説明

光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置

【課題】コンパクト且つ低コストでありながら異なる光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行えるピックアップ装置及び光情報記録再生装置を提供する。
【解決手段】偏光ビームスプリッタPBSは第1の位置と第2の位置との間で移動可能となっており、BDの情報記録面から反射した光束は、第1の位置に移動した偏光ビームスプリッタPBSで第1の方向に反射され、第1の光検出器PD1に入射し、またHDの情報記録面から反射した光束は、第2の位置に移動した偏光ビームスプリッタPBSで第2の方向に反射され、第2の光検出器PD2に入射するようになっているので、偏光ホログラム素子HOEが異なる倍率を与えた場合でも、BDの情報記録面からの反射光と、HDの情報記録面からの反射光とを、適切に受光することができる。良好なスポット光を形成することができ、ピットの読み取り性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置に関し、特に高密度光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行うのに好適な光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、波長400nm程度の青紫色半導体レーザを用いて、情報の記録及び/又は再生(以下、「記録及び/又は再生」を「記録/再生」と記載する)を行える高密度光ディスクシステムの研究・開発が急速に進んでいる。一例として、NA0.65、光源波長405nmの仕様で情報記録/再生を行う光ディスク、いわゆるHD DVD(以下、HDという)では、直径12cmの光ディスクに対して、1層あたり15〜20GBの情報の記録が可能である。また別な例として、NA0.85、光源波長405nmの仕様で情報記録/再生を行う光ディスク、いわゆるBlu−ray Disc(以下、BDという)では、直径12cmの光ディスクに対して、1層あたり15〜25GBの情報の記録が可能である。以下、本明細書では、このような光ディスクを「高密度光ディスク」と呼ぶ。
【0003】
ところで、一方の高密度光ディスクに対して適切に情報の記録/再生ができると言うだけでは、光ディスクプレーヤ/レコーダの製品としての価値は十分なものとはいえない。ここで、波長が同じ光束を用いて、異なる種類の高密度光ディスクに互換可能に情報の記録及び/又は再生を行う場合、複数種類の集光光学系を用いれば、異なる光ディスクに応じて最適な集光スポットの形成ができるが、光ピックアップ装置のコンパクト化・低コスト化が図れないという問題がある。そこで、特許文献1においては、通過する光束の偏光方向に応じて回折効果が異なるようにした偏光ホログラム素子を用いて、同一の光源波長を有する2つの光源を用いて異なる光ディスクに対する互換使用を可能としている。
【特許文献1】特開2004−326858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1の光ピックアップ装置では、偏光ホログラム素子を用いて偏光方向に応じて倍率を変えるようにしているので、例えばBDとHDとで、どのように光検出器を設けるかという問題がある。又、特許文献1の光ピックアップ装置では、λ/4波長板を光路内に挿入していないので、光ディスクの情報記録面上に集光されるスポット光が円偏光でなく直線偏光となってしまい、それにより集光スポット形が楕円となることが多いため、ピットの読み取り性が低下するという問題がある。かかる問題は、DVDやCD使用時など比較的低い開口数で用いる場合には問題になる恐れは少ないが、BD使用時等の比較的高い開口数で用いる場合に問題がより顕在化することとなる。集光スポットの形状を整形するために、ビームシェイパ等を設けることもできるが、所望の光学特性を確保しづらいという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、コンパクト且つ低コストでありながら異なる光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行えるピックアップ装置及び光情報記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の光ピックアップ装置は、光束を射出する光源と、前記光束を厚さt1の保護基板を有する第