説明

光ネットワーク内でバイパスを作成する方法

【課題】光ネットワークにおいてエネルギー効率の良い経路を求める方法を提供する。
【解決手段】複数の送信元、クロスコネクト(XC)および宛先ノードを含む光ネットワークにおいて、送信元ノードおよび宛先ノードの組合せの可能な対ごとにトラフィック需要行列を構築し、送信元ノードおよびいずれかのXCノードとの間のバイパスを作成するための第1のエネルギー削減メトリックを、トラフィック需要行列に基づいて求め、いずれかのXCノードと宛先ノードとの間のバイパスを作成するための第2のエネルギー削減メトリックを、トラフィック需要行列を用いて求め、次に、XCノードのうち、最大エネルギー削減メトリックを有する1つのXCノードで終了するバイパスを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、光ネットワークに関し、より詳細には、光ネットワーク内でエネルギー効率の良い経路を求め、光ネットワーク内で光バイパスを作成することに関する。
【背景技術】
【0002】
電気通信産業におけるエネルギー消費は、世界中の全エネルギー消費に直接影響を与える。例えば、2005年には、テレコムイタリアネットワークでの消費は、2TWhを超え、これは全てのイタリアのエネルギー消費の約1%にあたる。エネルギー消費は、COガスの発生も意味し、例えば、2TWhは、4,000,000トンのCO放出と同等である。したがって、電気通信ネットワークのエネルギー消費を削減することが重要である。
【0003】
次世代光トランスポートネットワーク(OTN)のフレームは、光データユニット(ODU)を用いてデータをトランスポートする。異なるレベルのODUは、異なるデータレートでトラフィックを搬送することができる。具体的には、ODU0は、1.25Gbpsを搬送し、ODU1は、2.5Gbpsを搬送し、ODU2は、10Gbpsを搬送し、ODU3は、40Gbpsを搬送し、ODU4は、100Gbpsを搬送する(全ての値は、公称値である)。
【0004】
クロスコネクト(XC)における大きな方のODUの処理のビットあたりのエネルギー消費は、小さな方のODUの半分であることが分かっている。その結果、大量のデータを有する光パスのビットあたりのエネルギー消費は、小さな方のODUを有するパスよりも少ない。
【0005】
各光ファイバーは、複数の波長を介して光データトラフィックを搬送することができる。一般的なコア光ネットワークは、10Gbps、40Gbps、または100Gbpsのラインレートを有することができる。これは、各波長が10Gbps、40Gbps、または100Gbpsで情報を搬送することができることを意味する。例えば、波長が100Gbpsを有する場合、ファイバーは、単一のODU4若しくは4つのODU3、またはさまざまなレベルのODUの他の任意の組合せを搬送するのに用いることができる。波長が2つ以上のODUを搬送するとき、光信号は、XCにおいて電気信号に変換される。各ODUのデータは、対応する出力ポートによって送信される前に、XCにおいて処理され、次いで、光領域に変換され、戻される。
【0006】
波長が、単一のODUのみを搬送し、データが、XCの出力ポートにおいて同じ波長にルーティングされるとき、光バイパスを用いることができる。光バイパスは、光/電気(O2E)変換および電気/光(E2O)変換(以下「変換」という)を必要とせず、したがって、バイパスは、変換を必要とする他の任意のスイッチング方式よりもエネルギー消費が実質的に少ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施の形態は、大きな光データユニット(ODU)の光バイパスおよび処理を利用する光ネットワークにおいてエネルギー効率の良い経路を求める方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施の形態は、エネルギー消費を削減し、大きな光ネットワークに光バイパスを作成する最適なロケーションを求めるのに用いることができる。
【0009】
全ての光バイパスが作成された後、実施の形態は、大きなODUを好んで用いることによって、エネルギー消費を削減する光経路を求める。
【0010】
