説明

光ファイバ温度センサおよびその固定方法

【課題】 材料の熱伝導率が高くFBG部までの伝熱が確保しやすく、熱伸縮が良好な極低温特性を向上させた光ファイバ温度センサおよびその固定方法を提供する。
【解決手段】 本発明の光ファイバ温度センサは、FBG部2を有する光ファイバ1と、この光ファイバ1上に塗布される樹脂コーティング層3と、この樹脂コーティング3上に形成される金属材料のコーティング層4とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導磁石などの極低温機器、液化ガスの極低温容器などの内部の温度測定、状態監視を行なう光ファイバ温度センサおよびその固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超電導磁石などの極低温機器は、内部の異常発熱や断熱不良などによる熱侵入増大があると、機能を維持できないばかりか内部の損傷をもたらす原因ともなり、修理や交換が必要になるなど影響が大きい。また、窒素、ヘリウムなどの液化ガスの極低温容器についても、内部の損傷・断熱不良が発生すると、蒸発量を増大させたり、破損・漏洩の危険性を生じるなどの影響がある。このため、これら極低温機器・極低温容器では、内部の温度測定・監視が重要である。また、極低温容器には内部の液量を把握するため、温度測定により液面を把握する需要もある。極低温における感度を向上させたFBG(Fiber Bragg Grating)部を有する光ファイバ温度センサは、熱膨張率やヤング率の大きな材料をコーティングするのが効果的であり、ファイバとの適切な断面積比で樹脂コーティングを施した技術が提案されている(下記特許文献1参照)。また、FBGをコーティングするのではなく線膨張率の大きなテフロン(登録商標)樹脂の基板に接着し、その基板の熱伸縮を通じて温度を測定する技術も提案されている(下記非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,072,922号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】水波,川島,立畠,「ファイバグレーティングを用いた低温域の温度センシング」,信学技報 OFT2001−7,pp.37−42
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの技術では、FBG光ファイバ温度センサは、FBG部の熱伸縮から温度に変換している要素が大きいため、FBG部までの伝熱を十分に確保しないと測定精度や応答性が低下し、熱伸縮を阻害すると正確な測定ができなくなる。感度向上に効果的な樹脂コーティングや基板は、材料の熱伝導率が低く、FBG部までの伝熱が確保し難いとともに、高い熱伝導率を確保するために密着させて接触させると熱伸縮を阻害するという課題があった。
【0006】
本発明は、上記状況に鑑みて、材料の熱伝導率が高くFBG部までの伝熱が確保しやすく、熱伸縮が良好な極低温特性を向上させた光ファイバ温度センサおよびその固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕光ファイバ温度センサにおいて、FBG部を有する光ファイバと、この光ファイバ上に塗布される樹脂コーティング層と、この樹脂コーティング層上に形成される金属材料のコーティング層とを具備することを特徴とする。
〔2〕光ファイバ温度センサの固定方法において、上記〔1〕記載の光ファイバ温度センサに張力をかけない状態で両側に熱伝導率の高いフレームを有し、このフレームを測定対象に固定することを特徴とする。
【0008】
〔3〕光ファイバ温度センサの固定方法において、上記〔1〕記載の光ファイバ温度センサに張力をかけない状態で片側に熱伝導率の高いフレームを有し、このフレームを測定対象に固定することを特徴とする。
〔4〕光ファイバ温度センサの固定方法において、上記〔1〕記載の光ファイバ温度センサに張力をかけない状態で片側に熱伝導率の高いフレームを有し、このフレームに前記光ファイバ温度センサを覆う保護管を配置し、この保護管を測定対象に密着させて固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)FBGセンサの極低温における感度向上効果を維持しつつ、熱伝導率の高いセンサを提供することにより、測定の精度や応答性、再現性の向上を図ることができる。
(2)FBGセンサのFBG部に張力を与えないことから、熱伸縮を阻害せず、高い熱伝導率を確保した固定を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例を示す感度を向上させた樹脂コーティング層を塗布したFBGセンサ表面にさらに熱伝導率の高い金属コーティングを具備する光ファイバ温度センサの構成図である。
【図2】本発明の実施例を示す伸縮を阻害しない光ファイバ温度センサの固定方法(その1)を示す図である。
【図3】本発明の実施例を示す伸縮を阻害しない光ファイバ温度センサの固定方法(その2)を示す図である。
【図4】本発明の実施例を示す伸縮を阻害しない光ファイバ温度センサの固定方法(その3)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の光ファイバ温度センサは、FBG部を有する光ファイバと、この光ファイバ上に塗布される樹脂コーティング層と、この樹脂コーティング上に形成される金属材料のコーティング層とを具備する。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示す感度を向上させた樹脂コーティング層を塗布したFBGセンサ表面にさらに熱伝導率の高い金属コーティングを具備する光ファイバ温度センサの構成図である。
この図において、1はFBG部2を有する光ファイバ、1aは通常の光ファイバコーティング層、3はその光ファイバ1に塗布される樹脂コーティング層、4はその樹脂コーティング層3上を覆う金属コーティング層である。
【0013】
このように、FBG部2を線膨張率の高い樹脂を適切な厚さにコーティングした樹脂コーティング層3により、感度を向上させるとともに、さらにその樹脂コーティング層3上に熱伝導率の高い金属コーティング層4で熱伸縮に影響しない程度の厚さでコーティングする〔例えば、アクリル樹脂のコーティング外径をφ0.5mm(芯線径0.125mm、コーティング厚0.1875mm)〕ことにより、FBG部2への伝熱を確保する。このFBGセンサは、FBG部のみをコーティングし、その他の部分は通常の光ファイバコーティング1aとすることにより、元来の光ファイバ温度センサのメリットである低熱伝導率(低熱侵入)を保つことができる。
