説明

光ファイバ用プロテクタ及び光ファイバ用プロテクト構造

【課題】フェルールを容易に所定位置に組み付けできる光ファイバ用プロテクタを提供する。
【解決手段】光ファイバ用プロテクタ1は、光ファイバ20を収容するファイバ収容通路3を有するプロテクタ本体2と、フェルール21を保持するフェルール保持部10とを一体に備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを保護する光ファイバ用プロテクタ、及びこれを用いた光ファイバ用プロテクト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光ファイバを保護する光ファイバ用プロテクタが種々提案されている(特許文献1〜3参照)。光ファイバ用プロテクタは、光コネクタ等の周辺で使用する場合が多く、フェルールを一体に備えた光ファイバ用プロテクタが従来より提案されている(特許文献1参照)。かかる光ファイバ用プロテクタの一従来例が図5及び図6に示されている。
【0003】
図5及び図6において、光ファイバ用プロテクタ50は、ファイバ収容通路52を有するプロテクタ本体51と、このプロテクタ本体51に一体に設けられたフェルール53とから構成されている。ファイバ収容通路52には、光ファイバ60が曲げた状態で収容されている。フェルール53には、光ファイバ60の端部が接続されている。
【0004】
この従来例によれば、光ファイバ60の端部とフェルール53にレーザ溶着等で接続し、光ファイバ60をファイバ収容通路52に収容すれば、光ファイバ用プロテクタ50への光ファイバ60の組み付けを行うことができる。そして、光ファイバ用プロテクタ50にフェルール53が一体に設けられているため、フェルール53を光ファイバ用プロテクタ50に所定の位置関係で組み付ける必要がないという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−149504号公報
【特許文献2】特開2001−249253号公報
【特許文献3】特開2008−43056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の光ファイバ用プロテクタ50では、次のような問題がある。つまり、フェルール53は光学的接続を行うための重要な部位であるため、高度な寸法精度が要求される。従って、フェルール53の寸法精度に合わせてプロテクタ本体51をも作製する必要があるため、全体として高価な部品になるという問題がある。
【0007】
また、フェルール53には、光ファイバ60との接合手段(例えばレーザ溶着)に適した特性が要求される。一方、プロテクタ本体51には、光ファイバ60を強制的に曲げる場合には、その光ファイバ60からの反力に耐える十分な強度が要求される。このようにフェルール53とプロテクタ本体51では要求される材質的特性が相違する。
【0008】
ここで、フェルール53と光ファイバ用プロテクタ50を別々に作製すると、全体として低コスト化が図れるが、フェルール53を光ファイバ用プロテクタ50に所定の位置関係で組み付ける必要があり、単に別体とした場合にはフェルール53を容易に所定位置で光ファイバ用プロテクタ50に組み付けることができないという新たな問題が発生する。
【0009】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、フェルールを別体とするものにあって、フェルールを容易に所定位置に組み付けできる光ファイバ用プロテクタ、及び、これを用いた光ファイバ用プロテクト構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、光ファイバを収容するファイバ収容通路を有するプロテクタ本体と、フェルールを保持するフェルール保持部とを一体に備えたことを特徴とする光ファイバ用プロテクタである。
【0011】
前記フェルール保持部で保持する前記フェルールは、フェルール本体部と前記フェルール本体部より突出するフランジ部を有するものであり、前記フェルール保持部は、前記フェルール本体部を収容する本体収容溝と、前記フランジ部を収容するフランジ収容溝を有することが好ましい。
【0012】
前記プロテクタ本体は、前記ファイバ収容通路からの前記光ファイバの脱落を防止するファイバ脱落防止部を有することが好ましい。
【0013】
前記ファイバ収容通路は、内周側曲げ側壁と外周側曲げ側壁と底面壁によって構成され、前記内周側曲げ側壁と前記外周側曲げ側壁の少なくともいずれか一方には、補強部を設けたが好ましい。
【0014】
前記補強部は、前記内周側曲げ側壁と前記外周側曲げ側壁の内で、前記ファイバ脱落防止部を設けた側に設けることが好ましい。
【0015】
前記補強部は、前記内周側曲げ側壁又は前記外周側曲げ側壁と共に前記フェルール保持部をも補強するよう構成することが好ましい。
【0016】
前記外周側曲げ側壁の先端部には、前記ファイバ収容通路に突出するファイバ方向矯正用突起を設けることが好ましい。
【0017】
