光ビームの波面を修正するための、方法、配置構成、及び該配置構成のための影響付与ユニット
ビーム軸(15)を有する光ビーム(3)の波面を修正するためのアレイが開示される。当該アレイは、光ビーム(3)のビーム経路内に導入することができる影響付与ユニット(1)、及び熱パターンを生成し、影響付与ユニット(1)に作用する熱源(12)を備える。影響付与ユニット(1)は、入射ビーム(3)の光学軸(15)に対して横方向に延びる少なくとも1つの平面冷却板(7a、7b)、及び、2次元拡張部(expansion)を有し、基底面について冷却板上に配設され、熱源の熱を吸収する流体層又はゲル層(9)を備える。2次元拡張部は、ビームのほぼ全体の断面を収容するのに十分に大きい。流体層又はゲル層(9)の厚みは、熱のほんのわずかの量が、ビーム軸(15)に対して垂直に流れることができるように薄く実現され、入射ビーム(3)の波面が、流体又はゲル(9)の熱衝突から生じる熱パターンによって修正される程度に厚い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームの波面を修正する方法、光ビームの波面を修正する方法を実施する配置構成、及び光ビームの波面を修正する配置構成のための影響付与ユニットに関し、影響付与ユニットが、光ビームのビーム経路内に導入されること、及び光ビームのビーム断面をほぼ完全に収容することが可能である。
【0002】
以下の文章において、光ビームは、可視、赤外、及び紫外の波長範囲の電磁放射ビームを意味するものと理解される。したがって、放射は約100nm〜15μmの波長範囲にある。こうしたビームの波面曲線は、一定の規格化された(uniform standardized)電界強度の瞬時値として規定される場合がある。波面の形は、シャック−ハルトマン検出器によって測定可能である。
【0003】
波面は、ビーム軸に垂直に延びる基準面から始まる、ビームにおける電磁放射の位相シフトの等しい位置を規定し、一般に、ビームウェストが、基準として使用されるであろう。波面という用語は、ビーム断面にわたる(たとえば、ガウスビームの)強度分布と混同されるべきではない。
【背景技術】
【0004】
ビームの波面は、以下の既知の方法によって修正可能である。
【0005】
ビームの波面は、関連するビームがその上に誘導される面の変形によって、又は、互いに独立に動作する多数のアクティブ素子の変位によって修正可能である。
【0006】
WO 02/35274では、変形可能ミラーに衝当するビームの波面を修正する変形可能ミラーについて述べられた。ミラーは、そのミラー表面を変形させるための、機械式、油圧式、圧電式、又は電気機械式アクチュエータを有した。反射面は、スペーサによって、アクチュエータが作用するダイアフラムに固定された。ミラーを冷却するために、冷却液が、反射面の裏側とダイアフラムの間に導かれた。
【0007】
EP−A 1 191 377、EP−A 0 943 947、US−A 4,934,803、US−A 4,492,431、及びEP−A 0 744 641、並びに、出版物、G. Vdovin等「Deformable mirror with thermal actuators」Optics Letters Vol. 27, No. 9, pages 677-679, May 1, 2002では、それぞれの場合に、変形可能ミラーが述べられ、変形可能ミラーは、ミラーの下側で作用し、互いに独立に動作する多数のアクティブ素子(たとえば、圧電トランスジューサ、電歪(electrodistortive)素子{マグネシウムニオブ酸鉛}、圧力ピストン、抵抗素子)によって変形されることができた。
【0008】
ビームの波面はまた、関連するビームがその上に導かれる全表面を単一アクチュエータによって変形することによって修正可能である。
【0009】
EP−A 1 118 897及びEP−A 1 030 206では、ミラー表面上で軸方向に作用するアクチュエータについて述べられている。ミラーの変形は、その弾性変形によって実施された。ミラー表面の球形率は、保持リングの断面幾何形状による以外に、ミラー板内での中心対称な弱化(centrally symmetrical weakening)によって、また、ミラー板の背後の流体充満室の正の静圧によって影響を受けるであろう。ミラー板において生ずる熱損失は、室の流体充満によってなくなった。
【0010】
SU 1 597 834では、変形可能ミラーを作成するのに、バイメタル板が使用された。
【0011】
ビームの波面の修正はまた、圧力の印加によって変形した表面における反射によって実施される可能性がある。
【0012】
US−A 5,889,256では、変形可能ミラーは、ハウジングカバーとして述べられた。ミラーによって覆われたハウジングの内部に真空が適用される場合、ミラーの中心は内向きに引っ張られ、その結果として、ミラーのイメージング特性が修正された。
【0013】
ビームの波面は、さらに、EP−A 1 050 766に記載されるような多数の駆動可能反射素子を使用することによって修正可能である。個々のミラー素子は、近くに位置する電極に電圧を印加することによって変位され得るように互いに接続された。簡単に言えば、変位は、真空によって動作するユニットと同様に実施された。
【0014】
WO 01/48747では、光波面変調器について述べられ、光波面変調器は、局所屈折率を修正するために、透明電極構造パターンを両面に設けられた強誘電体液晶を有する。
【0015】
US−A 4,264,146では、冷却式レーザミラーについて述べられ、冷却式レーザミラーは、ミラー表面に平行な、互いに直角に延びる2つの方向において、ミラーの上部面と下部面の領域で異なる冷却が行われた。
【0016】
EP 1 168 533では、波面の補償について述べられている。補償は、光学部品内での半径方向温度勾配によってもたらされる光学的変化をなくすことが意図される。EP 1 168 533では、光学部品内、及び補償媒体内での、ほぼ等しい半径方向加熱分布を達成する試みがなされている。半径方向温度勾配は、その周辺において同じ冷却を受ける両方の媒体によって達成された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、安価で目的に合った方法で、ビームの波形に影響を与えることであり、好ましくは、こうした方法で影響を受けたビームが、「カスタムモード」として知られるものを生成するために、ハイパワーレーザで使用されることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、2次元変調層が、光ビームのビーム断面がほぼ完全に収容されるように、ビームの光学軸に対して横方向に配置されることで、目的が達成される。変調層の2つの基底面の少なくとも1つは、2次元的に冷却され、熱パターンを局所的に与えられ、層の厚みは、光学軸に対して横方向の熱の伝播が無視できるくらい小さくなるほどに、薄くなるように選択される。基底面という表現は、周辺面に対立するものとして使用される。円筒は、たとえば、2つの基底面及び1つの横周辺面を有する。円筒(straight circular cylinder)の場合、2つの互いに平行な基底面が存在するであろう。
【0019】
しかしながら、変調層では、層の厚みは、次に、入射ビームの波面が変調層に対する熱作用に基づく熱パターンによって修正が可能になるように厚くなるように選択されなければならず、且つ、熱パターンは、入射ビームの波面が変調層に対する熱作用に基づく熱パターンによって修正が可能になるように選択されなければならない。従来技術とは対照的に、本発明の場合、熱パターンを、変調層内か、又は変調層に対して適用しながら、少なくとも1つの基底面は、2次元的に冷却される。結果として、変調層内に加えられる熱パターンは、ビーム断面にわたってぼけない。
【0020】
ここで、熱パターンは、2次元変調層として流体又はゲル層内に加えられる。使用される流体は、好ましくは液体であり、使用されるゲルは、好ましくは以下に述べる特性を有する硬化性ゲルであり、その粘度は、好ましくは、100cPを超えるべきである。流体及びゲルの代わりに、固体を使用することもできる。その光学特性は、一般に、熱パターンの適用の結果としてあまり変わらない。
【0021】
本発明と対照的に、始めに述べたEP 1 168 533は、異なる目的を追求する。EP 1 168 533は、一定の半径方向冷却、並びに、補償素子と光学部品の間の密着によって、補償素子と光学部品に対して同じ光学温度勾配を加える。これは、本発明の意図ではない。本発明は、半径方向冷却、すなわち、ビーム軸に対して同心的に作用する冷却ではなく、変調層の少なくとも1つの基底面の2次元冷却により動作する。多少大ざっぱに表現すると、影響を受けるビームの波面は、「冷却面を通過する」。さらに、本発明の場合、「外部生成された」熱パターンが加えられ、EP 1 168 533の場合と同様に、その波面が影響を受ける光ビームの放射の吸収による動作は実行されない。
【0022】
目的を達成するために、本発明による配置構成が利用され、配置構成は、光ビームの波面を修正するために、ビームのビーム経路内に導入することができる影響付与ユニット、及び熱パターンを生成する熱源によって動作する。熱源は影響付与ユニットに作用する。影響付与ユニットは、入射ビームの光学軸に対して横方向に延びる少なくとも1つの2次元冷却板、並びに、2次元の大きさを有する変調層として、冷却板上に配置され、熱源から熱を吸収する、流体又はゲル層を有する。変調層の基底面の少なくとも1つは少なくとも1つの冷却面と密着する。大きさは、ビーム断面をほぼ完全に収容するのに十分に大きい。流体又はゲル層の層の厚みは、ビーム方向に対して横方向の、無視できるくらい小さい熱流のみが起こる程度に小さくなるように設計される。しかしながら、層の厚みは、入射ビームの波面が、流体又はゲルに対する熱作用に基づいて熱パターンによって修正できるほどに厚い。
【0023】
本発明による配置構成では、目的を達成するために、本発明による影響付与ユニットが使用される。影響付与ユニットは、光ビームのビーム経路内に導入されることができ、光ビームのビーム断面をほぼ完全に収容することができる。影響付与ユニットは、少なくとも1つの2次元冷却板、及び、熱パターンが与えられることができ、且つ、基底面が少なくとも1つの冷却板の上部面と密着している、変調層としての流体又はゲル層を有する。流体又はゲル層の層の厚みは、熱の2次元伝播が無視できるくらい小さくなるほどに薄くなるように選択される。さらに、その層の厚みは、入射ビームの波面が流体又はゲル層に対する熱作用に基づいて熱パターンによって修正できるくらい厚くなるように選択される。
【0024】
影響付与ユニットの冷却板は、ここでは、その構成及び意図される目的に応じて、さまざまに構築され得る。
【0025】
冷却板の材料は、透明で且つ熱について著しい吸収が無いもの、また、透明で且つ光放射について著しい吸収が無いものとすることができる。
【0026】
流体又はゲルは、その波面が影響を受ける光放射について無視できるほどの吸収を有しながら、透明であってよい。しかしながら、流体又はゲル層はまた、光放射について所定の吸収を有してもよい。
【0027】
流体又はゲル層は、その基底面のうちの1つが、単一の後部又は前部冷却板上にある状態で存在してもよい(ビーム伝播方向に基づくように)。しかしながら、流体又はゲル層はまた、前部及び後部冷却板によって境界が定められてもよい。前部及び後部冷却板が存在する場合、流体又はゲル層は、固体板の間に囲まれる。波面に影響を与えるために、密度変化によって引き起こされる流体又はゲル層の屈折率の変化が、実質的に頼りにされる。固体板のうちで、一方又は両方の板が、冷却板として形成されてもよく、一方又は両方の冷却板が、必ずしも、互いに平行な基底面を有する必要はない。基底面は、平坦であるか、又は、互いに或る角度を囲んでもよく、さらに、基底面は、非平坦(非平面)外形を有してもよい。単一冷却板のみが使用される場合、流体又はゲル層の厚みを変えることが、実質的に頼りにされる。厚みの変化に従って変形する層コーティングが、その後、流体又はゲル層に施されてもよい。この被覆が透明である場合、動作は透過状態で実行されるはずであり、そのため、影響付与ユニットが、影響を受けるビームによって1回だけ透過照明される(transiluminate)ことが可能である。しかしながら、透過性被覆及び流体又はゲル層のみが透過照明され、その後、反射が後続のミラーで起こることが同様に可能である。そのため、この場合、流体又はゲル層は2回通過される。
【0028】
しかしながら、被覆はまた、前部面として反射するように形成されてもよい。
【0029】
しかしながら、影響付与ユニットはまた、光ビームに対して透明な冷却板、及び、局所的に異なる熱パターンを生成することができ、冷却板の反対にある流体又はゲル層の基底面上に配置された加熱層が存在するように、形成されてもよい。
【0030】
