説明

光ピックアップ用光学部品、光ピックアップ装置およびその製造方法

【課題】 光学部品の小型化に伴う識別効率の低下を防ぐと共に、方向性を有する光学部品組み付け時においても識別効率の向上を図り、迷光を抑制して光ピックアップの性能をより安定して維持する。
【解決手段】 光が透過する有効領域を除く部分の一部または全部に着色を施して着色部とし、光学部品として、プリズム5、コリメートレンズ7、ミラー8および対物レンズ9そのものを部品認識すると共に、この着色部の色、形、位置および大きさなどによって、光学部品の識別管理および光学部品の組み付け方向の認識を容易(瞬時に)かつ正確に行うことができる。また、例えばプリズム5の迷光出射場所に着色を施して着色部とし、理論上必要としない光が光検出器6側に入射されて誤った制御が為されてしまうことを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコンピュータやデジタル家電製品などに用いられる光ディスクドライブ装置において、光ディスクまたは光学的な記録媒体に対して光学的にデータの記録・再生を行う光ピックアップ装置およびその製造方法、この光ピックアップ装置を構成する光ピックアップ用光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、例えばパーソナルコンピュータなどのコンピュータの分野においては当然のことながら、ビデオレコーダなどのデジタル家電製品の分野においても、記録型DVDなどの光ディスクの利用が急速に増大している。
【0003】
その中でも、コンピュータの分野においては、据え置き型コンピュータからノートブック型コンピュータおよびモバイル型コンピュータへと市場が大きくシフトしてきており、光ディスクの利用についても、今後、益々増大することが予測されている。
【0004】
このような光ディスクを利用したコンピュータやデジタル家電製品などの分野において、それを構成する主要なハードウェアの一つである光ディスクドライブ装置に対しては、特に、小型化および薄型化が要望され、その要望を実現することによって更なる需要の拡大が期待されている。
【0005】
このような光ディスクドライブ装置の小型化および薄型化を図るためには、光ピックアップ装置(単に、光ピックアップという)を構成する光学部品の小型化が必要不可欠である。
【0006】
しかしながら、光ピックアップを構成する光学部品の小型化に伴って、それらの光学部品の管理情報(例えば金型番号、キャビティ番号、製造メーカ識別記号、光学特性識別記号など)の識別は困難なものとなっており、光学部品の組み付け時に作業効率が低下する傾向にある。
【0007】
例えばノートブック型およびモバイル型コンピュータやデジタル家電製品などにおいて、更なる小型化および薄型化が進むに伴って、それを構成する光ディスクドライブ装置および、さらにそれを構成する光ピックアップに対して、例えばスリムタイプからウルトラスリムタイプへと薄型化が要求されている。このことから、光ピックアップを構成する光学部品に対しても、必然的に小型化および薄型化が要求されている。このため、光学部品そのものの認識(部品納入トレイの状態における光学部品の有無の確認)が困難となっていると共に、複数の部品メーカから同一仕様の光学部品(例えば光学特性が同じ光学部品)の供給を受ける場合などにおいて、微細な刻印の製造メーカ識別記号や光学特性識別記号などを肉眼では識別困難となっており、このことが作業効率を阻害する大きな要因の一つとなっている。
【0008】
このため、例えば特許文献1には、光ピックアップ用光学部品に固有の管理情報(例えば金型番号、キャビティ番号、製造メーカ識別記号、光学特性識別記号など)を識別するために、光ピックアップ用光学部品に着色を施すことが開示されている。
【特許文献1】特開2000−298864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の特許文献1では、光ピックアップ用光学部品に着色を施すことによって管理情報の識別を行うことは可能であるが、光学部品の組み付けの方向性の識別については、何ら考慮されていない。
【0010】
また、光ピックアップを構成する光学部品の小型化に伴って、光学的に迷光の影響を受け易くなっている。なお、迷光の影響とは、理論上で必要とされない光が光検出器に入射されることによって誤った制御が為されることをいう。
