説明

光ファイバ分布型センサ及び光ファイバ分布型検知方法

【課題】温度分布測定又は歪分布測定の効率を向上させること。
【解決手段】光ファイバ分布型センサ1では、光源14から出力されたプローブ光及びポンプ光が、測定対象物Mに設置された光ファイバ11に対向入射し、光ファイバ11において発生したブリルアン散乱光により利得を得たプローブ光のBGSが、スペクトル測定部18によって測定される。そして、測定対象物Mの一部分で温度変化又は歪変化が発生し、その位置が検知された場合に、区間制御部13によってBGSを発生させる区間の長さがより小さく設定される。よって、温度変化又は歪変化が発生した位置付近においてより細かい間隔でBGSを発生させることができる。従って、温度変化又は歪変化が発生した位置を高精度に特定することができる。温度変化又は歪変化が検知されなければ、比較的低い精度で測定するので、測定時間を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバから出力されるブリルアン散乱光を利用して、光ファイバの温度変化又は歪変化を検知する光ファイバ分布型センサ及び光ファイバ分布型検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバから出力されるブリルアン散乱光のブリルアンゲインスペクトル(以下、「BGS」という)の形状は、光ファイバの温度及び歪により変化する。この変化を利用して温度及び歪を測定する技術がある。
【0003】
ブリルアン散乱光のBGSを測定する技術として、BOCDA(Brillouin Optical Correlation Domain Analysis)が知られている(下記非特許文献1参照)。このBOCDAでは、互いに同じ変調周波数及び変調指数で周波数変調されたプローブ光及びポンプ光を光ファイバの両端から対向入射させると共に、プローブ光及びポンプ光それぞれの中心周波数の差(以下「光周波数差」という)を掃引して、相関ピークを示す位置において発生するブリルアン散乱光のスペクトルを測定する。
【0004】
BGSは、プローブ光及びポンプ光の変調周波数及び変調指数に依存する区間内で発生する。その区間の位置は、プローブ光及びポンプ光の位相差に依存する。
【非特許文献1】Kazuo HOTATE, et al., 「Simplified Systemof Fiber Brillouin Optical Correlation Domain Analysis for Distributed StrainSensing」, 第16回光ファイバセンサ国際会議(OFS-16), 2003年10月, We2-3, p.290-293
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記BOCDAにおいては、BGSが発生する区間の幅を小さくして光ファイバの長手方向に沿った測定点を細かく取ることにより、高精度に温度分布又は歪分布を測定することができる。しかしながら、この場合、測定点が多くなるために測定時間が長くなり、測定効率が低下する。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、温度分布測定又は歪分布測定の効率を向上させることを可能とする光ファイバ分布型センサ及び光ファイバ分布型検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光ファイバ分布型センサは、同一の変調周波数及び変調指数で変調されると共に互いの位相差が設定されたプローブ光及びポンプ光を出力する光源と、測定対象物に設置され、光源から出力されたプローブ光及びポンプ光を両端からそれぞれ入力し、当該入力したプローブ光及びポンプ光の伝搬に伴い発生するブリルアン散乱光を出力する光ファイバと、光ファイバから出力されたプローブ光を受光し、ブリルアン散乱光によって利得を受けたプローブ光の利得ペクトル(BGS)の形状データを測定するスペクトル測定部と、変調周波数又は変調指数を制御することによりBGSを発生させる区間の長さを設定すると共に、位相差を制御することにより区間の位置を光ファイバの長手方向に沿って設定する制御部と、スペクトル測定部によって測定されたBGSの形状データに基づいて光ファイバの温度変化又は歪変化が発生した位置を検知する検知部とを備え、制御部は、区間の位置と区間の長さのパターンを時間帯毎に設定し、設定されたパターンに基づいて測定するよう指示することを特徴とする。
