説明

光ネットワーク設計支援システムおよびプログラム

【課題】
多数の加入希望者宅と複数の収容局との間の光ファイバ接続設計を支援する。
【解決手段】
光スプリッタ配置設計機能(22)が位置情報DB(18)の収容局と加入希望者の位置情報と、敷設可能経路情報DB(21)の敷設可能経路G(V,E)を参照し、加入希望者を最も近い節点Vにマッピングする。クラスタリング処理機能(24)が、1以上の加入希望者がマッピングされた節点をクラスタに分類し、加入者数条件及び距離条件の下で、各クラスタ内で光スプリッタの位置を決定する。ボロノイ領域計算機能(28)が収容局の位置を母点とするボロノイ領域に経路Gを分割する。収用局決定機能(26)が、ボロノイ領域内の光スプリッタを同じボロノイ領域内の収用局に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PDS(Passive Double Star)型光ネットワークの設計を支援する光ネットワーク設計支援システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
PDS型光ネットワーク、すなわち、いわゆるPON(Passive Optical Network)ネットワークにおいて、複数の収容局に多数の加入希望者を配分する場合、従来は、熟練技術者の手作業に頼っていた。非特許文献1、2には、収容局を中心とした円形のエリア内にPON加入希望者宅が一様に分布していることを前提とする場合で、多段分岐光アクセスネットワークの敷設コストを最小化するコンピュータ手法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】宇田川大輔、松本隆男「多段分岐光アクセスネットワークの最小光ファイバ長に関する検討」電子情報通信学会総合大会、B−8−29、2003年
【非特許文献2】宇田川大輔、松本隆男「多段分岐アクセスネットワークのコスト最小化条件に関する検討」電子情報通信学会総合大会、B−8−11、2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熟練技術者による手作業では、コストに対して最適な解又は一定以上に好ましい解を得られているかどうかを確認できない。また、作成に膨大な手間と時間を要する。
【0005】
非特許文献1および2に記載される手法は、加入希望者宅が一様に分布していない場合や、収容局ごとにカバーするエリアの形状が円形でない場合などには適用できない。しかも、このような状況が、より現実的である。
【0006】
さらに、非特許文献1および2に記載の手法は、エリア内に自由に光ファイバケーブルを敷設できることを前提としている。しかし、実際には光ファイバケーブルは道路網に沿って又は、予め用意された管内等に敷設する必要があり、非特許文献1および2に記載の手法は、このような制約条件下では適用できない。
【0007】
そこで、本発明は、多数の加入希望者宅と複数の収容局が非一様に分布する状況を前提とし、光ファイバケーブルの敷設可能経路に対する制約条件が存在する場合において、光ファイバコストに関して好ましい解を提示する光ネットワーク設計支援システム及びプログラムを提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光ネットワーク設計支援システムは、収容局および加入希望者の位置情報を保持する位置情報データベースと、光ファイバを敷設可能な経路情報であって節点と枝により表現される経路情報を保持する敷設可能経路情報データベースと、当該加入希望者を平面上で最も近い当該節点に割り付ける割り付け手段と、最大ドロップケーブル長、光スプリッタ分岐数及びクラスタ数初期値を記憶するパラメータ記憶手段と、1以上の加入希望者がマッピングされた節点から光スプリッタ位置を決定する光スプリッタ位置決定手段であって、1以上の加入希望者がマッピングされた節点を当該クラスタ数初期値以上のクラスタに分割し、各クラスタに属する節点の位置からのパスコストの総和が最小になる節点位置を当該光スプリッタ位置として決定する光スプリッタ位置決定手段と、当該光スプリッタ位置決定手段により決定された当該各光スプリッタ位置の各光スプリッタを当該収用局の何れかに接続する光スプリッタ/収用局接続手段であって、当該経路情報により表現される経路を当該収容局を母点とするボロノイ領域