【0011】
この迷光については、存在しないことが望ましいが、光ピックアップを構成する光学系においては必ず存在しており、迷光が光検出器に入射されることによって発生する誤制御についても、対策が求められている。上記従来の特許文献1でも、ピックアップ光学系において悪影響を及ぼす迷光の抑制や防止については、何ら考慮されていない。
【0012】
本発明は、上記従来の事情に鑑みて為されたもので、光学部品の小型化に伴う識別効率の低下を防ぐと共に、方向性を有する光学部品組み付け時においても方向性の識別効率の向上を図ることができる光ピックアップ用光学部品およびこの光学部品を用いた光ピックアップを提供することを目的とする。
【0013】
本発明は、上記従来の事情に鑑みて為されたもので、迷光を抑制して光ピックアップ装置の性能をより安定して維持することが可能な光ピックアップ用光学部品、この光学部品を用いた光ピックアップ装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の光ピックアップ用光学部品は、光学的な記録媒体に対して光学的にデータを記録または再生する光ピックアップ装置を構成する光ピックアップ用光学部品において、光が透過する有効領域を除く部分の一部の面または全面に、部品識別情報および部品組み付け時の方向性情報を示す着色が施されている着色部を有しており、そのことにより上記目的が達成される。
【0015】
また、好ましくは、本発明の光ピックアップ用光学部品における部品識別情報は、前記着色部の色、形、位置および大きさのうちの少なくとも一つによって示されている。
【0016】
さらに、好ましくは、本発明の光ピックアップ用光学部品における部品組み付け時の方向性情報は、前記着色部の形および位置の少なくとも一つによって示されている。
【0017】
さらに、好ましくは、本発明の光ピックアップ用光学部品における着色部は、前記部品識別情報および部品組み付け時の方向性情報の着色と共に、または当該着色とは別に、迷光出射防止用または迷光出射抑制用の着色が施されている。
【0018】
本発明の光ピックアップ用光学部品は、光学的な記録媒体に対して光学的にデータを記録または再生する光ピックアップ装置を構成する光ピックアップ用光学部品において、光が透過する有効領域を除く部分の一部の面または全面に、迷光出射防止用または迷光出射抑制用の着色が施されている着色部を有しており、そのことにより上記目的が達成される。
【0019】
さらに、好ましくは、本発明の光ピックアップ用光学部品における迷光出射防止用または迷光出射抑制用の着色部は、迷光出射場所に特定して設けられている。
【0020】
さらに、好ましくは、本発明の光ピックアップ用光学部品における迷光出射防止用または迷光出射抑制用の着色部は、迷光を遮光可能とする色に設定されている。
【0021】
さらに、好ましくは、本発明の光ピックアップ用光学部品における迷光出射防止用または迷光出射抑制用の着色部は、迷光を遮光するように形および大きさが設定されている。
【0022】
本発明の光ピックアップ装置の製造方法は、請求項1〜3のいずれかに記載の光ピックアップ用光学部品を組み込んで製造するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0023】
本発明の光ピックアップ装置は、請求項4〜8のいずれかに記載の光ピックアップ用光学部品を少なくとも一つ有しており、そのことにより上記目的が達成される。
【0024】
上記構成により、以下、本発明の作用について説明する。
【0025】
本発明にあっては、光ピックアップを構成する光学部品において、部品識別用の着色が施されている。この着色部によって、光学部品そのものの認識(部品納入トレイの状態における光学部品有無の確認)を行うことが可能となる。また、光学部品の識別管理を行う場合においても、着色部の色、形、位置および大きさの少なくとも一つの差異を確認することによって、容易かつ正確に部品管理内容の識別を行うことが可能となる。しかも、方向性を有する光学部品を組み付ける場合においても、着色部の形および位置の少なくとも一つの差異を確認することによって、光学部品の組み付け方向を容易かつ正確に認識することが可能となる。
【0026】
この着色は、光が透過する有効領域内には施されておらず、有効領域を除く部分に施されているため、光ピックアップの性能に対する影響を考慮することなく、任意の色および形などの着色を施すことが可能である。