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、また前記光束を厚さt2(t1<t2)の保護基板を有する第2光ディスクの情報記録面上に集光させるための対物光学素子と、前記第1光ディスクの情報記録面上で反射した光束を受光する第1の光検出器と、前記第2光ディスクの情報記録面上で反射した光束を受光する第2の光検出器とを有し、前記対物光学素子が、前記光源からの光束を、厚さt1の前記保護基板を介して前記第1光ディスクの情報記録面に集光させることによって、情報の記録及び/又は再生を行うことが可能となっていると共に、前記光源からの光束を、厚さt2の前記保護基板を介して前記第2光ディスクの情報記録面に集光させることによって、情報の記録及び/又は再生を行うことが可能となっている光ピックアップ装置であって、
入射した光束の偏光方向を第1の偏光方向又は第2の偏光方向に選択的に切り換える偏光面切換素子と、
前記偏光面切換素子と前記対物光学素子との間に配置され、入射した直線偏光の光束を円偏光の光束に変換して出射し、又は入射した円偏光の光束を直線偏光の光束に変換して出射する位相素子と、
前記偏光面切換素子と前記位相素子との間に配置され、通過する前記第1の偏光方向の光束に対しては、第1の倍率を与え、通過する前記第2の偏光方向の光束に対しては、前記第1の倍率とは異なる第2の倍率を与える選択性光学素子と、
前記光源と前記偏光面切換素子との間に配置され、入射した光束の直線偏光の方向に応じて透過もしくは反射させる偏光ビームスプリッタと、を有し、
前記偏光ビームスプリッタは第1の位置と第2の位置との間で移動可能となっており、前記第1光ディスクの情報記録面から反射した光束は、前記第1の位置に移動した前記偏光ビームスプリッタで第1の方向に反射され、前記第1の光検出器に入射し、また前記第2光ディスクの情報記録面から反射した光束は、前記第2の位置に移動した前記偏光ビームスプリッタで第2の方向に反射され、前記第2の光検出器に入射するようになっていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、前記選択性光学素子が、通過する前記第1の偏光方向の光束に対しては、第1の倍率を与え、通過する前記第2の偏光方向の光束に対しては、前記第1の倍率とは異なる第2の倍率を与えるので、これにより保護基板の厚さに起因する球面収差を補正して、第1光ディスク及び第2光ディスクのいずれに対しても適切に情報の記録及び/又は再生を行える。又、前記偏光ビームスプリッタは第1の位置と第2の位置との間で移動可能となっており、前記第1光ディスクの情報記録面から反射した光束は、前記第1の位置に移動した前記偏光ビームスプリッタで第1の方向に反射され、前記第1の光検出器に入射し、また前記第2光ディスクの情報記録面から反射した光束は、前記第2の位置に移動した前記偏光ビームスプリッタで第2の方向に反射され、前記第2の光検出器に入射するようになっているので、前記選択性光学素子が異なる倍率を与えた場合でも、前記第1光ディスクの情報記録面からの反射光と、前記第2光ディスクの情報記録面からの反射光とを、適切に受光することができる。又、前記位相素子としてλ/4波長板などを用いることで、光ディスクの情報記録面上に円偏光の光束が集光されるので、円形の良好なスポット光を形成することができ、ピットの読み取り性を高めることができる。更に、前記偏光ビームスプリッタを用いることで、前記λ/4波長板を2回(往復)通過した光束の偏波面を変更することにより、前記光源からの光束の光路と、前記光検出器への光束の光路とを分岐でき、前記光源と前記光検出器とを任意の位置に配置できる。
【0008】
偏光面切換素子の例としては、以下が挙げられる。
(1)TN(ツイスト・ネマティック)型液晶
紙面に平行な方向(第1の偏光方向)に偏光する光束がTN型液晶に入射するものとした場合、液晶に電圧を加えないときは、図1(a)に示すように、入射した光束は、TN型液晶により偏光方向を90度変えられ紙面に垂直な方向(第2の偏光方向)に偏光方向を変えて出射するようになる。一方で、液晶に電圧を加えたときは、図1(b)に示すように、入射した光束は、TN型液晶により偏光方向を変えられずに、紙面に平行な方向(第1の偏光方向)のまま透過する。
(2)λ/2板
BDの使用時には、HDの使用時の状態から光軸回りに45度回転させることで、偏光方向を90度変えられる。
【0009】
光源波長の好ましい範囲は、350〜440nmである。又、前記第1光ディスクの好ましい例はBDであり、前記2光ディスクの好ましい例はHDである。従って、前記第1の光ディスクの保護基板における厚さt1の好ましい範囲は、0.0750≦t1(mm)≦0.1125であり、前記第2の光ディスクの保護基板における厚さt2の好ましい範囲は、0.5≦t2(mm)≦0.7である。
