光ピックアップ、対物レンズ、球面収差補正素子及び光学的情報記録再生装置
【課題】3面以上の情報記録面を持つBD多層ディスクの各情報記録面において、合焦点状態での光スポットの品質を良好に保つことが可能な光ピックアップを提供する。
【解決手段】BD対物レンズの基準カバー層厚さを、2面の情報記録面を持つ情報記録媒体の中間面でのカバー層厚さより薄く設定する。また、前記情報記録媒体を光入射側の表面から見たときに、2面の情報記録面を持つ情報記録媒体の中間面でのカバー層厚さをA、3面以上の情報記録面を持つ情報記録媒体の中間面でのカバー層厚さをB、BD対物レンズの基準カバー層厚さをTと表記したとき、前記基準カバー層厚さTをB<T<Aの関係式で規定する。さらに、T=(A+B)/2の関係式で規定する。
【解決手段】BD対物レンズの基準カバー層厚さを、2面の情報記録面を持つ情報記録媒体の中間面でのカバー層厚さより薄く設定する。また、前記情報記録媒体を光入射側の表面から見たときに、2面の情報記録面を持つ情報記録媒体の中間面でのカバー層厚さをA、3面以上の情報記録面を持つ情報記録媒体の中間面でのカバー層厚さをB、BD対物レンズの基準カバー層厚さをTと表記したとき、前記基準カバー層厚さTをB<T<Aの関係式で規定する。さらに、T=(A+B)/2の関係式で規定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学的情報記録媒体に情報信号を記録または再生する機能を持つ光ピックアップに係わる。
【背景技術】
【0002】
DVDに続く大容量光ディスクとして、現在青紫色レーザを使い単層で23〜27GB、2層で約50GBの容量を持つBD(Blu-ray Disc)とその記録再生装置が商品化されている。このBD2層ディスクでは2つの情報記録面に約25μmのカバー層厚さの差があり、使用する対物レンズの開口数(NA)が約0.85とDVDに比べて高い。そのため、記録再生装置にはそれぞれの情報記録面に対して光ビームの焦点を合わせるための球面収差補正手段を設けることが必須となっている。
【0003】
この球面収差補正手段の例は特許文献1に開示され、「光源と対物レンズの間にコリメートレンズユニットを備え、カバー層の厚さが基準値からずれ球面収差が発生した時はコリメートレンズを前後に動かし、生じた球面収差を打ち消す。」と記載されている。
【0004】
一方、3面以上、例えば4面の情報記録面を持つBD多層ディスクの技術開発が進められている(非特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−103087号公報
【非特許文献1】OPTRONICS(2007)NO.6、p126〜p127
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、3面、4面といった情報記録面を持つBD多層ディスクでは当然、現在の2面の情報記録面を持つBD2層ディスクに比べて、光入射側の表面から見て最も近い情報記録面と最も遠い情報記録面のカバー層厚さの差が大きくなる。そのため、上記特許文献1記載のようにコリメートレンズを前後に動かすという手段のみではBD多層ディスクの各情報記録面において、球面収差補正が不十分であることが予想され、合焦点状態における光スポットの品質を良好に保つことが難しいという懸念がある。
本発明は以上の点を鑑み、3面以上の情報記録面を持つBD多層ディスクの各情報記録面において合焦点状態での光スポットの品質を良好に保つことが可能な光ピックアップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記記載の目的は、その一例として本発明の特許請求の範囲に記載の構成、手段により実現可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、3面以上の情報記録面を持つBD多層ディスクの各情報記録面において合焦点状態での光スポットの品質を良好に保つことができ、良好な記録再生が可能な光ピックアップを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の光ピックアップの実施例について以下、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0010】
図1(a)は、点線で示す3面の情報記録面101、102、103を持つ情報記録媒体104(BD多層ディスク)とBD用光ピックアップを示し、図1(b)は情報記録媒体104を拡大して示した図である。
【0011】
始めに図1(a)を用いて本実施例のBD用光ピックアップについて説明する。BDレーザ光源105から波長405nm帯の直線偏光の発散ビーム光が出射され、偏光ビームスプリッタ106、光ビーム多分割素子107、BD補助レンズ108を経てBDコリメートレンズ109により略平行な光ビームに変換される。上記BDコリメートレンズ109は、例えばステッピングモータ、圧電素子を用いた(図示しない)球面収差補正機構により矢印110に示す光軸111方向に移動する。また、上記(図示しない)球面収差補正機構には上記BDコリメートレンズ109の初期位置等の位置を検出する(図示しない)位置検出センサが設けられている。
【0012】
上記光ビーム多分割素子107は(図示しない)偏光性格子と1/4波長板を貼合わせて一体化した素子であり、上記(図示しない)偏光性格子は所定方向の直線偏光の光ビームを回折させ、上記所定方向と直交する方向の直線偏光の光ビームを透過させる機能を持つ。すなわち、上記ビーム多分割素子107は、紙面の左方から右方へ通過する光ビームを透過させ、紙面の右方から左方へ通過する光ビームを回折させる。上記偏光ビームスプリッタ106から出射した光ビームは、上記光ビーム多分割素子107の上記(図示しない)偏光性格子を回折せずに透過し、上記(図示しない)1/4波長板によって円偏光に変換される。上記BDコリメートレンズ109から出射した光ビームはBD立上げミラー112により垂直に光路を曲げられた後にBD対物レンズ113で集光され、情報記録媒体104の3面の情報記録面101、102、103のうち目的とする情報記録面に照射される。114は上記BD対物レンズ113に入射する光ビームを所望の径に制限するために設けられた円形アパーチャを示している。なお、上記BD対物レンズ113はガラスあるいは樹脂で形成された単レンズからなる。
【0013】
上記情報記録面で反射した光ビームは、上記BD対物レンズ113、上記BD立上げミラー112、上記BDコリメートレンズ109、上記BD補助レンズ108を経て上記光ビーム多分割素子107に入射する。この入射光ビームは上記(図示しない)1/4波長板により円偏光から往路(BDレーザ光源105からBD対物レンズ113に至る光路)と直交する方向の直線偏光に変換され、上記偏光性格子により複数の光ビームに分割される。これらの複数の光ビームは、上記偏光ビームスプリッタ106を経てBD光検出器115の受光部116に到達する。本実施例ではサーボ信号の検出方式として、フォーカス誤差信号(以下、FESと呼ぶ)にナイフエッジ法、トラッキング誤差信号(以下、TESと呼ぶ)にプッシュプル(以下、PPと呼ぶ)方式を使用し、上記情報記録媒体104に照射された集光スポットの位置を制御する。なお、上記ナイフエッジ法や上記PP方式は公知技術であるのでここでは説明を省略する。
【0014】
BD光学系では上記情報記録面での集光スポットを小さくするため、DVDに比べて高い開口数0.85のBD対物レンズ113を使用する。ところが、上記情報記録面でのカバー層厚さ誤差、あるいは各情報記録面間のカバー層厚さの差により発生する球面収差は、対物レンズの開口数の4乗に比例して増加するためBD光学系では上記球面収差の補正手段が必須となる。本実施例では小型化の観点から、を上記BD補助レンズ108と上記BDコリメートレンズ109の2枚のレンズからコリメートレンズ系を構成し、上記(図示しない)球面収差補正機構によりBDコリメートレンズ109を光軸方向に移動させることによって、上記BD対物レンズ113に入射する光ビームを平行光から弱発散または弱収束光に変換し、発生した球面収差を打消すように補正を行う。
【0015】
なお、光ピックアップの実装可能スペースによっては、上記コリメートレンズ系を1枚のコリメートレンズとする、またはコリメートレンズの後に凹レンズと凸レンズからなり入射平行光を拡大し平行光を出射するビームエキスパンダを設け、上記球面収差の補正手段としても良い。その他、液晶層と回折レンズからなる液晶レンズを上記球面収差の補正手段としても良い。
【0016】
また、BDレーザ光源105と偏光ビームスプリッタ106の間に(図示しない)3スポット形成用の回折格子を設け、光ビーム多分割素子107を1/4波長板に変更し、偏光ビームスプリッタ106とBD光検出器115の間に(図示しない)シリンドリカルレンズを設けBD用光ピックアップを構成しても良い。この場合、サーボ信号の検出方式として、フォーカス誤差信号に非点収差法、トラッキング誤差信号に差動プッシュプル(DPP)方式を使用し、上記情報記録媒体104に照射された集光スポットの位置を制御する。
【0017】
次に、図1(b)を用いて情報記録媒体104(BD多層ディスク)について説明する。情報記録媒体104は、BD対物レンズ113で集光された光ビームの光入射側から見て、表面117からそれぞれ順に点線で示す101(L2層)、102(L1層)、103(L0層)の3面の情報記録面を持つ。破線で示す118は上記101(L2層)と103(L0層)の中間面を示す。本図では、表面117から101(L2層)までの距離をc、102(L1層)までの距離をd、103(L0層)までの距離をe、中間面118までの距離をBと表記する。本実施例では、例えばc=60μm、d=75μm、e=100μmとし、B=(60+100)/2=80μmとした。
【0018】
図2を用いてBD対物レンズ113についてさらに説明する。図2(a)は、BD対物レンズ113に平行光201が入射して集光され、情報記録媒体104で焦点202を結ぶ状態を示している。焦点202は光入射側の表面117から見て破線203までの距離Tに位置しており、この位置では光スポットの波面収差が最小またはスポット径が最小となる。以後、上記距離Tを対物レンズの基準カバー層厚さと呼ぶことにする。上記破線203が対物レンズの基準カバー層の位置を示す。
【0019】
図2(b)は、図2(a)の状態における光線図を示している。本実施例ではBD対物レンズ113について、波長を405nm、開口数(NA)を0.85、有効光束径φDを約2.4mmとし、ある基準カバー層厚さTを設定した時に、第1面204と第2面205の曲率半径、円錐定数、(偶数次の)非球面定数について最適化計算を行い、BD対物レンズ113の形状を決定している。なお、その他のパラメータである屈折率、軸上中心厚は同じとしている。
【0020】
図3には、図1と比較するため、点線で示す2面の情報記録面303、304を持つ情報記録媒体301(BD2層ディスク)を示した。情報記録媒体301は、BD対物レンズ113で集光された光ビームの光入射側から見て、表面302からそれぞれ順に点線で示す303(L1層)、304(L0層)の2つの情報記録面を持つ。破線で示す305は上記303(L1層)と304(L0層)の中間面を示す。本図では、表面302から303(L1層)までの距離をa、304(L0層)までの距離をb、中間面305までの距離をAと表記する。BD2層ディスクの場合、規格により上記a、bのノミナル値はそれぞれ、a=75μm、b=100μmと定められており、
A=(75+100)/2=87.5μmとなる。