本発明による方法及び本発明による配置構成は、先に説明した本発明による影響付与ユニットによって動作する。このユニットは、熱−光波面変調器と呼ぶことができる。熱−光波面変調器では、流体又はゲル層の材料の熱分散dn/dT、及び/又は、熱膨張dL/dTが利用される。もちろん、他の用途もまた可能であるが、「カスタムモード」を生成するハイパワーレーザにおける使用が指示されることが好ましい。しかしながら、たとえば、レーザロッドの熱誘導による光学収差についての補償を達成するために、影響付与ユニットの使用も提供され得る。
【0031】
以下の文書では、本発明による方法の例、本発明による配置構成の例、及び本発明による影響付与ユニットの例が、以下の図面を使用することによってさらに詳細に説明されるであろう。本発明のさらなる利点は、説明的な文章から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
光ビーム3の波面を修正するための、本発明による影響付与ユニット1の実施形態が図1に示される。波面の修正に関する物理的な説明は、図3a〜図3c及び図4を使用して以下で説明されるであろう。影響付与ユニット1は、光ビーム3のビーム経路内に位置し、光ビーム3のビーム断面q1をほぼ完全に収容することが意図される。図1のビーム3の境界線5は、ビーム3の強度値を識別し、境界線5において、ビームの最大強度が、e分の1に落ちている。影響付与ユニット1は、少なくとも1つの2次元冷却板を有し、ここで、2つの冷却板7a及び7bが存在する。1つの冷却板のみを有する例示的な実施形態については後述する。冷却板7a及び7bは、ビーム3の光学軸15に対して横方向に存在する。横方向に及び互いに平行に存在する冷却板7a及び7bは、図1において、光学軸15に直角に存在するように示される。もちろん、他の角度も使用することができるが、透過ビーム3のオフセット及び導入される熱パターンに対する波面修正の歪が生ずる。熱パターンに対する、生成される波面の「歪」が望まれる時には、直角から逸脱する配置構成が常に選択されるであろう。このタイプの「歪」は、歪像が使用される時には有利である可能性がある。影響付与ユニット1は、ここでは、2次元変調層としての基底面と密着する、2つの冷却板7a及び7bの、2つの上部面11a及び11bの、少なくとも1つの冷却板の上部面に、熱パターンが与えられる層9を有する。
【0033】
層9の材料を囲む冷却板7a及び7bは、環状ホルダ10内に挿入される。ホルダは、図1と対照的に、2つの部分で構成されてもよく、同様に図示しない内部止め具が、冷却板7a及び7bについて、層9の厚みを決定する。ホルダ10の材料は、所望されるように選択されてもよい。しかしながら、好ましくは、金属が使用されるであろう。図示しない内部止め具の間に、流体又はゲル用の出口開口を、同様に図示しない出口及び/又は圧力等化開口と共に設けてもよい。
【0034】
層9の材料は、流体又はゲルであり、以下でさらに指定される。本明細書で述べる例示的な実施形態では、2つの冷却板7a及び7bが存在するため、層9は、その基底面が2つの冷却板7a及び7bの2つの上部面11a及び11b上にある状態で存在する。熱パターンは、図1の左手側から冷却板7aを通って侵入する放射熱12によって層9において生成される。層9の厚みは、層9内での熱の2次元伝播が無視できるくらい薄くなるように選択され、2次元伝播が無視できることは、所定の一定温度T0での基底面にわたる2次元冷却によってさらに達成される。この一様化は、層9内での横方向の熱流をさらに抑制する。しかしながら、層の厚みは、入射ビーム3の波面が、層9に対する熱作用に基づく熱パターンによって修正できるくらい厚くなるように選択される。冷却板7a及び7bは、透明で、且つ、熱パターンを生成する放射熱12の著しい吸収が無く、且つ、光ビーム3の著しい吸収が無い。層9の材料はまた、ビーム3の波長に対して透明である。冷却板7a及び7bの材料としては、たとえば、ガラス、石英、サファイアなどが使用可能である。冷却板7a及び7bの外側は、空気流13a及び13bによって一定温度に保たれる。冷却板7a及び7bの外側面は、ビーム3の波長について非反射性にされるのが好ましい。
【0035】
熱−光学式適応波面変調器としての影響付与ユニット1の中心になるものは、高い熱分散を有する熱−光学式アクティブ材料(液体、ゲル、硬化性ゲル)の薄層9である。熱−光学式アクティブ材料層9のための適した材料は、特に、粘度の高い(好ましくは、100cPより大きい)材料、オイル、ゲル、及び硬化性ゲルである。F−IMF105(Newport)、OCF−446(Nye製)、OC431A(Nye)、OCK−433(Nye)、及びSylgard184(Dow Corning Corp.製)について、良好な結果が得られた。正確な層の厚みは、用途に応じて、実験的に決定される。材料は、2つの透明円板、ここでは、たとえば、ガラス、サファイアなどの冷却板7a及び7bの間で締め付けられる。円板7a及び7bは、始めはホルダとして、次に、層材料を冷却するためにも使用される。熱−光学式アクティブ材料は、たとえば、図1には示さない、波長Aを有する放射熱12を放出する光源(レーザ)から生ずる、放射熱12によって所定の熱パターンに従って局所的に加熱される。したがって、材料は波長Aを吸収しなければならない。放射熱の吸収によって発生した、材料内で生成された熱は、冷却板が、上部面11a及び11bに対して、ガラス(又はサファイア)の円板7a及び7bとして密着し、ヒートシンクとして働くことによって消散する。外側面は、図1に示すように、空気流13a及び13bによって、必要である場合には、能動的にさらに冷却されてもよい。層9の薄い厚さ、及び、基底面に対する冷却板7a及び7bの作用の結果として、ビーム軸15に対する望ましくない横方向の熱の伝播が防止される。熱分散のために、所定の熱パターンに従う局所的に異なる加熱は、対応する2次元屈折率パターンをもたらし、それによって、所定の2次元光速パターンが生成される。屈折率パターンによって、2次元的に且つ物理的に変調される波長B(波長Aと異なる)の光(放射)は、流体又はゲル層9の材料に吸収されてはならない。
【0036】
すでに先に示したように、ビーム3の波面は、対応する放射熱12によって導入される2次元熱パターンによる熱作用によって生ずる。そのため、影響付与ユニットは、熱−光学式波面変調器と呼ぶことができる。熱−光学式波面変調器では、流体又はゲル層の熱分散dn/dT、及び/又は、熱膨張dL/dTが利用される。
【0037】
熱分散の作用は、まず以下で説明されるであろう。
【0038】
材料の屈折率n、ここでは、流体又はゲル層の屈折率は、温度Tと共に変わる。第1の近似として、これは、
n(T)=n0+dn/dT・ΔT (1)
と記述される。ここで、ΔT=T−T0は、標準温度T0と、所定位置における熱パターンによって生成される局所温度Tとの温度差であり、n0は、標準温度T0における屈折率である。ある媒体中での光速Cmediumは、その屈折率nに直接依存するため、これはまた、温度分散dn/dTのために、温度Tに依存する。
Cmedium(T)=Cvacuum/n(T) (2)
光ビーム、ここでは、光ビーム3の波面を、熱−光学的に横方向に変調させるために、或る媒体中での光速Cmediumのこの温度依存性を、ここで利用することができる。基本構造並びに温度T、屈折率n、及び関連する光速の間の関係は、図3a〜図3cに示される。熱分散を有する材料(流体又はゲル)のミリメートル範囲の比較的薄い層9は、所定の熱パターンに従う放射熱12によって、不均一に、局所的に加熱される。流体又はゲル層9における例示的な温度分布は、図3aに示される。ここでは、図2に示すx方向の温度変動のみがプロットされる。xは、ビーム3の軸15上に原点を有するデカルト座標系x−yの座標である。熱パターンに対応して光速Cmediumが異なるために、図4に示す、ビーム3の入射平面波面17aは、層9を通過する時にビーム3の軸15に平行に、前後に変位する、すなわち、変形する。平面波面17aは、図4に示す影響を受けた波面17bになった。波面変調器はまた、「曲がった」波面を反対方向に再び「曲げて真っ直ぐにする」ことができる。
【0039】
平面波面、ここでは、波面17の変形は、層9の前と後ろにおける標準値と比較した時の光学経路差OPD(2次元的な厚みL0と温度T0に等しい)として記述されてもよい。経路差は、厚みLを有する層を通過するための、温度差と層の厚みに比例する。
OPD(x,y)=[n(x,y)−n0]・L=dn/dT・ΔT(x,y)・L(x,y) (3)
流体及びゲル、特に、硬化性ゲルは、約−3・10−4/℃の大きさの熱分散を有する。比較のために、水は、−1.0・10−4/℃の熱分散dn/dTを有するであろう。ここで、熱パターンが与えられる層、すなわち、加熱される層、ここではたとえば、層9を通るビーム3の透過中に、1℃の温度差及び1ミリメートルの層の厚さ当たり−0.3μmの光学経路差が生ずる。流体又はゲル層に加えられる熱パターンに応じて、経路長パターン又は、標準値に対する経路差パターンOPD(x,y)が得られることになる。
【0040】
波面を修正するための、熱分散dn/dTはまた、図1及び図2に示す影響付与ユニット1に加えて、図5、図6、及び図8に示す影響付与ユニット21、41、及び61で使用される。
【0041】
先に述べた熱分散dn/dTの作用以外に、材料の熱膨張もまた、影響付与ユニットで使用することができる。材料は、温度の増加に伴って膨張する。長さの差ΔLは、温度差ΔT及び材料の長さL(ここでは、流体又はゲル層の厚み)に比例する。
ΔL=α・L・T (4)
ここで、αは膨張係数である。材料層内で、不均一な温度分布が生成される場合、材料はさまざまに膨張することになる。これは、2つの方法で利用することができる。第1に、層の表面が、温度分布によってさまざまに変形させることができる。そのため、変形に追従する境界層が、この表面に塗布される場合、適応的に変形可能な領域を有する影響付与ユニットがこれから得られる。境界層は、反射性(適応的に変形可能なミラー)であるように形成されるのが好ましい。しかしながら、境界層はまた、透明膜であってもよい。
【0042】
適応的に変形可能なミラーでは、入射ビームと、その後の反射ビームについての光学経路差OPDは、
OPD(x,y)=−2・ΔL(x,y) (5)
である。OPDは図4に示される。ミラーにおける反射によって係数2がもたらされる。膨張が光学経路を短縮するため、この値は負である。
【0043】
光が、流体又はゲル層を透過する場合、材料の光学経路は、高い屈折率のために、材料の膨張によってさらに長くなる。この場合の膨張ΔL(x,y)は、
OPD(x,y)=(nmaterial(x,y)−nair)・ΔL(x,y) (6)
の光学経路差OPD(空気と比較した場合)をもたらす。光ビームが材料(流体又はゲル)を通過するため、熱分散の作用が、ここでは、さらに働くようになる。したがって、この場合、これは両方の熱作用の利用である(負の熱分散の場合、作用は、互いに打ち消し合う可能性もある)。全体として、結果は、正式に、
OPD(x,y)−(n0+dn/dT・ΔT(x,y)−nair)・ΔL(x,y)+dn/dT・ΔT(x,y)・L (7)
の一回の通過中の光学経路差である。先に説明した熱膨張が使用されるが、図6に示す影響付与ユニット41の設計の変形形態としての、さらなる影響付与ユニット56が図7に示される。図6の実施形態と比較すると、ここでは、流体又はゲル層59を覆う板47の一方の面、及び、流体又はゲル層59の他方の面上の反射性被覆50もまた取り除かれている。反射性層57は、図7において、流体又はゲル層59上の外部層として配置される。
【0044】
特定の状況下で、熱−光学式アクティブ材料(流体又はゲル)は、表面において直接反射性にされ得る。そうでない場合、ミラーは、薄いガラス又は結晶層又はマイラや金属箔などの膜からなるであろう。
【0045】
透過型波面変調器と比較した時のミラーの1つの利点は、影響付与ユニットの背面が自由のままであることである。これは、熱−光学式アクティブ層を加熱する種々の方法を可能にする。
1.熱−光学式アクティブ層は、光学的に(レーザによって)加熱される。この場合、材料はこの放射熱を吸収しなければならない。
2.(薄い)吸収層は、熱−光学式アクティブ材料の後ろに塗布される。この層は、レーザによって局所的に加熱される。材料は、熱伝導によって加熱される。
3.加熱層は、熱−光学式アクティブ材料の後ろに塗布され、アクティブ層を電気抵抗によって局所的に加熱する。
【0046】
そのため、熱パターンが、放射熱58によって背面から放射入力される(radiate in)場合、放射入力された熱パターンに従って反射層57の「曲げ」が起こる。この設計の変形形態において、流体又はゲル層59はもはや、入射光放射に対して透明である必要はない。板52及び55と同様に形成され、冷却用流体68(たとえば、水)を囲む、2つの板67a及び67bは、放射熱58をほんのわずかだけ吸収するように形成されるべきである。
【0047】
