説明

光ファイバアレイの製造方法および製造装置

【課題】独立した光ファイバにより、その一端が整列基板から所定の長さだけ突き出た光ファイバアレイを容易に製造する。
【解決手段】まず、整列基板S1上に形成された互いに平行な複数の溝の両端からはみ出すように、溝毎に光ファイバを配置する。次に、光ファイバFの光軸と垂直な平面を有する突き当て部材42bにより、光ファイバFの一端を所定量整列基板S1側に押し込む。これにより、各光ファイバFの端部が光軸と垂直な方向に揃った状態で整列基板S1側に押し込まれる。結果として、光ファイバの突き出し量を測定することなく、またそれぞれの光ファイバを個別に把持して前後位置を調整することなく、一端が整列基板S1から所定の長さだけ突き出た光ファイバアレイを製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバアレイの製造方法および製造装置に関し、特に、複数本の光ファイバを整列させて固定することにより光ファイバアレイを生成する光ファイバアレイの製造方法およびその製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光合分波器、光スプリッタ、多チャンネル光コネクタなどの複数の光信号を入出力する光デバイスでは、複数の光ファイバをその光軸方向に平行に配置した光ファイバアレイが用いられる。従来の光ファイバアレイは、図19,図20に示すように、光軸と直交する方向に所定間隔離間して整列された複数の光ファイバFが、整列基板501と押さえ板502とにより狭持された構成を有する。特許文献1によれば、このような光ファイバアレイは、以下に示すような方法により作成される。
【0003】
まず、図20に示すような複数の心線601を有するテープ型光ファイバ600の心線を、整列基板501の上面に互いに並行にかつ所定間隔離間して形成された複数の溝501aに載置する。テープ型光ファイバ心線が載置されると、整列基板501の上面側に押さえ板502を載置することにより光ファイバアレイを組み立て、この光ファイバアレイに紫外線硬化接着剤を塗布し、この接着剤に紫外線を照射して硬化させる。このような方法により形成された光ファイバアレイは、図19に示されるように、光ファイバの整列基板501側の端部が、整列基板501の一端面501bから突出せず、一端面501bで光ファイバの光軸方向の長さが揃えられることとなる。
【0004】
【特許文献1】特許第2958628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光デバイスの種類によっては、光ファイバの整列基板側の端部が、整列基板の一端面から光ファイバの光軸方向に所定の長さだけ突き出た光ファイバアレイを用いることが望ましい場合がある。しかしながら、従来の方法では、そのような光ファイバを想定していなかったため、製造するのが困難であった。
【0006】
また、従来の方法では、複数の光ファイバが並べてあらかじめ固定されているテープ型光ファイバにより光ファイバアレイを製造しているため、それぞれが独立した光ファイバによって光ファイバが所定の長さだけ突き出した光ファイバアレイを製造するには、さらに多くの時間と工数が必要であり、容易に製造することができなかった。
【0007】
そこで、本願発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであり、独立した光ファイバにより、その一端が整列基板から所定の長さだけ突き出た光ファイバアレイを容易に製造することができる光ファイバアレイの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述したような課題を解決するために、本発明に係る光ファイバアレイの製造方法は、整列基板の1の面に形成された互いに平行な複数の溝の両端からはみ出すように、溝毎に光ファイバを配置する第1のステップと、光ファイバの光軸に対して垂直な平面により、光ファイバの一端を光軸に沿った方向に所定量整列基板側に押し込む第2のステップと、光ファイバを整列基板に固定する第3のステップとを備えることを特徴とする。これにより、各光ファイバの端部は、光軸に垂直な方向が揃った状態で整列基板側に押し込まれる。
【0009】
