説明

光ファイバケーブル及び光ファイバ心線のカラーマーキング着色方法

【課題】光ファイバ心線の被覆層の表面に設けたカラーマーキングの表面上に特に保護層を設けなくても、カラーマーキングが摩滅や剥離することがないようにする。
【解決手段】光ファイバ心線の被覆層の表面に染料系インクからなるカラーマーキングを塗布して、所定時間加熱することによって、染料系インクを被覆層の内部へ浸透させ、被覆層の表面に定着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ心線を伝送媒体として使用される光ファイバケーブルと、光ファイバ心線の外周にカラーマーキングを着色する光ファイバ心線のカラーマーキング及び着色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信分野では、伝送容量の増大に伴い、光ファイバ心線の多心化が進んでいる。
このため、多心の光ファイバ心線をより明確に識別することができるようにするための、多種の識別機能が要求されている。
従来の一般的な光ファイバ心線の識別機能は、光ファイバ心線の被覆層の表面に着色層を形成したものであったが、これでは、実用上識別可能な色数は12〜16種類が限界であった。
【0003】
そこで、従来、光ファイバ心線の多心化に対応するために、光ファイバ心線の被覆層の表面着色層を形成した後に、その着色層の上に、インクを光ファイバ心線の長手方向へ所定間隔で塗布したリングマークやドット等のカラーマーキング(識別層)を形成することにより、光ファイバ心線の多心化に対応した識別機能の増大が図られている。
【0004】
しかし、従来のリングマークやドット等のカラーマーキングは、他物との接触摩擦やコンパウンド等のケーブル内部の充填剤等との接触によって摩滅や剥離し易く、カラーマーキングの識別機能が失われやすいものであった。
【0005】
そこで、特許文献1に開示されているファイバコアとクラッドを有する光ファイバ心線11は、図3に示すように、光ファイバ心線11を保護するための一つ又は複数の合成樹脂被膜であるコーティング12を備え、このコーティング12には、互いに間隔をおいて設けられたカラーリング13の形をした、IRで硬化又はUVで硬化するラッカーからなっているカラーマーキングが直接設けられている。カラーリング13は厚さ3〜4μm程度コーティング12から突出しているので、摩耗を考慮し、透明な又は半透明なポリイミド又はポリウレタンをベースとした、UVで硬化するラッカー他の層14が設けられている。この層はカラーマーキングを有するファイバをその全長にわたって被覆されている。そして、IRで硬化するラッカーからなる例えば黒色又は青色の単一リング又は二重リング13を、黄色、赤色、青色又は緑色を着色した、好ましくはUVで硬化する、粘性の高い他のラッカー層14によって被覆し、カラーマーキング全体の保護、及び識別機能が達成される。
【0006】
【特許文献1】特開平9−506980号公報
【特許文献2】特開2004−77537号公報
【特許文献3】特開2004−77538号公報
【特許文献4】特開2004−77539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は、光ファイバケーブルにおける光ファイバ心線の被覆層の表面に設けたカラーマーキングの表面上に特に保護層を設けなくても、カラーマーキングが摩滅や剥離すること等がないようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光ファイバケーブルは、カラーマーキングの表面上に特に透明な保護層を設けなくても、カラーマーキングが摩滅したり、剥離することがないようにすることを目的として、光ファイバ心線の被覆層の表面に染料系インクで構成されたカラーマーキングを塗布したものである。
【0009】
また、本発明の光ファイバ心線のカラーマーキング着色方法は、光ファイバ心線の被覆層の表面に染料系インクからなるカラーマーキングを塗布して、前記カラーマーキングを所定時間加熱することによって該染料系インクを前記被覆層内に浸透させ、該カラーマーキングを前記被覆層の表面に定着する工程とを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光ファイバケーブルは、光ファイバ心線の被覆層の表面に染料インクを塗布して被覆層内に浸透させたカラーマーキングを形成したものであるから、カラーマーキングが被覆層の表面に強固に固定され、カラーマーキングが他物に接触されたり、コンパウンド等の充填材に浸漬されても、そのカラーマーキングが剥離することがない。従って、カラーマーキングの表面に更に透明な保護層を形成する必要がなく、製造上のコストダウンを図ることができる。
【0011】
本発明の光ファイバケーブルのカラーマーキング着色方法は、光ファイバ心線の被覆層の表面に染料系インクからなるカラーマーキングを塗布して、その塗布されたカラーマーキングを所定時間加熱することによって被覆層内に浸透させ、カラーマーキングを被覆層の表面に定着させたので、カラーマーキングが被覆層の表面に強固に固定され、カラーマーキングが他物に接触されたり、コンパウンド等の充填材に浸漬されても、そのカラーマーキングが剥離することがない。従って、カラーマーキングの表面に更に透明な保護層を形成する必要がなく、製造上のコストダウンを図ることができる。
【0012】