【0027】
さらに、ピックアップ光学系において、悪影響を及ぼす余分な光である迷光についても、着色を施すことによって抑制し、理論上必要としない光が光検出器に入射して誤った制御が為されてしまうことを防ぐことが可能となる。なお、その場合の着色部は、迷光出射場所に位置を特定して施すことが有効であり、迷光が完全に遮光され得るように、色、形および大きさを設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、光ピックアップを構成する光学部品に部品識別用の着色を施すことにより、光学部品そのものの認識(部品納入トレイの状態における光学部品有無の確認)および光学部品の識別管理を容易(素早く)かつ正確に行うことができて、光ピックアップ組み付け時の作業効率を向上させることができる。
【0029】
しかも、方向性を有する光学部品を組み付ける場合においても、光学部品の組み付け方向を容易かつ正確に認識することができて、作業ミスを防止すると共に、作業効率の改善を図ることができる。
【0030】
さらに、光ピックアップを構成する光学部品に迷光抑制用または迷光防止用の着色を施すことによって、理論上必要としない余分な光(迷光)が光検出器に入射されて誤った制御が為されてしまうことを防いで、光ピックアップの性能をより安定して維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、本発明の光ピックアップ用光学部品およびこれを用いた光ピックアップの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態である光ピックアップを構成する光学部品の配置例を示す斜視図である。なお、図1の配置例は一例であり、光ピックアップを構成する光学部品およびその配置は図1の配置例に限定されるものではなく、光ピックアップが用いられる製品の用途に応じて多様な形態が可能である。
【0033】
図1に示すように、光ピックアップ10は、CDディスクまたはDVDディスクなどの光ディスク1に対してデータの記録・再生を行うためのものであり、光源であるCDレーザ2およびDVDレーザ3と、DVDレーザ3からの直線偏光を円偏光に変換する偏光変換手段としてのλ/4板である波長板4と、CDレーザ2またはDVDレーザ3からの光路を所定方向に設定する光路設定手段としてのダイクロイックプリズムであるプリズム5と、光信号を電気信号に変換する光電変換手段としての光検出器6と、平行光出射手段としての平行光出射用のコリメートレンズ7と、光路変更手段としての光路変更用のミラー8と、集光手段としての集光用の対物レンズ8とを備えている。この場合に、光学部品としては、プリズム5と、コリメートレンズ7と、ミラー8と、対物レンズ8である。
【0034】
上記構成により、光ディスク1の再生(データ読み出し)時には、CDレーザ2から出射された読み出し用光が、プリズム5からコリメートレンズ7を通ってミラー8の斜面に照射される。このミラー8の斜面で反射した光は、その進行方向が水平方向から垂直方向に90度変化し、対物レンズ9を通って光ディスク1(CD)の記録面上に集光される。
【0035】
一方、DVDレーザ3から波長板4を通って出射された読み出し用光は、プリズム5によってコリメートレンズ7側の方向に進行方向が変化されて、コリメートレンズ7を通ってミラー8の斜面に照射される。このミラー8の斜面で反射した光は、光進行方向が水平方向から垂直方向に変化し、対物レンズ9を通って光ディスク1(DVD)の記録面上に集光される。
【0036】
この光ディスク1の記録面に照射された光は、その記録面で反射して対物レンズ9を通ってミラー8の斜面に照射される。このミラー面で反射して進行方向が垂直方向から水平方向に90度変化した光は、コリメートレンズ7を通ってプリズム5に入射する。このプリズム5によって進行方向が光検出器6側の方向に90度変化した光は、光検出器6の光電変換部上に照射される。光検出器6によって光ディスク1の記録面に記録したデータ(光信号)が電気信号として検出される。
【0037】
次に、光ディスク1への記録(データ書き込み)時には、データ読み出し時と同様に、CDレーザ2またはDVDレーザ3から出射された書き込み用光が光ディスク1の記録面上に照射され、光ディスク1の記録面にデータが記録される。
【0038】
