説明

光ピックアップ駆動装置、光ディスク装置、光ピックアップ駆動方法、光ピックアップ駆動プログラムおよび光ピックアップ駆動プログラムを格納した記録媒体

【課題】光ディスク装置の光ピックアップ内のアクチュエータの過電流を検出するために部品点数の増加など無くコストアップが最小限に留められるようにする。
【解決手段】光ディスク再生装置1で光ディスク15の再生を行う際に、光ピックアップ3のアクチュエータに備えられた対物レンズを径方向に移動させるためのレンズシフトが発生したことを知らせる割り込み信号が、所定時間間隔で所定回数以上連続して発生した場合は光ピックアップ3のアクチュエータに過電流が流れている状態と判断して、光ピックアップ3のトラッキングサーボをオフにして対物レンズを保護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクを再生するための光ピックアップを駆動する光ピックアップ駆動装置、光ピックアップ駆動方法、光ピックアップ駆動プログラムおよび光ピックアップ駆動プログラムを格納した記録媒体および光ピックアップ駆動装置を備えた光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光ディスクを記録または再生する光ディスク装置は、光ディスクに照射する光を発生するレーザダイオードやレーザダイオードが発生した光を光ディスクに照射する対物レンズなどの光学系を含んだ光ピックアップを備えている。
【0003】
光ピックアップは、対物レンズをフォーカス方向やトラッキング方向に移動させるためのアクチュエータを備え、アクチュエータに駆動電流を流すことで光ディスクから正しく情報が読み取れるように対物レンズをフォーカス方向やトラッキング方向に駆動する。また、この光ピックアップは、キャリッジモータおよびキャリッジモータの駆動軸に機械的に接続されたリードスクリューなどによって光ディスクの径方向に移動することで光ディスクの情報を順次読み出しまたは書き込みを行っている。
【0004】
上述した光ピックアップにおいて、再生や記録動作中に対物レンズが、トラッキング方向のずれを示すエラー信号の異常やアクチュエータの駆動回路の異常動作などによってアクチュエータ内で移動できるストローク一杯まで移動した状態(はりついた状態)となってしまうことがある。このような状態が長く続くとアクチュエータに過電流が流れることとなり、その結果アクチュエータの加熱などによって光ピックアップが劣化してしまうという問題があった。
【0005】
このような問題に対して、特許文献1や2に記載された過電流検出回路やコイル負荷駆動回路が提案されている。特許文献1に記載の過電流検出回路はディスク装置に搭載されたアクチュエータの駆動電流が制限電流を越えたことを検出する過電流検出部を備え、過電流検出部がアクチュエータに過電流が流れることを検出するとCPUがアクチュエータに電流供給を停止しアクチュエータを保護する。特許文献2に記載のコイル負荷駆動回路は、過電流検出用トランジスタと過電流検出用トランジスタに一定の電流を流しリファレンス電圧を生成する定電流源と、出力端子の電圧とリファレンス電圧を比較して過電流を検出する過電流検出用比較器を備えてコイルに流れる過電流を検出している。
【特許文献1】特開平8−265960号公報
【特許文献2】特開2006−81363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の過電流検出回路や特許文献2に記載のコイル負荷駆動回路では、アクチュエータに流れる過電流の検出にハード的な回路を用いているために、既存の光ディスク装置などに適用するためにはこのような回路を搭載する必要があり実装面積や部品点数の増加などコストアップとなってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、例えば光ディスク装置の光ピックアップ内のアクチュエータの過電流を検出するために部品点数の増加など無くコストアップが最小限に留められる光ピックアップ駆動装置、光ディスク装置、光ピックアップ駆動方法、光ピックアップ駆動プログラムおよび光ピックアップ駆動プログラムを格納した記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の光ディスク再生装置は、情報が記録された光ディスクに対しレーザ光を照射して、前記光ディスクからの反射光により信号を得る光ピックアップと、前記光ピックアップを前記光ディスクの径方向に沿って移動させる移動手段と、前記光ピックアップが得た信号に基づいて前記移動手段を駆動する駆動手段と、を備えた光ピックアップ駆動装置において、前記駆動手段が前記移動手段を