説明

光ファイバ照明装置

【課題】小型化およびコストの低減を図ることができるとともに、結合効率を高めることができる光ファイバ照明装置を提供する。
【解決手段】レンズ13が、発光面11aから光を放射する発光ダイオード11と、一端の受光口12aで光を受けて他端から光を放射する光ファイバ12との間に配置されている。発光ダイオード11は、発光面11aから放射した光がレンズ13に入射可能に、レンズ13の焦点または焦点の近傍に配置されている。光ファイバ12は、レンズ13を通した発光ダイオード11からの放射光を受光口12aで受光可能に、受光口12aをレンズ13に近接して配置されている。レンズ13は、発光ダイオード11の発光面11aの中心からの放射光が光軸に平行になるよう、光を屈折可能に構成されている。発光面11aの代表的長さをレンズ13の焦点距離で割った値が、光ファイバ12の開口数(NA)の2倍以下になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ照明装置は、内視鏡やマシンビジョンの照明として使用されている。従来、光ファイバ照明装置は、光源として高輝度のハロゲンランプやショートアークランプが用いられてきた。これらのランプは、全方向に光が放射されるため、ランプ光をファイバ結合する光学系には回転楕円ミラーが用いられているが、そのときの結合効率が低いという問題があった。
【0003】
この問題を解決するために、近年、ランプ光源に代えて、高輝度の発光ダイオード(LED)を用いた照明装置が提案されている。このLEDを用いた照明装置では、LEDの放射パターンがランベルト分布をしているため、新たな結合光学系が必要である。このような照明装置として、LEDの発光面と光ファイバの受光口とを突き合わせて配置し、LEDの放射光を光ファイバに結合させるものがある(例えば、特許文献1参照)。また、結合効率を上げるために、LEDと光ファイバとの間に結像レンズを入れ、LEDの出射NA(Numerical Aperture;開口数)を光ファイバNAと合うように変換したものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−148418号公報
【特許文献2】特開2009−15319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の照明装置では、光ファイバのNA以下の角度で光ファイバの受光口に入射した光のみが光ファイバに結合し、光ファイバのNAより大きい角度で入射した光は、光ファイバ外部に出てしまう。従って、このときの結合効率ηは、(1)式に示すように、LEDの放射パターンであるランベルト分布を、発光面の法線となす角で、0から光ファイバNAに対応する角度まで積分した値となる。
【0006】
【数1】

ここで、θはLEDの発光面の法線と放射光線とのなす角、sinΘは光ファイバNAである。また、LEDの発光面と光ファイバの受光口との隙間を0とし、光ファイバの径がLEDの発光面の寸法より大きいものとしている。
【0007】
(1)式による光ファイバNAに対する結合効率の計算例を、表1に示す。表1に示すように、この結合系では、NAの大きい光ファイバでは大きな結合効率が得られるが、実用的なNA0.2やNA0.5の光ファイバでの結合効率は小さいという課題があった。
【0008】
【表1】

【0009】
また、特許文献2に記載の結像レンズを使ってNAを変換する光ファイバ照明装置では、原理的には、表1の光ファイバNAをレンズの入射NAに置き換えた分の結合効率が得られる。しかし、レンズの収差により結合効率が落ちるという課題があった。また、収差を抑えるためにレンズ枚数を増やしたり、非球面レンズを用いたりすると、装置が大きくなり、コストが嵩むという課題もあった。
【0010】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、小型化およびコストの低減を図ることができるとともに、結合効率を高めることができる光ファイバ照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る光ファイバ照明装置は、発光面から光を放射する発光ダイオードと、一端の受光口で光を受けて他端から光を放射する光ファイバと、前記発光ダイオードと前記光ファイバとの間に配置された正の屈折力を有するレンズとを有し、前記発光ダイオードは前記発光面から放射した光が前記レンズに入射可能に、前記レンズの焦点または焦点の近傍に配置され、前記光ファイバは前記レンズを通した前記発光ダイオードからの放射光を前記受光口で受光可能に、前記受光口を前記レンズに近接して配置され、前記レンズは、前記発光ダイオードの前記発光面の中心からの放射光が光軸に平行になるよう光を屈折可能に構成されていることを、特徴とする。