に分割し、当該各ボロノイ領域内において当該光スプリッタ位置の光スプリッタを母点となる当該収容局に接続する光スプリッタ/収用局接続手段とを具備することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る光ネットワーク設計支援プログラムは、コンピュータを使い、複数の収用局及び複数の加入希望者に対して、収容局および加入希望者の位置情報を保持する位置情報データベース、並びに、光ファイバを敷設可能な経路情報であって節点と枝により表現される経路情報を保持する敷設可能経路情報データベースを参照し、最大ドロップケーブル長及び光スプリッタ分岐数の条件の下で、光スプリッタの位置、及び当該光スプリッタを収用する収用局を決定する光ネットワーク設計支援プログラムであって、当該コンピュータに、当該加入希望者を平面上で最も近い当該節点に割り付ける機能と、1以上の加入希望者がマッピングされた節点から光スプリッタ位置を決定させる光スプリッタ位置決定機能であって、1以上の加入希望者がマッピングされた節点を当該クラスタ数初期値以上のクラスタに分割させ、各クラスタに属する節点の位置からのパスコストの総和が最小になる節点位置を当該光スプリッタ位置として決定させる光スプリッタ位置決定機能と、当該光スプリッタ位置決定機能により決定された当該各光スプリッタ位置の各光スプリッタを当該収用局の何れかに接続させる光スプリッタ/収用局接続機能であって、当該経路情報により表現される経路を当該収容局を母点とするボロノイ領域に分割させ、当該各ボロノイ領域内において当該光スプリッタ位置の光スプリッタを母点となる当該収容局に接続させる光スプリッタ/収用局接続機能とを実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、多数の加入希望者の位置情報と複数の収容局の位置情報と、光ファイバを敷設可能な経路の情報をもとに、加入希望者を効率的に収容するPDS(Passive Double Star)型光ファイバ網の設計が可能になり、複数の加入希望者と複数の収容局が非一様に分布し、かつ光ファイバケーブルの敷設可能経路に対する制約条件が存在する場合においても、光ファイバコストに対する準最適解を与える設計が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例の概略構成ブロック図である。
【図2】本実施例のネットワーク設計処理のメインのフローチャートである。
【図3】収用局と加入希望者の分布を示す説明例である。
【図4】図3に示す例で加入希望者を近い節点にマッピングした例である。
【図5】ネットワーククラスタリング処理の詳細なフローチャートである。
【図6】図3に示す例でセントロイドを決定した例である。
【図7】図6に示す例に対してセントロイドと加入希望者とを接続する光ケーブルの接続例である。
【図8】光スプリッタと収容局との接続を決定する処理の詳細なフローチャートである。
【図9】光スプリッタと収用局を接続する光ケーブルの配置例である。
【図10】加入希望者と収容局を接続する最終的な設計例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明に係る設計支援システムの概略構成ブロック図を示す。コンピュータのCPU10に、キーボード等の入力装置12と、表示装置14が接続する。CPU10上で、本実施例の設計支援プログラムが動作する。パラメータ記憶装置16は、CPU上の設計支援プログラムに必要な、入力装置12により入力される各種パラメータを記憶する。パラメータ記憶装置16は、例えば、コンピュータを構成するRAM又は二次記憶装置としてのハードディスク装置などからなる。
【0014】
位置情報データベース(DB)18は、PONネットワークの設計対象地域に位置するPON加入希望者および収容局の、2次元平面上での位置情報を保持する。収容局の位置情報をC(i=1〜N)とし、加入希望者の位置情報をX(j=1〜M)とする。この説明例では、収容局がN台あり、加入希望者数がMであるとする。C(i=1〜N)は各収容局を示す場合と、その位置座標を示す場合とがある。同様に、X(j=1〜M)は、加入希望者自体を示す場合と、その位置座標を示す場合とがある。
【0015】
最大収容回線数データベース(DB)20は、各収容局C(i=1〜N)の最大収容回線数Nf(i=1〜N)を示す。例えば、Cの最大収容回線数はNfである。