【0010】
第1光ディスクと第2光ディスクとは、同一波長の光束を用いて情報の記録及び/又は再生が行われるものである。単一の光源からの光束が第1光ディスクと第2光ディスクに用いられると好ましいが、同一の波長の光束を出射する複数の光源を用いることを妨げるものではない。但し、光ピックアップ装置が、出射される光束の波長が異なる他の光源を搭載し、第1光ディスクや第2光ディスクとは異なる第3光ディスク或いは第4光ディスクの情報記録面に対して互換可能に情報の記録及び/又は再生を行うことを排除するものではない。
【0011】
第1光ディスクの情報記録面上で反射された光束と、第2光ディスクの情報記録面上で反射された光束とは、倍率が異なるため、偏光ビームスプリッタから第1の受光素子までの光路長と、偏光ビームスプリッタから第2の受光素子までの光路長とを、異ならせることにより、それぞれの受光素子上で良好なスポットを形成するようにしている。ここで、「良好なスポットを形成する」とは、読み取りエラーがなく正確に情報の記録及び/又は再生を行える程度のスポットを光検出器の受光面に形成することをいう。
【0012】
特に、BDのような透明基板の厚さが薄い光ディスクにおいては、偏光ビームスプリッタから第1の受光素子までの光路長を長く取り、HDのような透明基板の厚さが厚い光ディスクにおいては、偏光ビームスプリッタから第2の受光素子までの光路長を短く取ることが好ましい。
【0013】
請求項2に記載の光ピックアップ装置は、請求項1に記載の発明において、前記偏光ビームスプリッタは光軸回りに回転移動することを特徴とする。例えば、前記偏光ビームスプリッタは光軸回りに90度回転させることが好ましい。
【0014】
請求項3に記載の光ピックアップ装置は、請求項1に記載の発明において、前記偏光ビームスプリッタは、方向の異なる複数の透過反射面を備えており、移動することによって光路内にいずれかの透過反射面が挿入されることを特徴とする。「透過反射面」とは、第1の偏光方向の光束は透過するが、第2の偏光方向の光束は反射する特性を有する面をいう。
【0015】
請求項4に記載の光ピックアップ装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、前記選択性光学素子は、前記第1光ディスクの保護基板t1と、前記第2光ディスクの保護基板t2の厚さの差に起因して発生する球面収差を補正することを特徴とする。
【0016】
前記選択性光学素子に、倍率変更の機能に加えて、入射光束の偏光方向に応じて球面収差を発生させる機能を組み合わせても良いが、倍率変更の機能のみ設けた方が光学系構成を単純化できる。ここで、「組み合わせる」とは、選択性光学素子自体に、入射光束の偏光方向に応じて球面収差を発生させる機能を付加しても良いし、入射光束の偏光方向に応じて球面収差を発生させる別個の素子を追加しても良い。例えば、第2光ディスクを用いるときは、アンダーの球面収差を発生させるような素子を用い、保護基板の厚さが厚くなることによって発生するオーバーの球面収差を低減するようにしても良い。
【0017】
前記選択性光学素子は、以下の条件式を満たすように、選択的に倍率を変更することが望ましい。
−0.02<m1<0.02
−0.10<m2<0.00
但し、
m1:第1光ディスク(又は第2光ディスク)に対して情報を記録/再生する際の、対物光学素子への入射光束の倍率
m2:第2光ディスク(又は第1光ディスク)に対して情報を記録/再生する際の、対物光学素子への入射光束の倍率
【0018】
選択性光学素子の例としては、光束の偏光方向によって選択的に光束を回折させ、与える収差量を異ならせることができる「偏光回折素子」が挙げられる。
【0019】
偏光回折素子の具体例としては、例えば等方性媒質と複屈折媒質とを回折状に組み合わせた偏光ホログラム素子が挙げられる。偏光ホログラム素子は、図2に示す光軸直交方向部分断面形状を有している。図2において、偏光ホログラム素子は、等方性媒質H2と複屈折媒質H3とこれらを挟むようにして配置された一対のガラス板H1、H1とからなる。複屈折媒質H3は、図2に示すように入射光の進行方向での断面が鋸歯状に形成され、円心部から円周に同心円に多数形成された形状とされた回折構造を有している。その具体的な形状は図示のものに限定されない。他の鋸歯状であっても良く、鋸歯の斜面を階段状にしても良い。等方性媒質H2はこの複屈折媒質H3と相補的な形状であり、複屈折媒質の鋸歯状に形成された面に密着している。等方性媒質H2は、入射光に対して屈折率nを持つ物質であり、複屈折媒質H3は入射光の偏光面が所定の方向である場合には屈折率n、入射光の偏光面が所定の方向に直交する場合には屈折率n’となる特性を有している。すなわち、偏光面切換素子を通過した光束が所定の偏光状態で偏光ホログラム素子に入射する際に、偏光ホログラム素手が、0以外の所定の回折次数で回折効率が最大となる回折光を発生させるようになっている。
