説明

光ファイバテープ心線の製造方法及びその製造装置

【課題】間欠的に光ファイバの間に接着部と分離部を設けた光ファイバテープ心線を製造する際に、分離部を確実に、高精度に形成する。
【解決手段】コーティングダイス7の出口面7Aに設けた複数の各光ファイバ挿通穴9に光ファイバ3を挿通せしめてUV硬化樹脂を供給する際に、隣り合う光ファイバ挿通穴9の間にシャッタ11を出し入れすることにより、前記シャッタ11で光ファイバ3の間のUV硬化樹脂の堰き止めと吐出を交互に連続して行う。ダイス出口面7Aから、光ファイバ3同士を集線して接触する箇所までの間で、UV硬化樹脂表面が硬化するのに必要なUV照射量を照射することで、UV硬化樹脂の堰き止め時で光ファイバ3同士の間を分離させた分離部を形成し、UV硬化樹脂の吐出時で光ファイバ3同士の間を接着させた接着部を形成して光ファイバテープ心線を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバテープ心線の製造方法及び及びその製造装置に関し、特に、隣り合う光ファイバの間を間欠的に固定した間欠固定の光ファイバテープ心線の製造方法及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光ファイバテープ心線の製造方法としては、例えば特許文献1〜特許文献3に開示されたものがある。
【0003】
特許文献1の光ファイバテープ心線の製造方法は、複数の光ファイバの外周に硬化前のUV硬化樹脂を供給すると共に複数の光ファイバを2つの集合体として別々に整列した状態で送り出す樹脂供給・ファイバ整列工程と、この樹脂供給・ファイバ整列工程より送り出された複数の光ファイバの内、2つの集合体の隣接箇所に紫外線を照射し、2つの集合体の互いの隣接箇所のUV硬化樹脂のみを予備的に硬化させる予備硬化工程と、この予備硬化工程の後に、複数の光ファイバの全体に紫外線を照射し、複数の光ファイバの全域のUV硬化樹脂を硬化させる本硬化工程と、本硬化工程の後に、2つの集合体同士の間で硬化したUV硬化樹脂に開口を形成する切欠形成工程とから構成されている。
【0004】
2つの集合体同士の間に供給されたUV硬化樹脂は、本硬化工程前に予備硬化工程で予め硬化されるため、その箇所がくびれ形状の樹脂部に形成される。切欠形成手段によってくびれ形状の樹脂部に長さ方向に間欠的に開口部を形成することにより、隣り合う光ファイバの間に接着部と分離部を設けた間欠固定の光ファイバテープ心線を製造する。
【0005】
特許文献2に開示された製造方法は、複数の光ファイバを整列させるファイバ整列工程と、ファイバ整列工程によって集線された複数の光ファイバの所望位置に例えばUV硬化樹脂をノズルより吐出して供給する樹脂供給工程と、この樹脂供給工程の後に、複数の光ファイバに吐出した樹脂に例えば紫外線を照射して硬化させる樹脂硬化工程とから構成されている。
【0006】
樹脂供給工程によって、隣り合う光ファイバの間で接着したい箇所に樹脂を吐出して供給することにより、隣り合う光ファイバの間に接着部と分離部を設けた間欠固定の光ファイバテープ心線を製造する。
【0007】
特許文献3に開示された製造方法は、複数の光ファイバを整列させるファイバ整列工程と、ファイバ整列工程によって集線された複数の光ファイバの全域に対しUV硬化樹脂を供給する樹脂供給工程と、樹脂供給工程の後に、複数の光ファイバの所望の領域に対し紫外線を照射してUV硬化樹脂を硬化させる樹脂硬化工程と、紫外線を照射せず硬化していないUV硬化樹脂を溶剤にて除去する樹脂除去工程とから構成されている。
【0008】
樹脂硬化工程にて間欠的にUV照射することにより、隣り合う光ファイバの間にUV硬化樹脂の硬化箇所とUV硬化樹脂の未硬化箇所を形成し、その後、UV硬化樹脂の未硬化箇所を溶剤で除去することにより、隣り合う光ファイバの間に接着部と分離部を設けた間欠固定の光ファイバテープ心線を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2573632号公報
【特許文献2】特開2003−241041号公報
【特許文献3】特開昭64−59308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の特許文献1の製造方法では、切欠形成工程にあって、移動する光ファイバの間のくびれ形状の樹脂部をねらってカッター等で開口部を形成する必要がある。隣り合う光ファイバの間をねらってカッターを入れることは極めて難しいため、隣り合う光ファイバの間に確実に、且つ、高精度に分離部を形成することは困難である。
【0011】
又、この製造方法は、UV硬化樹脂の硬化を予備硬化工程と本硬化工程の2回に分けて行う必要がある。しかも、予備硬化工程は複数の光ファイバの一部領域のUV硬化樹脂のみを硬化させる必要があるため、精密性が要求される。以上より、製造工程が複雑である。
【0012】
従来の特許文献2の製造方法では、整列させた複数の光ファイバの間を狙って少量のUV硬化樹脂を高速で吐出させる必要性があるが、それには極めて高度な技術が必要である。又、樹脂供給装置を光ファイバの長手方向に供給できる装置とすることにより、高速製造ができることが記載されている。しかし、実際には、移動する光ファイバには線ぶれ等が発生し、隣り合う光ファイバの間を正確に狙って吐出することは極めて難しい。以上より、隣り合う光ファイバの間に確実に、且つ、高精度に分離部を形成することは困難である。
【0013】
従来の特許文献3の製造方法では、光ファイバに一旦供給した樹脂を除去する樹脂除去工程が必要があるため、製造工程が複雑である。
【0014】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、製造工程を単純化でき、しかも、隣り合う光ファイバの間の分離部と接着部を確実に、且つ、高精度に形成できる光ファイバテープ心線の製造方法及びその製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明の光ファイバテープ心線の製造方法は、複数本の光ファイバをこの光ファイバの長さ方向に対して平面で直交した方向のX方向に並列して光ファイバテープ心線を製造する光ファイバテープ心線の製造方法であって、コーティングダイスの出口面に開口した光ファイバ挿通穴より複数本の前記光ファイバを整列させた状態で送り出し、送り出す複数の前記光ファイバに未硬化の樹脂を供給するときに、隣り合う前記光ファイバの間で堰き止め部材を移動することにより、前記堰き止め部材で隣り合う前記光ファイバの間の樹脂の堰き止めと吐出を交互に連続して行うファイバ整列・樹脂供給工程と、前記コーティングダイスの出口面から前記光ファイバ同士が並列するように集線されて接触する箇所までの間で、前記樹脂が硬化するに必要な樹脂硬化エネルギーを照射する樹脂硬化工程とを備え、前記樹脂の堰き止め時で前記光ファイバ同士の間を分離させた分離部を形成し、且つ、前記樹脂の吐出時で前記光ファイバ同士の間を接着させた接着部を形成して光ファイバテープ心線を製造することを特徴とする。