【0016】
データベースとして、データベース18,20の代わりに、収用局の位置情報と最大収用回線数を保持する収用局データベースと、加入希望者に関する位置情報を保持する加入希望者データベースとを有する構成であってもよいことは明らかである。
【0017】
敷設可能経路情報データベース(DB)21は、光ファイバを敷設可能な経路の情報を、節点V(i=1,2,…,K)と枝E(j=1,2,…,K)より構成されるグラフG=(V,E)の形式で保持する。例えば、敷設可能経路情報として道路網を想定する場合、節点Vは交差点の位置を示し、枝Eは2つの交差点を結ぶ道路を示す。
【0018】
CPU10は、設計支援プログラムの機能要素として、以下の機能22〜30を具備する。図2は、CPU10による設計支援プログラムのメインフローのフローチャートを示す。
【0019】
光スプリッタ配置設計機能22が、位置情報DB18から収容局の位置情報C(i=1〜N)と、加入希望者の位置情報X(j=1〜M)を読み込み(S1)、敷設可能経路情報DB21から、光ファイバを敷設可能な経路情報G=(V,E)を読み込む(S2)。
【0020】
この説明例では、収容局がN台あり、加入希望者がM人であり、経路情報G=(V,E)の節点VはK個、枝葉K本あるものとする。図3は、加入希望者と収容局、並びに、経路の節点及び枝の分布例を示す。図3に示す分布例では、16人の加入希望者を3つの収用局のどれに接続すべきかを検討し、決定することになる。光ファイバ敷設可能経路の節点は電柱であるとする。図3に示す例では、M=17、N=3、K=12、K=27となる。各収用局には1又は複数のPONシステムを収容可能であるとする。
【0021】
オペレータは、入力装置12を使って、光ネットワーク設計の基本パラメータ、ここでは、最大ドロップケーブル長Lmax、光スプリッタ分岐数Ns及びクラスタ数(初期値)NcをCPU10に入力する(S3)。もちろん、これらのパラメータの入力(S3)を、ステップS1又は同S2に先行して実施しておいても良い。最大ドロップケーブル長Lmaxは、光スプリッタから加入希望者宅までの、許容される最長距離である。光スプリッタ分岐数Nsは1つの光スプリッタに収容できる加入希望者数である。クラスタ数Ncは、PONシステム数であり、ここでは、1つのPONシステムに1つの光スプリッタを想定しているので、光スプリッタ数でもある。クラスタ数Ncは、収容局数又は加入希望者数により、計算途中で増減されることがある。図3に示す例では、収用局の数が3であることから、クラスタ数Ncの初期値を3とする。
【0022】
光スプリッタ配置設計機能22は、各加入希望者Xを平面上で最も近い節点Vと関連づける(S4)。図3に示す例にステップS4による処理を適用した場合の一例を図4に示す。図4で、節点に付与された数字は、当該接点に関連づけられた加入希望者数を示す。
【0023】
次に、光スプリッタ配置設計機能22は、全体を対象領域に指定し(S5)、クラスタ数Nc、加入希望者X及び敷設可能経路情報Gを指定して、ネットワーククラスタリング処理機能24に、ネットワーククラスタリング処理を実行させる(S6)。すなわち、この時点で、ネットワーククラスタリング処理機能24は、ステップS1〜S3で設定されパラメータ記憶装置16に記憶される条件及び初期値に従い、各クラスタ内の加入希望者数がNs以下となり、かつ、ドロップケーブル長が最大長Lmaxを越えないという条件の下で、対象領域の全加入希望者をクラスタリングし、光スプリッタ候補の位置を決定する。
【0024】
図5は、ネットワーククラスタリング処理機能24によるクラスタリング処理(S6)の詳細な動作フローチャートを示す。ネットワーククラスタリング処理機能24は、メインルーチン又は光スプリッタ配置設計機能22から対象領域、クラスタ数Nc、加入希望者(の位置情報)X、及び敷設可能経路情報G=(V,E)を引き渡される。ネットワーククラスタリング処理機能24は、光スプリッタの位置候補となるNc個のセントロイドY(k=1〜Nc)を、敷設可能経路情報Gの節点Vの中からランダムに設定する(S11)。
【0025】
