説明

光ピックアップ用スレッド制御装置及び制御方法

【課題】スレッドモータ21がピニオン等のメカニカル動力伝達部を介して光ピックアップ12を光ディスク23の半径方向へ駆動するようになっている光ディスク処理装置10において、スレッドモータ21への駆動信号のレベルを上げることなく、メカ負荷の増大に対処する。
【解決手段】スレッドモータ21のメカ負荷をスレッドギヤの1コギングの時間t及びスレッド残差電圧から検出する(S49,S50)。スレッドモータ21のメカ負荷が基準を超える場合には、スレッドモータ21への駆動信号に振動信号を注入する(S56)。注入振動は、その周波数を、スピンドル周波数fのk倍(kは正の整数)であるk・fとし、そのレベルを、それを注入することによりスレッドモータ21が動き出す手前のレベルとする(S55,S56)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばCDプレーヤ、MD録再装置、DVDプレーヤ、Blu−ray型DVDプレーヤ、又はHD―DVD対応型DVDプレーヤ等に装備される光ピックアップを変位させるスレッド制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、温度差により光ディスク用再生装置のメカニック部品の特性が変化することを開示する(特許文献1の段落0003)。
【0003】
CDプレーヤやMD録再装置(以下、両者を含めて、適宜、「光ディスク処理装置」と呼ぶ。)は、光ピックアップを光ディスクの半径方向へ変位させるスレッドモータを備えている。該光ピックアップと該スレッドモータとの間には、例えばラックやピニオン等のメカニカル動力伝達部が介在し、スレッドモータはメカニカル動力伝達部を介して光ピックアップを光ディスクの半径方向へ駆動するようになっている。
【0004】
スレッドモータのメカ負荷は、メカニカル動力伝達部における各部品の製造上のばらつき、組付け誤差及びグリース塗布量等のために、さらには、温度等の環境要因のために、各光ディスク処理装置ごと及び時刻ごとに変動する。
【0005】
従来の光ディスク処理装置では、メカ負荷の大きいスレッドモータでは、スレッドモータの駆動信号のレベルを増大させることにより対処している。すなわち、スレッドゲインを増大させれば、スレッドモータの出力トルクがその分、増大するので、スレッドモータのメカ負荷が大きい場合にも、光ピックアップを円滑に変位させることができる。
【特許文献1】特開2006−127670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メカ負荷が大きいメカニカル動力伝達部に対して、スレッドゲインを増大させることなく、放置したままにすると、メカニカル動力伝達部におけるスレッドギヤのコギング周期が長くなったり、光ピックアップの変位が所期のものより増大したりし、トラッキングのシフト量を増大させる。これは、シフト時の特性によりジッター等の光学性能の悪化につながり、再生性能や記録性能の低下の原因になる。トラッキングのシフト量の増大は、他にも、トラック飛びに因る音飛び等の不具合の原因にもなる。
【0007】
しかしながら、メカ負荷が大きいメカニカル動力伝達部にスレッドゲインの増大により対処することは、光ディスクの許容偏心量を低下させ、不利である。
【0008】
スレッドモータのメカ負荷が基準を超えてしまうようなメカニカル動力伝達部は、不良品として処理されるが、光ディスクの許容偏心量の低下を回避しつつ、メカ負荷の基準を低くするような公知の手立てはなく、案出が望まれているところである。
【0009】
特許文献1は、温度差により光ディスク用再生装置のメカニック部品の特性が変化することを指摘しつつ、これに対して、光ピックアップの近傍の温度を、温度センサを用いることなく、光ピックアップ内のレーザダイオードの駆動信号を制御する正義信号から検出することのみを開示するのみであり(特許文献1の段落0029,0030)、メカ負荷の増大に対する対処の仕方については、なんら言及していない。
【0010】