【0016】
前記堰き止め部材は、シャッタであり、前記シャッタが隣り合う前記光ファイバの間に介在することにより樹脂を堰き止め、前記シャッタが隣り合う前記光ファイバの間の位置より外れることにより樹脂の吐出を行っても良い。
【0017】
前記堰き止め部材は、切欠部を有する円盤であり、前記円盤が回転し、前記円盤の切欠部以外の箇所が隣り合う前記光ファイバの間に介在することにより樹脂を堰き止め、前記円盤の前記切欠部が隣り合う前記光ファイバの間に位置することにより樹脂の吐出を行っても良い。
【0018】
樹脂硬化エネルギーの照射は、前記光ファイバの長さ方向のY方向において複数箇所で行われることが好ましい。前記コーティングダイスの出口面において複数の前記光ファイバ挿通穴のうちの互いに隣り合う前記光ファイバ挿通穴の中心間の距離が、前記X方向で所定の光ファイバピッチとほぼ同じ距離に配置され、且つ、前記X方向に直交するZ方向で予め設定した距離だけずれているようにしても良い。前記堰き止め部材に付着した未硬化の樹脂を除去することが好ましい。前記堰き止め部材に付着した樹脂の除去は、吸引によって行うことが好ましい。前記堰き止め部材に付着した樹脂の除去は、掻き取りによって行うことが好ましい。前記ブラシに付着した樹脂の除去してブラシ清掃を行うことが好ましい。
【0019】
この発明の光ファイバテープ心線の製造装置は、複数本の光ファイバをこの光ファイバの長さ方向に対して平面で直交した方向のX方向に並列して光ファイバテープ心線を製造する光ファイバテープ心線の製造装置であって、出口面に開口した複数の光ファイバ挿通穴より複数本の前記光ファイバを送り出し、送り出す複数の前記光ファイバに未硬化の樹脂を供給すると共に、隣り合う前記光ファイバの間で堰き止め部材を移動することにより、前記堰き止め部材で隣り合う前記光ファイバの間の樹脂の堰き止めと吐出を交互に連続して行うことができるコーティングダイスと、前記コーティングダイスの出口面から、前記光ファイバ同士が並列するように集線されて接触する箇所までの間で、前記樹脂が硬化するに必要な樹脂硬化エネルギーを照射する樹脂硬化エネルギー照射装置とを備えたことを特徴とする。
【0020】
前記堰き止め部材は、シャッタであり、前記シャッタが隣り合う前記光ファイバの間に位置する位置では樹脂を堰き止め、前記シャッタが隣り合う前記光ファイバの間より外れる位置では樹脂の吐出を行っても良い。
【0021】
前記堰き止め部材は、切欠部を有する円盤であり、前記円盤が回転し、前記円盤の切欠部以外の箇所が隣り合う前記光ファイバの間に位置する回転位置では樹脂を堰き止め、前記円盤の前記切欠部が隣り合う前記光ファイバの間に位置する回転位置では樹脂の吐出を行っても良い。
【0022】
前記樹脂硬化エネルギー照射装置は、前記光ファイバの長さ方向のY方向において複数箇所に配置されていることが好ましい。
【0023】
前記コーティングダイスの出口面において複数の前記光ファイバ挿通穴のうちの互いに隣り合う前記光ファイバ挿通穴の中心間の距離が、前記X方向で所定の光ファイバピッチとほぼ同じ距離に配置され、且つ、前記X方向に直交するZ方向で予め設定した距離だけずれていても良い。
【0024】
前記堰き止め部材に付着した未硬化の樹脂を除去する樹脂除去手段を設けることが好ましい。
【0025】
前記樹脂除去手段は、吸引装置であっても良い。前記樹脂除去手段は、掻き取り部材であっても良い。前記掻き取り部材に付着した樹脂を除去する清掃手段を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の光ファイバテープ心線の製造方法及びその製造装置によれば、隣り合う光ファイバの間に未硬化の樹脂を供給する際に、その樹脂の供給自体を堰き止め部材によって制御して樹脂の吐出と堰き止めを行うので、従来例のように予備硬化及び樹脂部の切欠作業を行う必要がないと共に光ファイバに一旦供給した樹脂を除去する必要もないため、製造工程を単純化できる。
【0027】
また、隣り合う光ファイバの間に未硬化の樹脂を供給する際に、その樹脂の供給自体を堰き止め部材によって制御し、堰き止め部材による樹脂の堰き止め時で光ファイバ同士の間を分離させた分離部を形成し、堰き止め部材による樹脂の吐出時で光ファイバ同士の間を接着させた接着部を形成するため、隣り合う光ファイバの間の分離部と接着部を確実に、且つ、高精度に形成できる。これにより、光ファイバテープ心線の細径化、特性改善、後分岐性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の第1の実施の形態の光ファイバテープ心線の製造装置の概略的な斜視図である。
【図2】図1のコーティングダイスを部分的に拡大した斜視図である。
【図3】図1の変形例に係るシャッタの部分的な正面図である。
【図4】光ファイバテープ心線の平面的な斜視図である。
【図5】(A)は図4のV−V線の接着部を示す断面図、(B),(C)はそれぞれ変形例に係る接着部を示す断面図である。
【図6】(A)〜(C)は他の光ファイバテープ心線の斜視図である。
【図7】(A)〜(C)は他の光ファイバテープ心線の斜視図である。
【図8】この発明の第2の実施の形態の光ファイバテープ心線の製造装置のコーティングダイスを部分的に拡大した斜視図である。
【図9】図8の製造装置で製造した光ファイバテープ心線の一部の断面図である。
【図10】図8の製造装置のコーティングダイスの比較例を示す斜視図である。
【図11】図10の製造装置で製造した光ファイバテープ心線の一部の断面図である。
【図12】この発明の第3の実施の形態の光ファイバテープ心線の製造装置のコーティングダイスを部分的に拡大した斜視図である。
【図13】図12の変形例に係るコーティングダイスの斜視図である。
【図14】図12の他の変形例に係るコーティングダイスの斜視図である。
【図15】この発明の第4の実施の形態の光ファイバテープ心線の製造装置の概略的な斜視図である。
【図16】この発明の第5の実施の形態の光ファイバテープ心線の製造装置の概略的な斜視図である。
【図17】図16の製造装置のコーティングダイス及び樹脂除去装置の正面図である。
【図18】図16の製造装置のコーティングダイス及び樹脂除去装置の側面図である。
【図19】(A)、(B)はそれぞれ位相の異なる円盤の正面図である。
【図20】変形例に係る円盤の正面図である。
【図21】図16の製造装置で製造した光ファイバテープ心線の平面図である。
【図22】(A)、(B)はそれぞれ図21の光ファイバテープ心線を製造するときに使用する円盤の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
(第1の実施の形態)