実施の形態は、エネルギー効率の良い経路を求めるシグナリング要件も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は、バイパスが本発明の実施形態による方法に従って作成される光ネットワークのブロック図であり、(b)は、本発明の実施形態による方法によって作成される光バイパスを有する光ネットワークのブロック図である。
【図2】送信元、クロスコネクト、およびバイパスオプションを有する光ネットワークの概略図である。
【図3A】送信元ノードA、XCノード、宛先ノードBおよびC、ならびに最小ホップ距離を有する光ネットワークの概略図である。
【図3B】図3Aのネットワークの仮定、オプション、およびグラフ制約の概略図である。
【図4】本発明の実施形態によるバイパスを作成する方法のフローチャートである。
【図5】データレートの関数としてのエネルギーおよびエネルギーの導関数のグラフである。
【図6】本発明の実施形態に従って構成されたスパニング木である。
【図7】本発明の実施形態に従って構成されたスパニング木である。
【図8】図7のスパニング木に対応する光ネットワークの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1(a)は、光バイパスを有しない光ネットワークの一部を示している。本発明の実施の形態による方法400に従って、ネットワークにバイパスを作成することが望まれている。光ネットワークは、通常、複数のクロスコネクト(XC)110、およびファイバーリンク120を含む。各XCは、データを受信する入力ポート111および送信データを送信する出力ポート112を有する。光データユニット(ODU)のサイズに応じて、受信機の入力ポートにおけるエネルギー消費は、送信機の出力ポートにおけるものと異なる。
【0013】
本発明は、1組の複数の送信元ノードおよび1組の複数の宛先ノードを有するネットワークに適用されるが、簡単にするために、単一の送信元および単一の宛先について、エネルギー節減の動機を説明する。
【0014】
この説明を簡単にするために、特定のリンクおよびXCの入力ポートおよび出力ポートの双方におけるスイッチングエネルギー消費が、Eであると仮定する。リンクを介して送信中に、複数の光リピーターが存在し、その結果、送信リンクを介したエネルギー消費は、送信エネルギーEに比例する。このエネルギー消費は、リンクの距離に依存する。例えば、3つのXCおよび2つのファイバーリンクを有するネットワークでは、消費される全エネルギーは4E+DEであり、ここで、Dは、ファイバーリンクの総距離である。
【0015】
図1(b)に示すように、大量のトラフィックが送信され、その結果、トラフィックが波長全体を用いる場合、図1(a)の中央のXCの代わりに、光バイパス130を用いることが可能である。このように、バイパスでは、光信号と電気信号との間の変換が必要とされない。逆に、波長全体が入力ポートから出力ポートに直接バイパスされる。このとき、全エネルギー消費は、2E+DEとなる。
【0016】
一般に、XCにおけるエネルギー消費は、ラインデータレートRが増加するにつれて増加する。一方、情報のビットを処理する限界エネルギー消費は、より大きなODUの使用に起因して、データレートが増加するにつれて減少する。したがって、データレートRの関数としてのスイッチングエネルギー消費Eは、傾きが減少していく凹関数である(図5参照)。明らかに、全てのリンクは、最大容量を有する。
【0017】
ファイバーリンクにおける送信エネルギー消費Eは、増幅に由来し、リンクを介した送信データ量にかかわらずほぼ一定である。さらに、リンクは、トラフィックの複数のストリームを介して送信リソースを分割することができるので、ファイバーを介した送信中の送信エネルギー消費は、データレートRに比例すると仮定することができ、その結果、E=τRとなり、τは、定数である。スイッチングは、変換を要するので、スイッチングエネルギー消費は、一般に、ファイバーを介した送信エネルギー消費よりもはるかに高い。換言すれば、E>>>Eである。
【0018】
バイパスを用いると、エネルギー消費を削減することができることは明らかであるが、大きな光ネットワーク内で、光バイパスに最適なロケーションを求めることは容易ではない。
【0019】
図2に示すように、光ネットワークは、単一の送信元ノード(S)および5つのXCノード(1〜5)を含む。送信元は、Rのデータ量を送信する必要がある。各波長は、3Rのデータ量を搬送することができる。
【0020】