本発明の目的は、スレッドモータと光ピックアップとの間に介在するメカニカル動力伝達部の負荷増大に対して、スレッドゲインを増大させることなく、対処することができる光ピックアップ用スレッド制御装置及び制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、所定の振動信号を含む駆動信号をスレッドモータに供給して、スレッドモータと光ピックアップとの間に介在するメカニカル動力伝達部を動き易くし、これにより、スレッドモータと光ピックアップとの間に介在するメカニカル動力伝達部の負荷の実質的な軽減を図る。なお、該所定の振動信号は、光ピックアップが変位するレベルより低いレベルであり、かつ光ディスクの回転周波数より高い周波数に設定される。
【0012】
本発明の光ピックアップ用スレッド制御装置は次のものを備えている。
駆動信号により回転作動して光ピックアップを光ディスクの半径方向へ駆動するスレッドモータ、
前記光ピックアップが変位するレベルより低いレベルでかつ光ディスクの回転周波数より高い周波数である振動信号を生成する振動信号生成手段、及び
前記振動信号を含んだ駆動信号を前記スレッドモータへ供給する駆動信号供給手段。
【0013】
本発明の制御方法が適用される光ピックアップ用スレッド制御装置は、スレッドモータにより光ピックアップを光ディスクの半径方向へ駆動する。該制御方法は次のステップを備えている。
前記光ピックアップが変位するレベルより低いレベルでかつ光ディスクの回転周波数より高い周波数である振動信号を生成するステップ、及び
前記振動信号を含んだ駆動信号を前記スレッドモータへ供給するステップ。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スレッドモータに供給する駆動信号に所定の振動信号を含ませることにより、スレッドモータと光ピックアップとの間に介在するメカニカル動力伝達部の負荷の実質的な軽減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は光ディスク処理装置10の主要部の構成図である。光ディスク処理装置10は、例えば、CDプレーヤやMD録再装置である。したがって、光ディスク23は、例えばCDやMDである。光ディスク23は、光ディスク処理装置10の所定の収納部に収納され、再生中又は記録中では、チャッキング状態に保持される。スピンドルモータ11は、光ディスク23を回転させる。光ピックアップ12は、再生期間では、光ディスク23の所定部位に光ビームを照射し、その反射光に関係する検出信号をRFアンプ13へ送る。
【0016】
RFアンプ13は、光ピックアップ12からの検出信号に基づき、RF信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号、及びATIPデータのFM変調信号等を生成する。EFM/CIRCデコーダ14は、2値化RF信号からEFMデータを読み取り、デインターリーブ及び誤り訂正等を行う。ATIPデコーダ18は、ATIP(絶対時間)データの復調を行う。
【0017】
システムコントローラ19は、EFM/CIRCデコーダ14及びATIPデコーダ18等からデータを供給され、所定のトラックへのアクセスや再生開始及び再生終了等の指示に係る制御信号をサーボプロセッサ20へ出力する。サーボプロセッサ20は、RFアンプ13からの各種エラー信号に基づき各サーボ用の駆動信号を生成し、スピンドルモータ11、光ピックアップ12及びスレッドモータ21へ送る。具体的には、サーボプロセッサ20からスピンドルモータ11へはスピンドルサーボ用の駆動信号が送られ、サーボプロセッサ20から光ピックアップ12へはフォーカサーボ及びトラッキングサーボ用の駆動信号が送られ、サーボプロセッサ20からスレッドモータ21へはスレッドサーボ用の駆動信号が送られる。
【0018】
スレッドモータ21は、サーボプロセッサ20からのスレッドサーボ用の駆動信号に基づき、光ピックアップ12を光ディスク23の半径方向へ変位させる。光ピックアップ12とスレッドモータ21との間には、ピニオンやラック等のメカニカル動力伝達部が介在しており、スレッドモータ21は、ピニオンを回転させ、これにより、光ピックアップ12がラックと一体的に光ディスク23の半径方向へ移動するようになっている。
【0019】
図2は光ピックアップ12を光ディスク23の半径方向へほぼ等速で移動させる場合にスレッドモータ21の駆動(ドライブ)信号の電位がスレッドモータ21のメカ負荷の軽重に対して変化することを示す図である。図2の場合では、スレッドモータ21の駆動信号には、後述の振動信号の注入を全く行っていない。なお、スレッドモータ21のメカ負荷は、光ピックアップ12とスレッドモータ21との間に介在するメカニカル動力伝達部の各部品の製造誤差、組付け誤差及びグリース塗布量等から影響を受ける。スレッドモータ21のメカ負荷の波形には、ギヤのコギングが反映している。
