説明

光ディスク装置

【課題】フォーカスサーチの失敗を検出してフォーカスサーチのリカバリーを実施し、フォーカス制御を迅速に行うことができる光ディスク装置を提供する。
【解決手段】対物レンズ及び光検出器を含み、ディスク媒体1に記録された情報を読み取る光ピックアップ3と、フォーカスサーチ用の駆動電圧を可変して対物レンズをディスク媒体1のフォーカス方向に移動させてフォーカスサーチを行うフォーカス制御回路7と、フォーカスサーチによって得たフォーカスエラー信号の振幅と、フォーカスエラー信号のピーク値及びボトム値の割合をもとにフォーカスサーチの成否を判定するサーチ判定部122とを具備し、フォーカス制御回路7は、サーチ判定部122での判定結果をもとにフォーカスサーチが失敗した場合はリカバリーを実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク媒体に記録された情報を再生する光ディスク装置に係り、特にフォーカス制御を迅速化した光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスク装置では、光ピックアップからディスク媒体(光ディスク)に対してレーザ光を照射してディスク媒体に情報を記録したり、ディスク媒体に記録された情報を読み取って再生するようにしている。光ピックアップには、対物レンズと、フォーカス/トラッキング制御を行うアクチュエータが搭載されており、光ピックアップは、スレッドモータによって光ディスクの径方向に順次移動し、アクチュエータによりトラッキング方向及びフォーカス方向への移動制御が行われる。
【0003】
フォーカス制御では、光ピックアップから出力されるレーザ光をディスク記録面上において適正な焦点状態となるように制御しなければならない。このため光ピックアップの対物レンズを光ディスクの記録面に対して近づけたり、離れる方向に駆動してフォーカス制御を行なうフォーカスサーボ装置が設けられている。
【0004】
ところで、フォーカスサーボが可能な範囲(フォーカス引込可能範囲)は比較的狭いため、記録/再生動作の開始時等において、先ずフォーカスサーチを行ってフォーカス引込可能範囲にまで対物レンズの位置を移動させ、その後フォーカスサーボループをオンにしてフォーカスサーボを実行するようにしている。フォーカスサーチでは、例えば対物レンズをディスク面から最も離れた位置と最も近接した位置の間において移動させ、ディスクからの反射光を光検出器で検出して、フォーカスエラー信号(S字カーブ)等を得てフォーカス引込可能範囲内に対物レンズの位置を制御する。その後、フォーカスサーボ動作により対物レンズの位置を合焦点位置に収束させる。
【0005】
しかしながら、面振れ量の大きいディスクでは、フォーカスサーチにおいて、レーザのスポット光がディスクのデータ層まで到達(又は通過)できず、フォーカスエラー信号等の各種の信号振幅レベルが通常の半分程度しか取得できない場合があり、フォーカスサーチを失敗してしまうことがあった。例えばフォーカスエラー信号を元にディスクの種類を判別する場合、正常な振幅レベルの信号を取得できないため、ディスク判別を失敗する。このため、再生までに時間がかかったり、再生できないといった不具合を生じる。
【0006】
またフォーカスサーチの失敗は、フォーカスサーボの過剰制御を招くことがあり、光ピックアップがディスクに衝突してディスク及び光ピックアップを破損してしまうこともある。またディスクの面振れ以外に、低反射ディスクや、煙草の煙等により対物レンズが汚れている場合には、反射光が低減することがあり、フォーカスサーチ時に正確なフォーカスエラー信号が得られず、誤検出することがある。特に車載用のディスク装置では車室内で喫煙したときの煙により対物レンズが汚れやすい。
【0007】
したがって、確実にデータ層を通過するようにフォーカスサーチ振幅を大きくすると、メカ公差要因等によりフォーカスサーチ中に光ピックアップがディスクに衝突する可能性がある。またディスクへの衝突を回避するためフォーカスサーチの振幅を小さくすると、レーザのスポット光がディスクのデータ層まで届かず、フォーカスサーチの失敗を招いてしまうというジレンマがある。
