光バイオリアクター
光合成微生物の培養のための閉鎖型光バイオリアクターを操作する方法。光バイオリアクターは培養液を含み、水塊の水に部分的にまたは完全に囲まれる。培養液と周辺水との間の密度差は、水塊における光バイオリアクターの位置が制御されるように提供される。光合成微生物の培養のための閉鎖型光バイオリアクター。光バイオリアクターは、培養液を含み、水塊の水に部分的にまたは完全に囲まれるのに適している。光バイオリアクターは、培養液と周辺水との間の密度差を決定するための手段を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光合成微生物の培養のための閉鎖型光バイオリアクターの操作方法および光合成微生物の培養のための閉鎖型光バイオリアクターに関する。
【背景技術】
【0002】
光合成微生物は、今日までに既に、多くの商業用の用途が見出されていることが知られている。すなわち、藻類は、β−カロチン、アスタキサンチン等の製造のために生産されており、または完全な藻類バイオマスは栄養剤として売られている。今日、藻類バイオマスの生産は2つの主な障害に直面している。第1に、現在の生産の大部分は開放型システム(例えば、いわゆる開けた池)に基づいている。これらの開放型システムは、その他の藻類株または害虫による汚染に敏感であり、それ故、非常に特異的な増殖要求を有する藻類だけが、これらのシステムにおいて成長することができる。すなわち、例えば、藻類ドナリエラは、その他のほとんどの生物の生育には適さない非常に塩性の条件下で、β−カロチンの生産のために培養されている。第2に、藻類バイオマスの生産コストは、非常に高く(1メートルトン当たり>USD2,000)、多くの用途のための商業的生産、特にエネルギー・セクターまたは輸送セクターにおける商業的生産は有益ではない。特に、汚染を避けるために開放型システムの代わりに閉鎖型システムが使用される場合、生産費はしばしばより増大する。開けた池の他に、多数の様々な光バイオリアクターの種類が現在使用されている。チューブ・リアクター(1以上の水平のチューブから成るもの、または円柱または円錐に螺旋状に巻きつけられるもの(biocoil))が、とりわけ最もよく知られている。さらに、フラットパネルリアクターがしばしば使用され、そのリアクターは藻類の培養のための垂直液体層を提供する。
【0003】
藻類からの化学薬品およびエネルギーの生産における主な障害は、汚染のリスクおよび藻類バイオマスの生産のための高いコストである。同様に、ファインケミカルス、栄養剤、ビタミン、オメガ−3−脂肪酸、酸化防止剤(例えばカロテノイド)、医薬的作用物質または栄養上の補給のための乾燥バイオマスの藻類からの生産における主要な障害は、汚染のリスクおよび藻類バイオマスの生産のための高いコストである。生物燃料、飼料、アミノ酸、メタン生産等のための藻類の培養の場合にも、同様の障害が当てはまる。
【0004】
WO2005/121309は、藻類生産のための装置であって、藻類を含む液体が増殖容器に入れられ、そこへCO2を含むガスが供給され、当該ガスはガス調節装置を介して容器を循環する装置を開示している。実施形態において、容器はシート・バッグを形成する二重のプラスチックシートから作られている。海での微小藻類の生産に適していると言われる実施形態において、接合されたシート・バッグは水面に水平に浮かぶように置かれる。
【0005】
US4,868,123は、光合成による微生物の生産のための装置を開示している。当該装置は、光を透過し、培養培地が循環する第1の群の可撓管と、着脱式Y型内挿部材によって第1の群の下に配置および維持され、規則的に配置される第2の群の膨張式チューブとを有する、広々とした水面に配置されるバイオリアクターを含む。当該文献によると、培養培地の温度が最大基準温度を超えると、光バイオリアクターは第2の群のチューブの収縮によって沈められる。反対に、培地の温度が最小基準温度未満である場合、第2の群のチューブは圧縮空気により膨張する。光バイオリアクターの液浸は、第2の群のチューブへの相対的に重い液体の導入によって保証される一方、浮遊は空気以外の軽い液体の注入により保証される。
【0006】
微生物のラージスケール培養は非常にコストに影響を受けるため、より簡単でより安価なバイオリアクター装置の需要が存在する。
【発明の概要】
【0007】
今日、光合成微生物の培養は、バイオマスの生産のための高いコストによって特徴づけられる。新規の光バイオリアクターは、バイオマスのための生産費を著しく引き下げることができるだろう。さらに、閉鎖型のプロセスデザインによって、開放型システムと比較して、汚染のリスクを大きく縮小することができる。
【0008】
汚染を避けるために、閉鎖型光バイオリアクターが使用され、これは、例えば、ポリエチレンといったプラスチックから製造されてもよい。光バイオリアクターが水塊(例えば人工池)の中または水面で遊泳するため、大きなコストの低下が達成される。この構成原則によって、光バイオリアクターを正確に水平にするためのコストを避けることができる。光バイオリアクターの静水学的内圧が周辺水によって部分的に補われることで、光バイオリアクターの壁の強度を低下でき、またはより安定性の小さい材料を使用することができる。光バイオリアクターの周辺水は熱を供給または除去できるため、付加的な温度調節を余分なものにする。柔軟性材料を光バイオリアクターに使用すること、並びに周囲の水塊における光バイオリアクターの位置を変更できることおよび培養液の層の厚さを変更できることにより、光バイオリアクターの操作条件は、日射または温度といった環境要因、生産力増大のための因子に応じて最適化でき、コストのさらなる減少をもたらす。我々の惑星の70%以上が水に覆われていることを考慮すれば、水面上で光バイオリアクターを操作できることにより、非常に大きな領域をそのような光バイオリアクターシステムの実現に利用できる。
【0009】
記述される光バイオリアクターは、基本的な人間栄養のためのあらゆる種の生物燃料、飼料、タンパク質、アミノ酸の製造に使用できる光合成生物からのバイオマスの生産、並びにファインケミカルス、栄養剤、ビタミン、オメガ−3−脂肪酸、酸化防止剤(例えばカロテノイド)、医薬的に活性のある物質成分または栄養剤として使用するための乾燥バイオマスの製造のために使用される光合成生物からのバイオマスの生産に貢献するかもしれない。
【0010】
したがって、本発明の目的は、閉鎖型光バイオリアクターの内容物(例えば培養培地およびそこで培養される微生物)の温度制御を容易にすることである。本発明の関連する目的は、その内容物の温度を調節するために、閉鎖型光バイオリアクターの一部または全部を囲む水の冷却能力を利用することである。
【0011】
本発明のその他の目的は、水に一部または全部が囲まれる閉鎖型光バイオリアクターの垂直位置の制御を可能にすることである。特に本発明は、光バイオリアクター自体の内容物(例えば培養培地)および周辺水以外の浮力調節手段を必要とすることなく、そのような位置制御を可能にすることを目的とする。
【0012】
さらに、本発明の別の目的は、光バイオリアクターが水塊に浮遊する場合に、培養液の厚さの分布を自動的に均質にする光バイオリアクターを提供することである。
【0013】
本発明の光バイオリアクターまたはその一部は、好ましくは柔軟性材料で作られてよいため、リアクターの形状は、内部および外部の影響および不均質性によって影響を受けてもよい。それゆえ、光バイオリアクターの形状および最適な機能を保持するために、そのような影響および不均質性の制御が重要となる可能性がある。したがって、柔軟性の光バイオリアクターの位置および/または形状の付加的な制御のための手段を提供することが本開示の目的である。
【0014】
本発明のさらなる目的は、閉鎖型光バイオリアクターおよびその周辺装置の構成を単純化し且つコストをより低くすることである。
【0015】
本発明のその他の目的または利点は、下記の説明によって当業者に明白となるに違いない。
【0016】
ここで使用される光バイオリアクターという用語は、一般に、藻類培養液を含むことに適し、そこで光合成が生じる光バイオリアクターのコンパートメントであって、あらゆる付加的なコンパートメントまたはチューブ、サブコンパートメントまたは光バイオリアクターの位置および/または形状の制御のための機械的手段を含むコンパートメントを意味するが、当該用語はさらに、あらゆる付加的なコンパートメントまたはチューブ、サブコンパートメントまたは光バイオリアクターの位置および/または形状の制御のための機械的手段を含む前記藻類コンパートメント、並びに例えばポンプ、ホース、タンクといった周辺装置およびリアクターの操作のために必要となるその他の装置を含むより広い意味における光バイオリアクターシステムを指してよい。
【0017】
本発明の第1の側面として、光合成微生物の培養のための閉鎖型光バイオリアクターの操作方法であって、前記光バイオリアクターは培養液を含み、前記光バイオリアクターは水塊の水に部分的または完全に囲まれ、ここにおいて、水塊における光バイオリアクターの位置が制御されるように培養液と周辺水との間の密度差が提供される方法が提供される。
【0018】
本発明が基礎とする主な原則は、周辺水の密度に対して光バイオリアクターの密度を制御することによる、例えばリアクターの内部および外部に異なる塩分濃度を提供することによる、周囲の水塊における柔軟で軽量の光バイオリアクターの垂直位置を制御する能力である。淡水または汽水(低密度)を含むリアクターは、塩水から成る水塊(高密度)に容易に浮遊することが示されている。さらに、本発明による光バイオリアクターは自身を安定化することがわかっており、このことは、それが実験の初めに配置された位置にかかわらず完全な水平位をとり、リアクターの内部の培養液の層の厚さは開始時と無関係に再び非常に均質になることを意味する。したがって、光バイオリアクターが淡水を含み且つ周囲の水塊が塩水を含む場合、リアクター自身および周囲の水塊にて異なる塩分を使用して、2つの水塊にて異なる密度を使用することにより、光バイオリアクターの柔軟で透明な壁に閉じ込められた安定した淡水レンズが周囲の塩水塊にて形成されるだろう。
【0019】
リアクターを安定させ且つ培養液層の均質の厚さを得るために密度差を使用するという本発明の概念は、非常に簡単で非常にコストが効率的な光バイオリアクターシステムの提供を可能とする。第1に、システムにおける淡水は、最適な(水平)構造自体を形成すると考えられ、このことは、薄く低価格な材料をリアクターに使用するできることを意味する。第2に、リアクターは藻類の成長に最適な位置に自動的に移動すると考えられ、これによって、リアクターを好ましい位置に配置するための機械設備またはプロセス制御装置の必要性が最小化される。第3に、培養液層の均質の厚さ、並びに光バイオリアクターにおける培養液の量を変えることにより培養液層の厚さを最適化する可能性は、培養液における高いバイオマス密度を可能にし、このことは、本発明による光バイオリアクターはより多くのバイオマスを含み、それゆえより高いエネルギー効率を有する可能性があることを意味する。
【0020】
塩分および/または温度の差によって引き起こされる光バイオリアクターの内部と外側との水の小さな密度差は、リアクターを動かす唯一の動力源であるため、光バイオリアクターの壁に薄い柔軟性の材料を有することが好ましい。薄く柔軟性の壁を有することは、光バイオリアクター自身で安定化する能力を最適化するだろう。光バイオリアクターの壁の使用に適した材料の一例は、約0.1mmの厚さを有するポリエチレンまたは同等の材料である。
【0021】
培養液と周辺水との間の前記密度差を提供して水塊における光バイオリアクターの位置を制御することにより、周辺水に関した光バイオリアクターの浮力の変化が作られ、この浮力の変化はリアクターの垂直な位置の変化の原動力である。したがって、提供される密度差は、光バイオリアクター自体の重量および浮力が考慮に入れられる。したがって、本発明は、周辺水における光バイオリアクターの位置を制御するための簡単で安価な解決策を提示する。同様に、光バイオリアクターの内容物の冷却は、周辺水において光バイオリアクターの位置を低下させることにより、効率的に且つ低コスト達成できる可能性がある。
【0022】
さらに、システムの閉鎖的なプロセスの設計は、汚染のリスクを著しく減らす。光バイオリアクターが(部分的に)水に囲まれるという事実は様々な効果により生産費を縮小する:光バイオリアクターを水に浮かべるまたは浮留させることによって、土地を水平にするための高価な建設工事が不要となる。光バイオリアクターは周囲の水塊における閉鎖型システムとして浮遊または浮留するため、周囲の水塊を表わすプールを非常に簡単に且つコストが効率的な方法で用意してもよい。極端な場合、川、湖、海または水で満たされた天然の土のくぼみを外部の水塊として使用することができる。周囲の水塊は最適に熱を提供および除去することができるため、温度調節のためのさらなるコストを必要としない。光バイオリアクターの静水学的な内圧が周辺水によって部分的に補われるため、光バイオリアクターの壁の厚さを縮小することができ、またはより安定性の低い材料を使用することができ、さらなるコスト削減に寄与する。
【0023】
光バイオリアクターの柔軟な構成、すなわち周囲の水塊におけるリアクターの位置を変更できることおよび光バイオリアクターにおける培養液の厚さを変更できることにより、光バイオリアクターのプロセスパラメーターは、日射の強度および温度のような環境要因に応じて最適化することができ、このことは生産力の増加をもたらし、コストをさらに縮小するだろう。培養液の厚さは、光合成生物の増殖に必要な太陽光のための光路に影響を及ぼす。
【0024】
光バイオリアクターは水面上で操作することができ、我々の惑星は70%以上が水で覆われているため、そのような光バイオリアクターシステムの実行のために非常に大きな領域を利用できる。
【0025】
培養液と周辺水との間の塩分差を提供することで、密度差を提供してよい。培養液の塩分を増加または減少させることにより、前記塩分差を提供してよい。前記塩分差は、さらにまたは代わりに、周辺水、特に閉鎖型水塊の周辺水の塩分を増加または減少させることで提供してよい。この文脈において、当業者が理解するように、「閉鎖型水塊」という用語は、十分に定義された水のシステムであって、その中の水の量または種(例えば、淡水、汽水または海水)の制御が可能であるシステムを意味する。閉鎖型水塊の例は、天然もしくは人工の池またはプールである。周辺水の塩分の減少の提供と同時に、培養液の塩分の増加が提供されてもよい。周辺水の塩分の増加の提供と同時に、培養液の塩分の減少が提供されてもよい。
【0026】
培養液と周辺水との間の温度差の提供によって、密度差を提供してよい。周辺水、特に閉鎖型水塊の周辺水の温度の変更により、前記温度差を提供してもよい。「閉鎖型水塊」の意味は上記の通りである。
【0027】
培養液のガス圧力の増加または減少によって、密度差は提供されてよい。したがって、藻類による消費のために光バイオリアクターに供給されるガス(例えば二酸化炭素)の圧力によりまたは藻類によって生産されるガス(例えば酸素)の圧力により、培養液の密度が影響を受けてよい。
【0028】
塩分、温度、ガス圧力、および/または、培養液および/または周辺水の密度に影響を及ぼすその他のパラメーターは、望ましい密度差を提供するため、独立にまたは同時に変更されてよい。培養液の密度および周辺水の密度は、好ましい密度差を提供するために独立にまたは同時に変更されてよい。
【0029】
培養液の密度が増加されるようにまたは周辺水の密度が減少するように密度差を提供してよく、それによって水塊における光バイオリアクターの位置が低下する。培養液の密度が減少するようにまたは周辺水の密度が増加されるように密度差を提供してよく、それによって水塊における光バイオリアクターの位置が上昇する。水塊における光バイオリアクターの位置が維持されるように密度差を提供してよい。さらに、光バイオリアクターの位置の低下、上昇または維持のいずれかのための好ましい密度差を提供するために、培養液の密度および周辺水の密度を同時に変更してもよい。
【0030】
光バイオリアクターを操作する上記方法、すなわち水塊における光バイオリアクターの位置が制御されるように培養液と周辺水との間の密度差が提供される方法は、位置の長期的な制御に特に適している。この文脈において、「位置の長期的な制御」とは、変化の開始からの数時間または数日以内に逆にする必要のない位置の変更(光バイオリアクターの上昇または低下)のことを意味する。しかしながら、本発明の方法において、光バイオリアクターは、光バイオリアクターの浮力のさらなる制御に適した1以上のコンパートメントまたはチューブを装備してもよい。そのようなコンパートメントまたはチューブの利点は後述する。
【0031】
本発明の方法において、光バイオリアクターは、さらに、光バイオリアクターの垂直位置および/または形状の更なる制御に適した機械的手段を装備してよい。そのような機械的手段およびその利点は下に議論される。
【0032】
本発明の方法において、光バイオリアクターはフラットパネル形状を有してよい。例えばチューブ型の光バイオリアクターと比較して、フラットパネルリアクターは、必要となる建設資材が少なく、流れ抵抗が低いため必要となるエネルギー入力が小さく、および拡張性の制限が小さい。
【0033】
本発明の方法において、光バイオリアクターはさらに、本発明の第2の側面に関して下記に述べられるような付加的な特徴を含んでよい。
【0034】
本発明の第2の側面において、光合成微生物の培養のための閉鎖型光バイオリアクターであって、前記光バイオリアクターは培養液を含むのに適し、前記光バイオリアクターは水塊の水に部分的または完全に囲まれ、前記光バイオリアクターは培養液と周辺水との間の密度差を決定するための手段を含む光バイオリアクターが提供される。
【0035】
塩分および/または温度の差によって引き起こされる光バイオリアクターの内部および外側の水の小さな密度差がリアクターを移動させる唯一の動力源であるため、光バイオリアクターの壁に薄い柔軟性の材料を有することが好ましい。薄く柔軟性の壁を有することは、光バイオリアクター自身で安定化する能力を最適化させる。
【0036】
閉鎖型光バイオリアクターは好ましくはコンパートメントを含み、当該コンパートメントは、防水で、透明でおよび柔軟な材料の壁によって閉じられた藻類コンパートメントを意味する。
【0037】
防水で、透明でおよび柔軟な材料は、さらに、好ましくは軽量または低密度の材料であってよい。材料は、好ましくは、ポリオレフィンに基づくポリマー(例えばポリエチレン、ポリプロピレン)の薄膜のようなポリマーに基づく材料であってよい。本発明における使用に適しているその他のポリマーは、高分子材料に関する当業者に容易に理解されるだろう。壁の厚さは、使用される特異的な材料の特性、例えば適応性、透過性および耐久性に依存して選択すべきであり、例えば10−1000μmの範囲または25−500μmの範囲または50−150μmの範囲である。材料の耐久性を考慮に入れて、柔軟性および透過性を最大化するために光バイオリアクターの壁をできるだけ薄くすることが好ましい。非限定的な例として、約100μmの厚さを有するポリエチレンフィルムは、光バイオリアクターの壁にて使用することが適しているようである。
【0038】
光バイオリアクターの藻類コンパートメントは、例として、2つのシートで閉鎖されたコンパートメントが形成されるように互いに接続される、防水で、透明でおよび柔軟な材料の上部シートおよび下部シートを含んでよいが、防水、透明、柔軟且つ軽量の材料の壁によって閉じられた密封したコンパートメントをもたらすその他の配置も考慮される。
【0039】
光バイオリアクターの藻類コンパートメントは、さらに様々な入口および出口を含んでよく、これらは、ホース、ポンプ、液体またはガスの供給源および光バイオリアクターの操作に要求されるまたは有用なその他の付加的な装置につなげられてよい。
【0040】
密度差を決定する手段は、培養液の塩分および/または温度を決定するための手段を含んでよい。密度差を決定する手段は、周辺水の塩分および/または温度を決定するための手段を含んでよい。培養液または周辺水の塩分の決定に適した手段は当業者に確認されてよく、それらの機能は、例えば、塩分を決定すべき培地の伝導性の測定に基づいてよい。培養液または周辺水の温度の決定に適した手段は、当業者に確認されてよく、例えば、熱電対または温度を表わす電気信号を提供する温度測定のためのその他の装置であってよい。
【0041】
光バイオリアクターは、光バイオリアクターの浮力のさらなる制御に適した1以上の付加的なコンパートメントまたはチューブを装備してよい。コンパートメントまたはチューブは、ガス、水またはその他の液体を含んでよい。したがって、付加的なコンパートメントまたはチューブは、水塊における光バイオリアクターの位置が制御される速度を増大する。それ故、光バイオリアクターの位置は、培養液の温度の短期的な変化に応じる場合のように迅速に適応する必要がある場合に、付加的なコンパートメントまたはチューブを使用してもよい。「短期的な変化」とは、分または時間のスケールにおける変化を意味する。
【0042】
例えば、藻類の増殖条件(例えば温度)の最適化のために、または強風といった天候に関連する条件により、光バイオリアクターの位置を迅速に適応させる必要がある場合に、光バイオリアクターは、水没または浮揚の促進のための機械的手段を装備してよい。そのような機械的手段は、例えば、ネットまたはロープ、ケーブルまたはロッドといった少なくとも1つの細長い部材であって、光バイオリアクター上に伸ばされ、下降または上昇が可能なように配置され、光バイオリアクターの水没または浮揚を支援するものを含んでよい。そのようなネットまたは少なくとも1つの細長い部材は光バイオリアクターの表面に固定されてよく、または固定されてなくてよい。一般に、平行に配置され、光バイオリアクターの長さに渡って適切な距離で分散された、2以上の細長い部材を有することが有用だろう。例えば、光バイオリアクター全体が同時に沈むように、またはリアクターの一側面が最初に沈み、リアクターの反対側面が次に沈むように、細長い部材は同時にまたは順に下降または上昇されてよい。
【0043】