駆動する信号を検出する検出手段と、前記検出手段が検出した前記移動手段を駆動する信号が、所定時間以下の間隔で所定回数以上連続して検出されたか否かを判定する判定手段と、前記判定手段が、前記検出手段が検出した前記移動手段を駆動する信号が所定時間以下の間隔で所定回数以上連続して検出されたと判定した場合は、異常と判断して異常処理を行う異常処理手段と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項5に記載の光ピックアップ駆動方法は、情報が記録された光ディスクに対しレーザ光を照射し、前記光ディスクからの反射光により信号を得る光ピックアップを前記光ディスクの径方向に沿って移動させ、前記光ピックアップが得た信号に基づいて前記光ピックアップを移動させるように駆動する光ピックアップ駆動方法において、前記光ピックアップを移動させるように駆動する信号を検出し、前記光ピックアップを移動させるように駆動する信号が、所定時間以下の間隔で所定回数以上連続して検出されたか否かを判定して、前記光ピックアップを移動させるように駆動する信号が所定時間以下の間隔で所定回数以上連続して検出されたと判定した場合は、異常と判断して異常処理を行うことを特徴としている。
【0010】
請求項6に記載の光ピックアップ駆動プログラムは、情報が記録された光ディスクに対しレーザ光を照射し、前記光ディスクからの反射光により信号を得る光ピックアップと、前記光ピックアップを前記光ディスクの径方向に沿って移動させる移動手段と、を備えた光ピックアップ駆動装置のコンピュータを、前記光ピックアップが得た信号に基づいて前記移動手段を駆動する駆動手段として機能させる光ピックアップ駆動プログラムにおいて、前記駆動手段が前記移動手段を駆動する信号を検出する検出手段と、前記検出手段が検出した前記移動手段を駆動する信号が、所定時間以下の間隔で所定回数以上連続して検出されたか否かを判定する判定手段と、前記判定手段が、前記検出手段が検出した前記移動手段を駆動する信号が所定時間以下の間隔で所定回数以上連続して検出されたと判定した場合は、異常と判断して異常処理を行う異常処理手段としてコンピュータに機能させることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態にかかる光ピックアップ駆動装置を説明する。本発明の一実施形態にかかる光ピックアップ駆動装置は、検出手段が検出した移動手段を駆動する信号が、所定時間以下の間隔で所定回数以上検出されたと判定手段が判定した場合には、異常と判断して異常処理手段が異常処理を行う。このようにすることによって、移動手段を駆動する信号が短時間に連続して発生することでアクチュエータに過電流が流れる状態(はりついた状態)を検出できる。したがって、過電流検回路などを追加することなく過電流を検出することができるため、部品点数の増加など無くコストアップを最小限に留めることができる。
【0012】
また、所定時間が、移動手段を駆動する信号が生成される間隔の最小時間以上最大時間未満の範囲に設定されてもよい。このようにすることにより、最小時間以上とすることで最小時間で連続して移動手段を駆動する信号が連続して発生すれば、過電流を検出することができ、最大時間未満であることで移動手段を駆動する信号が生成される間隔が最大時間で生成されれば過電流で無いことがわかるため誤検出されない。
【0013】
また、移動手段が、ステッピングモータであってもよい。ステッピングモータは1ステップ毎に駆動することから駆動する信号が所定時間間隔で連続して発生するという通常起り得ないことを検出することで、アクチュエータに過電流が流れている状態(はりついている状態)であることを検出することができる。
【0014】
また、請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の光ピックアップ駆動装置を光ディスクを記録または再生する光ディスク装置に備えてもよい。このようにすることにより、光ディスク装置において光ピックアップのアクチュエータの過電流の検出が部品点数の増加など無くコストアップを最小限に留めることができる。
【0015】
また、本発明の一実施形態にかかる光ピックアップ駆動方法は、検出した光ピックアップを移動するように駆動する信号が、所定時間以下の間隔で所定回数以上検出されたと判定した場合には、異常と判断して異常処理を行う。このようにすることによって、光ピックアップを移動するように駆動する信号が短時間に連続して発生することでアクチュエータに過電流が流れる状態(はりついた状態)を検出できる。したがって、過電流検回路などを追加することなく過電流を検出することができるため、部品点数の増加など無くコストアップを最小限に留めることができる。