【0008】
本発明の光ファイバ分布型センサでは、光源が、同一の変調周波数及び変調指数で変調されると共に互いの位相差が設定されたプローブ光及びポンプ光を出力し、測定対象物に設置された光ファイバが、光源から出力されたプローブ光及びポンプ光を両端からそれぞれ入力し、当該入力したプローブ光及びポンプ光の伝搬に伴い発生するブリルアン散乱光を出力し、スペクトル測定部が、光ファイバから出力されたプローブ光を受光してBGSの形状データを測定し、制御部が、変調周波数又は変調指数を制御することによりBGSを発生させる区間の長さを設定すると共に、位相差を制御することにより区間の位置を光ファイバの長手方向に沿って設定し、検知部が、スペクトル測定部によって測定されたBGSの形状データに基づいて光ファイバの温度変化又は歪変化が発生した位置を検知する。そして、制御部が、検知部によって測定対象物上のある領域で光ファイバの温度変化又は歪変化の発生が検知された場合に、ある領域において区間の長さをより小さく設定し、再度のBGSの形状データを測定するよう指示する。よって、ある領域において温度変化又は歪変が発生するまでは、区間の長さを比較的大きく設定して測定効率を向上させることができる。また、ある領域において温度変化又は歪変が発生した場合に、温度変化又は歪変が発生した箇所の区間の長さをより小さく設定して精度よく測定することができる。
【0009】
本発明の光ファイバ分布型検知方法では、光源が、同一の変調周波数及び変調指数で変調されると共に互いの位相差が設定されたプローブ光及びポンプ光を出力し、制御部が、変調周波数又は変調指数を制御することによりBGSを発生させる区間の長さを設定すると共に、位相差を制御することにより区間の位置を光ファイバの長手方向に沿って設定し、光ファイバが、測定対象物に設置され、光源から出力されたプローブ光及びポンプ光を両端からそれぞれ入力し、当該入力したプローブ光及びポンプ光の伝搬に伴い発生するブリルアン散乱光を出力し、スペクトル測定部が、光ファイバから出力されたプローブ光を受光し、当該受光したプローブ光のBGSの形状データを測定する測定ステップと、検知部が、測定ステップにおいて測定されるBGSの形状データに基づいて光ファイバの温度変化又は歪変化が発生した位置を検知する検知ステップと、検知ステップにおいて測定対象物上のある領域で光ファイバの温度変化又は歪変化の発生が検知された場合に、ある領域において変調周波数又は変調指数を制御することによりBGSを発生させる区間の長さをより小さな他の値に設定すると共に、位相差を制御することによりある領域を含む領域に設定し、再度のBGSの形状データを測定する制御ステップとを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の光ファイバ分布型検知方法では、光源が、同一の変調周波数及び変調指数で変調されると共に互いの位相差が設定されたプローブ光及びポンプ光を出力し、制御部が、変調周波数又は変調指数を制御することによりBGSを発生させる区間の長さを設定すると共に、位相差を制御することにより区間の位置を光ファイバの長手方向に沿って設定し、光ファイバが、測定対象物に設置され、光源から出力されたプローブ光及びポンプ光を両端からそれぞれ入力し、当該入力したプローブ光及びポンプ光の伝搬に伴い発生するブリルアン散乱光を出力し、スペクトル測定部が、光ファイバから出力されたブリルアン散乱光を受光し、当該受光したブリルアン散乱光のBGSの形状データを測定する。また、検知部が、測定ステップにおいて測定されるBGSの形状データに基づいて光ファイバの温度変化又は歪変化が発生した位置を検知し、検知部が測定対象物上のある領域で光ファイバの温度変化又は歪変化の発生を検知した場合に、ある領域において変調周波数又は変調指数を制御することによりBGSを発生させる区間の長さをより小さな他の値に設定すると共に、位相差を制御することによりある領域を含む領域に設定し、再度のBGSの形状データを測定する。よって、ある領域において温度変化又は歪変が発生するまでは、区間の長さを比較的大きく設定して測定効率を向上させることができる。また、ある領域において温度変化又は歪変が発生した場合に、温度変化又は歪変が発生した箇所の区間の長さをより小さく設定して精度よく測定することができる。