【0008】
特許文献1には、フォーカスサーチの際に、初めに空振りでフォーカスサーチを行い、フォーカスエラー信号のS字カーブのピーク及びボトムの各タイミングでサーチ駆動信号の値を検出し、実際のフォーカスサーチの際には、ピーク時とボトム時のサーチ駆動電圧の間をサーチ範囲としてサーチを実行する再生装置について記載されている。
【0009】
しかしながら、面振れ量の大きいディスクや低反射ディスクの再生時、或いは対物レンズが汚れているような場合には、中途半端な信号が検出される可能性があり、フォーカスサーチに失敗する可能性があり、更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−38542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の光ディスク装置では、面振れ量の大きいディスクにおいてフォーカスサーチを実施した場合、或いは低反射ディスクを再生する場合や対物レンズが汚れている場合にフォーカスサーチを失敗してしまうことがあった。またフォーカスサーボの過剰制御により、光ピックアップがディスクに衝突してしまうことがあった。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑み、フォーカスサーチの失敗を検出して、フォーカスサーチのリカバリーを実施することで正常レベルの信号振幅を取得し、フォーカス制御を正確かつ迅速に行うことができる光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の光ディスク装置は、対物レンズ及び光検出器を含み、ディスク媒体に記録された情報を読み取る光ピックアップと、フォーカスサーチ用の駆動電圧を可変して前記対物レンズを前記ディスク媒体のフォーカス方向に移動させてフォーカスサーチを行う第1のフォーカス制御部と、前記フォーカスサーチによって得たフォーカスエラー信号の振幅と、前記フォーカスエラー信号のピーク値及びボトム値の割合をもとに前記フォーカスサーチの成否を判定する第1の判定部と、を具備し、前記第1のフォーカス制御部は、前記第1の判定部での判定結果をもとに前記フォーカスサーチが失敗した場合はリカバリーを実施することを特徴とする。
【0014】
また請求項4記載の光ディスク装置は、対物レンズ及び光検出器を含み、ディスク媒体に記録された情報を読み取る光ピックアップと、フォーカスサーチ用の駆動電圧を可変して前記対物レンズを前記ディスク媒体のフォーカス方向に移動させてフォーカスサーチを行う第2のフォーカス制御部と、前記フォーカスサーチによって得たフォーカスエラー信号の振幅と、前記光検出器からの全加算信号の振幅の割合をもとに前記フォーカスサーチの成否を判定する第2の判定部と、を具備し、前記第2のフォーカス制御部は、前記第2の判定部の判定結果をもとに前記フォーカスサーチが失敗した場合はリカバリーを実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光ディスク装置では、ディスクの面振れ或いはフォーカスエラー信号等にノイズが含まれていても、フォーカスサーチのリカバリーを実施することで正常にフォーカス制御を行うことができ、速やかに再生動作に移行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置を示すブロック図。
【図2】一実施形態におけるフォーカスサーチの基本動作を示す説明図。
【図3】フォーカスサーチの失敗時の動作を示す波形図。
【図4】フォーカスサーチのリカバリー動作を示す波形図。
【図5】一実施形態におけるフォーカスサーチの動作を示すフローチャート。
【図6】本発明の第2の実施形態におけるフォーカスサーチの基本動作を示す説明図。
【図7】フォーカスサーチの失敗時の動作を示す波形図。
【図8】フォーカスサーチ失敗時の各部の信号振幅を示す波形図。
【図9】フォーカスサーチのリカバリー動作を示す波形図。
