち光ディスク2がクランパ3b'から外れた状態となる。回転中に光ディスク2がクランパ3b'から外れると、光ディスク2が損傷したり、ディスク装置100'が壊れたりする。現流の光ディスク装置では、例えば、距離g'、g'はそれぞれ約0.5×10−3m、g'+h'は1.0×10−3mよりも小さい寸法(0.8×10−3m〜0.9×10−3m)にされている。また、ボトムカバー40'の厚さt'は約0.3×10−3mである。
【0011】
図12に示すように、クランパ3b'は、ばね3bsp'で押された状態で半径方向に突出した複数個の突出片3btp'を有し、該突出片3btp'の斜辺部3btp1'において光ディスク2の中心孔の周縁部に当接させ、ばね3bsp'の弾性復元力で該光ディスク2をクランプしている。クランパ3b'の光ディスク2の中心孔への挿入深さh'は、光ディスク2の中心孔の下面2aからクランパ3b'の突出片3btp'の先端部3btp2'までの寸法である。ユニットメカ部が−Z軸方向に距離g'+g'移動した状態(図11)では、突出片3btp'の先端部3btp2'は、光ディスク2の中心孔の下面2aよりもさらに下方(−Z軸方向)に移動し、光ディスク2の中心孔の周縁部は、突出片3btp'の斜辺部3btp1'による拘束状態から開放され、光ディスク2はクランパ3b'から外れる(光ディスク2')。
【0012】
図13は、光ディスク装置100'に−Z軸方向に衝撃力が加わった場合の、ディスクモータ3'の−Z軸方向の変位量Zと、これに対するクランパ3b'の−Z軸方向の変位量Z、ボトムカバー40'の−Z軸方向の変位量ZB1、ボトムケース50'の−Z軸方向の変位量ZB2の関係を説明する図である。距離g'、g'(図10)はそれぞれ0.5×10−3mとしている。図13において、ユニットメカ部が衝撃力によって−Z軸方向に移動し、ディスクモータ3'が距離g'=0.5×10−3m移動した点ZD1(ボトムカバー変位開始点)でディスクモータ3'下方のモータ固定板60'がボトムカバー40'に接触し、ここからはディスクモータ3'及びモータ固定板60'はボトムカバー40'といっしょに−Z軸方向に移動変位し、距離g'=0.5×10−3m移動した点ZD2でモータ固定板60'がボトムケース50'の内面50a'に当接する。点Cは、このときのディスクモータ3'の変位量Zとクランパ3b'の変位量Zとを示す点である(=ボトムケース50'に変位が生じないとした場合)。ボトムケース50'が例えば0.3×10−3m変位するとした場合は、点ZD2(ボトムケース変位開始点)以降では、ディスクモータ3'及びモータ固定板60'はボトムカバー40'及びボトムケース50'とともに移動変位し点ZD3(ボトムケース変位終了点)に至る。点Cmaxは、このときのディスクモータ3'の変位量Zとクランパ3b'の変位量Zとを示す点である。ディスク装置100'では、g'+g'(=1.0×10−3m)よりも小さいディスクモータ3'の変位量ZD4(=0.85×10−3mとする)(ディスク外れ開始点)においてクランパ3b'がディスクの中心孔から抜けてしまい、ディスク外れが起こる。従って、モータ固定板60'がディスクモータ3'とともに変位してボトムケース50'の内面50a'に当接する点Cに至る前にディスク外れが発生する。Z=0.85×10−3m、Z=0.85×10−3mはディスク外れが開始される境界線である。また、図13において、Aは、ディスク外れが発生しない領域、Bは、ディスク外れが発生する領域である。
【0013】
上記述べたように、光ディスク装置100'においては、衝撃力が印加された場合、上記数1の関係にある構成に起因して、光ディスクのクランパ3b'からの外れが発生し、これによって記録や再生が中断されるだけでなく、光ディスクや装置も損傷し、装置の信頼性が損なわれる。
【0014】
本発明の課題点は、上記従来技術の状況に鑑み、光ディスク装置において、簡易な構成下で耐衝撃性を改善し、記録または再生時に衝撃力が印加された場合にも、クランパから光ディスクが外れないようにすることである。