【0011】
本発明の光ファイバ分布型検知方法では、1回目のBGSの形状データの測定において、区間の長さを測定対象物上の全領域を測定することが可能な所定の長さに設定し、全領域を測定し、再度のBGSの形状データの測定において、ある領域においてのみ他の値に設定することも好ましい。
【0012】
このようにすることにより、1回目のBGSの形状データの測定において、測定対象物上の全領域を測定し、再度のBGSの形状データの測定において、ある領域を精度よく測定することができる。すなわち、温度分布測定又は歪分布測定の精度を的確に向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、温度分布測定又は歪分布測定の効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、第1実施形態に係る光ファイバ分布型センサ1の構成を示す。光ファイバ分布型センサ1は、一部が測定対象物Mと接して設置された光ファイバ11から出力されるブリルアン散乱光により利得を得たプローブ光のBGS形状に基づいて、測定対象物Mの温度分布測定又は歪分布測定を行う装置である。
【0016】
ブリルアン散乱光は、光ファイバに入力されたポンプ光と、ポンプ光によって光ファイバ中に発生する音響波との相互作用により、ポンプ光の進行方向とは逆の方向にダウンコンバートされる散乱光である。BGSは、ブリルアン散乱光によって利得を受けたプローブ光の利得スペクトルである。
【0017】
図2は、BGSを示すグラフである。図2に示すように、BGSは、プローブ光とポンプ光との光周波数差をνとして、式(1)のローレンツ型関数で表される。
【数1】


式(1)において、g0は最大ゲイン、νBは中心周波数、ΔνBは線幅(半値全幅)を示す。最大ゲインg0、中心周波数νB、及び線幅ΔνBは、BGSを特徴付けるパラメタである。これらのパラメタは、光ファイバにおけるブリルアン散乱光が発生した発生位置の温度又は歪に依存して変化する。
【0018】
このブリルアン散乱光は、光ファイバに対向入射したプローブ光とポンプ光との相関ピークを示す位置において発生する。ブリルアン散乱光は、プローブ光及びポンプ光の周波数変調の変調周波数及び変調指数に依存する幅の区間内で発生する。BGSを発生させる区間の長さは、式(2)によって示される。
【数2】


式(2)において、uはプローブ光及びポンプ光の群速度、mは変調指数、νは変調周波数を示す。なお、この区間の位置は、プローブ光及びポンプ光の位相差に依存する。
【0019】
光ファイバ分布型センサ1では、各区間で発生させたBGSを測定し、そのBGS形状の変化に基づいてBGSが発生した区間の温度変化又は歪変化を検出し、光ファイバ11に沿った温度分布又は歪分布を測定することができる。
【0020】
測定対象物Mは、超伝導モータの超伝導コイルである。超伝導コイルを超伝導状態に保つためには、超伝導材を一定温度以下に保つ必要がある。また、超伝導材に流すことのできる電流は、超伝導材の温度に依存する。これらの理由から、超伝導コイルの温度分布を測定することは重要である。
【0021】
測定対象物Mである超伝導コイルは、本実施形態では、超伝導材をリール状に巻いて内周0.5m、外周1.0mの環状にそれぞれ形成された20巻のリールM1〜M20を重ねて中空円筒状に形成されている。
【0022】
光ファイバ11は、図1及び図3に示すように、測定対象物Mの内側面及び外側面に沿って螺旋状に巻かれて、リールM1〜M20の内側面及び外側面をそれぞれ1周するように設置されている。図4は、光ファイバ11における測定対象物Mに接する始点から終点の各位置に対して、その各位置と接する測定対象物Mの各部分を示す。
【0023】