ここでは23によって識別される光ビームの、波面を修正する影響付与ユニットとして、図5に示す熱−光学式適応ミラー21もまた利用することができる。影響付与ユニット21はミラーの役目を果たすため、図5に示すように、影響付与ユニット21はこの時、ビーム23が或る角度で反射するか、又は、反射して自分の方へ戻るように配置され得る。ここでもまた、光ビーム23のビーム断面q2は、ミラーに似た影響付与ユニット21によってほぼ完全に収容される。さらに、ミラーに似た影響付与ユニット21は、流体又はゲル層29がビーム23のビーム断面q2をほぼ完全に収容できるように、放射入力される可能性があるビーム23の光学軸25に対して横方向に配置された流体又はゲル層29を有する。ミラーに似た影響付与ユニット21は、単一の2次元冷却板27のみを有し、2次元冷却板27は、流体又はゲル層29の基底面が、その上部面26上に密着して配置される冷却板7a及び7bと同様に形成される。ここでもまた、流体又はゲル層は、熱パターンを与えられる可能性がある。流体又はゲル層29は、或る層の厚みを有し、その厚みは、第1に、冷却板27を使って、熱の2次元伝播が無視できるくらい薄くなるように選択され、第2に、入射ビーム23の波面が流体又はゲル層29に対する熱作用に基づく熱パターンによって修正できるくらい厚くなるように選択される。冷却板27の反対にある流体又はゲル層29の面上には、入射ビーム23を所定の反射係数で反射する反射被覆30が直接配置される。一般に、意図することは、可能性のある最も完全な反射であることになる。しかしながら、ビーム23の減衰が同時に望まれる場合、約100%未満の反射値を選択することもできる。加熱層31は外側で反射層に続く。加熱層31は、この時、熱パターンを生成するための局所的に駆動可能な加熱素子を有する加熱円板であってもよい。しかしながら、加熱層はまた、適切な熱パターンを有する放射熱が衝当する吸収面としてのみ形成されてもよい。冷却板27は、空気流32によって能動的に冷却される、すなわち、所定の温度T0に保たれる。この構造の場合、「変調される」光ビーム23は、流体又はゲル層29を2回通過する。
【0048】
ミラーはまた、隣接素子の隣接面に、すなわち、ここではたとえば、加熱層31に反射性被覆を塗布することによって生成されてもよい。
【0049】
図5に示す影響付与ユニットの利点は、流体又はゲル層が2回通過されるために、熱分散の作用が2倍になることである。
【0050】
影響付与ユニットとしての熱−光学式アクティブミラー41の設計の変形形態が図6に示される。ここでもまた、影響付与ユニット41は、q3のビーム径を有する光ビーム43をほぼ完全に収容するように意図される。影響付与ユニット41は、影響付与ユニット21と同様に、また、同じ配置構成で、光放射43に対して透明であり、流体又はゲル層49を外部から分離する第1冷却板47を有する。冷却板47の反対にある、流体又はゲル層49の側面には、反射性被覆50が配置される。ビーム軸45について「変調される」入射ビーム43は、ビーム23と同様に誘導される。反射性被覆50上の、層49から離れた方に面する側面上には、熱パターンを透過させる放射熱42に対してほぼ透明であるさらなる冷却板52、それに続いて、冷却剤54(たとえば、水)用の中空空間53、及び冷却剤54を外部から密封するさらなる板55が存在する。冷却剤54用の接続部は図示されていない。反射性被覆50は、熱放射の透過に対する実質的な障害物とはならない。しかしながら、流体又はゲル層49はまた、反射性被覆50によって加熱される可能性がある。反射性被覆50は薄いため、横方向の熱伝導は無視することができる。
【0051】
先に述べ、図1、図5、及び図6に示した、影響付与ユニット1、21、及び41では、冷却板7a/7b、27、及び47がその中に含まれるはずである、横(前及び後ろ)境界素子によって境界が定められる、流体又はゲル層9、29、又は49は、ほぼ同じ層の厚みで形成される。図8に示し、反射性被覆60を同様に有する影響付与ユニット61では、次に、ビーム62が影響を受けるために透明である被覆板63をここでは使用して、流体又はゲル層が所定の形69にされる。図8では、形69の厚みの関係は誇張して示される。通常、0.5〜3cmの、形69の直径が与えられると、最大厚み(中央の)は約0.5〜4mmである。[ファイバ技術(たとえば、電気通信伝送)では、もちろん、より短い寸法を得ることが可能である。]ここでもまた、影響付与ユニット61は、ビーム径q4をほぼ完全に収容することが意図される。被覆板63は、ここでは、ビーム軸65に直角に延びる外部側面65及び流体又はゲル層69を形成する内部側面66を有する。外部及び内部側面は、もちろん、さまざまに形成される可能性がある。たとえば、流動性流体70による能動冷却の配置構成は、影響付与ユニット41の配置構成と同様に形成され、同様に、2つの板73a及び73bは冷却用流体70用の中空空間71を囲む。板73bは、特に、冷却板の役をし、限られた範囲で、被覆板63も冷却板の役をする。ビーム62は、反射性被覆60で反射される。影響付与ユニットは、熱パターンが加えられると、レンズ作用を示す。放射熱76は、その時、ビーム軸65にほぼ直角に放射入力する。影響付与ユニット61は、熱−光学式適応レンズの役目を果たす。全体の配置構成が、光学的発散レンズの役目を果たし得るため、影響付与ユニット61の機械的寸法を決定する時に、入るビーム断面q4が出る断面と異なることに注意が払われなければならない。
【0052】
従来のレンズは、変動の無い、所定の屈折力を特徴とするが、適応レンズの屈折力は変わる場合がある。たとえば、レーザロッドにおける熱誘導式レンズを補償するために、こうした適応レンズが使用されてもよい。熱−光学式適応層69(レンズの形)の厚みは、ビーム軸65に対して横方向に変わる。座標系の原点がビーム軸上に存在し、x及びyが原点に関して垂直に延びる状態で、横方向位置(x,y)における放射熱76の吸収能は、流体又はゲル層69の層の厚みに比例する。流体又はゲルの、より厚い地点における熱抵抗(ビーム軸65に平行に測定した)はさらに増加する。2つの作用が一緒になって、層69内の温度をもたらし、したがって、入射ビームについての光学経路長ももたらし、反射ビームが光学軸に対して横方向に変わる。層69の所定の形が適切に選択されると、吸収された放射熱76によって加えられた熱分散dn/dTによって、ビーム62に対して放物面に見える内部側面66のコース(course)を達成することができる。そのため、均一照射によって、放射入力される加熱パワーに屈折力が直接依存するレンズ作用を達成することができる。別個の光学加熱源の代わりに、この例示的な実施形態では、変調されるビーム自体を加熱源として使用してもよい。
【0053】
被覆板63及び流体又はゲルは、放射熱76が放射入力されない状態で、同じ屈折率を有するように選択される場合、影響付与ユニットは、休止状態にある(加熱パワーが無い)時、単なるミラーの役目を果たす。
【0054】
図7では、加えられた熱パターンによって所望の通りに変形させることができる平坦反射層57aが示される。この目的のために、図9は、反射層57bを有する影響付与ユニット82の設計の変形形態を示す。ここでもまた、2つの板67a及び67bと同様に、冷却流体68と類似の冷却流体74を囲む2つの板72a及び72bが存在する。板67bと対照的に、ここでは、変調層としての流体又はゲル層75に隣接する冷却板の役目を果たす板72bは、平坦平面から逸脱する表面輪郭57bを有する。ここでもまた、図8と同様に、表面湾曲が誇張して示される。入射及び反射光ビーム77bの入射ビーム軸77aの領域では、層は、わずか約1mm厚である。入射ビームはビーム断面q5を有する。反射層57bは、図7の配置構成と同様に、流体又はゲル層75上に配置される。休止状態では、図9のこの反射層57bは、平面表面である[しかし、平面表面である必要はなく、別の休止表面形状(熱パターンが加えられない状態で)もまた規定され得る]。ここで、加熱強度がビーム断面にわたって一定である状態で、放射熱78が放射入力される場合、図9に示す湾曲が得られる。図9では、放射熱78は、縦方向に起こる。しかしながら、放射熱78はまた、図8に示すように、横方向に誘導される可能がある。図9は、熱パターンが加えられており、放射熱78のビーム断面にわたって加熱パワーが一定である状態を示す。放射熱78は、もちろん、所定の異なる2次元加熱パワー分布であってもよい。
【0055】
影響付与ユニットについて、横方向に、できる限り多く(highly)分解される2次元温度分布T(x,y)の生成が必要である。本発明は、特別に制御可能な(適応的な)横方向温度分布、又は横方向に変調した光学経路差の生成を扱う。特定の温度分布を得るために、熱源及びヒートシンクの幾何学的配置構成に注意を払われなければならない。
【0056】
熱−光学式アクティブ層において、座標x及びyを有する点における温度は、気温並びに導入される熱パターンによって影響を受ける。横方向において、すなわち、放射入力されるビーム3、23、及び43の断面にわたって、また、或る程度まで、ビーム62の断面において、可能性のある最も独立した温度分布T(x,y)を実施することができるようにするために、熱流は、できる限り縦方向にのみ、すなわち、入射ビーム3、23、43、及び62のビーム軸15、25、45、及び65に平行に起こらなければならない。
【0057】
薄い熱−光学式アクティブ層の2次元冷却によって、縦方向の熱流は、横方向に著しく伝播されることなく生成される可能性がある。
【0058】
これを達成するために、冷却システムは、熱出力が消散するのに適していなければならない。熱パターンを生成するための加熱パワーが低い場合、特定の状況下では、冷却板に沿って掃引する周辺空気が適当である場合があるが、冷却は、高い熱出力で能動的に実行されなければならない。2次元水冷却又は2次元空気冷却を使用することができる。この場合、熱−光学式アクティブ材料は、ヒートシンクと直接接触する必要はない。ガラス、石英、又は他の材料のさらなる層が、間に位置してもよい。熱−光学式アクティブ材料において結果として得られる温度を、低いレベルに保ち、さらに、横方向の熱流を防止することを可能とするために、この層の熱抵抗が、対応して、低くなければならない。
【0059】
さらなる冷却の可能性として、ロッド冷却が述べられるべきである。この場合、熱−光学式アクティブ材料は、ロッドの端面に密着し、この端面にわたって延びる。ヒートシンクは、この時、ロッドの他端の周囲面上に位置する。この場合、熱は、ロッドの他端において、横方向に流れるが、ロッドの第1端における材料からの熱流は、縦方向に起こる。ロッド冷却ついての欠点は、熱−光学式アクティブ材料の温度が、比較的長くなければならないロッドの熱抵抗のために増加することになることである。
【0060】
熱パターンを生成するための温度の局所的な増加は、種々の方法で実施することができる。熱−光学式アクティブ材料の選択的な加熱は、局所電気的加熱素子によって、又は、電磁放射の吸収によって達成できる。「電気的」加熱の場合、熱源は、熱−光学式アクティブ材料内にはない。熱パターンは、熱−光学式アクティブ材料の表面上に載置される加熱素子から生じる熱の局所的伝達によって生成される。電磁放射の吸収の場合、熱−光学式アクティブ材料は、層内で局所的に直接加熱される。
【0061】
吸収特性の所定の局所変動がある状態で、電磁放射の均一照射が行われる時に、熱パターンがさらに生成され得る。この場合、温度分布(熱パターン)は、簡単な熱源によって簡単な方法で実施することができる。
【0062】
しかしながら、適した形に作られた素子による均一加熱を実行することもでき、適した形に作られることは、2次元的に異なる層の厚みを意味することが理解される。異なる局所座標において異なる層の厚みが存在するため、均一加熱の場合の結果は、幾何学的経路長が異なる光学経路長である。各材料は、熱−光材料でさえ、熱抵抗Rを有する。熱抵抗は、材料の層の厚みLに比例し、その熱伝導率kに反比例する。所定の熱−光材料の場合、したがって、熱抵抗Rは、層の厚みLの構成(configuration)によって影響を受けることができる。一方、熱抵抗Rは、熱−光材料の、結果として得られる温度変動に影響を与える。たとえば、熱−光材料が、加熱パワーQで局所的に加熱される場合、層内で結果として得られる温度は、熱抵抗Rに著しく依存する。この時、層の厚みLが、x、yに対して横方向依存した状態でさまざまに選択される場合、結果として得られる温度差ΔT(x,y)は、したがって、目的に合うように影響を受けることができる。
【0063】
方程式(3)〜(7)が示すように、光学経路差OPDはまた、温度差ΔT以外に、層の厚みLに依存する。したがって、横方向の層の厚みLの所定の変動によって、光学経路差OPDは、2回影響を受けることができる。
【0064】
熱−光層が異なる厚みを有するように選択され、材料が均一加熱ビームによって加熱される場合、層の厚みLの所定の変動の結果として、所定の横方向温度分布が得られ、こうして、対応する光学経路差(→熱パターン)が得られる。
【0065】
熱−光学式アクティブ層の加熱が、図10に概略的に示したように、放射熱によって実行される場合、この目的のために、少なくとも1つの外部放射源80が必要とされる。外部放射源80は、ここでは83で識別される影響付与ユニットにおいて熱パターンを生成するのに必要とされる放射熱81aを生成する。ユニット85を使用して、放射熱81aは、イメージング処理によって、適した強度分布が加えられる(→情報−保持放射熱81b)。イメージング処理として、たとえば、所定の位置においてだけ、放射に対して、完全に透明である、部分的に透明である、又は、全く透明でない、機械的マスク又は液晶が適している。イメージング処理として、時間制御式偏向ミラー(ガルバノメータミラーとして知られているもの)もまた使用できる。情報−保持放射熱81bは、その後、イメージング光学部品84によって、加熱される波面変調器上の地点上に投射される(収束した放射熱81c)。