【0021】
図4は、上記図2を用いて説明したBD対物レンズ113の基準カバー層厚さTを変え、それぞれの基準カバー層厚さで形状の最適化計算を行ったBD対物レンズ113を用い、各情報記録面103(L0層)、102(L1層)、101(L2層)での集光スポットの波面収差を計算した例を示している。
【0022】
図4(a) は、BD補助レンズ108、BDコリメートレンズ109、基準カバー層203の系における光線図を示す。BDコリメートレンズ109は基準位置にあり、出射面401から平行光402が出射しBD対物レンズ113に入射する状態を示している。
【0023】
BD補助レンズ108は固定されており、BDコリメートレンズ109が光軸に沿った矢印110の+方向、すなわちBD対物レンズ113に近づく方向に移動すると上記出射面401から収束光が出射される。一方、BDコリメートレンズ109が矢印110の−方向、すなわちBD対物レンズ113から離れる方向に移動すると上記出射面401から発散光が出射される。本実施例では、BD補助レンズ108とBDコリメートレンズ109の合成焦点距離を約17mm、BDコリメートレンズ109の焦点距離を約10mmとした。
【0024】
図4(b) は、上記BDコリメートレンズ109が基準位置にあって球面収差補正を行わない状態で各情報記録面103(L0層)、102(L1層)、101(L2層)
における光スポットの波面収差を計算した例を示している。ここでは、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTを92.5μm、87.5μm、83.75μm、80μm、75μmに設定した。情報記録面のカバー層厚さが上記BD対物レンズ113の各基準カバー層厚さと一致する場合、波面収差はほぼ0で最小となる。しかし、上記BD対物レンズ113の各基準カバー層厚さからずれた場合、急激に波面収差(球面収差)が増加し、L0層(カバー層厚さ100μm)、L1層(カバー層厚さ75μm)、L2層(カバー層厚さ60μm)の間で約0.25〜0.3λrmsという大きな球面収差(大部分が3次の成分)が発生する。
【0025】
図4(c) は、上記BDコリメートレンズ109を基準位置から矢印110の方向に移動させ、上記図4(b)で発生した球面収差を補正した後、光スポットに残留する波面収差を計算した例を示す。L0層、L1層、L2層間で光スポットの波面収差は約0.017λrms以下と大幅に改善されている(残留球面収差は5次以上の高次成分)。上記BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTが、80μm<T<87.5μmの範囲にあるとき、L0層、L1層、L2層の各情報記録面で平均的に残留波面収差が抑制(2点鎖線403で示すように最大で0.013λrms)されている。特に、T=(80+87.5)/2=83.75μmのとき、L0層、L1層、L2層のいずれの各情報記録面においても残留波面収差が、最も平均的に良く抑制(2点鎖線404で示すように最大で0.01λrms未満)されていることがわかる。
【0026】
上記87.5μmは、図3で説明したAに相当し、上記80μmは、図1(b)で説明したBに相当する。これまでの説明からL0層、L1層、L2層の間において、条件B<T<Aのとき平均的に球面収差を抑制でき、さらに条件T=(A+B)/2のとき最も平均的に良く球面収差を抑制できるという効果が得られる。
【0027】
図5は、図4(c) で示した球面収差補正後の光スポットのスポットダイアグラムを計算した例を示している。図4(c)と同様に、L0層、L1層、L2層で、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTが80μm<T<87.5μmの範囲にあるとき平均的に光スポットが絞られ、さらにT=(80+87.5)/2=83.75μmのとき、最も平均的に良く光スポットが絞られるという効果が得られる。
【0028】
図6は、図4(c) で示した球面収差補正に必要なBDコリメートレンズ109の移動量を計算した例を示している。ここで、移動量0とは、BDコリメートレンズ109が図4(a) で説明した基準位置にある状態、すなわちBDコリメートレンズ109の出射面401から平行光が出射する状態を指す。BD対物レンズ113の基準カバー層厚さによって、L0層、L1層、L2層の各情報記録面で必要なBDコリメートレンズ109の移動量は異なるが、いずれのBD対物レンズ113の基準カバー層厚さにおいてもBDコリメートレンズ109が光軸方向に1mm移動すると、約40μmのカバー層厚さ誤差によって発生する球面収差を補正できる換算になる。(図示しない)球面収差補正機構の大型化を防ぐためには、BDコリメートレンズ109の移動量の+方向と−方向で極端に差が出ないようにすることが必要である。その点で、図4を用いて説明したBD対物レンズ113の基準カバー層厚さTの条件、すなわち、80μm<T<87.5μm、T=(80+87.5)/2=83.75μmは望ましい条件と言える。
【0029】
図7は、図7(a)に示すように、BDコリメートレンズ109が基準位置にある場合に、出射面401からBD対物レンズ113のアパーチャ114までの距離を10mmに設定し、BDレーザ光源105から出射される光ビームの強度を一定にしてBD対物レンズ113から出射する光ビームの強度を計算した例を示している。
【0030】
図7(b)は、BDコリメートレンズ109を矢印110の方向に移動させ、図4、図6を用いて説明した球面収差補正を行った状態で、L0層、L1層、L2層の各情報記録面でのBD対物レンズ113からの出射強度を計算した例を示している。BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTは図4と同じ設定である。本図では、BDコリメートレンズ109の出射面401から出射した平行光402がBD対物レンズ113に入射した状態において、BD対物レンズ113からの出射強度で規格化した値をグラフ縦軸の対物レンズ出射強度[規格化値]とした。なお、当然のことながら、BD対物レンズ113に平行光が入射する状態では、上記いずれのBD対物レンズ113の基準カバー層厚さにおいてもBD対物レンズ113からの出射強度は等しい。
【0031】
L0層、L1層では、いずれのBD対物レンズ113の基準カバー層厚さにおいても若干の差が見られるものの、対物レンズ出射強度はほぼ等しい。一方、L2層では、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さによって対物レンズ出射強度に差が生じている。これは、図6で示したように、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTが薄くなるに従って球面収差補正に必要なBDコリメートレンズ109の移動量が大きくなり、BD対物レンズ113に入射する収束光の状態に差が出る(光利用効率が良い方向になる)ためである。しかしながら、L0層、L1層、L2層において、基準カバー層厚さTが80μm<T<87.5μmの条件では対物レンズ出射強度は1(2点鎖線701)〜1.07(2点鎖線702)の範囲に、特に、T=(80+87.5)/2=83.75μmでは1(2点鎖線701)〜1.05(2点鎖線703)の範囲に収まっており、実用的には支障の出ないレベルと言える。
【0032】
L0層、L1層、L2層において対物レンズ出射強度の変化が極端に大きいと、情報記録面ごとにBDレーザ光源105からの出射強度を変化させるといった制御が必要となり、BDレーザ光源105の制御が複雑化することになる。しかし、本実施例の場合、各情報記録面で対物レンズ出射強度の変化が小さいので、BDレーザ光源105の制御が複雑にならず簡素化されるという効果が得られる。
【0033】
図8は、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTをT=(80+87.5)/2=83.75μmに固定し、図8(a)に示すように、BDコリメートレンズ109が基準位置にある場合に、出射面401からBD対物レンズ113のアパーチャ114までの距離Lを変化させ、BDレーザ光源105から出射される光ビームの強度を一定にしてBD対物レンズ113から出射する光ビームの強度を計算した例を示している。図8(b)はその結果を示している。本図では、BDコリメートレンズ109の出射面401から出射した平行光402がBD対物レンズ113に入射した状態において、BD対物レンズ113からの出射強度で規格化した値をグラフ縦軸の対物レンズ出射強度[規格化値]とした。なお、当然のことながら、BD対物レンズ113に平行光が入射する状態では、上記距離Lに関係なくBD対物レンズ113からの出射強度は等しい。
【0034】
曲線801(L0層)、曲線802(L1層)、曲線803(L2層)の3本の曲線のうち2本の曲線が交差する矢印804の範囲、すなわち、5mm≦L≦10mmでは情報記録面L0層、L1層、L2層間での対物レンズ出射強度の差が約5%以内と小さく安定している。さらに、最も対物レンズ出射強度が安定するのは実線805に示したL=約7mmのときである。なお、BD対物レンズ113の焦点距離をf0と表記したとき、対物レンズ出射強度の差が安定する矢印804の範囲は、約3.6≦(L/f0)≦約7と表され、最も対物レンズ出射強度が安定する実線805については、L/f0≒5と表すことができる。また、BDコリメートレンズ109の焦点距離をfcと表記すると、fc=10mmであるから、対物レンズ出射強度の差が安定する矢印804の範囲は、0.5≦(L/fc)≦1と表され、最も対物レンズ出射強度が安定する実線805については、L/fc≒0.7と表すことができる。このように、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTの条件と、球面収差補正素子の条件L/f0、L/fcを組合せて規定することにより、L0層、L1層、L2層のいずれの情報記録面においても対物レンズ出射強度を安定にすることができるという効果が得られる。
【0035】
以上説明した本実施例において、下記の記号を用い、得られる効果についてまとめると以下のようになる。
A:BD2層ディスクで、光入射側の表面から見てL1層とL0層の中間面までの距離
B:BD多層ディスク(3層)で、光入射側の表面から見てL2層とL0層の中間面までの距離
L:BDコリメートレンズが基準位置にある場合に、出射面からBD対物レンズのアパーチャまでの距離
f0:BD対物レンズの焦点距離、fc:BDコリメートレンズの焦点距離
3面の情報記録面を持つ情報記録媒体(BD多層ディスク)に対し、球面収差補正の観点から、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTの条件をB<T<Aと規定することにより、十分に球面収差を補正し平均的に各情報記録面での光スポットの球面収差を抑制でき、さらに条件T=(A+B)/2と規定することにより、さらに良く球面収差を補正し最も平均的に良く各情報記録面での光スポットの球面収差を抑制できるという効果が得られる。また、球面収差補正後の光スポットの観点においても、上記球面収差補正と同様の条件を規定することにより、各情報記録面で平均的に良く光スポットを絞り込むことができるという効果が得られる。さらに、対物レンズ出射強度の観点においても、上記球面収差補正と同様の条件を規定することにより、各情報記録面で安定した対物レンズ出射強度とすることができるという効果が得られる。また、球面収差補正素子に関して、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTの条件と、球面収差補正素子の条件L/f0、L/fcを組合せて規定することにより、いずれの情報記録面においても対物レンズ出射強度を安定にすることができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0036】