図4に示すように、光ファイバ11における0m(始点)〜約10mまでの区間は各リールM1〜M20の内周面に接し、長さ0.5m当たりが1つのリールに相当する。それに続く約10m〜約20mの区間はリールM20〜M11の外周面に接し、長さ1.0m当たりが1つのリールに相当する。更にそれに続く約20m〜約30m(終点)の区間はリールM10〜M1の外周面に接し、長さ1.0m当たりが1つのリールに相当する。なお、光ファイバ11についてリール20の内周面から外周面をつなぐ部分は、図4において省略されている。
【0024】
引き続き、図1を参照して光ファイバ分布型センサ1の構成について詳細に説明する。光ファイバ分布型センサ1は、上述したように測定対象物Mに設置された光ファイバ11、位置制御部12、区間制御部13、光源14、光分岐器15、光遅延器16、サーキュレータ17、スペクトル測定部18、及び検知部19を備える。
【0025】
位置制御部12は、光源14が出力するプローブ光とポンプ光との位相差を制御することにより、光ファイバ11においてBGSを発生させる区間の位置を設定する。位相差の制御は、位置制御部12が、プローブ光とポンプ光との位相差を指示する位相指示値を光源14へ出力することにより実行する。位相指示値は、位相差の値であっても良いし、他方の光の位相を固定した場合は一方の光の位相を示す値であってもよい。
【0026】
位置制御部12は、通常、測定対象物M上の光ファイバ11の長手方向に沿った各区間でBGSを発生させるように位相指示値を設定する。検知部19によって温度変化又は歪変化が発生した位置が検知された場合は、検知部19によって検知された位置付近における長手方向に沿って新たに設定された各区間でBGSを発生させるように位相差を制御する。
【0027】
区間制御部13は、光源14がプローブ光及びポンプ光を変調する変調周波数及び変調指数を制御することにより、BGSが発生する区間の長さを設定する。変調周波数及び変調指数の制御は、区間制御部13が、変調周波数及び変調指数を指示する変調指示値を光源14へ出力することにより実行する。
【0028】
区間制御部13は、検知部19によって温度変化又は歪変化が発生した位置が検知された場合に、区間の長さをより小さくするように、変調周波数及び変調指数を制御する。例えば、区間制御部13は、通常、区間の長さが10m程度となるように変調指示値を設定し、検知部19が温度変化を検知すると、区間の長さが1m程度となるように変調指示値を設定し、再度のBGS形状データを測定するようスペクトル測定部18へ指示を出力する。更に、区間制御部13は、検知部19が温度変化を検知すると区間の長さが0.5m程度となるように変調指示値を設定し、再度のBGS形状データを測定するようスペクトル測定部18へ指示を出力する。
【0029】
光源14は、位置制御部12から出力された変調指示値に応じて互いに同じ変調周波数及び変調指数で変調すると共に、区間制御部13から出力された位相指示値に応じて互いの位相差を設定したプローブ光及びポンプ光を出力する。また、光源14は、プローブ光及びポンプ光の光周波数差を掃引して出力する。
【0030】
例えば、光源14は、プローブ光とポンプ光とを約100μ秒程度の周期で交互に出力する。光源14は、同一の変調周波数及び変調指数で変調すると共に、プローブ光とポンプ光と位相差を設定する。同時に、光源14は、プローブ光の中心周波数に対して10〜11GHzの範囲でポンプ光の中心周波数をシフトすることにより、プローブ光とポンプ光との光周波数差を10〜11GHzの範囲で掃引する。
【0031】
光分岐器15は、光源14から出力されたプローブ光とポンプ光とを分岐する。
【0032】
光遅延器16は、10Km程度の光ファイバで構成され、光分岐器15によって分岐されたプローブ光を入力して50μ秒程度の遅延を与える。このようにすることにより、光源14から100μ秒周期で交互に出力されるプローブ光とポンプ光とのタイミングを一致させることができる。
【0033】
光ファイバ11は、一端が光遅延器16に接続されて、光遅延器16から出力されたプローブ光を入力する。光ファイバ11の他端は、光分岐器15によって分岐されたポンプ光を入力する。光ファイバ11では、対向入射したプローブ光及びポンプ光の伝搬に伴い位相差に依存する位置でブリルアン散乱光が発生し、発生したブリルアン散乱光が出力される。
【0034】
