説明

光ファイバテープ心線の製造装置および製造方法

【課題】製造線速の高速化が可能で、光ファイバ心線を傷つけることなく心線間を間欠的に確実に分離し、結合部と非結合部を交互に有する光ファイバテープ心線の製造装置と製造方法を提供する。
【解決手段】複数本の光ファイバ心線が平行一列に並べられ共通被覆により一体化された光ファイバテープ心線1の隣り合う光ファイバ心線間に、カッター刃により長手方向に間欠的な切込み4が入れられた光ファイバテープ心線の製造で、隣り合う光ファイバ心線間にカッター刃がスイング動作で、間欠的に切込みを入れる切込み機構8a〜8cを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の光ファイバ心線を平行一列に並べ、隣り合う光ファイバ心線同士が間欠的に結合された形態の光ファイバテープ心線の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数本の光ファイバ心線を平行一列に並べて一体化された光ファイバテープ心線において、光ファイバ心線を単心に分離するのが容易であると共に、テープ心線の平行一列の保持状態を維持して多心一括融着接続等が行える光ファイバテープ心線が知られている。この光ファイバテープ心線は、複数本の光ファイバ心線を平行一列に並べ、その長手方向で結合部と非結合部を交互に形成し、隣り合う光ファイバ心線同士が間欠的に連結された形状のもので、種々の形状と製造方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、隣り合う光ファイバ心線間の長手方向に所定距離だけ接着性樹脂または被覆樹脂が付与されてなる結合部と、所定距離だけ接着性樹脂または被覆樹脂が付与されない非結合部と、を交互に形成する光ファイバテープ心線の製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、複数本の光ファイバ心線の全長にUV(紫外線硬化)樹脂を塗布した後、長手方向に間欠的にUV照射を行い、UV樹脂の硬化部分(非結合部)と未硬化部分(結合部)と、を交互に形成する光ファイバテープ心線の製造方法が開示されている。
また、特許文献3には、光ファイバテープ心線の共通被覆の長手方向に、複数の刃を有する回転カッターや間欠的に照射するレーザビームで切欠きを形成し、結合部と非結合部を交互に形成する光ファイバテープ心線の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−232972号公報
【特許文献2】特開2010−2743号公報
【特許文献3】特許2573632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示のように、隣り合う光ファイバ線間に間欠的に接着樹脂等を付与する方法は、樹脂の付与制御が容易ではなく、製造線速を上げることが難しいという問題がある。また、特許文献2に開示のように、UV照射を間欠的に行う方法は、未硬化部分を形成する遮光シャッタの駆動制御が容易でなく、遮光した部分が狙いどおりの寸法で未硬化とする確率が低く、同じく製造線速を上げることが難しい。また、特許文献3のように回転刃やレーザビームを用いる方法は、光ファイバ心線に損傷を与えるおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたもので、製造線速の高速化が可能で、光ファイバ心線を傷つけることなく心線間を間欠的に確実に分離し、結合部と非結合部を交互に有する光ファイバテープ心線の製造装置と製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による光ファイバテープ心線の製造装置および製造方法は、複数本の光ファイバ心線が平行一列に並べられ共通被覆により一体化された光ファイバテープ心線の隣り合う光ファイバ心線間に、カッター刃により長手方向に間欠的な切込みが入れられた光ファイバテープ心線の製造装置および製造方法であって、隣り合う光ファイバ心線間にカッター刃がスイング動作で、間欠的に切込みを入れる切込み機構を備えていることを特徴とする。
前記のカッター刃は、両刃の断面形状で、切込みを入れる刃部の厚さが0.2mm〜0.5mmであり、前記の切込み機構は、光ファイバ心線の本数に応じた複数を備え、製造ライン方向にずらせて配置されているのが好ましい。また、切込み機構の後段に、光ファイバテープ心線に捩じりを加える捩じり機構を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光ファイバテープ心線の硬化済みの共通被覆に、衝撃を与えることなくカッター刃を入れてスムーズに切込むことができ、製造線速の高速化を図ることができる。また、カッター刃による切込みで、隣り合う光ファイバ心線間を間欠的に確実に分離することができ、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明により形成される光ファイバテープ心線の一例を示す図である。