上記光ファイバアレイの製造方法において、第3のステップは、整列基板の溝が形成された面に押さえ板を載置するステップと、押さえ板を整列基板に接着固定するステップとを備えるようにしてもよい。これにより、光ファイバは、整列基板と押さえ板とにより狭持され、強固に固定される。
【0010】
また、上記光ファイバアレイの製造方法において、第2ステップは、光ファイバを光軸および1の面に対して垂直な方向から整列基板側に押圧するステップをさらに備えるようにしてもよい。これにより、平面による押し込み以外の外力により光ファイバが移動するのを防ぐことができる。
【0011】
また、本発明に係る光ファイバアレイの製造装置は、1の面に互いに平行な複数の第1の溝が形成された整列基板を保持する基板保持手段と、この基板保持手段から第1の溝の長手方向に所定の距離離間し、長手方向に対して垂直な平面を有し、この平面を長手方向に沿って整列基板側に移動可能な突き当て手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
上記光ファイバアレイの製造装置において、基板保持手段と隣接し、第1の溝に対応する第2の溝を有する光ファイバ保持手段をさらに備えるようにしてもよい。
【0013】
また、上記光ファイバアレイの製造装置において、基板保持手段は、整列基板を保持する側の面に形成され、整列基板を保持したときに第1の溝と連続する第3の溝と、第3の溝と対向する方向から第3の溝に向けて押圧する押圧手段とをさらに備えるようにしてもよい。
【0014】
また、上記光ファイバアレイの製造装置において、基板保持手段は、整列基板上に配設される押さえ板を第1の溝の長手方向および1の面に対して垂直な方向から整列基板側に押圧する押さえ板押圧手段をさらに備えるようにしてもよい。
【0015】
また、上記光ファイバアレイの製造装置において、光ファイバ保持手段は、基板保持手段から移動可能であるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、整列基板上に形成された互いに平行な複数の溝の両端からはみ出すように溝毎に光ファイバを配置し、光ファイバの光軸と垂直な平面により、光ファイバの一端を所定量整列基板側に押し込むことにより、各光ファイバの端部が光軸と垂直な方向に揃った状態で整列基板側に押し込まれるので、一端が整列基板から所定の長さだけ突き出た光ファイバアレイを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
[光ファイバアレイ製造装置]
図1〜図3に示すように、本実施の形態に係る光ファイバアレイ製造装置1は、平面視略矩形の板の形状を有する基部2と、この基部2上面において基部2の長手方向の一端側に配設される整列ブロック3と、基部2上面の他端側に配設される突き当て部4とから構成される。このような光ファイバアレイ製造装置1は、特に指定しない場合は、例えば金属や樹脂など、所定の形状に形成容易な材料から構成される。
【0019】
(基部2)
基部2は、この上面の略中央部に上面側に突出した略直方体の形状を有する保持部20を備える。この保持部20の上面には、整列ブロック3側に設けられた溝部21と、突き当て部4側に設けられた光ファイバ保持部22と、溝部21と光ファイバ22の間に設けられた整列基板保持部23とが形成されている。
【0020】
溝部21は、基部2の短手方向の略中央部に、基部2の長手方向に沿い、かつ、互いに所定間隔離間した断面略V字状または略U字状の形状を有する複数の溝21aを備える。
【0021】
光ファイバ保持部22は、基部2の短手方向の略中央部に形成され、基部2の長手方向に沿い、かつ、互いに所定間隔離間した断面略V字状または略U字状の形状の複数の溝22aと、基部2の長手方向に平行な一方の縁部に一端が蝶着された光ファイバ保持アーム22bとを備える。この光ファイバ保持アーム22bは、図4に示すように、断面略コの字型の形状を有し、長手方向の一端が基部2の短手方向に回動可能に支持され、他端には摩擦力調節ネジ22cが設けられている。この摩擦力調節ネジ22cは、光ファイバ保持アーム22bを厚さ方向に貫通する貫通孔にフランジ等により固定されており、保持部20における光ファイバ保持アーム22bが蝶着された縁部と反対側の縁部近傍に形成されたネジ穴(図示せず)と蝶着可能となっている。この摩擦力調節ネジ22cにより光ファイバ保持アーム22bを保持部20に固定したときに溝22aと対向する位置には、板バネ22dを介して平面視略矩形の摩擦部材22eが設けられている。この摩擦部材22eは、例えば、テフロン(登録商標)など光ファイバと摩擦したときに適度な摩擦力を生じさせる材料から構成される。
