説明

光パケット交換装置

【課題】パケット密度が変動した場合であっても、好適に光パケット信号のスイッチングを行う。
【解決手段】光パケット交換装置10は、受信した光パケット信号を分岐する光カプラ13と、分岐された一方の光パケット信号の方路を切り替えて出力する光スイッチ部12と、光スイッチ部12を制御する光スイッチ制御部14とを備える。光スイッチ制御部14は、分岐された他方の光パケット信号を電気のパケット信号に変換する光電変換部16と、光電変換部16と容量結合されたシリアル/パラレル変換部18と、受信した光パケット信号のパケット密度を検出するパケット密度検出部23と、パケット密度検出部23により検出されたパケット密度情報に応じて、シリアル/パラレル変換部18に入力されるパケット信号のDCオフセット電圧を調整するDCオフセット調整部2とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光パケット信号に付与された経路情報に従って光スイッチを切り替えることにより、光パケット単位でのパケット交換を可能とする光パケット交換方式に関する。
【背景技術】
【0002】
波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)を用いた光伝送システムにおいて、波長選択スイッチ(WSS:wavelength selective switch)等を用いることで、波長単位のパス切替を行う技術が実用化されている。その次の技術として、切替を行う単位を例えばIPパケット(10GEther(10 Gigabit Ethernet(登録商標))信号等)一つ一つという細かい単位とし、各々を光パケットという形式に変換して、超高速の光スイッチで方路切り替えを行う光パケット交換方式が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
IPパケットはデータが存在しない間は有意な情報が転送されておらず、その分だけ帯域が無駄になっているが、光パケット交換方式が実現すれば、データが存在しない時間帯を別のパケットが占有できることになる。従って、光パケット交換方式は、伝送路の帯域利用効率を飛躍的に高める可能性があり、将来の技術として有望視されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−235986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1は、光パケット信号の構成を示す。光パケット信号は、図1に示すように、ユーザ領域であるデータ領域と、データ領域の前に設けられたプリアンブル、同期パターン、および方路情報と、データ領域の後に設けられた誤り検出用のFCS(Frame check sequence)とから構成される。プリアンブルは、光パケット信号を受信する光受信器の安定化に使用される。プリアンブルとフレーム同期パターンは固定パターンである。同期パターンは、フレーム同期の確立に利用される。方路情報は、パケット長情報と、宛先情報と、送信元情報とを含む。
【0006】
光パケット交換方式においては、図1に示すように、隣接する光パケット間に「ギャップ時間」と呼ばれる光信号が存在しない時間帯が存在する。ここで、パケット存在時間とギャップ時間の合計時間に対するパケット存在時間の割合(パケット存在時間/(パケット存在時間+ギャップ時間))を「パケット密度」と定義する。光パケット交換方式においては、パケット毎にデータ量が異なり、パケット存在時間が変化するため、パケット密度がリアルタイムに変化する。
【0007】
ところで、光パケット交換装置においては、受信した光パケット信号は2つに分岐された後、一方の光パケット信号は光スイッチ部に入力され、他方の光パケット信号は光スイッチ部を制御するための光スイッチ制御部に入力される。
【0008】
図2は、光スイッチ制御部の構成の一例を示す。図2に示すように、光スイッチ制御部100は、光電変換部101と、電気処理部102とを備える。
【0009】
光電変換部101は、入力された光パケット信号を電気のパケット信号DTに変換するフォトダイオード103と、パケット信号DTからクロック信号CLKを抽出するクロック抽出部104と、パケット信号DTを差動パケット信号DT−P,DT−Nに変換して出力する差動出力アンプ105と、クロック信号CLKを差動クロック信号CLK−P,CLK−Nに変換して出力する差動出力アンプ106とを備える。
【0010】
電気処理部102は、光電変換部101からの差動パケット信号DT−P,DT−Nが入力される差動入力アンプ109と、光電変換部101からの差動クロック信号CLK−P,CLK−Nが入力される差動入力アンプ110と、パケット信号DTから方路情報を抽出し、該方路情報に応じて光スイッチ制御信号を生成するパケット処理部111とを備える。差動入力アンプ109,110に入力される差動パケット信号DT−P,DT−N、差動クロック信号CLK−P,CLK−Nが通る信号線は、終端抵抗107,108により50Ω終端されている。