【0014】
このように、本発明の光ファイバ温度センサは、樹脂コーティング層3上に金属コーティング層4を施すように構成したので、高い伝熱を確保しつつ感度を向上させることができる。
図2は本発明の実施例を示す伸縮を阻害しない光ファイバ温度センサの固定方法(その1)を示す図であり、図2(a)はその内部を示す図、図2(b)はその測定対象への固定方法を示す図である。
【0015】
これらの図に示すように、本発明の光ファイバ温度センサは、図1に示されたFBG部12を設けた通常の光ファイバコーティング層11aを有する光ファイバ11、樹脂コーティングおよびその樹脂コーティングを覆う金属コーティングを弛ませた(張力をかけない)状態で、両側に配置される熱伝導率の高いフレーム13,14で固定し、その光ファイバ温度センサを、測定対象16上に実装する。なお、フレーム13,14の外部にまで、樹脂コーティング層およびその樹脂コーティング層上を覆う金属コーティングを配置する。また、フレーム13,14の間にはカバー15を配置し、フレーム13,14およびカバー15を測定対象16上に実装する。
【0016】
この実施例では、熱伝導率の高いフレーム13,14を用意し、このフレーム13,14により図1に示したFBGセンサのFBG部両端を、FBG部に張力がかからないように固定し、張力の影響を排除し、正確な温度の測定を可能とする。また、フレーム13,14を測定対象16に密着させて固定し、FBGセンサのフレーム13,14との固定部まで本発明のコーティングを施すことにより、測定対象16からFBG部12までの伝熱を確保し、測定精度や応答性を向上させる。
【0017】
図3は本発明の実施例を示す伸縮を阻害しない光ファイバ温度センサの固定方法(その2)を示す図であり、FBG部22を設けた通常の光ファイバコーティング層21aを有する光ファイバ21、樹脂コーティング層およびその樹脂コーティング層を覆う金属コーティング層を弛ませた(張力をかけない)状態で、単一のフレーム23で固定した片持ち支持となるようにその光ファイバ温度センサを、測定対象25上に実装する。なお、フレーム23の一方端24の外部にまで、樹脂コーティング層およびその樹脂コーティング層上を覆う金属コーティング層を配置する。
【0018】
このように、図1に示したFBGセンサのFBG部の片端のみを、熱伝導率の高いフレーム23で把持し、測定対象25に密着させることにより、同様の効果を得るものである。
図4は本発明の実施例を示す伸縮を阻害しない光ファイバ温度センサの固定方法(その3)を示す図であり、図4(a)は光ファイバ温度センサの構造を示す図、図4(b)はその測定対象への固定状態を示す断面図である。この実施例では、FBG部32を設けた通常の光ファイバコーティング層31a有する光ファイバ31、樹脂コーティング層およびその樹脂コーティング層を覆う金属コーティング層更には保護管33を有する光ファイバ温度センサを弛ませた(張力をかけない)状態で、単一のフレーム34で固定し、片持ち支持となるようにその光ファイバ温度センサを配置する。その光ファイバ温度センサを測定対象36へ密着させて固定する。なお、フレーム34の一方端35の外部にまで樹脂コーティング層およびその樹脂コーティング層上を覆う金属コーティング層を配置する。
【0019】
このように、図1に示したFBGセンサを保護管33でFBG部32を覆い片端のみを固定して保護管33を測定対象36に密着させて固定することにより、FBGの保護を可能とした。
図3,図4の場合は、FBGセンサのFBG部を弛ませ張力をかけなければ両端を固定するようにしてもよい。
【0020】
本発明によるFBGセンサを用いれば、極低温機器や極低温容器への熱侵入を最小限に抑えながらも、内部の多くの箇所を精度・応答性・高再現性を向上させた温度センサとその固定方法を提供することができ、より高頻度、さらには常時の内部温度監視が可能となる。このように内部の温度監視が可能になれば、極低温機器の運用中の突発的な運転停止や故障の発生頻度を低減することができ、安全な運転の停止や適切な点検・修理が可能となって、安全性・信頼性の向上に寄与できる。
【0021】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の光ファイバ温度センサおよび光ファイバ温度センサの固定方法は、極低温機器の運用中の突発的な運転停止や故障の発生頻度を低減することができ、安全な運転の停止や適切な点検・修理が可能となって、安全性・信頼性の向上に寄与できる。
【符号の説明】
【0023】
1,11,21,31 光ファイバ
1a,11a,21a,31a 通常の光ファイバコーティング層
2,12,22,32 FBG部
3 樹脂コーティング層
4 金属コーティング層
13,14 熱伝導率の高いフレーム
15 カバー
16,25,36 測定対象
23,34 単一のフレーム
24,35 フレームの一方端
33 保護管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)FBG部を有する光ファイバと、
(b)該光ファイバ上に塗布される樹脂コーティング層と、
(c)該樹脂コーティング層上に形成される金属材料のコーティング層とを具備することを特徴とする光ファイバ温度センサ。
【請求項2】
請求項1記載の光ファイバ温度センサに張力をかけない状態で両側に熱伝導率の高いフレームを有し、該フレームを測定対象に固定することを特徴とする光ファイバ温度センサの固定方法。
【請求項3】
請求項1記載の光ファイバ温度センサに張力をかけない状態で片側に熱伝導率の高いフレームを有し、該フレームを測定対象に固定することを特徴とする光ファイバ温度センサの固定方法。
【請求項4】
請求項1記載の光ファイバ温度センサに張力をかけない状態で片側に熱伝導率の高いフレームを有し、該フレームに前記光ファイバ温度センサを覆う保護管を配置し、該保護管を測定対象に密着させて固定することを特徴とする光ファイバ温度センサの固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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