【0016】
また、本発明の一実施形態にかかる光ピックアップ駆動プログラムは、検出手段が検出した移動手段を駆動する信号が、所定時間以下の間隔で所定回数以上検出されたと判定手段が判定した場合には、異常と判断して異常処理手段が異常処理を行うようにコンピュータに機能させる。このようにすることによって、移動手段を駆動する信号が短時間に連続して発生することでアクチュエータに過電流が流れる状態(はりついた状態)を検出できる。したがって、過電流検回路などを追加することなく過電流を検出することができるため、部品点数の増加など無くコストアップが最小限に留めることができる。
【0017】
また、請求項6に記載の光ピックアップ駆動プログラムを記録媒体に格納してもよい。このようにすることにより、光ピックアップ駆動プログラムを機器に組み込む以外に単体でも流通させることができる。
【実施例】
【0018】
本発明の一実施例にかかる光ピックアップ駆動装置を備えた光ディスク再生装置1を図1乃至図6を参照して説明する。光ディスク再生装置1は、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)等の光ディスクが再生可能な装置であり、図1に示すようにディスクモータ2と、光ピックアップ3と、キャリッジモータ4と、リードスクリュー5と、RFアンプ6と、サーボ信号処理部7と、ドライバ8と、LPF9と、検出部10と、マイクロコンピュータ11と、音声/映像信号処理部12と、DAコンバータ13と、音声信号/映像信号出力端子14とを備えている。
【0019】
ディスクモータ2は、光ディスク再生装置1にセットされた光ディスク15を回転させるためのモータであり、スピンドルモータなどで構成されている。
【0020】
光ピックアップ3は、光ディスク15に照射するレーザ光を発生させる図示しないレーザダイオードや、光ディスク15上にレーザダイオードからのレーザ光を照射するための対物レンズ、サーボ信号処理部7からの信号によりフォーカス方向やトラッキング方向に対物レンズを駆動するためのアクチュエータおよび光ディスク15から反射された反射光を受ける受光器などを備え、受光器の出力から光ディスク15に記録されている映像や音楽などを含むRF信号やフォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号などを生成しRFアンプ6へ出力する。
【0021】
移動手段としてのキャリッジモータ4は、後述するリードスクリュー5を通じて光ピックアップ3を光ディスク15の径方向に移動させるためのモータでありステッピングモータで構成されている。
【0022】
リードスクリュー5は、円柱状に形成されてその外周面にネジ溝とネジ山が形成され、光ディスク15の径方向と平行に設置されている。リードスクリュー5は、キャリッジモータ4の回転軸と機械的に接続されておりキャリッジモータ4の回転に合わせて回転する。リードスクリュー5のネジ溝やネジ山は光ピックアップ3に形成されたネジ山やネジ溝と噛み合っており、リードスクリュー5が回転することで光ピックアップ3が光ディスク15の径方向に沿って移動する。
【0023】
RFアンプ6は、光ピックアップ3から入力される信号を所定の値に増幅し、サーボ信号処理部7へ出力する。
【0024】
サーボ信号処理部7は、RFアンプ6から入力されるフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号などの制御信号を基にフォーカス方向およびトラッキング方向のサーボ制御を行い光ディスク15に記録された情報を正確に読めるように制御する。さらに、光ディスク15に記録された映像や音楽などを含むRF信号をアナログ/デジタル変換して音声/映像信号処理部12へ出力する。
【0025】
駆動手段としてのドライバ8は、サーボ信号処理部7から入力された信号に基づいてディスクモータ2、キャリッジモータ4および光ピックアップ3内のアクチュエータに対するドライブ信号を生成し出力する。
【0026】
LPF9は、光ピックアップ3に対するトラッキングドライブ信号の低域のみを透過させるローパスフィルタであり、トラッキングドライブ信号の低域を検出部10に出力する。
【0027】
検出手段としての検出部10は、LPF9が出力した光ピックアップ3のトラッキングドライブ信号の低域のレベルが予め定めた下限値と上限値の範囲内であるか否かを判断し、範囲外であった場合はマイクロコンピュータ11に対してレンズシフトが発生したことを知らせる割り込み信号(レンズシフト通知割り込み信号)を出力する。
【0028】