オプションA 201では、バイパスは用いられない。全スイッチングエネルギーは、6E(3R)+2E(2R)+2E(R)であり、送信エネルギーは、12τDRであり、容量は、12Rである。
【0021】
オプションB 202では、バイパスがXC1〜2に取って代わる。これによって、オプションAよりも良好な性能が達成される。全スイッチングエネルギーは、2E(3R)+2E(2R)+2E(R)であり、送信エネルギーは、12τDRであり、容量は、12Rである。
【0022】
オプションC 203では、バイパスがXC1〜3に取って代わる。これは、これまでにない手法である。全スイッチングエネルギーは、2E(3R)+4E(R)であり、送信エネルギーは、14τDRであり、容量は、14Rである。スイッチングエネルギーは、送信エネルギーよりもはるかに高いので、オプションCが消費するエネルギー量は、この例において最小である。
【0023】
オプションCが使用するエネルギー量は、最小であるが、オプションCは、より多くのネットワークデータ容量リソースを消費する。ネットワークオペレーターは、ピークでない時間中は、付加的なネットワークリソースを常に有し、付加的なリソースも、増大を予想して配置される。光ネットワークのルーティングトポロジーを変更することによって、ネットワークオペレーターは、エネルギー消費および業務費を削減することができる。
【0024】
バイパスが用いられないとき、経路内のXCの数は、変換数を直接意味するので、エネルギー消費が検討されるとき、ノードの間の最小ホップ距離に留意することが重要である。
【0025】
図3Aは、送信元ノードA、複数のXCノード、ならびに宛先ノードBおよびCを有する光ネットワークを示している。ノードAとBとの間の最小ホップ距離は、HABであり、ノードBとCとの間の最小ホップ距離は、HBCであり、ノードAとCとの間の最小ホップ距離は、HACである。
【0026】
図3Bは、図3Aのネットワークのための仮定301、オプション(1)302、オプション(2)303、およびグラフ制約304を示している。他のトラフィックはなく、A→BのパスおよびA→Cのパスは交わらないと仮定し、2つのオプション:オプション(1)バイパスなしと、オプション(2)Bへのバイパス、次いでCへのルーティングとを比較する。グラフに対する制約は、最小ホップ:HAB+HBC≧HAC≧HAB−HBCである。
【0027】
バイパスのないオプション(1)のエネルギー消費を、バイパスが送信元AからBであるオプション(2)のエネルギー消費と比較し、次に、データは、Bから中間のXCを通ってCに送信される。
【0028】
オプション(1)では、スイッチングエネルギー消費は、2(HAB(R)+HAC(R))である。送信エネルギーは、τ(DAB+DAC)である。容量は、HAB+HACである。
【0029】
オプション(2)では、スイッチングエネルギー消費は、2(E(R+R)+HBC(R))である。送信エネルギーは、τ(DAB(R+R)+DBC)である。容量は、HAB(R+R)+HBCである。
【0030】
送信エネルギーは、スイッチングエネルギーと比較して小さいので、この説明を簡単にするために、送信エネルギーEを省略することにする。式は、送信エネルギーを含むように容易に変更することができる。以下の式に従って、ノードBをバイパスに置き換えることにより、エネルギー削減を求める。
【0031】
【数1】

【0032】
第1項は、HBC≦HAC−1であるときにエネルギー削減を達成することができるという重要な見識を提供する。換言すれば、バイパスから宛先への最小ホップ距離は、送信元から宛先への最小ホップ距離よりも小さい。
【0033】
第2項は、バイパスノードが、途中にある多くの変換をなくすので、遠く離れたノードへのバイパスを作成することが、より好都合であることを示している。
【0034】
バイパスがノードAとBとの間に作成されると、このことは、ノードAとBとの間のリンクにおけるどのクロスコネクトノードにおいても、O2E変換およびE2O変換が行われないことを意味する。E2O変換は、ノードAで依然として行われ、O2E変換は、ノードBで依然として行われる。換言すれば、ノードAとBとの間のバイパスは、ノードAおよびBの振る舞いを変えない。逆に、バイパスは、ノードAとBとを接続するリンクにおける全てのクロスコネクトノードの振る舞いを変える。
【0035】
