説明

光ピックアップ装置及びそれを用いた光ディスク装置。

【課題】高密度化が進み、対物レンズとディスクの作動距離が小さくなると、ディスク装置に大きな衝撃や振動などが加わると、対物レンズがディスクと接触して、傷付きや破損などを発生するといった問題が発生しやすくなる。
【解決手段】2種以上の曲げ特性を有する支持部材にてアクチュエータを構成することで、レンズやディスクの接触による傷付きの発生などを回避する。
対物レンズが、通常駆動制御される範囲においては線形な第1の特性を有し、そうした範囲を逸脱する領域においては別の第2の曲げ特性を有する支持部材により構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク状の媒体に様々な情報を記録、又は読み出しを行うディスク装置における、光ピックアップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
音声や映像を初めとして様々な情報を記録または再生するディスク装置はすでに、CD、MO、DVD等として多くの製品化が成されている。こうしたディスク装置はすでに公知な通り、レーザ光を光学素子である対物レンズによって絞込み、対物レンズを保持するアクチュエータを適宜制御しながら、ディスク状媒体に照射することで、データを記録又は再生するものである。
【0003】
図6に対物レンズによって絞り込まれたレーザ光の状態を示す。図6において、80は対物レンズであり、81はディスク媒体、82はディスク媒体の記録面である。また、図6におけるWDは、ディスク媒体と対物レンズとの作動距離(Working Distance)を表す。
【0004】
こうしたディスク装置では、レーザ光83を絞り込んだスポット径は、レーザの波長λと対物レンズのNA(Numerical Aperture:開口数)と呼ばれる値によって、kを定数として以下の式(1)のように決定される。
【0005】
スポット径α=k・λ/NA ……(1)
また、図6のようにnをディスクの屈折率とすると、NAは次のように表される。
【0006】
NA=nsinθ ……(2)
近年ディスク装置は、使用する半導体レーザの短波長化の技術革新によって、更なる記録の高密度化が実現されようとしている。一般に高密度化を図るためには、スポット径αを小さくすれば良い。従って上記(1)式の関係から、
(a)レーザの波長λを短くする。
(b)対物レンズのNAの値を大きくする。
といった方策を施せば良いことがわかる。
【0007】
レーザの波長λを短くするということは、現在の赤色レーザから青色レーザへと移行することによって実現可能である。しかし、NAの値を大きくするということは、上記(2)式におけるθを大きくすることを意味することから、以下のような方法を選択する必要がある。
(i)対物レンズとディスク間の作動距離(Working Distance)をある程度確保することを優先して、対物レンズの径を大きくする。
(ii)対物レンズの径をある程度以下とすることを優先して、対物レンズとディスク間の作動距離をより小さくする。即ち、対物レンズをディスクにより近接させる(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
しかしながら、(i)の手段を選択し、対物レンズの径を大きくしてゆくと、通常の記録再生動作時においてディスク装置の制御機構によって行われる、いわゆるフォーカス方向制御、トラッキング方向制御等の制御性が著しく損なわれることや、ピックアップ全体のサイズが大きくなり、ディスク装置全体の機構系レイアウトやその他の機構系部品の性能に悪影響を与えるといった問題が発生するため、通常は対物レンズの径をある程度以上にはせず、(ii)の手段、即ち、対物レンズをディスクにより近接させ、作動距離を小さくする手段を選択することが多い。
【0009】
上述したように、システムの記録密度の向上に伴って、対物レンズとディスクとの作動距離が小さくなってきても、通常、ディスク装置における記録又は再生動作時においては、上述したような精密なフォーカス方向制御及びトラッキング方向制御等を行うことによって、対物レンズとディスクとの接触、及びそれに伴う対物レンズやディスクの傷付きや破損などの発生といった問題は、ある程度回避することができる。
【0010】
また、フォーカス方向軸周りやトラッキング方向軸周りの回転に対しては特許文献1がある。
【0011】
【非特許文献1】尾上守夫監修「光ディスク技術」ラジオ技術社、1989年2月10日、p.50-52
【特許文献1】特開平6−139599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、例えばディスク上に大きな傷やほこりなどが付着していたりする場合や、あるいは、ディスク装置外部から大きな振動や衝撃が加わった場合などにおいては、どうしてもそうした外乱の誘発によって、フォーカス方向やトラッキング方向の制御がはずれてしまい、その結果、対物レンズが大きく加振されてしまってディスクとの接触が起こることによって、対物レンズやディスクそれ自身の傷付きや破損といった問題、または対物レンズを搭載しているアクチュエータ自身の破損などを誘発するといった問題が起き易くなる。