図9(a)は、点線で示す4面の情報記録面901、902、903、904を持つ情報記録媒体905(BD多層ディスク)とBD用光ピックアップを示し、図9(b)は情報記録媒体905を拡大して示した図である。BD用光ピックアップについては実施例1と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0037】
図9(b)を用いて情報記録媒体905(BD多層ディスク)について説明する。情報記録媒体905は、BD対物レンズ113で集光された光ビームの光入射側から見て、表面906からそれぞれ順に点線で示す901(L3層)、902(L2層)、903(L1層)、904(L0層)の4面の情報記録面を持つ。破線で示す907は上記901(L3層)と903(L0層)の中間面を示す。本図では、表面906から901(L3層)までの距離をf、902(L2層)までの距離をg、903(L1層)までの距離をh、904(L0層)までの距離をi、中間面907までの距離をBと表記する。本実施例では、例えばf=54μm、g=69μm、h=87μm、i=100μmとし、B=(54+100)/2=77μmとした。
【0038】
図10は、実施例1の図2を用いて説明したようにBD対物レンズ113の基準カバー層厚さTを変え、それぞれの基準カバー層厚さで形状の最適化計算を行ったBD対物レンズ113を用い、各情報記録面904(L0層)、903(L1層)、902(L2層)、901(L3層)での集光スポットの波面収差を計算した例を示している。
【0039】
BD補助レンズ108、BDコリメートレンズ109、基準カバー層203の系については実施例1の図4(a)と同じであるためここでは説明を省略する。
【0040】
ここでは、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTを92.5μm、87.5μm、82.25μm、77μm、72μmに設定した。図10(a) に示すように、情報記録面のカバー層厚さが上記BD対物レンズ113の各基準カバー層厚さと一致する場合、波面収差はほぼ0で最小となる。しかし、上記BD対物レンズ113の各基準カバー層厚さからずれた場合、急激に波面収差(球面収差)が増加し、L0層(カバー層厚さ100μm)、L1層(カバー層厚さ87μm)、L2層(カバー層厚さ69μm)、L3層(カバー層厚さ54μm)の間で約0.25〜約0.4λrmsという大きな球面収差(大部分が3次の成分)が発生する。
【0041】
図10(b) は、上記BDコリメートレンズ109を基準位置から実施例1の図4(a) で示した矢印110の方向に移動させ、上記図10(a)で発生した球面収差を補正した後、光スポットに残留する波面収差を計算した例を示す。L0層、L1層、L2層、L2層間で光スポットの波面収差は約0.023λrms以下と大幅に改善されている(残留球面収差は5次以上の高次成分)。上記BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTが、77μm<T<87.5μmの範囲にあるとき、L0層、L1層、L2層、L3層の各情報記録面で平均的に残留波面収差が抑制(2点鎖線1001で示すように最大で0.015λrms)されている。特に、T=(77+87.5)/2=82.25μmのとき、L0層、L1層、L2層、L3層のいずれの各情報記録面においても残留波面収差が最も平均的に良く抑制(2点鎖線1002で示すように最大で0.011λrms)されていることがわかる。
【0042】
上記87.5μmは、実施例1の図3で説明したAに相当し、上記77μmは、本実施例の図9(b)で説明したBに相当する。これまでの説明からL0層、L1層、L2層、L3層間において、条件B<T<Aのとき平均的に球面収差を抑制でき、さらに条件T=(A+B)/2のとき最も平均的に良く球面収差を抑制できるという効果が得られる。
図11は、図10(b) で示した球面収差補正後の光スポットのスポットダイアグラムを計算した例を示している。図10(b)と同様に、L0層、L1層、L2層、L3層で、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTが77μm<T<87.5μmの範囲にあるとき平均的に光スポットが絞られ、さらにT=(77+87.5)/2=82.25μmのとき、最も平均的に良く光スポットが絞られるという効果が得られる。
【0043】
図12は、図10(b) で示した球面収差補正に必要なBDコリメートレンズ109の移動量を計算した例を示している。ここで、移動量0とは、BDコリメートレンズ109が実施例1の図4(a) で説明した基準位置にある状態、すなわちBDコリメートレンズ109の出射面401から平行光が出射する状態を指す。BD対物レンズ113の基準カバー層厚さによって、L0層、L1層、L2層、L3層の各情報記録面で必要なBDコリメートレンズ109の移動量は異なるが、いずれのBD対物レンズ113の基準カバー層厚さにおいてもBDコリメートレンズ109が光軸方向に1mm移動すると、約40μmのカバー層厚さ誤差によって発生する球面収差を補正できる換算になる。(図示しない)球面収差補正機構の大型化を防ぐためには、BDコリメートレンズ109の移動量の+方向と−方向で極端に差が出ないようにすることが必要である。その点で、図10を用いて説明したBD対物レンズ113の基準カバー層厚さTの条件、すなわち、77μm<T<87.5μm、T=(77+87.5)/2=82.75μmは望ましい条件と言える
図13は、実施例1の図7(a)に示すように、BDコリメートレンズ109が基準位置にある場合に、出射面401からBD対物レンズ113のアパーチャ114までの距離を10mmに設定し、BDレーザ光源105から出射される光ビームの強度を一定にしてBD対物レンズ113から出射する光ビームの強度を計算した例を示している。
【0044】
BDコリメートレンズ109を矢印110の方向に移動させ、図10、図11を用いて説明した球面収差補正を行った状態で、L0層、L1層、L2層、L3層の各情報記録面でのBD対物レンズ113からの出射強度を計算した。BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTは図10と同じ設定である。本図では、実施例1と同様に、BDコリメートレンズ109の出射面401から出射した平行光402がBD対物レンズ113に入射した状態において、BD対物レンズ113からの出射強度で規格化した値をグラフ縦軸の対物レンズ出射強度[規格化値]とした。なお、当然のことながら、BD対物レンズ113に平行光が入射する状態では、上記いずれのBD対物レンズ113の基準カバー層厚さにおいてもBD対物レンズ113からの出射強度は等しい。
【0045】
L0層、L1層では、いずれのBD対物レンズ113の基準カバー層厚さにおいても若干の差が見られるものの、対物レンズ出射強度はほぼ等しい。一方、L2層、L3層では、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さによって対物レンズ出射強度に差が生じている。これは、図12で示したように、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTが薄くなるに従って球面収差補正に必要なBDコリメートレンズ109の移動量が大きくなり、BD対物レンズ113に入射する収束光の状態に差が出る(光利用効率が良い方向になる)ためである。しかしながら、L0層、L1層、L2層、L3層において、基準カバー層厚さTが77μm<T<87.5μmの条件では、対物レンズ出射強度は1(2点鎖線1301)〜約1.085(2点鎖線1302)の範囲に、特に、T=(77+87.5)/2=82.25μmでは、1(2点鎖線1301)〜約1.06(2点鎖線1303)の範囲に収まっており、実用的には支障の出ないレベルと言える。
【0046】
L0層、L1層、L2層において対物レンズ出射強度の変化が極端に大きいと、情報記録面ごとにBDレーザ光源105からの出射強度を変化させるといった制御が必要となり、BDレーザ光源105の制御が複雑化することになる。しかし、本実施例の場合、各情報記録面で対物レンズ出射強度の変化が小さいので、BDレーザ光源105の制御が複雑にならず簡素化されるという効果が得られる。
【0047】
図14は、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTをT=(77+87.5)/2=82.25μmに固定し、実施例1の図8(a)に示すように、BDコリメートレンズ109が基準位置にある場合に、出射面401からBD対物レンズ113のアパーチャ114までの距離Lを変化させ、BDレーザ光源105から出射される光ビームの強度を一定にしてBD対物レンズ113から出射する光ビームの強度を計算した例を示している本図では、実施例1と同様に、BDコリメートレンズ109の出射面401から出射した平行光402がBD対物レンズ113に入射した状態において、BD対物レンズ113からの出射強度で規格化した値をグラフ縦軸の対物レンズ出射強度[規格化値]とした。なお、当然のことながら、BD対物レンズ113に平行光が入射する状態では、上記距離Lに関係なくBD対物レンズ113からの出射強度は等しい。
【0048】
曲線1401(L0層)、曲線1402(L1層)、曲線1403(L2層)、曲線1404(L3層)の4本の曲線のうち2本の曲線が交差する矢印1405の範囲、すなわち、4mm≦L≦10mmでは情報記録面L0層、L1層、L2層、L3層間での対物レンズ出射強度の差が約7%以内と小さく安定している。さらに、最も対物レンズ出射強度が安定するのは実線1406に示したL=約6.3mmのときである。なお、BD対物レンズ113の焦点距離をf0と表記したとき、対物レンズ出射強度の差が安定する矢印1405の範囲は、約2.8≦(L/f0)≦約7と表され、最も対物レンズ出射強度が安定するのは実線1406は、L/f0≒4.5と表すことができる。また、BDコリメートレンズ109の焦点距離をfcと表記すると、fc=10mmであるから、対物レンズ出射強度の差が安定する矢印1405の範囲は、0.4≦(L/fc)≦1と表され、最も対物レンズ出射強度が安定する実線1406は、L/fc≒0.63と表すことができる。このように、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTの条件と、球面収差補正素子の条件L/f0、L/fcを組合せて規定することにより、L0層、L1層、L2層、L3層のいずれの情報記録面においても対物レンズ出射強度を安定にすることができるという効果が得られる。
【0049】
以上説明した本実施例において、下記の記号を用い、得られる効果についてまとめると以下のようになる。
A:BD2層ディスクで、光入射側の表面から見てL1層とL0層の中間面までの距離
B:BD多層ディスク(4層)で、光入射側の表面から見てL3層とL0層の中間面までの距離
L:BDコリメートレンズが基準位置にある場合に、出射面からBD対物レンズのアパーチャまでの距離
f0:BD対物レンズの焦点距離、fc:BDコリメートレンズの焦点距離