判定手段、異常処理手段としてのマイクロコンピュータ11は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)とを内蔵し、光ディスク15の挿入や排出、再生や停止などの各操作における光ディスク再生装置1全体の制御など行い、本実施例においては特に検出部10から入力される割り込み信号に対応してドライバ8に対してキャリッジモータ4を1ステップ駆動するように指示をする。
【0029】
音声/映像信号処理部12は、サーボ信号処理部7から入力された信号にエラー訂正などを行った後復調や復号を行いDAコンバータ13へ出力する。
【0030】
DAコンバータ13は、音声/映像信号処理部12から入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換し音声信号/映像信号出力端子14から出力する。
【0031】
本実施例においては、光ピックアップ3と、キャリッジモータ4と、リードスクリュー5と、RFアンプ6と、サーボ信号処理部7と、ドライバ8と、LPF9と、検出部10と、マイクロコンピュータ11とで本発明の一実施例にかかる光ピックアップ駆動装置を構成する。
【0032】
ここで、対物レンズがはりついた状態について図2および図3を参照して説明する。図2および図3は対物レンズのアクチュエータ内におけるセンターからのシフト量を示す図であり、縦軸にセンターからのシフト量、横軸に時間を表している。通常の再生状態では図2に示すように、アクチュエータが光ディスク15のトラックをトレースするように動作することでセンターから対物レンズが徐々にシフトしていき、上閾値(または下閾値)を超えると検出部10がレンズシフト通知割り込み信号を発生させる。マイクロコンピュータ11はレンズシフト通知割り込み信号に対応してドライバ8に対してキャリッジモータ4に対して対物レンズをアクチュエータのセンターに近づける方向に1ステップ動作させるようにドライバ8に指示をする。1ステップとはステッピングモータに1パルス与えて回転する角度である。すなわち、レンズシフト通知割り込み信号は特許請求の範囲における検出手段が検出した前記移動手段を駆動する信号である。
【0033】
キャリッジモータ4が1ステップ動作することでリードスクリュー5が所定量回転しその結果光ピックアップ3が所定量移動する。このように動作することで対物レンズが常にアクチュエータのストローク範囲内で動作できるようにしている。また、図2の対物レンズのシフト量(対物レンズの位置)はキャリッジモータ4に対するドライブ信号の低域成分と等価であるためドライバ8の出力をLPF9を通した信号の電圧レベルが対物レンズのシフト量を表す信号となり、その電圧レベルに上閾値に対応する上限値と下閾値に対応する下限値を設定することで検出部10がレンズシフト通知割り込み信号を生成することができる。
【0034】
光ピックアップ3、RFアンプ6、サーボ信号処理部7、ドライバ8の異常動作などによって図3に示すように例えば上限値を超えてアクチュエータのストローク一杯まで寄ってしまう(はりついてしまう)と、レンズシフト通知割り込み信号が発生し続けるためにマイクロコンピュータ11が短い時間間隔で連続してレンズシフト通知割り込み信号を認識することとなる。つまり、キャリッジモータ4を動作させてもレンズ位置が移動しないか移動しても上閾値を超えた位置にあるため割り込みを発生し続けてしまう。この時間間隔とは、レンズシフト通知割り込み信号に対してマイクロコンピュータ11において処理してキャリッジモータ4を動作させてから次のレンズシフト通知割り込み信号に対する処理を行うまでの間隔であり、短い時間間隔とは、通常の再生時に比べて短くなっていることをいう。したがって、通常動作時の設定としては1回のレンズシフト通知割り込み信号の処理では1ステップ分しか光ピックアップ3を移動させないために、はりついた状態を解消するには長い時間がかかるか場合によってはりつきを解消できなくなってしまう。そのため短い時間間隔で連続してレンズシフト通知割り込み信号を認識した場合には、はりつきが発生したと判断して異常処理(トラッキングをオフにする等)を行うことではりつきによる過電流から対物レンズを保護する。以降、マイクロコンピュータ11のCPUの動作を図4のフローチャートを参照して説明する。
【0035】
まず、ステップS1において、割り込み間隔が予め定めた所定時間以下であったことをカウントするカウンタの値を0にクリアしてステップS2に進む。
【0036】
次に、ステップS2において、検出部10が出力した割り込み(レンズシフト通知割り込み信号)を検出したか否かを判断し、検出した場合はステップS3に進み、検出していない場合は再度判断する。
【0037】
次に、ステップS3において、レンズシフト通知割り込み信号の間隔を計測するタイマーをスタートさせステップS4に進む。