光バイオリアクターはフラットパネル形状であってよい。例えばチューブ型光バイオリアクターと比較して、フラットパネルリアクターは、必要となる建築材料が少なく、流れ抵抗が低いため必要となるエネルギー入力が少なく、拡張性における制限が少ない。
【0044】
光バイオリアクターの藻類コンパートメントは、さらに、培養液を含むのに適した2以上のサブコンパートメントを含んでよい。前記サブコンパートメントは、光バイオリアクターに存在する培養液の一部を含むように最適化されてよい。好ましくは、光バイオリアクターが2以上のそのようなサブコンパートメントを含む場合、培養液はサブコンパートメント間で均一に分散されてよい。さらなる詳細が本願で議論されるように、サブコンパートメントは、培養液の集塊および大きなガスの泡の潜在的な悪影響の縮小を支援するため、光バイオリアクターにおけるサブコンパートメントの使用は、それが部分的または完全に沈んだ場合に、リアクターの安定化を支援する可能性がある。
【0045】
サブコンパートメントは互いに密閉されてよい。サブコンパートメントが互いに密閉された場合、サブコンパートメントは多くのより小さな光バイオリアクターとして機能するだろう。光バイオリアクターが沈められた場合、これはさらに集塊および大きなガスの泡に関する問題を縮小するだろう。
【0046】
サブコンパートメントはさらに、サブコンパートメント間の限られた液体および/またはガスの輸送を可能にするように接続されてよい。光バイオリアクターが沈められた場合、これは、光バイオリアクターの柔軟性および培養液へのCO2およびその他の栄養素の一般的な分布の利点およびリアクターからの酸素の除去を維持しながら、集塊および大きなガス泡に関する問題をほぼ解消するだろう。
【0047】
光バイオリアクターは、光バイオリアクターの藻類コンパートメントを2以上サブコンパートメントに一時的に分離するための手段をさらに含んでよい。一時的に光バイオリアクターの藻類コンパートメントを分離することは、光バイオリアクターが水面に浮遊する場合における制限のないフラットパネル構造および光バイオリアクターが部分的にまたは完全に水没する場合におけるサブコンパートメント構造を有する組み合わせられた利点を可能にする。光バイオリアクターまたはその藻類コンパートメントは、周辺水の表面に浮遊する場合、一般に大気に直面する少なくとも1つの柔軟性上部シートおよび水に面する柔軟性下部シートを含むと考えられ、それら2つのシートの間に藻類培養物が維持される。光バイオリアクターの藻類コンパートメントを一時的に分離するための手段は、例えば、各々の側のくぼみにおいて光バイオリアクターの内部でサブコンパートメントが形成されるように、光バイオリアクターの下部シートに向けて光バイオリアクターの上部シートを押すことに適した部材を含んでよい。実施形態において、光バイオリアクターの藻類コンパートメントを2以上のサブコンパートメントに分離するための前記手段は、少なくとも1つの細長い部材であって、光バイオリアクター上に伸ばされ、光バイオリアクターの下部シートに向けて光バイオリアクターの上部シートを押すために降下できるよう配置され、前記少なくとも1つの細長い部材の各々の側面で光バイオリアクターの内部にサブコンパートメントが形成される部材(例えばロープ、ケーブルまたはロッド)を含む。
【0048】
別の実施形態において、光バイオリアクターを2以上のサブコンパートメントに分離するための前記手段は、藻類コンパートメントから分離し、光バイオリアクターの上部シートに接して配置され、培養液より高い密度を有する液体で満たされるのに適した少なくとも1つの付加的なコンパートメントまたはチューブを含み、付加的なコンパートメントまたはチューブが高密度液体で満たされる場合、充填されたコンパートメントまたはチューブは光バイオリアクターの下部シートに向けて光バイオリアクターの上部シートを押すことができ、サブコンパートメントは前記充填されたコンパートメントの各々の側面で光バイオリアクターの藻類コンパートメントの内部に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1a】図1aは光バイオリアクターシステムの模式図である。
【図1b】図1bは光バイオリアクターシステムの横断面図である。
【図2a】図2aは、その低密度により培養液コンパートメント上で浮遊するCO2供給チューブを有する光バイオリアクターについての三次元ビューである。
【図2b】図2bは、その低密度により培養液上で浮遊するCO2供給チューブを有する光バイオリアクターの垂直断面を示す。
【図3】図3は、垂直位置またはリアクターの形状を制御するための付加的なコンパートメントを有する光バイオリアクターを示す。
【図4a】図4aは、一時的なサブコンパートメントを作るための、および水没プロセスを促進するためのロープを有する光バイオリアクターの模式図である。
【図4b】図4bは、リアクター運動を導くレールを有する垂直プロファイルの図4aの拡大図である。
【図5】図5は、密封したサブコンパートメントを有する光バイオリアクターを示す。
【図6a】図6aは、リアクターの上部および下部シートが様々な点で接続される光バイオリアクターの模式図である。
【図6b】図6bは、リアクターの上部および下部シートが様々な点で接続される光バイオリアクターの模式的横断面図である
【図7】図7は、光バイオリアクター内部にサブコンパートメントを形成するために、リアクターの上部側に、高密度液体で満たされてよいコンパートメントを有する光バイオリアクターの模式的横断面図である。
【発明の詳細な説明】
【0050】
本発明の実現の非限定的な例は、図面に見ることができ、以下にさらに記述される。培養液および培養培地という用語はここにおいて互換的に使用され、藻類培養物全体、すなわち藻類が浮遊している藻類と水性培地との混合物を意味してよく、または単に藻類を懸濁させるための水性培地を意味してよい。
【0051】
図1aは完全な光バイオリアクターシステムの図である。パネル型の光バイオリアクター1(ここでは「リアクター」とも称する)は、水塊(ここでは人工池2)上に浮遊する。そのような光バイオリアクター1のサイズは変更でき、長さ50メーターおよび幅約10メーターが実現可能である。光バイオリアクター1は柔軟で透明な材料から製造され、光バイオリアクター内には藻類が懸濁している培養液が存在する。光バイオリアクター1に対する日射によって、光合成を介して藻類からバイオマスを製造することができる。二酸化炭素はこのプロセスの間に使用され、酸素が製造される。それ故、新たな二酸化炭素を提供し、藻類には有毒になりうる酸素を除去するために、培養培地は照らしながらも常に動かされる。培養培地はポンプ3を介して移動するだろう。培養培地は、したがって、光バイオリアクターを通って移動し、チューブ4を介して戻される。ガス交換はタンク5にて行われ、そこに対して、チューブシステム6が、コンプレッサー7によって二酸化炭素に富むガス混合物を着実に提供するだろう。二酸化炭素濃に富むガス混合物は、例えば化石燃料を使用する発電所を由来とすることができる。脱気された酸素は、無菌フィルターを装備したチューブ8を介して外に導かれるだろう。藻類バイオマスを有する培養液は、バルブ9を介してシステムから取り出され、この回収された容量がさらに処理されるまでタンク10に貯蔵することができる。新たな培地は貯蔵タンク12からのさらなるバルブ11を介してシステムに提供される。これは、回収によって生じる液体の減少を横ばいにし、かつ培養液に新規の栄養素を供給する役目をする。
【0052】
代替となる実施形態(図示せず)において、二酸化炭素はリアクターにあるチューブまたはホースから成長している藻類に提供され、当該チューブまたはホースは二酸化炭素の1以上の出口を有する。したがって、この実施形態において、培養液体は二酸化炭素の供給のためにタンク5を通って移動してはならない。
【0053】
培養液の塩分および温度の測定のためのセンサー13並びに周辺水の塩分および温度の測定のためのセンサー14は制御装置15に接続される。制御装置15は、センサー13および14からの情報並びにその他のパラメーターおよび保存されたデータに基づいて培養液および周辺水の間の密度差を決定する。制御装置は池2に対して海水および淡水を供給するポンプ(図示せず)をそれぞれ制御する。別の実施形態(図示せず)において、制御装置15は光バイオリアクター1における培養液の塩分を変更するための手段を制御する。
【0054】
図1bはそのようなシステムの断面積を示す。光バイオリアクター1が側面から切断されており、この図では、光バイオリアクターが水塊2上に浮遊する。光バイオリアクターにおける培養液の垂直の厚さは典型的に1〜30cmである。水塊2の深さは著しく変わってもよい。培養液を循環させるために使用されるチューブ4も同様に側面から切断されている。
【0055】
光バイオリアクターの培養液
藻類培養物は光バイオリアクターにおける培養液に留まる。培養液は、藻類がバイオマスまたは特異的な分子を製造することができるように異なる塩類およびその他の栄養素(例えばCO2のような炭素源、グルコースまたはコハク酸塩)を含む水溶液である。培養液の特異的な栄養分は、光バイオリアクターにて培養される藻類のタイプ、または藻類培養物が製造すると思われる種々の分子に依存して変えてよい。光バイオリアクターにおける培養液は、任意の流速で光バイオリアクターを通して新鮮な培養液をポンプで汲み出すことで取り替えてよく、それにより、藻類培養物には新鮮な栄養素が提供される。培養液が光バイオリアクターを通ってポンプで汲み出される場合、好ましくは、培養液がポンプで汲み出される流速は光バイオリアクターからの藻類のいかなる損失も最小化するように調節される。光バイオリアクターおよび周辺水における培養液の温度は連続的に測定される。測定された温度は前もって定義した温度値と比較され、当該定義した温度値は藻類培養物のための条件が最適である温度範囲内(例えば、藻類培養物の最も高い成長率または特異的な分子の最も高い生産速度を促進する温度範囲)の温度であってよい。
【0056】
光バイオリアクターの培養液へのCO2の供給
藻類は増殖のために大量のCO2を必要とする。これは、藻類が炭素の重要な供給源としてこれを使用するためである。その上、光合成の過程で、酸素が製造され、それは藻類に有毒である場合がある。それ故、液体−ガスの障壁を介するこれらのガスの物質移動が高い生産力のために重要である。藻類培養物にCO2を供給する可能性のある多数の方法および藻類培養物から生成された酸素を除去するための多数の方法が以下に記述されるだろう。ここに記述される方法は、本発明を限定するものとして解釈すべきでない。本開示に照らして当業者にとってさらに明白であるその他の方法も、本発明の範囲内であると考えられる。
【0057】
実施形態(図示せず)において、培養培地へのCO2の物質移動は、培養培地の広い表面積全体におけるガスCO2の受動拡散によって達成される。フィックの第1および第2法則に示される拡散プロセスの動力学および続く水和および脱プロトンプロセスは十分に速いため、藻類培養物に十分なCO2が提供され、光酸化によってO2の毒性効果を回避できると仮定すると、広い表面を介したCO2の受動拡散は十分だろう。受動拡散は、水の移動または水へのCO2の強制にエネルギーを必要としないという長所を有する。さらに、能動的な通気は必要ではないため投資コストは縮小されるだろう。そのような場合において、CO2移動は、更なるエネルギーを添加することなく水とCO2ガスとの間の界面の層で起こるだろう。より特異的な実施形態において、光バイオリアクター内の培養培地上にてCO2に富むガスのガス泡を生じさせることでこれを実現できてよい。
【0058】
別の実施形態(図示せず)において、CO2は培養培地を通って泡立つ。ガスCO2は、好ましくは、培養培地へ伸びるチューブまたはチューブ状の装置によって供給してよい。そのようなシステムはホールを含み、そこを通ってCO2に富むガスが外部装置からの圧力の適用により押されてよい。チューブまたはチューブ状装置は、例えばリアクターの底に固定されてよく、ホールの典型的な方向は水面方向であろう。
【0059】
光バイオリアクターの操作の際、CO2に富むガスを培養培地に連続的に供給してよい。この実施形態は、さらに、発生してすぐの酸素の連続的な脱気という利点、すなわち生成される酸素が、その生成の直後に培養培地から除去されるという付加的な利点を有する。
【0060】
あるいは、CO2に富むガスは短いパルスにて添加することができる。パルスの長さ、押されるガスの量、ガスが押される圧力およびパルス間の時間を決定する様々な手段が存在する。実施形態において、ガスをタイマーによってパルス化してよく、例えば5分おきに1分のパルスの規則的なシグナルが与えられる。別の実施形態において、藻類によって使用されるCO2の量を推定でき、パルスの最適な長さ、押されるガスの量、ガスが押される圧力およびパルス間の時間を算出できる特別のユニットによってパルスが制御される。必要とされるCO2の量を推定するために、ユニットは種々のセンサー、例えば光強度を測定するセンサー、温度を測定するセンサーおよび光バイオリアクターにおけるバイオマス密度を測定するセンサーを含んでよい。これらのセンサーが受け取ったデータポイントを使用して、プロセス制御器は光バイオリアクターシステムに対する最適なパルスパターンを計算するだろう。
【0061】
添加されるCO2の量は、さらに、リアクターのpHと関連してもよい。pH電極は培養培地に配置され、この電極は、定義された酸化還元系(例えばAg/AgCl電極)に対する、陽子の膜の通過を可能にする半透膜を介した電圧を連続的に測定する。電圧はプロセス制御ユニットによって記録される。電圧があらかじめ定められた点に達するとすぐ、プロセス制御ユニットはCO2パルスを添加するだろう。パルスのパラメーター、例えば時間、分毎のパルスの量およびパルスを停止する電圧は、プロセス制御ユニットに入れることができる。
【0062】
別の実施形態において、図2aおよび2bに示されるように、光バイオリアクターへ伸び、より低い密度のために培養培地の表面に浮遊するよう配置されるチューブまたはチューブ状装置によって、ガスCO2が培養培地に供給されてよい。上記と同様に、ガスCO2を泡立たせることができ、ここにおいて、チューブまたはチューブ状装置は培養培地へ伸びる。しかしながら、CO2が供給されるチューブまたはチューブ状装置は、光バイオリアクターにおける培養培地の表面に浮遊するように特異的に設計されるだろう。これは、藻類培養培地(17)の密度よりも低い、全(16)通気システムの密度によって達成される。培養培地に向けてCO2が通るチューブまたはチューブ状装置におけるホール(18)は、出来る限りのガス移動を達成するために、この実施形態において下方に向けられてよい。したがって、ホールは培養培地の表面にまたはそのわずか下に設けられるだろう。
【0063】
光バイオリアクターの操作の間、CO2に富むガスを培養培地に連続的に供給してよい。この実施形態はさらに、発生してすぐの酸素の連続的な脱気、すなわち作られる酸素が生成直後に培養培地から除去されるという付加的な利点を有す。
【0064】
あるいは、CO2に富むガスを短いパルスで添加することができる。パルスの長さ、押し込まれるガスの量、押し込まれるガスの圧力およびパルス間の時間を決定する様々な手段が存在する。実施形態において、規則的な信号(例えば5分毎に1分のパルス)を与えるタイマーによって、ガスにパルスを与えることができる。別の実施形態において、藻類によって使用されるCO2の量を推定し、パルスの最適な長さ、押し込まれるガスの量、押し込まれるガスの圧力およびパルス間の時間を算出することができる特別なユニットによってパルスが制御される。必要とされるCO2の量を推定するために、ユニットは、種々のセンサー、例えば光強度を測定するセンサー、温度を測定するセンサーおよび光バイオリアクター中のバイオマス密度を測定するセンサーを含んでよい。これらのセンサーが受け取ったデータポイントを使用して、プロセス制御器は、光バイオリアクターシステムに対する最適なパルスパターンが計算されるだろう。
【0065】
添加されるCO2の量は、さらに、リアクター中のpHと関連してよい。pH電極は培養培地に配置され、この電極は、定義された酸化還元系(例えばAg/AgCl電極)に対して、陽子の膜の通過が可能な半透膜を介した電圧を連続的に測定する。電圧はプロセス制御ユニットによって記録される。プロセス制御ユニットは、電圧があらかじめ定められた点に達するとすぐにCO2パルスを添加するだろう。パルスのパラメーター、例えば時間、分毎のパルス量およびパルシングを停止する電圧を、プロセス制御ユニットに入力することができる。
【0066】
光バイオリアクターの内部においてガスの形態で培養培地にCO2を供給する必要は必ずしもない。光バイオリアクターの外部において、例えば水性培地にてガスCO2を泡立たせることで、CO2に富む培地を作ることもできる。言いかえれば、光バイオリアクターの透明な部分にCO2を供給する代わりに、実際の光バイオリアクターの外側でこれを行うことができる。実施形態において、そのようなシステムは、水性培地を含む垂直なタンクであって、CO2に富むガスがタンクの底または底の近辺に供給されるタンクを使用してよい。CO2の泡が水性培地にて生じる一方、CO2は泡から水性培地へ移動し、同時に酸素は培養培地から除去されてよい。好ましい実施形態において、CO2に富む水性培地は、CO2量が高められ、その後光バイオリアクターへ返される、光バイオリアクターからの培養培地である。タンクは数メーターの高さを有してよいため、CO2の滞留時間は比較的長く、良好な物質移動が可能となってよい。垂直なタンクにてCO2を泡立たせるために、例えば静水圧に逆らうためのエネルギーが必要となる。ガスの加圧のために使われるエネルギーはさらに、藻類コンパートメントからの水性培地をCO2豊富化装置へ動かし、藻類コンパートメントに戻すために使用してよい。
【0067】
別の実施形態において、光バイオリアクターの内部または外部において藻類培養培地のCO2を泡立たせる代わりに、CO2供給は半透膜の使用によって促進する。そのような膜の使用は泡立たせることと比較して様々な長所を有するだろう:
a)そのような膜は一方向弁として働く。これは、膜が、培養培地へのCO2の侵入を許すが、CO2供給システムへの水の侵入を抑制するということ、すなわち、膜はCO2に対して浸透性である一方、水には浸透性でないことを意味する。
b)より低いエネルギー消費。泡の生成が必要ではないため、膜による方法は、泡の生成プロセスと比較して低いエネルギー消費でCO2を供給できる。
c)低い剪断応力。泡立たないようにすることによって、藻類細胞における剪断応力が低減される。藻類上のより小さな剪断応力は藻類培養培地にて死亡する藻類細胞の量を減らし、それゆえ、光バイオリアクターの効率を低減する可能性のある分解しやすい有機物質の量が低減される。その上、有機栄養生物による汚染のリスクを著しく減らすだろう。
d)物質移動速度の増大。膜の使用によって、上述される受動拡散を使用する実施形態よりも高いCO2圧力が可能となる。なぜなら、膜に対するCO2圧力は周囲の大気圧に制限されないためである。このことは、受動拡散の場合に問題となる。その上、膜は、膜と同様なサイズを有する平らな表面(例えば培養培地の表面)よりも大きい表面積を有してよい。
【0068】
CO2および/または酸素の物質移動は、さらに、光バイオリアクターの移動、例えばリアクターを傾けることにより促進してよい。
【0069】
閉鎖型水塊における光バイオリアクター
「閉鎖型水塊」という用語は、例えば量またはそこに含まれる淡水、汽水もしくは塩水といった種類の制御を可能にする、十分に定義された水のシステムである。閉鎖型水塊の例は天然もしくは人工の池またはプールである。
【0070】
一実施形態において、光バイオリアクターは開始位置として閉鎖型海水塊(すなわち塩水)の表面に置かれる。光バイオリアクターが海水塊の表面に、置かれるまたは浮遊する場合、光バイオリアクターの密度は海水塊の密度よりも低くい。光バイオリアクターの位置を低下させる必要がある場合、光バイオリアクターと海水塊との間の密度差が調節される。例として、培養液の測定された温度が所定の温度値よりより高い場合または高いと予想される場合、光バイオリアクターの位置を低くする必要があってよい。光バイオリアクターと海水塊との間の密度差を調節するために、海水塊の塩分が低減される。これは海水を淡水に置き換えることにより達成される。海水と淡水との置換に伴って、閉鎖型水塊の塩分は段階的に減少し、すなわち光バイオリアクターを取り巻く水の密度が減少する。あるいは、海水を汽水と取り替えてもよい。培養液の密度、光バイオリアクターの総合密度並びに周辺水の密度は連続的に測定され、光バイオリアクターと周辺水との間の密度差が連続的に決定される。光バイオリアクターは、周辺水と比較よりも高い密度を有するため、閉鎖型水塊中に沈み、光バイオリアクターの位置は低下する。光バイオリアクターの位置は、培養液の測定された温度が好ましい温度範囲内となるまで下げてよい。
【0071】
別の実施形態において、光バイオリアクターは開始位置として閉鎖型淡水塊の表面に置かれる。光バイオリアクターが淡水塊の表面に置かれるまたは浮遊する場合、光バイオリアクターの密度は淡水塊の密度よりも低い。光バイオリアクターの位置を低くする必要がある場合、光バイオリアクターと淡水塊との間の密度差が調節される。例として、培養液の測定された温度が所定の温度値より高い場合または高いと予想される場合、光バイオリアクターの位置を低くする必要があってよい。光バイオリアクターと淡水塊との間の密度差を調節するために、培養液の塩分が増大される。これは、より高い塩分の培養液で培養液を置換または補充することで、より高い塩分の培養液を光バイオリアクターに送り込むことにより達成される。培養液の流速は、培養液におけるより高い塩濃度への藻類の適応および光バイオリアクターにおける藻類のあらゆる損失の最小化を可能にするように設定される。培養液がより高い塩分の培養液によって置換されまたは補充されるため、光バイオリアクターの密度は増大する。培養液の密度、光バイオリアクターの総合密度並びに周辺水の密度が連続的に測定され、光バイオリアクターと周辺水との間の密度差が連続的に決定される。光バイオリアクターは周辺水よりも高い密度を有するため閉鎖型水塊に沈み、光バイオリアクターの位置は低下する。光バイオリアクターの位置は、培養液の測定された温度が好ましい温度範囲内となるまで下げてよい。