4面の情報記録面を持つ情報記録媒体(BD多層ディスク)に対し、球面収差補正の観点から、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTの条件をB<T<Aと規定することにより、十分に球面収差を補正し平均的に各情報記録面での光スポットの球面収差を抑制でき、さらに条件T=(A+B)/2と規定することにより、さらに良く球面収差を補正し最も平均的に良く各情報記録面での光スポットの球面収差を抑制できるという効果が得られる。また、球面収差補正後の光スポットの観点においても、上記球面収差補正と同様の条件を規定することにより、各情報記録面で平均的に良く光スポットを絞り込むことができるという効果が得られる。さらに、対物レンズ出射強度の観点においても、上記球面収差補正と同様の条件を規定することにより、各情報記録面で安定した対物レンズ出射強度とすることができるという効果が得られる。また、球面収差補正素子に関して、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTの条件と、球面収差補正素子の条件L/f0、L/fcを組合せて規定することにより、いずれの情報記録面においても対物レンズ出射強度を安定にすることができるという効果が得られる。
【0050】
以上から、本発明を適用することにより、3面以上の情報記録面を持つBD多層ディスクの各情報記録面で、合焦点状態における光スポットの品質を良好に保つことができ、良好な記録、再生が可能な光ピックアップ、および記録再生装置を実現することができるという効果が得られる。また、2面の情報記録面を持つBD2層ディスクに本発明を適用したとしても、各情報記録面で合焦点状態における光スポットの品質が大きく劣化することはないので現在存在するBD2層ディスクに対しても互換性があるという利点がある。
【実施例3】
【0051】
実施例1、実施例2ではBD用光ピックアップについて説明してきたが、本発明はBD用に限定されることはなく、例えばDVD/CD互換対物レンズを用いたDVD/CD光学系を加えることによりBD/DVD/CD対応の光ピックアップを実現することが可能である。また、実施例1、実施例2ではBD専用の単レンズとして対物レンズを説明してきたが、これに限定されることはなく、例えばBD専用の単レンズの直下に、入射波面の位相をDVD/CDの場合に変化させることで球面収差を補償する機能を持つ位相補償板を一体に設けて、1個の対物レンズによりBD/DVD/CDに対応した光ピックアップを実現することも可能である。その他、対物レンズを樹脂で形成し、入射面に回折溝を設けることによってBD/DVD対応の対物レンズとし、BD/DVDに対応した光ピックアップを実現することも可能である。
【実施例4】
【0052】
これまでは3面以上の情報記録面を持つBD多層ディスクに対応した光ピックアップの実施例について説明してきたが、本実施例では上記光ピックアップを搭載した光学的情報記録再生装置の実施例について、図15を用いて説明する。
【0053】
図15は情報の記録および再生を行う情報記録再生装置1501の概略ブロック図を示している。1502は本発明の光ピックアップを示しており、この光ピックアップ1502から検出された信号は信号処理回路内のサーボ信号生成回路1503および情報信号再生回路1504に送られる。
【0054】
サーボ信号生成回路1503では、光ピックアップ1502より検出された信号から光ディスク1505に適したフォーカス制御信号、トラッキング制御信号、球面収差検出信号が生成され、これらをもとに対物レンズ駆動制御回路1506を経て光ピックアップ1502内の(図示しない)対物レンズアクチュエータを駆動し、対物レンズ1507の位置制御を行う。また、上記サーボ信号生成回路1503では上記光ピックアップ1502より球面収差検出信号が生成され、この信号をもとに球面収差補正駆動回路1508を経て光ピックアップ1502内の(図示しない)球面収差補正光学系の補正レンズを駆動する。また、情報信号再生回路1504では光ピックアップ1502から検出された信号から光ディスク媒体1505に記録された情報信号が再生され、その情報信号は情報信号出力端子1509へ出力される。なお、サーボ信号生成回路1503および、情報信号再生回路1504で得られた信号の一部はシステム制御回路1510に送られる。
【0055】
システム制御回路1510からはレーザ駆動用信号が送られ、レーザ光源点灯回路1511を駆動させて(図示しない)フロントモニタを用いて発光量の制御を行い、光ピックアップ1502を介して、光ディスク媒体1505に信号を記録する。なお、このシステム制御回路1510にはアクセス制御回路1512とスピンドルモータ駆動回路1513が接続されており、それぞれ、光ピックアップ1502のアクセス方向位置制御や光ディスク1505のスピンドルモータ1514の回転制御が行われる。なお、上記情報記録再生装置1501をユーザが制御する場合、ユーザがユーザ入力装置1517からユーザ入力処理回路1515に指示することによって制御を行う。その際、情報記録再生装置の処理状態等の表示は表示処理回路1516によって行われ、表示装置1518に処理状態が表示される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例1において、3面の情報記録面を持つ情報記録媒体とBD用光ピックアップを示す図。
【図2】実施例1において、BD対物レンズについて説明する図。
【図3】実施例1において、2面の情報記録面を持つ情報記録媒体を示す図。
【図4】実施例1において、各情報記録面L0層、L1層、L2層での集光スポットの波面収差を計算した例を示すグラフ。
【図5】実施例1において、球面収差補正後の光スポットのスポットダイアグラムを計算した例を示す図。
【図6】実施例1において、球面収差補正に必要なBDコリメートレンズの移動量を計算した例を示す図。
【図7】実施例1において、BD対物レンズから出射する光ビームの強度を計算した例を示すグラフ。
【図8】実施例1において、BDコリメートレンズ出射面からBD対物レンズのアパーチャまでの距離を変化させ、BD対物レンズから出射する光ビームの強度を計算した例を示すグラフ。
【図9】実施例2において、4面の情報記録面を持つ情報記録媒体とBD用光ピックアップを示す図。
【図10】実施例2において、各情報記録面L0層、L1層、L2層、L3層での集光スポットの波面収差を計算した例を示すグラフ。
【図11】実施例2において、球面収差補正後の光スポットのスポットダイアグラムを計算した例を示す図。
【図12】実施例2において、球面収差補正に必要なBDコリメートレンズの移動量を計算した例を示すグラフ。
【図13】実施例2において、BD対物レンズから出射する光ビームの強度を計算した例を示すグラフ。
【図14】実施例2において、BDコリメートレンズ出射面からBD対物レンズのアパーチャまでの距離を変化させ、BD対物レンズから出射する光ビームの強度を計算した例を示すグラフ。
【図15】実施例4において、情報の記録および再生を行う情報記録再生装置の概略ブロックを示す図。
【符号の説明】
【0057】
104 3面の情報記録面(L0層、L1層、L2層)を持つ情報記録媒体
105 BDレーザ光源
109 BDコリメートレンズ
113 BD対物レンズ
118 L2層とL0層の中間面
203 対物レンズの基準カバー層の位置
301 2面の情報記録面(L0層、L1層)を持つ情報記録媒体
305 L1層とL0層の中間面
905 4面の情報記録面(L0層、L1層、L2層、L3層)を持つ情報記録媒体
907 L3層とL0層の中間面
【技術分野】
【0001】
本発明は光学的情報記録媒体に情報信号を記録または再生する機能を持つ光ピックアップに係わる。
【背景技術】
【0002】
DVDに続く大容量光ディスクとして、現在青紫色レーザを使い単層で23〜27GB、2層で約50GBの容量を持つBD(Blu-ray Disc)とその記録再生装置が商品化されている。このBD2層ディスクでは2つの情報記録面に約25μmのカバー層厚さの差があり、使用する対物レンズの開口数(NA)が約0.85とDVDに比べて高い。そのため、記録再生装置にはそれぞれの情報記録面に対して光ビームの焦点を合わせるための球面収差補正手段を設けることが必須となっている。
【0003】
この球面収差補正手段の例は特許文献1に開示され、「光源と対物レンズの間にコリメートレンズユニットを備え、カバー層の厚さが基準値からずれ球面収差が発生した時はコリメートレンズを前後に動かし、生じた球面収差を打ち消す。」と記載されている。
【0004】
一方、3面以上、例えば4面の情報記録面を持つBD多層ディスクの技術開発が進められている(非特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−103087号公報
【非特許文献1】OPTRONICS(2007)NO.6、p126〜p127
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、3面、4面といった情報記録面を持つBD多層ディスクでは当然、現在の2面の情報記録面を持つBD2層ディスクに比べて、光入射側の表面から見て最も近い情報記録面と最も遠い情報記録面のカバー層厚さの差が大きくなる。そのため、上記特許文献1記載のようにコリメートレンズを前後に動かすという手段のみではBD多層ディスクの各情報記録面において、球面収差補正が不十分であることが予想され、合焦点状態における光スポットの品質を良好に保つことが難しいという懸念がある。
本発明は以上の点を鑑み、3面以上の情報記録面を持つBD多層ディスクの各情報記録面において合焦点状態での光スポットの品質を良好に保つことが可能な光ピックアップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記記載の目的は、その一例として本発明の特許請求の範囲に記載の構成、手段により実現可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、3面以上の情報記録面を持つBD多層ディスクの各情報記録面において合焦点状態での光スポットの品質を良好に保つことができ、良好な記録再生が可能な光ピックアップを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の光ピックアップの実施例について以下、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0010】
図1(a)は、点線で示す3面の情報記録面101、102、103を持つ情報記録媒体104(BD多層ディスク)とBD用光ピックアップを示し、図1(b)は情報記録媒体104を拡大して示した図である。
【0011】
始めに図1(a)を用いて本実施例のBD用光ピックアップについて説明する。BDレーザ光源105から波長405nm帯の直線偏光の発散ビーム光が出射され、偏光ビームスプリッタ106、光ビーム多分割素子107、BD補助レンズ108を経てBDコリメートレンズ109により略平行な光ビームに変換される。上記BDコリメートレンズ109は、例えばステッピングモータ、圧電素子を用いた(図示しない)球面収差補正機構により矢印110に示す光軸111方向に移動する。また、上記(図示しない)球面収差補正機構には上記BDコリメートレンズ109の初期位置等の位置を検出する(図示しない)位置検出センサが設けられている。
【0012】