したがって、送信元AからXCノードBへのバイパスを作成する第1のエネルギー削減メトリックを、以下のように定義する。
【0036】
【数2】

【0037】
第1のエネルギー削減メトリックの第2項は、即時の観測結果を示している。送信元から特定のクロスコネクトへのトラフィック需要が波長の容量よりも高い場合、送信元からその特定のクロスコネクトへのバイパスを作成すべきである。
【0038】
したがって、正規化されたトラフィック需要は、d、すなわち、光リンクのラインレートによって除算されたトラフィック需要である。フロア演算子を用いて、dよりも小さな最大整数を得ることができ、floor(d)は、送信元から宛先への直接のバイパスで用いられる波長チャネルの最小数を示す。floor(d)のトラフィック量がこの手順に計上されるので、この手順は、残りのトラフィックを検討する。残りトラフィック量を端数需要(fractional demand)と呼ぶことにする。端数需要は、原需要からfloorを減算することによって求めることができる。すなわち、端数需要は、d−floor(d)である。さらに、ノードが送信元に直接隣接しているとき、バイパスを用いてエネルギー削減を達成することはできない。
【0039】
端数需要のための最適なバイパスを求めるために、全てのノード対のための第1のエネルギー削減メトリックSABが求められる。削減をもたらす端数需要の総量のトラフィックを送信するためのエネルギー需要が、波長の容量よりも高い場合、バイパスは、最初に、より大きな削減を達成するトラフィックを選ぶ。その後、波長が完全に満たされていない場合または需要を複数の経路にわたって分割する必要がある場合、残りの需要および容量が無駄を削減するために検討される。
【0040】
これまで、実施の形態は、単一の送信元のバイパスのみを説明してきた。この概念は、単一の宛先のバイパス用に一般化することができる。単一の送信元のバイパスは、まず、ノードへのバイパスを作成し、次に、トラフィックが分割され、複数の宛先に送信される。単一の宛先のバイパスの場合、複数の送信元は、まず、ノードにおいてトラフィックを結合し、次に、バイパスがノードから宛先に作成される。単一の宛先のバイパスのための第2のエネルギー削減メトリックは、以下のものである。
【0041】
【数3】

【0042】
ネットワークが複数の送信元ノードおよび複数の宛先ノードを有するとき、単一の送信元のバイパスおよび単一の宛先のバイパスの双方を同時に検討するように、ステップを選ぶことができる。有効な需要行列は、各バイパスが作成された後に更新される。
【0043】
双方のエネルギー削減メトリックでは、バイパスが、ノードAからノードBへ、またはノードBからノードCへのいずれかで作成される。したがって、双方のエネルギー節減メトリックSABおよびSBCが、ノードBにおいて終了するバイパスを作成するためのエネルギー節減を検討することについて述べることにする。
【0044】
これまで、説明では、送信元ノードとしてノードAがあり、および宛先ノードとしてノードCがある。実際の光ネットワークでは、多くの送信元ノードおよび宛先ノードが存在する。したがって、それぞれの送信元および宛先の対のトラフィック需要が検討される。
【0045】
また、大きなネットワークでは、あるリンクにおいて送信元または宛先として動作するクロスコネクトは、別のリンクのための中間クロスコネクトノードとしての役割を果たすこともできる。例えば、第1のリンクでは、トラフィックは、ニューヨーク市からシカゴを介してサンフランシスコに向かい、第2のリンクでは、トラフィックは、シカゴからマイアミに向かう。シカゴにおけるクロスコネクトは、第2のリンクの送信元であり、この送信元は、第1のリンクにおいてトラフィックを受け持つ中間クロスコネクトでもある。したがって、全てのクロスコネクトは、トラフィック需要の送信元または宛先でもある可能性がある。
【0046】
図4は、本発明の実施の形態による光ネットワーク内でバイパスを作成する方法を示している。この方法のステップ、および本明細書で説明する他の任意のプロセスは、当該技術分野で知られているように、メモリおよび入出力インターフェースに接続されたプロセッサで実行することができる。
【0047】
まず、送信元−宛先の組合せの対ごとに、トラフィック需要行列Dを構築する(410)。送信元および宛先は、クロス接続されている可能性もあるし、エッジルーター、アクセスルーター、またはコアルーターに接続されている可能性もある。n個の送信元およびn個の宛先が存在する場合、トラフィック需要行列は、n×n行列となる。この行列は、