【0020】
図2において、実線はスレッドモータ21のメカ負荷が軽いとき(通常時)の駆動信号であり、破線はスレッドモータ21のメカ負荷が重いときの駆動信号である。Ta,Tbは、それぞれスレッドモータ21のメカ負荷が軽い及び重いときの1コギングの時間を示す。La,Lbは、それぞれスレッドモータ21のメカ負荷が軽い及び重いときのスレッド残差を示す。ここで、スレッド残差とは、駆動信号のピーク電位から基準電位(図2のドライブ基準電位)を引いた値である。
【0021】
スレッドモータ21のメカ負荷が増大するに連れて、1コギングの時間が増大し、また、スレッド残差が増大する。これらの増大は、前述したように、トラッキング悪化の原因になる。これに対処し、光ディスク処理装置10では、スレッドモータ21のドライブ信号に振動信号を注入する。具体的な振動信号については後述する。
【0022】
図3は適正な振動信号の周波数範囲等を説明するグラフである。図3において縦軸及び横軸はそれぞれスレッドゲイン(スレッドモータ21の駆動信号のレベル)及び周波数である。
【0023】
スレッドゲインは、スレッドモータ21の特性より、f0以上の周波数において−12dB/octの傾きで減衰する。また、その−12dB/octの減衰範囲において、スレッドモータ21に対する光ディスク23の回転周波数の影響を無くすため、fc(スレッドゲイン=0dB時の周波数)は光ディスク23の回転周波数範囲F1以下に設定する必要がある。図3の実線では、fc=fc1となっており、fc1≦F1に設定されている。なお、光ディスク23がCDである場合、光ピックアップ12がCDの最内周データを読み出している期間のCDの回転周波数は8.3Hzであり、光ピックアップ12がCDの最外周データを読み出している期間のCDの回転周波数は3.3Hzとなる。したがって、回転周波数範囲F1は3.3〜8.3Hzである。
【0024】
図3の破線は、fc=fc2かつfc2≧F1である場合のスレッドゲインを示している。スレッドゲインを増大すれば、スレッドモータ21の駆動力が増大し、スレッドモータ21は、そのメカ負荷の増大に対処して、光ピックアップ12を駆動することができる。しかしながら、この場合、回転周波数範囲F1におけるスレッドゲインは0dBより大となり、スレッドモータ21に光ディスク23の回転周波数の影響を与えてしまう。
【0025】
図3の実線において、十分に高い周波数領域では、スレッドゲインが低くなり、スレッドモータ21がスレッドゲインに対して応答しなくなる。また、十分に高い周波数領域の振動信号であっても、そのゲインが高ければ、該振動信号を注入した場合、本来のスレッドサーボに悪影響が出る。したがって、fc1以上において、注入する振動信号は、スレッドモータ21が応答しない周波数領域の周波数であり、かつある程度のゲインを確保できることが望ましい。
【0026】
これを踏まえて、振動信号は、図3の周波数範囲F2内に、すなわち、光ディスク23の回転周波数より高い周波数(逓倍でなくても、帯小数であってもよい。)に設定する。具体的には、振動信号は、1倍速のCDに対して、150Hz〜200Hz程度の周波数となる。これは、CDの回転周波数の18〜50倍の周波数になる。また、印加する振動信号は、その周波数が光ディスク回転周波数に対して、高くなるほど、振幅を増大したものにしている。振動信号は、典型的には、スピンドルモータ11の回転に同期させるが、同期させることなく、例えば200Hzの周波数に固定してもよい。なお、同期させる場合には、振動信号の周波数は、光ディスク23の回転周波数の逓倍に合わせる必要がある。
【0027】
図4は振動信号を含む駆動信号をスレッドモータ21へ供給して光ピックアップ12を光ディスク23の半径方向へ等速で移動させる場合の該駆動信号の電位波形を示す図である。図4の駆動信号は、図2におけるスレッドモータ21のメカ負荷が軽いときの駆動信号に、図3で説明した振動信号を重畳したものに相当する。図4の駆動信号は、図2におけるスレッドモータ21のメカ負荷が重いときの駆動信号(図2の破線)に代えて、使用する。結果、スレッドモータ21のメカ負荷が重いときに対して、スレッドを増大させることなく、光ピックアップ12を光ディスク23の半径方向へ円滑に移動させることができる。
【0028】