スペクトル測定部18は、光ファイバ11からサーキュレータ17を経て出力され、ブリルアン散乱光により利得を得たプローブ光を受光し、受光したプローブ光のBGSの形状データを測定する。スペクトル測定部18は、光ファイバ11において測定対象物Mと接した各位置において発生するブリルアン散乱光により利得を得たプローブ光のBGSの形状データを測定する。スペクトル測定部18は、BSG形状を示す測定値を検知部19へ出力する。測定値として、BGS形状を特徴付けるパラメタを用いる。
【0035】
検知部19は、スペクトル測定部18から出力された測定値に基づいて、光ファイバ11の温度変化又は歪変化が発生した位置を検知する。検知部19は、予め、通常温度又は通常の歪状態のときのBGS形状を格納している。検知部19は、格納されたBGS形状データと、スペクトル測定部18から出力された測定値とを比較して、変化を検出する。
【0036】
検知部19は、BGS形状の変化を検知すると、区間制御部13及び位置制御部12によって出力された変調指示値及び位相指示値を参照して、BGSが発生した位置を特定する。そして、特定した位置を示す信号を位置制御部12及び区間制御部13へ出力する。この信号に応じて、位置制御部12及び区間制御部13は、BGSを発生させる区間の長さ及びその区間の位置を設定する。
【0037】
引き続いて、図5及び図6を参照して光ファイバ分布型センサ1の動作について説明する。例として、リール4の内側に異常が発生して、温度が上昇した場合について説明する。図6(a)は、図4と同様に、光ファイバ11における測定対象物Mに接する始点から終点の各位置に対して、その各位置と接する測定対象物Mの各部分を示す。
【0038】
まず、区間制御部13によって変調指示値が出力されて、BGSを発生させる区間の長さが初期値として10m程度に設定される(S1)。BGSを発生させる区間の長さが初期値に設定されると、位置制御部12によって位相指示値が出力されて、図6(b)に示すように、BGSを発生させる区間(測定区間)が設定される(S2)。区間の長さは初期値として約10mに設定され、0〜10mの区間、10m〜20mの区間、20m〜30mの区間のいずれかに測定区間が設定される(制御ステップ)。
【0039】
測定区間が設定されると、変調指示値に応じて変調されると共に位相指示値に応じて位相差が設定されたプローブ光及びポンプ光が、その光周波数差を掃引されて光源14によって出力される。出力されたプローブ光及びポンプ光が、光ファイバ11に対向入射し、光ファイバ11において発生するブリルアン散乱光が、光ファイバ11から出力される。そして、ブリルアン散乱光により利得を得たプローブ光が、スペクトル測定部18によって受光され、そのBGSが測定される(S3)。
【0040】
BGSが測定されると、測定区間のBGS形状に変化があるか否かに基づいて温度変化の有無が判定され、温度変化がない場合(S4でNO)は、ステップ2に戻り、新たな測定区間が設定される。このようにして、温度変化が発生するまでは、区間の長さが10m程度の状態で、光ファイバ11の長手方向に沿った各区間(図6(b))が順に測定される。
【0041】
温度変化がある場合(S4でYES)は、その測定区間が検知される(S5)。0〜10mの区間における温度変化が検知されると、区間制御部13によって変調指示値が出力され、区間の長さが1m程度に設定される(S6)。区間の長さが小さく設定されると、位置制御部12によって位相指示値が出力され、図6(c)に示すように、BGSを発生させる区間が新たに設定される(S7)。区間の長さが約1mに設定されると、0〜1.0mの区間、1.0〜2.0mの区間、・・・、9.0〜10.0mの区間のいずれかに測定区間が設定される。
【0042】
測定区間が設定されると、ステップ3と同様にして、BGSが測定される(S8)。BGSが測定されると、測定位置のBGS形状に変化があるか否かに基づいて温度変化の有無が判定され、温度変化がない場合(S9でNO)は、ステップ7に戻り、新たな測定区間が設定される。このようにして、温度変化が検知されるまで、区間の長さが1m程度の状態で、光ファイバ11の長手方向に沿った各区間(図6(c))が順に測定される。
【0043】