【0066】
熱−光学式適応ミラー又は波面変調器によって、ビーム、ここではたとえば、ビーム90aの波面は、目的に合うように影響を受けることができる。影響を調べ、再調整するために、図11が示す、「閉ループ」配置構成として知られるものによって動作することが可能である。この場合、入射する放射90aは、影響付与ユニット91によって「変調される」。影響付与ユニット91から出るビーム90bの波面を決定するために、部分的ビーム93が、物理的ビームスプリッタ97(幾何学的ビームスプリッタではない)によってビーム診断検出器99上に導かれる。幾何学的ビームスプリッタと対照的に、物理的ビームスプリッタ97は、ビーム断面にわたって、相対的な強度分布を変えない。ビーム診断検出器99を使用して、出て来るビーム90bから結合した部分的ビーム93のビーム形状を、波面に加えて決定できることが好ましい。ビーム診断検出器99からの信号100は、必要な熱パターンの生成及び適切な補正のためのユニットを有するユニット101に供給される。ユニット101はその後、影響付与ユニット91に、適切な方法で作用する。出て来るビーム90bの波面が所定の結果から逸脱する場合、所望の出力ビーム90bを得るために、適切な補正を行うことができる。ビーム診断検出器99は、既に述べたシャック−ハルトマン検出器を収容してもよい。
【0067】
図12で、出力ミラー103、増幅器(たとえば、レーザ結晶)105、及び他の共振器ミラー106の位置によって示される、光学共振器102のモードは、上述したように、影響付与ユニットによって目的に合うように影響を受けてもよい。特に、望ましくない収差を補正することができ、「カスタムモード」を生成することもできる。従来の100%共振器ミラー106の代わりに、これは、熱−光学式アクティブミラー106として設計される。レーザ共振器102において、ミラー106上に入射し、ミラー106によって再び反射する共振器放出109の波面は、増幅器105の任意の収差が補償され、共振器放射109の所望の横方向強度分布が生成されるように、ユニット107によって生成される熱パターンによって設定される。出力放射113の一部112が物理的ビームスプリッタ111を介してその上にもたらされるビーム診断検出器110によるビーム形状測定値を使って、所望の結果が達成されたかどうかを調べることが可能である。所望の結果が達成されていない場合、ユニット107によって生成された熱パターンが、それに応じて修正される。
【0068】
100%ミラーを波面変調器として形成する代わりに、従来の100%共振器ミラーを使用することもでき、共振器放射を伝える波面変調器が、共振器の付加的な素子として配置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】2つの2次元冷却板を有する、本発明による影響付与ユニットの設計の変形形態の縦断面図である。
【図2】図1に示す影響付与ユニットの、図1で示す視方向IIの平面図である。
【図3a】ビーム軸から生じ、且つ、入射光ビームの光学軸に直角である、流体又はゲル層の横方向座標xに対する温度変動T(x)を示す図である。
【図3b】ビーム軸から生じ、且つ、入射光ビームの光学軸に直角である、流体又はゲル層の横方向座標xに対する、温度変動T(x)によってもたらされる屈折率n(x,T)の変化を示す図である。
【図3c】ビーム軸から生じ、且つ、入射光ビームの光学軸に直角である、流体又はゲル層の横方向座標xに対する、屈折率の変化によってもたらされる透明層内の光速Cmedium(x)の変化を示す図である。
【図4】図3a〜3cに示す特性を有する熱−光学式アクティブ層(流体又はゲル層)を通る平面波面の通過を示す図である。
【図5】1つの冷却板及び反射性被覆のみを有する熱−光学式適応ミラーとして形成された、本発明による影響付与ユニットの設計の変形形態の縦断面図である。
【図6】図5に示す熱−光学式適応ミラーの変形形態の縦断面図である。
【図7】ミラーの役目を果たす影響付与ユニットの変形形態の縦断面図である。
【図8】適応レンズ作用を有する影響付与ユニットの変形形態の縦断面図である。
【図9】適応レンズ作用を有するミラーの役目を果たす影響付与ユニットの変形形態の縦断面図である。
【図10】光ビームの波面を修正するための影響付与ユニットを有する配置構成の略図である。
【図11】影響付与ユニットによって修正された入射ビームの波面を調べるための配置構成、及び、修正された波面が規定に対応しない場合の補正の略図である。
【図12】熱−光学式適応共振器ミラーを有する「カスタム−モード」共振器の配置構成の略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームの波面を修正する方法、光ビームの波面を修正する方法を実施する配置構成、及び光ビームの波面を修正する配置構成のための影響付与ユニットに関し、影響付与ユニットが、光ビームのビーム経路内に導入されること、及び光ビームのビーム断面をほぼ完全に収容することが可能である。
【0002】
以下の文章において、光ビームは、可視、赤外、及び紫外の波長範囲の電磁放射ビームを意味するものと理解される。したがって、放射は約100nm〜15μmの波長範囲にある。こうしたビームの波面曲線は、一定の規格化された(uniform standardized)電界強度の瞬時値として規定される場合がある。波面の形は、シャック−ハルトマン検出器によって測定可能である。
【0003】
波面は、ビーム軸に垂直に延びる基準面から始まる、ビームにおける電磁放射の位相シフトの等しい位置を規定し、一般に、ビームウェストが、基準として使用されるであろう。波面という用語は、ビーム断面にわたる(たとえば、ガウスビームの)強度分布と混同されるべきではない。
【背景技術】
【0004】
ビームの波面は、以下の既知の方法によって修正可能である。
【0005】
ビームの波面は、関連するビームがその上に誘導される面の変形によって、又は、互いに独立に動作する多数のアクティブ素子の変位によって修正可能である。
【0006】
WO 02/35274では、変形可能ミラーに衝当するビームの波面を修正する変形可能ミラーについて述べられた。ミラーは、そのミラー表面を変形させるための、機械式、油圧式、圧電式、又は電気機械式アクチュエータを有した。反射面は、スペーサによって、アクチュエータが作用するダイアフラムに固定された。ミラーを冷却するために、冷却液が、反射面の裏側とダイアフラムの間に導かれた。
【0007】
EP−A 1 191 377、EP−A 0 943 947、US−A 4,934,803、US−A 4,492,431、及びEP−A 0 744 641、並びに、出版物、G. Vdovin等「Deformable mirror with thermal actuators」Optics Letters Vol. 27, No. 9, pages 677-679, May 1, 2002では、それぞれの場合に、変形可能ミラーが述べられ、変形可能ミラーは、ミラーの下側で作用し、互いに独立に動作する多数のアクティブ素子(たとえば、圧電トランスジューサ、電歪(electrodistortive)素子{マグネシウムニオブ酸鉛}、圧力ピストン、抵抗素子)によって変形されることができた。
【0008】
ビームの波面はまた、関連するビームがその上に導かれる全表面を単一アクチュエータによって変形することによって修正可能である。
【0009】
EP−A 1 118 897及びEP−A 1 030 206では、ミラー表面上で軸方向に作用するアクチュエータについて述べられている。ミラーの変形は、その弾性変形によって実施された。ミラー表面の球形率は、保持リングの断面幾何形状による以外に、ミラー板内での中心対称な弱化(centrally symmetrical weakening)によって、また、ミラー板の背後の流体充満室の正の静圧によって影響を受けるであろう。ミラー板において生ずる熱損失は、室の流体充満によってなくなった。
【0010】
SU 1 597 834では、変形可能ミラーを作成するのに、バイメタル板が使用された。
【0011】
ビームの波面の修正はまた、圧力の印加によって変形した表面における反射によって実施される可能性がある。
【0012】
US−A 5,889,256では、変形可能ミラーは、ハウジングカバーとして述べられた。ミラーによって覆われたハウジングの内部に真空が適用される場合、ミラーの中心は内向きに引っ張られ、その結果として、ミラーのイメージング特性が修正された。
【0013】
ビームの波面は、さらに、EP−A 1 050 766に記載されるような多数の駆動可能反射素子を使用することによって修正可能である。個々のミラー素子は、近くに位置する電極に電圧を印加することによって変位され得るように互いに接続された。簡単に言えば、変位は、真空によって動作するユニットと同様に実施された。
【0014】
WO 01/48747では、光波面変調器について述べられ、光波面変調器は、局所屈折率を修正するために、透明電極構造パターンを両面に設けられた強誘電体液晶を有する。
【0015】
US−A 4,264,146では、冷却式レーザミラーについて述べられ、冷却式レーザミラーは、ミラー表面に平行な、互いに直角に延びる2つの方向において、ミラーの上部面と下部面の領域で異なる冷却が行われた。
【0016】
EP 1 168 533では、波面の補償について述べられている。補償は、光学部品内での半径方向温度勾配によってもたらされる光学的変化をなくすことが意図される。EP 1 168 533では、光学部品内、及び補償媒体内での、ほぼ等しい半径方向加熱分布を達成する試みがなされている。半径方向温度勾配は、その周辺において同じ冷却を受ける両方の媒体によって達成された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、安価で目的に合った方法で、ビームの波形に影響を与えることであり、好ましくは、こうした方法で影響を受けたビームが、「カスタムモード」として知られるものを生成するために、ハイパワーレーザで使用されることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、2次元変調層が、光ビームのビーム断面がほぼ完全に収容されるように、ビームの光学軸に対して横方向に配置されることで、目的が達成される。変調層の2つの基底面の少なくとも1つは、2次元的に冷却され、熱パターンを局所的に与えられ、層の厚みは、光学軸に対して横方向の熱の伝播が無視できるくらい小さくなるほどに、薄くなるように選択される。基底面という表現は、周辺面に対立するものとして使用される。円筒は、たとえば、2つの基底面及び1つの横周辺面を有する。円筒(straight circular cylinder)の場合、2つの互いに平行な基底面が存在するであろう。
【0019】
しかしながら、変調層では、層の厚みは、次に、入射ビームの波面が変調層に対する熱作用に基づく熱パターンによって修正が可能になるように厚くなるように選択されなければならず、且つ、熱パターンは、入射ビームの波面が変調層に対する熱作用に基づく熱パターンによって修正が可能になるように選択されなければならない。従来技術とは対照的に、本発明の場合、熱パターンを、変調層内か、又は変調層に対して適用しながら、少なくとも1つの基底面は、2次元的に冷却される。結果として、変調層内に加えられる熱パターンは、ビーム断面にわたってぼけない。
【0020】
ここで、熱パターンは、2次元変調層として流体又はゲル層内に加えられる。使用される流体は、好ましくは液体であり、使用されるゲルは、好ましくは以下に述べる特性を有する硬化性ゲルであり、その粘度は、好ましくは、100cPを超えるべきである。流体及びゲルの代わりに、固体を使用することもできる。その光学特性は、一般に、熱パターンの適用の結果としてあまり変わらない。
【0021】
本発明と対照的に、始めに述べたEP 1 168 533は、異なる目的を追求する。EP 1 168 533は、一定の半径方向冷却、並びに、補償素子と光学部品の間の密着によって、補償素子と光学部品に対して同じ光学温度勾配を加える。これは、本発明の意図ではない。本発明は、半径方向冷却、すなわち、ビーム軸に対して同心的に作用する冷却ではなく、変調層の少なくとも1つの基底面の2次元冷却により動作する。多少大ざっぱに表現すると、影響を受けるビームの波面は、「冷却面を通過する」。さらに、本発明の場合、「外部生成された」熱パターンが加えられ、EP 1 168 533の場合と同様に、その波面が影響を受ける光ビームの放射の吸収による動作は実行されない。
【0022】