図5はスレッド制御方法40のフローチャートである。スレッド制御方法40は、S41の光ディスク23の再生動作開始に伴い、開始し、S45の光ディスク23の再生動作終了に伴い、終了する。S42では、振動電圧Vを0に設定する。S43では、スレッドモータ21のメカ負荷のモニターを開始する。
【0029】
S44では、光ディスク23の再生が停止したか否かを判定し、判定が正であれば、S45へ進み、再生動作を終了する。S44の判定が否であれば、S49へ進む。S49では、スレッドギヤの1コギングの時間tが所定時間aより大きいか否かを判定する。S49の判定が正であれば、S54へ進み、否であれば、S50へ進む。S49におけるt>aとは、スレッドモータ21のメカ負荷が基準を超えていることを意味する。図2における破線に係るTbは、Tb>aであり、該破線に係るメカ負荷は基準を超えていることになる。
【0030】
S50では、スレッド残差電圧Vthが設定電圧xより大きいか否かを判定する。S50の判定が正であれば、S54へ進み、否であれば、S44へ戻る。S50におけるVth>xとは、スレッドモータ21のメカ負荷が基準を超えていることを意味する。図2における破線に係るLbは、Lb>xであり、該破線に係るメカ負荷は基準を超えていることになる。
【0031】
S54では、スレッド駆動波形に振動信号の注入処理を開始する。S55では、スピンドルモータ11の回転周波数fを検出する。S56では、kを係数設定値(正の整数)として、k・fを計算し、周波数がk・fで振幅がVである振動信号を、スレッドの駆動信号に印加する。なお、S54におけるVは、S42でV←0としたVではなく、新たに設定した所定値(>0)にすでになっている。前述の図4のスレッドモータ21の駆動信号は、S56で振動信号を印加した後の、スレッドモータ21の駆動信号の一例である。
【0032】
S57では、S49と同様に、スレッドギヤの1コギングt>設定時間aであるか否かを判定する。S57の判定が正であれば、S57へ戻り、否であれば、S58へ進む。S58では、S50と同様に、スレッド残差電圧Vth>設定電圧xであるか否かを判定する。S58の判定が正であれば、S57へ戻り、否であれば、S59へ進む。S59では、スレッド駆動信号への振動信号の印加を終了して、S44へ戻る。
【0033】
図6は別のスレッド制御方法65の主要部のフローチャートである。スレッド制御方法65は、スレッド制御方法40(図5)において、そのS57〜S59が、S66,S67,S71〜S76に置き換えられており、スレッド制御方法40のその他のステップはそのままスレッド制御方法65に流用される。
【0034】
S66では、S49と同様に、スレッドギヤの1コギングt>設定時間aであるか否かを判定する。S66の判定が正であれば、S71へ進み、否であれば、S67へ進む。S67では、S50と同様に、スレッド残差電圧Vth>設定電圧xであるか否かを判定する。S67の判定が正であれば、S71へ進み、否であれば、S75へ進む。
【0035】
S71では、Vを所定量ΔVだけ増大させる。ΔVは、正の所定量であり、振動信号のステップ印加電圧となっている。こうして、以降、スレッドモータ21への駆動信号に含まれる振動信号の振幅はΔVだけ増大する。S72では、更新後の駆動信号の電圧Vと上限値Vmaxとを対比し、V≦Vmaxであるか否かを判定する。S72の判定が正であれば、S66へ戻り、否であれば、S73へ進む。
【0036】
S73では、S49と同様に、スレッドギヤの1コギングt>設定時間aであるか否かを判定する。S73の判定が正であれば、S73へ戻り、否であれば、S74へ進む。S74では、S50と同様に、スレッド残差電圧Vth>設定電圧xであるか否かを判定する。S74の判定が正であれば、S73へ戻り、否であれば、S75へ進む。S73,S74の循環では、スレッドモータ21の駆動信号に含まれる振動信号の振幅がほぼ上限値Vmaxに維持されて、振動信号が印加され続ける。
【0037】
S75では、スレッドモータ21の駆動信号への振動信号の印加を終了する。S76では、印加電圧Vを0に戻し、その後、S44へ戻る。
【0038】
図7は光ピックアップ用スレッド制御装置83のブロック図である。光ピックアップ用スレッド制御装置83は、スレッドモータ84、振動信号生成手段85及び駆動信号供給手段86を備えている。好ましくは、光ピックアップ用スレッド制御装置83は、さらに、メカ負荷検出手段92及び回転周波数検出手段93を備える。光ピックアップ用スレッド制御装置83の一例は、光ディスク処理装置10(図1)における光ピックアップ12、サーボプロセッサ20及びスレッドモータ21を含む部分である。