【0011】
光電変換部101の差動出力アンプ105,106と、電気処理部102の差動入力アンプ109,110とは、カップリングコンデンサ112,113を介して容量結合されている。これは、光電変換部101の差動出力アンプ105,106と、電気処理部102の差動入力アンプ109,110とが異なる電位インタフェースを有しており、それぞれを直接接続することができないためである。カップリングコンデンサ112,113により、光電変換部101の差動出力アンプ105,106から出力された差動パケット信号DT−P,DT−Nおよび差動クロック信号CLK−P,CLK−NのDC(直流)成分が取り除かれる。
【0012】
図3は、パケット密度が高い場合に電気処理部に入力される差動パケット信号の一例を示す。この場合、差動パケット信号のポジティブ信号DT−P(実線)とネガティブ信号DT−N(破線)のDCレベルは共に0V(GND)を中心とした振幅となる。このため、ポジティブ信号DT−Pとネガティブ信号DT−Nとが理想的な差動状態(H電位が同じ且つL電位が同じ)となり品質の高い信号伝送が可能となる。
【0013】
図4は、パケット密度が低い場合に電気処理部に入力される差動パケット信号の一例を示す。この場合、ポジティブ信号DT−P(実線)のL電位が0Vに近づき、ネガティブ信号DT−N(破線)のH電位が0Vに近づく。このため、ポジティブ信号DT−Pとネガティブ信号DT−Nが重なる電位が小さくなる。その結果、パケット処理部111にて差動パケット信号を再生した場合にデューティ比が理想である1/2からずれ、信号が劣化する。パケット信号が劣化すると、パケット信号から方路情報を抽出できなくなり、光パケット信号のスイッチングが行えなくなる可能性がある。
【0014】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、パケット密度が変動する光パケット交換方式において、好適に光パケット信号のスイッチングを行うことのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の光パケット交換装置は、受信した光パケット信号を分岐する分岐部と、分岐された一方の光パケット信号の方路を切り替えて出力する光スイッチ部と、分岐された他方の光パケット信号を電気のパケット信号に変換した後、該パケット信号から方路情報を抽出し、該方路情報に応じて光スイッチ部を制御する光スイッチ制御部であって、パケット信号に対して所定の処理を行う第1電気回路と、第1電気回路の後段に容量結合されたパケット信号に対して所定の処理を行う第2電気回路とを含む光スイッチ制御部と、受信した光パケット信号のパケット密度を検出するパケット密度検出部と、パケット密度検出部により検出されたパケット密度情報に応じて、第2電気回路に入力されるパケット信号のDCオフセット電圧を調整するDCオフセット調整部とを備える。
【0016】
第1電気回路と第2電気回路との間において、パケット信号は差動信号であり、DCオフセット調整部は、差動信号におけるポジティブ信号およびネガティブ信号の少なくとも一方のDCオフセット電圧を調整してもよい。
【0017】
DCオフセット調整部は、パケット密度とDCオフセット電圧との関係を記載したテーブルを参照して、DCオフセット電圧を調整してもよい。
【0018】
パケット密度検出部は、一定時間内の受信パケット数をカウントするカウント部と、各パケット信号のパケット長を検出するパケット長検出部と、受信パケット数情報およびパケット長情報に基づいて、パケット密度を算出する算出部とを備えてもよい。
【0019】
分岐部は、パケット密度情報が格納された光パケット信号を受信し、パケット密度検出部は、光パケット信号に格納されたパケット密度情報を抽出してもよい。
【0020】
本発明の別の態様もまた、光パケット交換装置である。この装置は、受信した光パケット信号を分岐する分岐部と、分岐された一方の光パケット信号の方路を切り替えて出力する光スイッチ部と、分岐された他方の光パケット信号を電気のパケット信号に変換した後、該パケット信号から方路情報を抽出し、該方路情報に応じて光スイッチ部を制御する光スイッチ制御部であって、パケット信号に対して所定の処理を行う第1電気回路と、第1電気回路の後段に容量結合されたパケット信号に対して所定の処理を行う第2電気回路とを含む光スイッチ制御部と、受信した光パケット信号のエラーを検出するエラー検出部と、エラー検出部により検出されたエラー情報に応じて、第2電気回路に入力されるパケット信号のDCオフセット電圧を調整するDCオフセット調整部とを備える。
【0021】