温度変化がある場合(S9でYES)は、その測定区間が検知される(S10)。3.0〜4.0mの区間の温度変化が検知されると、区間制御部13によって変調指示値が出力されて、区間の長さが0.5m程度に設定される(S11)。区間の長さがより小さく設定されると、位置制御部12によって位相指示値が出力されて、図6(d)に示すように、BGSを発生させる区間が新たに設定される(S12)。区間の長さが約0.5mに設定されると、3.0〜3.5mの区間、3.5〜4.5mの区間のいずれかに測定区間が設定される。
【0044】
測定区間が設定されると、ステップ3と同様にして、BGSが測定される(S13)。BGSが測定されると、測定区間のBGS形状に変化があるか否かに基づいて温度変化の有無が判定され、温度変化がない場合(S14でNO)は、ステップ7に戻り、新たな測定区間が設定される。このようにして、温度変化が検知されるまで、区間の長さが0.5m程度の状態で、光ファイバ11の長手方向に沿った各区間(図6(d))が順に測定される。
【0045】
温度変化がある場合(S14でYES)は、その測定区間が検知される(S15)。このようにして、リール4の内側に温度変化が発生した場合に、その位置が検出される。
【0046】
例えば、1区間の長さが10mの場合、1つの測定区間の測定時間は、0.1秒程度であるので、上記3つの区間の測定時間は、0.3秒程度である。0〜10mの部分を1区間の長さ1mで測定した場合、測定時間は、1.0秒程度である。3.0〜4.0mの部分を1区間の長さ0.5mで測定した場合、測定時間は、0.2秒程度である。
【0047】
本実施形態に係る光ファイバ分布型センサ1では、光ファイバ11の測定対称物Mに接する領域において温度変化又は歪変が発生するまでは、区間の長さを比較的大きく設定して測定効率を向上させることができる。また、光ファイバ11の測定対称物Mに接する領域において温度変化又は歪変が発生した場合に、温度変化又は歪変が発生した箇所の区間の長さをより小さく設定して精度よく測定することができる。
【0048】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、温度変化を検知した場合、温度変化又は歪変化が発生した区間のみを測定した。温度変化を検知した場合に、その温度変化が発生した区間をより小さい区間に分割して測定し、その他の部分は、区間の長さを初期値に固定して測定してもよい。
【0049】
その場合、最初、上記実施形態と同様に、1つの区間の長さ10m程度で3つの区間を順に測定する(図7(b))。0〜10mの区間で温度変化を検知した場合、0〜10mの区間は、1m程度の区間に分割して測定し、10〜20mの区間及び20〜30mの区間は、1つの区間の長さ10m程度で2回測定する(図7(e))。その後、3.0〜4.0mの区間で異常を検知した場合、その区間のみ0.5m程度の区間に分割して測定し、その他の区間は、10m程度の区間で測定する(図7(f))。このようにしても、温度分布測定の効率を向上させることができる。なお、更に区間の長さを小さく設定して測定を行うことにより、リールM4の内周部のどの部分で温度が上昇したか検出することも可能である。
【0050】
上記実施形態では、一つの超電導コイルが測定対象であるが、測定対象は一つに限定されず、例えば複数の超電導コイルについて一本の光ファイバで温度測定を行う場合にも、本願発明の方法は有効である。また、本願発明による温度測定の対象は超電導コイルに限定されない。また、本願発明で測定する物理量は温度に限定されず、歪にも適用可能である。
【0051】
上記実施形態では、検出部29が温度変化又は歪変化の発生を検知した場合に、区間制御部13が区間の長さをより小さく設定したがこれに限られない。1回目のBGSの形状データの測定において、区間の長さを測定対象物M上の全領域を測定することが可能な所定の長さに設定し、全領域を測定し、再度のBGSの形状データの測定において、上記ある領域においてのみ区間の長さを他の値に設定してもよい。例えば、通常は、区間の長さを10m程度に設定して全域を測定し、1日1回は区間の長さを0.5m程度に設定して測定を行ってもよい。この場合、位置制御部12及び区間制御部13は、区間の位置と区間の長さのパターンを時間帯毎に設定し、設定されたパターンに基づいて測定するよう指示する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態に係る光ファイバ分布型センサの構成図である。