【数4】

となり、ここで、Di,jは、送信元ノードiおよび宛先ノードjの対の間の端数需要である。
【0048】
端数需要を求めるために、ノードiおよびノードjの各対の間のトラフィック需要は、それらのノード間の光リンクのラインレートRに正規化され、floor演算が用いられて端数需要が得られる。例えば、ノード2と5との間のトラフィック需要が25Gbpsであり、リンクレートが10Gbpsである場合、正規化された需要は、25Gbps/10Gbps=2.5である。次に、正規化されたトラフィック需要に対する2.5にフロア演算子を適用して、端数需要を得る。すなわち、ノード2と5との間の端数需要は、D2,5=2.5−floor(2.5)=2.5−2=0.5である。
【0049】
第1のエネルギー削減メトリックSABおよび第2のエネルギー削減メトリックSBCの双方を求める(420)。ここで、ノードAは、送信元であり、ノードCは、宛先であり、ノードBは、クロスコネクト等のネットワーク内の他の任意のノードである。
【0050】
全ての可能なノードAおよびCの中で、最大エネルギー削減をもたらすノードBを求める(430)。すなわち、
【数5】

である。ここで、関数arg maxは、最大値を有するインデックスを返す。
【0051】
時に、波長は、需要よりも高い容量を有する可能性がある。この場合、帯域幅の浪費に起因したエネルギー損失を検討し、エネルギー損失を、バイパスを有しないエネルギー消費と比較する。バイパスのエネルギー削減は、非常に高いので、バイパスは、需要がバイパスの全容量を占めない場合であっても作成される。残余の容量は、他のトラフィックが用いることができる。
【0052】
時に、高い値を有する削減メトリックが、最良の選択肢でない可能性がある。この理由は、バイパスを用いるには、リソースを分割することが必要とされ、これによって、さらに、より小さなODUサイズが、残りのトラフィックのための、より高い限界エネルギーイルミネーティッドで用いられるからである。
【0053】
したがって、システムは、リソースを分割する問題を考慮して、ノードBへのバイパスの作成が実際にエネルギー消費を削減するのか否かを検証し(440)、エネルギーが削減される場合にのみバイパスを作成し、そうでない場合には終了する(445)。
【0054】
エネルギーが削減される場合、単一の送信元のバイパスが、より大きなエネルギー削減を有するのかまたは単一の宛先のバイパスが、より大きなエネルギー削減を有するのかを判断し(450)、それに応じて、ノードAからノードBへバイパス460またはノードBからノードCへのバイパス470を作成する。
【0055】
残余の容量があれば、それを記録し(480)、それに応じて、トラフィック需要行列を更新し(485)、ステップ420において繰り返す。
【0056】
時に、需要が正確に分かっていない場合がある。需要の確率分布関数が分かっている場合、Y%のエネルギー削減が確実になるように、エネルギー削減メトリックを検討する。例えば、Y=50であり場合、中央値が用いられる。
【0057】
非バイパストラフィックのルーティング
本発明の実施の形態は、光ネットワークを通るエネルギー効率の良い最適な経路を求める新規なスパニング木を生成する。従来、スパニング木プロセスは、固定されたイルミネーティッドを有するリンクを検討する。
【0058】
本発明者らのプロセスでは、リンクは、エネルギーおよび需要に対応する可変のイルミネーティッドを有する。リンクのイルミネーティッドは、木の特定の枝において接続されているノードに応じて変化する。需要がより高いノードを有する枝ほど、イルミネーティッドがより低いリンクを有する。
【0059】
図5に示すように、スイッチングエネルギーEは、レートRの凹関数である。これは、スイッチングエネルギー関数の導関数E’がラインレートRの減少関数であることを意味する。
【0060】
一例として、送信元ノード1を有する単一の送信元のケースを、図8に示すネットワークトポロジーおよびトラフィック需要を用いて検討する。トラフィック需要を、ODU0の倍数となるように正規化する。
【0061】
図6に示すように、スパニング木を生成するプロセスは、次のとおりである。図6は、初期スパニング木を示している。図7は、15個のノードを有する図8に示すネットワークのための完成スパニング木を示している。
