説明

光ネットワークの設備計画装置

【課題】設備コスト及び伝送遅延等の伝送制約条件を考慮した設備配置を効率的に決定する光ネットワークの設備計画装置を提供する。
【解決手段】設備計画装置は、所望のパスの最短経路を判定して第1経路とし、第1経路のパスを実現する最小コストの設備構成である第1の構成を判定し、第1の構成及び第1経路を第1候補として記憶する。その後、第1候補の経路のうち、1又は複数のパスの経路を変更した複数の第2の経路を生成し、各第2の経路を実現する最小コストの設備構成である第2の構成を判定し、第2の構成での設備コストが、第1候補の設備コストより小さい場合、各候補の順位を1ずつ繰下げ、第2の構成及び第2経路を第1候補として記憶することを、設備コストが収束するまで繰り返す。その後、各パスに波長の割当てが可能か否かを、第1候補から順に判定し、最初に割当てが可能となった候補に決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ネットワークの設備計画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、非特許文献1には光電気光変換を行う数を最小とする様に、光ネットワークの設備配置を決定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Norihiko Shinomiya、et al、“Hybrid Link/Path−Based Design for Translucent Photonic Network Dimensioning”、IEEE JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY、Vol.25、No.10、2007年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、光ネットワークの設備配置は、局舎位置、局舎間に敷設されている光ファイバの経路及び距離並びに各光ファイバの単位距離当たりの伝送損失といった光ファイバのパラメータ等を、動かすことのできない条件、つまり、制約条件とし、この制約条件のもと、所望のパスを設定するのに必要な設備構成を決定することにより行う。
【0005】
ここで、任意の2つの局舎間に必要なパスについては、光ファイバの敷設状況に応じて様々な経路を想定することができ、通過する局舎における接続方法としても、光クロスコネクト(OXC)を使用する形態、光アド・ドロップ・マルチプレクサ(ROADM)を使用する形態、光電気光変換を行う再生中継器を使用する形態等が存在する。例えば、ある局舎において終端するパス及びこの局舎を通過するパスの数と、これらパスが収容される光ファイバが与えられたとしても、与えられたパスを収容するための、この局舎における設備構成も複数存在し、必要な設備コストは使用する設備構成により異なるものとなる。また、各局舎を通過するパスと、これら通過するパスが収容される光ファイバは、使用するパスの経路に依存するが、この経路も複数存在する。
【0006】
また、再生中継とは異なり、OXCにおける光接続の様に、光アンプを含む光伝送路を多段接続する場合には、信号対雑音比が悪化するため、信号対雑音比が所定値より悪化する前には再生中継を行わなければならないという制約が存在する。さらに、OXC等における光接続は、波長変換を伴わないため、波長連続性が確保できなければ設定できないという制約も存在する。さらに、伝送遅延も重要なパラメータであり、パスの伝送遅延はできるだけ小さくなる様にパスを設定する必要もある。
【0007】
この様に、所望のパスを設定するために考慮すべき事項は多岐に渡り、所望の信号対雑音比より悪化することなく、できるだけ設備コストを小さくし、かつ、伝送遅延をあまり大きくさせないパス経路と、その時の設備構成を効率的に決定する方法は提案されていない。なお、設備コストとは、光電気光変換部のコスト、光スイッチ部といった共通部のコスト、光ファイバの施設に関するコスト等である。
【0008】
したがって、本発明は、できるだけ設備コストを小さくし、かつ、伝送遅延をあまり大きくさせないパス経路及び設備配置を効率的に決定する光ネットワークの設備計画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における設備計画装置によれば、
各光ファイバについて、両端の通信局舎及び光ファイバの特性を示す情報に基づき、所望のパスの経路及び該パス経路を実現するための設備構成を決定する設備計画装置であって、所望のパスそれぞれについて、最短経路を判定し、判定した最短経路を第1の経路とする第1の手段と、前記第1の経路のパスを実現するための設備構成のうち、設備コストが最小となる設備構成である第1の構成を判定し、第1の構成及び第1の構成での設備コスト並びに第1の経路を第1候補として記憶する第2の手段と、第1候補のパス経路から、1本又はグループ化した複数のパスの経路を変更した第2の経路を実現するための設備構成のうち、設備コストが最小となる設備構成である第2の構成を判定し、第2の構成での設備コストが、第1候補の設備コストより小さい場合、各候補の順位を1ずつ繰下げ、第2の構成及び第2の構成での設備コスト並びに第2経路を第1候補として記憶することを、第2の構成での設備コストが、第1候補の設備コスト以上であることが所定回数連続するまで繰り返す第3の手段と、各パスに波長の割当てが可能か否かを、第1候補から順に判定し、最初に割当てが可能となった候補を、使用する設備構成及びパス経路として出力する第4の手段とを備えていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の設備計画装置における他の実施形態によれば、