対象領域内に存在する節点のうち、1以上の加入希望者がマッピングされた節点を、所定のクラスタリング処理によりNc個のクラスタに分割する(S12)。ここでは、Nc個のセントロイドの位置は、各クラスタに属する節点の位置からのパスコスト(例えば道路長)の総和が最小となるように最適化又は決定される。このようなクラスタ処理法として、グラフクラスタリング手法、例えば、Graph k−medoids clustering methodがある。このクラスタリング処理で決定した各セントロイドが、以後、光スプリッタの位置候補となる。
【0026】
図6は、図3及び図4に示す例に対し、クラスタリング処理(S12)により5つのクラスタに節点を分割した結果を示す。黒丸は、セントロイドY(光スプリッタ候補)を示す。図6に示す例では、Ns(光スプリッタ分岐数)=8、Nc(クラスタ数)=5である。
【0027】
各クラスタについて、加入者数条件と距離条件を調べる。そのために、対象のクラスタを指定するループ変数kに1を代表する(S13)。k番目のクラスタについて、加入希望者数がNs以下かどうかと(S14)、各加入希望者からセントロイドまでの経路長がLmax以下かを調べる(S15)。加入希望者数がNs以下で、各経路長がLmax以下の場合(S14,S15)、kがNcを越えるかどうかを調べる(S16)。kがNc以下の場合、kをインクリメントして(S17)、次のクラスタについて、加入者数条件及び距離条件を調べる(S14,S15)。
【0028】
加入者数条件(S14)と距離条件(S15)の何れかでも満たされないクラスタについて、クラスタリング処理機能24が、ネットワーククラスタリング処理を実行する(S18〜S20)。すなわち、当該クラスタ、Nc=2、光ファイバ敷設可能経路Gのうち、当該クラスタ内の部分(Ga)、当該クラスタ内に位置する加入者(Xa)を引数として、クラスタリング処理機能24が、再帰的にネットワーククラスタリング処理を実行する(S20)。
【0029】
図5に示すフローでは、加入者数条件又は距離条件を満たさないクラスタを2分割していくことで、加入者数条件及び距離条件を満たすようにしているが、加入者数条件又は距離条件を満たさないクラスタが存在する場合、クラスタ数Ncをインクリメントして、ステップS11から再試行するようにしてもよい。すなわち、この場合には,加入者条件又は距離条件を満たさない場合に、NcをインクリメントしてステップS11に戻る。
【0030】
ステップS6により、すなわち、図5に示すフローにより、最終的に、光ファイバ敷設可能経路の制約の下で、加入者数条件及び距離条件を満たすセントロイドを光スプリッタの配置位置として決定できる。図4に示す例に対して決定されるセントロイド例を図6に示す。
【0031】
このように決定したセントロイドを光スプリッタ位置として確定し、各クラスタ内の節点にマッピングされた加入希望者を光スプリッタに論理接続する(S7)。図7は、図6に示す例に対して加入希望者と光スプリッタを光ケーブルで接続する接続例を示す。これにより、光スプリッタ及びドロップケーブルの配置場所の設計が完了する。
【0032】
なお、Graph k−medoids clustering method法などのグラフクラスタリング手法は、局所最適解に収束することが知られているので、ここで得られるPONネットワークの設計結果は、光ファイバ線路長に対する準最適解となる。
【0033】
収用局決定機能26が、ステップS7で位置が確定した各光スプリッタをどの収用局に接続するかを決定する(S8)。図8は、ステップS8の詳細なフローチャートを示す。
【0034】
収用局決定機能26は、ボロノイ領域計算機能28に指示して、光ファイバ敷設可能な経路G=(V,E)を、N個の収容局の位置を母点としてネットワークボロノイ領域に分割させる(S21)。ネットワークボロノイ領域とは、母点からの最短の経路長が、他の母点からの経路長よりも短い節点Vの集合をあらわす。G=(V,E)の全体を複数のボロノイ領域に区切ったものはネットワークボロノイ図と呼ばれる。図9は、図7に示す収用局と光スプリッタの配置例に対してボロノイ領域への分割を実施した結果を示し、破線がボロノイ領域の境界線を示す。ネットワークボロノイ図の作図方法としては、M. Erwigにより提案された方法などが知られている。
【0035】