上記光ビーム多分割素子107は(図示しない)偏光性格子と1/4波長板を貼合わせて一体化した素子であり、上記(図示しない)偏光性格子は所定方向の直線偏光の光ビームを回折させ、上記所定方向と直交する方向の直線偏光の光ビームを透過させる機能を持つ。すなわち、上記ビーム多分割素子107は、紙面の左方から右方へ通過する光ビームを透過させ、紙面の右方から左方へ通過する光ビームを回折させる。上記偏光ビームスプリッタ106から出射した光ビームは、上記光ビーム多分割素子107の上記(図示しない)偏光性格子を回折せずに透過し、上記(図示しない)1/4波長板によって円偏光に変換される。上記BDコリメートレンズ109から出射した光ビームはBD立上げミラー112により垂直に光路を曲げられた後にBD対物レンズ113で集光され、情報記録媒体104の3面の情報記録面101、102、103のうち目的とする情報記録面に照射される。114は上記BD対物レンズ113に入射する光ビームを所望の径に制限するために設けられた円形アパーチャを示している。なお、上記BD対物レンズ113はガラスあるいは樹脂で形成された単レンズからなる。
【0013】
上記情報記録面で反射した光ビームは、上記BD対物レンズ113、上記BD立上げミラー112、上記BDコリメートレンズ109、上記BD補助レンズ108を経て上記光ビーム多分割素子107に入射する。この入射光ビームは上記(図示しない)1/4波長板により円偏光から往路(BDレーザ光源105からBD対物レンズ113に至る光路)と直交する方向の直線偏光に変換され、上記偏光性格子により複数の光ビームに分割される。これらの複数の光ビームは、上記偏光ビームスプリッタ106を経てBD光検出器115の受光部116に到達する。本実施例ではサーボ信号の検出方式として、フォーカス誤差信号(以下、FESと呼ぶ)にナイフエッジ法、トラッキング誤差信号(以下、TESと呼ぶ)にプッシュプル(以下、PPと呼ぶ)方式を使用し、上記情報記録媒体104に照射された集光スポットの位置を制御する。なお、上記ナイフエッジ法や上記PP方式は公知技術であるのでここでは説明を省略する。
【0014】
BD光学系では上記情報記録面での集光スポットを小さくするため、DVDに比べて高い開口数0.85のBD対物レンズ113を使用する。ところが、上記情報記録面でのカバー層厚さ誤差、あるいは各情報記録面間のカバー層厚さの差により発生する球面収差は、対物レンズの開口数の4乗に比例して増加するためBD光学系では上記球面収差の補正手段が必須となる。本実施例では小型化の観点から、を上記BD補助レンズ108と上記BDコリメートレンズ109の2枚のレンズからコリメートレンズ系を構成し、上記(図示しない)球面収差補正機構によりBDコリメートレンズ109を光軸方向に移動させることによって、上記BD対物レンズ113に入射する光ビームを平行光から弱発散または弱収束光に変換し、発生した球面収差を打消すように補正を行う。
【0015】
なお、光ピックアップの実装可能スペースによっては、上記コリメートレンズ系を1枚のコリメートレンズとする、またはコリメートレンズの後に凹レンズと凸レンズからなり入射平行光を拡大し平行光を出射するビームエキスパンダを設け、上記球面収差の補正手段としても良い。その他、液晶層と回折レンズからなる液晶レンズを上記球面収差の補正手段としても良い。
【0016】
また、BDレーザ光源105と偏光ビームスプリッタ106の間に(図示しない)3スポット形成用の回折格子を設け、光ビーム多分割素子107を1/4波長板に変更し、偏光ビームスプリッタ106とBD光検出器115の間に(図示しない)シリンドリカルレンズを設けBD用光ピックアップを構成しても良い。この場合、サーボ信号の検出方式として、フォーカス誤差信号に非点収差法、トラッキング誤差信号に差動プッシュプル(DPP)方式を使用し、上記情報記録媒体104に照射された集光スポットの位置を制御する。
【0017】
次に、図1(b)を用いて情報記録媒体104(BD多層ディスク)について説明する。情報記録媒体104は、BD対物レンズ113で集光された光ビームの光入射側から見て、表面117からそれぞれ順に点線で示す101(L2層)、102(L1層)、103(L0層)の3面の情報記録面を持つ。破線で示す118は上記101(L2層)と103(L0層)の中間面を示す。本図では、表面117から101(L2層)までの距離をc、102(L1層)までの距離をd、103(L0層)までの距離をe、中間面118までの距離をBと表記する。本実施例では、例えばc=60μm、d=75μm、e=100μmとし、B=(60+100)/2=80μmとした。
【0018】
図2を用いてBD対物レンズ113についてさらに説明する。図2(a)は、BD対物レンズ113に平行光201が入射して集光され、情報記録媒体104で焦点202を結ぶ状態を示している。焦点202は光入射側の表面117から見て破線203までの距離Tに位置しており、この位置では光スポットの波面収差が最小またはスポット径が最小となる。以後、上記距離Tを対物レンズの基準カバー層厚さと呼ぶことにする。上記破線203が対物レンズの基準カバー層の位置を示す。
【0019】
図2(b)は、図2(a)の状態における光線図を示している。本実施例ではBD対物レンズ113について、波長を405nm、開口数(NA)を0.85、有効光束径φDを約2.4mmとし、ある基準カバー層厚さTを設定した時に、第1面204と第2面205の曲率半径、円錐定数、(偶数次の)非球面定数について最適化計算を行い、BD対物レンズ113の形状を決定している。なお、その他のパラメータである屈折率、軸上中心厚は同じとしている。
【0020】
図3には、図1と比較するため、点線で示す2面の情報記録面303、304を持つ情報記録媒体301(BD2層ディスク)を示した。情報記録媒体301は、BD対物レンズ113で集光された光ビームの光入射側から見て、表面302からそれぞれ順に点線で示す303(L1層)、304(L0層)の2つの情報記録面を持つ。破線で示す305は上記303(L1層)と304(L0層)の中間面を示す。本図では、表面302から303(L1層)までの距離をa、304(L0層)までの距離をb、中間面305までの距離をAと表記する。BD2層ディスクの場合、規格により上記a、bのノミナル値はそれぞれ、a=75μm、b=100μmと定められており、
A=(75+100)/2=87.5μmとなる。
【0021】
図4は、上記図2を用いて説明したBD対物レンズ113の基準カバー層厚さTを変え、それぞれの基準カバー層厚さで形状の最適化計算を行ったBD対物レンズ113を用い、各情報記録面103(L0層)、102(L1層)、101(L2層)での集光スポットの波面収差を計算した例を示している。
【0022】
図4(a) は、BD補助レンズ108、BDコリメートレンズ109、基準カバー層203の系における光線図を示す。BDコリメートレンズ109は基準位置にあり、出射面401から平行光402が出射しBD対物レンズ113に入射する状態を示している。
【0023】
BD補助レンズ108は固定されており、BDコリメートレンズ109が光軸に沿った矢印110の+方向、すなわちBD対物レンズ113に近づく方向に移動すると上記出射面401から収束光が出射される。一方、BDコリメートレンズ109が矢印110の−方向、すなわちBD対物レンズ113から離れる方向に移動すると上記出射面401から発散光が出射される。本実施例では、BD補助レンズ108とBDコリメートレンズ109の合成焦点距離を約17mm、BDコリメートレンズ109の焦点距離を約10mmとした。
【0024】
図4(b) は、上記BDコリメートレンズ109が基準位置にあって球面収差補正を行わない状態で各情報記録面103(L0層)、102(L1層)、101(L2層)
における光スポットの波面収差を計算した例を示している。ここでは、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTを92.5μm、87.5μm、83.75μm、80μm、75μmに設定した。情報記録面のカバー層厚さが上記BD対物レンズ113の各基準カバー層厚さと一致する場合、波面収差はほぼ0で最小となる。しかし、上記BD対物レンズ113の各基準カバー層厚さからずれた場合、急激に波面収差(球面収差)が増加し、L0層(カバー層厚さ100μm)、L1層(カバー層厚さ75μm)、L2層(カバー層厚さ60μm)の間で約0.25〜0.3λrmsという大きな球面収差(大部分が3次の成分)が発生する。
【0025】
図4(c) は、上記BDコリメートレンズ109を基準位置から矢印110の方向に移動させ、上記図4(b)で発生した球面収差を補正した後、光スポットに残留する波面収差を計算した例を示す。L0層、L1層、L2層間で光スポットの波面収差は約0.017λrms以下と大幅に改善されている(残留球面収差は5次以上の高次成分)。上記BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTが、80μm<T<87.5μmの範囲にあるとき、L0層、L1層、L2層の各情報記録面で平均的に残留波面収差が抑制(2点鎖線403で示すように最大で0.013λrms)されている。特に、T=(80+87.5)/2=83.75μmのとき、L0層、L1層、L2層のいずれの各情報記録面においても残留波面収差が、最も平均的に良く抑制(2点鎖線404で示すように最大で0.01λrms未満)されていることがわかる。
【0026】
上記87.5μmは、図3で説明したAに相当し、上記80μmは、図1(b)で説明したBに相当する。これまでの説明からL0層、L1層、L2層の間において、条件B<T<Aのとき平均的に球面収差を抑制でき、さらに条件T=(A+B)/2のとき最も平均的に良く球面収差を抑制できるという効果が得られる。
【0027】
図5は、図4(c) で示した球面収差補正後の光スポットのスポットダイアグラムを計算した例を示している。図4(c)と同様に、L0層、L1層、L2層で、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTが80μm<T<87.5μmの範囲にあるとき平均的に光スポットが絞られ、さらにT=(80+87.5)/2=83.75μmのとき、最も平均的に良く光スポットが絞られるという効果が得られる。
【0028】
図6は、図4(c) で示した球面収差補正に必要なBDコリメートレンズ109の移動量を計算した例を示している。ここで、移動量0とは、BDコリメートレンズ109が図4(a) で説明した基準位置にある状態、すなわちBDコリメートレンズ109の出射面401から平行光が出射する状態を指す。BD対物レンズ113の基準カバー層厚さによって、L0層、L1層、L2層の各情報記録面で必要なBDコリメートレンズ109の移動量は異なるが、いずれのBD対物レンズ113の基準カバー層厚さにおいてもBDコリメートレンズ109が光軸方向に1mm移動すると、約40μmのカバー層厚さ誤差によって発生する球面収差を補正できる換算になる。(図示しない)球面収差補正機構の大型化を防ぐためには、BDコリメートレンズ109の移動量の+方向と−方向で極端に差が出ないようにすることが必要である。その点で、図4を用いて説明したBD対物レンズ113の基準カバー層厚さTの条件、すなわち、80μm<T<87.5μm、T=(80+87.5)/2=83.75μmは望ましい条件と言える。
【0029】
図7は、図7(a)に示すように、BDコリメートレンズ109が基準位置にある場合に、出射面401からBD対物レンズ113のアパーチャ114までの距離を10mmに設定し、BDレーザ光源105から出射される光ビームの強度を一定にしてBD対物レンズ113から出射する光ビームの強度を計算した例を示している。
【0030】
