光ファイバ用毛細管及びその製造方法
【課題】光ファイバの挿入が容易であり、かつ、破損しにくい光ファイバ用毛細管及びその製造方法を提供する。
【解決手段】光ファイバ用毛細管1は、光ファイバが挿入される貫通孔12を有する。光ファイバ用毛細管1の少なくとも一方の端部11は、内径及び外径の両方が先端側に向かって大きくなるように、先太り形状に形成されている。光ファイバ用毛細管1の少なくとも一方の端部11の先端部は、R面取り状に形成されている。
【解決手段】光ファイバ用毛細管1は、光ファイバが挿入される貫通孔12を有する。光ファイバ用毛細管1の少なくとも一方の端部11は、内径及び外径の両方が先端側に向かって大きくなるように、先太り形状に形成されている。光ファイバ用毛細管1の少なくとも一方の端部11の先端部は、R面取り状に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ用毛細管及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、下記の特許文献1〜3などにおいて、複数の光ファイバの接続や、光ファイバの固定などに用いられる光ファイバ用毛細管が提案されている。
【0003】
図15は、特許文献1に記載されている光ファイバ用毛細管の略図的断面図である。図15に示すように、特許文献1に記載の光ファイバ用毛細管100は、長さ方向に貫通する微細な貫通孔101を有する。この貫通孔101内に光ファイバ102が挿入されて固定される。具体的には、この光ファイバ用毛細管100では、貫通孔101の両側のそれぞれから、2本ずつの光ファイバ102が挿入されている。貫通孔101の一方側の端部から挿入された2本の光ファイバ102a、102bと、貫通孔101の他方側の端部から挿入された2本の光ファイバ102c、102dとは、屈折率整合材103により互いに接合されている。
【0004】
ところで、光ファイバ102は、非常に細く、破損しやすい。この光ファイバ102を光ファイバ用毛細管100に固定するためには、光ファイバ102を、小さな直径の貫通孔101内に挿入する必要がある。光ファイバ102の貫通孔101への挿入工程において、光ファイバ102と光ファイバ用毛細管100とが接触すると光ファイバ102が破損してしまうおそれがある。従って、光ファイバ102の光ファイバ用毛細管100への挿入は非常に困難である。
【0005】
このような問題に鑑み、例えば、光ファイバ用毛細管100では、貫通孔101の開口端部に、外側に向かって拡径するフレア部101aが形成されている。このため、光ファイバ102を光ファイバ用毛細管100に対して比較的容易に挿入することができる。
【0006】
また、図16は、特許文献2に記載の光ファイバ用毛細管の断面図である。図16に示すように、特許文献2に記載の光ファイバ用毛細管110では、両端部110a、110bの外径及び内径のそれぞれが外側に向かって大きくなるように、両端部110a、110bが放射状に形成されている。このため、光ファイバ用毛細管110に対して光ファイバを容易に挿入することができる。
【0007】
特許文献2には、上記光ファイバ用毛細管110の製造方法として、以下に示す方法が記載されている。すなわち、図17に示すように、ガラスチューブ111の長さ方向において等間隔に位置する部分をガスバーナー112で加熱すると共に、ガラスチューブ111内に圧縮空気を送入することにより、拡径部111aを形成する。その後、その拡径部111aにおいて切断することにより光ファイバ用毛細管110を製造する。このため、特許文献2に記載の方法により作成された光ファイバ用毛細管110の両端面は切断面となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11-64671号公報
【特許文献2】特開2001-290042号公報
【特許文献3】特開2002-323640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、図15に示す光ファイバ用毛細管100では、フレア部101aが形成されている。このため、光ファイバ用毛細管100に対して光ファイバ102を比較的容易に挿入することができる。しかしながら、光ファイバ102が挿入しやすいように、フレア部101aの直径を大きくすると、光ファイバ用毛細管100のフレア部101aが形成されている部分における肉厚が薄くなる傾向にある。従って、光ファイバ用毛細管100のフレア部101aが形成されている端部の強度が低下し、該端部が破損しやすくなる。
【0010】
例えば、光ファイバ用毛細管100の外径を大きくすることが可能であれば、フレア部101aが形成されている端部の肉厚が薄くなることを抑制することができる。しかしながら、光ファイバ用毛細管100の外径には、世界的な標準寸法があるため、光ファイバ用毛細管100の外径を全体的に大きくすることは困難である。
【0011】
従って、光ファイバ用毛細管100では、光ファイバ102の挿入容易性を高めつつ、フレア部101aが形成されている端部が破損しやすくなることを抑制することが困難であるという問題がある。
【0012】
それに対して、例えば、図16に示す光ファイバ用毛細管110では、光ファイバ用毛細管110の長さ方向における中央部の外径を標準寸法に適合させつつ、両端部110a、110bのみを拡径させることにより、標準寸法への適合と、光ファイバの挿入容易性とを両立させることができる。
【0013】
しかしながら、上述のように、光ファイバ用毛細管110の両端面は、切断面である。このため、光ファイバ用毛細管110の両端部は破損しやすいという問題がある。また、光ファイバ用毛細管110の両端面が切断面である場合、光ファイバ用毛細管110の両端部に角部が形成される。このため、光ファイバの挿入時などにおいて、光ファイバが光ファイバ用毛細管110の端面と接触した場合に、光ファイバが損傷しやすい。従って、光ファイバ用毛細管110にも、光ファイバの挿入が困難であるという問題がある。
【0014】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光ファイバの挿入が容易であり、かつ、破損しにくい光ファイバ用毛細管及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る光ファイバ用毛細管は、光ファイバが挿入される貫通孔を有する。本発明に係る光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部は、内径及び外径の両方が先端側に向かって大きくなるように、先太り形状に形成されている。さらに、本発明に係る光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部は、R面取り状に形成されている。
【0016】
このため、本発明においては、光ファイバ用毛細管の長さ方向における中央部の外径を標準寸法に適合するように細くしつつ、少なくとも一方の端部の内径を大きくすることができる。すなわち、光ファイバの挿入口の直径を大きくすることができる。また、本発明においては、少なくとも一方の端部がR面取り状に形成されている。このため、光ファイバ用毛細管の端面が平坦な切断面である場合と比較して、光ファイバの挿入時において光ファイバが光ファイバ用毛細管の端面と接触した場合においても、光ファイバが損傷しにくい。よって、光ファイバを挿入する際に求められる、光ファイバと光ファイバ用毛細管との相対的な位置決め精度が低い。従って、本発明に係る光ファイバ用毛細管には、光ファイバを容易に挿入することができる。
【0017】
また、本発明においては、少なくとも一方の端部がR面取り状に形成されているため、光ファイバの挿入後においても、光ファイバと光ファイバ用毛細管の端面とが接触することによる光ファイバの損傷を効果的に抑制することができる。
【0018】
さらに、本発明においては、少なくとも一方の端部がR面取り状に形成されているため、光ファイバ用毛細管の端面が平坦な切断面である場合と比較して、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部の強度及び剛性が高い。従って、本発明に係る光ファイバ用毛細管は、他の部材との接触等により破損しにくい。
【0019】
なお、本発明において、先端部が「R面取り状」に形成されているとは、先端部の表面が実質的に曲面により形成されており、先端部の表面が、法線方向が相互に異なる複数の表面により形成されていないことをいう。
【0020】
「先太り形状」とは、基端側から先端側に向かって直径が大きくなる形状全般を意味する。
【0021】
本発明では、縦断面において、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部の内壁側角部の表面が略円弧状であることが好ましい。この場合、光ファイバの挿入時において光ファイバが光ファイバ用毛細管の端面と接触した場合における光ファイバの損傷をより効果的に抑制することができる。従って、光ファイバの挿入がより容易となる。
【0022】
また、光ファイバの挿入後においても、光ファイバと光ファイバ用毛細管の端面とが接触することによる光ファイバの損傷をより効果的に抑制することができる。
【0023】
さらに、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部の強度及び剛性をより高めることができる。従って、他の部材との接触等による破損をより効果的に抑制することができる。
【0024】