目的を達成するために、本発明による配置構成が利用され、配置構成は、光ビームの波面を修正するために、ビームのビーム経路内に導入することができる影響付与ユニット、及び熱パターンを生成する熱源によって動作する。熱源は影響付与ユニットに作用する。影響付与ユニットは、入射ビームの光学軸に対して横方向に延びる少なくとも1つの2次元冷却板、並びに、2次元の大きさを有する変調層として、冷却板上に配置され、熱源から熱を吸収する、流体又はゲル層を有する。変調層の基底面の少なくとも1つは少なくとも1つの冷却面と密着する。大きさは、ビーム断面をほぼ完全に収容するのに十分に大きい。流体又はゲル層の層の厚みは、ビーム方向に対して横方向の、無視できるくらい小さい熱流のみが起こる程度に小さくなるように設計される。しかしながら、層の厚みは、入射ビームの波面が、流体又はゲルに対する熱作用に基づいて熱パターンによって修正できるほどに厚い。
【0023】
本発明による配置構成では、目的を達成するために、本発明による影響付与ユニットが使用される。影響付与ユニットは、光ビームのビーム経路内に導入されることができ、光ビームのビーム断面をほぼ完全に収容することができる。影響付与ユニットは、少なくとも1つの2次元冷却板、及び、熱パターンが与えられることができ、且つ、基底面が少なくとも1つの冷却板の上部面と密着している、変調層としての流体又はゲル層を有する。流体又はゲル層の層の厚みは、熱の2次元伝播が無視できるくらい小さくなるほどに薄くなるように選択される。さらに、その層の厚みは、入射ビームの波面が流体又はゲル層に対する熱作用に基づいて熱パターンによって修正できるくらい厚くなるように選択される。
【0024】
影響付与ユニットの冷却板は、ここでは、その構成及び意図される目的に応じて、さまざまに構築され得る。
【0025】
冷却板の材料は、透明で且つ熱について著しい吸収が無いもの、また、透明で且つ光放射について著しい吸収が無いものとすることができる。
【0026】
流体又はゲルは、その波面が影響を受ける光放射について無視できるほどの吸収を有しながら、透明であってよい。しかしながら、流体又はゲル層はまた、光放射について所定の吸収を有してもよい。
【0027】
流体又はゲル層は、その基底面のうちの1つが、単一の後部又は前部冷却板上にある状態で存在してもよい(ビーム伝播方向に基づくように)。しかしながら、流体又はゲル層はまた、前部及び後部冷却板によって境界が定められてもよい。前部及び後部冷却板が存在する場合、流体又はゲル層は、固体板の間に囲まれる。波面に影響を与えるために、密度変化によって引き起こされる流体又はゲル層の屈折率の変化が、実質的に頼りにされる。固体板のうちで、一方又は両方の板が、冷却板として形成されてもよく、一方又は両方の冷却板が、必ずしも、互いに平行な基底面を有する必要はない。基底面は、平坦であるか、又は、互いに或る角度を囲んでもよく、さらに、基底面は、非平坦(非平面)外形を有してもよい。単一冷却板のみが使用される場合、流体又はゲル層の厚みを変えることが、実質的に頼りにされる。厚みの変化に従って変形する層コーティングが、その後、流体又はゲル層に施されてもよい。この被覆が透明である場合、動作は透過状態で実行されるはずであり、そのため、影響付与ユニットが、影響を受けるビームによって1回だけ透過照明される(transiluminate)ことが可能である。しかしながら、透過性被覆及び流体又はゲル層のみが透過照明され、その後、反射が後続のミラーで起こることが同様に可能である。そのため、この場合、流体又はゲル層は2回通過される。
【0028】
しかしながら、被覆はまた、前部面として反射するように形成されてもよい。
【0029】
しかしながら、影響付与ユニットはまた、光ビームに対して透明な冷却板、及び、局所的に異なる熱パターンを生成することができ、冷却板の反対にある流体又はゲル層の基底面上に配置された加熱層が存在するように、形成されてもよい。
【0030】
本発明による方法及び本発明による配置構成は、先に説明した本発明による影響付与ユニットによって動作する。このユニットは、熱−光波面変調器と呼ぶことができる。熱−光波面変調器では、流体又はゲル層の材料の熱分散dn/dT、及び/又は、熱膨張dL/dTが利用される。もちろん、他の用途もまた可能であるが、「カスタムモード」を生成するハイパワーレーザにおける使用が指示されることが好ましい。しかしながら、たとえば、レーザロッドの熱誘導による光学収差についての補償を達成するために、影響付与ユニットの使用も提供され得る。
【0031】
以下の文書では、本発明による方法の例、本発明による配置構成の例、及び本発明による影響付与ユニットの例が、以下の図面を使用することによってさらに詳細に説明されるであろう。本発明のさらなる利点は、説明的な文章から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
光ビーム3の波面を修正するための、本発明による影響付与ユニット1の実施形態が図1に示される。波面の修正に関する物理的な説明は、図3a〜図3c及び図4を使用して以下で説明されるであろう。影響付与ユニット1は、光ビーム3のビーム経路内に位置し、光ビーム3のビーム断面q1をほぼ完全に収容することが意図される。図1のビーム3の境界線5は、ビーム3の強度値を識別し、境界線5において、ビームの最大強度が、e分の1に落ちている。影響付与ユニット1は、少なくとも1つの2次元冷却板を有し、ここで、2つの冷却板7a及び7bが存在する。1つの冷却板のみを有する例示的な実施形態については後述する。冷却板7a及び7bは、ビーム3の光学軸15に対して横方向に存在する。横方向に及び互いに平行に存在する冷却板7a及び7bは、図1において、光学軸15に直角に存在するように示される。もちろん、他の角度も使用することができるが、透過ビーム3のオフセット及び導入される熱パターンに対する波面修正の歪が生ずる。熱パターンに対する、生成される波面の「歪」が望まれる時には、直角から逸脱する配置構成が常に選択されるであろう。このタイプの「歪」は、歪像が使用される時には有利である可能性がある。影響付与ユニット1は、ここでは、2次元変調層としての基底面と密着する、2つの冷却板7a及び7bの、2つの上部面11a及び11bの、少なくとも1つの冷却板の上部面に、熱パターンが与えられる層9を有する。
【0033】
層9の材料を囲む冷却板7a及び7bは、環状ホルダ10内に挿入される。ホルダは、図1と対照的に、2つの部分で構成されてもよく、同様に図示しない内部止め具が、冷却板7a及び7bについて、層9の厚みを決定する。ホルダ10の材料は、所望されるように選択されてもよい。しかしながら、好ましくは、金属が使用されるであろう。図示しない内部止め具の間に、流体又はゲル用の出口開口を、同様に図示しない出口及び/又は圧力等化開口と共に設けてもよい。
【0034】
層9の材料は、流体又はゲルであり、以下でさらに指定される。本明細書で述べる例示的な実施形態では、2つの冷却板7a及び7bが存在するため、層9は、その基底面が2つの冷却板7a及び7bの2つの上部面11a及び11b上にある状態で存在する。熱パターンは、図1の左手側から冷却板7aを通って侵入する放射熱12によって層9において生成される。層9の厚みは、層9内での熱の2次元伝播が無視できるくらい薄くなるように選択され、2次元伝播が無視できることは、所定の一定温度T0での基底面にわたる2次元冷却によってさらに達成される。この一様化は、層9内での横方向の熱流をさらに抑制する。しかしながら、層の厚みは、入射ビーム3の波面が、層9に対する熱作用に基づく熱パターンによって修正できるくらい厚くなるように選択される。冷却板7a及び7bは、透明で、且つ、熱パターンを生成する放射熱12の著しい吸収が無く、且つ、光ビーム3の著しい吸収が無い。層9の材料はまた、ビーム3の波長に対して透明である。冷却板7a及び7bの材料としては、たとえば、ガラス、石英、サファイアなどが使用可能である。冷却板7a及び7bの外側は、空気流13a及び13bによって一定温度に保たれる。冷却板7a及び7bの外側面は、ビーム3の波長について非反射性にされるのが好ましい。
【0035】
熱−光学式適応波面変調器としての影響付与ユニット1の中心になるものは、高い熱分散を有する熱−光学式アクティブ材料(液体、ゲル、硬化性ゲル)の薄層9である。熱−光学式アクティブ材料層9のための適した材料は、特に、粘度の高い(好ましくは、100cPより大きい)材料、オイル、ゲル、及び硬化性ゲルである。F−IMF105(Newport)、OCF−446(Nye製)、OC431A(Nye)、OCK−433(Nye)、及びSylgard184(Dow Corning Corp.製)について、良好な結果が得られた。正確な層の厚みは、用途に応じて、実験的に決定される。材料は、2つの透明円板、ここでは、たとえば、ガラス、サファイアなどの冷却板7a及び7bの間で締め付けられる。円板7a及び7bは、始めはホルダとして、次に、層材料を冷却するためにも使用される。熱−光学式アクティブ材料は、たとえば、図1には示さない、波長Aを有する放射熱12を放出する光源(レーザ)から生ずる、放射熱12によって所定の熱パターンに従って局所的に加熱される。したがって、材料は波長Aを吸収しなければならない。放射熱の吸収によって発生した、材料内で生成された熱は、冷却板が、上部面11a及び11bに対して、ガラス(又はサファイア)の円板7a及び7bとして密着し、ヒートシンクとして働くことによって消散する。外側面は、図1に示すように、空気流13a及び13bによって、必要である場合には、能動的にさらに冷却されてもよい。層9の薄い厚さ、及び、基底面に対する冷却板7a及び7bの作用の結果として、ビーム軸15に対する望ましくない横方向の熱の伝播が防止される。熱分散のために、所定の熱パターンに従う局所的に異なる加熱は、対応する2次元屈折率パターンをもたらし、それによって、所定の2次元光速パターンが生成される。屈折率パターンによって、2次元的に且つ物理的に変調される波長B(波長Aと異なる)の光(放射)は、流体又はゲル層9の材料に吸収されてはならない。
【0036】
すでに先に示したように、ビーム3の波面は、対応する放射熱12によって導入される2次元熱パターンによる熱作用によって生ずる。そのため、影響付与ユニットは、熱−光学式波面変調器と呼ぶことができる。熱−光学式波面変調器では、流体又はゲル層の熱分散dn/dT、及び/又は、熱膨張dL/dTが利用される。
【0037】
熱分散の作用は、まず以下で説明されるであろう。
【0038】
材料の屈折率n、ここでは、流体又はゲル層の屈折率は、温度Tと共に変わる。第1の近似として、これは、
n(T)=n0+dn/dT・ΔT (1)
と記述される。ここで、ΔT=T−T0は、標準温度T0と、所定位置における熱パターンによって生成される局所温度Tとの温度差であり、n0は、標準温度T0における屈折率である。ある媒体中での光速Cmediumは、その屈折率nに直接依存するため、これはまた、温度分散dn/dTのために、温度Tに依存する。
Cmedium(T)=Cvacuum/n(T) (2)
光ビーム、ここでは、光ビーム3の波面を、熱−光学的に横方向に変調させるために、或る媒体中での光速Cmediumのこの温度依存性を、ここで利用することができる。基本構造並びに温度T、屈折率n、及び関連する光速の間の関係は、図3a〜図3cに示される。熱分散を有する材料(流体又はゲル)のミリメートル範囲の比較的薄い層9は、所定の熱パターンに従う放射熱12によって、不均一に、局所的に加熱される。流体又はゲル層9における例示的な温度分布は、図3aに示される。ここでは、図2に示すx方向の温度変動のみがプロットされる。xは、ビーム3の軸15上に原点を有するデカルト座標系x−yの座標である。熱パターンに対応して光速Cmediumが異なるために、図4に示す、ビーム3の入射平面波面17aは、層9を通過する時にビーム3の軸15に平行に、前後に変位する、すなわち、変形する。平面波面17aは、図4に示す影響を受けた波面17bになった。波面変調器はまた、「曲がった」波面を反対方向に再び「曲げて真っ直ぐにする」ことができる。
【0039】
平面波面、ここでは、波面17の変形は、層9の前と後ろにおける標準値と比較した時の光学経路差OPD(2次元的な厚みL0と温度T0に等しい)として記述されてもよい。経路差は、厚みLを有する層を通過するための、温度差と層の厚みに比例する。
OPD(x,y)=[n(x,y)−n0]・L=dn/dT・ΔT(x,y)・L(x,y) (3)
流体及びゲル、特に、硬化性ゲルは、約−3・10−4/℃の大きさの熱分散を有する。比較のために、水は、−1.0・10−4/℃の熱分散dn/dTを有するであろう。ここで、熱パターンが与えられる層、すなわち、加熱される層、ここではたとえば、層9を通るビーム3の透過中に、1℃の温度差及び1ミリメートルの層の厚さ当たり−0.3μmの光学経路差が生ずる。流体又はゲル層に加えられる熱パターンに応じて、経路長パターン又は、標準値に対する経路差パターンOPD(x,y)が得られることになる。
【0040】
波面を修正するための、熱分散dn/dTはまた、図1及び図2に示す影響付与ユニット1に加えて、図5、図6、及び図8に示す影響付与ユニット21、41、及び61で使用される。
【0041】
先に述べた熱分散dn/dTの作用以外に、材料の熱膨張もまた、影響付与ユニットで使用することができる。材料は、温度の増加に伴って膨張する。長さの差ΔLは、温度差ΔT及び材料の長さL(ここでは、流体又はゲル層の厚み)に比例する。
ΔL=α・L・T (4)