【0013】
本発明は、以上述べたような、対物レンズとディスクとの作動距離が小さく、何らかの原因によってフォーカス方向制御及びトラッキング方向制御がはずれてしまった場合においても、対物レンズやディスクに傷付きや破損などが発生しないようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、上記目的を達成するために、ディスク装置の対物レンズを支持し、且つ駆動する支持駆動手段を、以下のような曲げ特性を有する支持部材とする。すなわち、対物レンズが、通常のフォーカス方向制御及びトラッキング方向制御によって駆動制御される範囲においては線形な第1の特性を有し、そうした範囲を逸脱する領域においては別の第2の曲げ特性を有するものである。
【0015】
また、第2の曲げ特性の変化率は、第1の曲げ特性の変化率より小さい特性とすることによって、通常、対物レンズが駆動される範囲以外の領域では、与えられた外力に対して発生する変位量が小さく抑えられ、ディスクとの接触を回避することが可能となるものである。
【発明の効果】
【0016】
ディスク装置性能の信頼性向上を図ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の実施例を各図面を用いて説明する。
図1は本発明における実施例であるディスク装置アクチュエータ部分の動作状態を示した特性図である。そして図2は、本発明における実施例であるディスク装置のアクチュエータ部分の構成概要を示した側面図であり、同様に図3は、アクチュエータ部分の構成概要を示した平面図である。
【0018】
まず図2以下を用いて、ディスク装置のアクチュエータ部分の構成を説明する。
図2において、1はディスク装置アクチュエータの対物レンズであり、2は対物レンズを保持するアクチュエータホルダである。3a及び3bは、アクチュエータホルダを支持する支持部材であり、4はその支持部材3を保持する保持部材である。5aはヨークと呼ばれるベース部材であり、5b及び5cはヨーク5aの立ち上げ部である。これらアクチュエータ部品類、及び光学系部品類等は、ピックアップケース部材(図4に示す)に搭載される。
【0019】
これらを更に図3によって説明する。図3に示すように、アクチュエータホルダ2にはコイル22、23、及び24が取り付けられている。このアクチュエータホルダ2は、4本の支持部材3a、3b、3c及び3dを介して保持部材4にて保持されており、保持部材4はヨーク5a上へ取り付けられるといった構成となっている。また、このヨーク5aの立ち上がり部分5b及び5cには、それぞれマグネット20及び21が取り付けられている。
【0020】
アクチュエータホルダ2に取り付けられたコイル類22、23、24には、支持部材3a、3b、3c及び3dを通じて電流が流れる構造となっている。コイル類22、23、24に電流が流れると、ヨーク5aに取り付けられたマグネット20及び21との関係から力が作用して、その結果、アクチュエータホルダ2が、図2におけるZ軸方向(フォーカス方向)に上下、及びY軸方向(トラッキング方向)の左右へと、所定量駆動するように構成されているものである。
【0021】
図4は、本発明であるピックアップ装置を搭載したディスク装置の概要を示す平面図である。
シャーシ60には、ディスク69を係合して所定回転数にて回転させるための手段であるスピンドルモータ61、本発明であるアクチュエータ部品類や光学部品類などを搭載したピックアップケース部材11、及びピックアップケース部材11上に締結用部材73によって締結された係合部材72を介して、ピックアップ部材11をディスク69の半径方向へと駆動し、所望位置へと移動させる手段であるシークモータ62とリードスクリュー63、またピックアップケース11を保持して移動動作を案内するためのガイドシャフト64及び65などが搭載されている。通常シャーシ60は外部筐体(図示せず)などへ、66、67、68といった連結用部材によって連結されている。
【0022】
また図4におけるピックアップケース部材11から出ている部材74は、ピックアップ内の各要素を動作させるために必要な各種電気信号等や、ピックアップに検出される各種電気信号等を外部の回路系(図示せず)とやり取りする為の信号伝達手段である。
【0023】
さて、図1は本発明における実施例である光ピックアップ装置のアクチュエータ部分における支持部材3(3a、3b、3c、3d)の動作特性を示した図である。図1の横軸には支持部材3に働く外力Fの大きさを表しており、縦軸には支持部材3に外力Fが働いた際の変形量Hを示してある。