【0012】
本発明に係る光ファイバ照明装置の結合光学系は、図1に示す原理で構成されている。図1に示すように、発光ダイオード(LED)11と光ファイバ12との間に正の屈折力を有するレンズ13が配置され、レンズ13の焦点位置にLED11が配置され、受光口12aをレンズ13に近接させて光ファイバ12が配置されている。また、LED11の発光面11aの中心軸および光ファイバ12の受光口12aの中心軸が、レンズ13の光軸と一致するよう配置されている。
【0013】
ここで、図1では、レンズ13の焦点距離f:5mm、LED側(物体側)NA:0.4、LED11の発光面11aの直径:φ2mm(物体高さh:1mm)、光ファイバ12の受光口12aの直径:φ4mm、光ファイバNA:0.2、とする。このとき、LED側のNA0.4の光を取りこむために必要なレンズ13の直径は、4mmとなる。また、LED11の発光面11aの中心からの放射光が、レンズ13により屈折して、光軸に平行になるよう構成する。これにより、レンズ設計で一般的に使われる像側(光ファイバ側)のNAは0となる。
【0014】
図1に示すように、物体高hから出たLED11の光は、光軸に対して
θ=tan−1(h/f)
の角度を持つ平行な光線となる。つまり、レンズ13によりLED11の位置と光線角度との変換が行われる。この位置−角度変換は、物体高h=0から物体高h=hまで行われ、光軸となす角は、それぞれ0からθまで変換される。ここで、
θ=tan−1(h/f)≒0.2
であり、レンズ出射面ではNA0.2内に均一に分布する光となる。つまり、NA0.4の光は、NA0.2の光に変換され、出射した光は全て光ファイバ12と結合する。
【0015】
このことから、光ファイバ12に結合するための条件として、
LED寸法/レンズ焦点距離≦2×光ファイバNA (2)
が得られる。ここで、LED寸法は、LED11の発光面11aの代表的長さであり、発光面11aが円形のときは発光面11aの直径、発光面11aが矩形のときは発光面11aの対角線、長辺または短辺の長さである。
【0016】
比較例として、結像レンズ51を用いた、従来の光ファイバ照明装置の結合光学系の原理を図2に示す。図2に示すように、発光ダイオード(LED)11と光ファイバ12との間に、それぞれ所定の間隔を開けて結像レンズ51が配置されている。また、LED11の発光面11aの中心軸および光ファイバ12の受光口12aの中心軸が、レンズ51の光軸と一致するよう配置されている。
【0017】
ここで、図1と同様に、レンズ51の焦点距離f:5mm、LED側(物体側)NA:0.4、LED11の発光面11aの直径:φ2mm(物体高さh:1mm)、光ファイバ12の受光口12aの直径:φ4mm、光ファイバNA:0.2、とする。また、LED11−レンズ51、レンズ51−光ファイバ12の間隔を、それぞれ7.5mm、15mmとし、レンズ51の直径を6mmとする。このとき、結像倍率を0.5倍とすると、レンズ設計で一般的に使われるNAは、物体側0.4から像側0.2に変換される。
【0018】
図2の場合、物体高hから出た光は、光軸に対して1/7.5の角度を持つ。このため、結像位置での光ファイバ12に対する入射NAは最大0.33(=0.2+1/7.5)になる。このため、φ4mmの光ファイバ12の受光口12aに結像した光のうち1/3は、入射NA0.2以上の光であり、光ファイバ12に結合しない。この損失を減らすためには、レンズ51の径を大きくするか、焦点距離を長くする方法があるが、レンズ51の寸法が大きくなり、収差も大きくなるため、単純に結合効率は上がらない。また、非球面レンズを使用することもできるが、コストが嵩んでしまう。
【0019】
図1に示す本発明に係る光ファイバ照明装置の結合光学系の原理、および、図2に示す従来の光ファイバ照明装置の結合光学系の原理の諸条件および結合効率等をまとめ、表2に示す。表2に示すように、図1に示す本発明に係る光ファイバ照明装置では、表1の場合と比べて、4倍の結合効率16%が得られる。また、レンズに入射した光を全て光ファイバと結合させることができるため、1/3の光が結合しない図2に示す従来の光ファイバ照明装置の集光光学系と比べて、結合効率が高くなっている。
【0020】
【表2】

【0021】
このように、本発明に係る光ファイバ照明装置は、比較的簡単な構成で、結合効率を高めることができる。また、径が小さいレンズを使用することができ、コストが嵩む非球面レンズを使用する必要がない。LEDと光ファイバとの距離を短くすることもできる。このため、装置の小型化およびコストの低減を図ることができる。
【0022】