【0022】
整列基板保持部23は、保持部20の上面から基部2側に掘り込まれた凹部23aと、この凹部23aの略中央部に設けられた複数の吸着穴23bと、基部2の長手方向に平行な一方の縁部に蝶着された整列基板保持アーム23cとを備える。凹部23aの光ファイバ保持部22側の端面23dおよび整列基板保持アーム23c側の端面23eは、後述する整列基板S1を凹部23a上に載置するときの位置決めの基準面となる。吸着穴23bは、真空ポンプ(図示せず)と接続されており、この真空ポンプにより負圧を発生させることにより、吸着穴23b上に載置された部材が固定される。整列基板保持アーム23cは、平面視略矩形の形状を有し、一端が基部2の短手方向に回動可能に支持され、他端には押圧力調節ネジ23fが設けられている。この押圧力調節ネジ23fは、整列基板保持アーム23cを厚さ方向に貫通する貫通孔にフランジ等により固定されており、保持部20における整列基板保持アーム23cが蝶着された縁部と反対側の縁部近傍に形成されたネジ穴(図示せず)と螺着可能となっている。
【0023】
ここで、溝部21に設けられた溝21aと、光ファイバ保持部22に設けられた溝22aとは、それぞれ1対1に対応して一直線上に形成されている。
【0024】
(整列ブロック3)
整列ブロック3は、全体として正方体や直方体の形状を有し、基部2の上面における保持部20と基部2の一端との間に配設される。整列ブロック3は、図5に示すように、基部2から取り外し可能となっている。このような整列ブロック3の上面には、基部2の長手方向において保持部20と近い順番に、第1ガイド部31と、光ファイバ押さえ部32と、第2ガイド部33と、溝部34とが設けられている。
【0025】
第1ガイド部31は、基部2の短手方向の略中央部に形成され、基部2の長手方向に沿い、かつ、互いに所定間隔離間した断面略矩形のガイド31aと、このガイド31aの底部に形成された断面略V字状または略U字状の形状を有する複数の溝31bとを備える。
【0026】
光ファイバ押さえ部32は、整列ブロック3の上面から整列ブロック3の下面側に掘り込まれた凹部32aと、この凹部32aの上面に形成された第1ガイド部31の溝31bと連続する溝32bと、基部2の長手方向に平行な一方の縁部に蝶着された光ファイバ押さえアーム32cとを備える。この光ファイバ押さえアーム32cは、図3,図5に示すように、断面略L字状の形状を有し、基部2の短手方向に回動可能に支持されている。
【0027】
第2ガイド部33は、基部2の短手方向の略中央部に形成され、基部2の長手方向に沿い、かつ、互いに所定間隔離間した断面略矩形のガイド33aと、このガイド31aの底部に形成された溝31bおよび光ファイバ押さえ部32の溝32bと連続する溝33bとを備える。
【0028】
溝部34は、整列ブロック3の上面から整列ブロック3の下面側に掘り込まれた凹部34aと、この凹部34aの上面に形成され、第1ガイド部31の溝31b、光ファイバ押さえ部32の溝32bおよび第2ガイド部33bの溝33bと連続する溝34bとを備える。
【0029】
このような整列ブロック3において、第1ガイド部31の溝31b、光ファイバ押さえ部32の溝32b、第2ガイド部33bの溝33bおよび溝部34の溝34bは、基部2の溝部21に設けられた溝21aおよび光ファイバ保持部22に設けられた溝22aとそれぞれ1対1に対応して同ピッチに形成されており、整列ブロック3を基部2上に固定すると、対応する溝は一直線状に連続することとなる。また、光ファイバ押さえ部32の凹部33aの上面および溝部34の凹部34aの上面は、整列ブロック3を基部2上に固定したとき、基部2の溝部21の上面および光ファイバ保持部22の上面と同一平面を形成する。
【0030】
(突き当て部4)
突き当て部4は、基部2の整列ブロック3が設けられた側と反対側の端部近傍に設けられた移動部41と、この移動部41と保持部20との間に設けられた当接部42とを備える。