また、本発明では、縦断面において、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部の外壁側角部の表面が略円弧状であることが好ましい。さらには、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部の外壁側角部の曲率が、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部の内壁側角部の曲率よりも小さいことが好ましい。この場合、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部の強度及び剛性をさらに高めることができる。
【0025】
なお、本発明において、光ファイバ用毛細管の「縦断面」とは、光ファイバ用毛細管の中心軸を通るように、光ファイバ用毛細管の長さ方向に沿って切断した断面のことをいう。一方、光ファイバ用毛細管の「横断面」とは、光ファイバ用毛細管の中心軸に垂直な方向に切断した断面のことをいう。
【0026】
本発明において、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部は、長さ方向において、略一定の肉厚を有していることが好ましい。すなわち、光ファイバ用毛細管のうち、内径が中央部よりも大きい端部の肉厚が、長さ方向において大きく変化しないことが好ましい。この場合、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部に、肉厚の小さな部分が生じないため、光ファイバ用毛細管が他の部材と接触することなどにより破損することをさらに効果的に抑制することができる。
【0027】
ここで、本発明において、肉厚が「略一定」であるとは、最大肉厚が平均肉厚の1.2倍以下であり、かつ最小肉厚が平均肉厚の0.8倍以上であることをいう。
【0028】
また、本発明において、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部の内壁は、略円錐面状であることが好ましい。すなわち、光ファイバ用毛細管の縦断面において、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部の内壁が略直線状であることが好ましい。
【0029】
例えば、図16に示すように、光ファイバ用毛細管の端部の内壁がドーム状である場合、光ファイバ用毛細管の端部のうち、先端側の部分の内壁の中心軸とのなす角度は小さくなるものの、光ファイバ用毛細管のうち、中央側の部分の内壁の中心軸とのなす角度は大きくなる。よって、例えば光ファイバを光ファイバ用毛細管に挿入する際に、光ファイバの位置が光ファイバ用毛細管に対して相対的にずれ、光ファイバが光ファイバ用毛細管の端部のうち、中央側の部分の内壁に接触した場合、光ファイバに大きな応力が加わることとなる。また、光ファイバが内壁に対して滑りにくくなる。従って、光ファイバが破損しやすい。
【0030】
それに対して、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部の内壁が略円錐面状である場合は、光ファイバ用毛細管の端部のいずれの部分においても、内壁と中心軸とのなす角度が小さくなる。このため、例えば光ファイバを光ファイバ用毛細管に挿入する際に、光ファイバの位置が光ファイバ用毛細管に対して相対的にずれ、光ファイバが光ファイバ用毛細管の端部の内壁に接触した場合においても、光ファイバの大きな応力が加わりにくい。また、光ファイバと内壁との接触角が小さくなるため、光ファイバが内壁に対して滑りやすい。従って、光ファイバの光ファイバ用毛細管への挿入がより容易になると共に、光ファイバの光ファイバ用毛細管への挿入時における光ファイバの破損をより効果的に抑制できる。
【0031】
なお、本発明において、光ファイバ用毛細管の中央部における貫通孔に対する、光ファイバ用毛細管の拡径された少なくとも一方の端部における貫通孔の直径の比は、特に限定されない。光ファイバ用毛細管の中央部における貫通孔に対する、光ファイバ用毛細管の拡径された少なくとも一方の端部における貫通孔の直径の比は、光ファイバ用毛細管に挿入される光ファイバの本数などに応じて適宜設定することができる。
【0032】
少なくとも一方の端部における貫通孔の直径は、例えば、少なくとも一方の端部以外の部分における貫通孔の直径の2倍以上10倍以下とすることができる。
【0033】
なお、本発明において、光ファイバ用毛細管に形成されている貫通孔の本数は特に限定されない。例えば、光ファイバ用毛細管には、長さ方向に沿って複数の挿入孔が形成されており、それら複数の挿入孔が光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部において合流し、ひとつの開口部を形成していてもよい。すなわち、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部以外の部分において、貫通孔を複数の貫通孔に区画する区画壁が設けられていてもよい。
【0034】
また、本発明において、貫通孔の横断面形状は、特に限定されない。貫通孔の横断面形状は、光ファイバ用毛細管の使用態様などに応じて適宜設定することができる。貫通孔の横断面形状は、例えば、円形、四辺形、楕円形、長円形、多角形であってもよい。
【0035】
また、本発明において、光ファイバ用毛細管の材質は特に限定されない。光ファイバ用毛細管の材質は、光ファイバ用毛細管に要求される特性に応じて適宜選択することができる。例えば、光ファイバ用毛細管に対して、高い剛性や、低い熱膨張率が求められるような場合には、光ファイバ用毛細管は、ガラス製であることが好ましい。
【0036】
本発明に係る光ファイバ用毛細管の製造方法は、上記本発明に係る光ファイバ用毛細管を製造するための方法である。本発明に係る光ファイバ用毛細管の製造方法は、貫通孔が形成されたガラス管の少なくとも一方の端部を加熱すると共に、ガラス管の少なくとも一方の端部に略円錐状の拡径部材を挿入することによりガラス管の貫通孔を拡径し、光ファイバ用毛細管を得ることを特徴としている。このため、本発明の製造方法によれば、本発明に係る光ファイバ用毛細管の製造に、切断や研磨などの煩雑な工程を必ずしも必要とせず、本発明に係る光ファイバ用毛細管を容易に製造することができる。
【0037】
例えば、上記の特許文献2に記載の光ファイバ用毛細管の製造方法では、ガラス管がふくらみ始めた後は、ガラス管のふくらむ速度が非常に速いため、制御が困難である。従って、ガラス管の貫通孔を所望の直径に正確に拡径することは非常に困難である。また、加熱条件等が微妙に変化した場合であってもガラス管の拡径度合いが大きく変化するため、所定の形状寸法の光ファイバ用毛細管を安定して製造することは困難である。
【0038】
それに対して、本発明に係る製造方法では、ガラス管の貫通孔の端部は、拡径部材の形状に沿った形状に変形するため、使用する拡径部材の形状を異ならせることにより、ガラス管の貫通孔の端部を所望の直径にまで正確に拡径することができる。また、所定の形状寸法の光ファイバ用毛細管を安定して製造することができる。
【0039】
本発明の製造方法において、拡径部材の材質は、ガラス管の加熱温度に対する耐熱性を有するものである限りにおいて、特に限定されない。拡径部材は、例えば、金属製、合金製、セラミック製、ガラス製、カーボン製であってもよい。なかでも、拡径部材は、加熱されたガラス管に対して融着しにくい材料により形成されていることが好ましく、拡径部材は、具体的には、実質的にカーボンからなることが好ましい。
【0040】
なお、「実質的にカーボンからなる」とは、主成分がカーボンであることを意味し、例えば、剛性などの特性を向上するために、カーボン以外の他の物質が添加されていてもよい。
【0041】
本発明において、拡径部材をガラス管に挿入する際のガラス管の温度は特に限定されないが、例えば、拡径部材の挿入は、ガラス管をガラス管の軟化温度以上、軟化温度よりも200℃高い温度以下の温度にまで加熱した状態で行うことが好ましい。拡径部材挿入時におけるガラス管のより好ましい温度は、ガラス管の軟化点よりも50℃高い温度以上、ガラス管の軟化点よりも100℃高い温度以下である。拡径部材挿入時におけるガラス管の温度が低すぎると、ガラス管の貫通孔が好適に拡径されず、ガラス管にクラックが生じたり、ガラス管が破損したりする場合がある。一方、拡径部材挿入時におけるガラス管の温度が高すぎると、ガラス管が自重により変形し、所望の形状の光ファイバ用毛細管が得られない場合がある。また、ガラス管と拡径部材とが融着しやすくなる傾向にある。
【0042】
本発明に係る製造方法により、光ファイバ用毛細管を製造する場合、少なくとも一方の端部における貫通孔の直径が、少なくとも一方の端部以外の部分における貫通孔の直径の2倍以上10倍以下となるように、ガラス管の貫通孔を拡径することが好ましい。ガラス管の貫通孔を大きく拡径しすぎると、ガラス管の少なくとも一方の端部における肉厚が薄くなりすぎ、強度及び剛性が低くなりすぎる場合があるからである。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、光ファイバの挿入が容易であり、かつ、破損しにくい光ファイバ用毛細管及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1の実施形態に係る光ファイバ用毛細管の一部分を表す略図的縦断面図である。
【図2】光ファイバ用毛細管の端部の一部分の略図的縦断面図である。
【図3】図1における線III−IIIにおける略図的断面図である。
【図4】図1における線IV−IVにおける略図的断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る光ファイバ用毛細管の使用態様を説明するための略図的縦断面図である。
【図6】光ファイバ用毛細管の製造装置の模式的構成図である。