【図10】第2の実施形態におけるフォーカスサーチの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の全体構成を示すブロック図である。図1において、CD、DVD等のディスク媒体1(以下、ディスク1と称す)は、スピンドルモータ2によって回転する。ディスク1に対する情報の記録・再生は、光ピックアップ3によって行われる。光ピックアップ3は、スレッドモータ4によってディスク1の径方向に駆動され、スレッドモータ4は、モータ制御回路5により制御される。
【0019】
光ピックアップ3には、対物レンズ31を設けており、この対物レンズ31は、アクチュエータ20によってフォーカス方向(レンズ31の光軸方向)への移動とトラッキング方向(レンズ31の光軸と直交する方向)への移動が制御される。またチルト制御が可能となっている。
【0020】
ディスク1への情報の書き込みは、半導体レーザ発振器32から発せられた光ビームを、コリメータレンズ33及びビームスプリッタ34を介してディスク1に照射して行う。またディスク1からの情報の読取り(リード)は、ディスク1からの反射光を、対物レンズ31、ビームスプリッタ34、集光レンズ35、及びシリンドリカルレンズ36を介して、光検出器37に導くことによって行う。半導体レーザ発振器32は、レーザ制御回路6によって駆動制御され、レーザ制御回路6は、半導体レーザ発振器32から発せられる光ビームを記録/再生に応じて制御する。
【0021】
光検出器37は、例えば4分割の光検出セルから成り、各光検出セルの出力信号は、電流/電圧変換用のアンプを介して信号処理回路38に供給される。信号処理回路38は、光検出器37の出力信号を基に、フォーカス制御用の信号Fo、トラッキング制御用の信号Tr、全加算信号Add、及びデータ再生用の信号を出力する。
【0022】
フォーカス制御用の信号Foは、フォーカス制御回路7に供給され、フォーカス制御回路7の出力信号は、アクチュエータ20に供給される。これにより、光ビームがディスク1上に常時ジャストフォーカスする。トラッキング制御用の信号Trはトラッキング制御回路8に供給され、トラッキング制御回路8は、トラック駆動信号を作成してアクチュエータ20に供給する。これにより、光ピックアップ3のトラッキング方向の移動が制御される。
【0023】
トラッキング制御回路8からのトラック駆動信号は、モータ制御回路5にも供給され、スレッドモータ4を制御する。トラッキング制御回路8によって対物レンズ31が移動しているとき、スレッドモータ4を制御することで、対物レンズ31が光ピックアップ3内の中心位置近傍に位置するよう光ピックアップ3が移動する。尚、アクチュエータ20には、フォーカス制御、トラッキング制御及びチルト制御のための各コイルが設けられている。
【0024】
また、光検出器37からの全加算信号Addは、後述するコントローラ12に供給され、信号処理回路38からのデータ再生用の信号は、RFアンプを介してデータ再生回路9に供給される。データ再生回路9は、RFアンプの出力をアナログ・デジタル変換回路によってデジタル化(2値化)し、デジタル化された信号を、PLL回路10からの再生用クロックに基づいて再生する。またPLL回路10はモータ制御回路11にCLV用(Constant Angular Velocity)の信号を供給し、モータ制御回路11は、ディスク1が一定の線速度で回転するようにスピンドルモータ2を制御する。
【0025】
スレッドモータ制御回路5、レーザ制御回路6、データ再生回路9、PLL回路10及びスピンドルモータ制御回路11は、コントローラ12に接続され、コントローラ12によって制御される。コントローラ13はCPU121を含み、このCPU121は、ROM(図示せず)に記録されたプログラムに従って各部の動作を制御する。
【0026】
またコントローラ12には、インターフェース回路13(I/F13)が接続され、インターフェース回路13にはホスト14が接続されている。インターフェース回路13は、ホスト14からのコマンドをコントローラ12に送ったり、ディスク1のデータをホスト14を介して外部に出力する役割を有する。例えば、音楽、画像DVDを再生可能なディスク装置では、ホスト14からのデータリード要求(読取り指令)に応じて目標アドレスの情報を読取る。