【0038】
次に、ステップS4において、検出部10からのレンズシフト通知割り込み信号を検出したか否かを判断し、検出した場合はステップS5に進み、検出していない場合は再度判断する。
【0039】
次に、ステップS5において、ステップS3においてスタートさせたタイマーを停止するとともにクリアし、該タイマーで計測したレンズシフト通知割り込み信号の時間間隔(ステップS2とステップS4の時間間隔)を確認(求めて)してステップS6に進む。
【0040】
次に、ステップS6において、レンズシフト通知割り込み信号の時間間隔が予め定めた所定時間以下か否かを判断し、所定時間間隔以下の場合はステップS7に進み、所定時間間隔よりも長い場合はステップS9に進む。
【0041】
次に、ステップS7において、ステップS1で0にクリアした割り込み間隔が予め定めた所定時間以下であったことをカウントするカウンタの値をインクリメントしてステップS8に進む。
【0042】
次に、ステップS8において、割り込み間隔が予め定めた所定時間以下であったことをカウントするカウンタの値が予め定めた所定値に到達したか否かを判断し、所定値に到達した場合は異常検出としてトラッキングをオフとし、所定値に到達していない場合はステップS3に戻る。トラッキングがオフになるとアクチュエータに電流が流れなくなるので対物レンズをアクチュエータの動作範囲の中点(センター)に戻すことができ対物レンズを保護できる。そして、その後リトライ動作を行いトラッキングを正常に戻す。すなわち、移動手段を駆動する信号が所定時間以下の間隔で所定回数以上続けて検出されたと判定した場合は、異常と判断して異常処理を行っている。
【0043】
ステップS9においては、割り込み間隔が予め定めた所定時間以下であったことをカウントするカウンタの値を0にクリアしてステップS3に戻る。
【0044】
本実施例によれば、光ディスク再生装置1で光ディスク15の再生を行う際に、対物レンズを径方向に移動させるレンズシフト通知割り込み信号が、所定時間間隔で所定回数以上連続して発生した場合は光ピックアップ3のアクチュエータに過電流が流れている状態と判断して、光ピックアップ3のトラッキングをオフにして対物レンズを保護する。レンズシフト通知割り込み信号の発生時間間隔と連続回数でアクチュエータに過電流が流れている状態か否かを判断しているのでハード的な過電流検出回路など部品点数の増加など無くコストアップが最小限に留めることができる。
【0045】
ここで、発明者らはステッピングモータをキャリッジモータ4に使用した光ピックアップ駆動装置において1ステップ当りの光ピックアップ3の移動量を測定した。その結果を図5に示す。図5は、1ステップ当りの光ピックアップ3に移動量を16.25μmになるようにキャリッジモータ4やリードスクリュー5を設定した場合であり、縦軸に移動量、横軸にステップを表している。図5に示すようにステッピングモータの場合は常に理想値(16.25μm)を移動することはなく、理想値以上と以下とを周期的に繰り返すような動作をしていることが明らかとなった。図5をレンズシフト通知割り込み信号の時間間隔と割り込み回数の関係にすると図6のようになる。図6は縦軸に割り込み時間間隔、縦軸に割り込み回数を表している。割り込み回数は1回の割り込みで1ステップ動作させているので割り込み回数=ステップ数である。図5および図6より1ステップの移動量が大きいということは例えば図2でいうと上閾値から下閾値により近い位置に対物レンズが移動することから次のレンズシフト通知割り込み信号までの時間が長くなり、1ステップの移動量が小さいということは図2でいうと上閾値に近い位置に対物レンズが移動することから次のレンズシフト通知割り込み信号までの時間が短くなる。
【0046】
したがって、割り込み時間間隔は図6の折れ線の山の頂点(時間間隔の長い点)と谷の頂点(時間間隔の短い点)の間に設定すればよい。つまり、正常に動作していれば周期的に移動量が大きいレンズシフト割りこみが発生するために周期的に割り込み時間間隔が長い場合が発生するので誤ってはりつきと判断されることが無い。また、一番短いレンズシフト通知割り込み信号の時間間隔以上とすればはりつきのような短いレンズシフト通知割り込み信号を連続して発生させる状態を確実に検出することができる。すなわち、移動手段を駆動する信号が生成される間隔の最小時間以上最大時間未満の範囲に設定されていればよい。勿論割り込みの連続回数は正常な割り込みが発生する時間以上の回数(例えば設定した割り込み時間間隔で山の頂点が発生する周期以上の時間となるような回数)に設定する必要がある。図6の場合で一例を挙げると割り込み時間間隔が50ms以下で10回連続したら異常と判断すれば確実に異常(はりつきによる過電流状態)を検出できる。