本発明の光ファイバケーブルのカラーマーキング着色方法は、染料系インクからなるカラーマーキングを光ファイバ心線の被覆層の表面に塗布してそのカラーマーキングを所定時間加熱するので被覆層内に浸透し、被覆層に塗布された染料系インクからなるカラーマーキングを短時間で効率良く被覆層の表面に定着させることができ、光ファイバケーブルの製造効率の向上を図ることができる。
本発明の光ファイバケーブルのカラーマーキング着色方法においては、光ファイバ心線の被覆層の表面に塗布されたカラーマーキングを熱効率が高い紫外線を照射することにより、所定時間加熱保持することが可能になり、連続して安定的に加熱保持して、連続してカラーマーキングすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を適用した光ファイバ心線1の被覆層の表面へのカラーマーキング5の形成方法の実施例を図面を参照して説明する。
【0014】
本発明の光ファイバ心線は、光ファイバ心線1と、一次被覆2と二次被覆3とからなる被覆層と、着色層4と、カラーマーキング5とから構成されている。
光ファイバ心線1の着色層の表面へのカラーマーキング5の第1の形成方法を説明する。
第1の形成方法は、染料系インクによってカラーマーキング5をリングマークやドット等によって着色層4の表面に塗布した後、恒温槽(図示せず)に入れて85度C前後の温度で所定時間加熱保持する方法である。
このカラーマーキング5の第1の形成方法においては、光ファイバ心線1が恒温槽内で所定時間加熱保持される間に、着色層4の表面に塗布されたカラーマーキング5の染料系インクが着色層4の内部に浸透して定着された。
【0015】
そして、このカラーマーキング5された光ファイバ心線1を、一日毎にアルコールで拭き取っても、カラーマーキング5が着色層4の表面から剥離されないことが確認された。
なお、同様のカラーマーキング5の塗布方法を顔料系インクで実施したところ、アルコールで拭き取ると、カラーマーキング5の剥離現象が見られた。
【0016】
光ファイバ心線1の着色層4の表面へのカラーマーキング5の第2の形成方法は、染料系インクによってカラーマーキング5をリングマークやドット等によって着色層4の表面に塗布した後、UV(紫外線)光を照射する方法である。
【0017】
この第2の形成方法において、線速200〜600m/分で600WのUV光を照射した。
そして、このカラーマーキング5の第2の形成方法で形成されたカラーマーキング5は、線速200m/分の線速度でUV光を連続照射した場合、その後アルコール拭きしても、カラーマーキング5の剥離は見られず、第1の形成方法で85度Cで24時間加熱保持したものと同等の効果を有することを確認することができた。
【0018】
これにより、光ファイバ心線1の着色層4の表面にカラーマーキング5を連続して塗布しながら、その塗布されたカラーマーキング5を連続して安定的に加熱保持してカラーマーキング5を連続して生成することが可能となり、製造効率が向上する。
また、製造後は、0.02〜0.03dB/km程度のロスアップは発生するものの、経時に伴ってロスは緩和されており、カラーマーキングにより、伝送特性に影響を与えるようにロスは発生しない。
【0019】
なお、このカラーマーキング5の第1及び第2形成方法は、光ファイバ心線を伝送媒体とする各種用途、構造の光ファイバケーブルに適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の光ファイバ心線の断面図。
【図2】本発明の光ファイバ心線の側面図。
【図3】従来例の光ファイバ心線の斜視図。
【符号の説明】
【0021】
1 光ファイバ心線
1a コア
1b クラッド
2 一次被覆層
3 二次被覆層
4 着色層
5 カラーマーキング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線の被覆層の表面に染料系インクを塗布することにより、該染料系インクが前記被覆層内に浸透されて形成されたカラーマーキングを備えたこと
を特徴とする光ファイバ心線。
【請求項2】
前記染料系インクからなるカラーマーキングが塗布された請求項1記載の光ファイバ心線が単心ないし複数心内蔵されていること
を特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項3】
光ファイバ心線の被覆層の表面に染料系インクからなるカラーマーキングを塗布して、前記カラーマーキングを所定時間加熱することによって、該染料系インクが前記被覆層内に浸透され、前記被覆層の表面に定着されること
を特徴とする光ファイバ心線のカラーマーキング着色方法。
【請求項4】
前記光ファイバ心線の被覆層の表面に塗布された、前記染料系インクからなるカラーマーキングが紫外線照射によって所定時間加熱されることによって、該被覆層内に浸透され前記被覆層の表面に定着されること
を特徴とする請求項3に記載の光ファイバ心線のカラーマーキング着色方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−227285(P2006−227285A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40697(P2005−40697)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(303040585)株式会社オーシーシー (47)
【Fターム(参考)】