【0024】
この支持部材3の特性は、働く外力の大きさがf1からf2までの間は、それに応じた変形量はh1からh2まで線形に変化していく。しかしながら、外力Fの大きさがf2より大きくなると、その時の変形量は、f1からf2までの区間と同様にはその変形量は増えてはいかず、変形量の変化率が小さくなるように変化するものである。すなわち、f2より大きい外力f3に対する変形量をh3とすると、
(h3−h2)/(f3−f2) <(h2−h1)/(f2−f1) ……(3)
こうした特性を有する支持部材3を利用することによって、以下のような制御を行うことが可能となる。
【0025】
すなわち、所望のアクチュエータ動作の領域をh4およびh5にて示せば、線形の特性を有するh1からh2の変形量の中にその動作領域h4からh5を設定し、また、ディスクまでの距離をh6で示せば、図1中に示すように支持部材3の変形量より大きく設定するようにする。
【0026】
こうすることで、通常のアクチュエータ作動時には、その動作領域がh4からh5の区域であるために、従来通りのアクチュエータサーボ制御が可能である。一方では、外部からの振動や衝撃などによって対物レンズを振ろうとする外力(f2〜f3)が加わったとしても、その外力によって変形する量(h2〜h3)がディスクまでの距離よりも小さいために、ディスクと接触することができず、結果として対物レンズやディスクへの傷付きなどの発生を回避することが可能となるものである。
【0027】
上述した支持部材3の特性は、図5に示すように線形な特性を2種類有しているような特性でも良い事は明らかである。すなわち、外力f11からf12の領域でその変形量はh11からh12へ線形に変化し、さらにf12からf13の領域においてその変形量がh12からh13へと線形に変化するような特性であっても、結局(3)式の条件を満たしており、上記のようなアクチュエータ動作領域設定が可能であれば、全く同様な効果を得ることが可能となる。
【0028】
以上のような支持部材3は、こうした特性を有していれば良いので、単一の物質からなる材料である必要は無く、上述の特性を得られるように複合材料など複数の材料によって構成されても構わない。こうした特性を有する支持部材3を使用することによって、ディスク装置は、外部からの振動や衝撃などによって発生する対物レンズやディスクの傷付きなどを回避することが可能となり、ディスク装置性能の信頼性向上を図ることが出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明支持部材特性図
【図2】本発明アクチュエータ部分構成概要側面図
【図3】本発明アクチュエータ部分構成概要平面図
【図4】本発明ディスク装置構成概要図
【図5】本発明支持部材特性図
【図6】従来技術説明図
【符号の説明】
【0030】
1…対物レンズ、2…アクチュエータホルダ、3…支持部材、4…保持部材、
5…ヨーク、11…ピックアップケース部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク媒体上に所定信号を記録再生するのに必要なレーザ光を集束する為の光学素子と、
前記光学素子を支持し、必要な方向に駆動するための支持手段を有する光ピックアップ装置であって、
前記光学素子の支持手段は、2種以上の曲げ特性を有し、少なくとも1つは線形な特性であることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1の光ピックアップ装置において、
前記支持手段における第1の曲げ特性は線形な特性であり、第2の曲げ特性は非線形であることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項2の光ピックアップ装置において、
前記支持手段における第2の曲げ特性の変化率は、常に第1の曲げ特性の変化率より小さい特性であることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項第1の光ピックアップ装置において、
前記支持手段の第1の曲げ特性と第2の曲げ特性は共に線形であり、その変化率が異なることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項第4の光ピックアップ装置において、
前記支持手段の第1の曲げ特性と第2の曲げ特性は共に線形であり、その変化率が異なり、第2の曲げ特性の変化率は、第1の曲げ特性の変化率より小さい特性であることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の光ピックアップ装置を用いた光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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