本発明の目的は、かかる課題点を解決し、信頼性を確保した光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題点を解決するために、本発明では、光ディスク装置として、ディスクモータのボトムケース側への落ち込み変位量を抑える。具体的には、ディスクモータの裏面と対向するボトムケース面上の、該ディスクモータの正投影面の全部または一部を含む領域に、ボトムカバー方向に突出した凸状部を備えた構成とし、記録または再生状態時、ディスクモータの回転軸方向において、モータ固定板とボトムカバーとの間の距離と、該ボトムカバーとボトムケースの上記凸状部との間の距離との和を、光ディスクとトレイとの間の距離と、光ディスクの中心孔へのクランパの挿入深さとの和よりも小さくした構成とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光ディスク装置において、耐衝撃性を改善することができ、光ディスクのクランパからの外れをなくして装置の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施例につき、図面を用いて説明する。
図1〜図5は、本発明の実施例の説明図である。図1は、本発明の実施例としての光ディスク装置の構成図であって、トレイを装置本体から引き出した状態を示す斜視図、図2は、図1の光ディスク装置におけるボトムケースの構成図、図3、図4は、図1の光ディスク装置が記録または再生状態にあるときのディスク支持部の状態を示す図であって、図3は衝撃力が作用しない場合の状態を示し、図4は−Z軸方向に衝撃力が加わった場合の状態を示す。また、図5は、図1の光ディスク装置に対して−Z軸方向に衝撃力が加わった場合の、ディスクモータの該−Z軸方向の変位量と、これに対するクランパ、ボトムカバー及びボトムケースのそれぞれの−Z軸方向の変位量の関係を説明する図である。
【0018】
図1において、100は、本発明の実施例としての光ディスク装置、3は、記録媒体としての光ディスク(図示なし)を回転駆動するディスクモータ、3aはターンテーブル、3bは、光ディスクをクランプするクランパ、4は、光ディスクにレーザ光を照射するとともに、その反射光を受光する光ピックアップ、4aは対物レンズである。光ピックアップ4は、ピックアップ移動機構(図示なし)によって、光ディスクの略半径方向(図1において±X'方向)に移動される。該ピックアップ移動機構は、表面にねじを備え該ねじの回転により光ピックアップ4を移動させるリードスクリュー部材(図示なし)や、光ピックアップ4の移動を案内するガイド部材(図示なし)や、リードスクリュー部材を回転駆動する送りモータ(図示なし)などを有して構成されている。5は、光ピックアップ4やピックアップ移動機構やディスクモータ3などが搭載されたシャーシ、6は、シャーシ5と結合され、光ディスクを、光ディスク装置100の装置本体内に搬入または該装置本体内から搬出するトレイ、10は、トレイ6に結合された前面パネルである。ディスクモータ3は、平板状のモータ固定板を介してシャーシ5に結合される。すなわち、該ディスクモータ3はモータ固定板に固定され、該モータ固定板がシャーシ5に固定される。光ピックアップ4、ピックアップ移動機構、ディスクモータ3、シャーシ5及びモータ固定板は、光ディスク装置100のユニットメカ部を構成する。該シャーシ5は、該ユニットメカ部の基盤として該ユニットメカ部の外周部分を構成し、例えば、厚さ約1.0×10−3mの鋼板などにより構成される。モータ固定板の下方(−Z軸方向)には、その平面を該モータ固定板の平面に略平行にして該トレイ6のディスク載置面の反対側の面に結合されたボトムカバー(図示なし)が設けられている。シャーシ5は、図6、図8及び図9で説明した光ディスク装置100'におけるシャーシ5'がA、B、Cの3位置においてそれぞれ、防振材としてのダンパーを介してトレイ6'に結合されているのと同様、光ディスク装置100内の3位置において、防振材としてのダンパーA11a、ダンパーB11b及びダンパーC11cを介し、トレイ6に結合されている。すなわち、ユニットメカ部が、該ユニットメカ部の一部としてのシャーシ5において、ダンパーA11a、ダンパーB11b及びダンパーC11cを介しトレイ6に結合されている。光ディスク装置100におけるボトムケースやボトムカバーも、光ディスク装置100'におけるボトムケース50'やボトムカバー40'と同位置に配される。トレイ6は成形樹脂によって構成され、ダンパーA11a、ダンパーB11b及びダンパーC11cはいずれも、ゴム(合成ゴムを含む)や合成樹脂など弾性を有する部材で構成されるものとする。図9において、12aは、ダンパーA11aがその外周に係合されるトレイ6上のダンパー係合部A、12cは、ダンパーC11cがその外周に係合されるトレイ6上のダンパー係合部Cである。ダンパーB11bが係合されるトレイ6上のダンパー係合部は、基本的にダンパー係合部Cと同様の構成を有する。光ディスク装置100において、ダンパー係合部A12aは、図6におけるA位置に相当する位置に設けられ、ダンパー係合部B12bは、図6におけるB位置に相当する位置に設けられ、ダンパー係合部C12cは、図6におけるC位置に相当する位置に設けられる。