【図7】ガラス管の貫通孔の端部を拡径する工程を説明するための略図的縦断面図である。
【図8】第1の変形例における光ファイバ用毛細管の略図的横断面図である。
【図9】第2の変形例における光ファイバ用毛細管の略図的横断面図である。
【図10】第2の実施形態に係る光ファイバ用毛細管の一部分を表す略図的縦断面図である。
【図11】第2の実施形態に係る光ファイバ用毛細管の製造に使用するガラス管の一部分を表す略図的縦断面図である。
【図12】ガラス管の複数の貫通孔の端部を一体化する工程を説明するための略図的模式図である。
【図13】ガラス管の複数の貫通孔の端部を一体化する工程を説明するための略図的模式図である。
【図14】実施例において作製した光ファイバ用毛細管の写真である。
【図15】特許文献1に記載されている光ファイバ用毛細管の断面図である。
【図16】特許文献2に記載の光ファイバ用毛細管の断面図である。
【図17】特許文献2に記載の光ファイバ用毛細管の製造方法を説明するための略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明を実施した好ましい形態について、図1に示す光ファイバ用毛細管を例に挙げて説明する。
【0046】
(第1の実施形態)
<光ファイバ用毛細管1の構造>
図1は、第1の実施形態に係る光ファイバ用毛細管の一部分を表す略図的縦断面図である。図2は、光ファイバ用毛細管の端部の一部分の略図的縦断面図である。図3は、光ファイバ用毛細管の中央部における略図的断面図である。図4は、光ファイバ用毛細管の端部における略図的断面図である。図5は、本実施形態の光ファイバ用毛細管の使用態様を説明するための略図的縦断面図である。
【0047】
図1に示すように、光ファイバ用毛細管1には、長さ方向に沿って一方端から他方端にわたって延びる貫通孔12が形成されている。図3及び図4に示すように、貫通孔12の横断面形状は、円形である。この光ファイバ用毛細管1は、例えば、図5に示すように、両端部から1または複数の光ファイバ19が挿入されて使用されるものである。本実施形態の光ファイバ用毛細管1は、例えば、光ファイバのコネクタ、光ファイバスプライス、光ファイバの固定具として使用される。
【0048】
図1及び図5に示すように、光ファイバ用毛細管1の中央部10では、長さ方向において、内径及び外径の両方が略一定である。一方、光ファイバ用毛細管1の少なくとも一方の端部11は、内径及び外径の両方が先端側に向かって大きくなるように、先端側に向かって先太り形状に形成されている。具体的には、本実施形態では、図5に示すように、光ファイバ用毛細管1の両方の端部11が、内径及び外径の両方が先端側に向かって大きくなるように、先端側に向かって先太り形状に形成されている。
【0049】
図1に示すように、本実施形態において、光ファイバ用毛細管1の拡径されている端部11の外径の最大(すなわち、端部11の先端における外径)L6は、光ファイバ用毛細管1の拡径されていない中央部10の外径L4の1.1倍以上2倍以下である。また、光ファイバ用毛細管1の中央部10の内径L7に対する端部11の内径の最大L8の比は、2〜10内にある。光ファイバ用毛細管1の拡径されている端部11の長さ方向寸法L5は、2〜5mm内にある。
【0050】
具体的には、本実施形態の光ファイバ用毛細管1の各寸法は以下の通りとなっている。
【0051】
中央部10の外径(L4):1.8mm(世界的な標準寸法)
中央部10の内径(L7):0.252mm
端部11の長さ方向寸法(L5):3mm
端部11における外径の最大(L6):2.5mm
端部11における内径の最大(L8):1.5mm
【0052】
本実施形態において、端部11では、光ファイバ用毛細管1の内径及び外径が、長さ方向外側に向かって一定の比率で増大している。すなわち、端部11の内壁14及び外壁13のそれぞれが、略円錐面状に形成されている。光ファイバ用毛細管1の縦断面において、端部11の内壁14と端部11の外壁13とは略平行である。このため、端部11は、長さ方向において、略一定の肉厚を有している。具体的には、端部11の中央側端における光ファイバ用毛細管1の肉厚L1と、端部11の先端側における光ファイバ用毛細管1の肉厚L2とは、略同一である。
【0053】
詳細には、本実施形態では、端部11の内壁14と光ファイバ用毛細管1の中心軸Cとのなす角度の方が、端部11の外壁13と中心軸Cとのなす角度よりも若干大きくなっている。このため、端部11においては、先端側に向かって肉厚が緩やかに漸減している。よって、端部11の先端側における光ファイバ用毛細管1の肉厚L2は、端部11の中央側端における光ファイバ用毛細管1の肉厚L1よりも若干小さい。具体的には、端部11の先端側における光ファイバ用毛細管1の肉厚L2は、端部11における平均肉厚未満、端部11における平均肉厚の0.8倍以上であり、端部11の中央側端における光ファイバ用毛細管1の肉厚L1は、端部11における平均肉厚より大きく、端部11における平均肉厚の1.2倍以下である。
【0054】
図1、図2及び図5に示すように、光ファイバ用毛細管1の端部11の先端部は、R面取り状に形成されている。すなわち、先端部の表面は、実質的に曲面により形成されている。
【0055】
本実施形態では、具体的には、縦断面において、光ファイバ用毛細管1の端部11の内壁14側角部11aと、光ファイバ用毛細管1の端部11の外壁13側角部11bとの両方が略円弧状に形成されている。光ファイバ用毛細管1の端部11の外壁13側角部11bの曲率は、光ファイバ用毛細管1の端部11の内壁14側角部11aの曲率よりも小さい。
【0056】
本実施形態の光ファイバ用毛細管1の材質は、特に限定されない。光ファイバ用毛細管1の材質は、光ファイバ用毛細管に要求される特性に応じて適宜選択することができる。光ファイバ用毛細管1は、例えば、樹脂、金属、セラミック、ガラスなどにより形成することができる。なかでも、光ファイバ用毛細管1に対して、高い剛性や、低い熱膨張率が求められるような場合には、光ファイバ用毛細管1は、ガラス製であることが好ましい。
【0057】
以上説明したように、本実施形態では、端部11の内径及び外径の両方が先端側に向かって大きくなるように、先太り形状に形成されている。このため、光ファイバ用毛細管1の長さ方向における中央部10の外径L4を標準寸法に適合するように細くしつつ、端部11の内径を大きくすることができる。すなわち、光ファイバ19(図5を参照)の挿入口の直径を大きくすることができる。このため、光ファイバ用毛細管1に光ファイバ19を容易に挿入することができる。
【0058】
また、端部11は、R面取り状に形成されている。このため、光ファイバ19の挿入時において光ファイバ19が光ファイバ用毛細管1の端面と接触した場合においても、光ファイバ19が損傷しにくい。また、本実施形態では、縦断面において、光ファイバ用毛細管1の端部11の内壁14側角部11aが略円弧状である。このため、光ファイバ19の挿入時において光ファイバ19が光ファイバ用毛細管1の端面と接触した場合においても、光ファイバ19がより損傷しにくい。よって、光ファイバ19を挿入する際に求められる、光ファイバ19と光ファイバ用毛細管1との相対的な位置決め精度が低い。従って、光ファイバ用毛細管1に光ファイバ19をより容易に挿入することができる。
【0059】
さらに、本実施形態では、端部11の内壁14は、略円錐面状である。このため、光ファイバ用毛細管1に光ファイバ19をさらに容易に挿入することができる。以下、その理由について詳細に説明する。
【0060】
例えば、図16に示すように、光ファイバ用毛細管110の端部110a、110bの内壁がドーム状である場合、光ファイバ用毛細管110の端部110a、110bのうち、先端側の部分の内壁の中心軸とのなす角度は小さくなるものの、光ファイバ用毛細管110の端部110a、110bのうち、中央側の部分の内壁の中心軸とのなす角度は大きくなる。このため、例えば光ファイバを光ファイバ用毛細管110に挿入する際に、光ファイバの位置が光ファイバ用毛細管110に対して相対的にずれ、光ファイバが光ファイバ用毛細管110の端部110a、110bのうち、中央側の部分の内壁に接触した場合、光ファイバに大きな応力が加わることとなる。また、光ファイバが内壁に対して滑りにくくなる。従って、光ファイバが破損しやすい。
【0061】
それに対して、本実施形態では、上述のように、端部11の内壁14が略円錐面状である。このため、端部11のいずれの部分においても、内壁14と中心軸Cとのなす角度が小さくなる。よって、例えば光ファイバ19を光ファイバ用毛細管1に挿入する際に、光ファイバ19の位置が光ファイバ用毛細管1に対して相対的にずれ、光ファイバ19が光ファイバ用毛細管1の端部11の内壁14に接触した場合においても、光ファイバ19の大きな応力が加わりにくい。また、光ファイバ19と内壁14との接触角が小さくなるため、光ファイバ19が内壁14に対して滑りやすい。従って、光ファイバ19の光ファイバ用毛細管1への挿入がより容易になると共に、光ファイバ19の光ファイバ用毛細管1への挿入時における光ファイバ19の破損をより効果的に抑制できる。
【0062】
また、本実施形態では、端部11がR面取り状に形成されているため、図5に示すように、光ファイバ19の挿入後においても、光ファイバ19と光ファイバ用毛細管1の端面とが接触することによる光ファイバ19の損傷を効果的に抑制することができる。特に、本実施形態では、縦断面において、光ファイバ用毛細管1の端部11の内壁14側角部11aが略円弧状に形成されている。このため、光ファイバ19と光ファイバ用毛細管1の端面とが接触することによる光ファイバ19の損傷をより効果的に抑制することができる。
【0063】