【0020】
光源から出射された光束は、例えば偏光面切換素子であるTN型液晶を通過することにより、例えばBDの記録再生を行う場合と、HDの記録再生を行う場合とで、偏光面を90度異ならせており、BDの記録再生を行う際の光束の偏光面を所定の方向とすると、偏光ホログラム素子を通過しても均質な平行平面媒質を通過したのと同じであるため発散角は変更されず、そのままの状態で対物レンズに入射するので、0.1mmの保護層を有するBDに対して、適切な情報の記録及び/又は再生を行える。
【0021】
一方、HDの記録再生を行う際には、光束は偏光ホログラム素子内の屈折率n、n’の媒質を通過するため、その境界面の回折構造で正レンズの回折効果が生じ、発散角や球面収差を変更して対物レンズに入射するので、同じ対物レンズを用いた場合でも、0.6mmの保護層を有するHDに対して、球面収差を補正して適切な情報の記録及び/又は再生を行える。
【0022】
更に、HD使用時には偏光ホログラムの選択的回折作用により、有効径の外側の光束がスポット結像に寄与しないようにフレア化させることで、偏光ホログラム素子に絞り機能を持たせることもできる。このとき、偏光ホログラム素子が、偏光面が互いに直交する所定の波長の入射光に対し、少なくとも一方の入射光に対し回折効率が85%以上で回折する回折光を発生させることが好ましい。
【0023】
尚、例えばBDとHDとは同じ青紫色レーザ光を使用するにも関わらず、開口数NAが異なる。そこで、例えば前記第2の偏光方向の光束のみ前記選択性光学素子を介して要求開口数以上の光束をフレア化させることで、絞りの効果を与えることもできる。特に第2光ディスクを用いている場合は、所定の開口数の外を通る光束はフレアにし、第1光ディスクを用いている場合は、所定の開口数の外を通る光束も情報記録面上に集光できるように収差付与することが好ましい。又は、所定開口数以上の光束を透過させたり、透過させなくしたりする液晶シャッタやメカニカルシャッタなどの開口制限手段を設け、開口数が異なる第1光ディスク使用時と、第2光ディスク使用時とに対応可能としても良い。
【0024】
請求項5に記載の光情報記録再生装置は、請求項1乃至4のいずれかに記載の光ピックアップ装置を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、コンパクト且つ低コストでありながら異なる光ディスクに対して情報の記録及び/又は再生を行えるピックアップ装置及び光情報記録再生装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図3は、光ディスクBD、HDに対して適切に情報の記録/再生を行える本実施の形態の光ピックアップ装置PU1の構成を概略的に示す図である。かかる光ピックアップ装置PU1は、光情報記録再生装置に搭載できる。本実施の形態においては、コリメータCLと対物レンズOBJとの間に、偏光面切換素子としてTN型液晶TNと、偏光ビームスプリッタPBSと、選択性光学素子として偏光回折素子HOEと、λ/4波長板QWPとが配置されている。TN型液晶TNと偏光回折素子HOEの構成については上述しているので、その説明は省略する。又、偏光ビームスプリッタPBSの下方には、第1のセンサレンズSN1と、第1の光検出器PDが配置され、偏光ビームスプリッタPBSの側方には、第2のセンサレンズSN1と、第2の光検出器PDが配置されている。ここでは、偏光ビームスプリッタPBSを光軸回りに回転させるアクチュエータは図示していないが、例えば特開2006−171346号公報に記載されたアクチュエータ等を用いることができる。尚、偏光ビームスプリッタPBSと第1のセンサレンズSN1までの距離は、偏光ビームスプリッタPBSと第2のセンサレンズSN2までの距離より長くなっている。
【0027】
図3(a)に示すように、BDに対して情報の記録及び/又は再生を行う場合、TN型液晶TNに所定の電圧を加える。更に、偏光ビームスプリッタPBSを図示の第1の位置に回転させ、透過反射面TRPを下方に向ける。
【0028】