【0072】
別の実施形態において、光バイオリアクターは開始位置として閉鎖型海水塊(すなわち塩水)の表面より下に置かれる。光バイオリアクターが海水塊の表面より下に位置する場合、光バイオリアクターの密度は海水塊の密度より高い。光バイオリアクターの位置を上げる必要がある場合、光バイオリアクターと海水塊との間の密度差が調節される。例として、培養液の測定された温度が所定の温度値より低い場合または低いと予想される場合、光バイオリアクターの位置を上げる必要があってよい。光バイオリアクターと海水塊との間の密度差を調節するために、培養液の塩分は低減される。これは、培養液をより低い塩分の培養液で置換または補充することにより、すなわちより低い塩分の培養液を光バイオリアクターに送り込むことにより達成される。培養液の流速は、培養液におけるより低い塩濃度への藻類の適応および光バイオリアクターにおける藻類のあらゆる損失の最小化を可能にするように設定される。培養液は、より低い塩分の培養液で置換または補充されるため、光バイオリアクターの密度は低下する。培養液の密度、光バイオリアクターの総合密度並びに周辺水の密度が連続的に測定され、光バイオリアクターと周辺水との間の密度差は連続的に決定される。光バイオリアクターの位置は、周辺水と比較して密度がより低いために、閉鎖型水塊にて上昇する。水塊における光バイオリアクターの上昇は、培養液の測定された温度が好ましい温度範囲内となるまで続けてよい。
【0073】
別の実施形態において、光バイオリアクターは開始位置として閉鎖型淡水塊の表面より下に配置される。光バイオリアクターが淡水塊の表面より下に位置する場合、光バイオリアクターの密度は淡水塊の密度より高い。光バイオリアクターの位置を上げる必要がある場合、光バイオリアクターと淡水塊との間の密度差が調節される。例として、光バイオリアクターの位置は、培養液の測定された温度が所定の温度値より低い場合または低いと予想される場合、上げる必要があってよい。光バイオリアクターと周辺の淡水塊との間の密度差を調節するために、周辺水の塩分が増大される。これは淡水を海水(すなわち塩水)で置換することで達成される。淡水が海水と置換されることで、閉鎖型水塊の塩分は段階的に増大し、すなわち光バイオリアクターを囲む水の密度が増大する。培養液の密度、光バイオリアクターの総合密度ならびに周辺水の密度は連続的に測定され、光バイオリアクターと周辺水との間の密度差は連続的に決定される。光バイオリアクターの位置は、周辺水と比較してより低い密度を有するため閉鎖型水塊にて上昇する。水塊における光バイオリアクターの上昇は、培養液の測定された温度が好ましい温度範囲内となるまで続けてよい。
【0074】
一実施形態において、特に光バイオリアクターが閉鎖型水塊にある場合、培養液の密度および周辺水の密度は同時に変更される。したがって、培養液の塩分の増大に伴って周辺水の塩分が同時に減少し、または培養液の塩分の減少に伴って周辺水の塩分は同時に増大される。好ましくは閉鎖型の水塊および培養液の塩分の同時の調節は、光バイオリアクターと周辺水との間の密度差が調節される速度を増大し、これにより、光バイオリアクターが周辺水にて低下または上昇する速度を増大する。
【0075】
一実施形態において、特に光バイオリアクターが閉鎖型水塊にある場合、水塊の温度は好ましい密度差を提供するための付加的な手段として使用され、すなわち温度はリアクターを囲む培養液または水の塩分の調節の補充としてまたは代わりとして調節される。光バイオリアクターの位置を低くする必要がある場合、閉鎖型水塊の温度は増大され、それによって周辺水の密度を減少させる。さらに、光バイオリアクターの位置を上げる必要がある場合、閉鎖型水塊の温度を低下させ、それによって周辺水の密度を増大させる。したがって、リアクターを囲む水の温度の調節は、周辺水にて光バイオリアクターが低下または上昇する速度に影響する。
【0076】
光バイオリアクターが開始位置として閉鎖型海水塊(すなわち塩水)の表面に置かれる実施形態では、リアクターを囲む培地の密度を減少させるために、淡水以外の添加物が周辺水に添加される。例えば、水より低い密度の非水性液体が閉鎖型水塊に添加され、リアクターを囲む培地の密度を減少させる。
【0077】
光バイオリアクターが開始位置として閉鎖型淡水塊の表面より下に位置する実施形態では、リアクターを囲む培地の密度を増加させるために、海水(すなわち塩水)以外の添加物が閉鎖型淡水塊に添加される。例えば、水より高い密度の非水性液体が閉鎖型水塊に添加され、リアクターを囲む培地の密度を増加させる。
【0078】
開放型水における閉鎖型光バイオリアクター
「開放型水」という用語は、水の化学的または物理的性質の有効な制御が困難または不可能である天然の水塊、例えば湖、川または海を意味する。
【0079】
一実施形態において、光バイオリアクターは開始位置として開放型淡水の表面に置かれる。光バイオリアクターが開放型淡水の表面に置かれる場合または浮く場合、光バイオリアクターの密度は淡水の密度よりも低い。光バイオリアクターの位置を低くする必要がある場合、光バイオリアクターと開放型淡水との間の密度差が調節される。例として、培養液の測定温度が所定の温度値より高いまたは高いと予想される場合、光バイオリアクターの位置を低くする必要があってよい。光バイオリアクターと周辺水との間の密度差を調節するために、培養液の塩分が増大される。これは、培養液をより高い塩分の培養液で置換または補充することにより、すなわちより高い塩分の培養液を光バイオリアクターに送り込むことにより達成される。培養液の流速は、藻類が培養液においてより高い塩濃度に適合することを可能にするように、および光バイオリアクターにおける藻類のあらゆる損失を最小化するように設定される。培養液がより高い塩分の培養液で置換または補充されることで、光バイオリアクターの密度は増大する。培養液の密度、光バイオリアクターの総合密度並びに開放型淡水の密度が連続的に測定され、光バイオリアクターと周辺水との間の密度差が連続的に決定される。光バイオリアクターは、周辺水よりも密度が高いため開放型淡水中で沈み、光バイオリアクターの位置は低下する。培養液の測定された温度が好ましい温度範囲内となるまで、光バイオリアクターの位置を低下させてよい。
【0080】
別の実施形態において、光バイオリアクターは開始位置として開放型海水(すなわち塩水)の表面より下に配置される。光バイオリアクターが開放型海水の表面より下に位置する場合、光バイオリアクターの密度は海水よりも高い。光バイオリアクターの位置を上げる必要がある場合、光バイオリアクターと海水との間の密度差が調節される。例として、培養液の測定温度が所定の温度値より低い場合または低いと予想される場合、光バイオリアクターの位置を上昇させる必要があってよい。光バイオリアクターと海水との間の密度差を調節するために、培養液の塩分が低減される。これは、培養液をより低い塩分の培養液で置換または補充することにより、すなわちより低い塩分の培養液を光バイオリアクターに送り込むことにより達成される。培養液の流速は、藻類を培養液においてより低い塩濃度に適合させ、かつ光バイオリアクターにおける藻類のあらゆる損失を最小化するように設定される。培養液がより低い塩分の培養液と置換されることで、光バイオリアクターの密度は減少する。培養液の密度、光バイオリアクターの総合密度並びに海水の密度が連続的に測定され、光バイオリアクターと周辺水との間の密度差が連続的に決定される。光バイオリアクターの位置は、周辺水よりも密度が低いために海水において上昇する。培養液の測定された温度が好ましい温度範囲内となるまで、海水における光バイオリアクターの上昇を続けてよい。
【0081】
制御システム
一実施形態において、培養液の塩分が多目的システムによって調節され、それによって光バイオリアクターの位置が間接的に調節される。このシステムは、光バイオリアクターの全重量および密度並びに光バイオリアクターに含まれる培養液およびバイオマスの量といった光バイオリアクターに関する情報とともにプログラムされる。さらに、システムは、培養液の温度、塩分、密度および周辺水の密度を連続的に測定し、それによって光バイオリアクターと周辺水との間の密度差を連続的に決定する。システムは、さらに、塩分濃度といった培養液の種々の成分の濃度を制御する。さらに、システムは培養液の温度における変化に応答して、周辺水における光バイオリアクターの位置を自動的に調節し、藻類培養物を一定温度で維持してもよい。システムは、したがって、既知の制御回路またはアルゴリズム、例えばフィードバック機構を有する制御アルゴリズムを備えてよく、光バイオリアクターの位置を調節する場合に最適な安定を可能にする。
【0082】
さらなる実施形態において、光バイオリアクターが閉鎖型水塊にある場合、周辺水の塩分および温度は上述の多目的システムによって調節される。付加的なコンパートメントまたはチューブを有する光バイオリアクターの実施形態において、制御システムは、さらに、コンパートメントまたはチューブのガス、水およびその他の液体の充填および排出を調節する。一実施形態において、多目的システムは、光バイオリアクターの位置に関するパラメーターだけでなく、藻類の増殖に関連するパラメーターも制御する。したがって、制御システムは、さらに、藻類培養物のO2およびCO2の含有量を測定し調節する。
【0083】
光バイオリアクターの位置および/または形状を制御するための付加的な手段
本発明による光バイオリアクターの垂直位置および/または形状は、培養液とリアクターが配置される周辺水との間の適切な密度差を提供することによって制御してよい。しかしながら、光バイオリアクターの位置および/または形状を制御するための付加的な手段がしばしば有用かもしれない。これは、例えば光バイオリアクターを迅速に沈める必要がある場合に該当する可能性がある。そのような手段は、光バイオリアクターの水没または浮揚の支援のために高いまたは低い密度の培地を充填することができる付加的なコンパートメントまたはチューブ、光バイオリアクターの水没または浮揚を支援するための機械的手段およびリアクターが沈められる場合にその形状を制御するための光バイオリアクターの藻類コンパートメント内のサブコンパートメントを含んでよい。これらの3種の手段は以下に詳細に議論されるだろう。
【0084】
高いまたは低い密度の培地を充填することができる付加的なコンパートメントまたはチューブ
一実施形態において、光バイオリアクターは、光バイオリアクターの位置を変更する速度を増大するための手段を提供する付加的なコンパートメントまたはチューブを備える。コンパートメントまたはチューブは、ガス、水またはその他の液体を含んでよい。光バイオリアクターが水面に配置される場合、コンパートメントまたはチューブは単にガスを含んでよい。光バイオリアクターの位置を低下させる必要がある場合、コンパートメントまたはチューブは、水または高密度の液体で満たされ、これによって、光バイオリアクターの総合密度を増大させる。光バイオリアクターが水の表面より下にあり、光バイオリアクターの位置を上げる必要がある場合、コンパートメントまたはチューブにおける水または高密度の液体が押し込まれ、ガスと置換され、これによって、光バイオリアクターの総合密度が減少する。したがって、付加的なコンパートメントまたはチューブは、光バイオリアクターと周辺水との間の密度差の調整速度を増大させる。それ故、培養液の温度の短期的な変化に応じる場合といった、光バイオリアクターの位置を迅速に適応させる必要がある場合に、付加的なコンパートメントまたはチューブを使用してよい。「短期的な変化」とは分または時間のスケールでの変化を意味する。付加的なコンパートメントまたはチューブは、光バイオリアクターのあらゆる位置に配置できる。付加的なコンパートメントまたはチューブは、光バイオリアクターの他の部分と同様の材料であってよく、またはより強固で可能性としてさらに丈夫な異なる材料であってよい。付加的なコンパートメントまたはチューブは、互いに液体がつながった複数のチューブのシステムを含んでよく、構造的な安定を提供するための内部の固着点もしくは溶接点または同様の技術によって行われる接続を有する広いコンパートメントを含んでよい。
【0085】
図3に示される実施形態では、付加的なコンパートメントが光バイオリアクターの上に配置される。この実施形態において、リアクターシステム全体の密度は、藻類コンパートメント(20)と独立して、付加的なコンパートメント(19)に高密度の液体(好ましくは塩水)を添加することで変化させることができる。コンパートメントが充填されると、沈めるプロセスを促進するようにリアクターシステム全体の密度を増大させるだろう。この実施形態において、付加的なコンパートメントは光バイオリアクターの上に配置される。付加的なコンパートメントは、構造的な安定を提供するために内部の固着点(21)を含む。付加的なコンパートメントまたはチューブは、リアクターの一側面にバルブ(23)およびリアクターの反対側に同様の接続が提供される1以上のホース(22)によって、高密度の液体の供給に接続されてよい。この実施形態による光バイオリアクターの水没の促進のために使用される場合、付加的なコンパートメントは一側面から水が満たされ、反対側面のバルブも開かれるだろう。一側面から充填プロセスを始めることで、この側面は最初に水没するだろう。付加的なコンパートメントに残る空気は、それゆえ光バイオリアクターの一側面にて回収され、より効率的に押されてよい。空気がすべて排出され、リアクター全体が沈み始めるまで、充填プロセスが継続されるだろう。その後、充填ホースの反対のバルブが閉められる。充填プロセスは、この時点で停止してよく、またはしばらくの間継続してよい。充填プロセスの継続は付加的なコンパートメントにおける圧力を増大させ、これによって、このコンパートメントの強剛性を増加させ、水没の間および部分的または完全に水没した様式において、光バイオリアクターに付加的な構造的な安定を供給することを可能にする。
【0086】
リアクターシステムを上昇すべき場合、付加的なコンパートメントの塩水はポンプによって汲み出され、ポンプの反対側のバルブは、気泡が新たなコンパートメントに入ることを回避するために閉じられるだろう。上昇過程の促進のためにポンプの反対側のバルブが開かれ、それぞれのホースを通って加圧された空気または燃焼ガスが押し込まれるだろう。
【0087】
光バイオリアクターの水没または浮揚を支援するための機械的手段
藻類の増殖条件(例えば温度)を最適化するためにまたは強風といった天候に関する条件のために、光バイオリアクターの位置を迅速に適応させる必要がある場合、光バイオリアクターは水没または浮揚の促進のための機械的手段を備えてよい。そのような機械的手段は、例えば、光バイオリアクター上に伸び、下降または上昇のために配置され、光バイオリアクターの水没または浮揚を支援する、ネットまたは少なくとも1つの細長い部材(例えばロープ、ケーブルまたはロッド)を含んでよい。一般に、平行に配置され、光バイオリアクターの長さに渡って適切な距離で分散された、2つ以上の細長い部材を有していることが有用であるだろう。例えば光バイオリアクター全体が同時に沈められるように、またはリアクターの一側面が最初に水没し、リアクターの反対の側面がその後沈められるように、細長い部材は同時にまたは順に下降または上昇されてよい。
【0088】
特異的な実施形態が図4aに示される。バイオリアクター(24)上に、規則的な距離でロープ(25)が備えられており、この距離は例えば1−2メーター毎とすることができる。ロープは少なくともリアクターのサイズの長さを有しており、両端が垂直プロファイル(26)に接続される。光バイオリアクターが沈められる場合、ロープは、リアクターの各々の横の垂直プロファイルによってそれぞれ引き下げられ、リアクター(27)はロープによって押し下げられる。ロープを固定および移動させるために、様々な配置を使用してよい。1つの特異的な実施形態において、図4bに示されるように、ロープは、プラスチックまたは金属のプロファイルに沿って垂直に移動可能なT型構造(29)に固定してよい。プラスチックまたは金属プロファイルは、地面に垂直に固定され、移動可能な構造が上下に移動できるレールを含む。ロープは移動可能な構造に固定される。構造を移動させるために、エネルギーおよび機械的システムが必要である。機械的システムは各々のプロファイルにおけるピストン(30)とすることができ、または中央の1つのピストンがいくつかのプロファイルに機械的な作用を供給してよい。各々のピストンは、加圧されたガス(31)によって駆動してよい。加圧されたガスは、例えばガスチューブ、コンプレッサーによって提供されてよく、または、エミッター、例えば発電所からの加圧されたCO2に富むガスであってよい。CO2供給源は、好ましくは培養液にCO2を供給するために使用されるものと同じでもよい。
【0089】
2本以上のロープを有する実施形態において、ロープの移動は様々な方法で行なうことができる。ロープはすべて同等の速度で下へ移動させ、光バイオリアクター全体を同時に下げてよい。しかしながら、リアクターの一側面のロープを最初に降下し、それによって最初にその側面からリアクター降ろし、続いて他の側も同様に降ろすことがしばしば有利であることがわかっている。そのような段階的な手順方法はいくつかの長所を有する。リアクターの一側面が最初に降下される場合、リアクターの内部のトラップされた全てのガスが反対側面に移るだろう。そのようなシステムにおいてガス出口をこの反対側面に特異的に配置することができる。この配置は、過剰なガスを、リアクターの移動によって押し出すことを可能にする。これは、光バイオリアクター全体が同時に下げられ、それによってガス泡または塊がリアクター内のランダムな位置で生じる可能性がある場合に比べて有利であってよい。同様な原則によって、すべての培養培地が所定の位置で回収され、培養培地の位置の制御は、潜在的な後の分割を容易にするだろう。更に、すべてのバイオマスがリアクターの一側面に集まるため、採取の進行が促進される。最後に、一側面にて最初にリアクターを下げることは、必要となる力が小さく、より制御される様式で周辺水がリアクターの周囲を流れることを可能にし、生じる乱流を低減し、このプロセスを、リアクター全体が同時に下げられるプロセスよりも安定にすることができる。光バイオリアクターは非常に柔軟であり、乱流および素早く動く水によって悪影響を及ぼされる可能性があるため、これは重要な利点である。
【0090】
付加的なコンパートメントまたはチューブ、並びに上述の機械的手段は、水没または浮揚の促進の他に、水没の間および部分的または完全に水没した様式における、光バイオリアクターの物理的形状を安定させるという付加的な利点を提供する。
【0091】
サブコンパートメント
本発明の光バイオリアクターは非常に柔軟であるため、リアクターの形状は、内部および外部の衝撃および不均質性によって影響を受ける可能性がある。従って、光バイオリアクターの形状および最適な機能の保持のために、そのような衝撃および不均質性の制御が重要となる可能性がある。それ故、本発明の光バイオリアクターの操作の種々の側面に関する本発明の多数の実施形態が以下に記述される。
【0092】
薄く柔軟なリアクター材料の使用により、リアクターは、広々とした水面上に浮遊する場合、完全な平らで均質のシステムを形成する。しかしながら、リアクターシステムを不安定にすることに寄与する2つの主要な作用がある。a)光バイオリアクターの形状および挙動は、光バイオリアクター内部の大きなガス泡の形成に影響を受ける可能性がある。培養培地を通してガスCO2を泡立たせることは、藻類培養物の最適な成長率を支援するのに十分なCO2を供給するために好ましい。光バイオリアクターへのガスの一定の流入は、培養液上に1以上の大きなガス泡の形成をもたらす可能性がある。ガス泡を制御するために、様々な溶液を考慮することができる。1以上のガス出口を光バイオリアクターに接続してよい。出口の数および位置並びに出口の内径は、泡のサイズに影響を及ぼす重要な因子である。ガス泡のサイズおよび挙動を制御する別の方法は、光バイオリアクターをより小さなサブコンパートメントに分離することである。これは多数様々な方法で達成でき、その少数の例が以下に詳述される。b)培養培地の集塊が生じる可能性がある。リアクターが広々とした水面上に浮遊する限り、培養培地は、光バイオリアクターの内部で均一に分散されるだろう。リアクターが周辺水内に下げられる場合、例えば培養培地の温度を低くする必要がありまたは強風のために、この分布がゆがめられる可能性さえ存在する。この問題は一般に、光バイオリアクターの内部の1つの場所にて藻類培養培地を回収し、それにより大きな塊を形成することで、生じるだろう。これは、光バイオリアクターの形状および適切な機能をゆがめる可能性がある。特に大規模リアクターにおける、リアクターの形状および安全で適切な機能の維持のために、そのような集塊は回避されるべきである。
【0093】
集塊および大きなガス泡の形成の問題は、光バイオリアクターをより小さなサブコンパートメントに分離することにより低減または解消できる可能性があることがわかっている。
【0094】
その最も一般的な実施形態において、光バイオリアクターは、それの周囲に沿って互いに接続され、閉じられたバッグ状のコンパートメントを形成する上部シートおよび下部シートを一般に含む1つの大きな藻類コンパートメントを含む。
【0095】
図5に示される実施形態において、1つの大きなコンパートメントを含むバイオリアクターの代わりに、藻類コンパートメントは、セパレーター(33)により、多数種々の閉鎖したコンパートメント(32)に分離され、これは、例えば、光バイオリアクターの上部および下部シートを相互に固着または溶接して、2以上のより小さなサブコンパートメントを形成している。そのように形成されたサブコンパートメントは、多くの小さな光バイオリアクターとして機能し、すなわち、藻類を有する培養培地は1つのサブコンパートメントにおいてのみ塊を形成できる。サブコンパートメントはより小さな容量を有しているため、大きな塊の形成は回避される。
【0096】
光バイオリアクターは、さらに例えば、特異的な位置で上部および下部シートを相互に固着または溶接することにより、部分的に分割してよい。部分的な分割は、光バイオリアクター内の培養培地の流れおよび潜在的なガス泡を制限する可能性があるが、必ずしも完全に停止させるわけではない。