また、端部11がR面取り状に形成されている本実施形態においては、光ファイバ用毛細管の端面が平坦な切断面である場合と比較して、端部11の強度及び剛性が高い。従って、光ファイバ用毛細管1は、他の部材との接触等により破損しにくい。さらに、本実施形態では、縦断面において、光ファイバ用毛細管1の端部11の外壁13側角部11bが略円弧状に形成されており、光ファイバ用毛細管1の端部11の外壁13側角部11bの曲率は、光ファイバ用毛細管1の端部11の内壁14側角部11aの曲率よりも小さくされている。換言すれば、光ファイバ用毛細管1の端部11の外壁13側角部11bの曲率半径が、光ファイバ用毛細管1の端部11の内壁14側角部11aの曲率半径よりも大きくされている。このため、他の部材との接触等による光ファイバ用毛細管1の破損がより効果的に抑制されている。
【0064】
また、本実施形態では、端部11の肉厚は、長さ方向において略一定であり、端部11の先端側の肉厚が比較的厚い。従って、光ファイバ用毛細管1が他の部材と接触することなどにより破損することがさらに効果的に抑制されている。
【0065】
ところで、図5に示すように、光ファイバ19は、通常、光ファイバ19保護用の樹脂カバー17により覆われている。このため、例えば、本実施形態の光ファイバ用毛細管1のように、一方の端部から複数本の光ファイバが挿入される場合は、光ファイバ用毛細管の端部付近で光ファイバが屈曲することとなる。
【0066】
例えば、図15に示すように、光ファイバ用毛細管100の両側のそれぞれから複数の光ファイバ102を挿入した場合、上述の通り、光ファイバ用毛細管100では、フレア部101aの直径を十分に大きくできないため、光ファイバ102の屈曲部の曲率が大きくなりやすい。光ファイバ102の屈曲部の曲率が大きくなると、光ファイバ102における光の伝搬損失が大きくなる傾向にある。
【0067】
それに対して、本実施形態の光ファイバ用毛細管1では、端部11の内径を十分大きくできる。このため、光ファイバ用毛細管1の両側のそれぞれから複数本の光ファイバ19を挿入した場合であっても、光ファイバ19の屈曲部の曲率がそれほど大きくならない。従って、光ファイバ用毛細管1を用いることにより、光ファイバ19における光の伝搬損失の増大を抑制することができる。
【0068】
<光ファイバ用毛細管1の製造装置及び製造方法>
図6は、光ファイバ用毛細管の製造装置の模式的構成図である。図7は、ガラス管の貫通孔の端部を拡径する工程を説明するための略図的縦断面図である。
【0069】
次に、光ファイバ用毛細管1の製造装置及び製造方法の一例について、図6及び図7を参照しながら詳細に説明する。
【0070】
まず、図6を参照しながら光ファイバ用毛細管1の製造装置20の構成について説明する。図6に示すように、製造装置20は、支持・回転機構21を備えている。支持・回転機構21は、ガラス管24を支持する機能と、支持したガラス管24を回転させる機能とを備えている。
【0071】
また、製造装置20は、支持・回転機構21により支持されたガラス管24の端部を加熱するための加熱機構22を備えている。加熱機構22は、ガラス管24を加熱できるものであれば特に限定されない。加熱機構22は、例えば、ガスバーナー、通電することにより発熱する電熱体、レーザー光をガラス管24に照射することによりガラス管24を加熱するレーザー加熱機構などにより構成することができる。
【0072】
さらに、製造装置20は、拡径機構23を備えている。拡径機構23は、ガラス管24の貫通孔を拡径させるための機構である。拡径機構23は、拡径部材23aを備えている。拡径部材23aは、後述するように、加熱されたガラス管24の貫通孔に挿入され、貫通孔を押し広げるためのものである。拡径部材23aは、先細り形状を有している。具体的には、本実施形態では、拡径部材23aは、円錐状に形成されている。
【0073】
拡径部材23aの材質は、ガラス管24の加熱温度に対する耐熱性を有するものである限りにおいて、特に限定されない。拡径部材23aは、例えば、金属製、合金製、セラミック製、ガラス製、カーボン製であってもよい。なかでも、拡径部材23aは、加熱されたガラス管24に対して融着しにくい材料により形成されていることが好ましく、拡径部材23aは、具体的には、実質的にカーボンからなることが好ましい。
【0074】
拡径部材23aは、拡径機構本体23bに取り付けられている。拡径機構本体23bは、拡径部材23aを回転させる機能及び拡径部材23aを変位させる機能を有する。具体的には、拡径機構本体23bは、拡径部材23aの中心軸と、ガラス管24の中心軸とが一致する位置に、拡径部材23aを移動させた後に、拡径部材23aを回転させながらガラス管24に対して進退させる機能を有している。
【0075】
次に、製造装置20を用いて光ファイバ用毛細管1を製造する方法について、図6及び図7を参照しながら説明する。
【0076】
まず、図6に示すように、光ファイバ用毛細管1の母材となる、長さ方向において直径が略一定の貫通孔が形成されているガラス管24を支持・回転機構21に固定する。
【0077】
次に、支持・回転機構21によりガラス管24を、ガラス管24の中心軸を中心として回転させながら、加熱機構22によりガラス管24の端部を加熱する。
【0078】
次に、図7に示すように、拡径機構本体23bにより、ガラス管24の中心軸と、拡径部材23aの中心軸とが一致するように拡径部材23aを移動させた後に、拡径部材23aを回転させながらガラス管24の端部内に挿入する。ガラス管24に拡径部材23aを挿入した状態を、例えば1分程度の所定の期間にわたって保持し、その後、拡径部材23aをガラス管24から抜く。なお、ガラス管24への拡径部材23aの挿入前に、拡径部材23aを予め加熱しておくことが好ましい。そうすることにより、ガラス管24と、ガラス管24に挿入される拡径部材23aとの間の温度差を小さくできる。従って、ガラス管24の端部を拡径しやすくなると共に、ガラス管24の損傷を抑制することができる。
【0079】
次に、ガラス管24の拡径された端部とは反対側の端部も、同様の要領で拡径する。
【0080】
その後、ガラス管24を室温付近にまで徐冷する。徐冷後、ガラス管24を洗浄し、ガラス管24に付着しているカーボン粉等を取り除くことにより、図1に示す光ファイバ用毛細管1を完成させることができる。
【0081】
本実施形態の製造方法によれば、ガラス管から光ファイバ用毛細管1を製造する際に、切断や研磨などの煩雑な工程を必ずしも必要とせず、光ファイバ用毛細管1を容易に製造することができる。
【0082】
例えば、上記の特許文献2に記載の光ファイバ用毛細管の製造方法では、ガラス管がふくらみ始めた後は、ガラス管のふくらむ速度が非常に速いため、制御が困難である。従って、ガラス管の貫通孔を所望の直径に正確に拡径することは非常に困難である。また、加熱条件等が微妙に変化した場合であってもガラス管の拡径度合いが大きく変化するため、光ファイバ用毛細管を安定して製造することは困難である。
【0083】
それに対して、本実施形態の製造方法では、ガラス管24の貫通孔の端部は、拡径部材23aの形状に沿った形状に変形する。このため、使用する拡径部材23aの形状を異ならせることにより、ガラス管24の貫通孔の端部を所望の直径にまで正確に拡径することができる。また、光ファイバ用毛細管1を安定して製造することができる。
【0084】
なお、本実施形態の製造方法において、拡径部材23aをガラス管24に挿入する際のガラス管24の温度は特に限定されないが、例えば、拡径部材23aの挿入は、ガラス管24をガラス管24の軟化温度以上、ガラス管24の軟化温度よりも200℃高い温度以下の温度にまで加熱した状態で行うことが好ましい。拡径部材23aの挿入時におけるガラス管24のより好ましい温度は、ガラス管24の軟化点よりも50℃高い温度以上、ガラス管24の軟化点よりも100℃高い温度以下である。拡径部材23aの挿入時におけるガラス管24の温度が低すぎると、ガラス管24の貫通孔が好適に拡径されず、ガラス管24にクラックが生じたり、ガラス管24が破損したりする場合がある。一方、拡径部材23aの挿入時におけるガラス管24の温度が高すぎると、ガラス管24が自重により変形し、所望の形状の光ファイバ用毛細管1が得られない場合がある。また、ガラス管24と拡径部材23aとが融着しやすくなる傾向にある。
【0085】
また、本実施形態の製造方法により、光ファイバ用毛細管1を製造する場合、端部11における貫通孔12の直径が、中央部10における貫通孔12の直径の2倍以上10倍以下となるように、ガラス管24の貫通孔を拡径することが好ましい。ガラス管24の貫通孔を大きく拡径しすぎると、ガラス管24の端部における肉厚が薄くなりすぎ、強度及び剛性が低くなりすぎる場合があるからである。
【0086】
以下、上記第1の実施形態の変形例及び本発明を実施した好ましい形態の他の例について説明する。なお、以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0087】
(第1及び第2の変形例)
図8は、第1の変形例における光ファイバ用毛細管の略図的横断面図である。図9は、第2の変形例における光ファイバ用毛細管の略図的横断面図である。
【0088】
上記第1の実施形態では、貫通孔12の横断面形状が円形である場合について説明した。但し、本発明はこの構成に限定されない。貫通孔12は、例えば、図8に示すように、四辺形であってもよいし、図9に示すように、長円であってもよい。また、貫通孔12は、楕円形であってもよいし、多角形であってもよい。なお、「四辺形」には、少なくとも、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形が含まれるものとする。
【0089】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態に係る光ファイバ用毛細管の一部分を表す略図的縦断面図である。