【0027】
さらにコントローラ12はサーチ判定部122を有する。サーチ判定部122は、フォーカスサーチの結果をもとにフォーカスサーチの成否を判断し、フォーカスサーチが成功したとき、フォーカス制御回路7及びトラッキング制御回路8のサーボループをオンにして駆動信号を供給する。
【0028】
以下、本発明の特徴部であるフォーカス制御の動作を具体的に説明する。即ち、フォーカス制御では、光学ピックアップ3から出力されるレーザ光をディスク1の記録面上において適正な焦点状態となるように制御するため、光ディスク装置の起動時等に先ずフォーカスサーチを行ってフォーカス引込可能範囲にまで対物レンズ位置を移動させ、その後フォーカスサーボループをオンにしてフォーカスサーボを実行する。
【0029】
図2は、フォーカスサーチの動作を示す説明図である。図2(a)はディスク1のデータ層Dに対して対物レンズ31を離れた位置から徐々に近づけ、データ層Dまで到達(又は通過)した位置まで駆動した状態を示している。図2(b)の太線V1はフォーカスサーチ用の駆動電圧V1を示し、Aはディスク1の面振れを示している。
【0030】
図2(c)は、フォーカスエラー信号Erを示している。フォーカスサーチを行うとき、フォーカスサーボループはオフにされ、フォーカスサーチ用の駆動電圧V1がアクチュエータ20のフォーカスコイルに印加される。駆動電圧V1を可変すると対物レンズ31が移動し、その移動過程でフォーカスエラー信号Erが得られる。
【0031】
フォーカスエラー信号Erは、対物レンズ31からの光スポットが合焦地点付近にくるとS字状に変化する。したがって、S字カーブが得られる位置を検出して、所定タイミングでフォーカスサーボをオンにすれば、以降、光スポットが合焦状態に保持され、フォーカスサーボ動作が行われる。
【0032】
ところで、図2ではディスク1に面振れがあっても、対物レンズ31の光スポットがディスク1のデータ層Dまで到達した場合を示しているが、ディスク1の面振れのタイミングによっては、図3で示すように光スポットがディスク1のデータ層Dまで届かない場合がある。
【0033】
図3(a)は、フォーカスサーチにおいて、ディスク1に対して対物レンズ31を離れた位置から徐々に近づけたが、面振れによって光スポットがデータ層Dまで到達できなかった状態を示している。即ち、図3(b)に示すように、駆動電圧V1を可変しても光りスポットは合焦地点付近まで到達するものの合焦点を通過できない。またフォーカスエラー信号ErのS字特性は、上下アンバランスな波形となり、下側の振幅が小さくなり正常振幅のフォーカスエラー信号Erが得られない。したがって、フォーカスサーチは失敗してしまう。
【0034】
そこで本発明では、フォーカスサーチ時のフォーカスエラー信号Erのピーク値とボトム値を取得して演算処理を行い、フォーカスサーチのリカバリーを行う。つまり、本発明の一実施形態では、フォーカスサーチ時に以下の(1)〜(4)の処理を行う。
【0035】
(1)フォーカスサーチにて、フォーカスエラー信号Erのピーク値とボトム値を取得する。(2)フォーカスエラー信号Erの基準電圧を基準にしてピーク値とボトム値の振幅レベルを比較する。(3)ピーク値とボトム値の振幅レベルの割合が一定以上であればフォーカスサーチ失敗と判定する。(4)フォーカスサーチに失敗したときは、例えばフォーカスサーチ用の駆動電圧V1の設定を変更し、フォーカスサーチのリカバリーを実施する。こうして、フォーカスサーチに成功したとき及びリカバリーに成功したときは、フォーカスサーボループをオンにしてフォーカスサーボを実行する。
【0036】
尚、コントローラ12とフォーカス制御回路7は、フォーカスサーチ用の駆動電圧V1を可変してフォーカスサーチを行う第1のフォーカス制御部を構成する。またコントローラ12のサーチ判定部122は、フォーカスサーチによって得たフォーカスエラー信号の振幅と、フォーカスエラー信号のピーク値及びボトム値の割合をもとにフォーカスサーチの成否を判定する第1の判定部を構成する。