ここで、αは膨張係数である。材料層内で、不均一な温度分布が生成される場合、材料はさまざまに膨張することになる。これは、2つの方法で利用することができる。第1に、層の表面が、温度分布によってさまざまに変形させることができる。そのため、変形に追従する境界層が、この表面に塗布される場合、適応的に変形可能な領域を有する影響付与ユニットがこれから得られる。境界層は、反射性(適応的に変形可能なミラー)であるように形成されるのが好ましい。しかしながら、境界層はまた、透明膜であってもよい。
【0042】
適応的に変形可能なミラーでは、入射ビームと、その後の反射ビームについての光学経路差OPDは、
OPD(x,y)=−2・ΔL(x,y) (5)
である。OPDは図4に示される。ミラーにおける反射によって係数2がもたらされる。膨張が光学経路を短縮するため、この値は負である。
【0043】
光が、流体又はゲル層を透過する場合、材料の光学経路は、高い屈折率のために、材料の膨張によってさらに長くなる。この場合の膨張ΔL(x,y)は、
OPD(x,y)=(nmaterial(x,y)−nair)・ΔL(x,y) (6)
の光学経路差OPD(空気と比較した場合)をもたらす。光ビームが材料(流体又はゲル)を通過するため、熱分散の作用が、ここでは、さらに働くようになる。したがって、この場合、これは両方の熱作用の利用である(負の熱分散の場合、作用は、互いに打ち消し合う可能性もある)。全体として、結果は、正式に、
OPD(x,y)−(n0+dn/dT・ΔT(x,y)−nair)・ΔL(x,y)+dn/dT・ΔT(x,y)・L (7)
の一回の通過中の光学経路差である。先に説明した熱膨張が使用されるが、図6に示す影響付与ユニット41の設計の変形形態としての、さらなる影響付与ユニット56が図7に示される。図6の実施形態と比較すると、ここでは、流体又はゲル層59を覆う板47の一方の面、及び、流体又はゲル層59の他方の面上の反射性被覆50もまた取り除かれている。反射性層57は、図7において、流体又はゲル層59上の外部層として配置される。
【0044】
特定の状況下で、熱−光学式アクティブ材料(流体又はゲル)は、表面において直接反射性にされ得る。そうでない場合、ミラーは、薄いガラス又は結晶層又はマイラや金属箔などの膜からなるであろう。
【0045】
透過型波面変調器と比較した時のミラーの1つの利点は、影響付与ユニットの背面が自由のままであることである。これは、熱−光学式アクティブ層を加熱する種々の方法を可能にする。
1.熱−光学式アクティブ層は、光学的に(レーザによって)加熱される。この場合、材料はこの放射熱を吸収しなければならない。
2.(薄い)吸収層は、熱−光学式アクティブ材料の後ろに塗布される。この層は、レーザによって局所的に加熱される。材料は、熱伝導によって加熱される。
3.加熱層は、熱−光学式アクティブ材料の後ろに塗布され、アクティブ層を電気抵抗によって局所的に加熱する。
【0046】
そのため、熱パターンが、放射熱58によって背面から放射入力される(radiate in)場合、放射入力された熱パターンに従って反射層57の「曲げ」が起こる。この設計の変形形態において、流体又はゲル層59はもはや、入射光放射に対して透明である必要はない。板52及び55と同様に形成され、冷却用流体68(たとえば、水)を囲む、2つの板67a及び67bは、放射熱58をほんのわずかだけ吸収するように形成されるべきである。
【0047】
ここでは23によって識別される光ビームの、波面を修正する影響付与ユニットとして、図5に示す熱−光学式適応ミラー21もまた利用することができる。影響付与ユニット21はミラーの役目を果たすため、図5に示すように、影響付与ユニット21はこの時、ビーム23が或る角度で反射するか、又は、反射して自分の方へ戻るように配置され得る。ここでもまた、光ビーム23のビーム断面q2は、ミラーに似た影響付与ユニット21によってほぼ完全に収容される。さらに、ミラーに似た影響付与ユニット21は、流体又はゲル層29がビーム23のビーム断面q2をほぼ完全に収容できるように、放射入力される可能性があるビーム23の光学軸25に対して横方向に配置された流体又はゲル層29を有する。ミラーに似た影響付与ユニット21は、単一の2次元冷却板27のみを有し、2次元冷却板27は、流体又はゲル層29の基底面が、その上部面26上に密着して配置される冷却板7a及び7bと同様に形成される。ここでもまた、流体又はゲル層は、熱パターンを与えられる可能性がある。流体又はゲル層29は、或る層の厚みを有し、その厚みは、第1に、冷却板27を使って、熱の2次元伝播が無視できるくらい薄くなるように選択され、第2に、入射ビーム23の波面が流体又はゲル層29に対する熱作用に基づく熱パターンによって修正できるくらい厚くなるように選択される。冷却板27の反対にある流体又はゲル層29の面上には、入射ビーム23を所定の反射係数で反射する反射被覆30が直接配置される。一般に、意図することは、可能性のある最も完全な反射であることになる。しかしながら、ビーム23の減衰が同時に望まれる場合、約100%未満の反射値を選択することもできる。加熱層31は外側で反射層に続く。加熱層31は、この時、熱パターンを生成するための局所的に駆動可能な加熱素子を有する加熱円板であってもよい。しかしながら、加熱層はまた、適切な熱パターンを有する放射熱が衝当する吸収面としてのみ形成されてもよい。冷却板27は、空気流32によって能動的に冷却される、すなわち、所定の温度T0に保たれる。この構造の場合、「変調される」光ビーム23は、流体又はゲル層29を2回通過する。
【0048】
ミラーはまた、隣接素子の隣接面に、すなわち、ここではたとえば、加熱層31に反射性被覆を塗布することによって生成されてもよい。
【0049】
図5に示す影響付与ユニットの利点は、流体又はゲル層が2回通過されるために、熱分散の作用が2倍になることである。
【0050】
影響付与ユニットとしての熱−光学式アクティブミラー41の設計の変形形態が図6に示される。ここでもまた、影響付与ユニット41は、q3のビーム径を有する光ビーム43をほぼ完全に収容するように意図される。影響付与ユニット41は、影響付与ユニット21と同様に、また、同じ配置構成で、光放射43に対して透明であり、流体又はゲル層49を外部から分離する第1冷却板47を有する。冷却板47の反対にある、流体又はゲル層49の側面には、反射性被覆50が配置される。ビーム軸45について「変調される」入射ビーム43は、ビーム23と同様に誘導される。反射性被覆50上の、層49から離れた方に面する側面上には、熱パターンを透過させる放射熱42に対してほぼ透明であるさらなる冷却板52、それに続いて、冷却剤54(たとえば、水)用の中空空間53、及び冷却剤54を外部から密封するさらなる板55が存在する。冷却剤54用の接続部は図示されていない。反射性被覆50は、熱放射の透過に対する実質的な障害物とはならない。しかしながら、流体又はゲル層49はまた、反射性被覆50によって加熱される可能性がある。反射性被覆50は薄いため、横方向の熱伝導は無視することができる。
【0051】
先に述べ、図1、図5、及び図6に示した、影響付与ユニット1、21、及び41では、冷却板7a/7b、27、及び47がその中に含まれるはずである、横(前及び後ろ)境界素子によって境界が定められる、流体又はゲル層9、29、又は49は、ほぼ同じ層の厚みで形成される。図8に示し、反射性被覆60を同様に有する影響付与ユニット61では、次に、ビーム62が影響を受けるために透明である被覆板63をここでは使用して、流体又はゲル層が所定の形69にされる。図8では、形69の厚みの関係は誇張して示される。通常、0.5〜3cmの、形69の直径が与えられると、最大厚み(中央の)は約0.5〜4mmである。[ファイバ技術(たとえば、電気通信伝送)では、もちろん、より短い寸法を得ることが可能である。]ここでもまた、影響付与ユニット61は、ビーム径q4をほぼ完全に収容することが意図される。被覆板63は、ここでは、ビーム軸65に直角に延びる外部側面65及び流体又はゲル層69を形成する内部側面66を有する。外部及び内部側面は、もちろん、さまざまに形成される可能性がある。たとえば、流動性流体70による能動冷却の配置構成は、影響付与ユニット41の配置構成と同様に形成され、同様に、2つの板73a及び73bは冷却用流体70用の中空空間71を囲む。板73bは、特に、冷却板の役をし、限られた範囲で、被覆板63も冷却板の役をする。ビーム62は、反射性被覆60で反射される。影響付与ユニットは、熱パターンが加えられると、レンズ作用を示す。放射熱76は、その時、ビーム軸65にほぼ直角に放射入力する。影響付与ユニット61は、熱−光学式適応レンズの役目を果たす。全体の配置構成が、光学的発散レンズの役目を果たし得るため、影響付与ユニット61の機械的寸法を決定する時に、入るビーム断面q4が出る断面と異なることに注意が払われなければならない。
【0052】
従来のレンズは、変動の無い、所定の屈折力を特徴とするが、適応レンズの屈折力は変わる場合がある。たとえば、レーザロッドにおける熱誘導式レンズを補償するために、こうした適応レンズが使用されてもよい。熱−光学式適応層69(レンズの形)の厚みは、ビーム軸65に対して横方向に変わる。座標系の原点がビーム軸上に存在し、x及びyが原点に関して垂直に延びる状態で、横方向位置(x,y)における放射熱76の吸収能は、流体又はゲル層69の層の厚みに比例する。流体又はゲルの、より厚い地点における熱抵抗(ビーム軸65に平行に測定した)はさらに増加する。2つの作用が一緒になって、層69内の温度をもたらし、したがって、入射ビームについての光学経路長ももたらし、反射ビームが光学軸に対して横方向に変わる。層69の所定の形が適切に選択されると、吸収された放射熱76によって加えられた熱分散dn/dTによって、ビーム62に対して放物面に見える内部側面66のコース(course)を達成することができる。そのため、均一照射によって、放射入力される加熱パワーに屈折力が直接依存するレンズ作用を達成することができる。別個の光学加熱源の代わりに、この例示的な実施形態では、変調されるビーム自体を加熱源として使用してもよい。
【0053】
被覆板63及び流体又はゲルは、放射熱76が放射入力されない状態で、同じ屈折率を有するように選択される場合、影響付与ユニットは、休止状態にある(加熱パワーが無い)時、単なるミラーの役目を果たす。
【0054】
図7では、加えられた熱パターンによって所望の通りに変形させることができる平坦反射層57aが示される。この目的のために、図9は、反射層57bを有する影響付与ユニット82の設計の変形形態を示す。ここでもまた、2つの板67a及び67bと同様に、冷却流体68と類似の冷却流体74を囲む2つの板72a及び72bが存在する。板67bと対照的に、ここでは、変調層としての流体又はゲル層75に隣接する冷却板の役目を果たす板72bは、平坦平面から逸脱する表面輪郭57bを有する。ここでもまた、図8と同様に、表面湾曲が誇張して示される。入射及び反射光ビーム77bの入射ビーム軸77aの領域では、層は、わずか約1mm厚である。入射ビームはビーム断面q5を有する。反射層57bは、図7の配置構成と同様に、流体又はゲル層75上に配置される。休止状態では、図9のこの反射層57bは、平面表面である[しかし、平面表面である必要はなく、別の休止表面形状(熱パターンが加えられない状態で)もまた規定され得る]。ここで、加熱強度がビーム断面にわたって一定である状態で、放射熱78が放射入力される場合、図9に示す湾曲が得られる。図9では、放射熱78は、縦方向に起こる。しかしながら、放射熱78はまた、図8に示すように、横方向に誘導される可能がある。図9は、熱パターンが加えられており、放射熱78のビーム断面にわたって加熱パワーが一定である状態を示す。放射熱78は、もちろん、所定の異なる2次元加熱パワー分布であってもよい。
【0055】
影響付与ユニットについて、横方向に、できる限り多く(highly)分解される2次元温度分布T(x,y)の生成が必要である。本発明は、特別に制御可能な(適応的な)横方向温度分布、又は横方向に変調した光学経路差の生成を扱う。特定の温度分布を得るために、熱源及びヒートシンクの幾何学的配置構成に注意を払われなければならない。
【0056】
熱−光学式アクティブ層において、座標x及びyを有する点における温度は、気温並びに導入される熱パターンによって影響を受ける。横方向において、すなわち、放射入力されるビーム3、23、及び43の断面にわたって、また、或る程度まで、ビーム62の断面において、可能性のある最も独立した温度分布T(x,y)を実施することができるようにするために、熱流は、できる限り縦方向にのみ、すなわち、入射ビーム3、23、43、及び62のビーム軸15、25、45、及び65に平行に起こらなければならない。
【0057】
薄い熱−光学式アクティブ層の2次元冷却によって、縦方向の熱流は、横方向に著しく伝播されることなく生成される可能性がある。
【0058】
