説明

光ファイバホルダ及び融着接続機

【課題】破損・損傷などの不具合なく光ケーブルを良好に保持することが可能なホルダ及びそれを備えた融着接続機を提供する。
【解決手段】外被16から光ファイバ心線12を延出させた光ケーブル11の端末を保持するホルダ21であって、光ケーブル11の光ファイバ心線12及び外被16部分が配置可能なホルダ本体22と、ホルダ本体22に配置された光ファイバ心線12を押圧して保持する心線保持蓋31と、ホルダ本体22に配置された外被16部分を心線保持蓋31よりも強い押圧力にて押圧して保持する外被保持蓋33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ心線を有する光ケーブルを保持する光ファイバホルダ及びそれを備えた融着接続機に関する。
【背景技術】
【0002】
光ケーブルの光ファイバ心線同士を融着接続する際に、光ファイバ心線を保持するホルダとして、光ケーブルの端部に露出させた光ファイバ心線を載置する細溝を形成したベースと、このベースの細溝に載置した光ファイバ心線を押える蓋とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−207679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記ホルダは、光ファイバ心線同士を融着接続する際に、端部にて口出しした引っ張り強度の弱い光ファイバ心線だけを保持するものであるので、融着作業中に光ファイバ心線を破損・損傷させてしまい、光ファイバ心線同士の融着接続に不具合が生じるおそれがある。
例えば、FTTH(Fiber To The Home)などでは、光通信網の光ファイバコードからクロージャー等の中継器を介して光通信の加入者宅へ光ドロップケーブルによって引き込むこととなるが、光ドロップケーブルの端部における光ファイバ心線同士の融着接続作業に不具合が生じると、光ドロップケーブルを全て引き直さなくてはならず、光ドロップケーブル及びその引き込み作業の無駄を生じてしまう。
【0005】
本発明の目的は、破損・損傷などの不具合なく光ケーブルを良好に保持することが可能な光ファイバホルダ及びそれを備えた融着接続機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできる本発明の光ファイバホルダは、外被から光ファイバ心線を延出させた光ケーブルの端末を保持する光ファイバホルダであって、
前記光ケーブルの光ファイバ心線及び外被部分が配置可能なホルダ本体と、前記ホルダ本体に配置された前記光ファイバ心線を押圧して保持する心線保持部と、前記ホルダ本体に配置された前記外被部分を前記心線保持部よりも強い押圧力にて押圧して保持する外被保持部とを備えていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の光ファイバホルダにおいて、前記心線保持部は、前記ホルダ本体に配置された前記光ファイバ心線を磁力によって押圧する磁石を備え、前記外被保持部は、前記ホルダ本体に配置された前記外被部分を付勢力によって押圧する付勢部材を備えていることが好ましい。
【0008】
また、本発明の光ファイバホルダにおいて、前記ホルダ本体は、前記外被の端面が突き当てられることにより、前記光ケーブルを位置決めする位置決め面を有することが好ましい。
【0009】
また、本発明の光ファイバホルダにおいて、前記心線保持部と前記外被保持部との間に、前記光ケーブルの外被部分を押圧して保持する中間保持部を備えていることが好ましい。
【0010】
本発明の融着接続機は、光ケーブルの光ファイバ心線同士を融着接続する融着接続機であって、
前記光ケーブルの端部を保持する光ファイバホルダとして上記の何れかの光ファイバホルダを備えていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の融着接続機において、前記光ファイバホルダが着脱可能とされていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の融着接続機において、光ファイバ心線同士の融着接続部に被せた熱収縮チューブを熱収縮させるヒータを備え、前記光ケーブルの端部を保持して前記融着接続部を前記ヒータに配置させる光ファイバホルダとして請求項1から4のいずれか一項に記載の光ファイバホルダを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光ファイバホルダによれば、心線保持部と外被保持部とによって、光ケーブルを光ファイバ心線だけでなく外被部分においても保持するので、光ファイバ心線だけを保持することによる光ファイバ心線の破損・損傷などの不具合なく、光ケーブルの端部を確実に保持させることができる。