【0019】
また、図1において、8は、光ピックアップ4とユニットメカ部上の回路基板(図示なし)との間を接続するフレキシブル配線基板(FPC)、50は、ボトムカバーに対し−Z軸方向の外側に配され、光ディスク装置100の裏面側を覆うボトムケース、50aはボトムケース50の内面、51は、トレイ6の側端部の外側に摺動可能に係合し該トレイ6の引き出し移動や引き込み移動に付随して±X軸方向に移動するレール部材、52は、レール部材51の外側で該レール部材51に係合し該レール部材51の移動を案内するガイドレール部材、15は、ボトムケース50のディスクモータ3の裏面と対向する面(以下、ボトムケース50の内面という)50a内に設けられボトムカバー方向(Z軸方向)に突出した凸状部、85は光ディスク装置100のメイン回路基板、90はコネクタ、81は、ユニットメカ部上の回路基板とメイン回路基板85との間を接続するフレキシブル配線基板(FPC)である。凸状部15は、ボトムケース50の内面50a内において、光ディスク装置100が記録または再生動作を行う状態にあるとき、上記ディスクモータ3がその回転軸方向(−Z軸方向)に正投影される領域の全部または一部を含む範囲すなわちボトムカバーの外側にあってディスクモータ3の裏面と対向するボトムケース面上の該ディスクモータ3の正投影面の全部または一部を含む領域に設けられている。また、フレキシブル配線基板(FPC)81は、帯状の構成とされ、その平面のうちボトムケース50の内面50a上に配される部分81aは、該内面50a上に接着等により固定されている。凸状部15は、ボトムケース50の内面50a内において、該フレキシブル配線基板(FPC)81の固定部分81aとは異なる平面領域に設けられる。
【0020】
図2は、図1の光ディスク装置100におけるボトムケース50の構成図である。図2(a)は、ボトムケース50の斜視図、図2(b)は、ボトムケース50の内面50aに設けた凸状部15のA−A断面を示す断面図である。
【0021】
図2において、凸状部15は、絞り加工によって形成された構造(絞り構造)であり、その突出高さhは0.2×10−3m〜0.4×10−3mの範囲とされている。また、該凸状部15の先端面15aは、ボトムケース50の内面50aに略平行な第1の面15aと、該第1の面15aに対しX軸方向側に位置し該内面50aまたは該第1の面15aに対し角θだけ傾斜した第2の面15aとを有して成る。該第2の面15aは、±X軸方向ab間に形成され、該第1の面15aはbc間に形成される。該第2の面15aを設けることにより、装置本体に対するトレイ6の引き出し移動や引き込み移動の際、ボトムカバー40がボトムケース50の内面50aや該凸状部15の先端面15aに接触した場合にも、該ボトムカバーが、凸状部15に対してつかえたりすることもなく、トレイ6とともに±X軸方向にスムースに移動することが可能となる。
【0022】
図3、図4は、図1の光ディスク装置100が記録または再生状態にあるときのディスク支持部の状態を示す図であって、図3は衝撃力が作用しない場合の状態、図4は−Z軸方向に衝撃力が加わった場合の状態を示す。
【0023】
図3及び図4において、6aはトレイ6のディスク載置面、15aは凸状部15の先端面、40はボトムカバー、60はモータ固定板、gは、モータ固定板60とボトムカバー40との間の空隙すなわちディスクモータ3の回転軸方向(±Z軸方向)におけるモータ固定板60とボトムカバー40との間の距離(第1の距離)、gは、ボトムカバー40とボトムケース50との間の空隙すなわちディスクモータ3の回転軸方向(±Z軸方向)におけるボトムカバー40とボトムケース50との間の距離(第2の距離)、gは、光ディスク2とトレイ6のディスク載置面6aとの間の距離(第3の距離)、tはボトムカバー40の厚さ、hは、クランパ3bの光ディスク2の中心孔内への挿入深さである。光ディスク装置100においては、ディスクモータの回転軸方向において、記録または再生状態におけるモータ固定板60とボトムカバー40との間の第1の距離gと、該ボトムカバー40とボトムケース50の凸状部15との間の第2の距離gとの和が、上記光ディスク2と上記トレイ6との間の第3の距離gと上記クランパ3bの上記光ディスク2の中心孔への挿入深さhとの和よりも小さくなるようにしてある。すなわち、