【図2】本発明によるカッター刃による切込みの概略を説明する図である。
【図3】本発明に用いられる光ファイバテープ心線の他の例を示す図である。
【図4】本発明による製造装置の一例を説明する図である。
【図5】本発明で、光ファイバテープ心線に捻りを付与する例を示す図である。
【図6】本発明における切込み機構に、カム機構を用いた例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図により本発明の実施の形態を説明する。図1(A)〜図1(C)は、本発明の製造装置および製造方法により製造された光ファイバテープ心線の一例を示し、図において、1は光ファイバテープ心線(テープ心線)、2は光ファイバ心線、3は共通被覆、4は切込み部分、5は非切込み部分を示す。
【0011】
本発明での光ファイバ心線2とは、例えば、外径が125μmのガラスファイバに、被覆径が250μm前後のファイバ被覆を施した光ファイバ素線とも言われているもの、また、そのファイバ被覆の外面に着色層を施したものを含めた単心の光ファイバを言うものとする。
また、光ファイバテープ心線1(以下、テープ心線という)とは、光ファイバ心線2の3心以上を、平行一列に並べ共通被覆3により一体化してテープ状としたものであって、共通被覆3には、隣り合う光ファイバ心線2間で所定長さの切込み部分4と非切込み部分5が交互に形成されている形態のものを言う。
【0012】
テープ心線1の共通被覆3に入れられた切込み部分4は、テープ心線の上下面を貫通するように形成されていて、この切込みが入れられた部分では、隣り合う光ファイバ心線同士が互いに分離されていて互いに引き離す方向(長手方向と直交する方向)に引っ張ることにより、湾曲させて分けることが可能な非結合部となる。一方、切込みが入れられていない非切込み部分5では、隣り合う光ファイバ心線同士が互いに共通被覆3により一体とされて、テープ状態を保持する結合部となる。
【0013】
切込み部分4と非切込み部分5は、種々の形態(パターン)で形成することができる。図1(A)の例は、隣り合う切込み部分4が全て一致するように形成されている例で、非切込み部分5が長手方向と直交する間欠的な位置で全光ファイバ心線が連結されている。図1(B)の例は、隣り合う切込み部分4の位置が異なるようにし、隣より1つ離れた切込み部分同士の位置が一致するように形成した例である。また、図1(C)は、隣り合う切込み部分4の位置が順にずれていくように形成した例である。
【0014】
また、切込み部分4の長さと非切込み部分5の長さは、任意に設定することができる。例えば、光ファイバ心線の単心分離性を重視するなら、切込み部分4の切込み長さを非切り込み部分5より長くする。また、テープ心線としての一体性を重視するなら非切込み部分5の長さを切込み部分4より長くする。また、単心分離性と一体性をバランスさせるなら、切込み部分4と非切込み部分5の長さを等しくする等の形態とすることができる。
【0015】
図2は、切込み部分4を形成するカッター刃6について説明する図で、図2(A)は使用するカッター刃6の形状を示し、図2(B)(C)は共通被覆にカッター刃で切込む状態を示し、図2(D)は、カッター刃6のスイング動作を説明する図である。
【0016】
本発明において、切込みを行うのに使用するカッター刃6は、図2(A)に示すように両山刃または片山刃のいずれも用いることができる。しかし、いずれの刃においても両側に刃面6aを有する両刃形状のものが好ましく、これにより、図2(B)(C)に示すように、光ファイバ心線2を左右に均等に押し開くようにしてスムーズ切込むことが可能となる。また、切込みを入れる刃部の厚みは、薄いほど光ファイバへの曲げ応力を緩和できるが、あまり薄いと強度が小さくなって破損し易く、また切込み部分の識別性が悪くなる。したがって、光ファイバ心線2の外径が0.25mm程度であることから、0.2mm〜0.5mmとするのが好ましい。
【0017】
カッター刃6は、図2(B)に示すように共通被覆3の表面から切込まれ、図2(C)に示すように、光ファイバ心線2を左右に押し開くようにして共通被覆3を切り開く。なお、切り開かれた共通被覆3は、光ファイバ心線2の外面に付着した状態で維持されるのが好ましく、共通被覆3は光ファイバ心線のファイバ被覆と接着性のよいものが用いられていることが望ましい。
【0018】