第1電気回路と第2電気回路との間において、パケット信号は差動信号であり、DCオフセット調整部は、差動信号におけるポジティブ信号およびネガティブ信号の少なくとも一方のDCオフセット電圧を調整してもよい。
【0022】
DCオフセット調整部は、エラー検出部により検出されるエラーが最小となるようDCオフセット電圧を調整してもよい。
【0023】
エラー検出部は、FCSエラーを検出するよう構成されていてもよい。
【0024】
DCオフセット調整部により調整されたDCオフセット電圧を格納するメモリ部をさらに備え、DCオフセット調整部は、当該装置が再起動されたときに、メモリ部に格納された電圧値に基づいて、DCオフセット電圧を調整してもよい。
【0025】
DCオフセット調整部は、可変抵抗の抵抗値を変化させることによりDCオフセット電圧を調整するよう構成されていてもよい。
【0026】
DCオフセット調整部は、バイアス電圧を変化させることによりDCオフセット電圧を調整するよう構成されていてもよい。
【0027】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システム、プログラム、プログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、パケット密度が変動する光パケット交換方式において、好適に光パケット信号のスイッチングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】光パケット信号の構成を示す図である。
【図2】光スイッチ制御部の構成の一例を示す図である。
【図3】パケット密度が高い場合に電気処理部に入力される差動パケット信号の一例を示す図である。
【図4】パケット密度が低い場合に電気処理部に入力される差動パケット信号の一例を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る光パケット交換装置を説明するための図である。
【図6】パケット密度検出部の構成を説明するための図である。
【図7】DCオフセット調整部の一実施形態を説明するための図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る光パケット交換装置の動作を説明するための図である。
【図9】DCオフセット調整部の別の実施形態を説明するための図である。
【図10】光パケット信号の別の構成を示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る光パケット交換装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る光パケット交換装置について説明する。
【0031】
(第1実施形態)
図5は、本発明の第1実施形態に係る光パケット交換装置を説明するための図である。図5に示すように、光パケット交換装置10は、光カプラ13と、光スイッチ部12と、光スイッチ制御部14とを備える。伝送路を経由して光パケット交換装置10に入力された光パケット信号11は、光カプラ13で2つに分岐される。光パケット信号は、例えば10GEther等の光パケット信号であってよい。
【0032】
光カプラ13にて分岐された一方の光パケット信号11aは、光スイッチ制御部14に入力され、他方の光パケット信号11bは、光遅延線34を介して光スイッチ部12に入力される。光スイッチ制御部14は、光パケット信号11aから方路情報を抽出し、該方路情報に応じて光スイッチ部12を制御する。光スイッチ部12は、光スイッチ制御部14からの光スイッチ制御信号に基づいて光パケット信号11bの方路を切り替えて出力する。
【0033】
光スイッチ制御部14は、光電変換部16と、シリアル/パラレル変換部18と、並び検出部17と、並び換え部19と、フレーム同期部20と、パケット密度検出部23と、方路検出部24と、制御信号生成部26と、DCオフセット調整部22と、メモリ部27とを備える。
【0034】
光電変換部16は、受信した光パケット信号11aを光電変換した後、増幅、クロック抽出、識別再生などの所定の処理を施して、電気のパケット信号DTとクロック信号CLK1をシリアル/パラレル変換部18に出力する。
【0035】
光電変換部16とシリアル/パラレル変換部18とは、カップリングコンデンサにより容量結合されている。パケット信号DTとクロック信号CLKは、カップリングコンデンサによりDC成分をカットされた後、シリアル/パラレル変換部18に入力される。
【0036】
シリアル/パラレル変換部18は、パケット信号DTをシリアル/パラレル変換して、パラレルパケット信号DTSを出力すると共に、クロック信号CLK1を分周して分周クロック信号CLK2を出力する。例えば、シリアル/パラレル変換部18は、1:8のシリアル/パラレル変換を行う。例えばシリアル/パラレル変換部18に10Gbpsのパケット信号DTと、10GHzのクロック信号CLK1が入力される場合、1.25Gbps×8本のパラレルパケット信号DTSと、1.25GHzの分周クロック信号CLK2とがシリアル/パラレル変換部18から出力される。