+g<g+h …(数2)
の関係にある。
また、第1の距離gと、第2の距離gとの関係は、g>gとなるようにし、ボトムカバー40とボトムケース50の内面50aとの間の距離の増大を抑えるようにしている。
【0024】
かかる構成の光ディスク装置100に−Z軸方向に衝撃力が加わった場合には、ユニットメカ部に−Z軸方向に衝撃力が作用して図3の状態が変化する。すなわち、防振材(ダンパーA11a、ダンパーB11b、ダンパーC11c)がそれぞれ圧縮変形して該ユニットメカ部全体がトレイ6に対して−Z軸方向に距離g+gだけ落ち込む。このとき、光ディスク2もクランパ3bとともに−Z軸方向に落ち込み移動し,距離g移動したところでその外周側の面がトレイ6のディスク載置面6aに接触する。また、ユニットメカ部が距離g移動したところでは、モータ固定板60がボトムカバー40に接触する。ユニットメカ部が−Z軸方向に距離gよりもさらに大きく移動することによっては、クランパ3bが光ディスク2の中心孔から−Z軸方向に抜け始める。すなわちクランパ3bの光ディスク2の中心孔への挿入深さhが減少し始める。また、ユニットメカ部が−Z軸方向に距離gよりもさらに大きく移動することによっては、モータ固定板60はボトムカバー40を−Z軸方向に押して変形させ始める。最終的に、ユニットメカ部が−Z軸方向に距離g+g移動(変位)した状態では、ボトムカバー40が、モータ固定板60の−Z軸方向の面に押された状態でボトムケース50の凸状部15の先端面15a(厳密には先端面15a内の第1の面15a(図2))に当接する。このときには上記数2の関係が満足されるため、図4に示すように、クランパ3bは光ディスク2の中心孔から抜け出さずにその一部が該中心孔内に留まる。これによって、光ディスク2がクランパ3bから外れるのが阻止される。ディスク装置100においては、距離gは約0.5×10−3m、距離gは約0.2×10−3m、距離g+hは0.8×10−3m〜0.9×10−3m)にされているものとする。特に、距離gについては、ボトムカバー40やボトムケース50の部品精度等からみて、装置の薄型化を図る上での必要な寸法範囲は0.15×10−3m〜0.3×10−3mであると考えられ、ディスク装置100では、この距離gを、この範囲内の約0.2×10−3mとしている。また、ディスク装置100においては、ボトムカバー40の厚さtは約0.3×10−3mである。
【0025】
クランパ3bは、基本的に、図12に示したクランパ3b'と同様の構成を備え、図12中の符号3b'を3bに、3'を3に、h'をhにそれぞれ変更した構成を備えるとする。すなわち、クランパ3bは、ばね3bsp'で押され半径方向に突出した複数個の突出片3btp'を有し、該突出片3btp'の斜辺部3btp1'において光ディスク2の中心孔の周縁部に当接させ、ばね3bsp'の弾性復元力で該光ディスク2をクランプする。該クランパ3bの光ディスク2の中心孔への挿入深さhは、光ディスク2の中心孔の下面2aからクランパ3bの突出片3btp'の先端部3btp2'までの寸法である。ユニットメカ部が−Z軸方向に距離g+g移動した状態(図4)では、突出片3btp'の先端部3btp2'は、光ディスク2の中心孔の下面2aよりもさらに上方(+Z軸方向)に留まり、光ディスク2の中心孔の周縁部は、突出片3btp'の先端部3btp2'または斜辺部3btp1'によって、なお拘束状態にあり、光ディスク2はクランパ3b'から外れないでいる。
【0026】