また、心線保持部による押圧力よりも強い押圧力によって外被保持部が外被部分を強固に保持するので、光ファイバ心線の保持力が弱くても良好に保持することができ、光ファイバ心線の押圧力による影響を抑えることができる。これにより、外被部分に多少の曲がりや歪みなどの癖がついていたとしても、その癖を矯正しつつ良好に保持することができる。
そして、本発明の融着接続機によれば、良好にかつ確実に光ケーブルの端部を保持する光ファイバホルダを備えているので、光ファイバ心線同士を円滑かつ良好に融着接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る光ファイバホルダによって保持する光ドロップケーブルからなる光ケーブルの断面図である。
【図2】本実施形態に係る光ファイバホルダの斜視図である。
【図3】各蓋を閉じた状態の光ファイバホルダの斜視図である。
【図4】外被保持蓋部分における光ファイバホルダの断面図である。
【図5】光ファイバホルダの構成を説明する図であって、(a)は平面図、(b)は一端側から視た側面図、(c)は正面図、(d)は他端側から視た側面図である。
【図6】本実施形態に係る融着接続機の斜視図である。
【図7】融着接続部の補強の仕方を説明する融着接続部の断面図である。
【図8】融着接続部に設置される補強部材の斜視図である。
【図9】融着接続部の補強の仕方を説明する融着接続部の断面図である。
【図10】融着接続部の補強の仕方を説明する融着接続部の断面図である。
【図11】融着接続部の補強の仕方を説明する融着接続部の断面図である。
【図12】融着接続部の補強の仕方を説明する融着接続部の断面図である。
【図13】光ドロップケーブルに対応させた補強部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る光ファイバホルダ及び融着接続機の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本実施形態に係る光ファイバホルダによって保持する光ドロップケーブルからなる光ケーブルの断面図、図2は本実施形態に係る光ファイバホルダの斜視図、図3は各蓋を閉じた状態の光ファイバホルダの斜視図、図4は外被保持蓋部分における光ファイバホルダの断面図、図5は光ファイバホルダの構成を説明する図であって、(a)は平面図、(b)は一端側から視た側面図、(c)は正面図、(d)は他端側から視た側面図である。
【0016】
本実施形態の光ファイバホルダ(以下ホルダと称する)は、光ドロップケーブルあるいは光インドアケーブルなどの光ケーブルの端部を保持するものである。なお、ここでは、光ケーブルとして、光ドロップケーブルを例にとって説明する。
【0017】
図1に示すように、光ドロップケーブルである光ケーブル11は、保護被覆15によって覆われた光ファイバ心線12と、この光ファイバ心線12の両脇に縦添えされた抗張力体18とを合成樹脂製の外被16中に埋設して一括被覆した断面矩形状のケーブル部11aを備えている。このケーブル部11aには、金属線19を有する支持線部11bが縦添えされている。
【0018】
ケーブル部11aと支持線部11bとの間は、薄肉部11cを介して繋がっており、薄肉部11cを切り裂くように切断することで、ケーブル部11aを支持線部11bから分離できるようになっている。また、光ファイバ心線12は、ケーブル部11aの断面中央部に埋設され、その両側に、抗張力体11dが埋設されている。また、このケーブル部11aの表裏には、ノッチ11eが形成されており、これらノッチ11eにてケーブル部11aを引き裂くことにより、光ファイバ心線12を露出させることができる。
本実施形態のホルダ21は、薄肉部11cを切断して支持線部11bから分離させてケーブル部11aのみとした光ケーブル11を保持するものである。
【0019】
次に、本実施形態のホルダ21について図2から図5を用いて説明する。