【0037】
シリアル/パラレル変換部18から出力されたパラレルパケット信号DTSと分周クロック信号CLK2は、並び換え部19に入力される。また、パラレルパケット信号DTSと分周クロック信号CLK2は、並び検出部17にも入力される。並び検出部17は、パラレルパケット信号に含まれるフレーム同期パターンがどのような並びであるかを検出する。並び検出部17は、検出したフレーム同期パターンの並び情報を並び換え部19に出力する。並び換え部19は、該並び情報に基づいて、フレーム同期パターンが同一位相に並ぶようパラレルパケット信号を並び換える。
【0038】
並び換え部19によって並び換えられたパラレルパケット信号DTSと分周クロック信号CLK2は、フレーム同期部20に入力される。フレーム同期部20は、所定のフレーム同期パターンを検出することで、光パケット信号のフレーム同期を確立する。
【0039】
フレーム同期部20にてフレーム同期が取られたパラレルパケット信号DTSと分周クロック信号CLK2は、方路検出部24に入力される。方路検出部24は受信したパラレルパケット信号DTSから方路情報を検出する。
【0040】
制御信号生成部26は、方路検出部24により検出された方路情報に従って、光スイッチ部12内の光スイッチの開閉を制御するための光スイッチ制御信号を生成し、光スイッチ部12に出力する。
【0041】
また、フレーム同期部20にてフレーム同期が取られたパラレルパケット信号DTSと分周クロック信号CLK2は、パケット密度検出部23にも出力される。パケット密度検出部23は、入力されたパラレルパケット信号DTSに基づいてパケット密度を検出し、検出したパケット密度情報をDCオフセット調整部22に出力する。
【0042】
DCオフセット調整部22は、パケット密度検出部23からフィードバックされたパケット密度情報に応じて、シリアル/パラレル変換部18に入力されるパケット信号DTのDCオフセット電圧を調整する。
【0043】
メモリ部27は、DCオフセット調整部22により調整されたDCオフセット電圧を格納する。DCオフセット調整部は、当該装置が再起動されたときに、メモリ部27に格納された電圧値に基づいて、パケット信号DTのDCオフセット電圧を調整する。これにより、再起動前に設定されたDCオフセット電圧にてパケット信号を受信できる。
【0044】
一方、光カプラ13にて分岐された他方の光パケット信号11bは、光遅延線34を通った後、光スイッチ部12に入力される。光カプラ13で分岐された光パケット信号11bを光スイッチ部12に直接入力した場合、光スイッチ制御部14から出力される光スイッチ制御信号は、光パケット信号11bが光スイッチ部12に到着するタイミングに間に合わず、光パケット信号11bは光スイッチ部12を通過できない。そこで、光カプラ13と光スイッチ部12との間に光遅延線34を設けることにより、光パケット信号11bに対する光スイッチ制御信号の遅延を解消する。光遅延線34は、光ファイバ長を調整することにより遅延時間を調整できる。
【0045】
光スイッチ部12は、入力された光パケット信号11bを2つに分岐する光カプラ30と、分岐された光パケット信号を受ける第1光スイッチ32aおよび第2光スイッチ32bとを備える、1×2の光スイッチである。第1光スイッチ32aおよび第2光スイッチ32bは、例えば半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)を用いたものや、LN強度変調器を用いたものを利用できる。第1光スイッチ32aおよび第2光スイッチ32bは、制御信号生成部26からの光スイッチ制御信号によりオン/オフを制御される。例えば、光パケット信号11bを方路1に出力する場合、第1光スイッチ32aがオン状態(閉状態)とされ、第2光スイッチ32bがオフ状態(開状態)にされる。これにより、光パケット信号11bは、第1光スイッチ32aのみ通過し、方路1に出力される。
【0046】
図6は、パケット密度検出部23の構成を説明するための図である。図6に示すように、パケット密度検出部23は、発振器60と、タイマー部61と、パケット数カウント部62と、パケット長検出部63と、パケット密度算出部64とを備える。
【0047】
パケット数カウント部62には、フレーム同期部20からパラレルパケット信号DTSと分周クロック信号CLK2が入力される。パケット数カウント部62は、発振器60からのカウンタ用クロックを用いて、一定時間内に入力されたパラレルパケット信号DTSの数をカウントする。ここでは、1つのパケット信号DTSから分割された複数のパラレルパケット信号DTSを、1つのパケット信号として数える。累積パケット数は、パケット密度算出部64に送られる。