図5は、光ディスク装置100に−Z軸方向に衝撃力が加わった場合の、ディスクモータ3の−Z軸方向の変位量Zと、これに対するクランパ3bの−Z軸方向の変位量Z、ボトムカバー40の−Z軸方向の変位量ZB1、ボトムケース50の−Z軸方向の変位量ZB2の関係を説明する図である。距離gは0.5×10−3m、距離gは0.2×10−3mとしている。図5において、ユニットメカ部が衝撃力によって−Z軸方向に移動し、ディスクモータ3が距離g=0.5×10−3m移動した点ZD1(ボトムカバー変位開始点)でディスクモータ3'下方のモータ固定板60がボトムカバー40に接触し、その後はディスクモータ3及びモータ固定板60はボトムカバー40といっしょに−Z軸方向に移動変位し、距離g=0.2×10−3m移動した点ZD2でモータ固定板60がボトムケース50の内面50aの凸状部15の先端面15aの第1の面15aに当接する。点Cは、このときのディスクモータ3の変位量Zとクランパ3bの変位量Zとを示す点である(=ボトムケース50が変位しないとした場合)。ボトムケース50が例えば0.3×10−3m変位するとした場合は、点ZD2(ボトムケース変位開始点)以降では、ディスクモータ3及びモータ固定板60はボトムカバー40及びボトムケース50とともに移動変位し、点ZD3(ボトムケース変位終了点)に至る。点Cmaxは、このときのディスクモータ3の変位量Zとクランパ3bの変位量Zとを示す点である。ディスク装置100では、Z=0.85×10−3m、Z=0.85×10−3mにおいて、ディスク外れが発生するとする。よって、g+g(=0.7×10−3m)よりも大きいディスクモータ3の変位量ZD4(=0.85×10−3m)(ディスク外れ開始点)においてはじめてクランパ3bがディスクの中心孔から抜け、ディスク外れが起こる。従って、モータ固定板60がディスクモータ3とともに変位してボトムケース50の内面50aの凸状部15の先端面15aの第1の面15aに当接する点Cに至ったときもまた至る前もディスク外れは発生しない。ディスク外れは、Z=0.85×10−3m=ZD4、Z=0.85×10−3mにおいてはじめて発生する。図5において、Aは、ディスク外れが発生しない領域、Bは、ディスク外れが発生する領域である。
【0027】
上記述べたように、光ディスク装置100においては、数2の関係が満たされるため、衝撃力が印加された場合にも、光ディスクがクランパ3bから外れることが防止され、装置の信頼性が確保される。
【0028】
なお、上記実施例では、ボトムケース50の内面50aの凸状部15としては、該ボトムケース50と一体化された絞り構造のものについて述べたが、この他、例えば、シート状の部材をボトムケース50の内面50a上に設けることによって凸状部を形成するようにしてもよい。この場合、該シート状の部材として、耐摩耗性の優れた材質のものを選ぶと、ボトムカバー40が接触した場合にも傷が付きにくく、劣化を抑えることができる。また、上記実施例では、凸状部15の先端面15aは、ボトムケース50の内面50aに略平行な第1の面15aと、該第1の面15aに対しX軸方向側に位置し該内面50aまたは該第1の面15aに対し角θだけ傾斜した第2の面15aとを有して成る構成としたが、該第2の面15aは、直平面に限定されず、例えば曲平面など他の傾斜面であってもよい。また、上記実施例では、該凸状部15の平面形状(Z軸方向から見た形状)を長方形として図示したが、これに限定されず、他の形状であってもよい。さらに、上記実施例では、凸状部15の先端面15aは、ボトムケース50の内面50aに略平行な第1の面15aと、該第1の面15aに対しX軸方向側に位置し該内面50aまたは該第1の面15aに対し角θだけ傾斜した第2の面15aとを有して成る構成としたが、このボトムケース50の内面50aに略平行な該第1の面15aは備えず、少なくとも該内面50aに対して傾斜した面を、該内面50内の領域であってディスクモータ3の正投影面の全部または一部を含む領域に備える構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例としての光ディスク装置の構成例図である。
【図2】図1の光ディスク装置のボトムケースの構造を示す図である。
【図3】図1の光ディスク装置の動作時における光ディスクの支持状態を示す断面図である。
【図4】図1の光ディスク装置の動作時に衝撃力が加わった場合の光ディスクの支持状態の変化を示す断面図である。
【図5】図1の光ディスク装置の動作時に衝撃力が加わった場合の光ディスク支持部の変位の説明図である。
【図6】従来の光ディスク装置の表面側の平面構成図である。
【図7】従来の光ディスク装置において、トレイを装置本体側から引き出した状態を示す斜視図である。
【図8】従来の光ディスク装置の裏面側から見たトレイ及びシャーシの構成図である。
【図9】従来の光ディスク装置におけるトレイとシャーシの結合部の断面図である。
【図10】従来の光ディスク装置の動作時における光ディスクの支持状態を示す断面図である。