光源としての半導体レーザLD(ここで、波長λ1=405nm)から出射された光束は、第1の偏光方向を有しており、コリメータCLで平行光束とされた後、TN型液晶TNに入射するが、このときは図3(a)に示すように偏光方向は変わらない。従って、第1の偏光方向のままTN型液晶TNを出射した光束は、偏光ビームスプリッタPBSを通過した後、偏光回折素子HOEが平行平板として機能する(倍率m1=0)ため、平行光束のままλ/4波長板QWPに入射し、円偏光に変換されて開口数NAが0.85の対物レンズOBJにより、BDの保護基板(ここで、厚さt1=0.1mm)を介してその情報記録面に集光されここに集光スポットを形成する(図4(a)参照)。
【0029】
そして情報記録面で情報ピットにより変調された光束は、再び対物レンズOBJを通過し、更にλ/4波長板QWPに入射して、入射時とは偏光方向が90度異なる第2の偏光方向である直線偏光に変換され、偏光回折素子HOEに入射する。かかる場合、偏光回折素子HOEが回折作用を発揮するので、その倍率に応じた発散光束が出射されることとなる(図4(b)参照)。かかる発散光束は、偏光ビームスプリッタPBSの透過反射面TRPで下方(第1の方向)に反射され、かかる反射光束は、第1のセンサレンズSN1で集光され、第1の光検出器PD1の受光面に集光スポットを形成する。その出力信号を用いて、BDに情報記録された情報の読み取り信号が得られる。
【0030】
また、第1の光検出器PD1上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて、不図示のアクチュエータが、半導体レーザLDからの光束をBDの情報記録面上に結像するように対物レンズOBJを移動させるようになっている。
【0031】
次に、図3(b)に示すように、HDに対して情報の記録及び/又は再生を行う場合、TN型液晶TNに所定の電圧を加えない。更に、偏光ビームスプリッタPBSを図示の第2の位置に回転させ、透過反射面TRPを側方に向ける。
【0032】
光源としての半導体レーザLD(ここで、波長λ1=405nm)から出射された光束は、第1の偏光方向を有しており、コリメータCLで平行光束とされた後、TN型液晶TNに入射するが、このとき図3(b)に示すように偏光方向が90度変わる。従って、第2の偏光方向に変換されてTN型液晶TNを出射した光束が、偏光ビームスプリッタPBSを通過し、偏光回折素子HOEに入射したときに、偏光回折素子HOEが回折作用を発揮するため(倍率m2≠0)ため、有効径外(ここでは、NA0.65より大きい部分)を通過する光束は回折作用によりフレア光となり、且つ有効径内(ここでは、NA0.65以下の部分)の光束が回折作用により発散光とされる。かかる発散光束は、λ/4波長板QWPに入射し、円偏光に変換されて開口数NAが0.85の対物レンズOBJより、HDの保護基板(ここで、厚さt2=0.6mm)を介してその情報記録面に集光されここに集光スポットを形成する(図5(a)参照)。
【0033】
そして情報記録面で情報ピットにより変調された光束は、再び対物レンズOBJを通過し収束光束となって、λ/4波長板QWPに入射して、入射時とは偏光方向が90度異なる第1の偏光方向である直線偏光に変換され、偏光回折素子HOEに入射する。かかる場合、偏光回折素子HOEは平行平板として機能するので、入射時と同じ収束角の収束光束が出射されることとなる(図5(b)参照)。かかる収束光束は、偏光ビームスプリッタPBSで側方(第2の方向)に反射され、その反射光束は、第2のセンサレンズSN2で集光され、第2の光検出器PD2の受光面に集光スポットを形成する。その出力信号を用いて、HDに情報記録された情報の読み取り信号が得られる。
【0034】
また、第2の光検出器PD2上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて、不図示のアクチュエータが、半導体レーザLDからの光束をHDの情報記録面上に結像するように対物レンズOBJを移動させるようになっている。
【0035】
尚、偏光ビームスプリッタは、偏光方向の異なる透過反射面を複数設けておき、光ディスクの種類に応じて、いずれかの透過反射面を光路内に挿入するようにしても良い。この場合、透過反射面からの光束の反射方向に、それぞれセンサレンズと光検出器とを配置する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】TN(ツイスト・ネマティック)型液晶の構成を示す概略断面図である。
【図2】偏光ホログラム素子の構成を示す概略断面図である。