【0090】
上記第1の実施形態では、貫通孔12がひとつのみ形成されている例について説明した。しかしながら、本発明は、この構成に限定されない。例えば、図10に示すように、光ファイバ用毛細管には、複数の貫通孔12が形成されており、それら複数の貫通孔12が光ファイバ用毛細管の端部11において合流し、ひとつの開口部を形成していてもよい。すなわち、光ファイバ用毛細管には、端部11以外の部分において、貫通孔を複数の貫通孔12に区画する区画壁15が設けられていてもよい。
【0091】
次に、本実施形態の光ファイバ用毛細管の製造方法について、図11〜図13を参照しながら説明する。
【0092】
まず、図11に示すように、複数の貫通孔31,32が形成されたガラス管30を用意する。次に、図12に示すように、ガラス管30の端部の外壁を覆うようにコーティング層36を設けた状態で、ガラス管30を溶解させる溶解液33が満たされた容器34にガラス管30の端部を浸漬する。これにより、図13に示すように、貫通孔31と貫通孔32との間の部分が溶解し、ガラス管30の端部において、貫通孔31と貫通孔32とが一体となる。
【0093】
その後、上記第1の実施形態で説明した要領と同様の要領で、ガラス管30の端部を拡径させることにより、図10に示す本実施形態の光ファイバ用毛細管を製造することができる。
【0094】
なお、コーティング層36は、溶解液33により溶解しないものであれば特に限定されない。また、溶解液33も、ガラス管30を溶解できるものであれば特に限定されない。溶解液33の具体例としては、例えば、フッ化水素水溶液(フッ酸)が挙げられる。溶解液33としてフッ酸を用いる場合には、コーティング層36は、例えば、エポキシ樹脂膜により構成することができる。
【0095】
(実施例)
上記第1の実施形態に記載の光ファイバ用毛細管1を以下の要領で作製した。具体的には、まず、外径1.8mm、内径0.252mmのガラス管(軟化温度:750℃)を用意した。用意したガラス管の両端面は、切断面であった。そのガラス管の両端部を図6に示す製造装置20を用いて拡径した。なお、加熱機構22としてはガスバーナーを用いた。拡径部材23aは、高さ5mm、底面における直径2mmの円錐状のカーボン部材を用いた。作製した光ファイバ用毛細管の写真を図14に示す。
【0096】
図14に示すように、ガラス管を加熱した状態で拡径部材23aを挿入して、ガラス管の貫通孔を拡径させることにより、端部において内径及び外径の両方が先端側に向かって大きくなっており、かつ端部の先端部の縦断面形状が略半球である光ファイバ用毛細管を製造できることが分かった。
【符号の説明】
【0097】
1…光ファイバ用毛細管
10…光ファイバ用毛細管の中央部
11…光ファイバ用毛細管の端部
11a…光ファイバ用毛細管の端部の内壁側角部
11b…光ファイバ用毛細管の端部の外壁側角部
12…貫通孔
13…外壁
14…内壁
15…区画壁
17…樹脂カバー
19…光ファイバ
20…製造装置
21…支持・回転機構
22…加熱機構
23…拡径機構
23a…拡径部材
23b…拡径機構本体
24…ガラス管
30…ガラス管
31,32…貫通孔
33…溶解液
34…容器
36…コーティング層
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ用毛細管及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、下記の特許文献1〜3などにおいて、複数の光ファイバの接続や、光ファイバの固定などに用いられる光ファイバ用毛細管が提案されている。
【0003】
図15は、特許文献1に記載されている光ファイバ用毛細管の略図的断面図である。図15に示すように、特許文献1に記載の光ファイバ用毛細管100は、長さ方向に貫通する微細な貫通孔101を有する。この貫通孔101内に光ファイバ102が挿入されて固定される。具体的には、この光ファイバ用毛細管100では、貫通孔101の両側のそれぞれから、2本ずつの光ファイバ102が挿入されている。貫通孔101の一方側の端部から挿入された2本の光ファイバ102a、102bと、貫通孔101の他方側の端部から挿入された2本の光ファイバ102c、102dとは、屈折率整合材103により互いに接合されている。
【0004】
ところで、光ファイバ102は、非常に細く、破損しやすい。この光ファイバ102を光ファイバ用毛細管100に固定するためには、光ファイバ102を、小さな直径の貫通孔101内に挿入する必要がある。光ファイバ102の貫通孔101への挿入工程において、光ファイバ102と光ファイバ用毛細管100とが接触すると光ファイバ102が破損してしまうおそれがある。従って、光ファイバ102の光ファイバ用毛細管100への挿入は非常に困難である。
【0005】
このような問題に鑑み、例えば、光ファイバ用毛細管100では、貫通孔101の開口端部に、外側に向かって拡径するフレア部101aが形成されている。このため、光ファイバ102を光ファイバ用毛細管100に対して比較的容易に挿入することができる。
【0006】
また、図16は、特許文献2に記載の光ファイバ用毛細管の断面図である。図16に示すように、特許文献2に記載の光ファイバ用毛細管110では、両端部110a、110bの外径及び内径のそれぞれが外側に向かって大きくなるように、両端部110a、110bが放射状に形成されている。このため、光ファイバ用毛細管110に対して光ファイバを容易に挿入することができる。
【0007】
特許文献2には、上記光ファイバ用毛細管110の製造方法として、以下に示す方法が記載されている。すなわち、図17に示すように、ガラスチューブ111の長さ方向において等間隔に位置する部分をガスバーナー112で加熱すると共に、ガラスチューブ111内に圧縮空気を送入することにより、拡径部111aを形成する。その後、その拡径部111aにおいて切断することにより光ファイバ用毛細管110を製造する。このため、特許文献2に記載の方法により作成された光ファイバ用毛細管110の両端面は切断面となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11-64671号公報
【特許文献2】特開2001-290042号公報
【特許文献3】特開2002-323640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、図15に示す光ファイバ用毛細管100では、フレア部101aが形成されている。このため、光ファイバ用毛細管100に対して光ファイバ102を比較的容易に挿入することができる。しかしながら、光ファイバ102が挿入しやすいように、フレア部101aの直径を大きくすると、光ファイバ用毛細管100のフレア部101aが形成されている部分における肉厚が薄くなる傾向にある。従って、光ファイバ用毛細管100のフレア部101aが形成されている端部の強度が低下し、該端部が破損しやすくなる。
【0010】
例えば、光ファイバ用毛細管100の外径を大きくすることが可能であれば、フレア部101aが形成されている端部の肉厚が薄くなることを抑制することができる。しかしながら、光ファイバ用毛細管100の外径には、世界的な標準寸法があるため、光ファイバ用毛細管100の外径を全体的に大きくすることは困難である。
【0011】
従って、光ファイバ用毛細管100では、光ファイバ102の挿入容易性を高めつつ、フレア部101aが形成されている端部が破損しやすくなることを抑制することが困難であるという問題がある。
【0012】
それに対して、例えば、図16に示す光ファイバ用毛細管110では、光ファイバ用毛細管110の長さ方向における中央部の外径を標準寸法に適合させつつ、両端部110a、110bのみを拡径させることにより、標準寸法への適合と、光ファイバの挿入容易性とを両立させることができる。
【0013】
しかしながら、上述のように、光ファイバ用毛細管110の両端面は、切断面である。このため、光ファイバ用毛細管110の両端部は破損しやすいという問題がある。また、光ファイバ用毛細管110の両端面が切断面である場合、光ファイバ用毛細管110の両端部に角部が形成される。このため、光ファイバの挿入時などにおいて、光ファイバが光ファイバ用毛細管110の端面と接触した場合に、光ファイバが損傷しやすい。従って、光ファイバ用毛細管110にも、光ファイバの挿入が困難であるという問題がある。
【0014】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光ファイバの挿入が容易であり、かつ、破損しにくい光ファイバ用毛細管及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る光ファイバ用毛細管は、光ファイバが挿入される貫通孔を有する。本発明に係る光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部は、内径及び外径の両方が先端側に向かって大きくなるように、先太り形状に形成されている。さらに、本発明に係る光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部は、R面取り状に形成されている。
【0016】
このため、本発明においては、光ファイバ用毛細管の長さ方向における中央部の外径を標準寸法に適合するように細くしつつ、少なくとも一方の端部の内径を大きくすることができる。すなわち、光ファイバの挿入口の直径を大きくすることができる。また、本発明においては、少なくとも一方の端部がR面取り状に形成されている。このため、光ファイバ用毛細管の端面が平坦な切断面である場合と比較して、光ファイバの挿入時において光ファイバが光ファイバ用毛細管の端面と接触した場合においても、光ファイバが損傷しにくい。よって、光ファイバを挿入する際に求められる、光ファイバと光ファイバ用毛細管との相対的な位置決め精度が低い。従って、本発明に係る光ファイバ用毛細管には、光ファイバを容易に挿入することができる。