【0037】
以下、図4、図5を参照してフォーカスサーチの動作を具体的に説明する。図4(a)は、1回目のフォーカスサーチにおいてサーチを失敗したときの駆動電圧の振幅V1と、フォーカスエラー信号Erを示している。このときのフォーカスエラー信号Erのピーク値をE1、ボトム値をE2とする。図4(b)はフォーカスサーチのリカバリー時の駆動電圧V2と、フォーカスエラー信号Erを示している。このときのフォーカスエラー信号Erのピーク値をE11、ボトム値をE12とする。尚、ディスクの面振れをAで示している。
【0038】
図5は、フォーカスサーチの動作を示すフローチャートである。図5において、ステップS0で例えばディスク1の再生を起動すると、ステップS1ではフォーカスサーチを開始し、ステップS2ではフォーカスエラー信号Erのピーク値の計測を開始し、ステップS3ではフォーカスエラー信号Erのボトム値の計測を開始する。ステップS4では、フォーカスサーチ用の駆動電圧V1を徐々に高くし、対物レンズ31をディスク1に近付ける(レンズアップする)。
【0039】
ステップS5では、フォーカスエラー信号Erのピーク値E1とボトム値E2を取得し、ステップS6でフォーカスサーチを終了する。次のステップS7では、フォーカスエラー信号Erの振幅(ピーク値+ボトム値)と、ピーク値及びボトム値の割合を算出しフォーカスサーチが正常に行われたか否かを判断する。即ち、
(ピーク値−ボトム値)/(ピーク値+ボトム値)×100% …(1)
を計算し、計算結果と予め設定した閾値を比較する。計算結果が閾値に等しいか小さい場合は、ステップS8に進み、フォーカスサーボループをオンにしてフォーカス電圧等の各種の信号振幅を調整し、ステップS9で起動後の後処理を行い、再生状態に移行する。こうしてフォーカス引込可能範囲にまで対物レンズ位置を移動させ、その後フォーカスサーボループをオンにしてフォーカスサーボを実行する。
【0040】
一方、計算結果が閾値よりも大きい場合は、ステップS10で対物レンズ31を元の位置(ダウン位置)に戻し、ステップS11でフォーカスサーチ用の駆動電圧の振幅を大振幅モード(駆動電圧の振幅をV2とする)に変更し、ステップS1に戻ってフォーカスサーチのリカバリーを実施する。
【0041】
例えば最初のフォーカスサーチにて、ピーク値E1がβ(V)で、ボトム値が0.2×βであったとすると、(1)式は、
(β−0.2×β)/(β+0.2×β)×100%≒67%となる。
【0042】
閾値を40%とすると、(1)式の計算結果は閾値よりも大きいためフォーカスサーチは失敗と判断し、ステップS10に移行する。次のステップS11では、図4(b)に示すように、振幅の大きい駆動電圧V2によってフォーカスサーチを行いステップS1に戻ってリカバリーを実施する。
【0043】
リカバリーによるフォーカスエラー信号Erのピーク値E11及びボトム値E12がほぼ等しく、ともにα(V)であったとすると、(1)式は、
(α−α)/(α+α)×100%≒0となる。
【0044】
閾値は、40%であるから、(1)式の計算結果は閾値よりも小さいためフォーカスサーチは成功と判断し、ステップS8に移行する。つまり、フォーカスサーチが成功したときは、フォーカスエラー信号Erのピーク値E11及びボトム値E12が近似するため、計算結果は閾値よりも小さくなる。尚、閾値は実験結果・経験則に基づいて、約40に設定している。
【0045】
フォーカスサーチ失敗時のリカバリーの方法としては、同じ振幅の駆動電圧V1で再度フォーカスサーチを行ってもよいが、ファーカスサーチの成功率を高めるには、リカバリー時にフォーカスサーチ用の駆動電圧の振幅V2を高くしたほうがよい。また駆動電圧の振幅V2は、対物レンズ31がディスク1に衝突するのを防ぐ値に設定する。
【0046】
このように、第1の実施形態によれば、ディスク1の面振れ等による異常を検出した場合に、フォーカスサーチのリカバリーを実施することで正常にフォーカス制御することができ、面振れ等があっても速やかに再生動作に移行することができる。