収用局決定機能26は、得られたネットワークボロノイ領域の全てについて、以下の処理を実行する。まず、処理対象のネットワークボロノイ領域を指定する変数kを1で初期化する(S22)。収用局決定機能26は、最大収容回線数DB20からk番目の収容局の最大収容回線数Nfを取得する(S23)。k番目のネットワークボロノイ領域内に存在する光スプリッタ数とk番目の収容局に収用済みの回線数の合計が、Nf以下か否かを判断する(S24)。すなわち、k番目のネットワークボロノイ領域内に存在する光スプリッタ数に等しいPONシステムを、k番目の収用局にまだ収容可能かどうかを調べる。
【0036】
k番目のネットワークボロノイ領域内に存在する光スプリッタ数とk番目の収容局に収用済みの回線数の合計が、Nf以下の場合(S24)、k番目のネットワークボロノイ領域内に存在する各光スプリッタをk番目の収容局に接続する(S25)。kがNcに等しく無ければ(S26)、kをインクリメントして(S27)、S23以降を繰り返す。kがNcに等しくなれば(S26)、図8に示す処理を終了する。
【0037】
k番目のネットワークボロノイ領域内に存在する光スプリッタ数とk番目の収容局に収用済みの回線数の合計が、Nfを越える場合(S24)、もはや、k番目のネットワークボロノイ領域内に存在する全光スプリッタをk番目の収容局に接続することができない。そこで、隣接するネットワークボロノイ領域j(但し、j≠k)であって、そのネットワークボロノイ領域j内の全光スプリッタ数と、既に接続済みの隣接領域の光スプリッタ数を足してもまだ空きがある収用局を有するものがあるかどうかを調べる(S28)。すなわち、隣接するネットワークボロノイ領域の収用局への接続可能性を調べる。そのような隣接ネットワークボロノイ領域j(但し、j≠k)が無い場合(S28)、収用局決定機能26は、表示装置14に、PONネットワークの設計不能を示すエラーメッセージを表示する(S29)。
【0038】
空きのある収用局を有する隣接ネットワークボロノイ領域j(但し、j≠k)が存在する場合(S28)、k番目のネットワークボロノイ領域内の光スプリッタの内で、当該隣接ネットワークボロノイ領域j(但し、j≠k)の収用局Cに最も近い光スプリッタを収用局Cに接続する(S30)。そして、ステップS24以降を繰り返す。これにより、ステップS24で考慮すべき光スプリッタ数が1だけ減る。ステップS30を必要回数だけ繰り返すことで、最終的にステップS24の条件が満たされ、先に説明したように、次のネットワークボロノイ領域の処理に移行する(S26,S27)。
【0039】
このようにして、ステップS7で配置された全光スプリッタを、可能な限り近い収用局に接続できる。これで、図10に示すように、PONネットワークの設計が完了する。図10は、図9に示す例に対する設計結果例を示す。設計結果出力機能30は、設計結果を表示装置14に出力する。もちろん、設計結果を印刷出力するなり、図示しないハードディスクに保存してもよい。
【0040】
以上の処理を全ネットワークボロノイ領域について実施することにより、各光スプリッタを接続する収容局および光ファイバ敷設経路を図9に示すように決定でき、図10に示すように、PONネットワークの設計を完了する。
【0041】
本実施例は、多数のPON加入希望者宅の位置情報、又はエリア毎に予想されるPON加入者数予測値の情報と、複数のPON収容局の位置情報と、光ファイバを敷設可能な経路の情報をもとに、当該PON加入希望者、又は予想される将来のPON加入希望者を効率的に収容することが可能なPDS(Passive Double Star)型光ファイバ網の設計を可能とする。PONサービスを展開する通信事業者のFTTH(Fiber To The Home)ネットワーク設計システムとして適用できる。具体的には、複数のPON加入希望者が既に存在する場合に、当該PON加入希望者を効率的に収容することが可能なPDS型光ファイバ網の設計システムとして適用できる。また、将来のPONシステムに対する需要予測に基づき、光スプリッタおよび、収容局と光スプリッタ間の光ファイバケーブルを事前に敷設する際の設計システムとして適用できる。
【0042】
特定の説明用の実施例を参照して本発明を説明したが、特許請求の範囲に規定される本発明の技術的範囲を逸脱しないで、上述の実施例に種々の変更・修整を施しうることは、本発明の属する分野の技術者にとって自明であり、このような変更・修整も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
10:CPU
12:入力装置
14:表示装置
16:パラメータ記憶装置
18:位置情報データベース