【0031】
移動部41は、基部2の端部近傍において、基部2の上面から突出した支持部41aと、この支持部41aに支持されたマイクロメータ41bとを有する。このマイクロメータ41bは、移動端が保持部20と対向し、かつ、移動端の移動方向が基部2の長手方向と一致するように支持部41aに配設される。
【0032】
当接部42は、基部2上面の支持部41aと保持部20との間に設けられ基部2の長手方向に延在するレール42aと、断面略凸字状の形状の板の形状を有し、基部2に対して垂設されレール42aに沿って移動可能に配設された突き当て部材42bと、この突き当て部材42bと保持部20との間に配設されたバネなどの弾性部材42cとを備える。突き当て部材42bは、保持部20と対向する面が平面に形成されており、この平面が突き当て部材42bの移動方向、すなわち光ファイバFの光軸方向と垂直になるように配設される。
【0033】
[光ファイバアレイの製造方法]
次に、上述した光ファイバアレイ製造装置1による光ファイバアレイの製造方法について説明する。
【0034】
まず、図5に示すように、基部2から整列ブロック3を取り外す。これは、真空ポンプを停止し、吸着穴2bから供給される負圧を停止することにより行うことができる。このように整列ブロック3が基部2から取り外し可能とすることにより、以下に示すような整列ブロック3への光ファイバFの配置のための動作を容易に行うことができる。
【0035】
整列ブロック3を取り外すと、図6,図7に示すように、光ファイバ押さえアーム32cを整列ブロック3の上面から離れる方向へ押し上げ、第1ガイド部31のガイド31aおよび第2ガイド部33のガイド33aに沿って光ファイバFを整列ブロック3上に載置することにより、その光ファイバFを溝31b〜34b上に配置する。ここで、光ファイバFは、1つの心線を有する光ファイバが用いられる。このように溝31b〜34bに沿って光ファイバFを配置することにより、心線が1つの光ファイバFを個別に位置決めすることができる。また、ガイド31a,33aに沿って光ファイバFを整列ブロック3上に載置することにより、光ファイバFを溝31b〜34b上に正確に配置することができる。また、図10に示すように、ガイド31a,33aによって、光ファイバFが光軸に対して垂直方向に移動することを防ぐことができる。
【0036】
このとき、光ファイバFは、図6に示すように、整列ブロック3からはみ出るように、特に、第1ガイド部31から整列ブロック3の外部側に所定量はみ出るように、整列ブロック3上に載置される。このはみ出る長さ(以下、「突き出し長さ」と言う)は、保持部20の基部2の長手方向に沿った長さよりも例えば1〜2mm程度長くなるように設定される。この値は、例えば2〜3mmなど、ある程度のばらつきがあってもよいが、図8に示すような光ファイバFの突き出し長さを調整するジグ5により、その長さを調整するのが望ましい。このジグ5は、一端に整列ブロック3を載置し、整列ブロック3上に光ファイバFを配置するとき、光ファイバFをジグ5の他端にある突出部51に当接させることにより、光ファイバFの突き出し長さを調節することができる。これにより、光ファイバアレイ製造装置1において、光ファイバアレイを製造するのが容易となる。なお、所定の突き出し長さに設定したのと反対側の光ファイバは、例えば長く垂れ下がっているなど、任意の長さを有している。
【0037】
光ファイバFを整列ブロック3上に配置すると、図9に示すように、光ファイバ押さえアーム32cを押し下げる、すなわち、整列ブロック3の上面側に回動させて整列ブロック3の上面に当接させる。これにより、光ファイバFは、光ファイバ押さえ部32の溝32b上において、整列ブロック3と光ファイバ押さえアーム32cとにより狭持されるので、軸線方向および軸線方向に垂直な方向への移動が制限されることとなる。このため、振動や重力などの外力によって、光ファイバFが移動するのを防ぐことができる。
【0038】