【実施例2】
【0047】
次に本発明の光ディスク装置の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、ノイズ対策を施した点に特徴がある。即ち、面振れ量の大きいディスク1を起動してフォーカスサーチを行った場合には、対物レンズ31からのスポット光がディスク1のデータ層まで到達(通過)できず、フォーカスサーチを失敗することがあるが、さらにフォーカスエラー信号にノイズ成分が含まれるとフォーカスサーチは失敗する可能性がさらに高くなる。
【0048】
図6は、フォーカスエラー信号にノイズ成分が含まれたときの動作を示す説明図である。図6(a)はディスク1のデータ層Dに対して対物レンズ31を離れた位置から徐々に近づけ、データ層に到達した位置まで駆動した状態を示している。図6(b)の太線V1はフォーカスサーチ用の駆動電圧を示し、Aはディスク1の面振れを示している。
【0049】
図6(c)は、フォーカスエラー信号Erを示している。フォーカスエラー信号Erは、通常であれば対物レンズ31からの光スポットが合焦地点付近でS字状に変化する。また低反射ディスクや、煙草の煙等により対物レンズが汚れている場合には、反射光が低減することがあり、図6(c)に示すようにフォーカスエラー信号ErにノイズNが乗ることがある。また光ピックアップ3の光検出器37の4分割光検出セルから得られる全加算信号Eaddもノイズの影響を受ける。しかしながら、フォーカスエラー信号ErのS字カーブのピーク値とボトム値がほぼ等しければ、フォーカスサーチは成功する可能性が高い。
【0050】
一方、図7(a)で示すように光スポットがディスク1のデータ層まで届かず、かつフォーカスエラー信号ErにノイズNが乗ると、図7(b)に示すように、ファーカスエラー信号ErのS字特性は、光スポットが合焦地点まで到達しないため正常なものとならずノイズしか得られない。また図7(d)で示すように、全加算信号Eaddもノイズ成分が加算された振幅となり、正常な全加算信号が得られない。このため、再度フォーカスサーチをやり直しても成功するとは限らない。
【0051】
そこで第2の実施形態では、フォーカスサーチ時のフォーカスエラー信号Er及び光検出器37からの全加算信号Eaddを取得して、両信号の振幅をもとに演算処理を行い、フォーカスサーチのリカバリーを行うようにしたものである。つまり、第2の実施形態では、フォーカスサーチ時に以下の(1)〜(4)の処理を行う。
【0052】
(1)フォーカスサーチにて、フォーカスエラー信号と全加算信号のピーク値とボトム値をそれぞれ取得する。(2)フォーカスエラー信号、全加算信号の振幅を算出する。(3)フォーカスエラー信号振幅÷全加算信号振幅を算出する。(4)算出した信号振幅の比率が予め設定した閾値以下の場合、フォーカスサーチ失敗と判定する。(5)フォーカスサーチ用の駆動電圧の振幅が大きくなるように変更し、再度フォーカスサーチを実施する。
【0053】
尚、コントローラ12とフォーカス制御回路7は、フォーカスサーチ用の駆動電圧を可変してフォーカスサーチを行う第2のフォーカス制御部を構成する。またコントローラ12のサーチ判定部122は、フォーカスサーチによって得たフォーカスエラー信号の振幅と、光検出器からの全加算信号の振幅の割合をもとにフォーカスサーチの成否を判定する第2の判定部を構成する。
【0054】
以下、図8〜図10を参照して第2の実施形態におけるフォーカスサーチの動作を具体的に説明する。図8(a),(b),(c)は、1回目のフォーカスサーチにおいてサーチを失敗したときの駆動電圧の振幅V1と、フォーカスエラー信号Erと、全加算信号Eaddをそれぞれ示している。このときのフォーカスエラー信号Erのピーク値とボトム値を加算したフォーカスエラー信号Erの振幅をE21とする。また全加算信号Eaddの振幅をE31とする。
【0055】