図1及び図2において、第1の実施の形態に係る光ファイバテープ心線の製造装置1は、例えば光ファイバ素線あるいは光ファイバ心線などの光ファイバ3の複数本を例えば図1においてX方向に並列して光ファイバテープ心線(以下、単に「テープ心線」という)を製造するものである。
【0031】
光ファイバテープ心線の製造装置1は、複数の光ファイバ3を整列させ、且つ、未硬化のUV硬化樹脂を供給するファイバ整列・樹脂供給工程を行うコーティングダイス7と、未硬化のUV硬化樹脂をエネルギー照射によって硬化させる樹脂硬化工程を行う樹脂硬化エネルギー照射装置であるスポットUVランプ21と、コーティングダイス7より送出される複数の光ファイバ3を集線させる集線用ロール19とを備えている。
【0032】
コーティングダイス7は、その内部に未硬化のUV硬化樹脂が溜められた樹脂貯留室(図示せず)を有する。コーティングダイス7の出口面7Aには、樹脂貯留室に連通する複数の光ファイバ挿通穴9が開口されている。この複数の光ファイバ挿通穴9より樹脂貯留室を通って来た複数本の光ファイバ3が整列されて送り出される。又、隣り合う光ファイバ挿通穴9の間は幅狭の連通穴によってそれぞれ連通されている、尚、連通穴は下記するシャッタ用溝部13と重なるため、符号を付さない。このような構成によって、複数本の光ファイバ3は各光ファイバ挿通穴9より送り出されるときに、各光ファイバ3の外周表面に未硬化のUV硬化樹脂が付着される。
【0033】
前記コーテイングダイス7の出口面7Aには、隣り合う各光ファイバ挿通穴9の間で、且つ、X方向に対して直交するZ方向(図1において上下方向)にシャッタ用溝部13がそれぞれ設けられている。各シャッタ用溝部13は、隣り合う光ファイバ挿通穴9の間の連通穴と交差し、光ファイバ挿通穴9よりUV硬化樹脂が吐出可能になっている。
【0034】
堰き止め部材である複数のシャッタ(仕切り板)11は、各シャッタ用溝部13内にそれぞれ配置されている。各シャッタ11は、図示しない駆動手段によって正逆方向(上下方向)に移動する。シャッタ11が隣り合う光ファイバ3の間に介在することによりUV硬化樹脂の供給が堰き止められ、シャッタ11が隣り合う光ファイバ3の間の位置より外れることによりUV硬化樹脂が吐出される。ここで、この実施の形態にシャッタ11は、隣り合う光ファイバ3の間に樹脂貯留室で付着されたUV硬化樹脂を掻き取ることによって堰き止め、且つ、UV硬化樹脂が光ファイバ挿通穴9より連通穴に吐出しないように堰き止めている。
【0035】
つまり、シャッタ11が隣り合う光ファイバ3の間に介在しているときは、隣り合う光ファイバ3の間にUV硬化樹脂が供給されず、シャッタ11が隣り合う光ファイバ3の間の位置より外れるときは、隣り合う光ファイバ3の間にUV硬化樹脂が供給される。従って、シャッタ11を光ファイバ3の間に出し入れすることにより、図4に示すように、光ファイバ3の間に接着部15と分離部17を形成され、光ファイバ3の間が間欠的に分離したテープ心線5を製造することが可能となる。
【0036】
スポットUVランプ21は、コーティングダイス7の出口面7Aから光ファイバ3同士が並列するように集線されて接触する箇所までの間にあって、光ファイバ3の長さ方向のY方向において2箇所に配置されている。この2箇所のスポットUVランプ21によって、未硬化のUV硬化樹脂が硬化するに必要な樹脂硬化エネルギーを照射する。以下、適正なUV照射量と適正な照射位置について説明する。
【0037】
前記したように、光ファイバ3の間にシャッタ11を出し入れすることにより、UV硬化樹脂を堰き止めることが可能であるが、光ファイバ3がコーティングダイス7の樹脂貯留室を通過するときに光ファイバ3の周囲にUV硬化樹脂が供給されているので、光ファイバ3の間隔が非常に狭い場合は、UV硬化樹脂の表面張力により、UV硬化樹脂が供給された光ファイバ3同士が触れ合って接着されてしまう。
【0038】
そこで、光ファイバ3の間にシャッタ11を出し入れした直後に、UV硬化樹脂の表面を硬化させるようにUV照射を行う必要がある。UV照射が充分でない場合は、光ファイバ3の表面のUV硬化樹脂の硬化が完全でないために、集線した際に光ファイバ3同士が接着してしまうことになる。UV照射をコーティングダイス7の出口面7Aから非常に離れた箇所で行うと、たとえシャッタ11でUV硬化樹脂を堰き止めたとしても、上述したように光ファイバ3同士が表面張力により接着した状態で硬化してしまうので、光ファイバ3同士が接着してしまうことになる。
【0039】
したがって、複数本の光ファイバ3は、コーティングダイス7の出口面7Aから出た後にUV硬化樹脂の表面張力で光ファイバ3同士が接着するので、コーティングダイス7の出口面7AからUV照射箇所までの間の最適な位置(コーティングダイス7の出口面7AからUV照射箇所の間の距離)および最適なUV照射量で照射する必要がある。
【0040】
そこで、UV照射量と照射位置についての検討を行ったところ、以下のような結果を得た。
【0041】
この実施の形態では、光ファイバ3は直径250μmであり、コーティングダイス7は4本の前記光ファイバ3の間にシャッタ11を挿入できるよう適当な光ファイバピッチで配列し、かつ前記各光ファイバ3の首部で接続されるように前記各光ファイバ3を挿通する4つの光ファイバ挿通穴9を備えている。
【0042】
4本の光ファイバ3は樹脂貯留室を経て4つの光ファイバ挿通穴9から光ファイバ3の長さ方向のY方向の光ファイバ前進方向の前方(図1において左方)に移動するときに、各光ファイバ3の外周表面にUV硬化樹脂が付着される。なお、光ファイバ3が移動する線速は110m/minである。
【0043】
このとき、コーティングダイス7の出口付近では、4つの光ファイバ挿通穴9の間に設けた3つのシャッタ用溝13にそれぞれシャッタ11を挿通して前記光ファイバ3の長さ方向(X方向)に対して垂直に直交した方向である上下方向(Z方向)に出し入れすることにより、光ファイバ3の間に分離部17及び接着部15を形成することができる。
【0044】
この実施の形態の条件では、コーティングダイス7の出口面7Aの位置So点からY方向の前方におよそ10cm程度の箇所で、光ファイバ3が集線されて光ファイバ3同士が樹脂の表面張力により互いに接触する。この光ファイバ3同士がX方向に並列して接触する箇所をSG点とする。
【0045】
そこで、UV照射装置としての例えばスポットUVランプ21の配置位置とUV照射量について種々に変化させた。なお、UV硬化樹脂を硬化するためのスポットUVランプ21は、前記のSo点からY方向の前方の距離を位置データとしている。さらに、スポットUVランプ21によるUV照射量は、光ファイバ3からスポットUVランプ21までのZ方向の距離で調整することができる。
【0046】
この実施の形態では、下記の(1)〜(3)の3通りの方向で行い、それぞれの場合における分離エラーの発生率(分離部17の中で隣り合う光ファイバ3の間が接着してしまう確率)をデータとして得た。