図7(b)は、BDコリメートレンズ109を矢印110の方向に移動させ、図4、図6を用いて説明した球面収差補正を行った状態で、L0層、L1層、L2層の各情報記録面でのBD対物レンズ113からの出射強度を計算した例を示している。BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTは図4と同じ設定である。本図では、BDコリメートレンズ109の出射面401から出射した平行光402がBD対物レンズ113に入射した状態において、BD対物レンズ113からの出射強度で規格化した値をグラフ縦軸の対物レンズ出射強度[規格化値]とした。なお、当然のことながら、BD対物レンズ113に平行光が入射する状態では、上記いずれのBD対物レンズ113の基準カバー層厚さにおいてもBD対物レンズ113からの出射強度は等しい。
【0031】
L0層、L1層では、いずれのBD対物レンズ113の基準カバー層厚さにおいても若干の差が見られるものの、対物レンズ出射強度はほぼ等しい。一方、L2層では、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さによって対物レンズ出射強度に差が生じている。これは、図6で示したように、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTが薄くなるに従って球面収差補正に必要なBDコリメートレンズ109の移動量が大きくなり、BD対物レンズ113に入射する収束光の状態に差が出る(光利用効率が良い方向になる)ためである。しかしながら、L0層、L1層、L2層において、基準カバー層厚さTが80μm<T<87.5μmの条件では対物レンズ出射強度は1(2点鎖線701)〜1.07(2点鎖線702)の範囲に、特に、T=(80+87.5)/2=83.75μmでは1(2点鎖線701)〜1.05(2点鎖線703)の範囲に収まっており、実用的には支障の出ないレベルと言える。
【0032】
L0層、L1層、L2層において対物レンズ出射強度の変化が極端に大きいと、情報記録面ごとにBDレーザ光源105からの出射強度を変化させるといった制御が必要となり、BDレーザ光源105の制御が複雑化することになる。しかし、本実施例の場合、各情報記録面で対物レンズ出射強度の変化が小さいので、BDレーザ光源105の制御が複雑にならず簡素化されるという効果が得られる。
【0033】
図8は、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTをT=(80+87.5)/2=83.75μmに固定し、図8(a)に示すように、BDコリメートレンズ109が基準位置にある場合に、出射面401からBD対物レンズ113のアパーチャ114までの距離Lを変化させ、BDレーザ光源105から出射される光ビームの強度を一定にしてBD対物レンズ113から出射する光ビームの強度を計算した例を示している。図8(b)はその結果を示している。本図では、BDコリメートレンズ109の出射面401から出射した平行光402がBD対物レンズ113に入射した状態において、BD対物レンズ113からの出射強度で規格化した値をグラフ縦軸の対物レンズ出射強度[規格化値]とした。なお、当然のことながら、BD対物レンズ113に平行光が入射する状態では、上記距離Lに関係なくBD対物レンズ113からの出射強度は等しい。
【0034】
曲線801(L0層)、曲線802(L1層)、曲線803(L2層)の3本の曲線のうち2本の曲線が交差する矢印804の範囲、すなわち、5mm≦L≦10mmでは情報記録面L0層、L1層、L2層間での対物レンズ出射強度の差が約5%以内と小さく安定している。さらに、最も対物レンズ出射強度が安定するのは実線805に示したL=約7mmのときである。なお、BD対物レンズ113の焦点距離をf0と表記したとき、対物レンズ出射強度の差が安定する矢印804の範囲は、約3.6≦(L/f0)≦約7と表され、最も対物レンズ出射強度が安定する実線805については、L/f0≒5と表すことができる。また、BDコリメートレンズ109の焦点距離をfcと表記すると、fc=10mmであるから、対物レンズ出射強度の差が安定する矢印804の範囲は、0.5≦(L/fc)≦1と表され、最も対物レンズ出射強度が安定する実線805については、L/fc≒0.7と表すことができる。このように、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTの条件と、球面収差補正素子の条件L/f0、L/fcを組合せて規定することにより、L0層、L1層、L2層のいずれの情報記録面においても対物レンズ出射強度を安定にすることができるという効果が得られる。
【0035】
以上説明した本実施例において、下記の記号を用い、得られる効果についてまとめると以下のようになる。
A:BD2層ディスクで、光入射側の表面から見てL1層とL0層の中間面までの距離
B:BD多層ディスク(3層)で、光入射側の表面から見てL2層とL0層の中間面までの距離
L:BDコリメートレンズが基準位置にある場合に、出射面からBD対物レンズのアパーチャまでの距離
f0:BD対物レンズの焦点距離、fc:BDコリメートレンズの焦点距離
3面の情報記録面を持つ情報記録媒体(BD多層ディスク)に対し、球面収差補正の観点から、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTの条件をB<T<Aと規定することにより、十分に球面収差を補正し平均的に各情報記録面での光スポットの球面収差を抑制でき、さらに条件T=(A+B)/2と規定することにより、さらに良く球面収差を補正し最も平均的に良く各情報記録面での光スポットの球面収差を抑制できるという効果が得られる。また、球面収差補正後の光スポットの観点においても、上記球面収差補正と同様の条件を規定することにより、各情報記録面で平均的に良く光スポットを絞り込むことができるという効果が得られる。さらに、対物レンズ出射強度の観点においても、上記球面収差補正と同様の条件を規定することにより、各情報記録面で安定した対物レンズ出射強度とすることができるという効果が得られる。また、球面収差補正素子に関して、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTの条件と、球面収差補正素子の条件L/f0、L/fcを組合せて規定することにより、いずれの情報記録面においても対物レンズ出射強度を安定にすることができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0036】
図9(a)は、点線で示す4面の情報記録面901、902、903、904を持つ情報記録媒体905(BD多層ディスク)とBD用光ピックアップを示し、図9(b)は情報記録媒体905を拡大して示した図である。BD用光ピックアップについては実施例1と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0037】
図9(b)を用いて情報記録媒体905(BD多層ディスク)について説明する。情報記録媒体905は、BD対物レンズ113で集光された光ビームの光入射側から見て、表面906からそれぞれ順に点線で示す901(L3層)、902(L2層)、903(L1層)、904(L0層)の4面の情報記録面を持つ。破線で示す907は上記901(L3層)と903(L0層)の中間面を示す。本図では、表面906から901(L3層)までの距離をf、902(L2層)までの距離をg、903(L1層)までの距離をh、904(L0層)までの距離をi、中間面907までの距離をBと表記する。本実施例では、例えばf=54μm、g=69μm、h=87μm、i=100μmとし、B=(54+100)/2=77μmとした。
【0038】
図10は、実施例1の図2を用いて説明したようにBD対物レンズ113の基準カバー層厚さTを変え、それぞれの基準カバー層厚さで形状の最適化計算を行ったBD対物レンズ113を用い、各情報記録面904(L0層)、903(L1層)、902(L2層)、901(L3層)での集光スポットの波面収差を計算した例を示している。
【0039】
BD補助レンズ108、BDコリメートレンズ109、基準カバー層203の系については実施例1の図4(a)と同じであるためここでは説明を省略する。
【0040】
ここでは、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTを92.5μm、87.5μm、82.25μm、77μm、72μmに設定した。図10(a) に示すように、情報記録面のカバー層厚さが上記BD対物レンズ113の各基準カバー層厚さと一致する場合、波面収差はほぼ0で最小となる。しかし、上記BD対物レンズ113の各基準カバー層厚さからずれた場合、急激に波面収差(球面収差)が増加し、L0層(カバー層厚さ100μm)、L1層(カバー層厚さ87μm)、L2層(カバー層厚さ69μm)、L3層(カバー層厚さ54μm)の間で約0.25〜約0.4λrmsという大きな球面収差(大部分が3次の成分)が発生する。
【0041】
図10(b) は、上記BDコリメートレンズ109を基準位置から実施例1の図4(a) で示した矢印110の方向に移動させ、上記図10(a)で発生した球面収差を補正した後、光スポットに残留する波面収差を計算した例を示す。L0層、L1層、L2層、L2層間で光スポットの波面収差は約0.023λrms以下と大幅に改善されている(残留球面収差は5次以上の高次成分)。上記BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTが、77μm<T<87.5μmの範囲にあるとき、L0層、L1層、L2層、L3層の各情報記録面で平均的に残留波面収差が抑制(2点鎖線1001で示すように最大で0.015λrms)されている。特に、T=(77+87.5)/2=82.25μmのとき、L0層、L1層、L2層、L3層のいずれの各情報記録面においても残留波面収差が最も平均的に良く抑制(2点鎖線1002で示すように最大で0.011λrms)されていることがわかる。
【0042】
上記87.5μmは、実施例1の図3で説明したAに相当し、上記77μmは、本実施例の図9(b)で説明したBに相当する。これまでの説明からL0層、L1層、L2層、L3層間において、条件B<T<Aのとき平均的に球面収差を抑制でき、さらに条件T=(A+B)/2のとき最も平均的に良く球面収差を抑制できるという効果が得られる。
図11は、図10(b) で示した球面収差補正後の光スポットのスポットダイアグラムを計算した例を示している。図10(b)と同様に、L0層、L1層、L2層、L3層で、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTが77μm<T<87.5μmの範囲にあるとき平均的に光スポットが絞られ、さらにT=(77+87.5)/2=82.25μmのとき、最も平均的に良く光スポットが絞られるという効果が得られる。
【0043】
図12は、図10(b) で示した球面収差補正に必要なBDコリメートレンズ109の移動量を計算した例を示している。ここで、移動量0とは、BDコリメートレンズ109が実施例1の図4(a) で説明した基準位置にある状態、すなわちBDコリメートレンズ109の出射面401から平行光が出射する状態を指す。BD対物レンズ113の基準カバー層厚さによって、L0層、L1層、L2層、L3層の各情報記録面で必要なBDコリメートレンズ109の移動量は異なるが、いずれのBD対物レンズ113の基準カバー層厚さにおいてもBDコリメートレンズ109が光軸方向に1mm移動すると、約40μmのカバー層厚さ誤差によって発生する球面収差を補正できる換算になる。(図示しない)球面収差補正機構の大型化を防ぐためには、BDコリメートレンズ109の移動量の+方向と−方向で極端に差が出ないようにすることが必要である。その点で、図10を用いて説明したBD対物レンズ113の基準カバー層厚さTの条件、すなわち、77μm<T<87.5μm、T=(77+87.5)/2=82.75μmは望ましい条件と言える