【図2】BGSを示すグラフである。
【図3】本実施形態に係る光ファイバが配された測定対象物の断面図である。
【図4】本実施形態に係る光ファイバと測定対象物の関係を示す図である。
【図5】本実施形態に係る光ファイバ分布型センサの動作を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態に係る光ファイバ分布型センサにおいてブリルアン散乱光を発生させる区間の長さを示す図である。
【図7】本実施形態の変形例に係る光ファイバ分布型センサにおいてブリルアン散乱光を発生させる区間の長さを示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1…光ファイバ分布型センサ、11…光ファイバ、12…位置制御部(制御部)、13…区間制御部(制御部)、14…光源、18…スペクトル測定部、19…検知部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の変調周波数及び変調指数で変調されると共に互いの位相差が設定されたプローブ光及びポンプ光を出力する光源と、
測定対象物に設置され、前記光源から出力された前記プローブ光及び前記ポンプ光を両端からそれぞれ入力し、当該入力したプローブ光及びポンプ光の伝搬に伴い発生するブリルアン散乱光を出力する光ファイバと、
前記光ファイバから出力されたプローブ光を受光し、前記ブリルアン散乱光によって利得を受けたプローブ光の利得ペクトル(以下、BGSとする)の形状データを測定するスペクトル測定部と、
前記変調周波数又は前記変調指数を制御することにより前記BGSを発生させる区間の長さを設定すると共に、前記位相差を制御することにより前記区間の位置を前記光ファイバの長手方向に沿って設定する制御部と、
前記スペクトル測定部によって測定されたBGSの形状データに基づいて前記光ファイバの温度変化又は歪変化が発生した位置を検知する検知部とを備え、
前記制御部は、前記区間の位置と前記区間の長さのパターンを時間帯毎に設定し、前記設定されたパターンに基づいて測定するよう指示する
ことを特徴とする光ファイバ分布型センサ。
【請求項2】
光源が、同一の変調周波数及び変調指数で変調されると共に互いの位相差が設定されたプローブ光及びポンプ光を出力し、制御部が、前記変調周波数又は前記変調指数を制御することによりブリルアンゲインスペクトル(以下、BGSとする)を発生させる区間の長さを設定すると共に、前記位相差を制御することにより前記区間の位置を前記光ファイバの長手方向に沿って設定し、光ファイバが、測定対象物に設置され、前記光源から出力されたプローブ光及びポンプ光を両端からそれぞれ入力し、当該入力したプローブ光及びポンプ光の伝搬に伴い発生するブリルアン散乱光を出力し、スペクトル測定部が、前記光ファイバから出力されたプローブ光を受光し、当該受光したプローブ光のBGSの形状データを測定する測定ステップと、
検知部が、前記測定ステップにおいて測定されるBGSの形状データに基づいて前記光ファイバの温度変化又は歪変化が発生した位置を検知する検知ステップと、
前記検知ステップにおいて前記測定対象物上のある領域で前記光ファイバの温度変化又は歪変化の発生が検知された場合に、前記ある領域において前記変調周波数又は前記変調指数を制御することにより前記BGSを発生させる区間の長さをより小さな他の値に設定すると共に、前記位相差を制御することにより前記ある領域を含む領域に設定し、再度の前記BGSの形状データを測定する制御ステップと
を備えることを特徴とする光ファイバ分布型検知方法。
【請求項3】
1回目のBGSの形状データの測定において、前記区間の長さを前記測定対象物上の全領域を測定することが可能な所定の長さに設定し、前記全領域を測定し、
前記再度のBGSの形状データの測定において、前記ある領域においてのみ前記他の値に設定する
ことを特徴とする請求項2記載の光ファイバ分布型検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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