他の発明は、フェルール本体部とフェルール本体部より突出するフランジ部を有するフェルールと、ファイバ収容通路を有するプロテクタ本体と、本体収容溝及びフランジ収容溝が設けられたフェルール保持部とを一体に有する光ファイバ用プロテクタとを備え、光ファイバが前記ファイバ収容通路に収容され、且つ、前記フェルールの前記フェルール本体部が前記本体収容溝に、前記フェルールの前記フランジ部が前記フランジ収容溝に収容されたことを特徴とする光ファイバ用プロテクト構造である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フェルールをフェルール保持部に設置すれば、フェルールが光ファイバ用プロテクタに対して所定位置で組み付けされるため、フェルールを容易に所定位置に組み付けできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態を示し、光ファイバ用プロテクタの平面図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、光ファイバ用プロテクタの右側面図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、光ファイバ用プロテクタの背面図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、図1のA−A線断面図である。
【図5】従来例を示し、(a)は光ファイバ用プロテクタの平面図、(b)は光ファイバ用プロテクタの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1〜図4は本発明の一実施形態を示す。図1〜図3に示すように、光ファイバ用プロテクタ1は、例えば合成樹脂製である。光ファイバ用プロテクタ1は、光ファイバ20を所定の配策経路に沿って収容し・保護するプロテクタ本体2と、このプロテクタ本体2に一体に設けられ、光ファイバ20の端部に接続されたフェルール21を保持するフェルール保持部10とを備えている。
【0022】
プロテクタ本体2は、ファイバ収容通路3を有する。ファイバ収容通路3は、ファイバ収容通路3の両端位置で光ファイバ20の向きが45度変更するよう湾曲されている。ファイバ収容通路3は、内周側曲げ側壁4と外周側曲げ側壁5と底面壁6(図4に示す)によって囲まれ、上面側が開口している。ファイバ収容通路3の開口側には、間隔を置いて2箇所にファイバ脱落防止部である係止突起7が内周側曲げ側壁4より突設されている。係止突起7の突出寸法は、光ファイバ20を押し込みによってファイバ収容通路3に収容可能で、且つ、ファイバ収容通路3に収容された光ファイバ20が自然にファイバ収容通路3より脱落しない寸法に設定されている。
【0023】
内周側曲げ側壁4には、補強部である補強梁部8が付設されている。この補強梁部8は、内周側曲げ側壁4の両端部間を連結すると共にその一端側がフェルール保持部10にも連結している。補強梁部8は、ほぼストレート梁形状である。
【0024】
外周側曲げ側壁5にも、補強部である補強梁部9が付設されている。この補強梁部9は、L字形状である。
【0025】
外周側曲げ側壁5の先端部には、ファイバ収容通路3内に突出するファイバ方向矯正用突起5aを設けられている。
【0026】
フェルール保持部10は、ファイバ収容通路3の一端側に連通し、フェルール21を収容し、保持するフェルール保持溝11を有する。フェルール21は、フェルール本体部21aとフェルール本体部21aより側方に向かって突出するフランジ部21bを有するものであり、フェルール保持溝11は、フェルール本体部21aの一部を収容する本体収容溝11aと、フランジ部21bを収容するフランジ収容溝11bとから構成されている。
【0027】
次に、光ファイバ用プロテクタ1への光ファイバ20とフェルール21の組み付け作業を説明する。先ず、光ファイバ20の端部とフェルール21をレーザ溶着等で接続する(ファイバ・フェルール間接続工程)。次に、フェルール21をフェルール保持溝11に収容し、光ファイバ20を曲げながらファイバ収容通路3に収容する(ファイバ・フェルールセット工程)、これで、完了する。又、上記したファイバ・フェルール間接続工程とファイバ・フェルールセット工程を逆に行っても良い。つまり、フェルール21をフェルール保持溝11に収容し、光ファイバ20を曲げながらファイバ収容通路3に収容した後に、光ファイバ20の端部とフェルール21をレーザ溶着等で接続する。
【0028】
以上説明したように、光ファイバ用プロテクタ1は、光ファイバ20を収容するファイバ収容通路3を有するプロテクタ本体2と、フェルール21を保持するフェルール保持部10とを一体に備えている。従って、フェルール21をフェルール保持部10に設置すれば良いため、フェルール21を光ファイバ用プロテクタ1に容易に所定位置に組み付けできる。
【0029】
光ファイバ用プロテクタ1とフェルール21が別部材であるので、それぞれ要求される性能に応じた材料を個々に選択できるため、全体として低コスト化を図ることができる。又、ユーザ要求(形態など)に応じた光ファイバ用プロテクタ1とフェルール21を個別に製造できるため、ユーザ要求を全体として低コストで実現できる。
【0030】
フェルール保持部10で保持するフェルール21は、フェルール本体部21aとフェルール本体部21aより突出するフランジ部21bを有するものであり、フェルール保持部10は、フェルール本体部21aを収容する本体収容溝11aと、フェルール21のフランジ部21bを収容するフランジ収容溝11bを有する。従って、光ファイバ20からの曲げ反力を受けるフェルール21を確実に保持できる。具体的には、フェルール21には図1の矢印方向の反力が作用し、この反力の作用部位はフェルール21のフランジ部21bとフランジ収容溝11bの側面に集中することになり、確実に上記反力を受け止めることができる。
【0031】
プロテクタ本体2は、ファイバ収容通路3からの光ファイバ20の脱落を防止する係止突起7を有する。従って、ファイバ収容通路3に収容された光ファイバ20がファイバ収容通路3から脱落するのを防止できる。
【0032】