このホルダ21に保持される光ケーブル11は、その端部において口出しされ、光ファイバ心線12が露出されている。また、光ファイバ心線12は、ガラスファイバ13を被覆14によって覆ったもので、端末処理が施されて被覆14が除去され、ガラスファイバ13が露出されている。また、光ファイバ心線12を覆う保護被覆15が外被16から僅かに露出されている。
【0020】
このように端末処理された光ケーブル11の端部を保持するホルダ21は、ホルダ本体22を有している。
ホルダ本体22は、その上面に、光ケーブル11の外被16部分を収容する外被収容溝23及び光ケーブル11の端部から引き出されている光ファイバ心線12を収容する心線収容溝24が形成されている。
【0021】
外被収容溝23には、心線収容溝24側に、位置決め面25が設けられており、外被収容溝23に収容された光ケーブル11の外被16の端面16aが位置決め面25に突き当てられるようになっている。また、位置決め面25の周囲には、逃げ溝26が形成されている。
また、外被収容溝23と心線収容溝24との間には、外被16から僅かに露出された保護被覆15を収容する保護被覆収容溝27が形成されている。
【0022】
ホルダ本体22には、その一側部に、心線保持蓋(心線保持部)31、中間保持蓋(中間保持部)32及び外被保持蓋(外被保持部)33が設けられている。
心線保持蓋31は、ヒンジ部34を有しており、このヒンジ部34が、ホルダ本体22に形成された保持溝35に配設されている。また、中間保持蓋32も、ヒンジ部36を有しており、このヒンジ部36が、ホルダ本体22に形成された保持溝37に配設されている。
【0023】
また、ホルダ本体22には、保持溝37,39を貫通する連結ピン38が設けられており、この連結ピン38がヒンジ部34,36に形成された図示しない挿通孔に挿通されている。これにより、心線保持蓋31及び中間保持蓋32は、連結ピン38の軸線を中心として、ホルダ本体22に対して回動可能に連結され、これら心線保持蓋31及び中間保持蓋32を回動させることにより、ホルダ本体22の上面が開閉される。そして、心線保持蓋31は、ホルダ本体22の上面側へ向かって回動させることにより、心線収容溝24、保護被覆収容溝27の上部を覆うように配置される。また、中間保持蓋32は、ホルダ本体22の上面側へ向かって回動させることにより、外被収容溝23の一端側における上部を覆うように配置される。
【0024】
心線保持蓋31及び中間保持蓋32には、ホルダ本体22との対向面に、例えば、ゴム等の弾性材料からなる押さえ板部41,42が設けられており、心線保持蓋31及び中間保持蓋32をホルダ本体22の上面側へ向かって回動させることにより、押さえ板部41が、心線収容溝24の上部に配置され、押さえ板42が外被収容溝23の上部に配置される。
【0025】
また、ホルダ本体22には、心線保持蓋31及び中間保持蓋32が連結された一側部と反対側における上面に磁石44が設けられており、心線保持蓋31及び中間保持蓋32をホルダ本体22の上面に配置した際に、これら心線保持蓋31及び中間保持蓋32が磁石44と接触するようになっている。
心線保持蓋31及び中間保持蓋32は、鉄などの磁性体から形成されており、これにより、心線保持蓋31及び中間保持蓋32は、ホルダ本体22の上面に配置された状態にて、磁石44の磁力によって吸着される。
【0026】
外被保持蓋33は、ヒンジ部51を有しており、このヒンジ部51が、ホルダ本体22に形成された一対の支持突部52同士の間に配設されている。外被保持蓋33のヒンジ部51には、図示しない挿通孔が形成されている。また、ホルダ本体22の支持突部52には、連結ピン53が架け渡されており、この連結ピン53がヒンジ部51の挿通孔に挿通されている。これにより、外被保持蓋33は、連結ピン53の軸線を中心として、ホルダ本体22に対して回動可能に連結され、この外被保持蓋33を回動させることにより、ホルダ本体22の上面が開閉される。そして、外被保持蓋33は、ホルダ本体22の上面側へ向かって回動させることにより、外被収容溝23の上部を覆うように配置される。
【0027】
外被保持蓋33には、ケーブル押圧部61が設けられている。このケーブル押圧部61は、圧縮バネ(付勢部材)62によってホルダ本体22側へ向かって付勢された押圧部材63と、この押圧部材63の表面に取り付けられた押さえ板部64とを有している。押さえ板部64は、例えば、ゴム等の弾性材料から形成されており、外被保持蓋33をホルダ本体22の上面側へ向かって回動させることにより、押さえ板部64が、外被収容溝23の上部に配置される。