【0047】
(1)光ファイバ3までの距離H1での照度が約400mW/cm2であるスポットUVランプ21の位置がSL1点が、コーティングダイス7の出口面7AのSo点から15cmの距離であるように配置される。
【0048】
(2)光ファイバ3までの距離H1での照度が約400mW/cm2であるスポットUVランプ21の位置がSL2点が、コーティングダイス7の出口面7AのSo点から2cmの距離であるように配置される。
【0049】
(3)光ファイバ3までの距離H1での照度が約400mW/cm2であるスポットUVランプ21の位置がSL2点が、コーティングダイス7の出口面7AのSo点から2cmの距離であるように配置される。さらに、光ファイバ3までの距離H2での照度が約600mW/cm2であるスポットUVランプ21の位置がSL3点が、コーティングダイス7の出口面7AのSo点から4cmの距離であるように配置される。
【0050】
その結果、前記の(1)の場合は、スポットUVランプ21で照射している箇所SL1点がSG点よりも前方(図1において左方)であり、光ファイバ3がすでに触れ合った状態でUV硬化樹脂の硬化が起こるため、分離部17を形成することが困難である。分離エラー発生確率が100%である。
【0051】
したがって、スポットUVランプ21は、前記のSo点からUV硬化樹脂を塗布した光ファイバ3同士が集線されて接触する箇所SG点までの間に設けられることが望ましい。
【0052】
前記の(2)の場合は、スポットUVランプ21で照射している箇所SL1点がSG点よりもY方向の光ファイバ前進方向の後方(図1において右方)であり、光ファイバ3同士は触れ合っていないが、UV照射量が不足し、UV硬化樹脂の硬化が不十分であるために、分離部17の中で隣り合う光ファイバ3の間が接着してしまう確率(分離エラー発生確率が65%)が高くなる。
【0053】
前記の(3)の場合は、スポットUVランプ21で照射している箇所SL2点とSL3点が適正であり、かつUV照射量が光ファイバ3の外周のUV硬化樹脂の表面を硬化させるのに充分であるので、目的の光ファイバ3の間のみを分離及び接着しているテープ心線5を得ることができる。この場合の分離エラー発生確率は3%である。
【0054】
前記のテープ心線5の製造条件では、So点からSG点までの距離が10cm程度で光ファイバ3同士が樹脂の表面張力によりお互いに接触しているが、この距離はコーティングダイス7の出口面7Aにおける光ファイバ3のピッチ、UV硬化樹脂の粘度、光ファイバ3の線速、光ファイバ3の張力により変わってくる。
【0055】
また、前記のSG点は、顕微鏡、拡大鏡などを用い、So点から前方(図1において左方)に向かい、テープ心線5を上面又は下面から確認することにより制御できる。
【0056】
また、スポットUVランプ21のみで少なくとも表面のUV硬化樹脂は硬化させることができるが、光ファイバ3に塗布したすべてのUV硬化樹脂が完全に硬化していない場合は、表面のみ硬化させた複数の光ファイバ3を集線後に、さらにUV照射することによりテープ心線5を製造することが可能である。
【0057】
また、シャッタ11の出し入れの速度を変えることにより、1つの接着部15の長さと1つの分離部17の長さなどの任意の周期を有するテープ心線5を製造することが可能である。
【0058】
また、シャッタ11が挿入されている時間と、挿入されていない時間の比を変えることで、前記接着部15の長さと前記分離部17の長さの比を変えることができる。
【0059】
図1及び図3を併せて参照するに、前述した図1のシャッタ11は平板状であるが、図3のシャッタ11にはZ方向(上下方向)のほぼ中間で凹みがY方向に向けて延長したくびれ部23が設けられている。
【0060】
前記のくびれ部23の肉厚は非常に小さく形成されており、このシャッタ11は、隣り合う光ファイバ挿通穴9の間に設けたシャッタ用溝部13に対してZ方向に挿通され、前記くびれ部23が光ファイバ3の間に位置したときは、UV硬化樹脂を堰き止める力が弱いので、UV硬化樹脂が吐出して光ファイバ3の間の接着部15を形成することができる。一方、シャッタ11のくびれ部23以外の箇所を挿入しているときは、UV硬化樹脂を堰き止める(除去する)ことができるので、光ファイバ3の間の分離部17を形成することができる。
【0061】
なお、前述した例では、シャッタ用溝部13が平板状のシャッタ11を挿入するために前面矩形状であるが、柱状のシャッタ11を挿入するために断面円形状となっても良い。また、シャッタ用溝部13はダイスランド部に内蔵されていても良い。
【0062】
以上のことから、以下の効果を奏する。
【0063】
(1)隣り合う光ファイバ3の間に未硬化のUV硬化樹脂を供給する際に、そのUV硬化樹脂の供給自体をシャッタ11によって制御してUV硬化樹脂の吐出と堰き止めを行うので、従来例のように予備硬化及び樹脂部の切欠作業を行う必要がないと共に光ファイバ3に一旦塗布した樹脂を除去する必要もないため、製造工程を単純化できる。
【0064】
又、隣り合う光ファイバ3の間に未硬化のUV硬化樹脂を供給する際に、そのUV硬化樹脂の供給自体をシャッタ11によって制御し、シャッタ11によるUV硬化樹脂の堰き止め時で光ファイバ3同士の間を分離させた分離部17を形成し、シャッタ11による樹脂の吐出時で光ファイバ3同士の間を接着させた接着部15を形成するため、隣り合う光ファイバ3の間の分離部17と接着部15を確実に、且つ、高精度に形成できる。これにより、光ファイバテープ心線5の細径化、特性改善、後分岐性の向上を図ることができる。
【0065】
上述した第1の実施の形態の光ファイバテープ心線の製造方法により製造されたテープ心線5の一例としては、例えば図4に示されているように、複数本の光ファイバ3が並列して構成されるものであり、図4では合計N本の光ファイバ3から構成されるものである。これらのN本の光ファイバ3のうちの互いに隣接する2心の光ファイバ3が接着部15により間欠的に連結されている。
【0066】
より詳しくは、互いに隣接する2心の光ファイバ3の間のみを連結する複数の接着部15が、図5(A)に示されているようにテープ心線5の両面にわたり長手方向及び幅方向の2次元的に間欠的に配設されている。しかも、同一の光ファイバ3に施された前記接着部15の長さは前記同一の光ファイバ3の分離部17の長さよりも短く構成されている。例えば、1本目と2本目の光ファイバ3同士を連結する接着部1512の長さAは同一の光ファイバ3の分離部17の長さSよりも短い構成である。さらに、テープ心線5の幅方向で隣り合う接着部1512,1523同士の間は互いに接触しないように離間距離B及びDが設けられている。
【0067】