整列ブロック3において上述したような作業が行われている間、基部2では、図10に示すように、整列基板保持アーム23cを押し上げて、整列基板保持部23の凹部23a上に整列基板S1を載置する。この整列基板S1は、平面視略矩形の板の形状を有し、主表面上に互い並行に形成された複数の溝S12が設けられている。この溝S12の形状、ピッチおよび数量は、溝21a,22a,31b〜34bと同等に形成されている。このような整列基板S1は、溝S12が形成された面と反対側の面を凹部23a上に対向させ、かつ、溝S12が延在する方向を溝21a,22aが延在する方向と一致させた状態で、凹部23a上に載置される。また、整列基板S1は、矢印a,bの方向に移動させ、その側面を位置合わせの基準面となる端面23d,23eに当接させる。これにより、溝S12は、溝21a,22aと一直線に連続することとなる。このような状態で真空ポンプを駆動させ、吸着穴23bから負圧を供給することにより、整列基板S1を凹部23a上に固定する。
【0039】
また、光ファイバ保持アーム22bを押し上げる、すなわち、光ファイバ保持アーム22bを回動させて摩擦力調節ネジ22cが設けられた側の端部を保持部20から離間する方向に移動させる。
【0040】
さらに、マイクロメータ41bの移動端を保持部20から離れる方向に移動させる。すると、突き当て部材42bは、弾性部材42cの弾性力により、矢印cの方向、すなわちレール42aに沿って移動部41側に移動し、保持部20から離間する。
【0041】
次に、図11に示すように、光ファイバFを保持した整列ブロック3を基部2上に載置し、真空ポンプを駆動させて吸着穴2bから負圧を供給することにより、整列ブロック3を基部2上に固定する。このとき、整列ブロック3は、位置合わせのため、矢印dの方向に移動させ、位置決めガイド2aおよび保持部20に当接させる。すると、溝22a,22b,31b〜34bおよび整列基板S1の溝S12が一直線に連続することとなる。したがって、整列ブロック3の第1ガイド31側からはみ出た光ファイバFを、溝22a,22b,S12上に配置することにより、光ファイバFが直線状に配設されることとなる。この状態において、光ファイバFの第1ガイド31側の端部は、保持部20から突き当て部4側にはみ出した状態となっている。
【0042】
整列ブロック3を固定すると、図12に示すように、光ファイバ保持アーム22bを押し下げ、摩擦力調節ネジ22cを保持部20に螺着させる。すると、摩擦部材22eが光ファイバFに圧接されるので、光ファイバFは、摩擦部材22eにより溝22a側に押圧され、摩擦部材22eと溝22aとにより狭持された状態となる。これにより、重力や振動などの外力が生じた場合であっても、光ファイバFと溝22aおよび摩擦部材22eとの間に生じる摩擦により、光ファイバが移動するのを防ぐことができる。また、突き当て部4側にはみ出した光ファイバFがたわむのを防ぐことができる。なお、この段階において、摩擦力調節ネジ22cは、突き当て部材42bによる圧力のみによって光ファイバFが光軸方向に移動可能な状態にゆるめておくことが望ましい。
【0043】
摩擦力調節ネジ22cを押し下げると、図13に示すように、押さえ板S2を整列基板S1上に載置し、整列基板保持アーム23cを押し下げ、押圧力調節ネジ23fを保持部20に螺着させる。押さえ板S2は、平面視略矩形の板の形状を有し、主表面上に互い並行に形成された複数の溝S22が設けられている。この溝S22の形状、ピッチおよび数量は、整列基板S1の溝S12と同等に形成されている。このような押さえ板S2は、溝S22が形成された面を整列基板S1と対向させ、かつ、溝S22を整列基板S1上の光ファイバFに嵌め込むように、整列基板S1上に載置される。したがって、光ファイバFは、整列基板S1と押さえ板S2とにより狭持された状態となる。また、押圧力調節ネジ23fを保持部20に螺着させることにより、押さえ板S2は、整列基板保持アーム23cにより整列基板S1側に押圧される。これにより、重力や振動などの外力が生じた場合であっても、光ファイバFと溝S12および溝S22との間に生じる摩擦により、光ファイバが移動するのを防ぐことができる。なお、この段階において、押圧力調節ネジ23fは、突き当て部材42bによる圧力のみによって光ファイバFが光軸方向に移動可能な状態にゆるめておくことが望ましい。
【0044】