図9(a),(b),(c)はフォーカスサーチのリカバリー時の駆動電圧V2と、フォーカスエラー信号Erと、全加算信号Eaddをそれぞれ示している。このときのフォーカスエラー信号Erのピーク値とボトム値を加算したフォーカスエラー信号Erの振幅をE22とする。また全加算信号Eaddの振幅をE32とする。尚、図8(a),図9(a)において、ディスクの面振れをAで示している。
【0056】
図10は、フォーカスサーチの動作を示すフローチャートである。図10において、ステップS20で例えばディスク1の再生を起動すると、ステップS21ではフォーカスサーチを開始し、ステップS22ではフォーカスエラー信号Er及び全加算信号Eaddのピーク値の計測を開始し、ステップS23ではフォーカスエラー信号Er及び全加算信号Eaddのボトム値の計測を開始する。ステップS24では、フォーカスサーチ駆動電圧V1を可変して、対物レンズ31をディスク1に近付ける(レンズアップする)。
【0057】
ステップS25では、フォーカスエラー信号Er及び全加算信号Eaddのピーク値とボトム値を取得し、ステップSS26でフォーカスサーチを終了する。次のステップS27では、取得したフォーカスエラー信号Erの最大振幅を算出し、また全加算信号Eaddの最大振幅を算出する。ステップS28では、取得したフォーカスエラー信号Erの振幅値と全加算信号の割合をもとに、フォーカスサーチの成否を判定する。即ち、
(フォーカスエラー信号の振幅/全加算信号の振幅)×100% …(2)
を計算し、計算結果と予め設定した閾値を比較する。
【0058】
計算結果が閾値に等しいか大きい場合は、ステップS29に進み、フォーカスサーボループをオンにしてフォーカス電圧等の各種の信号振幅を調整し、ステップS30で起動後の後処理を行い、再生状態に移行する。こうしてフォーカス引込可能範囲にまで対物レンズ位置を移動させ、その後フォーカスサーボループをオンにしてフォーカスサーボを実行する。
【0059】
一方、計算結果が閾値よりも小さい場合は、ステップS31で対物レンズ31を元の位置(ダウン位置)に戻し、ステップS32でフォーカスサーチ用の駆動電圧の振幅を大振幅モード(このときの駆動電圧の振幅をV2とする)に変更し、ステップS21に戻ってフォーカスサーチのリカバリーを行う。
【0060】
例えば最初のフォーカスサーチにて、フォーカスエラー信号の振幅が0.1×β(V)で、全加算信号の振幅が0,7×β(V)であったとすると、(2)式は、
(0.1×β)/(0.7×β)×100%≒14%となる。
【0061】
閾値を例えば80%とすると、(2)式の計算結果は閾値よりも小さいためフォーカスサーチは失敗と判断し、ステップS31に移行する。ステップS32では、図9に示すように振幅の大きい駆動電圧V2によりフォーカスサーチを行い、リカバリーを実施する。
【0062】
リカバリーによるフォーカスエラー信号Erの振幅E22及び全加算信号Eaddの振幅E32がほぼ等しく、ともにα(V)であったとすると、(2)式は、
(α/α)×100%≒100となる。
【0063】
閾値は80%であるから、(2)式の計算結果は閾値よりも大きいためフォーカスサーチは成功と判断し、ステップS29に移行する。つまり、フォーカスサーチが成功したときは、フォーカスエラー信号Erの振幅と全加算信号の振幅が近似するため、計算結果は閾値よりも大きくなる。閾値は実験結果・経験則に基づいて、約80に設定している。
【0064】
尚、フォーカスサーチ失敗時のリカバリーの方法としては、同じ振幅の駆動電圧V1で再度フォーカスサーチを行ってもよいが、ファーカスサーチの成功率を高めるには、リカバリー時にフォーカスサーチ用の駆動電圧の振幅を高くした方がよい。またこのときの駆動電圧の振幅V2は、対物レンズ31がディスク1に衝突するのを防ぐ値に設定する。
【0065】
このように、第2の実施形態によれば、ディスク1の面振れやノイズの影響があっても、フォーカスサーチのリカバリーを実施することで正常にフォーカス制御することができ、速やかに再生動作に移行することができる。
【0066】
尚、本発明の実施形態は、以上説明した構成に限定されるものではない。例えば、第1の実施形態でのフォーカスサーチ手法と第2の実施形態でのフォーカスサーチ手法とを組み合わせて、一方のフォーカスサーチ手法でリカバリーできなかったときは、他方のフォーカスサーチ手法でリカバリーするようにしてもよい。