【0097】
図6aおよび6bは、光バイオリアクターが部分的に分割された本発明の実施形態を示す。藻類コンパートメント(36)を包む光バイオリアクターの上部(34)および下部(35)シートは、光バイオリアクター(37)の端で接続している。中間において、2枚のシートは、例えば固着または溶接により光バイオリアクターの内部の様々な点(38)で接続される。この実施形態による藻類コンパートメントは、浮遊する場合に必要となる均一に広がるための柔軟性を有するが、リアクター内の培養培地が大きな塊を形成することを抑制するだろう。というのは、底および蓋の層が接続されており、層の中間には限定的な量の液体しか存在しないためである。上部および下部シートの固着または溶接は、形成された光バイオリアクターサブコンパートメントにおける様々な形状を得るために、あらゆる数の種々パターンで行うことができる。
【0098】
まず、接続している領域の形状(すなわち固着点または溶接点)を変更することができる。その他の可能性を除外することなく例を単に提供すると、上部および下部の層の接続は、例えば直径1cmの小円の形状(すなわち単純な固着点の形状)とすることができる。形状はさらに、固着または溶接された部分が完全な線もしくは破線またはそれの一部を形成することを意味する長方形であってよい。
【0099】
第2に、光バイオリアクターの内部の固着または溶接された部分の位置を変更することができる。固着または溶接された点は、リアクター全体において規則的に分散させてよく、または例えば反対側面におけるバイオマスまたは空気の収集を容易にするために、一側面に集中させることができる。同様な方法において、固着または溶接された線を規則的に配置して、チューブ型パターンを形成してよい。例えば、固着または溶接された線を提供することで、光バイオリアクターにおける液体の流れを優先させるように、その他のパターンを構築してよい。これは、ギリシア(英国の庭種類)迷宮の構造にたとえることができ、これは、液体がリアクターシステムを通過する潜在的な道が唯一存在する。そのようなパターンを付加することは様々な長所をもたらす。一定の流れ方向の定義は、バイオマスの採取または新規の栄養素の追加を容易にする可能性がある。これは、これがリアクターの予め決められた位置で行われるかもしれないためである。
【0100】
別の実施形態において、光バイオリアクターの藻類コンパートメントは1つの大きな柔軟なコンパートメントから成る。光バイオリアクターが広々とした水面上に浮遊する場合、このコンパートメントは、1つの大きなコンパートメントとして機能してよく、液体およびガスはその内部で自由に移動してよい。光バイオリアクターが周辺水に降下させる場合、大きなガス泡の形成または培養培地の集塊に関する潜在的な問題の回避のために、リアクターを周辺水に降下させる前に、光バイオリアクターの藻類コンパートメントを2つ以上の様々なサブセクションに一時的に分割してよい。この分割は、例えば、光バイオリアクターの柔軟な上面に力を加えて、光バイオリアクターの上部シートを下部シートの方へ押し下げ、2以上の仮想のサブコンパートメントをリアクターの藻類コンパートメント内に形成することで達成してよい。
【0101】
力は、例えば、光バイオリアクターの上部表面を介して配置され、下方へ引かれるように配置された少なくとも1つの細長い部材(例えばロープ、ケーブルまたはロッド)によって適用してよい。特異的な実施形態が図4aに示される。光バイオリアクター(24)上に、規則的な距離のロープ(25)が設けられ、これは例えば1−2メーター毎の距離とすることができる。ロープは少なくともリアクターのサイズの長さを有し、両端において垂直のプロファイル(26)に接続される。リアクターの浮力を減少させる前に、ロープを水面より下の位置に降ろし、ロープは柔軟な光バイオリアクターを「切り」リアクターの上部シートがリアクターの下部シートに対して押し下げられるだろう。仮想のサブコンパートメント(27)がロープによって作られ、ここにおいて、培養培地(28)は周辺水よりも密度が低く、ロープを追わないため、留まる傾向がある。光バイオリアクターの密度が減少し、そのために浮力が減少してリアクターが沈み始めるとき、作られた仮想のサブコンパートメントは、より小さな独立したコンパートメントとして振る舞う。
【0102】
ロープを固定および移動させるために、様々な配置を使用してよい。1つの特異的な実施形態において、図4bに示されるように、ロープを、プラスチックまたは金属のプロファイルに沿って垂直に移動可能なT−状構造(29)に固定してよい。プラスチックまたは金属プロファイルは、地面に垂直に固定され、移動可能な構造が上下に移動できるレールを含む。ロープは移動可能な構造に固定される。構造を移動させるために、エネルギーおよび機械的システムが必要となる。機械的システムは各々のプロファイルにおけるピストン(30)とすることができ、または、中央の1つのピストンが、いくつかのプロファイルのために機械的な力を供給することができる。加圧されたガス(31)によって、各々ピストンに動力を供給することができる。加圧されたガスは、例えば、ガスチューブ、コンプレッサーによって提供してよく、または、それは、エミッター、例えば発電所からの加圧されたCO2に富むガスであってよい。CO2供給源は、好ましくは、培養液にCO2を供給するために使用されたものと同一であってもよい。
【0103】
図8に、リアクターを周辺水に下げる前に、光バイオリアクターを2以上の様々なサブセクションまたはコンパートメントに一時的に分割する一般的な原則に基づく別の実施形態が示される。この実施形態において、コンパートメント(39)はロープによって形成されない。代わりに、コンパートメントは付加的なコンパートメントまたはチューブ(40)によって形成され、それは、藻類コンパートメント(41)上部に位置し、光バイオリアクターの藻類コンパートメントにおける培養培地より高い密度を有する液体で満たすことができる。高密度の液体で満たされた場合、これらの付加的なコンパートメントまたはチューブは下へ沈み、光バイオリアクターの上部シートを下部シートに向けて押し付け、藻類コンパートメント内に仮想のサブコンパートメントを形成するだろう。
【0104】
さらなる実施形態の項目化されたリスト
本発明のさらなる実施形態が、以下の番号が付けられた項目のリストに開示される。
【0105】
1a.以下を特徴とする、光合成微生物の培養のための光バイオリアクター:
a)前記光バイオリアクターは、非チューブ状ユニットから成り、閉鎖型システムを表わし、且つ外部的に部分的に水に囲まれ、光バイオリアクターは、水塊(例えば、人工池、川、湖、海または水で満たされたくぼみ)に浮遊し、水に浮留し、または水塊の地面に位置する;
b)屈光性の生物のバイオマスが製造され、それは、あらゆる種類の生物燃料、飼料、タンパク質、アミノ酸、基本的な人間栄養のための成分(例えばタンパク質、オイル)の製造に有用であるが、栄養剤として使用されない(例えばビタミンまたはオメガ−3−脂肪酸)。
【0106】
1b.以下を特徴とする、ファインケミカルスおよび製薬の生産のための光合成微生物の培養のための光バイオリアクター:
a)光バイオリアクターは非チューブ状ユニットから成り、閉鎖型システムを表わし、且つ外部的に部分的に水に囲まれ、光バイオリアクターは、水塊(例えば、人工池、川、湖、海または水で満たされたくぼみ)に浮遊し、水に浮留し、または水塊の地面に位置する;
b)屈光性の生物のバイオマスが製造され、それは、ファインケミカルス、栄養剤、ビタミン、オメガ−3−脂肪酸、酸化防止剤(例えばカロテノイド)医薬的活性物質または栄養上の補給のための乾燥バイオマスの生産のために使用される。
【0107】
2.前記光バイオリアクターが、非チューブ状ユニットの代わりにチューブ状ユニットから成ることを特徴とする、項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【0108】
3.前記光バイオリアクターが平らな形状(フラットパネル)を有することを特徴とする項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【0109】
4.前記光バイオリアクターを囲む水塊が、前記光バイオリアクターにおける培養液の温度を制御するために使用することができることを特徴とする項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【0110】
5.前記光バイオリアクターを囲む水塊は前記光バイオリアクターを水平にするために使用でき、前記光バイオリアクターが水平位において維持されることを特徴とする項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【0111】
6.前記光バイオリアクターを囲む水塊は、前記光バイオリアクターの静水学的内圧を打ち消すことを特徴とする項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【0112】
7.前記光バイオリアクターを囲む水塊が、それ自身の重量によって引き起こされた静水圧によって、前記光バイオリアクター材料の機械的ストレスを減らすために使用されることを特徴とする項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【0113】
8.前記光バイオリアクターにおける培養液と(部分的な)周囲の水塊との間の密度の差(例えば塩分または温度の差によって生じる差)が、周辺水における前記光バイオリアクターの位置を制御する(例えば表面に浮遊する、周囲の水塊に沈む、周囲の水塊に浮留する)ように提供されることを特徴とする項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【0114】
9.前記光バイオリアクターが柔軟な材料から成り、前記光バイオリアクターにおける培養液の垂直の厚さを、前記光バイオリアクター中の培養液の量の変化によって変えることができることを特徴とする項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【0115】
10.前記光バイオリアクターは、湖、川または海といった水面で操作することができ、それ故、必ずしも土地を必要としないことを特徴とする項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【0116】
11.前記光バイオリアクターにおける培養培地は、水平速度>0cm/sを有し、エアリフト、ポンプまたは同様の装置によって移動されることを特徴とする項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【0117】
12.前記光バイオリアクターを囲む水塊は、その全体の水平の面積にわたって、前記光バイオリアクターにおける培養液の垂直の厚さをほぼ同一に維持することに寄与することを特徴とする項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【実施例】
【0118】
柔軟なポリエチレンフィルムで作られ、7メーターx5メーターの寸法を有する柔軟な閉鎖型フラットパネル光バイオリアクターを、35g/lの塩分を有する水を含む水盤の表面に置いた。光バイオリアクターの藻類コンパートメントに、メチルブルーで着色した1,800リットルの淡水を供給した。有色の溶液(培養液を表わす)を含む光バイオリアクターは、周辺水の表面に浮遊するように自身を配置し、培養培地はリアクターの底の表面に均質に分散した。
【0119】
塩が飽和した水を藻類コンパートメントの上部側に位置する付加的なコンパートメントに供給することにより、光バイオリアクターを周辺水中に降下させた。塩水は、付加的なコンパートメントのより長い側面に沿って等しく分散された5つの液体ポートを経由して、付加的なコンパートメントの一側面のみから送られた。リアクターシステムは、より重い塩水が送り込まれた側面から沈み始めた。プロセスの間、より多くの塩水が送り込まれ、付加的なコンパートメントは完全に満たされ、藻類コンパートメントの反対側面が同様に沈み始めた。完全に沈むと、光バイオリアクターはその一般的なフラットパネル形状を回復した。
【0120】
その後、上に記述された5つの液体ポートを経由して塩水を除去することで、光バイオリアクターをその当初の状態に戻し、周辺水の表面で浮遊した。塩水の除去のために、完全に加圧された空気を付加的なコンパートメントを通して押した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光合成微生物の培養のための閉鎖型光バイオリアクターの操作方法および光合成微生物の培養のための閉鎖型光バイオリアクターに関する。
【背景技術】
【0002】
光合成微生物は、今日までに既に、多くの商業用の用途が見出されていることが知られている。すなわち、藻類は、β−カロチン、アスタキサンチン等の製造のために生産されており、または完全な藻類バイオマスは栄養剤として売られている。今日、藻類バイオマスの生産は2つの主な障害に直面している。第1に、現在の生産の大部分は開放型システム(例えば、いわゆる開けた池)に基づいている。これらの開放型システムは、その他の藻類株または害虫による汚染に敏感であり、それ故、非常に特異的な増殖要求を有する藻類だけが、これらのシステムにおいて成長することができる。すなわち、例えば、藻類ドナリエラは、その他のほとんどの生物の生育には適さない非常に塩性の条件下で、β−カロチンの生産のために培養されている。第2に、藻類バイオマスの生産コストは、非常に高く(1メートルトン当たり>USD2,000)、多くの用途のための商業的生産、特にエネルギー・セクターまたは輸送セクターにおける商業的生産は有益ではない。特に、汚染を避けるために開放型システムの代わりに閉鎖型システムが使用される場合、生産費はしばしばより増大する。開けた池の他に、多数の様々な光バイオリアクターの種類が現在使用されている。チューブ・リアクター(1以上の水平のチューブから成るもの、または円柱または円錐に螺旋状に巻きつけられるもの(biocoil))が、とりわけ最もよく知られている。さらに、フラットパネルリアクターがしばしば使用され、そのリアクターは藻類の培養のための垂直液体層を提供する。
【0003】
藻類からの化学薬品およびエネルギーの生産における主な障害は、汚染のリスクおよび藻類バイオマスの生産のための高いコストである。同様に、ファインケミカルス、栄養剤、ビタミン、オメガ−3−脂肪酸、酸化防止剤(例えばカロテノイド)、医薬的作用物質または栄養上の補給のための乾燥バイオマスの藻類からの生産における主要な障害は、汚染のリスクおよび藻類バイオマスの生産のための高いコストである。生物燃料、飼料、アミノ酸、メタン生産等のための藻類の培養の場合にも、同様の障害が当てはまる。
【0004】
WO2005/121309は、藻類生産のための装置であって、藻類を含む液体が増殖容器に入れられ、そこへCO2を含むガスが供給され、当該ガスはガス調節装置を介して容器を循環する装置を開示している。実施形態において、容器はシート・バッグを形成する二重のプラスチックシートから作られている。海での微小藻類の生産に適していると言われる実施形態において、接合されたシート・バッグは水面に水平に浮かぶように置かれる。
【0005】
US4,868,123は、光合成による微生物の生産のための装置を開示している。当該装置は、光を透過し、培養培地が循環する第1の群の可撓管と、着脱式Y型内挿部材によって第1の群の下に配置および維持され、規則的に配置される第2の群の膨張式チューブとを有する、広々とした水面に配置されるバイオリアクターを含む。当該文献によると、培養培地の温度が最大基準温度を超えると、光バイオリアクターは第2の群のチューブの収縮によって沈められる。反対に、培地の温度が最小基準温度未満である場合、第2の群のチューブは圧縮空気により膨張する。光バイオリアクターの液浸は、第2の群のチューブへの相対的に重い液体の導入によって保証される一方、浮遊は空気以外の軽い液体の注入により保証される。
【0006】
微生物のラージスケール培養は非常にコストに影響を受けるため、より簡単でより安価なバイオリアクター装置の需要が存在する。
【発明の概要】
【0007】
今日、光合成微生物の培養は、バイオマスの生産のための高いコストによって特徴づけられる。新規の光バイオリアクターは、バイオマスのための生産費を著しく引き下げることができるだろう。さらに、閉鎖型のプロセスデザインによって、開放型システムと比較して、汚染のリスクを大きく縮小することができる。
【0008】
汚染を避けるために、閉鎖型光バイオリアクターが使用され、これは、例えば、ポリエチレンといったプラスチックから製造されてもよい。光バイオリアクターが水塊(例えば人工池)の中または水面で遊泳するため、大きなコストの低下が達成される。この構成原則によって、光バイオリアクターを正確に水平にするためのコストを避けることができる。光バイオリアクターの静水学的内圧が周辺水によって部分的に補われることで、光バイオリアクターの壁の強度を低下でき、またはより安定性の小さい材料を使用することができる。光バイオリアクターの周辺水は熱を供給または除去できるため、付加的な温度調節を余分なものにする。柔軟性材料を光バイオリアクターに使用すること、並びに周囲の水塊における光バイオリアクターの位置を変更できることおよび培養液の層の厚さを変更できることにより、光バイオリアクターの操作条件は、日射または温度といった環境要因、生産力増大のための因子に応じて最適化でき、コストのさらなる減少をもたらす。我々の惑星の70%以上が水に覆われていることを考慮すれば、水面上で光バイオリアクターを操作できることにより、非常に大きな領域をそのような光バイオリアクターシステムの実現に利用できる。
【0009】
記述される光バイオリアクターは、基本的な人間栄養のためのあらゆる種の生物燃料、飼料、タンパク質、アミノ酸の製造に使用できる光合成生物からのバイオマスの生産、並びにファインケミカルス、栄養剤、ビタミン、オメガ−3−脂肪酸、酸化防止剤(例えばカロテノイド)、医薬的に活性のある物質成分または栄養剤として使用するための乾燥バイオマスの製造のために使用される光合成生物からのバイオマスの生産に貢献するかもしれない。
【0010】
したがって、本発明の目的は、閉鎖型光バイオリアクターの内容物(例えば培養培地およびそこで培養される微生物)の温度制御を容易にすることである。本発明の関連する目的は、その内容物の温度を調節するために、閉鎖型光バイオリアクターの一部または全部を囲む水の冷却能力を利用することである。
【0011】
本発明のその他の目的は、水に一部または全部が囲まれる閉鎖型光バイオリアクターの垂直位置の制御を可能にすることである。特に本発明は、光バイオリアクター自体の内容物(例えば培養培地)および周辺水以外の浮力調節手段を必要とすることなく、そのような位置制御を可能にすることを目的とする。
【0012】
さらに、本発明の別の目的は、光バイオリアクターが水塊に浮遊する場合に、培養液の厚さの分布を自動的に均質にする光バイオリアクターを提供することである。
【0013】
本発明の光バイオリアクターまたはその一部は、好ましくは柔軟性材料で作られてよいため、リアクターの形状は、内部および外部の影響および不均質性によって影響を受けてもよい。それゆえ、光バイオリアクターの形状および最適な機能を保持するために、そのような影響および不均質性の制御が重要となる可能性がある。したがって、柔軟性の光バイオリアクターの位置および/または形状の付加的な制御のための手段を提供することが本開示の目的である。
【0014】
本発明のさらなる目的は、閉鎖型光バイオリアクターおよびその周辺装置の構成を単純化し且つコストをより低くすることである。
【0015】
本発明のその他の目的または利点は、下記の説明によって当業者に明白となるに違いない。
【0016】
ここで使用される光バイオリアクターという用語は、一般に、藻類培養液を含むことに適し、そこで光合成が生じる光バイオリアクターのコンパートメントであって、あらゆる付加的なコンパートメントまたはチューブ、サブコンパートメントまたは光バイオリアクターの位置および/または形状の制御のための機械的手段を含むコンパートメントを意味するが、当該用語はさらに、あらゆる付加的なコンパートメントまたはチューブ、サブコンパートメントまたは光バイオリアクターの位置および/または形状の制御のための機械的手段を含む前記藻類コンパートメント、並びに例えばポンプ、ホース、タンクといった周辺装置およびリアクターの操作のために必要となるその他の装置を含むより広い意味における光バイオリアクターシステムを指してよい。
【0017】
本発明の第1の側面として、光合成微生物の培養のための閉鎖型光バイオリアクターの操作方法であって、前記光バイオリアクターは培養液を含み、前記光バイオリアクターは水塊の水に部分的または完全に囲まれ、ここにおいて、水塊における光バイオリアクターの位置が制御されるように培養液と周辺水との間の密度差が提供される方法が提供される。
【0018】
本発明が基礎とする主な原則は、周辺水の密度に対して光バイオリアクターの密度を制御することによる、例えばリアクターの内部および外部に異なる塩分濃度を提供することによる、周囲の水塊における柔軟で軽量の光バイオリアクターの垂直位置を制御する能力である。淡水または汽水(低密度)を含むリアクターは、塩水から成る水塊(高密度)に容易に浮遊することが示されている。さらに、本発明による光バイオリアクターは自身を安定化することがわかっており、このことは、それが実験の初めに配置された位置にかかわらず完全な水平位をとり、リアクターの内部の培養液の層の厚さは開始時と無関係に再び非常に均質になることを意味する。したがって、光バイオリアクターが淡水を含み且つ周囲の水塊が塩水を含む場合、リアクター自身および周囲の水塊にて異なる塩分を使用して、2つの水塊にて異なる密度を使用することにより、光バイオリアクターの柔軟で透明な壁に閉じ込められた安定した淡水レンズが周囲の塩水塊にて形成されるだろう。
【0019】