図13は、実施例1の図7(a)に示すように、BDコリメートレンズ109が基準位置にある場合に、出射面401からBD対物レンズ113のアパーチャ114までの距離を10mmに設定し、BDレーザ光源105から出射される光ビームの強度を一定にしてBD対物レンズ113から出射する光ビームの強度を計算した例を示している。
【0044】
BDコリメートレンズ109を矢印110の方向に移動させ、図10、図11を用いて説明した球面収差補正を行った状態で、L0層、L1層、L2層、L3層の各情報記録面でのBD対物レンズ113からの出射強度を計算した。BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTは図10と同じ設定である。本図では、実施例1と同様に、BDコリメートレンズ109の出射面401から出射した平行光402がBD対物レンズ113に入射した状態において、BD対物レンズ113からの出射強度で規格化した値をグラフ縦軸の対物レンズ出射強度[規格化値]とした。なお、当然のことながら、BD対物レンズ113に平行光が入射する状態では、上記いずれのBD対物レンズ113の基準カバー層厚さにおいてもBD対物レンズ113からの出射強度は等しい。
【0045】
L0層、L1層では、いずれのBD対物レンズ113の基準カバー層厚さにおいても若干の差が見られるものの、対物レンズ出射強度はほぼ等しい。一方、L2層、L3層では、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さによって対物レンズ出射強度に差が生じている。これは、図12で示したように、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTが薄くなるに従って球面収差補正に必要なBDコリメートレンズ109の移動量が大きくなり、BD対物レンズ113に入射する収束光の状態に差が出る(光利用効率が良い方向になる)ためである。しかしながら、L0層、L1層、L2層、L3層において、基準カバー層厚さTが77μm<T<87.5μmの条件では、対物レンズ出射強度は1(2点鎖線1301)〜約1.085(2点鎖線1302)の範囲に、特に、T=(77+87.5)/2=82.25μmでは、1(2点鎖線1301)〜約1.06(2点鎖線1303)の範囲に収まっており、実用的には支障の出ないレベルと言える。
【0046】
L0層、L1層、L2層において対物レンズ出射強度の変化が極端に大きいと、情報記録面ごとにBDレーザ光源105からの出射強度を変化させるといった制御が必要となり、BDレーザ光源105の制御が複雑化することになる。しかし、本実施例の場合、各情報記録面で対物レンズ出射強度の変化が小さいので、BDレーザ光源105の制御が複雑にならず簡素化されるという効果が得られる。
【0047】
図14は、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTをT=(77+87.5)/2=82.25μmに固定し、実施例1の図8(a)に示すように、BDコリメートレンズ109が基準位置にある場合に、出射面401からBD対物レンズ113のアパーチャ114までの距離Lを変化させ、BDレーザ光源105から出射される光ビームの強度を一定にしてBD対物レンズ113から出射する光ビームの強度を計算した例を示している本図では、実施例1と同様に、BDコリメートレンズ109の出射面401から出射した平行光402がBD対物レンズ113に入射した状態において、BD対物レンズ113からの出射強度で規格化した値をグラフ縦軸の対物レンズ出射強度[規格化値]とした。なお、当然のことながら、BD対物レンズ113に平行光が入射する状態では、上記距離Lに関係なくBD対物レンズ113からの出射強度は等しい。
【0048】
曲線1401(L0層)、曲線1402(L1層)、曲線1403(L2層)、曲線1404(L3層)の4本の曲線のうち2本の曲線が交差する矢印1405の範囲、すなわち、4mm≦L≦10mmでは情報記録面L0層、L1層、L2層、L3層間での対物レンズ出射強度の差が約7%以内と小さく安定している。さらに、最も対物レンズ出射強度が安定するのは実線1406に示したL=約6.3mmのときである。なお、BD対物レンズ113の焦点距離をf0と表記したとき、対物レンズ出射強度の差が安定する矢印1405の範囲は、約2.8≦(L/f0)≦約7と表され、最も対物レンズ出射強度が安定するのは実線1406は、L/f0≒4.5と表すことができる。また、BDコリメートレンズ109の焦点距離をfcと表記すると、fc=10mmであるから、対物レンズ出射強度の差が安定する矢印1405の範囲は、0.4≦(L/fc)≦1と表され、最も対物レンズ出射強度が安定する実線1406は、L/fc≒0.63と表すことができる。このように、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTの条件と、球面収差補正素子の条件L/f0、L/fcを組合せて規定することにより、L0層、L1層、L2層、L3層のいずれの情報記録面においても対物レンズ出射強度を安定にすることができるという効果が得られる。
【0049】
以上説明した本実施例において、下記の記号を用い、得られる効果についてまとめると以下のようになる。
A:BD2層ディスクで、光入射側の表面から見てL1層とL0層の中間面までの距離
B:BD多層ディスク(4層)で、光入射側の表面から見てL3層とL0層の中間面までの距離
L:BDコリメートレンズが基準位置にある場合に、出射面からBD対物レンズのアパーチャまでの距離
f0:BD対物レンズの焦点距離、fc:BDコリメートレンズの焦点距離
4面の情報記録面を持つ情報記録媒体(BD多層ディスク)に対し、球面収差補正の観点から、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTの条件をB<T<Aと規定することにより、十分に球面収差を補正し平均的に各情報記録面での光スポットの球面収差を抑制でき、さらに条件T=(A+B)/2と規定することにより、さらに良く球面収差を補正し最も平均的に良く各情報記録面での光スポットの球面収差を抑制できるという効果が得られる。また、球面収差補正後の光スポットの観点においても、上記球面収差補正と同様の条件を規定することにより、各情報記録面で平均的に良く光スポットを絞り込むことができるという効果が得られる。さらに、対物レンズ出射強度の観点においても、上記球面収差補正と同様の条件を規定することにより、各情報記録面で安定した対物レンズ出射強度とすることができるという効果が得られる。また、球面収差補正素子に関して、BD対物レンズ113の基準カバー層厚さTの条件と、球面収差補正素子の条件L/f0、L/fcを組合せて規定することにより、いずれの情報記録面においても対物レンズ出射強度を安定にすることができるという効果が得られる。
【0050】
以上から、本発明を適用することにより、3面以上の情報記録面を持つBD多層ディスクの各情報記録面で、合焦点状態における光スポットの品質を良好に保つことができ、良好な記録、再生が可能な光ピックアップ、および記録再生装置を実現することができるという効果が得られる。また、2面の情報記録面を持つBD2層ディスクに本発明を適用したとしても、各情報記録面で合焦点状態における光スポットの品質が大きく劣化することはないので現在存在するBD2層ディスクに対しても互換性があるという利点がある。
【実施例3】
【0051】
実施例1、実施例2ではBD用光ピックアップについて説明してきたが、本発明はBD用に限定されることはなく、例えばDVD/CD互換対物レンズを用いたDVD/CD光学系を加えることによりBD/DVD/CD対応の光ピックアップを実現することが可能である。また、実施例1、実施例2ではBD専用の単レンズとして対物レンズを説明してきたが、これに限定されることはなく、例えばBD専用の単レンズの直下に、入射波面の位相をDVD/CDの場合に変化させることで球面収差を補償する機能を持つ位相補償板を一体に設けて、1個の対物レンズによりBD/DVD/CDに対応した光ピックアップを実現することも可能である。その他、対物レンズを樹脂で形成し、入射面に回折溝を設けることによってBD/DVD対応の対物レンズとし、BD/DVDに対応した光ピックアップを実現することも可能である。
【実施例4】
【0052】
これまでは3面以上の情報記録面を持つBD多層ディスクに対応した光ピックアップの実施例について説明してきたが、本実施例では上記光ピックアップを搭載した光学的情報記録再生装置の実施例について、図15を用いて説明する。
【0053】
図15は情報の記録および再生を行う情報記録再生装置1501の概略ブロック図を示している。1502は本発明の光ピックアップを示しており、この光ピックアップ1502から検出された信号は信号処理回路内のサーボ信号生成回路1503および情報信号再生回路1504に送られる。
【0054】
サーボ信号生成回路1503では、光ピックアップ1502より検出された信号から光ディスク1505に適したフォーカス制御信号、トラッキング制御信号、球面収差検出信号が生成され、これらをもとに対物レンズ駆動制御回路1506を経て光ピックアップ1502内の(図示しない)対物レンズアクチュエータを駆動し、対物レンズ1507の位置制御を行う。また、上記サーボ信号生成回路1503では上記光ピックアップ1502より球面収差検出信号が生成され、この信号をもとに球面収差補正駆動回路1508を経て光ピックアップ1502内の(図示しない)球面収差補正光学系の補正レンズを駆動する。また、情報信号再生回路1504では光ピックアップ1502から検出された信号から光ディスク媒体1505に記録された情報信号が再生され、その情報信号は情報信号出力端子1509へ出力される。なお、サーボ信号生成回路1503および、情報信号再生回路1504で得られた信号の一部はシステム制御回路1510に送られる。
【0055】
システム制御回路1510からはレーザ駆動用信号が送られ、レーザ光源点灯回路1511を駆動させて(図示しない)フロントモニタを用いて発光量の制御を行い、光ピックアップ1502を介して、光ディスク媒体1505に信号を記録する。なお、このシステム制御回路1510にはアクセス制御回路1512とスピンドルモータ駆動回路1513が接続されており、それぞれ、光ピックアップ1502のアクセス方向位置制御や光ディスク1505のスピンドルモータ1514の回転制御が行われる。なお、上記情報記録再生装置1501をユーザが制御する場合、ユーザがユーザ入力装置1517からユーザ入力処理回路1515に指示することによって制御を行う。その際、情報記録再生装置の処理状態等の表示は表示処理回路1516によって行われ、表示装置1518に処理状態が表示される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例1において、3面の情報記録面を持つ情報記録媒体とBD用光ピックアップを示す図。
【図2】実施例1において、BD対物レンズについて説明する図。
【図3】実施例1において、2面の情報記録面を持つ情報記録媒体を示す図。
【図4】実施例1において、各情報記録面L0層、L1層、L2層での集光スポットの波面収差を計算した例を示すグラフ。