【0017】
また、本発明においては、少なくとも一方の端部がR面取り状に形成されているため、光ファイバの挿入後においても、光ファイバと光ファイバ用毛細管の端面とが接触することによる光ファイバの損傷を効果的に抑制することができる。
【0018】
さらに、本発明においては、少なくとも一方の端部がR面取り状に形成されているため、光ファイバ用毛細管の端面が平坦な切断面である場合と比較して、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部の強度及び剛性が高い。従って、本発明に係る光ファイバ用毛細管は、他の部材との接触等により破損しにくい。
【0019】
なお、本発明において、先端部が「R面取り状」に形成されているとは、先端部の表面が実質的に曲面により形成されており、先端部の表面が、法線方向が相互に異なる複数の表面により形成されていないことをいう。
【0020】
「先太り形状」とは、基端側から先端側に向かって直径が大きくなる形状全般を意味する。
【0021】
本発明では、縦断面において、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部の内壁側角部の表面が略円弧状であることが好ましい。この場合、光ファイバの挿入時において光ファイバが光ファイバ用毛細管の端面と接触した場合における光ファイバの損傷をより効果的に抑制することができる。従って、光ファイバの挿入がより容易となる。
【0022】
また、光ファイバの挿入後においても、光ファイバと光ファイバ用毛細管の端面とが接触することによる光ファイバの損傷をより効果的に抑制することができる。
【0023】
さらに、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部の強度及び剛性をより高めることができる。従って、他の部材との接触等による破損をより効果的に抑制することができる。
【0024】
また、本発明では、縦断面において、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部の外壁側角部の表面が略円弧状であることが好ましい。さらには、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部の外壁側角部の曲率が、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部の内壁側角部の曲率よりも小さいことが好ましい。この場合、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部の強度及び剛性をさらに高めることができる。
【0025】
なお、本発明において、光ファイバ用毛細管の「縦断面」とは、光ファイバ用毛細管の中心軸を通るように、光ファイバ用毛細管の長さ方向に沿って切断した断面のことをいう。一方、光ファイバ用毛細管の「横断面」とは、光ファイバ用毛細管の中心軸に垂直な方向に切断した断面のことをいう。
【0026】
本発明において、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部は、長さ方向において、略一定の肉厚を有していることが好ましい。すなわち、光ファイバ用毛細管のうち、内径が中央部よりも大きい端部の肉厚が、長さ方向において大きく変化しないことが好ましい。この場合、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部に、肉厚の小さな部分が生じないため、光ファイバ用毛細管が他の部材と接触することなどにより破損することをさらに効果的に抑制することができる。
【0027】
ここで、本発明において、肉厚が「略一定」であるとは、最大肉厚が平均肉厚の1.2倍以下であり、かつ最小肉厚が平均肉厚の0.8倍以上であることをいう。
【0028】
また、本発明において、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部の内壁は、略円錐面状であることが好ましい。すなわち、光ファイバ用毛細管の縦断面において、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部の内壁が略直線状であることが好ましい。
【0029】
例えば、図16に示すように、光ファイバ用毛細管の端部の内壁がドーム状である場合、光ファイバ用毛細管の端部のうち、先端側の部分の内壁の中心軸とのなす角度は小さくなるものの、光ファイバ用毛細管のうち、中央側の部分の内壁の中心軸とのなす角度は大きくなる。よって、例えば光ファイバを光ファイバ用毛細管に挿入する際に、光ファイバの位置が光ファイバ用毛細管に対して相対的にずれ、光ファイバが光ファイバ用毛細管の端部のうち、中央側の部分の内壁に接触した場合、光ファイバに大きな応力が加わることとなる。また、光ファイバが内壁に対して滑りにくくなる。従って、光ファイバが破損しやすい。
【0030】
それに対して、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部の内壁が略円錐面状である場合は、光ファイバ用毛細管の端部のいずれの部分においても、内壁と中心軸とのなす角度が小さくなる。このため、例えば光ファイバを光ファイバ用毛細管に挿入する際に、光ファイバの位置が光ファイバ用毛細管に対して相対的にずれ、光ファイバが光ファイバ用毛細管の端部の内壁に接触した場合においても、光ファイバの大きな応力が加わりにくい。また、光ファイバと内壁との接触角が小さくなるため、光ファイバが内壁に対して滑りやすい。従って、光ファイバの光ファイバ用毛細管への挿入がより容易になると共に、光ファイバの光ファイバ用毛細管への挿入時における光ファイバの破損をより効果的に抑制できる。
【0031】
なお、本発明において、光ファイバ用毛細管の中央部における貫通孔に対する、光ファイバ用毛細管の拡径された少なくとも一方の端部における貫通孔の直径の比は、特に限定されない。光ファイバ用毛細管の中央部における貫通孔に対する、光ファイバ用毛細管の拡径された少なくとも一方の端部における貫通孔の直径の比は、光ファイバ用毛細管に挿入される光ファイバの本数などに応じて適宜設定することができる。
【0032】
少なくとも一方の端部における貫通孔の直径は、例えば、少なくとも一方の端部以外の部分における貫通孔の直径の2倍以上10倍以下とすることができる。
【0033】
なお、本発明において、光ファイバ用毛細管に形成されている貫通孔の本数は特に限定されない。例えば、光ファイバ用毛細管には、長さ方向に沿って複数の挿入孔が形成されており、それら複数の挿入孔が光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部において合流し、ひとつの開口部を形成していてもよい。すなわち、光ファイバ用毛細管の少なくとも一方の端部以外の部分において、貫通孔を複数の貫通孔に区画する区画壁が設けられていてもよい。
【0034】
また、本発明において、貫通孔の横断面形状は、特に限定されない。貫通孔の横断面形状は、光ファイバ用毛細管の使用態様などに応じて適宜設定することができる。貫通孔の横断面形状は、例えば、円形、四辺形、楕円形、長円形、多角形であってもよい。
【0035】
また、本発明において、光ファイバ用毛細管の材質は特に限定されない。光ファイバ用毛細管の材質は、光ファイバ用毛細管に要求される特性に応じて適宜選択することができる。例えば、光ファイバ用毛細管に対して、高い剛性や、低い熱膨張率が求められるような場合には、光ファイバ用毛細管は、ガラス製であることが好ましい。
【0036】
本発明に係る光ファイバ用毛細管の製造方法は、上記本発明に係る光ファイバ用毛細管を製造するための方法である。本発明に係る光ファイバ用毛細管の製造方法は、貫通孔が形成されたガラス管の少なくとも一方の端部を加熱すると共に、ガラス管の少なくとも一方の端部に略円錐状の拡径部材を挿入することによりガラス管の貫通孔を拡径し、光ファイバ用毛細管を得ることを特徴としている。このため、本発明の製造方法によれば、本発明に係る光ファイバ用毛細管の製造に、切断や研磨などの煩雑な工程を必ずしも必要とせず、本発明に係る光ファイバ用毛細管を容易に製造することができる。
【0037】
例えば、上記の特許文献2に記載の光ファイバ用毛細管の製造方法では、ガラス管がふくらみ始めた後は、ガラス管のふくらむ速度が非常に速いため、制御が困難である。従って、ガラス管の貫通孔を所望の直径に正確に拡径することは非常に困難である。また、加熱条件等が微妙に変化した場合であってもガラス管の拡径度合いが大きく変化するため、所定の形状寸法の光ファイバ用毛細管を安定して製造することは困難である。
【0038】
それに対して、本発明に係る製造方法では、ガラス管の貫通孔の端部は、拡径部材の形状に沿った形状に変形するため、使用する拡径部材の形状を異ならせることにより、ガラス管の貫通孔の端部を所望の直径にまで正確に拡径することができる。また、所定の形状寸法の光ファイバ用毛細管を安定して製造することができる。
【0039】
本発明の製造方法において、拡径部材の材質は、ガラス管の加熱温度に対する耐熱性を有するものである限りにおいて、特に限定されない。拡径部材は、例えば、金属製、合金製、セラミック製、ガラス製、カーボン製であってもよい。なかでも、拡径部材は、加熱されたガラス管に対して融着しにくい材料により形成されていることが好ましく、拡径部材は、具体的には、実質的にカーボンからなることが好ましい。