リアクターを安定させ且つ培養液層の均質の厚さを得るために密度差を使用するという本発明の概念は、非常に簡単で非常にコストが効率的な光バイオリアクターシステムの提供を可能とする。第1に、システムにおける淡水は、最適な(水平)構造自体を形成すると考えられ、このことは、薄く低価格な材料をリアクターに使用するできることを意味する。第2に、リアクターは藻類の成長に最適な位置に自動的に移動すると考えられ、これによって、リアクターを好ましい位置に配置するための機械設備またはプロセス制御装置の必要性が最小化される。第3に、培養液層の均質の厚さ、並びに光バイオリアクターにおける培養液の量を変えることにより培養液層の厚さを最適化する可能性は、培養液における高いバイオマス密度を可能にし、このことは、本発明による光バイオリアクターはより多くのバイオマスを含み、それゆえより高いエネルギー効率を有する可能性があることを意味する。
【0020】
塩分および/または温度の差によって引き起こされる光バイオリアクターの内部と外側との水の小さな密度差は、リアクターを動かす唯一の動力源であるため、光バイオリアクターの壁に薄い柔軟性の材料を有することが好ましい。薄く柔軟性の壁を有することは、光バイオリアクター自身で安定化する能力を最適化するだろう。光バイオリアクターの壁の使用に適した材料の一例は、約0.1mmの厚さを有するポリエチレンまたは同等の材料である。
【0021】
培養液と周辺水との間の前記密度差を提供して水塊における光バイオリアクターの位置を制御することにより、周辺水に関した光バイオリアクターの浮力の変化が作られ、この浮力の変化はリアクターの垂直な位置の変化の原動力である。したがって、提供される密度差は、光バイオリアクター自体の重量および浮力が考慮に入れられる。したがって、本発明は、周辺水における光バイオリアクターの位置を制御するための簡単で安価な解決策を提示する。同様に、光バイオリアクターの内容物の冷却は、周辺水において光バイオリアクターの位置を低下させることにより、効率的に且つ低コスト達成できる可能性がある。
【0022】
さらに、システムの閉鎖的なプロセスの設計は、汚染のリスクを著しく減らす。光バイオリアクターが(部分的に)水に囲まれるという事実は様々な効果により生産費を縮小する:光バイオリアクターを水に浮かべるまたは浮留させることによって、土地を水平にするための高価な建設工事が不要となる。光バイオリアクターは周囲の水塊における閉鎖型システムとして浮遊または浮留するため、周囲の水塊を表わすプールを非常に簡単に且つコストが効率的な方法で用意してもよい。極端な場合、川、湖、海または水で満たされた天然の土のくぼみを外部の水塊として使用することができる。周囲の水塊は最適に熱を提供および除去することができるため、温度調節のためのさらなるコストを必要としない。光バイオリアクターの静水学的な内圧が周辺水によって部分的に補われるため、光バイオリアクターの壁の厚さを縮小することができ、またはより安定性の低い材料を使用することができ、さらなるコスト削減に寄与する。
【0023】
光バイオリアクターの柔軟な構成、すなわち周囲の水塊におけるリアクターの位置を変更できることおよび光バイオリアクターにおける培養液の厚さを変更できることにより、光バイオリアクターのプロセスパラメーターは、日射の強度および温度のような環境要因に応じて最適化することができ、このことは生産力の増加をもたらし、コストをさらに縮小するだろう。培養液の厚さは、光合成生物の増殖に必要な太陽光のための光路に影響を及ぼす。
【0024】
光バイオリアクターは水面上で操作することができ、我々の惑星は70%以上が水で覆われているため、そのような光バイオリアクターシステムの実行のために非常に大きな領域を利用できる。
【0025】
培養液と周辺水との間の塩分差を提供することで、密度差を提供してよい。培養液の塩分を増加または減少させることにより、前記塩分差を提供してよい。前記塩分差は、さらにまたは代わりに、周辺水、特に閉鎖型水塊の周辺水の塩分を増加または減少させることで提供してよい。この文脈において、当業者が理解するように、「閉鎖型水塊」という用語は、十分に定義された水のシステムであって、その中の水の量または種(例えば、淡水、汽水または海水)の制御が可能であるシステムを意味する。閉鎖型水塊の例は、天然もしくは人工の池またはプールである。周辺水の塩分の減少の提供と同時に、培養液の塩分の増加が提供されてもよい。周辺水の塩分の増加の提供と同時に、培養液の塩分の減少が提供されてもよい。
【0026】
培養液と周辺水との間の温度差の提供によって、密度差を提供してよい。周辺水、特に閉鎖型水塊の周辺水の温度の変更により、前記温度差を提供してもよい。「閉鎖型水塊」の意味は上記の通りである。
【0027】
培養液のガス圧力の増加または減少によって、密度差は提供されてよい。したがって、藻類による消費のために光バイオリアクターに供給されるガス(例えば二酸化炭素)の圧力によりまたは藻類によって生産されるガス(例えば酸素)の圧力により、培養液の密度が影響を受けてよい。
【0028】
塩分、温度、ガス圧力、および/または、培養液および/または周辺水の密度に影響を及ぼすその他のパラメーターは、望ましい密度差を提供するため、独立にまたは同時に変更されてよい。培養液の密度および周辺水の密度は、好ましい密度差を提供するために独立にまたは同時に変更されてよい。
【0029】
培養液の密度が増加されるようにまたは周辺水の密度が減少するように密度差を提供してよく、それによって水塊における光バイオリアクターの位置が低下する。培養液の密度が減少するようにまたは周辺水の密度が増加されるように密度差を提供してよく、それによって水塊における光バイオリアクターの位置が上昇する。水塊における光バイオリアクターの位置が維持されるように密度差を提供してよい。さらに、光バイオリアクターの位置の低下、上昇または維持のいずれかのための好ましい密度差を提供するために、培養液の密度および周辺水の密度を同時に変更してもよい。
【0030】
光バイオリアクターを操作する上記方法、すなわち水塊における光バイオリアクターの位置が制御されるように培養液と周辺水との間の密度差が提供される方法は、位置の長期的な制御に特に適している。この文脈において、「位置の長期的な制御」とは、変化の開始からの数時間または数日以内に逆にする必要のない位置の変更(光バイオリアクターの上昇または低下)のことを意味する。しかしながら、本発明の方法において、光バイオリアクターは、光バイオリアクターの浮力のさらなる制御に適した1以上のコンパートメントまたはチューブを装備してもよい。そのようなコンパートメントまたはチューブの利点は後述する。
【0031】
本発明の方法において、光バイオリアクターは、さらに、光バイオリアクターの垂直位置および/または形状の更なる制御に適した機械的手段を装備してよい。そのような機械的手段およびその利点は下に議論される。
【0032】
本発明の方法において、光バイオリアクターはフラットパネル形状を有してよい。例えばチューブ型の光バイオリアクターと比較して、フラットパネルリアクターは、必要となる建設資材が少なく、流れ抵抗が低いため必要となるエネルギー入力が小さく、および拡張性の制限が小さい。
【0033】
本発明の方法において、光バイオリアクターはさらに、本発明の第2の側面に関して下記に述べられるような付加的な特徴を含んでよい。
【0034】
本発明の第2の側面において、光合成微生物の培養のための閉鎖型光バイオリアクターであって、前記光バイオリアクターは培養液を含むのに適し、前記光バイオリアクターは水塊の水に部分的または完全に囲まれ、前記光バイオリアクターは培養液と周辺水との間の密度差を決定するための手段を含む光バイオリアクターが提供される。
【0035】
塩分および/または温度の差によって引き起こされる光バイオリアクターの内部および外側の水の小さな密度差がリアクターを移動させる唯一の動力源であるため、光バイオリアクターの壁に薄い柔軟性の材料を有することが好ましい。薄く柔軟性の壁を有することは、光バイオリアクター自身で安定化する能力を最適化させる。
【0036】
閉鎖型光バイオリアクターは好ましくはコンパートメントを含み、当該コンパートメントは、防水で、透明でおよび柔軟な材料の壁によって閉じられた藻類コンパートメントを意味する。
【0037】
防水で、透明でおよび柔軟な材料は、さらに、好ましくは軽量または低密度の材料であってよい。材料は、好ましくは、ポリオレフィンに基づくポリマー(例えばポリエチレン、ポリプロピレン)の薄膜のようなポリマーに基づく材料であってよい。本発明における使用に適しているその他のポリマーは、高分子材料に関する当業者に容易に理解されるだろう。壁の厚さは、使用される特異的な材料の特性、例えば適応性、透過性および耐久性に依存して選択すべきであり、例えば10−1000μmの範囲または25−500μmの範囲または50−150μmの範囲である。材料の耐久性を考慮に入れて、柔軟性および透過性を最大化するために光バイオリアクターの壁をできるだけ薄くすることが好ましい。非限定的な例として、約100μmの厚さを有するポリエチレンフィルムは、光バイオリアクターの壁にて使用することが適しているようである。
【0038】
光バイオリアクターの藻類コンパートメントは、例として、2つのシートで閉鎖されたコンパートメントが形成されるように互いに接続される、防水で、透明でおよび柔軟な材料の上部シートおよび下部シートを含んでよいが、防水、透明、柔軟且つ軽量の材料の壁によって閉じられた密封したコンパートメントをもたらすその他の配置も考慮される。
【0039】
光バイオリアクターの藻類コンパートメントは、さらに様々な入口および出口を含んでよく、これらは、ホース、ポンプ、液体またはガスの供給源および光バイオリアクターの操作に要求されるまたは有用なその他の付加的な装置につなげられてよい。
【0040】
密度差を決定する手段は、培養液の塩分および/または温度を決定するための手段を含んでよい。密度差を決定する手段は、周辺水の塩分および/または温度を決定するための手段を含んでよい。培養液または周辺水の塩分の決定に適した手段は当業者に確認されてよく、それらの機能は、例えば、塩分を決定すべき培地の伝導性の測定に基づいてよい。培養液または周辺水の温度の決定に適した手段は、当業者に確認されてよく、例えば、熱電対または温度を表わす電気信号を提供する温度測定のためのその他の装置であってよい。
【0041】
光バイオリアクターは、光バイオリアクターの浮力のさらなる制御に適した1以上の付加的なコンパートメントまたはチューブを装備してよい。コンパートメントまたはチューブは、ガス、水またはその他の液体を含んでよい。したがって、付加的なコンパートメントまたはチューブは、水塊における光バイオリアクターの位置が制御される速度を増大する。それ故、光バイオリアクターの位置は、培養液の温度の短期的な変化に応じる場合のように迅速に適応する必要がある場合に、付加的なコンパートメントまたはチューブを使用してもよい。「短期的な変化」とは、分または時間のスケールにおける変化を意味する。
【0042】
例えば、藻類の増殖条件(例えば温度)の最適化のために、または強風といった天候に関連する条件により、光バイオリアクターの位置を迅速に適応させる必要がある場合に、光バイオリアクターは、水没または浮揚の促進のための機械的手段を装備してよい。そのような機械的手段は、例えば、ネットまたはロープ、ケーブルまたはロッドといった少なくとも1つの細長い部材であって、光バイオリアクター上に伸ばされ、下降または上昇が可能なように配置され、光バイオリアクターの水没または浮揚を支援するものを含んでよい。そのようなネットまたは少なくとも1つの細長い部材は光バイオリアクターの表面に固定されてよく、または固定されてなくてよい。一般に、平行に配置され、光バイオリアクターの長さに渡って適切な距離で分散された、2以上の細長い部材を有することが有用だろう。例えば、光バイオリアクター全体が同時に沈むように、またはリアクターの一側面が最初に沈み、リアクターの反対側面が次に沈むように、細長い部材は同時にまたは順に下降または上昇されてよい。
【0043】
光バイオリアクターはフラットパネル形状であってよい。例えばチューブ型光バイオリアクターと比較して、フラットパネルリアクターは、必要となる建築材料が少なく、流れ抵抗が低いため必要となるエネルギー入力が少なく、拡張性における制限が少ない。
【0044】
光バイオリアクターの藻類コンパートメントは、さらに、培養液を含むのに適した2以上のサブコンパートメントを含んでよい。前記サブコンパートメントは、光バイオリアクターに存在する培養液の一部を含むように最適化されてよい。好ましくは、光バイオリアクターが2以上のそのようなサブコンパートメントを含む場合、培養液はサブコンパートメント間で均一に分散されてよい。さらなる詳細が本願で議論されるように、サブコンパートメントは、培養液の集塊および大きなガスの泡の潜在的な悪影響の縮小を支援するため、光バイオリアクターにおけるサブコンパートメントの使用は、それが部分的または完全に沈んだ場合に、リアクターの安定化を支援する可能性がある。
【0045】
サブコンパートメントは互いに密閉されてよい。サブコンパートメントが互いに密閉された場合、サブコンパートメントは多くのより小さな光バイオリアクターとして機能するだろう。光バイオリアクターが沈められた場合、これはさらに集塊および大きなガスの泡に関する問題を縮小するだろう。
【0046】
サブコンパートメントはさらに、サブコンパートメント間の限られた液体および/またはガスの輸送を可能にするように接続されてよい。光バイオリアクターが沈められた場合、これは、光バイオリアクターの柔軟性および培養液へのCO2およびその他の栄養素の一般的な分布の利点およびリアクターからの酸素の除去を維持しながら、集塊および大きなガス泡に関する問題をほぼ解消するだろう。
【0047】
光バイオリアクターは、光バイオリアクターの藻類コンパートメントを2以上サブコンパートメントに一時的に分離するための手段をさらに含んでよい。一時的に光バイオリアクターの藻類コンパートメントを分離することは、光バイオリアクターが水面に浮遊する場合における制限のないフラットパネル構造および光バイオリアクターが部分的にまたは完全に水没する場合におけるサブコンパートメント構造を有する組み合わせられた利点を可能にする。光バイオリアクターまたはその藻類コンパートメントは、周辺水の表面に浮遊する場合、一般に大気に直面する少なくとも1つの柔軟性上部シートおよび水に面する柔軟性下部シートを含むと考えられ、それら2つのシートの間に藻類培養物が維持される。光バイオリアクターの藻類コンパートメントを一時的に分離するための手段は、例えば、各々の側のくぼみにおいて光バイオリアクターの内部でサブコンパートメントが形成されるように、光バイオリアクターの下部シートに向けて光バイオリアクターの上部シートを押すことに適した部材を含んでよい。実施形態において、光バイオリアクターの藻類コンパートメントを2以上のサブコンパートメントに分離するための前記手段は、少なくとも1つの細長い部材であって、光バイオリアクター上に伸ばされ、光バイオリアクターの下部シートに向けて光バイオリアクターの上部シートを押すために降下できるよう配置され、前記少なくとも1つの細長い部材の各々の側面で光バイオリアクターの内部にサブコンパートメントが形成される部材(例えばロープ、ケーブルまたはロッド)を含む。
【0048】
別の実施形態において、光バイオリアクターを2以上のサブコンパートメントに分離するための前記手段は、藻類コンパートメントから分離し、光バイオリアクターの上部シートに接して配置され、培養液より高い密度を有する液体で満たされるのに適した少なくとも1つの付加的なコンパートメントまたはチューブを含み、付加的なコンパートメントまたはチューブが高密度液体で満たされる場合、充填されたコンパートメントまたはチューブは光バイオリアクターの下部シートに向けて光バイオリアクターの上部シートを押すことができ、サブコンパートメントは前記充填されたコンパートメントの各々の側面で光バイオリアクターの藻類コンパートメントの内部に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1a】図1aは光バイオリアクターシステムの模式図である。
【図1b】図1bは光バイオリアクターシステムの横断面図である。
【図2a】図2aは、その低密度により培養液コンパートメント上で浮遊するCO2供給チューブを有する光バイオリアクターについての三次元ビューである。
【図2b】図2bは、その低密度により培養液上で浮遊するCO2供給チューブを有する光バイオリアクターの垂直断面を示す。
【図3】図3は、垂直位置またはリアクターの形状を制御するための付加的なコンパートメントを有する光バイオリアクターを示す。
【図4a】図4aは、一時的なサブコンパートメントを作るための、および水没プロセスを促進するためのロープを有する光バイオリアクターの模式図である。
【図4b】図4bは、リアクター運動を導くレールを有する垂直プロファイルの図4aの拡大図である。
【図5】図5は、密封したサブコンパートメントを有する光バイオリアクターを示す。
【図6a】図6aは、リアクターの上部および下部シートが様々な点で接続される光バイオリアクターの模式図である。
【図6b】図6bは、リアクターの上部および下部シートが様々な点で接続される光バイオリアクターの模式的横断面図である
【図7】図7は、光バイオリアクター内部にサブコンパートメントを形成するために、リアクターの上部側に、高密度液体で満たされてよいコンパートメントを有する光バイオリアクターの模式的横断面図である。
【発明の詳細な説明】
【0050】
本発明の実現の非限定的な例は、図面に見ることができ、以下にさらに記述される。培養液および培養培地という用語はここにおいて互換的に使用され、藻類培養物全体、すなわち藻類が浮遊している藻類と水性培地との混合物を意味してよく、または単に藻類を懸濁させるための水性培地を意味してよい。
【0051】
図1aは完全な光バイオリアクターシステムの図である。パネル型の光バイオリアクター1(ここでは「リアクター」とも称する)は、水塊(ここでは人工池2)上に浮遊する。そのような光バイオリアクター1のサイズは変更でき、長さ50メーターおよび幅約10メーターが実現可能である。光バイオリアクター1は柔軟で透明な材料から製造され、光バイオリアクター内には藻類が懸濁している培養液が存在する。光バイオリアクター1に対する日射によって、光合成を介して藻類からバイオマスを製造することができる。二酸化炭素はこのプロセスの間に使用され、酸素が製造される。それ故、新たな二酸化炭素を提供し、藻類には有毒になりうる酸素を除去するために、培養培地は照らしながらも常に動かされる。培養培地はポンプ3を介して移動するだろう。培養培地は、したがって、光バイオリアクターを通って移動し、チューブ4を介して戻される。ガス交換はタンク5にて行われ、そこに対して、チューブシステム6が、コンプレッサー7によって二酸化炭素に富むガス混合物を着実に提供するだろう。二酸化炭素濃に富むガス混合物は、例えば化石燃料を使用する発電所を由来とすることができる。脱気された酸素は、無菌フィルターを装備したチューブ8を介して外に導かれるだろう。藻類バイオマスを有する培養液は、バルブ9を介してシステムから取り出され、この回収された容量がさらに処理されるまでタンク10に貯蔵することができる。新たな培地は貯蔵タンク12からのさらなるバルブ11を介してシステムに提供される。これは、回収によって生じる液体の減少を横ばいにし、かつ培養液に新規の栄養素を供給する役目をする。
【0052】
代替となる実施形態(図示せず)において、二酸化炭素はリアクターにあるチューブまたはホースから成長している藻類に提供され、当該チューブまたはホースは二酸化炭素の1以上の出口を有する。したがって、この実施形態において、培養液体は二酸化炭素の供給のためにタンク5を通って移動してはならない。
【0053】
培養液の塩分および温度の測定のためのセンサー13並びに周辺水の塩分および温度の測定のためのセンサー14は制御装置15に接続される。制御装置15は、センサー13および14からの情報並びにその他のパラメーターおよび保存されたデータに基づいて培養液および周辺水の間の密度差を決定する。制御装置は池2に対して海水および淡水を供給するポンプ(図示せず)をそれぞれ制御する。別の実施形態(図示せず)において、制御装置15は光バイオリアクター1における培養液の塩分を変更するための手段を制御する。
【0054】
図1bはそのようなシステムの断面積を示す。光バイオリアクター1が側面から切断されており、この図では、光バイオリアクターが水塊2上に浮遊する。光バイオリアクターにおける培養液の垂直の厚さは典型的に1〜30cmである。水塊2の深さは著しく変わってもよい。培養液を循環させるために使用されるチューブ4も同様に側面から切断されている。
【0055】
光バイオリアクターの培養液
藻類培養物は光バイオリアクターにおける培養液に留まる。培養液は、藻類がバイオマスまたは特異的な分子を製造することができるように異なる塩類およびその他の栄養素(例えばCO2のような炭素源、グルコースまたはコハク酸塩)を含む水溶液である。培養液の特異的な栄養分は、光バイオリアクターにて培養される藻類のタイプ、または藻類培養物が製造すると思われる種々の分子に依存して変えてよい。光バイオリアクターにおける培養液は、任意の流速で光バイオリアクターを通して新鮮な培養液をポンプで汲み出すことで取り替えてよく、それにより、藻類培養物には新鮮な栄養素が提供される。培養液が光バイオリアクターを通ってポンプで汲み出される場合、好ましくは、培養液がポンプで汲み出される流速は光バイオリアクターからの藻類のいかなる損失も最小化するように調節される。光バイオリアクターおよび周辺水における培養液の温度は連続的に測定される。測定された温度は前もって定義した温度値と比較され、当該定義した温度値は藻類培養物のための条件が最適である温度範囲内(例えば、藻類培養物の最も高い成長率または特異的な分子の最も高い生産速度を促進する温度範囲)の温度であってよい。
【0056】
光バイオリアクターの培養液へのCO2の供給
藻類は増殖のために大量のCO2を必要とする。これは、藻類が炭素の重要な供給源としてこれを使用するためである。その上、光合成の過程で、酸素が製造され、それは藻類に有毒である場合がある。それ故、液体−ガスの障壁を介するこれらのガスの物質移動が高い生産力のために重要である。藻類培養物にCO2を供給する可能性のある多数の方法および藻類培養物から生成された酸素を除去するための多数の方法が以下に記述されるだろう。ここに記述される方法は、本発明を限定するものとして解釈すべきでない。本開示に照らして当業者にとってさらに明白であるその他の方法も、本発明の範囲内であると考えられる。