【0039】
スレッドモータ84は、駆動信号により回転作動して、光ピックアップ89を光ディスクの半径方向へ駆動する。振動信号生成手段85は、光ディスク23が変位するレベルより低いレベルでかつ光ディスクの回転周波数より高い周波数である振動信号を生成する。駆動信号供給手段86は、振動信号を含んだ駆動信号をスレッドモータ84へ供給する。
【0040】
スレッドモータ84の回転駆動力は、所定のメカニカル動力伝達部を介して光ピックアップ89へ伝達される。該メカニカル動力伝達部は、例えば、ラックやピニオンを含んでいる。スレッドモータ84は、振動信号自体によっては、光ピックアップ89を移動させる駆動力を発生しないが、光ピックアップ89を移動させる少し手前の駆動力をメカニカル動力伝達部に付与し続けることになり、これにより、メカニカル動力伝達部が動き易くなり、スレッドモータ84のメカ負荷の実質的な軽減が図れる。したがって、スレッドモータ84の駆動信号のレベル(スレッドゲイン)を増大させることなく、スレッドモータ84のメカ負荷の増大に対処することができる。
【0041】
メカ負荷検出手段92は、スレッドモータ84のメカ負荷を検出する。メカ負荷検出手段92は、例えば、駆動信号の1コギング時間の長さ又は基準レベルに対する駆動信号レベルの残差に基づきスレッドモータ84のメカ負荷を検出する。駆動信号供給手段86は、典型的には、スレッドモータ84のメカ負荷が基準以内である場合は、振動信号を含まない駆動信号をスレッドモータ84へ供給する。駆動信号供給手段86は、スレッドモータ84のメカ負荷が基準以内であっても、振動信号を含む駆動信号をスレッドモータ84へ供給して、スレッドモータ84のメカ負荷の実質的な軽減を図ることができる。
【0042】
スレッドモータ84が駆動する光ディスクは、CDやMD以外に、一般のDVD、Blu−ray型DVD、又はHD―DVDであってもよいとする。図7では、メカ負荷検出手段92の出力は、駆動信号供給手段86へ送られるようになっているが、メカ負荷検出手段92の出力を振動信号生成手段85へ送ることもできる。この場合、振動信号生成手段85は、スレッドモータ84のメカ負荷が基準以下であるときには、振幅0の振動信号を生成する。この場合も、駆動信号供給手段86は、スレッドモータ84のメカ負荷が基準以内であるときに、振動信号を含まない駆動信号をスレッドモータ84へ供給することになる。
【0043】
回転周波数検出手段93は、光ディスクの回転周波数を検出する。振動信号生成手段85は、好ましくは、光ディスクの回転周波数の逓倍の周波数であってかつ光ディスクの回転周波数に同期した振動信号を生成する。光ディスクの回転に同期した振動信号とは、例えば、振動信号の位相角=0の時点が、定期的に、光ディスクの回転の位相角=0の時点に揃うことである。
【0044】
振動信号生成手段85は、駆動信号が最大許容レベルに達するかスレッドモータ84のメカ負荷が基準値以内になるかするまで、振動信号の振幅について段階的な増大を繰り返す。この一例は、スレッド制御方法65(図6)のS66否又はS67否→S71→S72正→S66である。
【0045】
図8はスレッド制御方法100のフローチャートである。スレッド制御方法100は、光ピックアップ用スレッド制御装置83に適用される。S101では、光ディスク23が変位するレベルより低いレベルでかつ光ディスクの回転周波数より高い周波数である振動信号を生成する。S102では、振動信号を含んだ駆動信号をスレッドモータ84へ供給する。
【0046】
S101,S102の処理は、光ピックアップ用スレッド制御装置83(図7)の振動信号生成手段85及び駆動信号供給手段86の機能にそれぞれ対応している。したがって、振動信号生成手段85及び駆動信号供給手段86の機能について述べた具体的態様はS101,S102の処理についての具体的態様としても適用可能である。スレッド制御方法100では、また、光ピックアップ用スレッド制御装置83のメカ負荷検出手段92及び回転周波数検出手段93の機能に対応する処理を実行するステップを適宜、追加可能である。
【0047】
メカ負荷検出手段92に対応するステップは、S101の前に挿入される。そして、S101では、スレッドモータ84のメカ負荷が基準以内である場合は、振動信号を含まない駆動信号をスレッドモータ84へ供給する。