【0040】
なお、「実質的にカーボンからなる」とは、主成分がカーボンであることを意味し、例えば、剛性などの特性を向上するために、カーボン以外の他の物質が添加されていてもよい。
【0041】
本発明において、拡径部材をガラス管に挿入する際のガラス管の温度は特に限定されないが、例えば、拡径部材の挿入は、ガラス管をガラス管の軟化温度以上、軟化温度よりも200℃高い温度以下の温度にまで加熱した状態で行うことが好ましい。拡径部材挿入時におけるガラス管のより好ましい温度は、ガラス管の軟化点よりも50℃高い温度以上、ガラス管の軟化点よりも100℃高い温度以下である。拡径部材挿入時におけるガラス管の温度が低すぎると、ガラス管の貫通孔が好適に拡径されず、ガラス管にクラックが生じたり、ガラス管が破損したりする場合がある。一方、拡径部材挿入時におけるガラス管の温度が高すぎると、ガラス管が自重により変形し、所望の形状の光ファイバ用毛細管が得られない場合がある。また、ガラス管と拡径部材とが融着しやすくなる傾向にある。
【0042】
本発明に係る製造方法により、光ファイバ用毛細管を製造する場合、少なくとも一方の端部における貫通孔の直径が、少なくとも一方の端部以外の部分における貫通孔の直径の2倍以上10倍以下となるように、ガラス管の貫通孔を拡径することが好ましい。ガラス管の貫通孔を大きく拡径しすぎると、ガラス管の少なくとも一方の端部における肉厚が薄くなりすぎ、強度及び剛性が低くなりすぎる場合があるからである。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、光ファイバの挿入が容易であり、かつ、破損しにくい光ファイバ用毛細管及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1の実施形態に係る光ファイバ用毛細管の一部分を表す略図的縦断面図である。
【図2】光ファイバ用毛細管の端部の一部分の略図的縦断面図である。
【図3】図1における線III−IIIにおける略図的断面図である。
【図4】図1における線IV−IVにおける略図的断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る光ファイバ用毛細管の使用態様を説明するための略図的縦断面図である。
【図6】光ファイバ用毛細管の製造装置の模式的構成図である。
【図7】ガラス管の貫通孔の端部を拡径する工程を説明するための略図的縦断面図である。
【図8】第1の変形例における光ファイバ用毛細管の略図的横断面図である。
【図9】第2の変形例における光ファイバ用毛細管の略図的横断面図である。
【図10】第2の実施形態に係る光ファイバ用毛細管の一部分を表す略図的縦断面図である。
【図11】第2の実施形態に係る光ファイバ用毛細管の製造に使用するガラス管の一部分を表す略図的縦断面図である。
【図12】ガラス管の複数の貫通孔の端部を一体化する工程を説明するための略図的模式図である。
【図13】ガラス管の複数の貫通孔の端部を一体化する工程を説明するための略図的模式図である。
【図14】実施例において作製した光ファイバ用毛細管の写真である。
【図15】特許文献1に記載されている光ファイバ用毛細管の断面図である。
【図16】特許文献2に記載の光ファイバ用毛細管の断面図である。
【図17】特許文献2に記載の光ファイバ用毛細管の製造方法を説明するための略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明を実施した好ましい形態について、図1に示す光ファイバ用毛細管を例に挙げて説明する。
【0046】
(第1の実施形態)
<光ファイバ用毛細管1の構造>
図1は、第1の実施形態に係る光ファイバ用毛細管の一部分を表す略図的縦断面図である。図2は、光ファイバ用毛細管の端部の一部分の略図的縦断面図である。図3は、光ファイバ用毛細管の中央部における略図的断面図である。図4は、光ファイバ用毛細管の端部における略図的断面図である。図5は、本実施形態の光ファイバ用毛細管の使用態様を説明するための略図的縦断面図である。
【0047】
図1に示すように、光ファイバ用毛細管1には、長さ方向に沿って一方端から他方端にわたって延びる貫通孔12が形成されている。図3及び図4に示すように、貫通孔12の横断面形状は、円形である。この光ファイバ用毛細管1は、例えば、図5に示すように、両端部から1または複数の光ファイバ19が挿入されて使用されるものである。本実施形態の光ファイバ用毛細管1は、例えば、光ファイバのコネクタ、光ファイバスプライス、光ファイバの固定具として使用される。
【0048】
図1及び図5に示すように、光ファイバ用毛細管1の中央部10では、長さ方向において、内径及び外径の両方が略一定である。一方、光ファイバ用毛細管1の少なくとも一方の端部11は、内径及び外径の両方が先端側に向かって大きくなるように、先端側に向かって先太り形状に形成されている。具体的には、本実施形態では、図5に示すように、光ファイバ用毛細管1の両方の端部11が、内径及び外径の両方が先端側に向かって大きくなるように、先端側に向かって先太り形状に形成されている。
【0049】
図1に示すように、本実施形態において、光ファイバ用毛細管1の拡径されている端部11の外径の最大(すなわち、端部11の先端における外径)L6は、光ファイバ用毛細管1の拡径されていない中央部10の外径L4の1.1倍以上2倍以下である。また、光ファイバ用毛細管1の中央部10の内径L7に対する端部11の内径の最大L8の比は、2〜10内にある。光ファイバ用毛細管1の拡径されている端部11の長さ方向寸法L5は、2〜5mm内にある。
【0050】
具体的には、本実施形態の光ファイバ用毛細管1の各寸法は以下の通りとなっている。
【0051】
中央部10の外径(L4):1.8mm(世界的な標準寸法)
中央部10の内径(L7):0.252mm
端部11の長さ方向寸法(L5):3mm
端部11における外径の最大(L6):2.5mm
端部11における内径の最大(L8):1.5mm
【0052】
本実施形態において、端部11では、光ファイバ用毛細管1の内径及び外径が、長さ方向外側に向かって一定の比率で増大している。すなわち、端部11の内壁14及び外壁13のそれぞれが、略円錐面状に形成されている。光ファイバ用毛細管1の縦断面において、端部11の内壁14と端部11の外壁13とは略平行である。このため、端部11は、長さ方向において、略一定の肉厚を有している。具体的には、端部11の中央側端における光ファイバ用毛細管1の肉厚L1と、端部11の先端側における光ファイバ用毛細管1の肉厚L2とは、略同一である。
【0053】
詳細には、本実施形態では、端部11の内壁14と光ファイバ用毛細管1の中心軸Cとのなす角度の方が、端部11の外壁13と中心軸Cとのなす角度よりも若干大きくなっている。このため、端部11においては、先端側に向かって肉厚が緩やかに漸減している。よって、端部11の先端側における光ファイバ用毛細管1の肉厚L2は、端部11の中央側端における光ファイバ用毛細管1の肉厚L1よりも若干小さい。具体的には、端部11の先端側における光ファイバ用毛細管1の肉厚L2は、端部11における平均肉厚未満、端部11における平均肉厚の0.8倍以上であり、端部11の中央側端における光ファイバ用毛細管1の肉厚L1は、端部11における平均肉厚より大きく、端部11における平均肉厚の1.2倍以下である。
【0054】
図1、図2及び図5に示すように、光ファイバ用毛細管1の端部11の先端部は、R面取り状に形成されている。すなわち、先端部の表面は、実質的に曲面により形成されている。
【0055】
本実施形態では、具体的には、縦断面において、光ファイバ用毛細管1の端部11の内壁14側角部11aと、光ファイバ用毛細管1の端部11の外壁13側角部11bとの両方が略円弧状に形成されている。光ファイバ用毛細管1の端部11の外壁13側角部11bの曲率は、光ファイバ用毛細管1の端部11の内壁14側角部11aの曲率よりも小さい。
【0056】
本実施形態の光ファイバ用毛細管1の材質は、特に限定されない。光ファイバ用毛細管1の材質は、光ファイバ用毛細管に要求される特性に応じて適宜選択することができる。光ファイバ用毛細管1は、例えば、樹脂、金属、セラミック、ガラスなどにより形成することができる。なかでも、光ファイバ用毛細管1に対して、高い剛性や、低い熱膨張率が求められるような場合には、光ファイバ用毛細管1は、ガラス製であることが好ましい。
【0057】
以上説明したように、本実施形態では、端部11の内径及び外径の両方が先端側に向かって大きくなるように、先太り形状に形成されている。このため、光ファイバ用毛細管1の長さ方向における中央部10の外径L4を標準寸法に適合するように細くしつつ、端部11の内径を大きくすることができる。すなわち、光ファイバ19(図5を参照)の挿入口の直径を大きくすることができる。このため、光ファイバ用毛細管1に光ファイバ19を容易に挿入することができる。
【0058】
また、端部11は、R面取り状に形成されている。このため、光ファイバ19の挿入時において光ファイバ19が光ファイバ用毛細管1の端面と接触した場合においても、光ファイバ19が損傷しにくい。また、本実施形態では、縦断面において、光ファイバ用毛細管1の端部11の内壁14側角部11aが略円弧状である。このため、光ファイバ19の挿入時において光ファイバ19が光ファイバ用毛細管1の端面と接触した場合においても、光ファイバ19がより損傷しにくい。よって、光ファイバ19を挿入する際に求められる、光ファイバ19と光ファイバ用毛細管1との相対的な位置決め精度が低い。従って、光ファイバ用毛細管1に光ファイバ19をより容易に挿入することができる。
【0059】