【0057】
実施形態(図示せず)において、培養培地へのCO2の物質移動は、培養培地の広い表面積全体におけるガスCO2の受動拡散によって達成される。フィックの第1および第2法則に示される拡散プロセスの動力学および続く水和および脱プロトンプロセスは十分に速いため、藻類培養物に十分なCO2が提供され、光酸化によってO2の毒性効果を回避できると仮定すると、広い表面を介したCO2の受動拡散は十分だろう。受動拡散は、水の移動または水へのCO2の強制にエネルギーを必要としないという長所を有する。さらに、能動的な通気は必要ではないため投資コストは縮小されるだろう。そのような場合において、CO2移動は、更なるエネルギーを添加することなく水とCO2ガスとの間の界面の層で起こるだろう。より特異的な実施形態において、光バイオリアクター内の培養培地上にてCO2に富むガスのガス泡を生じさせることでこれを実現できてよい。
【0058】
別の実施形態(図示せず)において、CO2は培養培地を通って泡立つ。ガスCO2は、好ましくは、培養培地へ伸びるチューブまたはチューブ状の装置によって供給してよい。そのようなシステムはホールを含み、そこを通ってCO2に富むガスが外部装置からの圧力の適用により押されてよい。チューブまたはチューブ状装置は、例えばリアクターの底に固定されてよく、ホールの典型的な方向は水面方向であろう。
【0059】
光バイオリアクターの操作の際、CO2に富むガスを培養培地に連続的に供給してよい。この実施形態は、さらに、発生してすぐの酸素の連続的な脱気という利点、すなわち生成される酸素が、その生成の直後に培養培地から除去されるという付加的な利点を有する。
【0060】
あるいは、CO2に富むガスは短いパルスにて添加することができる。パルスの長さ、押されるガスの量、ガスが押される圧力およびパルス間の時間を決定する様々な手段が存在する。実施形態において、ガスをタイマーによってパルス化してよく、例えば5分おきに1分のパルスの規則的なシグナルが与えられる。別の実施形態において、藻類によって使用されるCO2の量を推定でき、パルスの最適な長さ、押されるガスの量、ガスが押される圧力およびパルス間の時間を算出できる特別のユニットによってパルスが制御される。必要とされるCO2の量を推定するために、ユニットは種々のセンサー、例えば光強度を測定するセンサー、温度を測定するセンサーおよび光バイオリアクターにおけるバイオマス密度を測定するセンサーを含んでよい。これらのセンサーが受け取ったデータポイントを使用して、プロセス制御器は光バイオリアクターシステムに対する最適なパルスパターンを計算するだろう。
【0061】
添加されるCO2の量は、さらに、リアクターのpHと関連してもよい。pH電極は培養培地に配置され、この電極は、定義された酸化還元系(例えばAg/AgCl電極)に対する、陽子の膜の通過を可能にする半透膜を介した電圧を連続的に測定する。電圧はプロセス制御ユニットによって記録される。電圧があらかじめ定められた点に達するとすぐ、プロセス制御ユニットはCO2パルスを添加するだろう。パルスのパラメーター、例えば時間、分毎のパルスの量およびパルスを停止する電圧は、プロセス制御ユニットに入れることができる。
【0062】
別の実施形態において、図2aおよび2bに示されるように、光バイオリアクターへ伸び、より低い密度のために培養培地の表面に浮遊するよう配置されるチューブまたはチューブ状装置によって、ガスCO2が培養培地に供給されてよい。上記と同様に、ガスCO2を泡立たせることができ、ここにおいて、チューブまたはチューブ状装置は培養培地へ伸びる。しかしながら、CO2が供給されるチューブまたはチューブ状装置は、光バイオリアクターにおける培養培地の表面に浮遊するように特異的に設計されるだろう。これは、藻類培養培地(17)の密度よりも低い、全(16)通気システムの密度によって達成される。培養培地に向けてCO2が通るチューブまたはチューブ状装置におけるホール(18)は、出来る限りのガス移動を達成するために、この実施形態において下方に向けられてよい。したがって、ホールは培養培地の表面にまたはそのわずか下に設けられるだろう。
【0063】
光バイオリアクターの操作の間、CO2に富むガスを培養培地に連続的に供給してよい。この実施形態はさらに、発生してすぐの酸素の連続的な脱気、すなわち作られる酸素が生成直後に培養培地から除去されるという付加的な利点を有す。
【0064】
あるいは、CO2に富むガスを短いパルスで添加することができる。パルスの長さ、押し込まれるガスの量、押し込まれるガスの圧力およびパルス間の時間を決定する様々な手段が存在する。実施形態において、規則的な信号(例えば5分毎に1分のパルス)を与えるタイマーによって、ガスにパルスを与えることができる。別の実施形態において、藻類によって使用されるCO2の量を推定し、パルスの最適な長さ、押し込まれるガスの量、押し込まれるガスの圧力およびパルス間の時間を算出することができる特別なユニットによってパルスが制御される。必要とされるCO2の量を推定するために、ユニットは、種々のセンサー、例えば光強度を測定するセンサー、温度を測定するセンサーおよび光バイオリアクター中のバイオマス密度を測定するセンサーを含んでよい。これらのセンサーが受け取ったデータポイントを使用して、プロセス制御器は、光バイオリアクターシステムに対する最適なパルスパターンが計算されるだろう。
【0065】
添加されるCO2の量は、さらに、リアクター中のpHと関連してよい。pH電極は培養培地に配置され、この電極は、定義された酸化還元系(例えばAg/AgCl電極)に対して、陽子の膜の通過が可能な半透膜を介した電圧を連続的に測定する。電圧はプロセス制御ユニットによって記録される。プロセス制御ユニットは、電圧があらかじめ定められた点に達するとすぐにCO2パルスを添加するだろう。パルスのパラメーター、例えば時間、分毎のパルス量およびパルシングを停止する電圧を、プロセス制御ユニットに入力することができる。
【0066】
光バイオリアクターの内部においてガスの形態で培養培地にCO2を供給する必要は必ずしもない。光バイオリアクターの外部において、例えば水性培地にてガスCO2を泡立たせることで、CO2に富む培地を作ることもできる。言いかえれば、光バイオリアクターの透明な部分にCO2を供給する代わりに、実際の光バイオリアクターの外側でこれを行うことができる。実施形態において、そのようなシステムは、水性培地を含む垂直なタンクであって、CO2に富むガスがタンクの底または底の近辺に供給されるタンクを使用してよい。CO2の泡が水性培地にて生じる一方、CO2は泡から水性培地へ移動し、同時に酸素は培養培地から除去されてよい。好ましい実施形態において、CO2に富む水性培地は、CO2量が高められ、その後光バイオリアクターへ返される、光バイオリアクターからの培養培地である。タンクは数メーターの高さを有してよいため、CO2の滞留時間は比較的長く、良好な物質移動が可能となってよい。垂直なタンクにてCO2を泡立たせるために、例えば静水圧に逆らうためのエネルギーが必要となる。ガスの加圧のために使われるエネルギーはさらに、藻類コンパートメントからの水性培地をCO2豊富化装置へ動かし、藻類コンパートメントに戻すために使用してよい。
【0067】
別の実施形態において、光バイオリアクターの内部または外部において藻類培養培地のCO2を泡立たせる代わりに、CO2供給は半透膜の使用によって促進する。そのような膜の使用は泡立たせることと比較して様々な長所を有するだろう:
a)そのような膜は一方向弁として働く。これは、膜が、培養培地へのCO2の侵入を許すが、CO2供給システムへの水の侵入を抑制するということ、すなわち、膜はCO2に対して浸透性である一方、水には浸透性でないことを意味する。
b)より低いエネルギー消費。泡の生成が必要ではないため、膜による方法は、泡の生成プロセスと比較して低いエネルギー消費でCO2を供給できる。
c)低い剪断応力。泡立たないようにすることによって、藻類細胞における剪断応力が低減される。藻類上のより小さな剪断応力は藻類培養培地にて死亡する藻類細胞の量を減らし、それゆえ、光バイオリアクターの効率を低減する可能性のある分解しやすい有機物質の量が低減される。その上、有機栄養生物による汚染のリスクを著しく減らすだろう。
d)物質移動速度の増大。膜の使用によって、上述される受動拡散を使用する実施形態よりも高いCO2圧力が可能となる。なぜなら、膜に対するCO2圧力は周囲の大気圧に制限されないためである。このことは、受動拡散の場合に問題となる。その上、膜は、膜と同様なサイズを有する平らな表面(例えば培養培地の表面)よりも大きい表面積を有してよい。
【0068】
CO2および/または酸素の物質移動は、さらに、光バイオリアクターの移動、例えばリアクターを傾けることにより促進してよい。
【0069】
閉鎖型水塊における光バイオリアクター
「閉鎖型水塊」という用語は、例えば量またはそこに含まれる淡水、汽水もしくは塩水といった種類の制御を可能にする、十分に定義された水のシステムである。閉鎖型水塊の例は天然もしくは人工の池またはプールである。
【0070】
一実施形態において、光バイオリアクターは開始位置として閉鎖型海水塊(すなわち塩水)の表面に置かれる。光バイオリアクターが海水塊の表面に、置かれるまたは浮遊する場合、光バイオリアクターの密度は海水塊の密度よりも低くい。光バイオリアクターの位置を低下させる必要がある場合、光バイオリアクターと海水塊との間の密度差が調節される。例として、培養液の測定された温度が所定の温度値よりより高い場合または高いと予想される場合、光バイオリアクターの位置を低くする必要があってよい。光バイオリアクターと海水塊との間の密度差を調節するために、海水塊の塩分が低減される。これは海水を淡水に置き換えることにより達成される。海水と淡水との置換に伴って、閉鎖型水塊の塩分は段階的に減少し、すなわち光バイオリアクターを取り巻く水の密度が減少する。あるいは、海水を汽水と取り替えてもよい。培養液の密度、光バイオリアクターの総合密度並びに周辺水の密度は連続的に測定され、光バイオリアクターと周辺水との間の密度差が連続的に決定される。光バイオリアクターは、周辺水と比較よりも高い密度を有するため、閉鎖型水塊中に沈み、光バイオリアクターの位置は低下する。光バイオリアクターの位置は、培養液の測定された温度が好ましい温度範囲内となるまで下げてよい。
【0071】
別の実施形態において、光バイオリアクターは開始位置として閉鎖型淡水塊の表面に置かれる。光バイオリアクターが淡水塊の表面に置かれるまたは浮遊する場合、光バイオリアクターの密度は淡水塊の密度よりも低い。光バイオリアクターの位置を低くする必要がある場合、光バイオリアクターと淡水塊との間の密度差が調節される。例として、培養液の測定された温度が所定の温度値より高い場合または高いと予想される場合、光バイオリアクターの位置を低くする必要があってよい。光バイオリアクターと淡水塊との間の密度差を調節するために、培養液の塩分が増大される。これは、より高い塩分の培養液で培養液を置換または補充することで、より高い塩分の培養液を光バイオリアクターに送り込むことにより達成される。培養液の流速は、培養液におけるより高い塩濃度への藻類の適応および光バイオリアクターにおける藻類のあらゆる損失の最小化を可能にするように設定される。培養液がより高い塩分の培養液によって置換されまたは補充されるため、光バイオリアクターの密度は増大する。培養液の密度、光バイオリアクターの総合密度並びに周辺水の密度が連続的に測定され、光バイオリアクターと周辺水との間の密度差が連続的に決定される。光バイオリアクターは周辺水よりも高い密度を有するため閉鎖型水塊に沈み、光バイオリアクターの位置は低下する。光バイオリアクターの位置は、培養液の測定された温度が好ましい温度範囲内となるまで下げてよい。
【0072】
別の実施形態において、光バイオリアクターは開始位置として閉鎖型海水塊(すなわち塩水)の表面より下に置かれる。光バイオリアクターが海水塊の表面より下に位置する場合、光バイオリアクターの密度は海水塊の密度より高い。光バイオリアクターの位置を上げる必要がある場合、光バイオリアクターと海水塊との間の密度差が調節される。例として、培養液の測定された温度が所定の温度値より低い場合または低いと予想される場合、光バイオリアクターの位置を上げる必要があってよい。光バイオリアクターと海水塊との間の密度差を調節するために、培養液の塩分は低減される。これは、培養液をより低い塩分の培養液で置換または補充することにより、すなわちより低い塩分の培養液を光バイオリアクターに送り込むことにより達成される。培養液の流速は、培養液におけるより低い塩濃度への藻類の適応および光バイオリアクターにおける藻類のあらゆる損失の最小化を可能にするように設定される。培養液は、より低い塩分の培養液で置換または補充されるため、光バイオリアクターの密度は低下する。培養液の密度、光バイオリアクターの総合密度並びに周辺水の密度が連続的に測定され、光バイオリアクターと周辺水との間の密度差は連続的に決定される。光バイオリアクターの位置は、周辺水と比較して密度がより低いために、閉鎖型水塊にて上昇する。水塊における光バイオリアクターの上昇は、培養液の測定された温度が好ましい温度範囲内となるまで続けてよい。
【0073】
別の実施形態において、光バイオリアクターは開始位置として閉鎖型淡水塊の表面より下に配置される。光バイオリアクターが淡水塊の表面より下に位置する場合、光バイオリアクターの密度は淡水塊の密度より高い。光バイオリアクターの位置を上げる必要がある場合、光バイオリアクターと淡水塊との間の密度差が調節される。例として、光バイオリアクターの位置は、培養液の測定された温度が所定の温度値より低い場合または低いと予想される場合、上げる必要があってよい。光バイオリアクターと周辺の淡水塊との間の密度差を調節するために、周辺水の塩分が増大される。これは淡水を海水(すなわち塩水)で置換することで達成される。淡水が海水と置換されることで、閉鎖型水塊の塩分は段階的に増大し、すなわち光バイオリアクターを囲む水の密度が増大する。培養液の密度、光バイオリアクターの総合密度ならびに周辺水の密度は連続的に測定され、光バイオリアクターと周辺水との間の密度差は連続的に決定される。光バイオリアクターの位置は、周辺水と比較してより低い密度を有するため閉鎖型水塊にて上昇する。水塊における光バイオリアクターの上昇は、培養液の測定された温度が好ましい温度範囲内となるまで続けてよい。
【0074】
一実施形態において、特に光バイオリアクターが閉鎖型水塊にある場合、培養液の密度および周辺水の密度は同時に変更される。したがって、培養液の塩分の増大に伴って周辺水の塩分が同時に減少し、または培養液の塩分の減少に伴って周辺水の塩分は同時に増大される。好ましくは閉鎖型の水塊および培養液の塩分の同時の調節は、光バイオリアクターと周辺水との間の密度差が調節される速度を増大し、これにより、光バイオリアクターが周辺水にて低下または上昇する速度を増大する。
【0075】
一実施形態において、特に光バイオリアクターが閉鎖型水塊にある場合、水塊の温度は好ましい密度差を提供するための付加的な手段として使用され、すなわち温度はリアクターを囲む培養液または水の塩分の調節の補充としてまたは代わりとして調節される。光バイオリアクターの位置を低くする必要がある場合、閉鎖型水塊の温度は増大され、それによって周辺水の密度を減少させる。さらに、光バイオリアクターの位置を上げる必要がある場合、閉鎖型水塊の温度を低下させ、それによって周辺水の密度を増大させる。したがって、リアクターを囲む水の温度の調節は、周辺水にて光バイオリアクターが低下または上昇する速度に影響する。
【0076】
光バイオリアクターが開始位置として閉鎖型海水塊(すなわち塩水)の表面に置かれる実施形態では、リアクターを囲む培地の密度を減少させるために、淡水以外の添加物が周辺水に添加される。例えば、水より低い密度の非水性液体が閉鎖型水塊に添加され、リアクターを囲む培地の密度を減少させる。
【0077】
光バイオリアクターが開始位置として閉鎖型淡水塊の表面より下に位置する実施形態では、リアクターを囲む培地の密度を増加させるために、海水(すなわち塩水)以外の添加物が閉鎖型淡水塊に添加される。例えば、水より高い密度の非水性液体が閉鎖型水塊に添加され、リアクターを囲む培地の密度を増加させる。
【0078】
開放型水における閉鎖型光バイオリアクター
「開放型水」という用語は、水の化学的または物理的性質の有効な制御が困難または不可能である天然の水塊、例えば湖、川または海を意味する。
【0079】
一実施形態において、光バイオリアクターは開始位置として開放型淡水の表面に置かれる。光バイオリアクターが開放型淡水の表面に置かれる場合または浮く場合、光バイオリアクターの密度は淡水の密度よりも低い。光バイオリアクターの位置を低くする必要がある場合、光バイオリアクターと開放型淡水との間の密度差が調節される。例として、培養液の測定温度が所定の温度値より高いまたは高いと予想される場合、光バイオリアクターの位置を低くする必要があってよい。光バイオリアクターと周辺水との間の密度差を調節するために、培養液の塩分が増大される。これは、培養液をより高い塩分の培養液で置換または補充することにより、すなわちより高い塩分の培養液を光バイオリアクターに送り込むことにより達成される。培養液の流速は、藻類が培養液においてより高い塩濃度に適合することを可能にするように、および光バイオリアクターにおける藻類のあらゆる損失を最小化するように設定される。培養液がより高い塩分の培養液で置換または補充されることで、光バイオリアクターの密度は増大する。培養液の密度、光バイオリアクターの総合密度並びに開放型淡水の密度が連続的に測定され、光バイオリアクターと周辺水との間の密度差が連続的に決定される。光バイオリアクターは、周辺水よりも密度が高いため開放型淡水中で沈み、光バイオリアクターの位置は低下する。培養液の測定された温度が好ましい温度範囲内となるまで、光バイオリアクターの位置を低下させてよい。
【0080】
別の実施形態において、光バイオリアクターは開始位置として開放型海水(すなわち塩水)の表面より下に配置される。光バイオリアクターが開放型海水の表面より下に位置する場合、光バイオリアクターの密度は海水よりも高い。光バイオリアクターの位置を上げる必要がある場合、光バイオリアクターと海水との間の密度差が調節される。例として、培養液の測定温度が所定の温度値より低い場合または低いと予想される場合、光バイオリアクターの位置を上昇させる必要があってよい。光バイオリアクターと海水との間の密度差を調節するために、培養液の塩分が低減される。これは、培養液をより低い塩分の培養液で置換または補充することにより、すなわちより低い塩分の培養液を光バイオリアクターに送り込むことにより達成される。培養液の流速は、藻類を培養液においてより低い塩濃度に適合させ、かつ光バイオリアクターにおける藻類のあらゆる損失を最小化するように設定される。培養液がより低い塩分の培養液と置換されることで、光バイオリアクターの密度は減少する。培養液の密度、光バイオリアクターの総合密度並びに海水の密度が連続的に測定され、光バイオリアクターと周辺水との間の密度差が連続的に決定される。光バイオリアクターの位置は、周辺水よりも密度が低いために海水において上昇する。培養液の測定された温度が好ましい温度範囲内となるまで、海水における光バイオリアクターの上昇を続けてよい。
【0081】
制御システム
一実施形態において、培養液の塩分が多目的システムによって調節され、それによって光バイオリアクターの位置が間接的に調節される。このシステムは、光バイオリアクターの全重量および密度並びに光バイオリアクターに含まれる培養液およびバイオマスの量といった光バイオリアクターに関する情報とともにプログラムされる。さらに、システムは、培養液の温度、塩分、密度および周辺水の密度を連続的に測定し、それによって光バイオリアクターと周辺水との間の密度差を連続的に決定する。システムは、さらに、塩分濃度といった培養液の種々の成分の濃度を制御する。さらに、システムは培養液の温度における変化に応答して、周辺水における光バイオリアクターの位置を自動的に調節し、藻類培養物を一定温度で維持してもよい。システムは、したがって、既知の制御回路またはアルゴリズム、例えばフィードバック機構を有する制御アルゴリズムを備えてよく、光バイオリアクターの位置を調節する場合に最適な安定を可能にする。
【0082】
さらなる実施形態において、光バイオリアクターが閉鎖型水塊にある場合、周辺水の塩分および温度は上述の多目的システムによって調節される。付加的なコンパートメントまたはチューブを有する光バイオリアクターの実施形態において、制御システムは、さらに、コンパートメントまたはチューブのガス、水およびその他の液体の充填および排出を調節する。一実施形態において、多目的システムは、光バイオリアクターの位置に関するパラメーターだけでなく、藻類の増殖に関連するパラメーターも制御する。したがって、制御システムは、さらに、藻類培養物のO2およびCO2の含有量を測定し調節する。
【0083】
光バイオリアクターの位置および/または形状を制御するための付加的な手段
本発明による光バイオリアクターの垂直位置および/または形状は、培養液とリアクターが配置される周辺水との間の適切な密度差を提供することによって制御してよい。しかしながら、光バイオリアクターの位置および/または形状を制御するための付加的な手段がしばしば有用かもしれない。これは、例えば光バイオリアクターを迅速に沈める必要がある場合に該当する可能性がある。そのような手段は、光バイオリアクターの水没または浮揚の支援のために高いまたは低い密度の培地を充填することができる付加的なコンパートメントまたはチューブ、光バイオリアクターの水没または浮揚を支援するための機械的手段およびリアクターが沈められる場合にその形状を制御するための光バイオリアクターの藻類コンパートメント内のサブコンパートメントを含んでよい。これらの3種の手段は以下に詳細に議論されるだろう。
【0084】
高いまたは低い密度の培地を充填することができる付加的なコンパートメントまたはチューブ