なお、図4において、接着部1512は1本目と2本目の光ファイバ3同士を連結する接着部15を示し、接着部1523は2本目と3本目の光ファイバ3同士を連結する接着部15を示している。したがって、接着部15(N-2)(N-1)は(N−2)本目と(N−1)本目の光ファイバ3同士を連結する接着部15で、接着部15(N-1)Nは(N−1)本目とN本目の光ファイバ3同士を連結する接着部15である。
【0068】
また、図4において、接着部1523の長さはCであり、同一の光ファイバ3の分離部17の長さS(図示していないが、接着部1512の場合と同じ長さとしている)よりも短い構成である。また、接着部15(N-2)(N-1)の長さはEであり、接着部15(N-1)Nの長さはGである。しかも、それぞれの長さE,Gは同一の光ファイバ3の分離部17の長さSよりも短い構成である。さらに、テープ心線5の幅方向で隣り合う接着部15(N-2)(N-1),15(N-1)N同士の間は互いに接触しないように離間距離F及びHが設けられている。
【0069】
なお、上記の光ファイバ3としての例えば光ファイバ心線は、図5(A)に示されているように、石英のガラスファイバ25と、この石英のガラスファイバ25の外周上に被覆された軟質プラスチック樹脂27と、この軟質プラスチック樹脂27の外周上に被覆された例えばUV硬化樹脂29と、から構成されている。
【0070】
また、上記の各接着部15の構造は、図5(A)〜(C)に示されているように、互いに隣接する2心の光ファイバ3の間を上下からUV硬化樹脂あるいは熱可塑性樹脂により連結されている。図5(A)では接着部15の外表面が2心の光ファイバ3の外周を結ぶ線と同じ線上に位置しており、図5(B)では接着部15の外径表面が2心の光ファイバ3の外周を結ぶ線より内側に湾曲しており、図5(C)では2心の光ファイバ3の外周を被覆した構造である。いずれにしても、接着部15の構造は、互いに隣接する2心の光ファイバ3の間を連結するものであればよい。
【0071】
また、この発明の実施の形態のテープ心線5における接着部15の配置状態は、図4に示されているような状態に限らず、図6(A)〜(C)、図7(A)〜(C)に示されているような種々な配置例であっても、あるいは他の構成であっても良い。
【0072】
(第2の実施の形態)
次に、この発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、前述した第1の実施の形態と同様の部分は同符号を付し、異なる部分のみを説明する。
【0073】
図8を参照するに、第2の実施の形態の光ファイバテープ心線の製造装置31は、コーティングダイス7の出口面7Aにおいて、複数の光ファイバ挿通穴9のうちの互いに隣り合う光ファイバ挿通穴9の中心間の距離が、X方向(図8において左右方向)で所定の光ファイバピッチとほぼ同じ距離に配置されているが、前記X方向に対して直交するZ方向(図8において上下方向)で予め設定した距離だけずれていることを特徴とする。
【0074】
つまり、図8では一つおきの光ファイバ挿通穴9がX方向に一列になるので、一つおきの光ファイバ挿通穴9がX方向に合計2列になる。したがって、一つおきの光ファイバ挿通穴9の間隔が大きくなるので、一つおきの光ファイバ挿通穴9の間に、肉厚が厚いシャッタ33をZ方向に挿通可能(出し入れ可能)となるシャッタ用溝部13を設けることができる。しかも、前記シャッタ用溝部13に挿通されるシャッタ33は、光ファイバ3に塗布されるUV硬化樹脂の堰き止めを行うことができる構成である。つまり、光ファイバ3の表面に塗布されたUV硬化樹脂が樹脂吐出孔9Aに露出するので、樹脂吐出孔9Aに露出した光ファイバ3のUV硬化樹脂がシャッタ33で除去されることになる。
【0075】
上記構成により、シャッタ33を厚くして強度を向上することが可能であるので、前記シャッタ33をシャッタ用溝部13に挿入するとき、UV硬化樹脂の粘度に負けることなく差し込むことができ、安定したUV硬化樹脂の堰き止めを行うことができる。
【0076】
Z方向にずれた光ファイバ3は、UV硬化樹脂が硬化する前か、あるいは硬化時に集線されるので、隣り合う光ファイバ3同士を接着させるための未硬化のUV硬化樹脂により所定の位置で光ファイバ3同士が接着する。したがって、図9に示されているように、目的の光ファイバピッチのテープ心線5を得ることができる。
【0077】
ちなみに、製造されるテープ心線5の接着部15の光ファイバピッチを250μm程度にしたい場合は、一般的にはコーティングダイス7の出口面7Aにおける光ファイバ挿通穴9のピッチも同程度でなければならない。一方、図10に示されているように、シャッタ35を厚くするために、光ファイバ挿通穴9のピッチが広すぎる光ファイバピッチであると、図11に示されているように、接着部15における光ファイバピッチが広いテープ心線37ができ上がるために一括融着接続ができなくなってしまう。
【0078】
したがって、光ファイバピッチが250μm程度である場合は、光ファイバ3の間に出し入れするシャッタ35の厚さが数μm程度の厚さのものを用いなければならなくなる。しかし、シャッタ35が薄いと、光ファイバ3の間にシャッタ35を挿入する際に、UV硬化樹脂の粘度に負けて差し込むことができずにたわむことになるか、あるいはシャッタ35の強度が弱いために光ファイバ3の間に差し込む前に割れてしまう事態が生じる。
【0079】
この第2の実施の形態では、コーティングダイス7の光ファイバ挿通穴9の中心間の距離と製造したテープ心線5の光ファイバピッチを、(1)X方向のみに400μm、(2)X方向のみに360μmでは、コーティングダイス7の光ファイバ挿通穴9がX方向のみに離れている場合は、製造されたテープ心線5の接着部15における光ファイバピッチが広くなってしまう。
【0080】
一方、光ファイバ挿通穴9の中心間の距離と製造したテープ心線5の光ファイバピッチを、(3)X方向250μm、Z方向1000μmのように、コーティングダイス7の光ファイバ挿通穴9がX方向とZ方向に離れている場合は、X方向の光ファイバ挿通穴9の中心間距離とほぼ同程度の光ファイバピッチのテープ心線5を製造することができる。
【0081】
以上のように、光ファイバピッチが250μm程度のテープ心線5を製造する際に、例えば図1に示されているような構成で光ファイバ3の間にシャッタ11を挿入する場合は、シャッタ11の厚さが数μmで無ければならなかったが、図8に示されているように、隣り合う光ファイバ3はZ方向にずれることで光ファイバ3の間隔を広くできるため、シャッタ33を厚くすることが可能である。
【0082】
しかも、コーティングダイス7の出口面7Aでは、隣り合う光ファイバ3はZ方向に所定間隔だけ離れているが、X方向には目的の光ファイバピッチと同程度の距離しか離れていないので、Z方向に離れた光ファイバ3を集線用ロール19によりX方向の一列に集線及び整列することによって、目的の光ファイバピッチのテープ心線5を容易にかつ確実に製造することができる。