【0047】
前述した実施例によれば、以下の光ピックアップ駆動装置と光ピックアップ駆動方法および光ピックアップ駆動プログラムが得られる。
【0048】
(付記1)情報が記録された光ディスク15に対しレーザ光を照射して、光ディスク15からの反射光により信号を得る光ピックアップ3と、
光ピックアップ3を光ディスク15の径方向に沿って移動させるキャリッジモータ4と、
光ピックアップ3が得た信号に基づいてキャリッジモータ4を駆動するドライバ8と、
を備えた光ピックアップ駆動装置において、
レンズシフト通知割り込み信号を検出する検出部10と、
検出部10が検出したレンズシフト通知割り込み信号が、所定時間以下の間隔で所定回数以上連続して検出されたか否かを判定するマイクロコンピュータ11と、
マイクロコンピュータ11が、検出部10が検出したレンズシフト通知割り込み信号が所定時間以下の間隔で所定回数以上連続して検出されたと判定した場合は、異常と判断して異常処理を行うマイクロコンピュータ11と、
を備えたことを特徴とする光ピックアップ駆動装置。
【0049】
この光ピックアップ駆動装置によれば、レンズシフト通知割り込み信号が短時間に連続して発生することで光ピックアップ3のアクチュエータに過電流が流れる状態(はりついた状態)を検出できる。したがって、過電流検回路などを追加することなく過電流を検出することができるため、部品点数の増加など無くコストアップを最小限に留めることができる。
【0050】
(付記2)情報が記録された光ディスク15に対しレーザ光を照射し、光ディスク15からの反射光により信号を得る光ピックアップ3を光ディスク15の径方向に沿って移動させ、光ピックアップ3が得た信号に基づいて光ピックアップ3を移動させるように駆動する光ピックアップ駆動方法において、
レンズシフト通知割り込み信号を検出し、レンズシフト通知割り込み信号が、所定時間以下の間隔で所定回数以上連続して検出されたか否かを判定して、レンズシフト通知割り込み信号が所定時間以下の間隔で所定回数以上連続して検出されたと判定した場合は、異常と判断して異常処理を行うことを特徴とする光ピックアップ駆動方法。
【0051】
この光ピックアップ駆動方法によれば、レンズシフト通知割り込み信号が短時間に連続して発生することで光ピックアップ3のアクチュエータに過電流が流れる状態(はりついた状態)を検出できる。したがって、過電流検回路などを追加することなく過電流を検出することができるため、部品点数の増加など無くコストアップを最小限に留めることができる。
【0052】
(付記3)情報が記録された光ディスク15に対しレーザ光を照射し、光ディスク15からの反射光により信号を得る光ピックアップ3と、光ピックアップ3を光ディスク15の径方向に沿って移動させるキャリッジモータ4と、を備えた光ピックアップ駆動装置のコンピュータを
光ピックアップ3が得た信号に基づいてキャリッジモータ4を駆動するドライバ8として機能させる光ピックアップ駆動プログラムにおいて、
レンズシフト通知割り込み信号を検出する検出部10と、
検出部10が検出したレンズシフト通知割り込み信号が、所定時間以下の間隔で所定回数以上連続して検出されたか否かを判定するマイクロコンピュータ11と、
マイクロコンピュータ11が、検出部10が検出したレンズシフト通知割り込み信号が所定時間以下の間隔で所定回数以上連続して検出されたと判定した場合は、異常と判断して異常処理を行うマイクロコンピュータ11と
してコンピュータに機能させることを特徴とする光ピックアップ駆動プログラム。
【0053】
この光ピックアップ駆動プログラムによれば、レンズシフト通知割り込み信号が短時間に連続して発生することで光ピックアップ3のアクチュエータに過電流が流れる状態(はりついた状態)を検出できる。したがって、過電流検回路などを追加することなく過電流を検出することができるため、部品点数の増加など無くコストアップを最小限に留めることができる。
【0054】
なお、前述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施例に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施例にかかる光ピックアップ駆動装置を備えた光ディスク再生装置のブロック図である。
【図2】図1に示された光ディスク再生装置の通常動作時における対物レンズの位置の説明図である。
【図3】図1に示された光ディスク再生装置の過電流状態(はりつき)が発生した際における対物レンズの位置の説明図である。
【図4】図1に示された光ディスク再生装置の過電流状態の検出動作を示したフローチャートである。