【図3】光ディスクBD、HDに対して適切に情報の記録/再生を行える本実施の形態の光ピックアップ装置PUの構成を概略的に示す図である。
【図4】図4(a)は、偏光ホログラム素子からBDに向かう光束の偏光状態と発散又は収束状態を模式的に示した図であり、図4(b)は、BDから偏光ホログラム素子に向かう光束の偏光状態と発散又は収束状態を模式的に示した図である。
【図5】図5(a)は、偏光ホログラム素子からHDに向かう光束の偏光状態と発散又は収束状態を模式的に示した図であり、図5(b)は、HDから偏光ホログラム素子に向かう光束の偏光状態と発散又は収束状態を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0037】
CL コリメータ
H1 ガラス板
H2 等方性媒質
H3 複屈折媒質
HOE 偏光回折素子
LD 半導体レーザ
OBJ 対物レンズ
PBS 偏光ビームスプリッタ
PD1 第1の光検出器
PD2 第2の光検出器
PU 光ピックアップ装置
QWP λ/4波長板
SN1 第1のセンサレンズ
SN2 第2のセンサレンズ
TN TN型液晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束を射出する光源と、前記光束を厚さt1の保護基板を有する第1光ディスクの情報記録面上に集光させ、また前記光束を厚さt2(t1<t2)の保護基板を有する第2光ディスクの情報記録面上に集光させるための対物光学素子と、前記第1光ディスクの情報記録面上で反射した光束を受光する第1の光検出器と、前記第2光ディスクの情報記録面上で反射した光束を受光する第2の光検出器とを有し、前記対物光学素子が、前記光源からの光束を、厚さt1の前記保護基板を介して前記第1光ディスクの情報記録面に集光させることによって、情報の記録及び/又は再生を行うことが可能となっていると共に、前記光源からの光束を、厚さt2の前記保護基板を介して前記第2光ディスクの情報記録面に集光させることによって、情報の記録及び/又は再生を行うことが可能となっている光ピックアップ装置であって、
入射した光束の偏光方向を第1の偏光方向又は第2の偏光方向に選択的に切り換える偏光面切換素子と、
前記偏光面切換素子と前記対物光学素子との間に配置され、入射した直線偏光の光束を円偏光の光束に変換して出射し、又は入射した円偏光の光束を直線偏光の光束に変換して出射する位相素子と、
前記偏光面切換素子と前記位相素子との間に配置され、通過する前記第1の偏光方向の光束に対しては、第1の倍率を与え、通過する前記第2の偏光方向の光束に対しては、前記第1の倍率とは異なる第2の倍率を与える選択性光学素子と、
前記光源と前記偏光面切換素子との間に配置され、入射した光束の直線偏光の方向に応じて透過もしくは反射させる偏光ビームスプリッタと、を有し、
前記偏光ビームスプリッタは第1の位置と第2の位置との間で移動可能となっており、前記第1光ディスクの情報記録面から反射した光束は、前記第1の位置に移動した前記偏光ビームスプリッタで第1の方向に反射され、前記第1の光検出器に入射し、また前記第2光ディスクの情報記録面から反射した光束は、前記第2の位置に移動した前記偏光ビームスプリッタで第2の方向に反射され、前記第2の光検出器に入射するようになっていることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記偏光ビームスプリッタは光軸回りに回転移動することを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記偏光ビームスプリッタは、方向の異なる複数の透過反射面を備えており、移動することによって光路内にいずれかの透過反射面が挿入されることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
前記選択性光学素子は、前記第1光ディスクの保護基板t1と、前記第2光ディスクの保護基板t2の厚さの差に起因して発生する球面収差を補正することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光ピックアップ装置を用いたことを特徴とする光情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−108393(P2008−108393A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292608(P2006−292608)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】