各パスについて、再生中継を行う必要がある回数とその通信局舎の範囲を決定する第5の手段を、さらに、備えており、第2の手段及び第3の手段は、設備コストの算出にあたり、第5の手段が決定した再生中継回数及びその通信局舎の範囲を制約条件とすることも好ましい。
【0011】
本発明におけるプログラムによれば、
上記設備計画装置としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
最初に最短経路でパスを求めるため、繰り返し処理が終了した段階において、最後の候補は、候補中、設備コストが最も高いが、パス経路は最短、つまり、最適なものとなる。一方、第1候補は、候補中、設備コストは最小、つまり、最適であるが、平均的なパス経路は最長のものとなる。ただし、最短パス経路から順に経路変更して求めたものであるため、平均的なパス経路は、与えられたパスに対する最長経路である確率は少ない。この様に候補を絞り込んだ後、波長割当てが可能か否かを、第1の候補から順に判定することで、設備コストとパス経路の両面でバランスの取れた効率的な、つまり最適な設備配置を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による設備計画装置の構成図である。
【図2】本発明によるの設備計画装置での処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について、以下では図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明による設備計画装置の構成図である。図1によると、設備計画装置は、局舎・線路情報データベース1と、必要パス・データベース2と、装置データベース3と、制御部4と、パス経路決定部5と、光電気光変換数決定部6と、設備配置決定部7と、波長割当て判定部8とを備えている。
【0016】
局舎・線路情報データベース1は、各通信局舎とその位置を特定する局舎情報と、敷設されている光ファイバについて、両端の通信局舎、経路、距離、単位距離当たりの損失や分散といった光ファイバについてのパラメータを示す線路情報を保持するデータベースであり、必要パス・データベース2は、必要なパスについて、両端の通信局舎及び伝送容量を示す情報を保持するデータベースであり、装置データベース3は、OXC、ROADM及び再生中継器を含む、配置する設備について、その収容可能パス数、接続種別、コストについての情報を保持するデータ・ベースである。なお、接続種別とは、波長単位での接続、光ファイバ単位での接続、一旦電気信号に変換しての再生中継といった、接続単位を示す情報である。
【0017】
また、制御部4は、装置内各部の制御を行い、パス経路決定部5はパスの経路、つまり、各パスが通過する局舎を決定する機能を有し、光電気光変換数決定部6は、パス経路決定部5が決定した各パスの経路から信号対雑音比を算出し、必要な再生中継の数を決定し、設備配置決定部7は、パス経路決定部5が決定した総てのパス経路に対してコスト最小となる設備配置を決定し、波長割当て判定部8は、各パスに対して波長の割当てが可能であるか否かを判定し、未使用波長を各パスに割り当てる機能を有するものである。以下、図2を用いて、設備計画装置での処理を説明する。
【0018】
まず、パス経路決定部5が、局舎・線路情報データベース1に保存されている局舎及び線路情報に基づき、必要パス・データベース2に保存されている各パスについて、遅延が最短となる経路を求める(S1)。
【0019】
続いて、光電気光変換数決定部6が、パス経路決定部5が求めた経路に基づき、各パスに必要な光電気光変換の数と、光電気光変換を行う局舎の範囲を決定する。例えば、6つの局舎を通過するパスに対して、光電気光変換を第3番目から第5番目の局舎のいずれかで1回行う必要がある場合には、第3番目から第5番目の局舎がその範囲になる。また、光電気光変換を複数回以上行う必要がある場合には、2回目の以降の変換位置は、それまでの変換位置の関数となる(S2)。
【0020】
設備配置決定部7は、装置データベース3を参照し、パス経路決定部5が決定した各パスを実現するための設備構成を複数決定し、それぞれについて設備コストを求める。例えば、局舎内での接続にはOXCやROADM等の各種装置が利用できるが、可能な組合せに対して、それぞれ、設備コストを算出する。なお、再生中継については、光電気光変換数決定部6が決定した局舎範囲のいずれかで必ず行うことを条件とする。その後、制御部4は、最小の設備コスト及びその設備構成と、現在のパス経路を、第1候補として記憶する(S3)。
【0021】
第1候補決定後、パス経路決定部5は第1候補の経路から1本のパスを選択して、この選択したパスの経路を変更し(S4)、光電気光変換数決定部6は変更したパスについて、必要な光電気光変換の数と、光電気光変換を行う局舎位置の範囲を決定し(S5)、設備配置決定部7は、変更後のパス経路に対してS3と同じ処理にてコストが最小となる設備構成を決定し、制御部4は第1候補の設備コストと比較する(S6)。なお、選択したパスの変更後の経路も複数考えることができるが、各経路について設備コストを求め、設備コストが最小となる経路を変更後の経路とし、このときの設備コストを第1候補の設備コストと比較する。選択したパスの経路変更により、設備コストが変化する通信局舎は、パス経路変更により通過するパスが変更になった通信局舎と、経路変更したパスを終端する通信局舎のみであるため、設備コストを算出するための処理負荷は、S3における処理よりは小さい。