【図11】従来の光ディスク装置の動作時に衝撃力が加わった場合の光ディスクの支持状態の変化を示す断面図である。
【図12】クランパによる光ディスク保持の説明図である。
【図13】従来の光ディスク装置の動作時に衝撃力が加わった場合の光ディスク支持部の変位の説明図である。
【符号の説明】
【0030】
100、100'…光ディスク装置、
2…光ディスク、
3、3'…ディスクモータ、
3a、3a'…ターンテーブル、
3b、3b'…クランパ、
4、4'…光ピックアップ、
4a…対物レンズ、
5、5'…シャーシ、
6、6'…トレイ、
8、80'、81…フレキシブル配線基板、
10、10'…前面パネル、
11a…ダンパーA、
11b…ダンパーB、
11c…ダンパーC、
12a…ダンパー係合部A、
12c…ダンパー係合部C、
13a…リブA、
15…凸状部、
15a…凸状部の先端面、
15a…第1の面、
15a…第2の面、
40、40'…ボトムカバー、
50、50'…ボトムケース、
50a、50a'…ボトムケース内面、
51、51'…レール部材、
52…ガイドレール部材、
60、60'…モータ固定板、
85、85'…メイン回路基板、
、g'…モータ固定板とボトムカバーとの間の距離、
…ボトムカバーと、ボトムケース内面の凸状部との間の距離、
'…ボトムカバーとボトムケース内面との間の距離、
、g'…光ディスクとトレイとの間の距離、
、h'…光ディスク中心孔へのクランパの挿入深さ、
h…凸状部の突出高さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに対して情報を記録または再生する光ディスク装置であって、
上記光ディスクにレーザ光を照射し反射光を受光する光ピックアップと、
上記光ピックアップを光ディスクの略半径方向に移動させるピックアップ移動機構と、
上記光ディスクを回転駆動するディスクモータと、
上記ディスクモータの回転部に固定され、上記光ディスクの回転時、光ディスクの中心孔またはその周縁部に係合されるクランパと、
上記光ピックアップ、上記ピックアップ移動機構及び上記ディスクモータが搭載されたシャーシと、
上記ディスクモータを上記シャーシに取付けるモータ固定板と、
上記シャーシと結合され、上記光ディスクを、装置本体内に搬入または該装置本体内から搬出するトレイと、
上記トレイのディスク載置面の反対側の面に結合されたボトムカバーと、
上記ボトムカバーの外側に配され、上記ディスクモータの裏面と対向する面上の該ディスクモータの正投影面の全部または一部を含む領域に、上記ボトムカバー方向に突出した凸状部を有するボトムケースと、
を備え、
上記ディスクモータの回転軸方向において、記録または再生状態における上記モータ固定板と上記ボトムカバーとの間の第1の距離と、該ボトムカバーと上記ボトムケースの上記凸状部との間の第2の距離との和を、上記光ディスクと上記トレイとの間の第3の距離と上記クランパの上記光ディスクの中心孔への挿入深さとの和よりも小さくした構成を特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
上記ボトムケースは、上記凸状部が絞り構造とされた構成である請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
上記ボトムケースは、上記凸状部が、上記ディスクモータの裏面と対向する該ボトムケースの面に対して傾斜した面を有する構成である請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
上記ボトムカバーは、上記ディスクモータの回転軸方向の衝撃力が印加されたとき、上記モータ固定板に押されて変位し、その先端面が上記ボトムケースの上記凸状部に当接する構成である請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
上記第2の距離は、上記第1の距離よりも短くされている請求項1から4のいずれかに記載の光ディスク装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−54237(P2009−54237A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220102(P2007−220102)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】