【0048】
回転周波数検出手段93に対応するステップは、S101の前に挿入される。そして、S101では、光ディスクの回転周波数の逓倍でかつ該回転周波数に同期した周波数の振動信号を生成する。
【0049】
本明細書は様々な発明を開示している。それら発明には、本明細書における発明の最良の形態等において、独立の作用、効果を奏する1つ又は複数の要素を抽出したものや、1つ又は複数の要素を自明の範囲で変更したものや、1つ又は複数の要素の組合せを自明の範囲で発明の形態間で入れ換えたものを含む。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】光ディスク処理装置の主要部の構成図である。
【図2】光ピックアップを光ディスクの半径方向へほぼ等速で移動させる場合に該駆動信号の電位波形を示す図である。
【図3】適正な振動信号の周波数範囲等を説明するグラフである。
【図4】振動信号を含む駆動信号をスレッドモータへ供給して光ピックアップを光ディスクの半径方向へ等速で移動させる場合の駆動信号の電位変化を示す図である。
【図5】図1の装置に適用されるスレッド制御方法のフローチャートである。
【図6】別のスレッド制御方法の主要部のフローチャートである。
【図7】光ピックアップ用スレッド制御装置のブロック図である。
【図8】図7の装置に適用されるスレッド制御方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
83:光ピックアップ用スレッド制御装置、84:スレッドモータ、85:振動信号生成手段、86:駆動信号供給手段、89:光ピックアップ、92:メカ負荷検出手段、93:回転周波数検出手段、100:スレッド制御方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号により回転作動して光ピックアップを光ディスクの半径方向へ駆動するスレッドモータ、
前記光ピックアップが変位するレベルより低いレベルでかつ光ディスクの回転周波数より高い周波数である振動信号を生成する振動信号生成手段、及び
前記振動信号を含んだ駆動信号を前記スレッドモータへ供給する駆動信号供給手段、
を備えることを特徴とする光ピックアップ用スレッド制御装置。
【請求項2】
前記スレッドモータのメカ負荷を検出するメカ負荷検出手段、及び
前記スレッドモータのメカ負荷が基準以内である場合は、前記振動信号を含まない駆動信号を前記スレッドモータへ供給する前記駆動信号供給手段、
を備えることを特徴とする請求項1記載の光ピックアップ用スレッド制御装置。
【請求項3】
前記メカ負荷検出手段は、駆動信号の1コギング時間の長さ又は基準レベルに対する駆動信号レベルの残差に基づき前記スレッドモータのメカ負荷を検出することを特徴とする請求項2記載の光ピックアップ用スレッド制御装置。
【請求項4】
光ディスクの回転周波数を検出する回転周波数検出手段、及び
光ディスクの回転周波数の逓倍の周波数であって前記光ディスクの回転に同期する振動信号を生成する前記振動信号生成手段、
を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光ピックアップ用スレッド制御装置。
【請求項5】
前記振動信号生成手段は、前記駆動信号が最大許容レベルに達するか前記スレッドモータのメカ負荷が基準値以内になるかするまで、振動信号の振幅について段階的な増大を繰り返すことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光ピックアップ用スレッド制御装置。
【請求項6】
スレッドモータにより光ピックアップを光ディスクの半径方向へ駆動する光ピックアップ用スレッド制御装置の制御方法において、
前記光ピックアップが変位するレベルより低いレベルでかつ光ディスクの回転周波数より高い周波数である振動信号を生成するステップ、及び
前記振動信号を含んだ駆動信号を前記スレッドモータへ供給するステップ、
を備えることを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−293582(P2008−293582A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137666(P2007−137666)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】