【0028】
外被保持蓋33は、ホルダ本体22との連結側と反対側に、係止板71を有している。この係止板71は、外被保持蓋33に形成された一対の支持部72同士の間に配置されており、支持ピン73によって回動可能に支持されている。この係止板71には、ホルダ本体22へ向かう回動方向前方側に、ホルダ本体22と外被保持蓋33との連結側へ突出する爪部74が形成されている。この爪部74には、ホルダ本体22へ向かう回動方向前方側の面がテーパ面74aとされている。
【0029】
また、支持ピン73よりもホルダ本体22へ向かう回動方向後方側における係止板71と外被保持蓋33との間には、圧縮バネ75が設けられており、この圧縮バネ75によって、係止板71は、爪部74の突出方向へ向かって回動する方向へ付勢されている。
【0030】
また、ホルダ本体22には、係止板71の爪部74が係止可能な係止爪77が形成されている。この係止爪77は、突出方向に向かって次第に下方へ傾斜するテーパ面77aを有している。
【0031】
そして、外被保持蓋33は、係止爪77に係止板71の爪部74を係止させることにより、ホルダ本体22に対して閉じた状態にロックされる。
【0032】
このように、上記構造のホルダ21は、磁石44の磁力によってホルダ本体22に吸着させて光ケーブル11の光ファイバ心線12及び外被16部分を保持する心線保持蓋31及び中間保持蓋32と、心線保持蓋31及び中間保持蓋32よりも強い圧縮バネ62の付勢力からなる押圧力によって光ケーブル11の外被16部分を保持する外被保持蓋33とを備えている。
【0033】
上記構造のホルダ21に光ケーブル11を保持させるには、まず、光ケーブル11を端末処理する。具体的には、外被16を除去して保護被覆15にて覆われた光ファイバ心線12を露出させ、さらに、保護被覆15を僅かに残して除去し、光ファイバ心線12を露出させる。そして、光ファイバ心線12の被覆14を所定長さだけ除去してガラスファイバ13を露出させる。
【0034】
次に、このように端末処理を施した光ケーブル11をホルダ本体22に収容させる。具体的には、外被16部分を外被収容溝23に収容させ、保護被覆15部分を保護被覆収容溝27に収容させ、また、光ファイバ心線12を心線収容溝24に収容させる。このとき、光ケーブル11を端部方向へ移動させ、外被16の端面16aを位置決め面25に突き当てる。このようにすると、端末処理が施された光ケーブル11が、ホルダ本体22に対して位置決めされた状態に収容される。
【0035】
ここで、外被16の端面16aの縁部には、切断時にバリなどが形成されることがある。しかし、外被16の端面16aを位置決め面25に突き当てた際に、端面16aに形成されていたバリは、位置決め面25の周囲の逃げ溝26へ入り込むこととなる。したがって、外被16の端面16aに形成されたバリに影響を受けることなく、光ケーブル11をホルダ本体22に収容させることができる。
【0036】
ホルダ本体22に光ケーブル11を収容したら、心線保持蓋31、中間保持蓋32及び外被保持蓋33をそれぞれ回動させて閉じる。
このようにすると、心線保持蓋31及び中間保持蓋32は、ホルダ本体22の上面に配置された状態にて、磁石44によって吸着される。これにより、光ファイバ心線12及び被覆14部分が心線保持蓋31の押さえ板41によって押さえ付けられて保持され、また、外被16部分が中間保持蓋32の押さえ板42によって押さえ付けられて保持される。
【0037】
また、外被保持蓋33では、ホルダ本体22側へ回動させることにより、その係止板71の爪部74のテーパ面74aがホルダ本体22の係止爪77のテーパ面77aに当接する。この状態から外被保持蓋33を回動させると、係止板71が圧縮バネ75の付勢力に抗して回動する。さらに外被保持蓋33を回動させると、係止板71の爪部74が係止爪77を乗り越え、圧縮バネ75の付勢力によって係止板71が逆方向へ回動し、これにより、爪部74が係止爪77に係止し、外被保持蓋33がホルダ本体22に対してロックされる。
このとき、圧縮バネ62によってホルダ本体22側へ向かって付勢された押圧部材63によって押さえ板部64が光ケーブル11の外被16部分に押し付けられる。これにより、光ケーブル11の外被16部分が強固に保持される。
【0038】
このように、ホルダ21では、光ケーブル11を、光ファイバ心線12部分だけでなく、外被16部分においても確実に保持する。