整列基板保持アーム23cを押し下げると、図14に示すように、マイクロメータ41bを回して、その移動端を矢印eの方向、すなわち保持部20側に移動させる。すると、移動端の移動に伴って突き当て部材42bも保持部20側に移動する。このようにして突き当て部材42bを光ファイバFの端部に当接させる。このとき、突き当て部材42bによる圧力によって光ファイバFが光軸方向に移動可能な程度に摩擦力調節ネジ22cおよび押圧力調節ネジ23fがゆるめられていると、突き当て部材42bの移動に伴って、光ファイバFが突き当て部材42bの移動方向に移動する。光ファイバFの端部に当接する突き当て部材42bの平面は、光ファイバFの光軸方向に垂直となっているので、突き当て部材42bを保持部20側に移動させると、各光ファイバFの端部は、光軸方向に垂直な方向において、他の光ファイバFの端部の位置と同じ位置に揃った状態で移動することとなる。また、光ファイバFは、摩擦部材22eと溝22aとにより狭持した状態で保持されているので、突き当て部4側にはみ出した部分がたわむのを防ぐことができので、移動量を正確に制御することができる。
【0045】
マイクロメータ41bは、突き当て部材42bが保持部20に当接するまで回される。突き当て部材42bが保持部20に当接すると、各光ファイバFの整列基板S1から突き当て部4側に突き出した長さは、光ファイバ保持部22の溝22aの長さとなる。この長さが、光ファイバアレイ製造装置1により製造される光ファイバアレイにおける光ファイバFの突き出し長さとなる。したがって、光ファイバアレイ製造装置1において、溝22aの長さを所定の長さに設定することにより、所定の突き出し長さを有する光ファイバアレイを製造できる。
【0046】
なお、本実施の形態では、マイクロメータ41bにより突き当て部材42bを移動させるので、マイクロメータ41bの目盛に基づいて突き当て部材42bの移動を制御することにより、所定の突き出し長さを得ることができる。このとき、各光ファイバFの突き当て部材42b側の端部は、光軸方向に垂直な方向において同じ位置に揃った状態となる。
【0047】
この後、摩擦力調節ネジ22cおよび押圧力調節ネジ23fを調整し、後述する接着剤塗布などの作業によって、所定の突き出し長さに揃った光ファイバFが動いてしまわないよう、光ファイバFの固定力を強めておくことが望ましい。また、接着剤を硬化させるときに接着剤を加熱する場合、その熱による光ファイバアレイ製造装置1の各部材の熱膨張の影響を排除するため、光ファイバFの固定力を強めた後に、マイクロメータ41bを回して突き当て部材42bを後退させ、光ファイバFの端部から突き当て部材42bを離間させるようにしてもよい。
【0048】
光ファイバFの突き出し長さが揃えられると、整列基板S1に接着剤を塗布し、硬化させて、光ファイバFと、整列基板S1と、押さえ板S2とを固定する。これにより、光ファイバアレイSが完成する。
【0049】
接着剤の塗布は、図15に示すように、本実施の形態では整列基板S1の方が押さえ板S2よりも大きく形成されているので、図15の矢印dで示すように、整列基板S1上に接着剤を滴下する。すると、毛細管現象により、接着剤は、整列基板S1と押さえ板S2との間に入りこむ。なお、接着剤の塗布は、このような方法に限定されない。例えば、予め接着剤を整列基板S1に塗布した後に光ファイバFを整列基板S1上に載置するようにしてもよい。また、押さえ板S2にこの上面と下面とを貫通する貫通孔を形成しておき、この貫通孔から接着剤を流し込むようにしてもよい。
【0050】
光ファイバアレイSが完成すると、図16に示すように、突き当て部材42bを後退させ、光ファイバ保持アーム22b、整列基板保持アーム23cおよび光ファイバ押さえアーム32cを押し上げ、完成した光ファイバアレイSを光ファイバアレイ製造装置1から取り出す。このようにして製造された光ファイバアレイSは、図17,図18に示すように、各光ファイバFが整列基板S1および押さえ板S2により狭持された状態で固定され、その一端側が所定の突き出し長さで整列基板S1および押さえ板S2からはみ出した構造となる。
【0051】
このように、本実施の形態によれば、整列基板S1上に形成された互いに平行な複数の溝S12の両端からはみ出すように溝S12毎に光ファイバを配置し、光ファイバFの光軸と垂直な平面を有するにより、光ファイバFの一端を所定量整列基板側に押し込むことにより、各光ファイバの端部が光軸と垂直な方向に揃った状態で整列基板側に押し込まれるので、一端が整列基板から所定の長さだけ突き出た光ファイバアレイを製造することができる。結果として、光ファイバの突き出し量を測定することなく、またそれぞれの光ファイバを個別に把持して前後位置を調整することなく、光ファイバアレイを製造することができるとなる。また、突き当て部材42bを保持部20に当接させるだけで、光ファイバFの突き出し長さを所定の長さに正確に揃えることが可能となる。したがって、本実施の形態によれば、所定の突き出し長さを有する光ファイバアレイを精度よ容易に製造することができる。