ファイバ収容通路3は、内周側曲げ側壁4と外周側曲げ側壁5と底面壁6によって構成され、内周側曲げ側壁4と外周側曲げ側壁5の双方に補強梁部8,9を設けた。従って、光ファイバ20からの曲げ反力による内周側曲げ側壁4と外周側曲げ側壁5の変形、破損等を確実に防止できる。
【0033】
又、変形例として、内周側曲げ側壁4と外周側曲げ側壁5のいずれか一方にのみ補強梁部8,9を設けても良い。一方側にのみ設ける場合には、補強梁部8,9は、内周側曲げ側壁4と外周側曲げ側壁5の内で、係止突起7を設けた側に設けることが好ましい。つまり、光ファイバ用プロテクタ1を金型成形する場合、係止突起7を設けると、係止突起成形用の逃げ穴6a(図4に示す)が形成され、これが内周側曲げ側壁4の強度低下をもたらす。そこで、係止突起7を設けた側の強度低下を補強梁部8で防止できる。
【0034】
内周側曲げ側壁4に設けた補強梁部8は、内周側曲げ側壁4の両端部間を連結していると共にその一端側がフェルール保持部10にも連結している。つまり、内周側曲げ側壁4と共にフェルール保持部10をも補強するよう構成されている。従って、補強梁部8は、内周側曲げ側壁4と共にフェルール保持部10の強度アップをも図っている。このようにフェルール保持部10の強度アップによって、光ファイバ20からの曲げ反力によるフェルール保持部10の変形、破損等を確実に防止できる。
【0035】
外周側曲げ側壁5の先端部には、ファイバ収容通路3に突出するファイバ方向矯正用突起5aを設けている。従って、ファイバ収容通路3より引き出された光ファイバ20を確実に所望方向に向かって引き出すことができる。つまり、ファイバ収容通路3の幅寸法は、光ファイバ20の幅寸法より若干小さく設定されるのが一般的である。すると、光ファイバ20は、この幅寸法差の分だけ曲げ復元力によって所望方向より緩い方向に向かって引き出されることになる。これをファイバ方向矯正用突起5aによって矯正することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 光ファイバ用プロテクタ
2 プロテクタ本体
3 ファイバ収容通路
4 内周側曲げ側壁
5 外周側曲げ側壁
5a ファイバ方向矯正用突起
6 底面壁
7 係止突起(ファイバ脱落防止部)
8,9 補強梁部(補強部)
10 フェルール保持部
11 フェルール保持溝
11a 本体収容溝
11b フランジ収容溝
20 光ファイバ
21 フェルール
21a フェルール本体部
21b フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを収容するファイバ収容通路を有するプロテクタ本体と、フェルールを保持するフェルール保持部とを一体に備えたことを特徴とする光ファイバ用プロテクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバ用プロテクタであって、
前記フェルール保持部で保持する前記フェルールは、フェルール本体部と前記フェルール本体部より突出するフランジ部を有するものであり、
前記フェルール保持部は、前記フェルール本体部を収容する本体収容溝と、前記フランジ部を収容するフランジ収容溝を有することを特徴とする光ファイバ用プロテクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の光ファイバ用プロテクタであって、
前記プロテクタ本体は、前記ファイバ収容通路からの前記光ファイバの脱落を防止するファイバ脱落防止部を有することを特徴とする光ファイバ用プロテクタ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光ファイバ用プロテクタであって、
前記ファイバ収容通路は、内周側曲げ側壁と外周側曲げ側壁と底面壁によって構成され、前記内周側曲げ側壁と前記外周側曲げ側壁の少なくともいずれか一方には、補強部を設けたことを特徴とする光ファイバ用プロテクタ。
【請求項5】
請求項4記載の光ファイバ用プロテクタであって、
前記補強部は、前記内周側曲げ側壁と前記外周側曲げ側壁の内で、前記ファイバ脱落防止部を設けた側に設けたことを特徴とする光ファイバ用プロテクタ。
【請求項6】
請求項4又は請求項5記載の光ファイバ用プロテクタであって、
前記補強部は、前記内周側曲げ側壁又は前記外周側曲げ側壁と共に前記フェルール保持部をも補強するよう構成されたことを特徴とする光ファイバ用プロテクタ。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の光ファイバ用プロテクタであって、
前記外周側曲げ側壁の先端部には、前記ファイバ収容通路に突出するファイバ方向矯正用突起を設けたことを特徴とする光ファイバ用プロテクタ。
【請求項8】
フェルール本体部とフェルール本体部より突出するフランジ部を有するフェルールと、
ファイバ収容通路を有するプロテクタ本体と、本体収容溝及びフランジ収容溝が設けられたフェルール保持部とを一体に有する光ファイバ用プロテクタとを備え、
光ファイバが前記ファイバ収容通路に収容され、且つ、前記フェルールの前記フェルール本体部が前記本体収容溝に、前記フェルールの前記フランジ部が前記フランジ収容溝に収容されたことを特徴とする光ファイバ用プロテクト構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−194355(P2012−194355A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58081(P2011−58081)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】