【0048】
パケット長検出部63にも、フレーム同期部20からパラレルパケット信号DTSと分周クロック信号CLK2が入力される。パケット長検出部63は、パラレルパケット信号DTSからパケット長情報を抽出し、一定時間内に入力されたパケット信号のパケット長を累積する。パケット長とは、個々のパケット信号のデータ長である。累積パケット長は、パケット密度算出部64に送られる。
【0049】
パケット密度算出部64には、パケット数カウント部62から累積パケット数情報が入力され、パケット長検出部63から累積パケット長情報が入力される。また、パケット密度算出部64には、プリアンブル長情報、同期パターン長情報、経路情報長情報、およびFCS長情報が入力される。プリアンブル長、同期パターン長、経路情報長、およびFCS長は固定値である。パケット密度算出部64は、入力されたこれらの情報に基づいて、パケット密度を算出する。パケット密度の算出式を下記の(1)式に示す。
パケット密度=累積パケット数×(プリアンブル長+同期パターン長+経路情報長+パケット長+FCS長)/一定時間 ・・・(1)
【0050】
タイマー部61は、発振器60から出力されたカウンタ用クロックを分周し、リセット用クロックを生成する。このリセット用クロックは、パケット数カウント部62、パケット長検出部63およびパケット密度算出部64に送られる。このリセット用クロックにより所定の監視周期ごとに累積値などがリセットされ、再度パケット密度が算出される。
【0051】
図7は、DCオフセット調整部の一実施形態を説明するための図である。図7は、光スイッチ制御部14における光電変換部16、DCオフセット調整部22、およびシリアル/パラレル変換部18の部分を示す。
【0052】
光電変換部16は、入力された光パケット信号11aを電気のパケット信号DTに変換するフォトダイオード33と、パケット信号DTからクロック信号CLK1を抽出するクロック抽出部35と、パケット信号DTを差動パケット信号DT−P,DT−Nに変換して出力する差動出力アンプ36と、クロック信号CLK1を差動クロック信号CLK1−P,CLK1−Nに変換して出力する差動出力アンプ37とを備える。
【0053】
シリアル/パラレル変換部18は、光電変換部16からの差動パケット信号DT−P,DT−Nが入力される差動入力アンプ48と、光電変換部16からの差動クロック信号CLK1−P,CLK1−Nが入力される差動入力アンプ49と、パケット信号DTとクロック信号CLK1をシリアル/パラレル変換するシリアル/パラレル変換器50とを備える。
【0054】
本実施形態において、光電変換部16の差動出力アンプ36,37と、シリアル/パラレル変換部18の差動入力アンプ48,49とは、異なる電位インタフェースを有している。従って、光電変換部16とシリアル/パラレル変換部18は、カップリングコンデンサ38,39,40,41を介して容量結合されている。
【0055】
差動出力アンプ36から出力された差動パケット信号のポジティブ信号DT−PのDC成分は、カップリングコンデンサ38によりカットされる。また、差動出力アンプ36から出力された差動パケット信号のネガティブ信号DT−NのDC成分は、カップリングコンデンサ39によりカットされる。また、差動出力アンプ37から出力された差動クロック信号のポジティブ信号CLK1−PのDC成分は、カップリングコンデンサ40によりカットされる。また、差動出力アンプ37から出力された差動クロック信号のネガティブ信号CLK1−NのDC成分は、カップリングコンデンサ41によりカットされる。これらの差動パケット信号DT−P,DT−Nおよび差動クロック信号CLK1−P,CLK1−Nが通る信号線51,52,53,54は、終端抵抗42,43,46,47により50Ω終端されている。
【0056】
DCオフセット調整部22は、終端抵抗42、43と、電子制御可能な可変抵抗45と、可変抵抗45を制御する可変抵抗制御部44とを備える。本実施形態において、DCオフセット調整部22は、差動パケット信号のポジティブ信号DT−PのDCオフセット電圧を調整する。「DCオフセット電圧」とは、信号のDCレベルの0V(GND)からのずれ量である。
【0057】
図7に示すように、可変抵抗45の一方の端子は、所定のバイアス電圧V1に接続されている。また、可変抵抗45の他方の端子は、DC成分がカットされたポジティブ信号DT−Pが通る信号線51に接続されている。またこの信号線51は、上述のように50Ωの終端抵抗42を介して接地されている。従って、ポジティブ信号DT−PのDCオフセット電圧V2は、バイアス電圧V1を可変抵抗45と終端抵抗42とで分圧した値となる。以下に、ポジティブ信号DT−PのDCオフセット電圧V2の算出式を下記の(2)式に示す。
V2=(V1/(R2+R1))×R1 ・・・(2)