【0067】
また、特許請求の範囲を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…ディスク媒体
2…スピンドルモータ
3…光ピックアップ
4…スレッドモータ
5…スレッドモータ制御回路
6…レーザ制御回路
7…フォーカス制御回路
8…トラッキング制御回路
9…データ再生回路
10…PLL回路
11…スピンドルモータ制御回路
12…コントローラ(制御部)
13…インターフェース(I/F)
14…ホスト
20…アクチュエータ
31…対物レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズ及び光検出器を含み、ディスク媒体に記録された情報を読み取る光ピックアップと、
フォーカスサーチ用の駆動電圧を可変して前記対物レンズを前記ディスク媒体のフォーカス方向に移動させてフォーカスサーチを行う第1のフォーカス制御部と、
前記フォーカスサーチによって得たフォーカスエラー信号の振幅と、前記フォーカスエラー信号のピーク値及びボトム値の割合をもとに前記フォーカスサーチの成否を判定する第1の判定部と、を具備し、
前記第1のフォーカス制御部は、前記第1の判定部での判定結果をもとに前記フォーカスサーチが失敗した場合はリカバリーを実施することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記第1の判定部は、前記フォーカスエラー信号の振幅に対する前記ピーク値及びボトム値の割合を算出して予め設定した閾値と比較し、前記算出結果が前記閾値以上の場合は、前記フォーカスサーチが失敗したと判定することを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記第1のフォーカス制御部は、前記フォーカスサーチが失敗したときは、前記フォーカスサーチ用の駆動電圧の振幅を大きくして前記リカバリーを実施することを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項4】
対物レンズ及び光検出器を含み、ディスク媒体に記録された情報を読み取る光ピックアップと、
フォーカスサーチ用の駆動電圧を可変して前記対物レンズを前記ディスク媒体のフォーカス方向に移動させてフォーカスサーチを行う第2のフォーカス制御部と、
前記フォーカスサーチによって得たフォーカスエラー信号の振幅と、前記光検出器からの全加算信号の振幅の割合をもとに前記フォーカスサーチの成否を判定する第2の判定部と、を具備し、
前記第2のフォーカス制御部は、前記第2の判定部の判定結果をもとに前記フォーカスサーチが失敗した場合はリカバリーを実施することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
前記第2の判定部は、前記全加算信号の振幅に対する前記フォーカスエラー信号の振幅の割合を算出して予め設定した閾値と比較し、前記算出結果が前記閾値以下の場合は、前記フォーカスサーチが失敗したと判定することを特徴とする請求項4記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記第2のフォーカス制御部は、前記フォーカスサーチが失敗したときは、前記フォーカスサーチ用の駆動電圧の振幅を大きくして前記リカバリーを実施することを特徴とする請求項4記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−40139(P2011−40139A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189259(P2009−189259)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(504113008)東芝アルパイン・オートモティブテクノロジー株式会社 (110)
【Fターム(参考)】