一実施形態において、光バイオリアクターは、光バイオリアクターの位置を変更する速度を増大するための手段を提供する付加的なコンパートメントまたはチューブを備える。コンパートメントまたはチューブは、ガス、水またはその他の液体を含んでよい。光バイオリアクターが水面に配置される場合、コンパートメントまたはチューブは単にガスを含んでよい。光バイオリアクターの位置を低下させる必要がある場合、コンパートメントまたはチューブは、水または高密度の液体で満たされ、これによって、光バイオリアクターの総合密度を増大させる。光バイオリアクターが水の表面より下にあり、光バイオリアクターの位置を上げる必要がある場合、コンパートメントまたはチューブにおける水または高密度の液体が押し込まれ、ガスと置換され、これによって、光バイオリアクターの総合密度が減少する。したがって、付加的なコンパートメントまたはチューブは、光バイオリアクターと周辺水との間の密度差の調整速度を増大させる。それ故、培養液の温度の短期的な変化に応じる場合といった、光バイオリアクターの位置を迅速に適応させる必要がある場合に、付加的なコンパートメントまたはチューブを使用してよい。「短期的な変化」とは分または時間のスケールでの変化を意味する。付加的なコンパートメントまたはチューブは、光バイオリアクターのあらゆる位置に配置できる。付加的なコンパートメントまたはチューブは、光バイオリアクターの他の部分と同様の材料であってよく、またはより強固で可能性としてさらに丈夫な異なる材料であってよい。付加的なコンパートメントまたはチューブは、互いに液体がつながった複数のチューブのシステムを含んでよく、構造的な安定を提供するための内部の固着点もしくは溶接点または同様の技術によって行われる接続を有する広いコンパートメントを含んでよい。
【0085】
図3に示される実施形態では、付加的なコンパートメントが光バイオリアクターの上に配置される。この実施形態において、リアクターシステム全体の密度は、藻類コンパートメント(20)と独立して、付加的なコンパートメント(19)に高密度の液体(好ましくは塩水)を添加することで変化させることができる。コンパートメントが充填されると、沈めるプロセスを促進するようにリアクターシステム全体の密度を増大させるだろう。この実施形態において、付加的なコンパートメントは光バイオリアクターの上に配置される。付加的なコンパートメントは、構造的な安定を提供するために内部の固着点(21)を含む。付加的なコンパートメントまたはチューブは、リアクターの一側面にバルブ(23)およびリアクターの反対側に同様の接続が提供される1以上のホース(22)によって、高密度の液体の供給に接続されてよい。この実施形態による光バイオリアクターの水没の促進のために使用される場合、付加的なコンパートメントは一側面から水が満たされ、反対側面のバルブも開かれるだろう。一側面から充填プロセスを始めることで、この側面は最初に水没するだろう。付加的なコンパートメントに残る空気は、それゆえ光バイオリアクターの一側面にて回収され、より効率的に押されてよい。空気がすべて排出され、リアクター全体が沈み始めるまで、充填プロセスが継続されるだろう。その後、充填ホースの反対のバルブが閉められる。充填プロセスは、この時点で停止してよく、またはしばらくの間継続してよい。充填プロセスの継続は付加的なコンパートメントにおける圧力を増大させ、これによって、このコンパートメントの強剛性を増加させ、水没の間および部分的または完全に水没した様式において、光バイオリアクターに付加的な構造的な安定を供給することを可能にする。
【0086】
リアクターシステムを上昇すべき場合、付加的なコンパートメントの塩水はポンプによって汲み出され、ポンプの反対側のバルブは、気泡が新たなコンパートメントに入ることを回避するために閉じられるだろう。上昇過程の促進のためにポンプの反対側のバルブが開かれ、それぞれのホースを通って加圧された空気または燃焼ガスが押し込まれるだろう。
【0087】
光バイオリアクターの水没または浮揚を支援するための機械的手段
藻類の増殖条件(例えば温度)を最適化するためにまたは強風といった天候に関する条件のために、光バイオリアクターの位置を迅速に適応させる必要がある場合、光バイオリアクターは水没または浮揚の促進のための機械的手段を備えてよい。そのような機械的手段は、例えば、光バイオリアクター上に伸び、下降または上昇のために配置され、光バイオリアクターの水没または浮揚を支援する、ネットまたは少なくとも1つの細長い部材(例えばロープ、ケーブルまたはロッド)を含んでよい。一般に、平行に配置され、光バイオリアクターの長さに渡って適切な距離で分散された、2つ以上の細長い部材を有していることが有用であるだろう。例えば光バイオリアクター全体が同時に沈められるように、またはリアクターの一側面が最初に水没し、リアクターの反対の側面がその後沈められるように、細長い部材は同時にまたは順に下降または上昇されてよい。
【0088】
特異的な実施形態が図4aに示される。バイオリアクター(24)上に、規則的な距離でロープ(25)が備えられており、この距離は例えば1−2メーター毎とすることができる。ロープは少なくともリアクターのサイズの長さを有しており、両端が垂直プロファイル(26)に接続される。光バイオリアクターが沈められる場合、ロープは、リアクターの各々の横の垂直プロファイルによってそれぞれ引き下げられ、リアクター(27)はロープによって押し下げられる。ロープを固定および移動させるために、様々な配置を使用してよい。1つの特異的な実施形態において、図4bに示されるように、ロープは、プラスチックまたは金属のプロファイルに沿って垂直に移動可能なT型構造(29)に固定してよい。プラスチックまたは金属プロファイルは、地面に垂直に固定され、移動可能な構造が上下に移動できるレールを含む。ロープは移動可能な構造に固定される。構造を移動させるために、エネルギーおよび機械的システムが必要である。機械的システムは各々のプロファイルにおけるピストン(30)とすることができ、または中央の1つのピストンがいくつかのプロファイルに機械的な作用を供給してよい。各々のピストンは、加圧されたガス(31)によって駆動してよい。加圧されたガスは、例えばガスチューブ、コンプレッサーによって提供されてよく、または、エミッター、例えば発電所からの加圧されたCO2に富むガスであってよい。CO2供給源は、好ましくは培養液にCO2を供給するために使用されるものと同じでもよい。
【0089】
2本以上のロープを有する実施形態において、ロープの移動は様々な方法で行なうことができる。ロープはすべて同等の速度で下へ移動させ、光バイオリアクター全体を同時に下げてよい。しかしながら、リアクターの一側面のロープを最初に降下し、それによって最初にその側面からリアクター降ろし、続いて他の側も同様に降ろすことがしばしば有利であることがわかっている。そのような段階的な手順方法はいくつかの長所を有する。リアクターの一側面が最初に降下される場合、リアクターの内部のトラップされた全てのガスが反対側面に移るだろう。そのようなシステムにおいてガス出口をこの反対側面に特異的に配置することができる。この配置は、過剰なガスを、リアクターの移動によって押し出すことを可能にする。これは、光バイオリアクター全体が同時に下げられ、それによってガス泡または塊がリアクター内のランダムな位置で生じる可能性がある場合に比べて有利であってよい。同様な原則によって、すべての培養培地が所定の位置で回収され、培養培地の位置の制御は、潜在的な後の分割を容易にするだろう。更に、すべてのバイオマスがリアクターの一側面に集まるため、採取の進行が促進される。最後に、一側面にて最初にリアクターを下げることは、必要となる力が小さく、より制御される様式で周辺水がリアクターの周囲を流れることを可能にし、生じる乱流を低減し、このプロセスを、リアクター全体が同時に下げられるプロセスよりも安定にすることができる。光バイオリアクターは非常に柔軟であり、乱流および素早く動く水によって悪影響を及ぼされる可能性があるため、これは重要な利点である。
【0090】
付加的なコンパートメントまたはチューブ、並びに上述の機械的手段は、水没または浮揚の促進の他に、水没の間および部分的または完全に水没した様式における、光バイオリアクターの物理的形状を安定させるという付加的な利点を提供する。
【0091】
サブコンパートメント
本発明の光バイオリアクターは非常に柔軟であるため、リアクターの形状は、内部および外部の衝撃および不均質性によって影響を受ける可能性がある。従って、光バイオリアクターの形状および最適な機能の保持のために、そのような衝撃および不均質性の制御が重要となる可能性がある。それ故、本発明の光バイオリアクターの操作の種々の側面に関する本発明の多数の実施形態が以下に記述される。
【0092】
薄く柔軟なリアクター材料の使用により、リアクターは、広々とした水面上に浮遊する場合、完全な平らで均質のシステムを形成する。しかしながら、リアクターシステムを不安定にすることに寄与する2つの主要な作用がある。a)光バイオリアクターの形状および挙動は、光バイオリアクター内部の大きなガス泡の形成に影響を受ける可能性がある。培養培地を通してガスCO2を泡立たせることは、藻類培養物の最適な成長率を支援するのに十分なCO2を供給するために好ましい。光バイオリアクターへのガスの一定の流入は、培養液上に1以上の大きなガス泡の形成をもたらす可能性がある。ガス泡を制御するために、様々な溶液を考慮することができる。1以上のガス出口を光バイオリアクターに接続してよい。出口の数および位置並びに出口の内径は、泡のサイズに影響を及ぼす重要な因子である。ガス泡のサイズおよび挙動を制御する別の方法は、光バイオリアクターをより小さなサブコンパートメントに分離することである。これは多数様々な方法で達成でき、その少数の例が以下に詳述される。b)培養培地の集塊が生じる可能性がある。リアクターが広々とした水面上に浮遊する限り、培養培地は、光バイオリアクターの内部で均一に分散されるだろう。リアクターが周辺水内に下げられる場合、例えば培養培地の温度を低くする必要がありまたは強風のために、この分布がゆがめられる可能性さえ存在する。この問題は一般に、光バイオリアクターの内部の1つの場所にて藻類培養培地を回収し、それにより大きな塊を形成することで、生じるだろう。これは、光バイオリアクターの形状および適切な機能をゆがめる可能性がある。特に大規模リアクターにおける、リアクターの形状および安全で適切な機能の維持のために、そのような集塊は回避されるべきである。
【0093】
集塊および大きなガス泡の形成の問題は、光バイオリアクターをより小さなサブコンパートメントに分離することにより低減または解消できる可能性があることがわかっている。
【0094】
その最も一般的な実施形態において、光バイオリアクターは、それの周囲に沿って互いに接続され、閉じられたバッグ状のコンパートメントを形成する上部シートおよび下部シートを一般に含む1つの大きな藻類コンパートメントを含む。
【0095】
図5に示される実施形態において、1つの大きなコンパートメントを含むバイオリアクターの代わりに、藻類コンパートメントは、セパレーター(33)により、多数種々の閉鎖したコンパートメント(32)に分離され、これは、例えば、光バイオリアクターの上部および下部シートを相互に固着または溶接して、2以上のより小さなサブコンパートメントを形成している。そのように形成されたサブコンパートメントは、多くの小さな光バイオリアクターとして機能し、すなわち、藻類を有する培養培地は1つのサブコンパートメントにおいてのみ塊を形成できる。サブコンパートメントはより小さな容量を有しているため、大きな塊の形成は回避される。
【0096】
光バイオリアクターは、さらに例えば、特異的な位置で上部および下部シートを相互に固着または溶接することにより、部分的に分割してよい。部分的な分割は、光バイオリアクター内の培養培地の流れおよび潜在的なガス泡を制限する可能性があるが、必ずしも完全に停止させるわけではない。
【0097】
図6aおよび6bは、光バイオリアクターが部分的に分割された本発明の実施形態を示す。藻類コンパートメント(36)を包む光バイオリアクターの上部(34)および下部(35)シートは、光バイオリアクター(37)の端で接続している。中間において、2枚のシートは、例えば固着または溶接により光バイオリアクターの内部の様々な点(38)で接続される。この実施形態による藻類コンパートメントは、浮遊する場合に必要となる均一に広がるための柔軟性を有するが、リアクター内の培養培地が大きな塊を形成することを抑制するだろう。というのは、底および蓋の層が接続されており、層の中間には限定的な量の液体しか存在しないためである。上部および下部シートの固着または溶接は、形成された光バイオリアクターサブコンパートメントにおける様々な形状を得るために、あらゆる数の種々パターンで行うことができる。
【0098】
まず、接続している領域の形状(すなわち固着点または溶接点)を変更することができる。その他の可能性を除外することなく例を単に提供すると、上部および下部の層の接続は、例えば直径1cmの小円の形状(すなわち単純な固着点の形状)とすることができる。形状はさらに、固着または溶接された部分が完全な線もしくは破線またはそれの一部を形成することを意味する長方形であってよい。
【0099】
第2に、光バイオリアクターの内部の固着または溶接された部分の位置を変更することができる。固着または溶接された点は、リアクター全体において規則的に分散させてよく、または例えば反対側面におけるバイオマスまたは空気の収集を容易にするために、一側面に集中させることができる。同様な方法において、固着または溶接された線を規則的に配置して、チューブ型パターンを形成してよい。例えば、固着または溶接された線を提供することで、光バイオリアクターにおける液体の流れを優先させるように、その他のパターンを構築してよい。これは、ギリシア(英国の庭種類)迷宮の構造にたとえることができ、これは、液体がリアクターシステムを通過する潜在的な道が唯一存在する。そのようなパターンを付加することは様々な長所をもたらす。一定の流れ方向の定義は、バイオマスの採取または新規の栄養素の追加を容易にする可能性がある。これは、これがリアクターの予め決められた位置で行われるかもしれないためである。
【0100】
別の実施形態において、光バイオリアクターの藻類コンパートメントは1つの大きな柔軟なコンパートメントから成る。光バイオリアクターが広々とした水面上に浮遊する場合、このコンパートメントは、1つの大きなコンパートメントとして機能してよく、液体およびガスはその内部で自由に移動してよい。光バイオリアクターが周辺水に降下させる場合、大きなガス泡の形成または培養培地の集塊に関する潜在的な問題の回避のために、リアクターを周辺水に降下させる前に、光バイオリアクターの藻類コンパートメントを2つ以上の様々なサブセクションに一時的に分割してよい。この分割は、例えば、光バイオリアクターの柔軟な上面に力を加えて、光バイオリアクターの上部シートを下部シートの方へ押し下げ、2以上の仮想のサブコンパートメントをリアクターの藻類コンパートメント内に形成することで達成してよい。
【0101】
力は、例えば、光バイオリアクターの上部表面を介して配置され、下方へ引かれるように配置された少なくとも1つの細長い部材(例えばロープ、ケーブルまたはロッド)によって適用してよい。特異的な実施形態が図4aに示される。光バイオリアクター(24)上に、規則的な距離のロープ(25)が設けられ、これは例えば1−2メーター毎の距離とすることができる。ロープは少なくともリアクターのサイズの長さを有し、両端において垂直のプロファイル(26)に接続される。リアクターの浮力を減少させる前に、ロープを水面より下の位置に降ろし、ロープは柔軟な光バイオリアクターを「切り」リアクターの上部シートがリアクターの下部シートに対して押し下げられるだろう。仮想のサブコンパートメント(27)がロープによって作られ、ここにおいて、培養培地(28)は周辺水よりも密度が低く、ロープを追わないため、留まる傾向がある。光バイオリアクターの密度が減少し、そのために浮力が減少してリアクターが沈み始めるとき、作られた仮想のサブコンパートメントは、より小さな独立したコンパートメントとして振る舞う。
【0102】
ロープを固定および移動させるために、様々な配置を使用してよい。1つの特異的な実施形態において、図4bに示されるように、ロープを、プラスチックまたは金属のプロファイルに沿って垂直に移動可能なT−状構造(29)に固定してよい。プラスチックまたは金属プロファイルは、地面に垂直に固定され、移動可能な構造が上下に移動できるレールを含む。ロープは移動可能な構造に固定される。構造を移動させるために、エネルギーおよび機械的システムが必要となる。機械的システムは各々のプロファイルにおけるピストン(30)とすることができ、または、中央の1つのピストンが、いくつかのプロファイルのために機械的な力を供給することができる。加圧されたガス(31)によって、各々ピストンに動力を供給することができる。加圧されたガスは、例えば、ガスチューブ、コンプレッサーによって提供してよく、または、それは、エミッター、例えば発電所からの加圧されたCO2に富むガスであってよい。CO2供給源は、好ましくは、培養液にCO2を供給するために使用されたものと同一であってもよい。
【0103】
図8に、リアクターを周辺水に下げる前に、光バイオリアクターを2以上の様々なサブセクションまたはコンパートメントに一時的に分割する一般的な原則に基づく別の実施形態が示される。この実施形態において、コンパートメント(39)はロープによって形成されない。代わりに、コンパートメントは付加的なコンパートメントまたはチューブ(40)によって形成され、それは、藻類コンパートメント(41)上部に位置し、光バイオリアクターの藻類コンパートメントにおける培養培地より高い密度を有する液体で満たすことができる。高密度の液体で満たされた場合、これらの付加的なコンパートメントまたはチューブは下へ沈み、光バイオリアクターの上部シートを下部シートに向けて押し付け、藻類コンパートメント内に仮想のサブコンパートメントを形成するだろう。
【0104】
さらなる実施形態の項目化されたリスト
本発明のさらなる実施形態が、以下の番号が付けられた項目のリストに開示される。
【0105】
1a.以下を特徴とする、光合成微生物の培養のための光バイオリアクター:
a)前記光バイオリアクターは、非チューブ状ユニットから成り、閉鎖型システムを表わし、且つ外部的に部分的に水に囲まれ、光バイオリアクターは、水塊(例えば、人工池、川、湖、海または水で満たされたくぼみ)に浮遊し、水に浮留し、または水塊の地面に位置する;
b)屈光性の生物のバイオマスが製造され、それは、あらゆる種類の生物燃料、飼料、タンパク質、アミノ酸、基本的な人間栄養のための成分(例えばタンパク質、オイル)の製造に有用であるが、栄養剤として使用されない(例えばビタミンまたはオメガ−3−脂肪酸)。
【0106】
1b.以下を特徴とする、ファインケミカルスおよび製薬の生産のための光合成微生物の培養のための光バイオリアクター:
a)光バイオリアクターは非チューブ状ユニットから成り、閉鎖型システムを表わし、且つ外部的に部分的に水に囲まれ、光バイオリアクターは、水塊(例えば、人工池、川、湖、海または水で満たされたくぼみ)に浮遊し、水に浮留し、または水塊の地面に位置する;
b)屈光性の生物のバイオマスが製造され、それは、ファインケミカルス、栄養剤、ビタミン、オメガ−3−脂肪酸、酸化防止剤(例えばカロテノイド)医薬的活性物質または栄養上の補給のための乾燥バイオマスの生産のために使用される。
【0107】
2.前記光バイオリアクターが、非チューブ状ユニットの代わりにチューブ状ユニットから成ることを特徴とする、項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【0108】
3.前記光バイオリアクターが平らな形状(フラットパネル)を有することを特徴とする項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【0109】
4.前記光バイオリアクターを囲む水塊が、前記光バイオリアクターにおける培養液の温度を制御するために使用することができることを特徴とする項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【0110】
5.前記光バイオリアクターを囲む水塊は前記光バイオリアクターを水平にするために使用でき、前記光バイオリアクターが水平位において維持されることを特徴とする項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【0111】
6.前記光バイオリアクターを囲む水塊は、前記光バイオリアクターの静水学的内圧を打ち消すことを特徴とする項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【0112】
7.前記光バイオリアクターを囲む水塊が、それ自身の重量によって引き起こされた静水圧によって、前記光バイオリアクター材料の機械的ストレスを減らすために使用されることを特徴とする項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【0113】
8.前記光バイオリアクターにおける培養液と(部分的な)周囲の水塊との間の密度の差(例えば塩分または温度の差によって生じる差)が、周辺水における前記光バイオリアクターの位置を制御する(例えば表面に浮遊する、周囲の水塊に沈む、周囲の水塊に浮留する)ように提供されることを特徴とする項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【0114】
9.前記光バイオリアクターが柔軟な材料から成り、前記光バイオリアクターにおける培養液の垂直の厚さを、前記光バイオリアクター中の培養液の量の変化によって変えることができることを特徴とする項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【0115】
10.前記光バイオリアクターは、湖、川または海といった水面で操作することができ、それ故、必ずしも土地を必要としないことを特徴とする項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【0116】