【0062】
送信元ノード1は、スパニング木のルートである。
【0063】
まず、ルート(送信元ノード1)Iの全ての1ホップの近隣ノードが、イルミネーティッドの増加順に木の異なる枝に追加される。この例の場合、ノード2は、22個のトラフィックユニットを有し、ノード3は、12個のトラフィックユニットを有し、ノード4は、11個のトラフィックユニットを有する。
【0064】
ノード1と2との間の枝は、イルミネーティッドE’(22)を有し、ノード1と3との間の枝は、イルミネーティッドE’(12)を有し、ノード1と8との間の枝は、イルミネーティッドE’(11)を有する。E’は、減少関数であるので、E’(22)が最小である。例えば、E(x)=2√(x)とすると、E’=1/√(x)である。したがって、枝1→2は、イルミネーティッド1/√(22)=0.2132を有し、枝1→3は、イルミネーティッド1/√(12)=0.2887を有し、枝1→8は、イルミネーティッド1/√(11)=0.3015を有する。
【0065】
枝1→2は、最小イルミネーティッドを有するので、ノード2をこの枝に追加する。ここで、ノード2と4との間には、8個のトラフィックユニットがある。ノード4が、1→2から枝を出すように追加された後、全てのリンクのイルミネーティッドが更新される。
【0066】
1→2から、リンクは、22+8=30個のトラフィックユニットを受け持つ必要があり、これは、1/√(30)=0.1826のイルミネーティッドに対応する。2→4からは、8個のトラフィックユニットしかなく、これは0.3536のイルミネーティッドに対応する。
【0067】
このプロセスは、最小限界イルミネーティッドの枝を特定するために繰り返される。この例では、この枝は、枝1→3である。限界イルミネーティッドは、全イルミネーティッドの導関数である。
【0068】
ノード7が枝1→3に追加された後、イルミネーティッドは、1→3と3→7との間で更新される。
【0069】
ここで、枝1→8が、最小イルミネーティッドを有する。
【0070】
ノード8は、複数の近隣者を有するので、ノード8から複数のノードの枝を出すことができる。
【0071】
1→8の間のリンクイルミネーティッドは、その枝の下にノードが追加されるごとに減少する。ノード11および6の追加により、ノード1からノード8に向かう全トラフィックは、この場合、11+15+21=47ユニットであり、これは、0.1459の限界イルミネーティッドを有する。
【0072】
このプロセスは、繰り返される。時に、最低イルミネーティッドを有する枝は、新たな近隣者を有しないことがある。したがって、近隣者を有する最低イルミネーティッドの枝にのみノードを追加する。
【0073】
複数の送信元および複数の宛先の場合、このプロセスは、単一の送信元の場合と類似している。しかしながら、単一のルートを有するスパニング木を構築する代わりに、ウェブが作成される。このプロセスは、全体的な需要行列から開始し、単一の送信元の場合と同様に、1ホップ近隣者から開始する。リンクが追加されるたびに、2つのノード間の限界イルミネーティッドを求めることができる。各反復中、リンクを介して既に割り当てられたものを考慮して、最小限界エネルギー消費を有するエンドツーエンド経路を検討する。エンドツーエンド経路がウェブに追加されるたびに、エンドツーエンド経路に含まれるリンクの限界イルミネーティッドが減少する。このプロセスは、全ての需要が検討されるまで繰り返すことができる。
【0074】
リンク容量も検討される。このプロセスは、特定のリンクにわたる集約した需要が、該リンクの最大容量よりも高くないことを保証する。容量に達すると、そのリンクは、グラフから削除される。
【0075】
エネルギー効率の良い光経路のためのシグナリング
一般化マルチプロトコルラベルスイッチング(GMPLS)フレームワーク(RFC3945、2004年10月、Mannie)の下では、ユーザーネットワークインターフェース(UNI)およびネットワーク−ネットワークインターフェース(NNI)が、さまざまな自律ネットワークの間で通信を行うのに用いられる。
【0076】