なお、光ファイバ心線2のファイバ被覆のヤング率が低い(軟らかい)と、カッター刃6が差し込まれた時に、中のガラスファイバを損傷する恐れがあり、ヤング率が高すぎる(硬い)と、被覆除去作業が困難になり接続作業が著しく悪化する。しがって、光ファイバ心線2のファイバ被覆のヤング率が500MPa〜800MPa程度で形成されたテープであるのが好ましい。また、カッター刃6が差し込まれた時に、刃が光ファイバ心線2のファイバ被覆の表面を滑って傷が付き難いように、ファイバ被覆用の樹脂に滑材を含有させておくのも好ましい。
【0019】
本発明において、特にカッター刃6は、図2(D)に示すように、スイング動作Sでテープ心線1に切込みを入れることを特徴としている。スイング動作Sを行わせる具体例については後述するが、カッター刃6は、図の左方向に向かってテープ心線1が走行する場合、左側から右側に向かってスイングする。このスイングとは、走行するテープ心線1から離間した位置(イ)から、テープ心線1に接する位置(ロ)に回動し、さらにテープ心線1内に切込む位置(ハ)に回動する形態をいう。
【0020】
カッター刃6のこのスイング動作Sでの切込みは、カッター刃6がテープ心線1の上から直に突き刺して切込む場合に比べて、走行するテープ心線1への切込み開始時の衝撃を緩和し、スムーズな切込みを行うことが可能となる。この結果、カッター刃6がテープ心線1の表面に接触する時に生じる位置ずれが低減され、カッター刃6の切込み位置を精度よく維持して、共通被覆内の光ファイバ心線2を傷つけることなく切込みを形成することが可能となる。
【0021】
図3は、カッター刃6の切込みを精度よく行うことが可能なテープ心線の例を示す図である。図3(A)に示すテープ心線1aは、共通被覆3aの両面を光ファイバ心線2の外面に沿うように波型に成形した例である。図3(B)に示すテープ心線1bは、共通被覆3bの一方の面を光ファイバ心線2の外面に沿うように波型にし、他方の面を平坦に成形した例である。
これらのテープ心線1a,1bの場合は、共通被覆の波型の谷部でカッター刃を位置決めすることができ、切込み部分4を精度よく形成することができる。
【0022】
また、図3(C)に示すテープ心線1cは、光ファイバ心線2間の間隔をあけて、共通被覆3cを連結部7で繋がるように成形した例である。図3(D)に示すテープ心線1dは、光ファイバ心線2間の間隔をあけて、図3(D)の共通被覆3dの連結部7を一方の面側で平坦になるように成形した例である。なお、連結部7を設けることにより、図3(A)(B)のものと比べて光ファイバ心線間の間隔が広がるが、光ファイバ心線2に細径(例えば、0.2mm)のものを用いて、間隔を合わせるようにしてもよい。
【0023】
これらのテープ心線1c,1dは、共通被覆3c,3dの連結部7にカッター刃を当てることで位置決めすることができ、上記の図3(A)(B)の場合と同様に、切込み部分4を精度よく形成することができる。また、光ファイバ心線間に多少の距離があるため、光ファイバ心線に対する損傷がより低減される。
【0024】
図4は、テープ心線に切込みを入れる切込み機構の設置例を示す図である。テープ心線1は、例えば、紙面の右方向から左方向に向けて走行しているものとし、このテープ心線1に対して、光ファイバ心線の本数に応じた複数の切込み機構8a〜8c(光ファイバ心線が4心の場合は3台の切込み機構)が準備される。切込み機構8a〜8cは、例えば、テープ心線1の走行をガイドするガイドローラ9a,9b間で、製造ライン方向(テープ心線の長手方向)にずらせて配置され、それぞれの切込み機構により切込み部分4が形成される。切込み機構8a〜8cで、切込みを入れるタイミングを制御することにより、図1で説明したような切込みの形態(パターン)を変えることができる。
【0025】
図5は、テープ心線1に切込み部分4を入れたあとの後段で、テープ心線1に捻りを加える一例を示す図である。切込み機構8a〜8cにより、間欠的に入れられた切込み部分4は、カッター刃の摩耗等により切込みが不完全で、完全に刃が貫通せずに薄皮状に連結して分離されていな状態となることがある。このような場合は、テープ心線1に捻りを加えることにより、薄皮状になっている部分を引き裂いて分離させることができる。したがって、テープ心線1に切込み部分4を入れた後に、これを捩じる機構、例えば、ガイドローラ9cの方向を変えるなどの機構を用いて捻りを加えるようにしてもよい。
【0026】
図6は、図2で説明したカッター刃をスイング動作でテープ心線に切込みを入れる一例を示し、カム機構を用いた構成例である。このカム機構10は、例えば、図6(A)を用いて説明すると、11はスイング部材で、支持軸12により回動可能に支持してなる。このスイング部材11には、カッター保持部材17により上述したカッター刃6が取付固定される共に、軸部14により保持された従動ローラ13を備えている。15はカム部材で、カム駆動軸16により回転駆動される。また、カム部材15と従動ローラ13は、バネ部材18により互いに接触するように付勢されている。