11.前記光バイオリアクターにおける培養培地は、水平速度>0cm/sを有し、エアリフト、ポンプまたは同様の装置によって移動されることを特徴とする項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【0117】
12.前記光バイオリアクターを囲む水塊は、その全体の水平の面積にわたって、前記光バイオリアクターにおける培養液の垂直の厚さをほぼ同一に維持することに寄与することを特徴とする項目1aおよび1bに記載の光バイオリアクター。
【実施例】
【0118】
柔軟なポリエチレンフィルムで作られ、7メーターx5メーターの寸法を有する柔軟な閉鎖型フラットパネル光バイオリアクターを、35g/lの塩分を有する水を含む水盤の表面に置いた。光バイオリアクターの藻類コンパートメントに、メチルブルーで着色した1,800リットルの淡水を供給した。有色の溶液(培養液を表わす)を含む光バイオリアクターは、周辺水の表面に浮遊するように自身を配置し、培養培地はリアクターの底の表面に均質に分散した。
【0119】
塩が飽和した水を藻類コンパートメントの上部側に位置する付加的なコンパートメントに供給することにより、光バイオリアクターを周辺水中に降下させた。塩水は、付加的なコンパートメントのより長い側面に沿って等しく分散された5つの液体ポートを経由して、付加的なコンパートメントの一側面のみから送られた。リアクターシステムは、より重い塩水が送り込まれた側面から沈み始めた。プロセスの間、より多くの塩水が送り込まれ、付加的なコンパートメントは完全に満たされ、藻類コンパートメントの反対側面が同様に沈み始めた。完全に沈むと、光バイオリアクターはその一般的なフラットパネル形状を回復した。
【0120】
その後、上に記述された5つの液体ポートを経由して塩水を除去することで、光バイオリアクターをその当初の状態に戻し、周辺水の表面で浮遊した。塩水の除去のために、完全に加圧された空気を付加的なコンパートメントを通して押した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光合成微生物の培養のための閉鎖型光バイオリアクターの操作方法であって、前記光バイオリアクターは培養液を含み、前記光バイオリアクターは水塊の水に部分的にまたは完全に囲まれ、前記光バイオリアクターの水塊における位置を制御するように前記培養液と周辺水との間の密度差が提供される方法。
【請求項2】
培養液を含むのに適した前記光バイオリアクターの壁が、防水且つ柔軟な材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記防水且つ柔軟な材料がポリマーに基づく材料の薄膜である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記密度差が、前記培養液と前記周辺水との間の塩分の差の供給によって提供される、上記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記密度差が、前記培養液と前記周辺水との間の温度差の供給によって提供される、上記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記密度差が、前記培養液のガス圧力の増加または減少によって提供される、上記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記培養液の密度を増大させてまたは前記周辺水の密度を減少させて、前記水塊における前記光バイオリアクターの位置が低下するように、前記密度差が提供される、上記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記培養液の密度を減少させてまたは前記周辺水の密度を増大させて、前記水塊における前記光バイオリアクターの位置が上昇するように、前記密度差が提供される、請求項1から6の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記水塊における前記光バイオリアクターの位置が維持されるように前記密度差が提供される、請求項1から6の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記光バイオリアクターは、前記光バイオリアクターの垂直位置および/または形状をさらに制御するのに適した1以上のコンパートメントまたはチューブを備えた、上記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記光バイオリアクターは、前記光バイオリアクターの垂直位置および/または形状をさらに制御するのに適した機械的手段を備えた、上記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記光バイオリアクターはフラットパネル形状を有する、上記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記光バイオリアクターは前記培養液を含むのに適した2以上のサブコンパートメントを含む、上記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記サブコンパートメントは互いに封着された請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記サブコンパートメントは、前記サブコンパートメント間の限定的な液体および/またはガスの移動が可能なように接続された、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記光バイオリアクターは前記光バイオリアクターを2以上のサブコンパートメントに一時的に分割する手段を含む、上記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記光バイオリアクターを2以上のサブコンパートメントに一時的に分割する前記手段は、前記光バイオリアクターの上部シートを前記光バイオリアクターの下部シートに押し付けて、それぞれの側のくぼみにおいて、前記光バイオリアクター内にサブコンパートメントを形成する手段を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記光バイオリアクターを2以上のサブコンパートメントに一時的に分割する前記手段は、少なくとも1つの細長い部材を含み、前記部材は、前記光バイオリアクター上に伸び、前記光バイオリアクターの上部シートを前記光バイオリアクターの下部シートに向けて押し付けるように下がり、前記少なくとも1つの細長い部材のそれぞれの側で、前記光バイオリアクターの内部にサブコンパートメントが形成されるように配置される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記光バイオリアクターを2以上のサブコンパートメントに一時的に分割する前記手段は、前記光バイオリアクターの上部シートに接して配置され且つ前記培養液よりも高い密度を有する液体で満たされるのに適した少なくとも1つのコンパートメントを含み、前記コンパートメントが高密度の液体で満たされる場合、充填されたコンパートメントは前記光バイオリアクターの前記上部シートを前記光バイオリアクターの下部シートに押し付けることが可能であり、サブコンパートメントは前記充填されたコンパートメントの各々の側において前記光バイオリアクターの内部に形成される、請求項16から18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
光合成微生物の培養のための閉鎖型光バイオリアクターであって、前記光バイオリアクターは培養液を含むのに適し、前記光バイオリアクターは水塊の水に部分的にまたは完全に囲まれるのに適し、前記光バイオリアクターは前記培養液と周辺水との間の密度差を決定する手段を含む閉鎖型光バイオリアクター。
【請求項21】
培養液を含むのに適した前記光バイオリアクターの壁は、防水且つ柔軟な材料を含む、請求項20に記載の光バイオリアクター。
【請求項22】
前記防水且つ柔軟な材料がポリマーに基づく材料の薄膜である、請求項21に記載の光バイオリアクター。
【請求項23】
前記密度差を決定する前記手段は、前記培養液の塩および/または温度を決定する手段を含む、請求項20から22の何れか1項に記載の光バイオリアクター。
【請求項24】
前記密度差を決定する前記手段は、前記周辺水の塩および/または温度を決定する手段を含む、請求項20から23の何れか1項に記載の光バイオリアクター。
【請求項25】
前記光バイオリアクターは、前記光バイオリアクターの垂直位置および/または形状をさらに制御するように適応された1以上のコンパートメントまたはチューブを備えた、請求項20から24の何れか1項に記載の光バイオリアクター。
【請求項26】
前記光バイオリアクターは、前記光バイオリアクターの垂直位置および/または形状をさらに制御するように適応された機械的手段を備えた、請求項20から25の何れか1項に記載の光バイオリアクター。
【請求項27】
前記光バイオリアクターはフラットパネル形状を有する、請求項20から26の何れか1項に記載の光バイオリアクター。
【請求項28】
前記光バイオリアクターは前記培養液を含むのに適した2以上のサブコンパートメントを含む、請求項20から27の何れか1項に記載の光バイオリアクター。
【請求項29】
前記サブコンパートメントは互いに封着された、請求項28に記載の光バイオリアクター。
【請求項30】
前記サブコンパートメントは、前記サブコンパートメント間の限定的な液体および/またはガスの移動が可能なように接続された、請求項28に記載の光バイオリアクター。
【請求項31】
前記光バイオリアクターは、前記光バイオリアクターを2以上のサブコンパートメントに一時的に分割する手段を含む、請求項20から30の何れか1項に記載の光バイオリアクター。
【請求項32】
前記光バイオリアクターを2以上のサブコンパートメントに一時的に分割する前記手段は、前記光バイオリアクターの上部シートを前記光バイオリアクターの下部シートに押し付けて、それぞれの側のくぼみにおいて、前記光バイオリアクター内にサブコンパートメントを形成する手段を含む、請求項31に記載の光バイオリアクター。
【請求項33】
前記光バイオリアクターを2以上のサブコンパートメントに一時的に分割する前記手段は、少なくとも1つの細長い部材を含み、前記部材は、前記光バイオリアクター上に伸び、前記光バイオリアクターの上部シートを前記光バイオリアクターの下部シートに向けて押し付けるように下がり、前記少なくとも1つの細長い部材のそれぞれの側で、前記光バイオリアクターの内部にサブコンパートメントが形成されるように配置される、請求項31または32に記載の光バイオリアクター。
【請求項34】
前記光バイオリアクターを2以上のサブコンパートメントに一時的に分割する前記手段は、前記光バイオリアクターの上部シートに接して配置され且つ前記培養液よりも高い密度を有する液体で満たされるのに適した少なくとも1つのコンパートメントを含み、前記コンパートメントが高密度の液体で満たされる場合、充填されたコンパートメントは、前記光バイオリアクターの前記上部シートを前記光バイオリアクターの下部シートに押し付けることが可能であり、サブコンパートメントは、前記充填されたコンパートメントの各々の側において前記光バイオリアクターの内部に形成される、請求項31または32に記載の光バイオリアクター。
【請求項1】
光合成微生物の培養のための閉鎖型光バイオリアクターの操作方法であって、前記光バイオリアクターは培養液を含み、前記光バイオリアクターは水塊の水に部分的にまたは完全に囲まれ、前記光バイオリアクターの水塊における位置を制御するように前記培養液と周辺水との間の密度差が提供される方法。
【請求項2】
培養液を含むのに適した前記光バイオリアクターの壁が、防水且つ柔軟な材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記防水且つ柔軟な材料がポリマーに基づく材料の薄膜である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記密度差が、前記培養液と前記周辺水との間の塩分の差の供給によって提供される、上記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記密度差が、前記培養液と前記周辺水との間の温度差の供給によって提供される、上記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記密度差が、前記培養液のガス圧力の増加または減少によって提供される、上記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記培養液の密度を増大させてまたは前記周辺水の密度を減少させて、前記水塊における前記光バイオリアクターの位置が低下するように、前記密度差が提供される、上記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記培養液の密度を減少させてまたは前記周辺水の密度を増大させて、前記水塊における前記光バイオリアクターの位置が上昇するように、前記密度差が提供される、請求項1から6の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記水塊における前記光バイオリアクターの位置が維持されるように前記密度差が提供される、請求項1から6の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記光バイオリアクターは、前記光バイオリアクターの垂直位置および/または形状をさらに制御するのに適した1以上のコンパートメントまたはチューブを備えた、上記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記光バイオリアクターは、前記光バイオリアクターの垂直位置および/または形状をさらに制御するのに適した機械的手段を備えた、上記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記光バイオリアクターはフラットパネル形状を有する、上記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記光バイオリアクターは前記培養液を含むのに適した2以上のサブコンパートメントを含む、上記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記サブコンパートメントは互いに封着された請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記サブコンパートメントは、前記サブコンパートメント間の限定的な液体および/またはガスの移動が可能なように接続された、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記光バイオリアクターは前記光バイオリアクターを2以上のサブコンパートメントに一時的に分割する手段を含む、上記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記光バイオリアクターを2以上のサブコンパートメントに一時的に分割する前記手段は、前記光バイオリアクターの上部シートを前記光バイオリアクターの下部シートに押し付けて、それぞれの側のくぼみにおいて、前記光バイオリアクター内にサブコンパートメントを形成する手段を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記光バイオリアクターを2以上のサブコンパートメントに一時的に分割する前記手段は、少なくとも1つの細長い部材を含み、前記部材は、前記光バイオリアクター上に伸び、前記光バイオリアクターの上部シートを前記光バイオリアクターの下部シートに向けて押し付けるように下がり、前記少なくとも1つの細長い部材のそれぞれの側で、前記光バイオリアクターの内部にサブコンパートメントが形成されるように配置される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記光バイオリアクターを2以上のサブコンパートメントに一時的に分割する前記手段は、前記光バイオリアクターの上部シートに接して配置され且つ前記培養液よりも高い密度を有する液体で満たされるのに適した少なくとも1つのコンパートメントを含み、前記コンパートメントが高密度の液体で満たされる場合、充填されたコンパートメントは前記光バイオリアクターの前記上部シートを前記光バイオリアクターの下部シートに押し付けることが可能であり、サブコンパートメントは前記充填されたコンパートメントの各々の側において前記光バイオリアクターの内部に形成される、請求項16から18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
光合成微生物の培養のための閉鎖型光バイオリアクターであって、前記光バイオリアクターは培養液を含むのに適し、前記光バイオリアクターは水塊の水に部分的にまたは完全に囲まれるのに適し、前記光バイオリアクターは前記培養液と周辺水との間の密度差を決定する手段を含む閉鎖型光バイオリアクター。
【請求項21】
培養液を含むのに適した前記光バイオリアクターの壁は、防水且つ柔軟な材料を含む、請求項20に記載の光バイオリアクター。
【請求項22】
前記防水且つ柔軟な材料がポリマーに基づく材料の薄膜である、請求項21に記載の光バイオリアクター。
【請求項23】
前記密度差を決定する前記手段は、前記培養液の塩および/または温度を決定する手段を含む、請求項20から22の何れか1項に記載の光バイオリアクター。
【請求項24】
前記密度差を決定する前記手段は、前記周辺水の塩および/または温度を決定する手段を含む、請求項20から23の何れか1項に記載の光バイオリアクター。
【請求項25】
前記光バイオリアクターは、前記光バイオリアクターの垂直位置および/または形状をさらに制御するように適応された1以上のコンパートメントまたはチューブを備えた、請求項20から24の何れか1項に記載の光バイオリアクター。
【請求項26】
前記光バイオリアクターは、前記光バイオリアクターの垂直位置および/または形状をさらに制御するように適応された機械的手段を備えた、請求項20から25の何れか1項に記載の光バイオリアクター。
【請求項27】
前記光バイオリアクターはフラットパネル形状を有する、請求項20から26の何れか1項に記載の光バイオリアクター。
【請求項28】
前記光バイオリアクターは前記培養液を含むのに適した2以上のサブコンパートメントを含む、請求項20から27の何れか1項に記載の光バイオリアクター。
【請求項29】
前記サブコンパートメントは互いに封着された、請求項28に記載の光バイオリアクター。
【請求項30】
前記サブコンパートメントは、前記サブコンパートメント間の限定的な液体および/またはガスの移動が可能なように接続された、請求項28に記載の光バイオリアクター。
【請求項31】
前記光バイオリアクターは、前記光バイオリアクターを2以上のサブコンパートメントに一時的に分割する手段を含む、請求項20から30の何れか1項に記載の光バイオリアクター。
【請求項32】
前記光バイオリアクターを2以上のサブコンパートメントに一時的に分割する前記手段は、前記光バイオリアクターの上部シートを前記光バイオリアクターの下部シートに押し付けて、それぞれの側のくぼみにおいて、前記光バイオリアクター内にサブコンパートメントを形成する手段を含む、請求項31に記載の光バイオリアクター。
【請求項33】
前記光バイオリアクターを2以上のサブコンパートメントに一時的に分割する前記手段は、少なくとも1つの細長い部材を含み、前記部材は、前記光バイオリアクター上に伸び、前記光バイオリアクターの上部シートを前記光バイオリアクターの下部シートに向けて押し付けるように下がり、前記少なくとも1つの細長い部材のそれぞれの側で、前記光バイオリアクターの内部にサブコンパートメントが形成されるように配置される、請求項31または32に記載の光バイオリアクター。
【請求項34】
前記光バイオリアクターを2以上のサブコンパートメントに一時的に分割する前記手段は、前記光バイオリアクターの上部シートに接して配置され且つ前記培養液よりも高い密度を有する液体で満たされるのに適した少なくとも1つのコンパートメントを含み、前記コンパートメントが高密度の液体で満たされる場合、充填されたコンパートメントは、前記光バイオリアクターの前記上部シートを前記光バイオリアクターの下部シートに押し付けることが可能であり、サブコンパートメントは、前記充填されたコンパートメントの各々の側において前記光バイオリアクターの内部に形成される、請求項31または32に記載の光バイオリアクター。
【図1a】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【公表番号】特表2011−524736(P2011−524736A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542701(P2010−542701)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【国際出願番号】PCT/IB2009/000076
【国際公開番号】WO2009/090549
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(510192891)アベストン・グリフォード・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【国際出願番号】PCT/IB2009/000076
【国際公開番号】WO2009/090549
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(510192891)アベストン・グリフォード・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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