20:最大収容回線数データベース
21:敷設可能経路情報データベース
22:光スプリッタ配置設計機能
24:クラスタリング処理機能
26:収用局決定機能
28:ボロノイ領域計算機能
30:設計結果出力機能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容局および加入希望者の位置情報を保持する位置情報データベースと、
光ファイバを敷設可能な経路情報であって節点と枝により表現される経路情報を保持する敷設可能経路情報データベースと、
当該加入希望者を平面上で最も近い当該節点に割り付ける割り付け手段と、
最大ドロップケーブル長、光スプリッタ分岐数及びクラスタ数初期値を記憶するパラメータ記憶手段と、
1以上の加入希望者がマッピングされた節点から光スプリッタ位置を決定する光スプリッタ位置決定手段であって、1以上の加入希望者がマッピングされた節点を当該クラスタ数初期値以上のクラスタに分割し、各クラスタに属する節点の位置からのパスコストの総和が最小になる節点位置を当該光スプリッタ位置として決定する光スプリッタ位置決定手段と、
当該光スプリッタ位置決定手段により決定された当該各光スプリッタ位置の各光スプリッタを当該収用局の何れかに接続する光スプリッタ/収用局接続手段であって、当該経路情報により表現される経路を当該収容局を母点とするボロノイ領域に分割し、当該各ボロノイ領域内において当該光スプリッタ位置の光スプリッタを母点となる当該収容局に接続する光スプリッタ/収用局接続手段
とを具備することを特徴とする光ネットワーク設計支援システム。
【請求項2】
当該光スプリッタ位置決定手段が、
当該経路情報の当該節点の中から、当該クラスタ数初期値に相当する数のセントロイドをランダムに設定した上で、1以上の加入希望者が割り付けられた節点を当該クラスタ数初期値に相当する数のクラスタに分割し、当該セントロイドを最適化する分割手段と、
当該分割手段で生成される各クラスタに対して、クラスタ内の加入希望者数が当該光スプリッタ分岐数以下である加入者数条件、及び各クラスタ内の当該セントロイドの位置から同じクラスタ内の加入希望者までの経路長が当該最大ドロップケーブル長以下である距離条件を満たすかどうかを判別する判別手段と、
当該加入者数条件及び当該距離条件の少なくとも一方を満たさないクラスタに対し、当該クラスタ内において当該分割手段及び当該判別手段を実行させる再帰手段と、
当該判別手段で当該加入者数条件及び当該距離条件を満たすと判別されたクラスタの当該セントロイドの位置を当該光スプリッタ位置とする手段
とを具備することを特徴とする請求項1に記載の光ネットワーク設計支援システム。
【請求項3】
当該光スプリッタ位置決定手段が、
当該経路情報の当該節点の中から、当該クラスタ数初期値に相当する数のセントロイドをランダムに設定した上で、1以上の加入希望者が割り付けられた節点を当該クラスタ数初期値に相当する数のクラスタに分割し、当該セントロイドを最適化する分割手段と、
当該分割手段で生成される各クラスタに対して、クラスタ内の加入希望者数が当該光スプリッタ分岐数以下である加入者数条件、及び各クラスタ内の当該セントロイドの位置から同じクラスタ内の加入希望者までの経路長が当該最大ドロップケーブル長以下である距離条件を満たすかどうかを判別する判別手段と、
当該加入者数条件及び当該距離条件の少なくとも一方を満たさないクラスタが存在する場合に、当該クラスタ数初期値を増して当該分割手段及び当該判別手段を再実行させる手段と、
全クラスタが当該第1条件及び当該第2条件を満たす場合に、各クラスタの当該セントロイドの位置を当該光スプリッタ位置とする手段
とを具備することを特徴とする請求項1に記載の光ネットワーク設計支援システム。
【請求項4】
当該光スプリッタ/収用局接続手段は、当該各ボロノイ領域において収用局に同じボロノイ領域内の光スプリッタを接続する空きがない場合に、隣接するボロノイ領域の収用局に対して接続可能かを調べる手段を具備することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の光ネットワーク設計支援システム。
【請求項5】
コンピュータを使い、複数の収用局及び複数の加入希望者に対して、収容局および加入希望者の位置情報を保持する位置情報データベース、並びに、光ファイバを敷設可能な経路情報であって節点と枝により表現される経路情報を保持する敷設可能経路情報データベースを参照し、最大ドロップケーブル長及び光スプリッタ分岐数の条件の下で、光スプリッタの位置、及び当該光スプリッタを収用する収用局を決定する光ネットワーク設計支援プログラムであって、当該コンピュータに、