これを達成するために、冷却システムは、熱出力が消散するのに適していなければならない。熱パターンを生成するための加熱パワーが低い場合、特定の状況下では、冷却板に沿って掃引する周辺空気が適当である場合があるが、冷却は、高い熱出力で能動的に実行されなければならない。2次元水冷却又は2次元空気冷却を使用することができる。この場合、熱−光学式アクティブ材料は、ヒートシンクと直接接触する必要はない。ガラス、石英、又は他の材料のさらなる層が、間に位置してもよい。熱−光学式アクティブ材料において結果として得られる温度を、低いレベルに保ち、さらに、横方向の熱流を防止することを可能とするために、この層の熱抵抗が、対応して、低くなければならない。
【0059】
さらなる冷却の可能性として、ロッド冷却が述べられるべきである。この場合、熱−光学式アクティブ材料は、ロッドの端面に密着し、この端面にわたって延びる。ヒートシンクは、この時、ロッドの他端の周囲面上に位置する。この場合、熱は、ロッドの他端において、横方向に流れるが、ロッドの第1端における材料からの熱流は、縦方向に起こる。ロッド冷却ついての欠点は、熱−光学式アクティブ材料の温度が、比較的長くなければならないロッドの熱抵抗のために増加することになることである。
【0060】
熱パターンを生成するための温度の局所的な増加は、種々の方法で実施することができる。熱−光学式アクティブ材料の選択的な加熱は、局所電気的加熱素子によって、又は、電磁放射の吸収によって達成できる。「電気的」加熱の場合、熱源は、熱−光学式アクティブ材料内にはない。熱パターンは、熱−光学式アクティブ材料の表面上に載置される加熱素子から生じる熱の局所的伝達によって生成される。電磁放射の吸収の場合、熱−光学式アクティブ材料は、層内で局所的に直接加熱される。
【0061】
吸収特性の所定の局所変動がある状態で、電磁放射の均一照射が行われる時に、熱パターンがさらに生成され得る。この場合、温度分布(熱パターン)は、簡単な熱源によって簡単な方法で実施することができる。
【0062】
しかしながら、適した形に作られた素子による均一加熱を実行することもでき、適した形に作られることは、2次元的に異なる層の厚みを意味することが理解される。異なる局所座標において異なる層の厚みが存在するため、均一加熱の場合の結果は、幾何学的経路長が異なる光学経路長である。各材料は、熱−光材料でさえ、熱抵抗Rを有する。熱抵抗は、材料の層の厚みLに比例し、その熱伝導率kに反比例する。所定の熱−光材料の場合、したがって、熱抵抗Rは、層の厚みLの構成(configuration)によって影響を受けることができる。一方、熱抵抗Rは、熱−光材料の、結果として得られる温度変動に影響を与える。たとえば、熱−光材料が、加熱パワーQで局所的に加熱される場合、層内で結果として得られる温度は、熱抵抗Rに著しく依存する。この時、層の厚みLが、x、yに対して横方向依存した状態でさまざまに選択される場合、結果として得られる温度差ΔT(x,y)は、したがって、目的に合うように影響を受けることができる。
【0063】
方程式(3)〜(7)が示すように、光学経路差OPDはまた、温度差ΔT以外に、層の厚みLに依存する。したがって、横方向の層の厚みLの所定の変動によって、光学経路差OPDは、2回影響を受けることができる。
【0064】
熱−光層が異なる厚みを有するように選択され、材料が均一加熱ビームによって加熱される場合、層の厚みLの所定の変動の結果として、所定の横方向温度分布が得られ、こうして、対応する光学経路差(→熱パターン)が得られる。
【0065】
熱−光学式アクティブ層の加熱が、図10に概略的に示したように、放射熱によって実行される場合、この目的のために、少なくとも1つの外部放射源80が必要とされる。外部放射源80は、ここでは83で識別される影響付与ユニットにおいて熱パターンを生成するのに必要とされる放射熱81aを生成する。ユニット85を使用して、放射熱81aは、イメージング処理によって、適した強度分布が加えられる(→情報−保持放射熱81b)。イメージング処理として、たとえば、所定の位置においてだけ、放射に対して、完全に透明である、部分的に透明である、又は、全く透明でない、機械的マスク又は液晶が適している。イメージング処理として、時間制御式偏向ミラー(ガルバノメータミラーとして知られているもの)もまた使用できる。情報−保持放射熱81bは、その後、イメージング光学部品84によって、加熱される波面変調器上の地点上に投射される(収束した放射熱81c)。
【0066】
熱−光学式適応ミラー又は波面変調器によって、ビーム、ここではたとえば、ビーム90aの波面は、目的に合うように影響を受けることができる。影響を調べ、再調整するために、図11が示す、「閉ループ」配置構成として知られるものによって動作することが可能である。この場合、入射する放射90aは、影響付与ユニット91によって「変調される」。影響付与ユニット91から出るビーム90bの波面を決定するために、部分的ビーム93が、物理的ビームスプリッタ97(幾何学的ビームスプリッタではない)によってビーム診断検出器99上に導かれる。幾何学的ビームスプリッタと対照的に、物理的ビームスプリッタ97は、ビーム断面にわたって、相対的な強度分布を変えない。ビーム診断検出器99を使用して、出て来るビーム90bから結合した部分的ビーム93のビーム形状を、波面に加えて決定できることが好ましい。ビーム診断検出器99からの信号100は、必要な熱パターンの生成及び適切な補正のためのユニットを有するユニット101に供給される。ユニット101はその後、影響付与ユニット91に、適切な方法で作用する。出て来るビーム90bの波面が所定の結果から逸脱する場合、所望の出力ビーム90bを得るために、適切な補正を行うことができる。ビーム診断検出器99は、既に述べたシャック−ハルトマン検出器を収容してもよい。
【0067】
図12で、出力ミラー103、増幅器(たとえば、レーザ結晶)105、及び他の共振器ミラー106の位置によって示される、光学共振器102のモードは、上述したように、影響付与ユニットによって目的に合うように影響を受けてもよい。特に、望ましくない収差を補正することができ、「カスタムモード」を生成することもできる。従来の100%共振器ミラー106の代わりに、これは、熱−光学式アクティブミラー106として設計される。レーザ共振器102において、ミラー106上に入射し、ミラー106によって再び反射する共振器放出109の波面は、増幅器105の任意の収差が補償され、共振器放射109の所望の横方向強度分布が生成されるように、ユニット107によって生成される熱パターンによって設定される。出力放射113の一部112が物理的ビームスプリッタ111を介してその上にもたらされるビーム診断検出器110によるビーム形状測定値を使って、所望の結果が達成されたかどうかを調べることが可能である。所望の結果が達成されていない場合、ユニット107によって生成された熱パターンが、それに応じて修正される。
【0068】
100%ミラーを波面変調器として形成する代わりに、従来の100%共振器ミラーを使用することもでき、共振器放射を伝える波面変調器が、共振器の付加的な素子として配置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】2つの2次元冷却板を有する、本発明による影響付与ユニットの設計の変形形態の縦断面図である。
【図2】図1に示す影響付与ユニットの、図1で示す視方向IIの平面図である。
【図3a】ビーム軸から生じ、且つ、入射光ビームの光学軸に直角である、流体又はゲル層の横方向座標xに対する温度変動T(x)を示す図である。
【図3b】ビーム軸から生じ、且つ、入射光ビームの光学軸に直角である、流体又はゲル層の横方向座標xに対する、温度変動T(x)によってもたらされる屈折率n(x,T)の変化を示す図である。
【図3c】ビーム軸から生じ、且つ、入射光ビームの光学軸に直角である、流体又はゲル層の横方向座標xに対する、屈折率の変化によってもたらされる透明層内の光速Cmedium(x)の変化を示す図である。
【図4】図3a〜3cに示す特性を有する熱−光学式アクティブ層(流体又はゲル層)を通る平面波面の通過を示す図である。
【図5】1つの冷却板及び反射性被覆のみを有する熱−光学式適応ミラーとして形成された、本発明による影響付与ユニットの設計の変形形態の縦断面図である。
【図6】図5に示す熱−光学式適応ミラーの変形形態の縦断面図である。
【図7】ミラーの役目を果たす影響付与ユニットの変形形態の縦断面図である。
【図8】適応レンズ作用を有する影響付与ユニットの変形形態の縦断面図である。
【図9】適応レンズ作用を有するミラーの役目を果たす影響付与ユニットの変形形態の縦断面図である。
【図10】光ビームの波面を修正するための影響付与ユニットを有する配置構成の略図である。
【図11】影響付与ユニットによって修正された入射ビームの波面を調べるための配置構成、及び、修正された波面が規定に対応しない場合の補正の略図である。
【図12】熱−光学式適応共振器ミラーを有する「カスタム−モード」共振器の配置構成の略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビーム(3;23;43;90;109)の波面(17)を修正する方法であって、2次元変調層(9;29;49;69;75)は、前記光ビーム(3;23;43;62;77b;90;109)のビーム断面(q1;q2;q3;q4;q5)がほぼ完全に収容されるように、前記ビーム(3;23;43;90;109)の光学軸(15;25;45;65)に対して横方向に配置され、前記変調層(9;29;49;69;75)の2つの基底面の少なくとも1つは2次元的に冷却され、前記変調層は熱パターンを局所的に与えられ、層の厚みは、前記光学軸(15;25;45;65;77a)に対して横方向の熱の伝播が無視できるくらい小さくなるほどに薄くなるように選択され、前記層の厚みは、前記入射ビーム(3;23;43;62;90;109)の前記波面(17a)が前記変調層(9;29;49;69;75)に対する熱作用に基づく前記熱パターンによって修正が可能になるように厚くなるように選択され、且つ、前記熱パターンは、前記入射ビーム(3;23;43;62;90;109)の前記波面(17a)が前記変調層(9;29;49;69;75)に対する熱作用に基づく前記熱パターンによって修正が可能になるように選択されることを特徴とする方法。
【請求項2】
光学軸(15;25;45;65;77a)を有する光ビーム(3;23;43;62;77b;90;109)の波面(17)を、そのビーム経路内に導入することができる影響付与(influencing)ユニット(1;21;41;56;61;82;83;91;106)、及び該影響付与ユニット(1;21;41;56;61;82;83;91;106)において熱パターンを生成することができる熱源(12;31;42;76;80;101;107)によって修正するための、請求項1に記載の方法を実現する配置構成であって、前記影響付与ユニット(1;21;41;56;61;82;83;91;106)は、前記光学軸(15;25;45;65)に対して横方向に延びる少なくとも1つの2次元冷却板(7a、7b;27;52;72b;73b)、及び、少なくとも1つの基底面(11a、11b)を有する2次元変調層(9;29;49;69;75)を有し、該変調層(9;29;49;69;75)は、前記熱源の熱の少なくとも一部の吸収のために設計され、前記ビーム断面(q1;q2;q3;q4;q5)をほぼ完全に収容するのに十分に大きな2次元の大きさを有し、前記変調層(9;29;49;69;75)の前記層の厚みは、前記ビーム軸(15;25;45;65;77a)に対して横方向の無視できるくらい小さい熱流のみが起こるほどに小さくなるように設計され、前記層の厚みは、前記入射ビーム(3;23;43;90;109)の前記波面(17)が、前記変調層(9;29;49;69;75)に対する熱作用に基づく前記加えられた熱パターンによって修正できるくらい厚いことを特徴とする配置構成。
【請求項3】
光ビーム(3;23;43;62;77b;90;109)の波面(17a)を修正するための、請求項2に記載の配置構成のための影響付与ユニット(1;21;41;56;61;82;83;91;106)であって、前記光ビーム(3;23;43;62;77b;90;109)の前記ビーム経路内に導入されること、及び、前記ビーム断面(q1;q2;q3;q4;q5)をほぼ完全に収容することが可能であり、なお該影響付与ユニットは、前記ビーム(3;23;43;62;77b;90;109)の前記ビーム断面(q1;q2;q3;q4;q5)をほぼ完全に収容することができるように、前記光学軸(15;25;45;65;77a)に対して横方向に配置される、少なくとも1つの基底面(11a、11b)を有する2次元変調層(9;29;49;69;75)と、該変調層(9;29;49;69;75)の前記少なくとも1つの基底面(11a、11b)がその1つの基底面上で密着して配置され、且つ、前記変調層(9;29;49;69;75)がその1つの基底面上で熱パターンを与えられることができる少なくとも1つの2次元冷却板(7a、7b;27;52;72b;73b)と、熱の2次元伝播が無視できるくらい小さくなるほどに薄くなるように選択され、また、前記入射ビーム(3;23;43;62;90;109)の前記波面(17)が前記変調層(9;29;49;69;75)に対する熱作用に基づく前記加えられた熱パターンによって修正できるくらい厚くなるように選択される層の厚みを有する前記変調層(9;29;49;69;75)とを特徴とする影響付与ユニット。