ここで、R1は終端抵抗42の抵抗値(すなわち50Ω)、R2は可変抵抗45の抵抗値である。
【0058】
(2)式から分かるように、可変抵抗制御部44により可変抵抗45の抵抗値R2を変化させると、DCオフセット電圧V2を調整することができる。本実施形態において、可変抵抗制御部44は、パケット密度検出部23からのパケット密度情報に応じて、可変抵抗45の抵抗値を変化させ、DCオフセット電圧V2を調整する。
【0059】
図8は、本発明の第1実施形態に係る光パケット交換装置の動作を説明するための図である。図8は、パケット密度が低い場合にシリアル/パラレル変換部18に入力される差動パケット信号を示している。図8において、破線はネガティブ信号DT−Nを示し、一点鎖線は、DCオフセット電圧調整を行わない場合のポジティブ信号DT−Pを示す。ポジティブ信号DT−PのDCオフセット電圧を調整しない場合、図4において説明したように、ポジティブ信号DT−PのL電位が0Vに近づき、ネガティブ信号DT−NのH電位が0Vに近づく。このため、ポジティブ信号DT−Pとネガティブ信号DT−Nが重なる電位が小さくなる。
【0060】
図8において、実線は、DCオフセット電圧調整を行った場合のポジティブ信号DT−Pを示す。可変抵抗制御部44は、パケット密度に応じてポジティブ信号DT−PのDCオフセット電圧を調整する。図8に示す例ではパケット密度が低いので、可変抵抗制御部44はDCオフセット電圧が大きくなるよう可変抵抗45の抵抗値を制御する。これにより、ポジティブ信号DT−Pとネガティブ信号DT−Nが重なる電位を大きくすることができ、シリアル/パラレル変換部18に入力される差動パケット信号の品質を向上できる。上述したように光パケット交換方式においては、パケット密度は、時間の経過と共に変化する。例えばその後パケット密度が高くなってくれば、可変抵抗制御部44は、DCオフセット電圧が小さくなるよう可変抵抗45の抵抗値を制御する。
【0061】
このように、本実施形態に係る光パケット交換装置10によれば、パケット密度が変動した場合も、シリアル/パラレル変換部18に入力される差動パケット信号の品質を維持することができる。その結果、パケット信号から確実に方路情報を抽出できるようになり、好適に光パケット信号のスイッチングを行うことができる。
【0062】
パケット密度とポジティブ信号DT−PのDCレベルの関係は、予め実験やシミュレーションによって求めることができる。従って、パケット密度と、ポジティブ信号DT−Pとネガティブ信号DT−Nが重なる電位を所定の基準値以上にするのに必要なDCオフセット電圧との関係も予め求めることができる。可変抵抗制御部44は、このようなパケット密度とDCオフセット電圧との関係を記載したテーブルを参照して、DCオフセット電圧を調整してもよい。
【0063】
上述の実施形態では、ポジティブ信号DT−PのDCオフセット電圧を調整する構成としたが、これに代えて、ネガティブ信号DT−NのDCオフセット電圧を調整する構成としてもよい。また、ポジティブ信号DT−Pとネガティブ信号DT−Nの両方を調整する構成としてもよい。
【0064】
図9は、DCオフセット調整部の別の実施形態を説明するための図である。図9に示すDCオフセット調整部22において、図7に示すDCオフセット調整部と同一又は対応する構成要素については同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0065】
本実施形態に係るDCオフセット調整部22においては、可変抵抗45に代えて、抵抗値が固定の抵抗器55が設けられている。また、このDCオフセット調整部22においては、可変抵抗制御部44に代えて、バイアス電圧制御部57およびD/A変換部56が設けられている。
【0066】
本実施形態において、バイアス電圧制御部57は、パケット密度検出部23からのパケット密度情報に応じて、D/A変換部56を介してバイアス電圧V1を変化させる。(2)式から分かるように、バイアス電圧V1を変化させることにより、DCオフセット電圧V2を調整することができる。
【0067】
図10は、光パケット信号の別の構成を示す。上述の実施形態においては、パケット密度検出部23は、自らパケット密度を算出していた。しかしながら、図10に示すように、受信する光パケット信号にパケット密度情報が格納されている場合には、このパケット密度情報を抽出し、DCオフセット調整部22に送ってもよい。この場合、光パケット信号の送信装置側の構成を変更する必要があるが、光パケット交換装置10においてパケット密度の算出が不要となるという利点がある。
【0068】
(第2実施形態)
図11は、本発明の第2実施形態に係る光パケット交換装置を説明するための図である。図11に示す光パケット交換装置10において、図5に示す光パケット交換装置と同一または対応する構成要素については同一の符号を付すと共に、重複する説明は適宜省略する。
【0069】