【0022】
制御部4は、経路変更後の設備コストが、第1候補での設備コストより低ければ、変更後のパス経路、設備構成及び設備コストを第1候補とし、現在の各候補を1ずつ繰り下げる(S7)。さらに、制御部4の制御のもと、S4からS7を繰り返す。繰り返しは、変更後の設備コストが、現在の第1候補の設備コスト未満とならないことが、連続して所定回数だけ続いた場合に終了する(S8)。
【0023】
最後に、波長割当て判定部8は、第1候補の設備構成で、第1候補のパス経路に対して波長の割当てが可能であるか否かを判定する。つまり、波長連続性が確保できなければパスの設定はできないという制約を考慮しながら、パスが通過する各光ファイバにおいて、このパスに未使用波長の割当てが可能か否かを判定する。なお、光電気光変換を行う場合には、これに伴い波長の変換を行うことができるため、波長割当て判定部8は、光電気光変換を行うパスについては、光電気光変換に伴う波長変換を考慮し、各光ファイバの波長利用効率が最大となる様に波長変換を行う。割当てが可能である場合には、第1候補の設備構成及びパス経路を、使用する設備構成及びパス経路として出力する。可能でない場合には、候補順に同じ判定を行い、最初に波長割当てが可能となった候補を使用する設備構成及びパス経路として出力する(S9)。
【0024】
最初に最短経路でパスを求めるため、繰り返し処理が終了した段階において、最後の候補は、候補中、設備コストが最も高いが、パス経路は最短、つまり、最適なものとなる。一方、第1候補は、候補中、設備コストは最小、つまり、最適であるが、平均的なパス経路は最長のものとなる。この様に候補を絞り込んだ後、波長割当てが可能か否かを、第1の候補から順に判定することで、設備コストとパス経路の両面でバランスの取れた効率的な、つまり最適な設備配置を決定することができる。
【0025】
なお、上述した実施形態において、局舎・線路情報データベース1は、施設されている光ファイバについての線路情報を有するものであったが、施設予定又は計画中の光ファイバについての線路情報を、局舎・線路情報データベース1に持たせ、これにより、ネットワーク全体において最適な光ファイバの配置も判定することができる。また、図2のS4においては、パスの経路を1本ずつ変更していたが、複数の現用パスと、これら複数の現用パスに対する予備パスの様に、あるパスと同一経路となることが望ましくないパスが存在する場合には、これらパスをグループとして管理し、グループを構成するパスについては、1本ずつではなく、グループ内の全パスの経路を同時に変更することが望ましい。
【0026】
なお、本発明による設備計画装置は、コンピュータを図1の各部として機能させるプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。さらに、本発明は、ハードウェア及びソフトウェアの組合せによっても実現可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 局舎・線路情報データベース
2 必要パス・データベース
3 装置データベース
4 制御部
5 パス経路決定部
6 光電気光変換数決定部
7 設備配置決定部
8 波長割当て判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各光ファイバについて、両端の通信局舎及び光ファイバの特性を示す情報に基づき、所望のパスの経路及び該パス経路を実現するための設備構成を決定する設備計画装置であって、
所望のパスそれぞれについて、最短経路を判定し、判定した最短経路を第1の経路とする第1の手段と、
前記第1の経路のパスを実現するための設備構成のうち、設備コストが最小となる設備構成である第1の構成を判定し、第1の構成及び第1の構成での設備コスト並びに第1の経路を第1候補として記憶する第2の手段と、
第1候補のパス経路から、1本又はグループ化した複数のパスの経路を変更した第2の経路を実現するための設備構成のうち、設備コストが最小となる設備構成である第2の構成を判定し、第2の構成での設備コストが、第1候補の設備コストより小さい場合、各候補の順位を1ずつ繰下げ、第2の構成及び第2の構成での設備コスト並びに第2経路を第1候補として記憶することを、第2の構成での設備コストが、第1候補の設備コスト以上であることが所定回数連続するまで繰り返す第3の手段と、
各パスに波長の割当てが可能か否かを、第1候補から順に判定し、最初に割当てが可能となった候補を、使用する設備構成及びパス経路として出力する第4の手段と、
を備えている設備計画装置。
【請求項2】
各パスについて、再生中継を行う必要がある回数とその通信局舎の範囲を決定する第5の手段を、さらに、備えており、
第2の手段及び第3の手段は、設備コストの算出にあたり、第5の手段が決定した再生中継回数及びその通信局舎の範囲を制約条件とする、
請求項1に記載の設備計画装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の設備計画装置としてコンピュータを機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−283569(P2010−283569A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134929(P2009−134929)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】