なお、光ケーブル11を取り外す場合は、心線保持蓋31、中間保持蓋32及び外被保持蓋33をそれぞれ逆方向へ回動させてホルダ本体22の上面を開き、光ケーブル11の保持を解除すれば良い。
【0039】
なお、心線保持蓋31及び中間保持蓋32は、磁石44の磁力に抗して逆方向へ回動させる。また、外被保持蓋33は、係止板71を、圧縮バネ75の付勢力に抗して回動させることにより、爪部74の係止爪77への係止状態を解除してから逆方向へ回動させる。
【0040】
次に、融着接続機について説明する。
図6は融着接続機の斜め上方から見た斜視図である。
図6に示すように、融着接続機101は、例えば、光ファイバ設備の工事が行われる現地にて光ケーブル11の光ファイバ心線12同士を融着接続する装置である。
この融着接続機101は、光ケーブル11の端部を保持したホルダ21が着脱可能に取り付けられる一対のホルダ装着部103を装備した融着処理部104を備えている。そして、ホルダ装着部103にホルダ21を装着することにより、それぞれのホルダ21に保持された光ケーブル11の光ファイバ心線12が融着位置に位置決めされる。なお、各ホルダ装着部103には、対称構造のホルダ21が装着される。
【0041】
融着処理部104は、それぞれのホルダ装着部103に装着されたホルダ21から延出する光ファイバ心線12の先端位置を位置決めする一対のV溝部材109と、これら一対のV溝部材109間に配置されて、突き合された光ファイバ心線12同士のガラスファイバ13の端面を放電によって融着させる電極113とを備えている。
そして、融着処理部104では、融着位置に位置決めされた光ファイバ心線12同士を、そのガラスファイバ13部分にて熱融着して接続する。
【0042】
光ファイバ心線12を位置決めするV溝部材109は、互いに接続する光ファイバ心線12を一直線上に支持・位置決めするように寸法設定されている。
ホルダ装着部103は、予めホルダ21を装着しておいても良い。その場合は、ホルダ装着部103に装着されているホルダ21に、端末処理を施した光ケーブル11を保持させる。
なお、融着処理部104は、不図示の開閉カバーによって開閉されるようになっている。
【0043】
また、融着接続機101は、光ファイバ心線12同士の融着接続部S(図7参照)の外周に被せた後述する接着チューブ(熱収縮チューブ)134及び保護チューブ(熱収縮チューブ)135をヒータにより加熱収縮させる熱収縮処理部116を備えている。熱収縮処理部116は、専用の開閉カバー118を備え、融着処理部104に隣接して装備されている。
【0044】
この熱収縮処理部116にも、光ケーブル11の端部を保持するホルダ21が着脱可能に取り付けられるホルダ装着部121を備えている。そして、ホルダ装着部121にホルダ21を装着することにより、熱収縮処理部116に、光ファイバ心線12同士の融着接続部Sが位置決めされて配置される。
【0045】
この熱収縮処理部116は、接着チューブ134及び保護チューブ135を加熱して熱収縮させる不図示のヒータが装備されている。この熱収縮処理部116は、接着チューブ134及び保護チューブ135の中央部を高温で加熱収縮し、そのあとで端部が収縮するように、ヒータに加熱温度分布を設けている。これにより、加熱時に接着チューブ134及び保護チューブ135内に発生した気泡が、両端部から抜けやすくされている。
また、融着接続機101には、融着処理部104及び熱収縮処理部116を作動させる操作部119を備えている。
【0046】
次に、光ケーブル11の光ファイバ心線12同士を融着接続する場合について説明する。
まず、互いに接続するそれぞれの光ケーブル11に端末処理を施し、光ファイバ心線12及びガラスファイバ13を露出させる。
【0047】
次いで、これら光ケーブル11の端末部分を、ホルダ21に保持させる(図2及び図3参照)。このとき、何れか一方の光ケーブル11に、接着チューブ134及び保護チューブ135を通しておく。
ホルダ21に光ケーブル11を保持させたら、ガラスファイバ13を切断機で所定長さにカットして端面を成形し、それぞれのホルダ21を融着接続機101のホルダ装着部103に装着する(図6参照)。
【0048】
このようにすると、ホルダ21から延出された光ファイバ心線12のガラスファイバ13が、融着処理部104のV溝部材109によって位置決めされ、ガラスファイバ13の端部が電極113による融着位置にて突き合わされる。