当該加入希望者を平面上で最も近い当該節点に割り付ける機能と、
1以上の加入希望者がマッピングされた節点から光スプリッタ位置を決定させる光スプリッタ位置決定機能であって、1以上の加入希望者がマッピングされた節点を当該クラスタ数初期値以上のクラスタに分割させ、各クラスタに属する節点の位置からのパスコストの総和が最小になる節点位置を当該光スプリッタ位置として決定させる光スプリッタ位置決定機能と、
当該光スプリッタ位置決定機能により決定された当該各光スプリッタ位置の各光スプリッタを当該収用局の何れかに接続させる光スプリッタ/収用局接続機能であって、当該経路情報により表現される経路を当該収容局を母点とするボロノイ領域に分割させ、当該各ボロノイ領域内において当該光スプリッタ位置の光スプリッタを母点となる当該収容局に接続させる光スプリッタ/収用局接続機能
とを実現させることを特徴とする光ネットワーク設計支援プログラム。
【請求項6】
当該光スプリッタ位置決定機能が、
当該コンピュータに、当該経路情報の当該節点の中から、当該クラスタ数初期値に相当する数のセントロイドをランダムに設定した上で、1以上の加入希望者が割り付けられた節点を当該クラスタ数初期値に相当する数のクラスタに分割させ、当該セントロイドを最適化させる分割機能と、
当該コンピュータに、当該分割機能で生成される各クラスタに対して、クラスタ内の加入希望者数が当該光スプリッタ分岐数以下である加入者数条件、及び各クラスタ内の当該セントロイドの位置から同じクラスタ内の加入希望者までの経路長が当該最大ドロップケーブル長以下である距離条件を満たすかどうかを判別させる判別機能と、
当該コンピュータに、当該加入者数条件及び当該距離条件の少なくとも一方を満たさないクラスタに対し、当該クラスタ内において当該分割機能及び当該判別機能を実行させる機能と、
当該コンピュータに、当該判別機能により当該加入者数条件及び当該距離条件を満たすと判別されたクラスタの当該セントロイドの位置を当該光スプリッタ位置とさせる手段
とを具備することを特徴とする請求項5に記載の光ネットワーク設計支援プログラム。
【請求項7】
当該光スプリッタ位置決定機能が、
当該コンピュータに、当該経路情報の当該節点の中から、当該クラスタ数初期値に相当する数のセントロイドをランダムに設定した上で、1以上の加入希望者が割り付けられた節点を当該クラスタ数初期値に相当する数のクラスタに分割させ、当該セントロイドを最適化させる分割機能と、
当該コンピュータに、当該分割機能で生成される各クラスタに対して、クラスタ内の加入希望者数が当該光スプリッタ分岐数以下である加入者数条件、及び各クラスタ内の当該セントロイドの位置から同じクラスタ内の加入希望者までの経路長が当該最大ドロップケーブル長以下である距離条件を満たすかどうかを判別させる判別機能と、
当該コンピュータに、当該加入者数条件及び当該距離条件の少なくとも一方を満たさないクラスタが存在する場合に、当該クラスタ数初期値を増して当該分割機能及び当該判別機能を再実行させる機能と、
当該コンピュータに、全クラスタが当該第1条件及び当該第2条件を満たす場合に、各クラスタの当該セントロイドの位置を当該光スプリッタ位置とさせる機能
とを具備することを特徴とする請求項5に記載の光ネットワーク設計支援プログラム。
【請求項8】
当該光スプリッタ/収用局接続機能は、当該コンピュータに、当該各ボロノイ領域において収用局に同じボロノイ領域内の光スプリッタを接続する空きがない場合に、隣接するボロノイ領域の収用局に対して接続可能か調べさせる機能を具備することを特徴とする請求項5乃至7の何れか1項に記載の光ネットワーク設計支援プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−65610(P2011−65610A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218195(P2009−218195)
【出願日】平成21年9月19日(2009.9.19)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】