本実施形態の光ピックアップ10において、上記の光学部品の少なくとも一つには、光が透過する有効領域を除く部分の一部または全部に部品認識用および組み付け方向認識用の着色が施されている。この着色部によって、光学部品の組み付け時に光学部品そのものの認識を行うと共に、方向性を有する光学部品の組み付け時に組み付け方向を操作者が容易かつ正確に認識できるようになっている。
【0039】
また、ピックアップ光学系において、悪影響を及ぼす余分な光である迷光についても、迷光抑制用または迷光防止用の着色部によって迷光を抑制または防止できるようになっている。
【0040】
以下に、本発明の光ピックアップ用光学部品の着色部について詳細に順次説明する。
【0041】
図2は、本発明の光ピックアップ用光学部品として図1の対物レンズ9の一例を示す斜視図である。
【0042】
図2に示すように、対物レンズ9には、光が透過する有効領域を除く部分として側面および環状の外周縁部があるが、その一部(着色部A9)に着色を施している。例えば、図2に丸で示す着色部A9のような円形の着色部分が側面および外周縁部の上面にそれぞれ設けられている。
【0043】
このように、光学部品の対物レンズ9に着色を施すことによって、光学部品そのものの認識(部品納入トレイの状態における光学部品の有無の確認;光学部品が透明で小さいので光学部品の有無が分かり難いが着色部があれば容易に認識できる)を行うことができる。また、光学部品の識別管理を行う場合においても、着色部A9の色、形、位置および大きさのうちの少なくとも一つを部品識別情報(例えば対物レンズであること、金型番号、キャビティ番号、製造メーカ識別記号、光学特性識別記号など)に対応させて設定しておき、それらの差異を確認することによって、容易かつ確実(正確に)に部品情報の識別を行うことができる。
【0044】
また、方向性を有する光学部品としての対物レンズ9(裏表がある)に着色を施すことによって、方向性を有する光学部品を組み付ける場合においても、着色部A9の形および位置の少なくとも一つ(ここでは上面か下面かの位置)を取り付け方向に対応させて設定しておき、それらの差異を確認することによって、光学部品の組み付け方向を容易(瞬時に)かつ正確に認識することができる。この場合には、対物レンズ9の外周縁部の上面側に方向性認識用の円形状の着色部A9が設けられており、対物レンズ9に裏表を認識できる。対物レンズ9の表面側(外周縁部の上面)に着色部A9があり、着色部A9がある側を上側(ディスク1側)にして対物レンズ9を組み込めばよい。
【0045】
さらに、着色は、光が透過する有効領域内には施されておらず、有効領域を除く一部または全部に施されているため、光ピックアップ10の性能に対する影響を考慮することなく、任意の色および形の着色(ここでは着色部A9)を施すことが可能である。
【0046】
このように、光が透過する有効領域を除く部分の一部の面(または全面)に、部品識別情報および部品組み付け時の方向性情報を示す着色(赤や青など)が施されている着色部A9を有する。
【0047】
なお、この着色部A9は、着色箇所の一例を示すものであり、この例では対物レンズ8の側面および外周縁部の上面に円形状に着色が施されているが、色、形、大きさおよび位置を限定するものではない。但し、光が透過する有効領域内に着色がはみ出さないように、十分注意する必要がある。
【0048】
図3(a−1)および図3(b−1)はそれぞれ、本発明の各光ピックアップ用光学部品として図1のコリメートレンズ7の各例をそれぞれ示す上面図であり、図3(a−2)および図3(b−2)はそれぞれ、その斜視図である。
【0049】
方向性を有する光学部品としては、コリメートレンズ7などが挙げられるが、その中には、肉眼で上下の微妙な凸部の差異を識別することが困難なものが存在する。
【0050】
そこで、本実施形態では、コリメートレンズ7において、光が透過する有効領域を除く部分として両側面または上下面のうちの上面および一方側面に対して、その一部に所定色で所定形状の着色を施している。
【0051】
例えば図3(a−1)および図3(a−2)に丸(円形)で示す着色部A7のように、側面および上面の取り付け方向側に偏らせた位置に円形の着色が施されている。
【0052】