この状態にて、融着接続機101の操作部119を操作して電極113にて放電させ、光ファイバ心線12のガラスファイバ13の端面同士を融着接続させる。
光ファイバ心線12同士を融着接続させたら、それぞれのホルダ21の心線保持蓋31、中間保持蓋32及び外被保持蓋33を開いて光ケーブル11を取り外す。
【0049】
次に、図7に示すように、光ケーブル11同士の融着接続部Sに、補強部材131を沿わせる。
ここで、この補強部材131は、例えば、ステンレスなどの金属、あるいはガラスやセラミックスから形成されたもので、図8に示すように、平面部132と、断面視円弧状の曲面部133とを有している。この補強部材131の平面部132は、その中央部分に対して両端側を曲面部133側へ凹ますことにより、両端側が中央部分よりも低くされている。そして、中央部分は、光ファイバ心線12部分が配置される心線配置領域132aとされ、両端側の凹んだ部分は、光ケーブル11の外被16が配置される外被配置領域132bとされている。
【0050】
そして、この補強部材131の平面部132の心線配置領域132aに、融着接続部Sを含む光ファイバ心線12部分を配置させ、外被配置領域132bに外被16部分を配置させる。
【0051】
この状態にて、接着性を有する熱収縮樹脂からなる接着チューブ134をスライドさせ、図9に示すように、補強部材131を沿わせた融着接続部Sに接着チューブ134を被せる。
【0052】
ここで、接着チューブ134は、融着接続部Sを含む光ファイバ心線12部分の長さ寸法L1よりも長い長さ寸法L2とされている。したがって、補強部材131を沿わせた融着接続部Sに、接着チューブ134を被せると、接着チューブ134は、その両端が、それぞれの光ケーブル11の外被16部分にわたって配設される。
【0053】
このように、接着チューブ134を装着したら、熱収縮処理部116の開閉カバー118を開き、それぞれの光ケーブル11を、熱収縮処理部116のそれぞれのホルダ21に保持させる。
このようにすると、接着チューブ134を被せた光ファイバ心線12の融着接続部Sが熱収縮処理部116に位置決めされて配置される。
【0054】
この状態にて、融着接続機101の操作部119を操作することにより、ヒータを発熱させる。このようにすると、ヒータによって接着チューブ134が、その中央部から順に熱収縮し、補強部材131を沿わせた融着接続部Sに接着チューブ134が密着する。これにより、光ケーブル11の光ファイバ心線12同士の融着接続部Sは、補強部材131が沿わされ、さらに、密着した接着チューブ134によって覆われて一体化される。
【0055】
次に、図10に示すように、光ケーブル11をホルダ21から取り外して熱収縮樹脂からなる保護チューブ135をスライドさせ、接着チューブ134によって覆われた融着接続部Sに保護チューブ135を被せる。
【0056】
ここで、保護チューブ135も、融着接続部Sを含む光ファイバ心線12部分の長さ寸法L1よりも長い長さ寸法L3とされている。したがって、接着チューブ134によって覆われた融着接続部Sに保護チューブ135を被せると、保護チューブ135は、その両端が、それぞれの光ケーブル11の外被16部分にわたって配設される。
【0057】
また、接着チューブ134の長さ寸法L2は、保護チューブ135の長さ寸法L3よりも長くされており、したがって、接着チューブ134によって覆われた融着接続部Sに保護チューブ135を被せると、接着チューブ134の両端部が、保護チューブ135の両端部から長手方向の外側に突出される。なお、保護チューブ135の両端部からの接着チューブ134の両端部の突出寸法は、約0.5〜1.0mmとするのが好ましい。
【0058】
このように、保護チューブ135を装着したら、光ケーブル11を、熱収縮処理部116のホルダ21に保持させる。
このようにすると、保護チューブ135を被せた光ファイバ心線12の融着接続部Sが熱収縮処理部116に位置決めされて配置される。
【0059】
この状態にて、融着接続機101の操作部119を操作することにより、ヒータを発熱させる。このようにすると、ヒータによって保護チューブ135が、その中央部から順に熱収縮し、接着チューブ134によって覆われた融着接続部Sに保護チューブ135が密着する。これにより、図11に示すように、光ケーブル11の光ファイバ心線12同士の融着接続部Sは、補強部材131が沿わされ、さらに、密着した接着チューブ134及び保護チューブ135によって覆われて補強される。