図1および(2)式に示すように、本発明に係る光ファイバ照明装置は、前記発光ダイオードの前記発光面が前記光ファイバの前記受光口より小さく、前記発光面の代表的長さを前記レンズの焦点距離で割った値が、前記光ファイバの開口数(NA)の2倍以下であることが好ましい。
【0023】
また、図1に示すように、本発明に係る光ファイバ照明装置で、前記レンズは、径が前記光ファイバの前記受光口の径とほぼ等しく、前記発光ダイオードの前記発光面の任意の位置からの放射光が平行光線になるよう光を屈折可能であることが好ましい。この場合、結合効率を低下させることなく、装置の小型化およびコストの低減を図ることができる。
【0024】
本発明に係る光ファイバ照明装置で、前記レンズは、前記発光ダイオード側の面が平面形状を成し、前記光ファイバ側の面が凸面形状を成す2枚の平凸球面レンズから成ることが好ましい。この場合、収差を抑えた高価なメニスカスレンズを使用することなく、同等の結合効率を得ることができ、コストをより低減することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、小型化およびコストの低減を図ることができるとともに、結合効率を高めることができる光ファイバ照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る光ファイバ照明装置の結合光学系の原理を示す、発光ダイオードからの放射光の幾何光学的光線追跡側面図である。
【図2】従来の光ファイバ照明装置の結合光学系の原理を示す、発光ダイオードからの放射光の幾何光学的光線追跡側面図である。
【図3】本発明の実施の形態の光ファイバ照明装置を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態の光ファイバ照明装置の結合光学系の、2枚のメニスカス球面レンズを用いたときの、発光ダイオードからの放射光の光線追跡側面図である。
【図5】本発明の実施の形態の光ファイバ照明装置の結合光学系の、2枚の平凸球面レンズを用いたときの、発光ダイオードからの放射光の光線追跡側面図である。
【図6】従来の光ファイバ照明装置の結合光学系の、2枚の両凸球面レンズを用いたときの、発光ダイオードからの放射光の光線追跡側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図3乃至図5は、本発明の実施の形態の光ファイバ照明装置を示している。
図3に示すように、光ファイバ照明装置10は、発光ダイオード11と光ファイバ12とレンズ13とを有している。光ファイバ照明装置10は、発光ダイオード11と光ファイバ12との間にレンズ13が配置されている。
【0028】
図3に示すように、発光ダイオード11は、発光面11aから光を放射するよう構成されている。発光ダイオード11は、発光面11aが円形であり、発光面11aの中心軸がレンズ13の光軸と一致するよう配置されている。発光ダイオード11は、発光面11aから放射した光がレンズ13に入射可能に、発光面11aをレンズ13に向けた状態で、レンズ13の焦点または焦点の近傍に配置されている。
【0029】
図3に示すように、光ファイバ12は、一端の受光口12aで光を受けて他端から光を放射するよう構成されている。光ファイバ12は、受光口12aの中心軸がレンズ13の光軸と一致するよう配置されている。光ファイバ12は、レンズ13を通した発光ダイオード11からの放射光を受光口12aで受光可能に、受光口12aをレンズ13に近接させた状態で配置されている。光ファイバ12は、受光口12aが発光ダイオード11の発光面11aより大きく形成されている。なお、光ファイバ12は、1本の光ファイバから成っていても、実用的な直径1mm以下の光ファイバを束ねたバンドルファイバから成っていてもよい。ファイバの長さは、1〜5m程度が用いられる場合が多い。
【0030】
図3に示すように、レンズ13は、径が光ファイバ12の受光口12aの径とほぼ等しい、正の屈折力を有する同じ形状の2枚の球面レンズから成っている。レンズ13は、発光ダイオード11の発光面11aの中心からの放射光が光軸に平行になり、発光ダイオード11の発光面11aの任意の位置からの放射光が平行光線になるよう、光を屈折可能に構成されている。
【0031】
光ファイバ照明装置10は、図1に示す原理で構成されている。光ファイバ照明装置10は、(2)式を満たしており、発光面11aの代表的長さをレンズ13の焦点距離で割った値が、光ファイバ12の開口数(NA)の2倍以下になるよう構成されている。なお、ここでの発光面11aの代表的長さは、発光面11aの直径である。
【0032】
次に、作用について説明する。