UNIは、アクセスネットワーク内のユーザーが接続のための帯域幅およびサービスクラス、ならびにネットワーク復旧要件およびネットワーク保護要件を要求することを可能にする。エネルギー効率の良い光経路により、環境問題意識を持っているユーザーは、経路が遅延に最適なものでない可能性があっても、エネルギー効率の良い方法でセットアップされる経路を指定することができる。エネルギー効率の良い経路は、ネットワークオペレーターの業務費を下げるので、ネットワークオペレーターは、エネルギー効率の良い経路を好むユーザーのための価格決定誘因も提供することができる。
【0077】
NNIは、隣接したネットワークにおいて利用可能なネットワークリソースをアドバタイズする。エネルギー効率の良い経路を近隣者にアドバタイズすることができ、その後、複数の自律ネットワークにわたって全体的にエネルギー効率の良い経路の作成のために、ネットワークユーザーに報告することができる。
【0078】
自律ネットワークを通る波長バイパスは、NNIを通じた適切なシグナリングによっても作成することができる。例えば、ネットワークプロバイダーXは、ともに自身のネットワーク内にあるエッジルーターAとノードBとの間にバイパスを作成することができる。また、このネットワークプロバイダーが他の2つのネットワークプロバイダーYおよびZへの接続を有し、それによって、エッジルーターAがネットワークプロバイダーYからの別のエッジルーターに接続され、エッジルーターBがネットワークプロバイダーZからの別のエッジルーターに接続されるものと仮定する。この場合、ネットワークプロバイダーXは、ネットワークプロバイダーYがトラフィックをネットワークプロバイダーZに直接送信することを可能にするNNIを用いて、ある特定の波長およびポートにおいて光バイパスリンクを推進することができる。この方法によって、複数の自律ネットワークにわたるエネルギー削減が可能になる。
【0079】
ネットワークBが、ネットワークCに送信する十分なトラフィックを有する場合、トラフィックがエッジルーターをもはや通過する必要がないように、ネットワークAとBとの間の接続を変更することができる。逆に、光バイパスがネットワークBからネットワークCに直接作成される。
【0080】
異なるネットワークは、異なるスイッチングエネルギーイルミネーティッドを有する可能性がある。ネットワーク機器のベンダーは、自身の特定の機器について、データレートの関数としてエネルギー消費を記述する適切な関数を提供する。すなわち、スイッチングエネルギー関数Eおよびその導関数E’の双方が必要とされる。そのような情報が提供されない場合、そのような関数を測定し、ネットワーク管理および経路設計のソフトウェアに該関数を利用可能にすることができる。
【0081】
レイヤ3ルーティングへの拡張
現在、ルーティング機能は、インターネットプロトコル(IP)を用いてネットワーキングレイヤで行われている。ネットワークリソースを発見するために、ルーティングテーブルが交換される。しかしながら、開放型最短パス優先(OSPF)IPプロトコルで用いられているように、送信元から宛先への「最短」パスを求めるのに、ホップカウントしか用いられていない。
【0082】
レイヤ3(L3)ルーターにおける隣接した近隣者は、基礎をなす光ネットワーク内の経路構成によって決まることに留意することが重要である。光ネットワークのエネルギー消費は、バイパスの使用、およびそのファイバーリンクのそれぞれを通るトラフィックの需要に応じて変化するので、光ネットワークは、ルーターへのリンクの現在の利用に依存する追加のエネルギーイルミネーティッド関数を提供することができる。そのような情報がL3ルーター内に統合されると、通信ネットワーク全体にわたる、さらに全体的なエネルギー削減を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信元ノード、複数のクロスコネクトノード(XC)、および複数の宛先ノードを含む光ネットワーク内でバイパスを作成する方法であって、
前記送信元ノードおよび前記宛先ノードの組合せの可能な対ごとにトラフィック需要行列を構築するステップと、
前記トラフィック需要行列に基づいて、前記送信元ノードといずれかのXCノードとの間に前記バイパスを作成するための第1のエネルギー削減メトリックを求めるステップと、
前記トラフィック需要行列を用いて、いずれかのXCノードと前記宛先ノードとの間に前記バイパスを作成するための第2のエネルギー削減メトリックを求めるステップと、
前記XCノードのうち、最大エネルギー削減メトリックを有する1つのXCノードにおいて終了するバイパスを作成するステップと、
を含み、