【0083】
(第3の実施の形態)
次に、この発明の第3の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、前述した第1の実施の形態と同様の部分は同符号を付し、異なる部分のみを説明する。
【0084】
図12を参照するに、第3の実施の形態の光ファイバテープ心線の製造装置39は、隣り合う光ファイバ挿通穴9の間に挿入するシャッタ11を出し入れすると、シャッタ11の側面に未硬化のUV硬化樹脂が付着する。つまり、未硬化のUV硬化樹脂は粘度の高い液体であるために、光ファイバ3の間にシャッタ11を挿入すると、シャッタ11に残ったUV硬化樹脂が再び光ファイバ3に付いてしまうので、光ファイバ3の間の分離部17を形成することが困難になる。そこで、前記シャッタ11の周辺で、前記シャッタ11に付着した未硬化のUV硬化樹脂の除去を行うことを特徴とする。
【0085】
例えば、図12に示されているように、コーティングダイス7の上端に連通したシャッタ用溝部13の付近に、UV硬化樹脂除去装置としての例えばシリンジの先端や吸引ホース等の吸引装置41を配置し、シャッタ11に付着したUV硬化樹脂を吸引する方法が挙げられる。このとき、未硬化のUV硬化樹脂は液体であるので、シリンジや吸引ホース等の吸引装置41の先に図示しない吸引ポンプ等を用いると、容易に吸引が可能である。
【0086】
あるいは、シャッタ11に付着した樹脂を拭き取るような材料をシャッタ11の周辺に配置しておくことであっても、UV硬化樹脂の除去が可能となる。なお、この例では吸引装置41で上方に吸引する例で示しているが、吸引装置41を下方に設けて重量方向(下方方向)に吸引しても構わない。
【0087】
(UV硬化樹脂の除去の変形例)
また、図13に示されているように、シャッタ11に付着するUV硬化樹脂を吸引できるように、シャッタ用溝部13に対して垂直にしてコーティングダイス7の側面へ貫通する吸引用貫通孔43を設けることができる。これにより、吸引用貫通孔43からUV硬化樹脂の吸引を行うことができる。
【0088】
なお、吸引用貫通孔43をあける位置によっては、シャッタ11の側面についたUV硬化樹脂の吸引や、光ファイバ3の進行方向と垂直なシャッタ11面のUV硬化樹脂の吸引などを行うことができる。
【0089】
あるいは、隣り合うシャッタ11間の隙間が非常に狭いために、前述したようにシャッタ11間に樹脂吸引用のホースやシリンジを設置することが難しい場合は、前述したようにシャッタ11の側面から直接的に除去するのではなく、図14に示されているように、光ファイバ3の進行方向に垂直なシャッタ用溝部13の面からシャッタ11に付着したUV硬化樹脂を吸引することができる。図14ではコーティングダイス7の上面に沿って帯状の吸引ホース45を配置することができる。この例においても吸引ホース45をコーティングダイス7の下面に沿って設けても構わない。
【0090】
以上のことから、シャッタ11に付着したUV硬化樹脂を除去することにより、確実に光ファイバ3の間の分離部17を形成することができる。
【0091】
(第4の実施の形態)
次に、この発明の第4の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0092】
図15において、光ファイバテープ心線の製造装置47は、複数の光ファイバ3を整列させ、且つ、未硬化のUV硬化樹脂を塗布するファイバ整列・樹脂塗布工程を行うコーティングダイス7と、未硬化のUV硬化樹脂をエネルギー照射によって硬化させる樹脂硬化工程を行う樹脂硬化エネルギー照射装置であるスポットUVランプ21と、コーティングダイス7より送出される複数の光ファイバ3を集線させる集線用ロール19とを備えている。
【0093】
第1の実施の形態のものと比較するに、コーティングダイス7の構成が異なる。つまり、コーティングダイス7にはシャッタ溝部13が設けられていない。各シャッタ11は、コーティングダイス7の出口面7Aに沿って外側で光ファイバ挿通穴9間を上下に移動するよう構成されている。ここで、この実施の形態におけるUV硬化樹脂の堰き止めは、前記第1の実施の形態とは異なり、隣り合う光ファイバ3の間に予め塗布されているUV硬化樹脂を掻き取ることによって堰き止めることである。
【0094】
スポットUVランプ21と集線用ロール19の構成は、前記第1の実施の形態と同様であるため、同一構成箇所に同一符号を付して説明を省略する。
【0095】
この第5の実施の形態でも、前記第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0096】
(第5の実施の形態)
次に、この発明の第5の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0097】
図16〜図18において、光ファイバテープ心線の製造装置48は、複数の光ファイバ3を整列させ、且つ、未硬化のUV硬化樹脂を供給するファイバ整列・樹脂供給工程を行うコーティングダイス7と、未硬化のUV硬化樹脂をエネルギー照射によって硬化させる樹脂硬化工程を行う樹脂硬化エネルギー照射装置であるスポットUVランプ21と、コーティングダイス7より送出される複数の光ファイバ3を集線させる集線用ロール19と、円盤50に付着したUV樹脂を除去する樹脂除去手段60と、樹脂除去手段60の掻き取り部材であるブラシ61に付着したUV樹脂を除去してブラシ清掃を行う清掃手段70とを備えている。
【0098】
前記第1の実施の形態と比較するに、コーティングダイス7の構成が異なり、且つ、樹脂除去手段60及びブラシ清掃手段70が付加されていいる。以下、説明する、
コーティングダイス7は、その内部に未硬化のUV硬化樹脂が溜められた樹脂貯留室を有する。コーティングダイス7の出口面7Aには、複数本の各光ファイバ3を整列させた状態で送り出す複数の光ファイバ挿通孔9が開口されている。複数の光ファイバ挿通孔9は内部の樹脂貯留室に連通し、複数の光ファイバ3は、樹脂貯留室を通り、その後各光ファイバ挿通孔9を通ってダイス出口面7Aより外部に整列されて送り出される。
【0099】
コーテイングダイス7には、隣り合う各光ファイバ挿通穴9の間で、且つ、X方向に対して直交するZ方向(図1において上下方向)に円盤用溝部49がそれぞれ設けられている。各円盤用溝部49は、両隣りの光ファイバ挿通穴9に開口されており、光ファイバ挿通穴9よりUV硬化樹脂が吐出可能になっている。
【0100】
堰き止め部材である複数の円盤50は、各円盤用溝部49に一部が入り込んだ状態で配置されている。複数の円盤50の中心部は、同一の回転軸51に共に固定されており、この回転軸51は第1駆動源52によって回転駆動される。駆動源52の動力によって駆動軸51が回転すると、複数の円盤50は図18の矢印方向に一体となって回転する。各円盤50の外周部には切欠部50aが設けられている。この切欠部50aの回転軌跡は、隣り合う光ファイバ挿通穴9の間を通るように設定されている。