【0027】
上記のカム機構10は、カム部材15がカム駆動軸16により反時計方向に回転されると、従動ローラ13がカム部材15のカム面に従動して位置が変動する。この従動ローラ13の変動は、スイング部材11に伝わり、スイング部材11は支持軸12の周りを反時計方向に回動する。スイング部材11の回動によって、カッター刃6の位置が反時計方向にスイングするように変位し、走行しているテープ心線1の長手方向に切込まれる。
【0028】
上記のカム機構10により、テープ心線への切込み過程を説明する。まず、図6(A)に示すように、カム部材15の回転位置でカッター刃6は、走行するテープ心線1から離れた状態となり、テープ心線1には切込まれず、隣り合う光ファイバ心線間は、互いに結合された状態が維持される。次いで、図6(B)に示すように、カム部材15の回転により従動ローラ13の位置が変動し、スイング部材11が反時計方向に回動し、カッター刃6がこれに倣って、テープ心線1の上面に接触する位置にスイングする。
【0029】
この後、図6(C)に示すように、カム部材15がさらに回動すると、従動ローラ13によりスイング部材11がさらに回動し、カッター刃6はテープ心線1内に食い込んで、共通被覆への切込みが行われる。カム部材15の回動により、テープ心線1に所定長の切込み行われると、図6(D)に示すように、カム部材15の回転位置により、カッター刃6が、テープ心線6内への食い込み状態から、カッター刃6がテープ心線1の上面に接触する位置にスイングする。次いで、さらなるカム部材15の回転により、図6(E)に示すように、従動ローラ13の変動とスイング部材11の回動により、カッター刃6はテープ心線1の上面から離れ、図6(A)の状態に戻る。
【0030】
上述のカッター刃6による切込み動作は、所定の速度で走行するテープ心線1に対して、スイング状態の挙動を呈し、カッター刃がテープ心線1に切込みを入れる際の衝撃を緩和し、テープ心線への切込みをスムーズに行うことができる。
また、予め共通被覆によりテープ化されたテープ心線に間欠的に切込みを入れるため、接着樹脂を付与したり、UV照射により樹脂硬化の処理を必要としないので、製造線速を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0031】
1…光ファイバテープ心線(テープ心線)、2…光ファイバ心線、3,3a〜3d…共通被覆、4…切込み部分、5…非切込み部分、6…カッター刃、7…連結部、8a〜8c…切込み機構、9a〜9c…ガイドローラ、10…カム機構、11…スイング部材、12…支持軸、13…従動ローラ、14…軸部、15…カム部材、16…カム駆動軸、17…カッター保持部材、18…バネ部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバ心線が平行一列に並べられ共通被覆により一体化された光ファイバテープ心線の隣り合う光ファイバ心線間に、カッター刃により長手方向に間欠的な切込みが入れられた光ファイバテープ心線の製造装置であって、
前記隣り合う光ファイバ心線間に前記カッター刃がスイング動作で、間欠的に切込みを入れる切込み機構を備えていることを特徴とする光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項2】
前記カッター刃は、両刃の断面形状で、切込みを入れる刃部の厚さが0.2mm〜0.5mmであることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項3】
前記切込み機構は、光ファイバ心線の本数に応じて複数備えられ、製造ライン方向にずらせて配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項4】
前記切込み機構の後段に、光ファイバテープ心線に捩じりを加える捩じり機構を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項5】
複数本の光ファイバ心線が平行一列に並べられ共通被覆により一体化された光ファイバテープ心線の隣り合う光ファイバ心線間に、カッター刃により長手方向に間欠的な切込みが入れられた光ファイバテープ心線の製造方法であって、
切込み機構のカッター刃をスイング動作させて、前記隣り合う光ファイバ心線間に間欠的に切込みを入れることを特徴とする光ファイバテープ心線の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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