前記ステップは、プロセッサで実行される、複数の送信元ノード、複数のクロスコネクトノード(XC)、および複数の宛先ノードを含む光ネットワーク内でバイパスを作成する方法。
【請求項2】
前記光ネットワーク内のデータトラフィックは、光データユニットで送信され、前記バイパスを通過するデータトラフィックは、波長全体を用いる
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バイパスから特定のノードまでの間の最小ホップ距離は、前記送信元ノードから前記宛先ノードまでの最小ホップ距離よりも小さい
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記トラフィック需要行列は、前記ノードの前記各対の間の端数需要から構築される
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ノードの前記各対の間の前記各トラフィック需要は、該ノードの該対の間の光リンクのラインレートRに対して正規化され、前記方法は、
前記端数需要を得るために、前記各正規化されたトラフィック需要にfloor演算を適用するステップ
をさらに含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記トラフィック需要行列を更新するステップ、および前記2つの求めるステップを繰り返すステップ
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
リソースの分割が必要とされるときに、前記バイパスがエネルギーを削減するか否かを判断するステップと、前記バイパスが前記エネルギーを削減する場合にのみ前記XCノードを置き換えるステップであって、そうでない場合には終了する、置き換えるステップと
をさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記光ネットワークを通る最適なエネルギー効率の良い経路を求めるスパニング木を生成するステップ
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記送信元ノードは、前記スパニング木のルートによって表され、前記ノードの間のリンクは、前記スパニング木の枝によって表され、前記各リンクに関連付けられた限界イルミネーティッドは、前記枝によって接続された前記ノードの対の間の変動するトラフィック需要に対応する
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記送信元ノードの全ての1ホップの近隣ノードを前記木の異なる枝に、前記限界イルミネーティッドの増加する順で追加するステップ
をさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
一般化マルチプロトコルラベルスイッチングにおいて、ユーザーネットワークインターフェースでエネルギー削減を達成する前記バイパスをアドバタイズするステップ
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
一般化マルチプロトコルラベルスイッチングにおいて、ネットワーク−ネットワークインターフェースでエネルギー削減を達成する前記バイパスをアドバタイズするステップ
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
レイヤ3ルーターで用いられるエネルギーイルミネーティッド関数を提供するステップ
をさらに含む請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−142933(P2012−142933A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−281753(P2011−281753)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【出願人】(597067574)ミツビシ・エレクトリック・リサーチ・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド (484)
【住所又は居所原語表記】201 BROADWAY, CAMBRIDGE, MASSACHUSETTS 02139, U.S.A.
【Fターム(参考)】