図11に示す光パケット交換装置10は、パケット密度検出部23に代えて、FCSエラー検出部70を設けた点が図5に示す光パケット交換装置と異なる。
【0070】
FCSエラー検出部70には、フレーム同期部20からパラレルパケット信号DTSと分周クロック信号CLK2が入力される。FCSエラー検出部70は、パラレルパケット信号DTSに含まれるFCS情報を抽出する。このFCS情報は、光パケット信号の送信装置にて演算された情報である。また、FCSエラー検出部70は、受信したパラレルパケット信号DTSのFCSを演算する。抽出したFCS情報と演算したFCSとを比較することで、FCSエラーを検出する。このFCSエラー情報は、DCオフセット調整部22に送られる。
【0071】
DCオフセット調整部22は、FCSエラー検出部70からフィードバックされたFCSエラー情報に応じて、シリアル/パラレル変換部18に入力されるパケット信号DTのDCオフセット電圧を調整する。より具体的には、FCSエラー検出部70は、所定の電圧範囲内においてDCオフセット電圧を徐々に変化させながら、FCSエラーを検出していく。測定したFCSエラー情報は、メモリ部27に格納される。所定の電圧範囲内におけるFCSエラー検出が完了後、DCオフセット調整部22はメモリ部27を参照してFCSエラーが最小となるDCオフセット電圧を選択する。DCオフセット調整部22は、図7に示すように可変抵抗45の抵抗値を制御することにより、パケット信号DTのDCオフセット電圧を調整してもよいし、図9に示すように、バイアス電圧を制御することにより、パケット信号DTのDCオフセット電圧を調整してもよい。
【0072】
以上のように構成された光パケット交換装置10によれば、FCSエラー情報に応じてパケット信号DTのDCオフセット電圧を調整することで、パケット密度が変動した場合も、シリアル/パラレル変換部18に入力される差動パケット信号の品質を維持することができる。その結果、パケット信号から確実に方路情報を抽出できるようになり、好適に光パケット信号のスイッチングを行うことができる。
【0073】
第1実施形態と同様に、メモリ部27は、DCオフセット調整部22により調整されたDCオフセット電圧を格納してもよい。この場合、DCオフセット調整部は、当該装置が再起動されたときに、メモリ部27に格納された電圧値に基づいて、パケット信号DTのDCオフセット電圧を調整する。これにより、再起動前に設定されたDCオフセット電圧にてパケット信号を受信できる。
【0074】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せによりいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0075】
例えば、上述の実施形態では、光電変換部16とシリアル/パラレル変換部18とが容量結合されている場合に、シリアル/パラレル変換部18に入力されるパケット信号DTのDCオフセット電圧を調整した。しかしながら、DCオフセット電圧の調整ポイントは、光電変換部16とシリアル/パラレル変換部18の間に限られない。例えば、並び換え部19とフレーム同期部20とが容量結合されている場合には、フレーム同期部20に入力されるパケット信号に対してDCオフセット電圧の調整がなされてもよい。
【0076】
また、上述の実施形態では、差動パケット信号のDCオフセット電圧を調整する構成について説明したが、シングルエンド信号のDCオフセット電圧を調整する構成であってもよい。
【0077】
また、上述の第2実施形態では、FCSエラーに応じてDCオフセット電圧を調整する構成を説明したが、FCSを用いてエラーを検出する場合に限られず、他の誤り検出方式が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 光パケット交換装置、 12 光スイッチ部、 13 光カプラ、 14 光スイッチ制御部、 16 光電変換部、 17 並び検出部、 18 シリアル/パラレル変換部、 19 並び換え部、 20 フレーム同期部、 22 DCオフセット調整部、 23 パケット密度検出部、 24 方路検出部、 26 制御信号生成部、 27 メモリ部、 34 光遅延線、 44 可変抵抗制御部、 45 可変抵抗、 57 バイアス電圧制御部、 62 パケット数カウント部、 63 パケット長検出部、 64 パケット密度算出部、 70 FCSエラー検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した光パケット信号を分岐する分岐部と、
分岐された一方の光パケット信号の方路を切り替えて出力する光スイッチ部と、
分岐された他方の光パケット信号を電気のパケット信号に変換した後、該パケット信号から方路情報を抽出し、該方路情報に応じて前記光スイッチ部を制御する光スイッチ制御部であって、パケット信号に対して所定の処理を行う第1電気回路と、前記第1電気回路の後段に容量結合されたパケット信号に対して所定の処理を行う第2電気回路とを含む光スイッチ制御部と、