【0052】
なお、整列基板保持アーム23cにおいて、凹部23aと同様の基準面および吸着穴を設け、その基準面に押さえ板S2を突き当て、かつ、吸着穴から負圧を供給することにより、押さえ板S2を固定するようにしてもよい。これにより、整列基板保持アーム23cを押し下げるだけで、押さえ板S2を整列基板S1上に載置することができる。
【0053】
また、本実施の形態では、略U字状また断面略V字状の断面形状を有する溝22a,22b,31b〜34bにより光ファイバFを配置するようにしたが、例えば、複数のピンにより櫛歯状の列を形成し、2列のピンの間に光ファイバFを保持するようにしてもよい。
【0054】
また、本実施の形態では、マイクロメータ41bにより突き当て部材42bを移動させようにしたが、例えば、ネジやボールネジによりう回転を微小かつ正確な水平移動量に変換する機構や、レバー比を大きく採った梃子の原理を用いたリンクによりレバーの大きな移動を突き当て部材42bの微小な移動に変換する機構などを用いるようにしてもよい。これらの移動機構およびマイクロメータ41bは、手動のみならず、モータ等により駆動させるようにしてもよい。
【0055】
また、本実施の形態では、摩擦力調節ネジ22cまたは押圧力調節ネジ23fを保持部20に形成されたネジ穴に螺着させることにより、光ファイバ保持アーム22bまたは整列基板保持アーム23cを保持部20側に押圧するようにしたが、光ファイバ保持アーム22bまたは整列基板保持アーム23cを保持部20側に押圧させる方法はこの方法に限定されない。例えば、金属からなる摩擦力調節ネジ22cまたは押圧力調節ネジ23fを光ファイバ保持アーム22bまたは整列基板保持アーム23cに螺着し、上記ネジ穴に対応する位置に磁石を配設するようにしてもよい。この場合、摩擦力調節ネジ22cまたは押圧力調節ネジ23fの保持部20側の端部は、磁石に吸着された状態で固定されるので、摩擦力調節ネジ22cまたは押圧力調節ネジ23fを回転させることにより、光ファイバ保持アーム22bまたは整列基板保持アーム23cをネジの軸線方向に移動させることができる。このようにしても、摩擦力調節ネジ22cまたは押圧力調節ネジ23fの回転量で、光ファイバ保持アーム22bまたは整列基板保持アーム23cにより発生させることができる押圧力を調節することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、光ファイバアレイの製造装置のみならず、例えば複数のケーブルを同じ突き出し長さに揃える装置などに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る光ファイバアレイ製造装置の斜視図である。
【図2】本発明に係る光ファイバアレイ製造装置の平面図である。
【図3】本発明に係る光ファイバアレイ製造装置の各アームを押し上げたときの斜視図である。
【図4】光ファイバ保持部22の要部構成を示す側面図である。
【図5】整列ブロック3を基部2から取り外した様子を示す斜視図である。
【図6】整列ブロック3の構成を示す斜視図である。
【図7】整列ブロック3に光ファイバFを配置した状態を示す側面図である。
【図8】ジグ5の構成を示す側面図である。
【図9】整列ブロック3の光ファイバ押さえアーム32cを押し下げた状態を示す斜視図である。
【図10】整列基板保持部23上に整列基板S1を配置した状態を示す斜視図である。
【図11】整列ブロック3を基部2に固定した状態を示す斜視図である。
【図12】光ファイバ保持アーム22bを固定した状態を示す斜視図である。
【図13】押さえ板S2を載置した状態を示す斜視図である。
【図14】突き当て部材42bを移動させる状態を示す要部側面図である。
【図15】接着剤の塗布動作を説明するための要部側面図である。
【図16】光ファイバアレイを取り出す状態を示す斜視図である。