【図5】実施例1において、球面収差補正後の光スポットのスポットダイアグラムを計算した例を示す図。
【図6】実施例1において、球面収差補正に必要なBDコリメートレンズの移動量を計算した例を示す図。
【図7】実施例1において、BD対物レンズから出射する光ビームの強度を計算した例を示すグラフ。
【図8】実施例1において、BDコリメートレンズ出射面からBD対物レンズのアパーチャまでの距離を変化させ、BD対物レンズから出射する光ビームの強度を計算した例を示すグラフ。
【図9】実施例2において、4面の情報記録面を持つ情報記録媒体とBD用光ピックアップを示す図。
【図10】実施例2において、各情報記録面L0層、L1層、L2層、L3層での集光スポットの波面収差を計算した例を示すグラフ。
【図11】実施例2において、球面収差補正後の光スポットのスポットダイアグラムを計算した例を示す図。
【図12】実施例2において、球面収差補正に必要なBDコリメートレンズの移動量を計算した例を示すグラフ。
【図13】実施例2において、BD対物レンズから出射する光ビームの強度を計算した例を示すグラフ。
【図14】実施例2において、BDコリメートレンズ出射面からBD対物レンズのアパーチャまでの距離を変化させ、BD対物レンズから出射する光ビームの強度を計算した例を示すグラフ。
【図15】実施例4において、情報の記録および再生を行う情報記録再生装置の概略ブロックを示す図。
【符号の説明】
【0057】
104 3面の情報記録面(L0層、L1層、L2層)を持つ情報記録媒体
105 BDレーザ光源
109 BDコリメートレンズ
113 BD対物レンズ
118 L2層とL0層の中間面
203 対物レンズの基準カバー層の位置
301 2面の情報記録面(L0層、L1層)を持つ情報記録媒体
305 L1層とL0層の中間面
905 4面の情報記録面(L0層、L1層、L2層、L3層)を持つ情報記録媒体
907 L3層とL0層の中間面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、
球面収差補正素子と、
前記レーザ光源から出射した光ビームを、複数の情報記録面を持つ情報記録媒体の各情報記録面に対して集光可能な対物レンズを備え、
基準カバー層厚さを、平行光ビームが前記対物レンズに入射する状態において、前記情報記録媒体を光入射側の表面から見た場合に、前記情報記録媒体に集光される光スポットの総合波面収差が最小あるいはスポット径が最小となるカバー層厚さとしたときに、前記対物レンズは、前記基準カバー層厚さが2面の情報記録面を持つ前記情報記録媒体の中間面でのカバー層厚さより薄くなるように設定されている光ピックアップ。
【請求項2】
レーザ光源と、
球面収差補正素子と、
前記レーザ光源から出射した光ビームを複数の情報記録面を持つ情報記録媒体の各情報記録面に対して集光可能な対物レンズを備え、
前記情報記録媒体を光入射側の表面から見たときに、2面の情報記録面を持つ前記情報記録媒体の中間面でのカバー層厚さをAと表記し、
前記情報記録媒体を光入射側の表面から見たときに、3面以上の情報記録面を持つ前記情報記録媒体の中間面でのカバー層厚さをBと表記し、
前記対物レンズの基準カバー層厚さを平行光ビームが前記対物レンズに入射する状態において、前記情報記録媒体を光入射側の表面から見た場合に、前記情報記録媒体に集光される光スポットの総合波面収差が最小あるいはスポット径が最小となるカバー層厚さTと表記したとき、前記対物レンズの基準カバー層厚さTが以下に示す関係式で規定されていることを特徴とする光ピックアップ。
B<T<A
【請求項3】
請求項2に記載の光ピックアップおいて、前記対物レンズは、前記基準カバー層厚さTが以下に示す関係式で規定されていることを特徴とする光ピックアップ。
T=(A+B)/2
【請求項4】
請求項1または2に記載の光ピックアップにおいて、前記対物レンズは、開口数が約0.85のガラス製あるいは樹脂製の単レンズで形成されていることを特徴とする光ピックアップ。
【請求項5】
請求項1または2に記載の光ピックアップにおいて、前記球面収差補正素子は、1枚または2枚のレンズからなるコリメートレンズ、あるいは凹レンズと凸レンズからなるビームエキスパンダ、あるいは液晶層と回折レンズからなる液晶レンズであることを特徴とする光ピックアップ。
【請求項6】
請求項1または2に記載の光ピックアップにおいて、前記球面収差補正素子はコリメートレンズであり、前記対物レンズの焦点距離をf0、前記コリメートレンズの焦点距離をfc、前記コリメートレンズの出射面から前記対物レンズのアパーチャまでの距離をLと表記したとき、前記L、前記f0、前記fcが以下に示す関係式で規定されていることを特徴とする光ピックアップ。
2.5<(L/f0 )<7.5
0.4≦(L/fc)≦1
【請求項7】
請求項1または2に記載の光ピックアップにおいて、前記レーザ光源は、波長405nm帯の青紫色レーザ光を出射することを特徴とする光ピックアップ。
【請求項8】
複数の情報記録面を持つ情報記録媒体を記録再生する光ピックアップに搭載される対物レンズであって、
前記情報記録媒体を光入射側の表面から見たときに、2面の情報記録面を持つ前記情報記録媒体の中間面でのカバー層厚さをAと表記し、
前記情報記録媒体を光入射側の表面から見たときに、3面以上の情報記録面を持つ前記情報記録媒体の中間面でのカバー層厚さをBと表記し、
前記対物レンズの基準カバー層厚さを、平行光ビームが前記対物レンズに入射する状態において、前記情報記録媒体を光入射側の表面から見た場合に、前記情報記録媒体に集光される光スポットの総合波面収差が最小あるいはスポット径が最小となるカバー層厚さTと表記したとき、前記基準カバー層厚さTが以下に示す関係式で規定されていることを特徴とする対物レンズ。
B<T<A
【請求項9】
複数の情報記録面を持つ情報記録媒体の各情報記録面に、対物レンズで集光した光ビームを用いて記録再生を行う光ピックアップに搭載される球面収差補正素子であって、
前記球面収差補正素子はコリメートレンズを有し、
前記対物レンズの焦点距離をf0、前記コリメートレンズの焦点距離をfc、前記コリメートレンズの出射面から前記対物レンズのアパーチャまでの距離Lと表記したとき、
前記L、前記f0、前記fcが以下に示す関係式で規定されていることを特徴とする球面収差補正素子。
2.5<(L/f0 )<7.5
0.4≦(L/fc)≦1
【請求項10】
請求項1または2に記載の光ピックアップと、少なくとも前記対物レンズとを搭載したアクチュエータを駆動、制御する回路を備えたことを特徴とする光学的情報記録再生装置。
【請求項1】
レーザ光源と、
球面収差補正素子と、
前記レーザ光源から出射した光ビームを、複数の情報記録面を持つ情報記録媒体の各情報記録面に対して集光可能な対物レンズを備え、
基準カバー層厚さを、平行光ビームが前記対物レンズに入射する状態において、前記情報記録媒体を光入射側の表面から見た場合に、前記情報記録媒体に集光される光スポットの総合波面収差が最小あるいはスポット径が最小となるカバー層厚さとしたときに、前記対物レンズは、前記基準カバー層厚さが2面の情報記録面を持つ前記情報記録媒体の中間面でのカバー層厚さより薄くなるように設定されている光ピックアップ。
【請求項2】
レーザ光源と、
球面収差補正素子と、
前記レーザ光源から出射した光ビームを複数の情報記録面を持つ情報記録媒体の各情報記録面に対して集光可能な対物レンズを備え、
前記情報記録媒体を光入射側の表面から見たときに、2面の情報記録面を持つ前記情報記録媒体の中間面でのカバー層厚さをAと表記し、
前記情報記録媒体を光入射側の表面から見たときに、3面以上の情報記録面を持つ前記情報記録媒体の中間面でのカバー層厚さをBと表記し、
前記対物レンズの基準カバー層厚さを平行光ビームが前記対物レンズに入射する状態において、前記情報記録媒体を光入射側の表面から見た場合に、前記情報記録媒体に集光される光スポットの総合波面収差が最小あるいはスポット径が最小となるカバー層厚さTと表記したとき、前記対物レンズの基準カバー層厚さTが以下に示す関係式で規定されていることを特徴とする光ピックアップ。
B<T<A
【請求項3】
請求項2に記載の光ピックアップおいて、前記対物レンズは、前記基準カバー層厚さTが以下に示す関係式で規定されていることを特徴とする光ピックアップ。
T=(A+B)/2
【請求項4】
請求項1または2に記載の光ピックアップにおいて、前記対物レンズは、開口数が約0.85のガラス製あるいは樹脂製の単レンズで形成されていることを特徴とする光ピックアップ。
【請求項5】
請求項1または2に記載の光ピックアップにおいて、前記球面収差補正素子は、1枚または2枚のレンズからなるコリメートレンズ、あるいは凹レンズと凸レンズからなるビームエキスパンダ、あるいは液晶層と回折レンズからなる液晶レンズであることを特徴とする光ピックアップ。
【請求項6】
請求項1または2に記載の光ピックアップにおいて、前記球面収差補正素子はコリメートレンズであり、前記対物レンズの焦点距離をf0、前記コリメートレンズの焦点距離をfc、前記コリメートレンズの出射面から前記対物レンズのアパーチャまでの距離をLと表記したとき、前記L、前記f0、前記fcが以下に示す関係式で規定されていることを特徴とする光ピックアップ。
2.5<(L/f0 )<7.5
0.4≦(L/fc)≦1
【請求項7】
請求項1または2に記載の光ピックアップにおいて、前記レーザ光源は、波長405nm帯の青紫色レーザ光を出射することを特徴とする光ピックアップ。
【請求項8】
複数の情報記録面を持つ情報記録媒体を記録再生する光ピックアップに搭載される対物レンズであって、
前記情報記録媒体を光入射側の表面から見たときに、2面の情報記録面を持つ前記情報記録媒体の中間面でのカバー層厚さをAと表記し、
前記情報記録媒体を光入射側の表面から見たときに、3面以上の情報記録面を持つ前記情報記録媒体の中間面でのカバー層厚さをBと表記し、
前記対物レンズの基準カバー層厚さを、平行光ビームが前記対物レンズに入射する状態において、前記情報記録媒体を光入射側の表面から見た場合に、前記情報記録媒体に集光される光スポットの総合波面収差が最小あるいはスポット径が最小となるカバー層厚さTと表記したとき、前記基準カバー層厚さTが以下に示す関係式で規定されていることを特徴とする対物レンズ。
B<T<A
【請求項9】
複数の情報記録面を持つ情報記録媒体の各情報記録面に、対物レンズで集光した光ビームを用いて記録再生を行う光ピックアップに搭載される球面収差補正素子であって、
前記球面収差補正素子はコリメートレンズを有し、
前記対物レンズの焦点距離をf0、前記コリメートレンズの焦点距離をfc、前記コリメートレンズの出射面から前記対物レンズのアパーチャまでの距離Lと表記したとき、
前記L、前記f0、前記fcが以下に示す関係式で規定されていることを特徴とする球面収差補正素子。
2.5<(L/f0 )<7.5
0.4≦(L/fc)≦1
【請求項10】
請求項1または2に記載の光ピックアップと、少なくとも前記対物レンズとを搭載したアクチュエータを駆動、制御する回路を備えたことを特徴とする光学的情報記録再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−73238(P2010−73238A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237322(P2008−237322)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】
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