【0060】
ここで、融着接続部Sに、接着チューブ134及び保護チューブ135を熱収縮させて密着させた状態にて、接着チューブ134及び保護チューブ135の外被16に対して長手方向へ被る寸法L4が7mm以上とされる。
つまり、接着チューブ134及び保護チューブ135の長さ寸法L2,L3は、熱収縮させて融着接続部Sに密着させたときに、それぞれの光ケーブル11の外被16に対して、長手方向に7mm以上被るように予め設定されている。
【0061】
上記のように補強された融着接続部Sを屋外に設置する場合は、この融着接続部Sに、図12に示すように、耐候性チューブ136を被せて熱収縮させ、融着接続部Sを保護する。この耐候性チューブ136としては、例えば、電子線架橋軟質ポリオレフィン樹脂からなるチューブが用いて好適であり、この耐候性チューブ136によって融着接続部Sをさらに良好に保護することができる。
特に、接着チューブ134及び保護チューブ135として、融着接続部Sを目視可能とすべく透明な樹脂から形成したものである場合は、紫外線の影響を抑えることができる。
【0062】
なお、この耐候性チューブ136の代わりに、融着接続部Sに、電子線架橋軟質ポリオレフィン樹脂からなるテープを巻き付けて熱収縮させ、融着接続部Sを保護しても良い。
また、融着接続部Sを金属製の円筒などによって覆っても良く、このようにすると、より一層、融着接続部Sを強固に補強することができる。
【0063】
以上、説明したように、本実施形態のホルダによれば、心線保持蓋31と外被保持蓋33とによって、光ケーブル11を光ファイバ心線12だけでなく外被16部分においても保持するので、光ファイバ心線12だけを保持することによる光ファイバ心線12の破損・損傷などの不具合なく、光ケーブル11の端部を確実に保持させることができる。
また、心線保持蓋31による押圧力よりも強い押圧力によって外被保持蓋33が外被16部分を強固に保持するので、光ファイバ心線12の保持力が弱くても良好に保持することができ、光ファイバ心線12の押圧力による影響を抑えることができる。これにより、外被16部分に多少の曲がりや歪みなどの癖がついていたとしても、その癖を矯正しつつ良好に保持することができる。
【0064】
また、心線保持蓋31では、磁石44の磁力によって光ファイバ心線12を保持し、外被保持蓋33では、圧縮バネ75の付勢力によって外被16部分を保持するので、外力に弱い光ファイバ心線12に対する押圧力を極力小さくして影響を少なくし、また、外力に強い外被16部分を大きな押圧力確実に保持することができる。
【0065】
また、ホルダ本体22に、外被16の端面16aが突き当てられる位置決め面25を設けたので、この位置決め面25に外被16の端面16aを突き当てることにより、光ケーブル11をホルダ本体22に対して容易に位置決めすることができる。
さらに、心線保持蓋31と外被保持蓋33との間に、光ケーブル11の外被16部分を押圧して保持する中間保持蓋32を設けたので、心線保持蓋31と外被保持蓋33との中間部における光ケーブル11の歪みを抑えることができ、さらに良好に光ケーブル11を保持することができる。
【0066】
そして、本実施形態に係る融着接続機によれば、良好にかつ確実に光ケーブル11の端部を保持するホルダ21を備えているので、光ファイバ心線12同士を円滑かつ良好に融着接続することができる。
特に、ホルダ21が着脱可能であれば、ホルダ21に光ケーブル11の端部を保持させてからホルダ21を融着接続機101に装着することができ、作業性を向上させることができる。
【0067】
また、光ファイバ心線12同士の融着接続部Sに被せた接着チューブ134及び保護チューブ135を熱収縮させるヒータを備えた熱収縮処理部116にもホルダ21を設けたので、熱収縮処理部116に対して容易にかつ確実に光ケーブル11を保持させ、ヒータへ融着接続部Sを位置決めすることができる。これにより、熱収縮処理部116における作業性も向上させることができる。
【0068】
なお、上記実施形態では、接続する光ケーブル11として、断面矩形状の光ドロップケーブルを例にとって説明したが、適用可能な光ケーブル11は、光ドロップケーブルに限定されない。例えば、断面円形の光ファイバコードからなる光ケーブル11の光ファイバ心線12同士を接続する場合にも適用可能である。
【0069】