【図17】光ファイバアレイの構成を示す斜視図である。
【図18】光ファイバアレイの構成を示す側面図である。
【図19】従来の光ファイバアレイの構成を示す斜視図である。
【図20】従来の光ファイバアレイの構成を示す側面図である。
【図21】従来の光ファイバの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
1…光ファイバアレイ製造装置、2…基部、2a…位置決めガイド、3…整列ブロック、4…突き当て部、5…ジグ、20…保持部、21…溝部、21a…溝、22…光ファイバ保持部、22a…溝、22b…光ファイバ保持アーム、22c…摩擦力調節ネジ、22d…板バネ、22e…摩擦部材、23…整列基板保持部、23a…凹部、23b…吸着穴、23c…整列基板保持アーム、23d,23e…端面、23f…押圧力調節ネジ、31…第1ガイド部、31a…ガイド、31b…溝、32…光ファイバ押さえ部、32a…凹部、32b…溝、32c…光ファイバ押さえアーム、33…第2ガイド部、33a…ガイド、33b…溝、34…溝部、34a…凹部、34b…溝、41…移動部、41a…支持部、41b…マイクロメータ、42a…レール、42b…突き当て部材、42c…弾性部材、S…光ファイバアレイ、S1…整列基板、S2…押さえ板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整列基板の1の面に形成された互いに平行な複数の溝の両端からはみ出すように、前記溝毎に光ファイバを配置する第1のステップと、
前記光ファイバの光軸に対して垂直な平面により、前記光ファイバの一端を前記光軸に沿った方向に所定量前記整列基板側に押し込む第2のステップと、
前記光ファイバを前記整列基板に固定する第3のステップと
を備えることを特徴とする光ファイバアレイの製造方法。
【請求項2】
前記第3のステップは、
前記整列基板の前記溝が形成された面に押さえ板を載置するステップと、
前記押さえ板を前記整列基板に接着固定するステップと
を備えることを特徴とする請求項1記載の光ファイバアレイの製造方法。
【請求項3】
前記第2ステップは、
前記光ファイバを前記光軸および前記1の面に対して垂直な方向から前記整列基板側に押圧するステップ
をさらに備えることを特徴とする請求項2記載の光ファイバアレイの製造方法。
【請求項4】
1の面に互いに平行な複数の第1の溝が形成された整列基板を保持する基板保持手段と、
この基板保持手段から前記第1の溝の長手方向に所定の距離離間し、前記長手方向に対して垂直な平面を有し、この平面を前記長手方向に沿って前記整列基板側に移動可能な突き当て手段と
を備えることを特徴とする光ファイバアレイの製造装置。
【請求項5】
前記基板保持手段と隣接し、前記第1の溝に対応する第2の溝を有する光ファイバ保持手段
をさらに備えることを特徴とする請求項4記載の光ファイバアレイの製造装置。
【請求項6】
前記基板保持手段は、
前記整列基板を保持する側の面に形成され、前記整列基板を保持したときに前記第1の溝と連続する第3の溝と、
前記保持する側の面と対向する方向から前記第3の溝に向けて押圧する押圧手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項4または5記載の光ファイバアレイの製造装置。
【請求項7】
前記基板保持手段は、
前記整列基板上に配設される押さえ板を前記第1の溝の長手方向および前記1の面に対して垂直な方向から前記整列基板側に押圧する押さえ板押圧手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項4乃至6の何れか1項に記載の光ファイバアレイの製造装置。
【請求項8】
前記光ファイバ保持手段は、前記基板保持手段から移動可能である
ことを特徴とする請求項4乃至7の何れか1項に記載の光ファイバアレイの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−316474(P2007−316474A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147901(P2006−147901)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】