光ファイバ照明装置10は、レンズに入射した光を、原理的には全て光ファイバ12と結合させることができるため、比較的簡単な構成で、結合効率を高めることができる。また、径が小さいレンズ13を使用することができ、コストが嵩む非球面レンズ13を使用する必要がない。発光ダイオード11と光ファイバ12との距離を短くすることもできる。このため、装置の小型化およびコストの低減を図ることができる。
【実施例1】
【0033】
図4に示すように、光ファイバ照明装置10のレンズ13として、2枚のメニスカス球面レンズ21a,21bを用いて結合効率の計算を行った。各レンズ21a,21bは、凸側を光ファイバ12に向けた状態で配置されている。各レンズ21a,21bの曲率半径r(mm)、中心厚および間隔d(mm)、屈折率n、アッベ数νを、以下に示す。ここで、r1およびr2はそれぞれレンズ21aの発光ダイオード11側および光ファイバ12側の曲率半径、r3およびr4はそれぞれレンズ21bの発光ダイオード11側および光ファイバ12側の曲率半径である。d0はレンズ21a,21bの光軸における発光ダイオード11とレンズ21aとの間隔、d1およびd3はそれぞれ各レンズ21a,21bの中心厚、d2はレンズ21aとレンズ21bとの間隔、d4はレンズ21bと光ファイバ12との間隔である。n1およびn2はそれぞれ各レンズ21a,21bの屈折率、ν1およびν2はそれぞれ各レンズ21a,21bのアッベ数である。
【0034】
d0=2.6
r1=−13.7 d1=1.5 n1=1.5168 ν1=64.17
r2=−3.22 d2=0.2
r3=−12.6 d3=1.5 n2=1.5168 ν2=64.17
r4=−4.26 d4=0.5
【0035】
他の条件等は、表2の本発明のものに従っている。なお、レンズ21aの発光ダイオード11側の焦点は、d0=3.2mmの位置であるが、結合効率を最適化するために、発光ダイオード11を焦点より内側の焦点近傍(d0=2.6)に配置している。
【実施例2】
【0036】
図5に示すように、光ファイバ照明装置10のレンズ13として、2枚の平凸球面レンズ22a,22bを用いて結合効率の計算を行った。各レンズ22a,22bは、平面側を発光ダイオード11に向け、凸面側を光ファイバ12に向けた状態で配置されている。各レンズ22a,22bの曲率半径r(mm)、中心厚および間隔d(mm)、屈折率n、アッベ数νを、以下に示す。ここで、r1およびr2はそれぞれレンズ22aの発光ダイオード11側および光ファイバ12側の曲率半径、r3およびr4はそれぞれレンズ22bの発光ダイオード11側および光ファイバ12側の曲率半径である。d0はレンズ22a,22bの光軸における発光ダイオード11とレンズ22aとの間隔、d1およびd3はそれぞれ各レンズ22a,22bの中心厚、d2はレンズ22aとレンズ22bとの間隔、d4はレンズ22bと光ファイバ12との間隔である。n1およびn2はそれぞれ各レンズ22a,22bの屈折率、ν1およびν2はそれぞれ各レンズ22a,22bのアッベ数である。
【0037】
d0=2.8
r1=∞ d1=1.5 n1=1.5168 ν1=64.17
r2=−4.85 d2=0.2
r3=∞ d3=1.5 n2=1.5168 ν2=64.17
r4=−4.85 d4=0.5
【0038】
他の条件等は、表2の本発明のものに従っている。なお、レンズ22aの発光ダイオード11側の焦点は、d0=3.4mmの位置であるが、結合効率を最適化するために、発光ダイオード11を焦点より内側の焦点近傍(d0=2.8)に配置している。
【0039】
[比較例]
図6に示すように、比較のために、図2に示す従来の光ファイバ照明装置50の構成で、2枚の両凸球面レンズ51a,51bを用いて結合効率の計算を行った。各レンズ51a,51bは、互いに曲率が小さい面で向き合った状態で配置されている。各レンズ51a,51bの曲率半径r(mm)、中心厚および間隔d(mm)、屈折率n、アッベ数νを、以下に示す。ここで、r1およびr2はそれぞれレンズ51aの発光ダイオード11側および光ファイバ12側の曲率半径、r3およびr4はそれぞれレンズ51bの発光ダイオード11側および光ファイバ12側の曲率半径である。d0はレンズ51a,51bの光軸における発光ダイオード11とレンズ51aとの間隔、d1およびd3はそれぞれ各レンズ51a,51bの中心厚、d2はレンズ51aとレンズ51bとの間隔、d4はレンズ51bと光ファイバ12との間隔である。n1およびn2はそれぞれ各レンズ51a,51bの屈折率、ν1およびν2はそれぞれ各レンズ51a,51bのアッベ数である。なお、他の条件等は、表2の従来の光学系のものに従っている。
【0040】
d0=5.6
r1=89 d1=2.5 n1=1.5168 ν1=64.17
r2=−5.3 d2=0.2
r3=6 d3=2.5 n2=1.5168 ν2=64.17
r4=−24 d4=10.3