【0101】
したがって、円盤50の切欠部50a以外の箇所が隣り合う光ファイバ挿通穴9の間に介在する位置では、両隣りの光ファイバ挿通穴9からのUV硬化樹脂の吐出を堰き止める。円盤50の切欠部50aが隣り合う光ファイバ挿通穴9の間に位置する位置では、両隣りの光ファイバ挿通穴9からUV硬化樹脂が吐出される。
【0102】
したがって、図19(A),(B)に示すように、切欠部50aの回転位相が異なる複数の円盤50を取り付け、複数の円盤50を回転させることにより、図4に示すように、光ファイバ3の間に接着部15と分離部17を形成され、隣り合う光ファイバ3の間が間欠的に分離したテープ心線5を製造することが可能となる。
【0103】
図20に示すように、複数の切欠部50aを有する円盤50を用いることにより、円盤50の1回転で複数位置に接着部を形成することができる。
【0104】
図21に示す光ファイバテープ心線5を製造する場合には、光ファイバ3Aと光ファイバ3Bの間、及び、光ファイバ3Cと光ファイバ3Dの間に対応する位置には、図22(B)の円盤50Bをそれぞれ取り付け、光ファイバ3Bと光ファイバ3Cの間に対応する位置には、図22(A)の円盤50Aを取り付けることによって製造することができる。
【0105】
図16〜図18に戻り、樹脂除去手段60は、回転中心より放射状に延びた掻き取り部材であるブラシ61とこのブラシ61の中心箇所が固定された回転軸62と、この回転軸62を回転駆動させる第2駆動源63とを備えている。回転するブラシ61は、各円盤50の外縁部に接触し、各円盤50に付着されたUV硬化樹脂を掻き取る。
【0106】
清掃手段は、この実施の形態では、アルコール等の洗剤が入れられた溶液槽70であり、溶液槽70は、ブラシ61の回転軌跡上に設置されている。回転するブラシ61が円盤50に接触すると、円盤50の表面に付着したUV硬化樹脂がブラシ61によって掻き取られ、ブラシ61に付着したUV硬化樹脂が溶液槽70の洗剤で除去される。
【0107】
スポットUVランプ21と集線用ロール19の構成は、前記第1の実施の形態と同様であるため、同一構成箇所に同一符号を付して説明を省略する。
【0108】
この第5の実施の形態によれば、堰き止め部材が切欠部50aを有する円盤50にて構成されている。したがって、切欠部50aの回転位相の異なる円盤50を複数取り付け、これら複数の円盤50を同一の回転軸51で回転駆動できるため、簡単な駆動系及び制御系によって間欠固定されたテープ心線を製造できる。又、一般的な光ファイバ3の直径は、250μmであるため、このような間隔で設置したシャッタを独立に駆動する場合には、非常に高精度な機構が必要であるが、この第5の実施の形態では、シャッタのような高精度の機構が要求されない。
【0109】
この第5の実施の形態では、樹脂除去手段60を設けたので、各円盤50に付着したUV硬化樹脂を樹脂除去手段60によって除去できるため、UV硬化樹脂の付着によって回転抵抗が増大するような事態を防止できる。したがって、各円盤50に付着したUV硬化樹脂に起因する円盤50の回転数の変動、テープ心線の間欠固定長(接着部の長さ)・ピッチ(接着部と分離部の比)の変動等を防止できる。
【0110】
この第5の実施の形態では、溶液槽70を設けたので、ブラシ61に付着されたUV硬化樹脂をブラシ洗浄手段70によって除去できるため、ブラシ61から円盤50へのUV硬化樹脂の再付着や、UV硬化樹脂が付着することによるブラシ61の除去性能の劣化を防止でき、効果的に円盤50上のUV硬化樹脂を除去できる。
【0111】
この第5の実施の形態では、樹脂除去手段60の掻き取り部材はブラシ61であるが、円盤50上のUV硬化樹脂を掻き取ることによって除去できるものであればブラシ61以外のもの(例えば櫛歯形状の部材)であっても良い。
【0112】
この第5の実施の形態では、洗浄手段は、アルコール等の溶剤が入れられた溶液槽70であるが、ブラシ61等の掻き取り部材に付着したUV硬化樹脂を除去できるものであれば、溶液槽70以外のもの(例えばブラシ、フェルト)でも良い。
【0113】
(その他)
前記第1〜第5の実施の形態の光ファイバテープ心線の製造装置では、光ファイバ3同士の間をUV硬化樹脂を用いて接着しているが、エネルギーを照射することによる硬化する樹脂であれば良く、例えば熱硬化性樹脂であっても良い。この場合には、エネルギー照射装置として熱源を用いることになる。
【0114】
前記第3の実施の形態の樹脂除去手段は、シャッタ11に付着したUV硬化樹脂を吸引によって除去する吸引装置41にて構成され、前記第5の実施の形態の樹脂除去手段は円盤50に付着したUV硬化樹脂を掻き取るブラシ61にて構成されているが、第3の実施の形態の樹脂除去手段をブラシより構成し、前記第5の実施の形態の樹脂除去手段を吸引装置にて構成しても良い。
【符号の説明】
【0115】
1 光ファイバテープ心線の製造装置(第1の実施の形態)
3 光ファイバ
5 光ファイバテープ心線
7 コーティングダイス
9 光ファイバ挿通穴
11 シャッタ(堰き止め部材)
13 シャッタ用溝部
15 接着部
17 分離部
19 集線用ロール
21 UVランプ(樹脂硬化エネルギー照射装置)
23 くびれ部
25 ガラスファイバ
27 軟質プラスチック樹脂
29 UV硬化樹脂
31 光ファイバテープ心線の製造装置(第2の実施の形態)
33 シャッタ
35 シャッタ
37 テープ心線
39 光ファイバテープ心線の製造装置(第3の実施の形態)
41 吸引装置
43 吸引用貫通孔
45 帯状の吸引ホース
47 光ファイバテープ心線の製造装置(第4の実施の形態)
48 光ファイバテープ心線の製造装置(第5の実施の形態)
50,50A,50B 円盤(堰き止め部材)
60 樹脂除去手段
61 ブラシ(掻き取り部材)
70 溶液槽(洗浄手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバをこの光ファイバの長さ方向に対して平面で直交した方向のX方向に並列して光ファイバテープ心線を製造する光ファイバテープ心線の製造方法であって、
コーティングダイスの出口面に開口した光ファイバ挿通穴より複数本の前記光ファイバを整列させた状態で送り出し、送り出す複数の前記光ファイバに未硬化の樹脂を供給するときに、隣り合う前記光ファイバの間で堰き止め部材を移動することにより、前記堰き止め部材で隣り合う前記光ファイバの間の樹脂の堰き止めと吐出を交互に連続して行うファイバ整列・樹脂塗布工程と、
前記コーティングダイスの出口面から前記光ファイバ同士が並列するように集線されて接触する箇所までの間で、前記樹脂が硬化するに必要な樹脂硬化エネルギーを照射する樹脂硬化工程とを備え、