また、このように、光学部品のコリメートレンズ7に着色を施すことによって、光学部品そのものの認識(納入トレイの状態における光学部品の有無の確認;光学部品が透明で小さいので光学部品の有無が分かり難いが着色部があれば容易に認識できる)を行うことができる。また、光学部品の識別管理を行う場合においても、着色部A7の色、形、位置および大きさのうちの少なくとも一つを部品識別情報(例えばコリメートレンズ7であること、金型番号、キャビティ番号、製造メーカ識別記号、光学特性識別記号など)に対応させて設定しておき、それらの差異を確認することによって、容易かつ確実(正確に)に部品情報の識別を行うことができる。
【0053】
以上のように、光が透過する有効領域を除く部分の一部の面(または全面)に、部品識別情報および部品組み付け時の方向性情報を示す着色(赤や青など)が施されている着色部A7を有する。
【0054】
なお、着色部A7は、着色箇所の一例を示すものであり、この例ではコリメートレンズ7の側面および上面に円形状に着色が施されているが、色、形、大きさおよび位置を限定するものではない。
【0055】
なお、本実施形態のコリメートレンズ7における着色部A7とは別の例として、図3(b−1)および図3(b−2)に斜線で示す二等辺三角形の着色部B7のように、取り付け方向を示す三角形状に着色が施されていてもよい。この着色部B7は、着色箇所の一例を示すものであり、この例では取り付け方向を頂点とした二等辺三角形状に着色が施されているが、色、形、大きさおよび位置を限定するものではない。例えば二等辺三角形の着色部B7に代えて矢印形状であってもよい。但し、どの場合にも、取り付け方向を判別し易い形とする必要がある。
【0056】
いずれの場合にも、光が透過する有効領域内に着色部A7,B7の領域がはみ出さないように、十分注意する必要がある。
【0057】
以上のようにして、方向性を有する光学部品に着色を施すこと(方向性認識用の着色部A7,B7)によって、方向性を有する光学部品を組み付ける場合においても、着色部A7,B7の形および位置の少なくとも一つを取り付け方向に対応させて設定しておき、それらの差異を確認することによって、光学部品の組み付け方向を容易(瞬時に)かつ正確に認識することができる。
【0058】
着色は、光が透過する有効領域内には施されておらず、有効領域を除く部分に施されているため、光ピックアップ10の性能に対する影響を考慮することなく、任意の色および形の着色を施すことが可能である。
【0059】
図4は、本発明の光ピックアップ用光学部品として図1のプリズム5の一例を示す斜視図である。
【0060】
図4に示すように、迷光が光検出器6側に入射される大きな原因となっている光学部品の一つとして、プリズム5などが挙げられる。このような迷光が光検出器6側に入射されると、理論上で必要としない光が光検出器6に入射されることによって、誤った制御が為されることになる。
【0061】
そこで、プリズム5において、光が透過する有効領域を除く部分の一部または全部に迷光抑制用または迷光防止用の着色を施している。
【0062】
例えば図4に網掛けで示す着色部A5のように、光検出器6への迷光を防止するために、迷光が出射される場所を特定した上で、光が完全に遮光されるように、着色部A5の色(例えば黒色など)、形および大きさを設定することが望ましい。
【0063】
このように、光学部品の所定位置に着色を施すことによって、ピックアップ光学系において悪影響を及ぼす余分な光である迷光についてもその出射を抑制または防止し、理論上必要としない光が光検出器6側に出射されて誤った制御が為されてしまうことを抑制または防止することができる。
【0064】
また、光学部品のプリズム5の所定領域に着色を施すことによって、光学部品そのものの認識(納入トレイの状態における光学部品の有無の確認;光学部品が透明で小さいので光学部品の有無が分かり難いが着色部があれば容易に認識できる)を行うことができる。また、光学部品の識別管理を行う場合においても、着色部A5の色、形、位置および大きさのうちの少なくとも一つを部品識別情報(例えばプリズム5であること、金型番号、キャビティ番号、製造メーカ識別記号、光学特性識別記号など)に対応させて設定しておき、それらの差異を確認することによって、容易かつ確実(正確に)に部品情報の識別を行うことができる。
【0065】
また、方向性を有する光学部品としてのプリズム5に着色を施すことによって、方向性を有する光学部品を組み付ける場合においても、着色部A5の形および位置の少なくとも一つ(ここでは所定の端面の一部)を基準として取り付け方向に対応させて設定しておき、それを確認することによって、光学部品の組み付け方向を容易(瞬時に)かつ正確に認識することができる。