【0041】
図4〜図6に示す光ファイバ照明装置10および従来の光ファイバ照明装置50の結合効率等をまとめ、表3に示す。
【表3】

【0042】
表3に示すように、図4に示す光ファイバ照明装置10は、レンズ21a,21bの径が小さく、発光ダイオード11と光ファイバ12との間隔が短く、周辺光の屈折角が小さいため、2枚のレンズ21a,21bで球面収差およびコマ収差を十分補正できている。その結果、結合効率が、表2に示す幾何光学的解析値(理論値)である16%に近い値、15.8%となっている。
【0043】
図5に示す光ファイバ照明装置10は、2枚のレンズ22a,22bを平凸球面レンズにして光学系を簡略化しているため、収差が多少大きくなっているが、結合効率は15.7%で、図4のものとほとんど変わっていない。このことから、メニスカス球面レンズ21a,21bの代わりに、より安価な平凸球面レンズ22a,22bを用いることにより、結合効率をほとんど低下させることなく、初期費用や製造費用等のコストを抑えることができる。
【0044】
図6に示す従来の光ファイバ照明装置50では、レンズ51a,51bの径が大きく、発光ダイオード11と光ファイバ12との間の距離が長く、周辺光の屈折角が大きいため、2枚のレンズ51a,51bでは収差を補正することができない。特に、球面収差は補正できず、サイデル球面収差係数は、図4および図5の光ファイバ照明装置10の5倍以上になっている。結合効率も8.6%であり、図4および図5の光ファイバ照明装置10と比べて、かなり低下している。なお、球面収差を補正するためには、レンズ枚数を増やしたり、非球面レンズを使用したりする等の対応策があるが、いずれもコストが嵩む。
【0045】
このように、本発明の実施の形態の光ファイバ照明装置10は、比較的簡単な構成で、結合効率を高めることができる。また、レンズ13として、径が小さくより安価な平凸球面レンズを使用することができ、発光ダイオード11と光ファイバ12との距離も短いため、装置の小型化およびコストの低減を図ることができる。
【0046】
なお、発光ダイオード11は、発光面11aが円形のものを使用しているが、発光面11aが矩形の一般的なものを使用してもよい。この場合、発光面11aの代表的長さを、発光面11aの対角線として(2)式を用いると、高い結合効率が得られる。また、光ファイバ12の他端の出射端面の光密度を上げたい場合には、矩形の発光面11aの短辺の長さを、代表的長さとするのが好ましい。
【符号の説明】
【0047】
10 光ファイバ照明装置
11 発光ダイオード
11a 発光面
12 光ファイバ
12a 受光口
13 レンズ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光面から光を放射する発光ダイオードと、
一端の受光口で光を受けて他端から光を放射する光ファイバと、
前記発光ダイオードと前記光ファイバとの間に配置された正の屈折力を有するレンズとを有し、
前記発光ダイオードは前記発光面から放射した光が前記レンズに入射可能に、前記レンズの焦点または焦点の近傍に配置され、
前記光ファイバは前記レンズを通した前記発光ダイオードからの放射光を前記受光口で受光可能に、前記受光口を前記レンズに近接して配置され、
前記レンズは、前記発光ダイオードの前記発光面の中心からの放射光が光軸に平行になるよう光を屈折可能に構成されていることを、
特徴とする光ファイバ照明装置。
【請求項2】
前記発光ダイオードの前記発光面が前記光ファイバの前記受光口より小さく、前記発光面の代表的長さを前記レンズの焦点距離で割った値が、前記光ファイバの開口数(NA)の2倍以下であることを、特徴とする請求項1記載の光ファイバ照明装置。
【請求項3】
前記レンズは、径が前記光ファイバの前記受光口の径とほぼ等しく、前記発光ダイオードの前記発光面の任意の位置からの放射光が平行光線になるよう光を屈折可能であることを、特徴とする請求項1または2記載の光ファイバ照明装置。
【請求項4】
前記レンズは、前記発光ダイオード側の面が平面形状を成し、前記光ファイバ側の面が凸面形状を成す2枚の平凸球面レンズから成ることを、特徴とする請求項1、2または3記載の光ファイバ照明装置。


【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−253102(P2011−253102A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127844(P2010−127844)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(309018490)株式会社ユーテクノロジー (5)
【Fターム(参考)】