前記樹脂の堰き止め時で前記光ファイバ同士の間を分離させた分離部を形成し、且つ、前記樹脂の吐出時で前記光ファイバ同士の間を接着させた接着部を形成して光ファイバテープ心線を製造することを特徴とする光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の光ファイバテープ心線の製造方法であって、
前記堰き止め部材は、シャッタであり、前記シャッタが隣り合う前記光ファイバの間に介在することにより樹脂を堰き止め、前記シャッタが隣り合う前記光ファイバの間の位置より外れることにより樹脂の吐出を行うことを特徴とする光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の光ファイバテープ心線の製造方法であって、
前記堰き止め部材は、切欠部を有する円盤であり、前記円盤が回転し、前記円盤の切欠部以外の箇所が隣り合う前記光ファイバの間に介在することにより樹脂を堰き止め、前記円盤の前記切欠部が隣り合う前記光ファイバの間に位置することにより樹脂の吐出を行うことを特徴とする光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光ファイバテープ心線の製造方法であって、
樹脂硬化エネルギーの照射は、前記光ファイバの長さ方向のY方向において複数箇所で行われることを特徴とする光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の光ファイバテープ心線の製造方法であって、
前記コーティングダイスの出口面において複数の前記光ファイバ挿通穴のうちの互いに隣り合う前記光ファイバ挿通穴の中心間の距離が、前記X方向で所定の光ファイバピッチとほぼ同じ距離に配置され、且つ、前記X方向に直交するZ方向で予め設定した距離だけずれていることを特徴とする光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の光ファイバテープ心線の製造方法であって、
前記堰き止め部材に付着した未硬化の樹脂を除去することを特徴とする光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の光ファイバテープ心線の製造方法であって、
前記堰き止め部材に付着した樹脂の除去は、吸引によって行うことを特徴とする光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の光ファイバテープ心線の製造方法であって、
前記堰き止め部材に付着した樹脂の除去は、掻き取りによって行うことを特徴とする光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の光ファイバテープ心線の製造方法であって、
前記ブラシに付着した樹脂の除去してブラシ清掃を行うことを特徴とする光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項10】
複数本の光ファイバをこの光ファイバの長さ方向に対して平面で直交した方向のX方向に並列して光ファイバテープ心線を製造する光ファイバテープ心線の製造装置であって、
出口面に開口した複数の光ファイバ挿通穴より複数本の前記光ファイバを送り出し、送り出す複数の前記光ファイバに未硬化の樹脂を供給すると共に、隣り合う前記光ファイバの間で堰き止め部材を移動することにより、前記堰き止め部材で隣り合う前記光ファイバの間の樹脂の堰き止めと吐出を交互に連続して行うことができるコーティングダイスと、
前記コーティングダイスの出口面から、前記光ファイバ同士が並列するように集線されて接触する箇所までの間で、前記樹脂が硬化するに必要な樹脂硬化エネルギーを照射する樹脂硬化エネルギー照射装置とを備えたことを特徴とする光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項11】
請求項10記載の光ファイバテープ心線の製造装置であって、
前記堰き止め部材は、シャッタであり、前記シャッタが隣り合う前記光ファイバの間に位置する位置では樹脂を堰き止め、前記シャッタが隣り合う前記光ファイバの間より外れる位置では樹脂の吐出を行うことを特徴とする光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項12】
請求項10記載の光ファイバテープ心線の製造装置であって、
前記堰き止め部材は、切欠部を有する円盤であり、前記円盤が回転し、前記円盤の切欠部以外の箇所が隣り合う前記光ファイバの間に位置する回転位置では樹脂を堰き止め、前記円盤の前記切欠部が隣り合う前記光ファイバの間に位置する回転位置では樹脂の吐出を行うことを特徴とする光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項13】
請求項10〜請求項12のいずれかに記載の光ファイバテープ心線の製造装置であって、
前記樹脂硬化エネルギー照射装置は、前記光ファイバの長さ方向のY方向において複数箇所に配置されていることを特徴とする光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項14】
請求項10〜請求項13のいずれかに記載の光ファイバテープ心線の製造装置であって、
前記コーティングダイスの出口面において複数の前記光ファイバ挿通穴のうちの互いに隣り合う前記光ファイバ挿通穴の中心間の距離が、前記X方向で所定の光ファイバピッチとほぼ同じ距離に配置され、且つ、前記X方向に直交するZ方向で予め設定した距離だけずれていることを特徴とする光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項15】
請求項10〜請求項14のいずれかに記載の光ファイバテープ心線の製造装置であって、
前記堰き止め部材に付着した未硬化の樹脂を除去する樹脂除去手段を設けたことを特徴とする光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項16】
請求項15に記載の光ファイバテープ心線の製造装置であって、
前記樹脂除去手段は、吸引装置であることを特徴とする光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項17】
請求項15に記載の光ファイバテープ心線の製造装置であって、
前記樹脂除去手段は、掻き取り部材であることを特徴とする光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項18】
請求項17に記載の光ファイバテープ心線の製造装置であって、
前記掻き取り部材に付着した樹脂を除去する清掃手段を設けたことを特徴とする光ファイバテープ心線の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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