【0066】
このように、光が透過する有効領域を除く部分の一部の面(または全面)に、部品識別情報および部品組み付け時の方向性情報を示す着色(赤や青など)が施されている着色部A5を有する。
【0067】
着色は、光が透過する有効領域内には施されておらず、有効領域を除く部分の一部または全部に施されているため、光ピックアップ10の性能に対する影響を考慮することなく、任意の色および形状の着色部A5を迷光抑制用または迷光防止用に設けることができる。
【0068】
なお、この着色部A5は、着色箇所の一例を示すものであり、この例ではプリズム5の光出射面において光検出器6の光入射側に近い部分に四角形状に着色部A5が形成されているが、色、形および大きさを限定するものではない。また、着色部A5の形状は、遮光の必要性によって、多様な形状とすることができる。
【0069】
以上のように、本実施形態によれば、光が透過する有効領域を除く部分の一部または全部に着色を施して着色部A5,A7,A9とし、光学部品として、プリズム5、コリメートレンズ7、ミラー8および対物レンズ9そのものを部品認識すると共に、この着色部A5,A7,A9の色、形、位置および大きさなどによって、光学部品の識別管理および光学部品の組み付け方向の認識を容易(瞬時に)かつ正確に行うことができる。また、例えばプリズム5の迷光出射場所に着色を施して着色部A5とし、理論上必要としない光が光検出器6側に入射されて誤った制御が為されてしまうことを抑制または防ぐことができる。これによって、光学部品の小型化に伴う識別効率の低下を防ぐと共に、方向性を有する光学部品の組み付け時においても識別効率の向上を図り、迷光をも抑制して光ピックアップ10の性能をより安定して維持することができる。
【0070】
なお、上記実施形態では、各光学部品において、光が透過する有効領域を除く部分の一部の面に、部品識別情報および部品組み付け時の方向性情報を示す着色が施されている着色部を有するように構成したが、これに限らず、光が透過する有効領域を除く部分の全面に、部品識別情報および部品組み付け時の方向性情報を示す着色が施されている着色部を有するように構成してもよい。この場合に、方向性情報であれば、下地色を例えば赤にした場合に、矢印形状を緑色としてもよく、その逆でもよい。
【0071】
部品識別情報は、着色部の色(赤、青、黒など)、形(円形状、三角形状、矢印形状、四角形状、棒形状、星形状など)、位置(上面または下面、一方側面など)および大きさ(大、中、小など)のうちの少なくとも一つによって示され、部品組み付け時の方向性情報は、着色部の形(三角形状、矢印形状など方向を示す形状)および位置(上面または下面、一方側面、面の一方端に偏っている場合など)の少なくとも一つによって示されていればよい。これらの着色部の色、形、位置および大きさなどをそれぞれ、部品識別情報として、例えば特定部品自体、金型番号、キャビティ番号、製造メーカ識別記号、光学特性識別記号などにそれぞれ対応させるように設定すればよい。
【0072】
また、上記実施形態の図4のプリズム5の説明において、着色部A5は、部品識別情報および部品組み付け時の方向性情報の着色と共に、迷光出射防止用または迷光出射抑制用の着色が施されている構成としたが、これに限らず、迷光出射防止用または迷光出射抑制用の着色(着色部A5)とは別に、着色部品識別情報および部品組み付け時の方向性情報の着色が施されていてもよく、着色部A5として、迷光出射防止用または迷光出射抑制用の着色だけ(単独)であってもよい。
【0073】
さらに、上記実施形態では、迷光出射防止用または迷光出射抑制用の着色部A5は、迷光を遮光するように四角形状に光出射側面の片側いっぱいの大きさ(ここでは、面の半分よりも多少小さい程度)に設定したが、これは、光検出器6の受光部形状(光電変換部形状)が四角形状であり、この受光部形状に対して、プリズム5の光出射面において、光出射する部分以外の部分(ここでは着色部A5)を遮光するように黒色の着色を施している。例えば受光部形状が円形であれば、プリズム5の光出射面において、その円形の受光部に光出射する部分以外の部分(円形を除く部分)を遮光するように黒色の着色を施こせばよい。