【請求項4】
影響付与ユニット(1;21;41;56;61;82;83;91;106)であって、前記少なくとも1つの冷却板(7a、7b;52;63;67a;67b;72a;72b)の材料は、透明で、且つ、前記熱パターンを生成する放射熱(12;42;58;76;78)を著しく吸収しないことを特徴とする、請求項3に記載の影響付与ユニット。
【請求項5】
影響付与ユニット(1;21;61;91)であって、前記少なくとも1つの冷却板(7a、7b;27;63)の材料は、透明で、且つ、前記光放射(3;23;62;90)を著しく吸収しないことを特徴とする、請求項3又は4に記載の影響付与ユニット。
【請求項6】
影響付与ユニット(1;21;41;61;83;91;106)であって、前記変調層(9;29;49;69)は、前記光放射(3;23;43;62)に対して透明であることを特徴とする、請求項3から5のいずれか1項に記載の影響付与ユニット。
【請求項7】
影響付与ユニット(1)であって、前記変調層(9)は、前部及び後部冷却板(7a、7b)によって境界が定められることを特徴とする、請求項3から6のいずれか1項に記載の影響付与ユニット。
【請求項8】
影響付与ユニット(21;41;56;61;82)であって、前記変調層(29;49;59;69;75)の前記基底面のうちの1つと密着しており、前記入射光ビーム(23;43)を所定の反射係数で反射する反射性被覆(30;50;57a;57b;60)を特徴とし、好ましくは、前記反射性被覆(57a、57b)は変形可能になるように設計される、請求項1から4のいずれか1項に記載の影響付与ユニット。
【請求項9】
前記冷却板の反対にある前記変調層の前記基底面上に直接配置されており、前記光ビームに対してできる限り完全に透明である変形可能な層被覆を特徴とする、請求項3から8のいずれか1項に記載の影響付与ユニット。
【請求項10】
影響付与ユニット(21)であって、前記光ビーム(23)に対して透明であるただ1つの冷却板(27)、及び、該冷却板(27)の反対にある前記変調層(29)の前記基底面上に配置され、局所的に異なる熱パターンを生成することができる加熱層(31)を特徴とする、請求項3から9のいずれか1項に記載の影響付与ユニット。
【請求項11】
影響付与ユニット(1;21;41;83;91;106)であって、前記変調層(9;29;49)は、層の厚みが許容誤差を除けば同じである、流体又はゲル層であり、加えられる前記熱パターンは、2次元的に作用する放射熱(12;42)を使用した適切な強度分布によって前記変調層に加えられることができることを特徴とする、請求項3から10のいずれか1項に記載の影響付与ユニット。
【請求項12】
影響付与ユニット(61)であって、前記2次元変調層(75)は異なる厚み形状を有し、前記変調層に加えられる前記熱パターンは、入射する放射によって生成されることができ、該入射する放射は、最大の層の厚みを照射することができるほどに少なくとも広く、それでも、前記変調層の前記層の厚みは、熱の2次元伝播が無視できるくらい小さくなるほどに薄くなるように選択され、且つ、前記変調層の前記層の厚みは、前記入射ビーム(3;23;43;90;109)の前記波面(17)が、前記変調層(9;29;49;69)に対する熱作用に基づく前記加えられた熱作用によって修正されることができるくらい厚くなるように選択され、前記変調層の前記材料は、好ましくは、流体又はゲルであることを特徴とする、請求項3から10のいずれか1項に記載の影響付与ユニット。
【請求項1】
光ビーム(3;23;43;90;109)の波面(17)を修正する方法であって、2次元変調層(9;29;49;69;75)は、前記光ビーム(3;23;43;62;77b;90;109)のビーム断面(q1;q2;q3;q4;q5)がほぼ完全に収容されるように、前記ビーム(3;23;43;90;109)の光学軸(15;25;45;65)に対して横方向に配置され、前記変調層(9;29;49;69;75)の2つの基底面の少なくとも1つは2次元的に冷却され、前記変調層は熱パターンを局所的に与えられ、層の厚みは、前記光学軸(15;25;45;65;77a)に対して横方向の熱の伝播が無視できるくらい小さくなるほどに薄くなるように選択され、前記層の厚みは、前記入射ビーム(3;23;43;62;90;109)の前記波面(17a)が前記変調層(9;29;49;69;75)に対する熱作用に基づく前記熱パターンによって修正が可能になるように厚くなるように選択され、且つ、前記熱パターンは、前記入射ビーム(3;23;43;62;90;109)の前記波面(17a)が前記変調層(9;29;49;69;75)に対する熱作用に基づく前記熱パターンによって修正が可能になるように選択されることを特徴とする方法。
【請求項2】
光学軸(15;25;45;65;77a)を有する光ビーム(3;23;43;62;77b;90;109)の波面(17)を、そのビーム経路内に導入することができる影響付与(influencing)ユニット(1;21;41;56;61;82;83;91;106)、及び該影響付与ユニット(1;21;41;56;61;82;83;91;106)において熱パターンを生成することができる熱源(12;31;42;76;80;101;107)によって修正するための、請求項1に記載の方法を実現する配置構成であって、前記影響付与ユニット(1;21;41;56;61;82;83;91;106)は、前記光学軸(15;25;45;65)に対して横方向に延びる少なくとも1つの2次元冷却板(7a、7b;27;52;72b;73b)、及び、少なくとも1つの基底面(11a、11b)を有する2次元変調層(9;29;49;69;75)を有し、該変調層(9;29;49;69;75)は、前記熱源の熱の少なくとも一部の吸収のために設計され、前記ビーム断面(q1;q2;q3;q4;q5)をほぼ完全に収容するのに十分に大きな2次元の大きさを有し、前記変調層(9;29;49;69;75)の前記層の厚みは、前記ビーム軸(15;25;45;65;77a)に対して横方向の無視できるくらい小さい熱流のみが起こるほどに小さくなるように設計され、前記層の厚みは、前記入射ビーム(3;23;43;90;109)の前記波面(17)が、前記変調層(9;29;49;69;75)に対する熱作用に基づく前記加えられた熱パターンによって修正できるくらい厚いことを特徴とする配置構成。
【請求項3】
光ビーム(3;23;43;62;77b;90;109)の波面(17a)を修正するための、請求項2に記載の配置構成のための影響付与ユニット(1;21;41;56;61;82;83;91;106)であって、前記光ビーム(3;23;43;62;77b;90;109)の前記ビーム経路内に導入されること、及び、前記ビーム断面(q1;q2;q3;q4;q5)をほぼ完全に収容することが可能であり、なお該影響付与ユニットは、前記ビーム(3;23;43;62;77b;90;109)の前記ビーム断面(q1;q2;q3;q4;q5)をほぼ完全に収容することができるように、前記光学軸(15;25;45;65;77a)に対して横方向に配置される、少なくとも1つの基底面(11a、11b)を有する2次元変調層(9;29;49;69;75)と、該変調層(9;29;49;69;75)の前記少なくとも1つの基底面(11a、11b)がその1つの基底面上で密着して配置され、且つ、前記変調層(9;29;49;69;75)がその1つの基底面上で熱パターンを与えられることができる少なくとも1つの2次元冷却板(7a、7b;27;52;72b;73b)と、熱の2次元伝播が無視できるくらい小さくなるほどに薄くなるように選択され、また、前記入射ビーム(3;23;43;62;90;109)の前記波面(17)が前記変調層(9;29;49;69;75)に対する熱作用に基づく前記加えられた熱パターンによって修正できるくらい厚くなるように選択される層の厚みを有する前記変調層(9;29;49;69;75)とを特徴とする影響付与ユニット。
【請求項4】
影響付与ユニット(1;21;41;56;61;82;83;91;106)であって、前記少なくとも1つの冷却板(7a、7b;52;63;67a;67b;72a;72b)の材料は、透明で、且つ、前記熱パターンを生成する放射熱(12;42;58;76;78)を著しく吸収しないことを特徴とする、請求項3に記載の影響付与ユニット。
【請求項5】
影響付与ユニット(1;21;61;91)であって、前記少なくとも1つの冷却板(7a、7b;27;63)の材料は、透明で、且つ、前記光放射(3;23;62;90)を著しく吸収しないことを特徴とする、請求項3又は4に記載の影響付与ユニット。
【請求項6】
影響付与ユニット(1;21;41;61;83;91;106)であって、前記変調層(9;29;49;69)は、前記光放射(3;23;43;62)に対して透明であることを特徴とする、請求項3から5のいずれか1項に記載の影響付与ユニット。
【請求項7】
影響付与ユニット(1)であって、前記変調層(9)は、前部及び後部冷却板(7a、7b)によって境界が定められることを特徴とする、請求項3から6のいずれか1項に記載の影響付与ユニット。
【請求項8】
影響付与ユニット(21;41;56;61;82)であって、前記変調層(29;49;59;69;75)の前記基底面のうちの1つと密着しており、前記入射光ビーム(23;43)を所定の反射係数で反射する反射性被覆(30;50;57a;57b;60)を特徴とし、好ましくは、前記反射性被覆(57a、57b)は変形可能になるように設計される、請求項1から4のいずれか1項に記載の影響付与ユニット。
【請求項9】
前記冷却板の反対にある前記変調層の前記基底面上に直接配置されており、前記光ビームに対してできる限り完全に透明である変形可能な層被覆を特徴とする、請求項3から8のいずれか1項に記載の影響付与ユニット。
【請求項10】
影響付与ユニット(21)であって、前記光ビーム(23)に対して透明であるただ1つの冷却板(27)、及び、該冷却板(27)の反対にある前記変調層(29)の前記基底面上に配置され、局所的に異なる熱パターンを生成することができる加熱層(31)を特徴とする、請求項3から9のいずれか1項に記載の影響付与ユニット。
【請求項11】
影響付与ユニット(1;21;41;83;91;106)であって、前記変調層(9;29;49)は、層の厚みが許容誤差を除けば同じである、流体又はゲル層であり、加えられる前記熱パターンは、2次元的に作用する放射熱(12;42)を使用した適切な強度分布によって前記変調層に加えられることができることを特徴とする、請求項3から10のいずれか1項に記載の影響付与ユニット。
【請求項12】
影響付与ユニット(61)であって、前記2次元変調層(75)は異なる厚み形状を有し、前記変調層に加えられる前記熱パターンは、入射する放射によって生成されることができ、該入射する放射は、最大の層の厚みを照射することができるほどに少なくとも広く、それでも、前記変調層の前記層の厚みは、熱の2次元伝播が無視できるくらい小さくなるほどに薄くなるように選択され、且つ、前記変調層の前記層の厚みは、前記入射ビーム(3;23;43;90;109)の前記波面(17)が、前記変調層(9;29;49;69)に対する熱作用に基づく前記加えられた熱作用によって修正されることができるくらい厚くなるように選択され、前記変調層の前記材料は、好ましくは、流体又はゲルであることを特徴とする、請求項3から10のいずれか1項に記載の影響付与ユニット。
【図1】
【図2】
【図5】
【図3】
【図6】
【図4】
【図8】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図5】
【図3】
【図6】
【図4】
【図8】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−524106(P2007−524106A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501864(P2006−501864)
【出願日】平成16年2月17日(2004.2.17)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001473
【国際公開番号】WO2004/077135
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(505323552)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年2月17日(2004.2.17)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001473
【国際公開番号】WO2004/077135
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(505323552)
【Fターム(参考)】
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