断面矩形状の光ドロップケーブルからなる光ケーブル11に用いる補強部材131としては、図13に示すように、外被配置領域132bに、光ドロップケーブルからなる光ケーブル11の外被16部分の外形に沿う断面形状の溝部132cを形成するのが好ましい。
【0070】
このように、補強部材131における外被16部分が配置される外被配置領域132bに、外被16部分が収容可能な溝部132cを形成し、溝部132c内に外被16部分を配置させることにより、外被16への補強部材131の装着性を高めることができ、より良好に一体化させることができる。
【0071】
なお、上記の融着接続機101では、各ホルダ21を着脱可能としたが、ホルダ21は融着接続機101に固定されていても良い。
また、上記融着接続機101では、一つのヒータを有する熱収縮処理部116を備え、この熱収縮処理部116によって、接着チューブ134及び保護チューブ135をそれぞれ熱収縮させたが、熱収縮処理部116に二つのヒータを設け、それぞれのヒータにて接着チューブ134及び保護チューブ135をそれぞれ熱収縮させても良い。
【符号の説明】
【0072】
11:光ケーブル、12:光ファイバ心線、16:外被、16a:端面、21:ホルダ(光ファイバホルダ)、22:ホルダ本体、25:位置決め面、31:心線保持蓋(心線保持部)、32:中間保持蓋(中間保持部)、33:外被保持蓋(外被保持部)、44:磁石、62:圧縮バネ(付勢部材)、101:融着接続機、134:接着チューブ(熱収縮チューブ)、135:保護チューブ(熱収縮チューブ)、S:融着接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外被から光ファイバ心線を延出させた光ケーブルの端末を保持する光ファイバホルダであって、
前記光ケーブルの光ファイバ心線及び外被部分が配置可能なホルダ本体と、前記ホルダ本体に配置された前記光ファイバ心線を押圧して保持する心線保持部と、前記ホルダ本体に配置された前記外被部分を前記心線保持部よりも強い押圧力にて押圧して保持する外被保持部とを備えていることを特徴とする光ファイバホルダ。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバホルダであって、
前記心線保持部は、前記ホルダ本体に配置された前記光ファイバ心線を磁力によって押圧する磁石を備え、前記外被保持部は、前記ホルダ本体に配置された前記外被部分を付勢力によって押圧する付勢部材を備えることを特徴とする光ファイバホルダ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ファイバホルダであって、
前記ホルダ本体は、前記外被の端面が突き当てられることにより、前記光ケーブルを位置決めする位置決め面を有することを特徴とする光ファイバホルダ。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の光ファイバホルダであって、
前記心線保持部と前記外被保持部との間に、前記光ケーブルの外被部分を押圧して保持する中間保持部を備えていることを特徴とする光ファイバホルダ。
【請求項5】
光ケーブルの光ファイバ心線同士を融着接続する融着接続機であって、
前記光ケーブルの端部を保持するホルダとして請求項1から4のいずれか一項に記載の光ファイバホルダを備えていることを特徴とする融着接続機。
【請求項6】
請求項5に記載の融着接続機であって、
前記ホルダが着脱可能とされていることを特徴とする融着接続機。
【請求項7】
請求項5または6に記載の融着接続機であって、
光ファイバ心線同士の融着接続部に被せた熱収縮チューブを熱収縮させるヒータを備え、前記光ケーブルの端部を保持して前記融着接続部を前記ヒータに配置させる光ファイバホルダとして請求項1から4のいずれか一項に記載の光ファイバホルダを備えることを特徴とする融着接続機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−211066(P2010−211066A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58616(P2009−58616)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(399040405)東日本電信電話株式会社 (286)
【Fターム(参考)】