【0074】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、例えばコンピュータやデジタル家電製品などに用いる光ディスクドライブにおいて、光ディスクまたは光学的な記録媒体に対して光学的にデータ(信号)の記録・再生を行うための光ピックアップおよび、この光ピックアップを構成する光ピックアップ用光学部品の分野において、光学部品そのものの認識(トレイの状態における光学部品の有無の確認)、光学部品の識別管理および光学部品の組み付け方向の認識を容易かつ正確に行うことができ、光ピックアップの組み付け時の作業ミスを防止して作業効率を向上させることができる。また、理論上必要としない余分な光(迷光)が光検出器側に入射されて誤った制御が為されてしまうことを抑制または防いで、光ピックアップの性能をより安定して維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施形態である光ピックアップを構成する各光学部品の配置例を示す斜視図である。
【図2】本発明の光ピックアップ用光学部品として図1の対物レンズの一例を示す斜視図である。
【図3】(a−1)および(b−1)はそれぞれ、本発明の光ピックアップ用光学部品として図1のコリメートレンズの各例をそれぞれ示す上面図であり、(a−2)および(b−2)はそれぞれ、その斜視図である。
【図4】本発明の光ピックアップ用光学部品として図1のプリズムの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0077】
1 光ディスク
2 CDレーザ
3 DVDレーザ
4 波長板
5 プリズム
6 光検出器
7 コリメートレンズ
8 ミラー
9 対物レンズ
10 光ピックアップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的な記録媒体に対して光学的にデータを記録または再生する光ピックアップ装置を構成する光ピックアップ用光学部品において、
光が透過する有効領域を除く部分の一部の面または全面に、部品識別情報および部品組み付け時の方向性情報を示す着色が施されている着色部を有した光ピックアップ用光学部品。
【請求項2】
前記部品識別情報は、前記着色部の色、形、位置および大きさのうちの少なくとも一つによって示されている請求項1に記載の光ピックアップ用光学部品。
【請求項3】
前記部品組み付け時の方向性情報は、前記着色部の形および位置の少なくとも一つによって示されている請求項1または2に記載の光ピックアップ用光学部品。
【請求項4】
前記着色部は、前記部品識別情報および部品組み付け時の方向性情報の着色と共に、または当該着色とは別に、迷光出射防止用または迷光出射抑制用の着色が施されている請求項1〜3のいずれかに記載の光ピックアップ用光学部品。
【請求項5】
光学的な記録媒体に対して光学的にデータを記録または再生する光ピックアップ装置を構成する光ピックアップ用光学部品において、
光が透過する有効領域を除く部分の一部の面または全面に、迷光出射防止用または迷光出射抑制用の着色が施されている着色部を有した光ピックアップ用光学部品。
【請求項6】
前記迷光出射防止用または迷光出射抑制用の着色部は、迷光出射場所に特定して設けられている請求項4または5に記載の光ピックアップ用光学部品。
【請求項7】
前記迷光出射防止用または迷光出射抑制用の着色部は、迷光を遮光する色に設定されている請求項4〜6のいずれかに記載の光ピックアップ用光学部品。
【請求項8】
前記迷光出射防止用または迷光出射抑制用の着色部は、迷光を遮光するように形および大きさが設定されている請求項4〜7のいずれかに記載の光ピックアップ用光学部品。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれかに記載の光ピックアップ用光学部品を組み込んで製造する光ピックアップ装置の製造方法。
【請求項10】
請求項4〜8のいずれかに記載の光ピックアップ用光学部品を少なくとも一つ有する光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−40452(P2006−40452A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220896(P2004−220896)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】