受信した光パケット信号のパケット密度を検出するパケット密度検出部と、
前記パケット密度検出部により検出されたパケット密度情報に応じて、前記第2電気回路に入力されるパケット信号のDCオフセット電圧を調整するDCオフセット調整部と、
を備えることを特徴とする光パケット交換装置。
【請求項2】
前記第1電気回路と前記第2電気回路との間において、パケット信号は差動信号であり、
前記DCオフセット調整部は、差動信号におけるポジティブ信号およびネガティブ信号の少なくとも一方のDCオフセット電圧を調整することを特徴とする請求項1に記載の光パケット交換装置。
【請求項3】
前記DCオフセット調整部は、パケット密度とDCオフセット電圧との関係を記載したテーブルを参照して、DCオフセット電圧を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の光パケット交換装置。
【請求項4】
前記パケット密度検出部は、
一定時間内の受信パケット数をカウントするカウント部と、
各パケット信号のパケット長を検出するパケット長検出部と、
受信パケット数情報およびパケット長情報に基づいて、パケット密度を算出する算出部と、
を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光パケット交換装置。
【請求項5】
前記分岐部は、パケット密度情報が格納された光パケット信号を受信し、
前記パケット密度検出部は、光パケット信号に格納されたパケット密度情報を抽出することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光パケット交換装置。
【請求項6】
受信した光パケット信号を分岐する分岐部と、
分岐された一方の光パケット信号の方路を切り替えて出力する光スイッチ部と、
分岐された他方の光パケット信号を電気のパケット信号に変換した後、該パケット信号から方路情報を抽出し、該方路情報に応じて前記光スイッチ部を制御する光スイッチ制御部であって、パケット信号に対して所定の処理を行う第1電気回路と、前記第1電気回路の後段に容量結合されたパケット信号に対して所定の処理を行う第2電気回路とを含む光スイッチ制御部と、
受信した光パケット信号のエラーを検出するエラー検出部と、
前記エラー検出部により検出されたエラー情報に応じて、前記第2電気回路に入力されるパケット信号のDCオフセット電圧を調整するDCオフセット調整部と、
を備えることを特徴とする光パケット交換装置。
【請求項7】
前記第1電気回路と前記第2電気回路との間において、パケット信号は差動信号であり、
前記DCオフセット調整部は、差動信号におけるポジティブ信号およびネガティブ信号の少なくとも一方のDCオフセット電圧を調整することを特徴とする請求項6に記載の光パケット交換装置。
【請求項8】
前記DCオフセット調整部は、前記エラー検出部により検出されるエラーが最小となるようDCオフセット電圧を調整することを特徴とする請求項6または7に記載の光パケット交換装置。
【請求項9】
前記エラー検出部は、FCSエラーを検出するよう構成されていることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の光パケット交換装置。
【請求項10】
前記DCオフセット調整部により調整されたDCオフセット電圧を格納するメモリ部をさらに備え、
前記DCオフセット調整部は、当該装置が再起動されたときに、前記メモリ部に格納された電圧値に基づいて、DCオフセット電圧を調整することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の光パケット交換装置。
【請求項11】
前記DCオフセット調整部は、可変抵抗の抵抗値を変化させることによりDCオフセット電圧を調整するよう構成されていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の光パケット交換装置。
【請求項12】
前記DCオフセット調整部は、バイアス電圧を変化させることによりDCオフセット電圧を調整するよう構成されていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の光パケット交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−9193(P2013−9193A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140981(P2011−140981)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】