【図5】キャリッジモータにステッピングモータを使用した際の光ピックアップの移動量を示すグラフである。
【図6】キャリッジモータにステッピングモータを使用した際の光ピックアップの移動させるためのレンズシフト通知割り込み信号の時間間隔を示すグラフである。
【符号の説明】
【0056】
1 光ディスク再生装置
3 光ピックアップ
4 キャリッジモータ(移動手段)
8 ドライバ(駆動手段)
10 検出部(検出手段)
11 マイクロコンピュータ(判断手段、異常処理手段)
15 光ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報が記録された光ディスクに対しレーザ光を照射して、前記光ディスクからの反射光により信号を得る光ピックアップと、
前記光ピックアップを前記光ディスクの径方向に沿って移動させる移動手段と、
前記光ピックアップが得た信号に基づいて前記移動手段を駆動する駆動手段と、
を備えた光ピックアップ駆動装置において、
前記駆動手段が前記移動手段を駆動する信号を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した前記移動手段を駆動する信号が、所定時間以下の間隔で所定回数以上連続して検出されたか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段が、前記検出手段が検出した前記移動手段を駆動する信号が所定時間以下の間隔で所定回数以上連続して検出されたと判定した場合は、異常と判断して異常処理を行う異常処理手段と、
を備えたことを特徴とする光ピックアップ駆動装置。
【請求項2】
前記所定時間が、前記移動手段を駆動する信号が生成される間隔の最小時間以上最大時間未満の範囲に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ駆動装置。
【請求項3】
前記移動手段が、ステッピングモータであることを特徴とする請求項1または2に記載の光ピックアップ駆動装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の光ピックアップ駆動装置を備えた前記光ディスクを記録または再生する光ディスク装置。
【請求項5】
情報が記録された光ディスクに対しレーザ光を照射し、前記光ディスクからの反射光により信号を得る光ピックアップを前記光ディスクの径方向に沿って移動させ、前記光ピックアップが得た信号に基づいて前記光ピックアップを移動させるように駆動する光ピックアップ駆動方法において、
前記光ピックアップを移動させるように駆動する信号を検出し、前記光ピックアップを移動させるように駆動する信号が、所定時間以下の間隔で所定回数以上連続して検出されたか否かを判定して、前記光ピックアップを移動させるように駆動する信号が所定時間以下の間隔で所定回数以上連続して検出されたと判定した場合は、異常と判断して異常処理を行うことを特徴とする光ピックアップ駆動方法。
【請求項6】
情報が記録された光ディスクに対しレーザ光を照射し、前記光ディスクからの反射光により信号を得る光ピックアップと、前記光ピックアップを前記光ディスクの径方向に沿って移動させる移動手段と、を備えた光ピックアップ駆動装置のコンピュータを、
前記光ピックアップが得た信号に基づいて前記移動手段を駆動する駆動手段として機能させる光ピックアップ駆動プログラムにおいて、
前記駆動手段が前記移動手段を駆動する信号を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した前記移動手段を駆動する信号が、所定時間以下の間隔で所定回数以上連続して検出されたか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段が、前記検出手段が検出した前記移動手段を駆動する信号が所定時間以下の間隔で所定回数以上連続して検出されたと判定した場合は、異常と判断して異常処理を行う異常処理手段と
してコンピュータに機能させることを特徴とする光ピックアップ駆動プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載の光ピックアップ駆動プログラムを格納したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−181591(P2008−181591A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13750(P2007−13750)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】