さらに、本実施形態では、端部11の内壁14は、略円錐面状である。このため、光ファイバ用毛細管1に光ファイバ19をさらに容易に挿入することができる。以下、その理由について詳細に説明する。
【0060】
例えば、図16に示すように、光ファイバ用毛細管110の端部110a、110bの内壁がドーム状である場合、光ファイバ用毛細管110の端部110a、110bのうち、先端側の部分の内壁の中心軸とのなす角度は小さくなるものの、光ファイバ用毛細管110の端部110a、110bのうち、中央側の部分の内壁の中心軸とのなす角度は大きくなる。このため、例えば光ファイバを光ファイバ用毛細管110に挿入する際に、光ファイバの位置が光ファイバ用毛細管110に対して相対的にずれ、光ファイバが光ファイバ用毛細管110の端部110a、110bのうち、中央側の部分の内壁に接触した場合、光ファイバに大きな応力が加わることとなる。また、光ファイバが内壁に対して滑りにくくなる。従って、光ファイバが破損しやすい。
【0061】
それに対して、本実施形態では、上述のように、端部11の内壁14が略円錐面状である。このため、端部11のいずれの部分においても、内壁14と中心軸Cとのなす角度が小さくなる。よって、例えば光ファイバ19を光ファイバ用毛細管1に挿入する際に、光ファイバ19の位置が光ファイバ用毛細管1に対して相対的にずれ、光ファイバ19が光ファイバ用毛細管1の端部11の内壁14に接触した場合においても、光ファイバ19の大きな応力が加わりにくい。また、光ファイバ19と内壁14との接触角が小さくなるため、光ファイバ19が内壁14に対して滑りやすい。従って、光ファイバ19の光ファイバ用毛細管1への挿入がより容易になると共に、光ファイバ19の光ファイバ用毛細管1への挿入時における光ファイバ19の破損をより効果的に抑制できる。
【0062】
また、本実施形態では、端部11がR面取り状に形成されているため、図5に示すように、光ファイバ19の挿入後においても、光ファイバ19と光ファイバ用毛細管1の端面とが接触することによる光ファイバ19の損傷を効果的に抑制することができる。特に、本実施形態では、縦断面において、光ファイバ用毛細管1の端部11の内壁14側角部11aが略円弧状に形成されている。このため、光ファイバ19と光ファイバ用毛細管1の端面とが接触することによる光ファイバ19の損傷をより効果的に抑制することができる。
【0063】
また、端部11がR面取り状に形成されている本実施形態においては、光ファイバ用毛細管の端面が平坦な切断面である場合と比較して、端部11の強度及び剛性が高い。従って、光ファイバ用毛細管1は、他の部材との接触等により破損しにくい。さらに、本実施形態では、縦断面において、光ファイバ用毛細管1の端部11の外壁13側角部11bが略円弧状に形成されており、光ファイバ用毛細管1の端部11の外壁13側角部11bの曲率は、光ファイバ用毛細管1の端部11の内壁14側角部11aの曲率よりも小さくされている。換言すれば、光ファイバ用毛細管1の端部11の外壁13側角部11bの曲率半径が、光ファイバ用毛細管1の端部11の内壁14側角部11aの曲率半径よりも大きくされている。このため、他の部材との接触等による光ファイバ用毛細管1の破損がより効果的に抑制されている。
【0064】
また、本実施形態では、端部11の肉厚は、長さ方向において略一定であり、端部11の先端側の肉厚が比較的厚い。従って、光ファイバ用毛細管1が他の部材と接触することなどにより破損することがさらに効果的に抑制されている。
【0065】
ところで、図5に示すように、光ファイバ19は、通常、光ファイバ19保護用の樹脂カバー17により覆われている。このため、例えば、本実施形態の光ファイバ用毛細管1のように、一方の端部から複数本の光ファイバが挿入される場合は、光ファイバ用毛細管の端部付近で光ファイバが屈曲することとなる。
【0066】
例えば、図15に示すように、光ファイバ用毛細管100の両側のそれぞれから複数の光ファイバ102を挿入した場合、上述の通り、光ファイバ用毛細管100では、フレア部101aの直径を十分に大きくできないため、光ファイバ102の屈曲部の曲率が大きくなりやすい。光ファイバ102の屈曲部の曲率が大きくなると、光ファイバ102における光の伝搬損失が大きくなる傾向にある。
【0067】
それに対して、本実施形態の光ファイバ用毛細管1では、端部11の内径を十分大きくできる。このため、光ファイバ用毛細管1の両側のそれぞれから複数本の光ファイバ19を挿入した場合であっても、光ファイバ19の屈曲部の曲率がそれほど大きくならない。従って、光ファイバ用毛細管1を用いることにより、光ファイバ19における光の伝搬損失の増大を抑制することができる。
【0068】
<光ファイバ用毛細管1の製造装置及び製造方法>
図6は、光ファイバ用毛細管の製造装置の模式的構成図である。図7は、ガラス管の貫通孔の端部を拡径する工程を説明するための略図的縦断面図である。
【0069】
次に、光ファイバ用毛細管1の製造装置及び製造方法の一例について、図6及び図7を参照しながら詳細に説明する。
【0070】
まず、図6を参照しながら光ファイバ用毛細管1の製造装置20の構成について説明する。図6に示すように、製造装置20は、支持・回転機構21を備えている。支持・回転機構21は、ガラス管24を支持する機能と、支持したガラス管24を回転させる機能とを備えている。
【0071】
また、製造装置20は、支持・回転機構21により支持されたガラス管24の端部を加熱するための加熱機構22を備えている。加熱機構22は、ガラス管24を加熱できるものであれば特に限定されない。加熱機構22は、例えば、ガスバーナー、通電することにより発熱する電熱体、レーザー光をガラス管24に照射することによりガラス管24を加熱するレーザー加熱機構などにより構成することができる。
【0072】
さらに、製造装置20は、拡径機構23を備えている。拡径機構23は、ガラス管24の貫通孔を拡径させるための機構である。拡径機構23は、拡径部材23aを備えている。拡径部材23aは、後述するように、加熱されたガラス管24の貫通孔に挿入され、貫通孔を押し広げるためのものである。拡径部材23aは、先細り形状を有している。具体的には、本実施形態では、拡径部材23aは、円錐状に形成されている。
【0073】
拡径部材23aの材質は、ガラス管24の加熱温度に対する耐熱性を有するものである限りにおいて、特に限定されない。拡径部材23aは、例えば、金属製、合金製、セラミック製、ガラス製、カーボン製であってもよい。なかでも、拡径部材23aは、加熱されたガラス管24に対して融着しにくい材料により形成されていることが好ましく、拡径部材23aは、具体的には、実質的にカーボンからなることが好ましい。
【0074】
拡径部材23aは、拡径機構本体23bに取り付けられている。拡径機構本体23bは、拡径部材23aを回転させる機能及び拡径部材23aを変位させる機能を有する。具体的には、拡径機構本体23bは、拡径部材23aの中心軸と、ガラス管24の中心軸とが一致する位置に、拡径部材23aを移動させた後に、拡径部材23aを回転させながらガラス管24に対して進退させる機能を有している。
【0075】
次に、製造装置20を用いて光ファイバ用毛細管1を製造する方法について、図6及び図7を参照しながら説明する。
【0076】
まず、図6に示すように、光ファイバ用毛細管1の母材となる、長さ方向において直径が略一定の貫通孔が形成されているガラス管24を支持・回転機構21に固定する。
【0077】
次に、支持・回転機構21によりガラス管24を、ガラス管24の中心軸を中心として回転させながら、加熱機構22によりガラス管24の端部を加熱する。
【0078】
次に、図7に示すように、拡径機構本体23bにより、ガラス管24の中心軸と、拡径部材23aの中心軸とが一致するように拡径部材23aを移動させた後に、拡径部材23aを回転させながらガラス管24の端部内に挿入する。ガラス管24に拡径部材23aを挿入した状態を、例えば1分程度の所定の期間にわたって保持し、その後、拡径部材23aをガラス管24から抜く。なお、ガラス管24への拡径部材23aの挿入前に、拡径部材23aを予め加熱しておくことが好ましい。そうすることにより、ガラス管24と、ガラス管24に挿入される拡径部材23aとの間の温度差を小さくできる。従って、ガラス管24の端部を拡径しやすくなると共に、ガラス管24の損傷を抑制することができる。
【0079】
次に、ガラス管24の拡径された端部とは反対側の端部も、同様の要領で拡径する。
【0080】
その後、ガラス管24を室温付近にまで徐冷する。徐冷後、ガラス管24を洗浄し、ガラス管24に付着しているカーボン粉等を取り除くことにより、図1に示す光ファイバ用毛細管1を完成させることができる。
【0081】
本実施形態の製造方法によれば、ガラス管から光ファイバ用毛細管1を製造する際に、切断や研磨などの煩雑な工程を必ずしも必要とせず、光ファイバ用毛細管1を容易に製造することができる。
【0082】
例えば、上記の特許文献2に記載の光ファイバ用毛細管の製造方法では、ガラス管がふくらみ始めた後は、ガラス管のふくらむ速度が非常に速いため、制御が困難である。従って、ガラス管の貫通孔を所望の直径に正確に拡径することは非常に困難である。また、加熱条件等が微妙に変化した場合であってもガラス管の拡径度合いが大きく変化するため、光ファイバ用毛細管を安定して製造することは困難である。
【0083】
それに対して、本実施形態の製造方法では、ガラス管24の貫通孔の端部は、拡径部材23aの形状に沿った形状に変形する。このため、使用する拡径部材23aの形状を異ならせることにより、ガラス管24の貫通孔の端部を所望の直径にまで正確に拡径することができる。また、光ファイバ用毛細管1を安定して製造することができる。
【0084】
なお、本実施形態の製造方法において、拡径部材23aをガラス管24に挿入する際のガラス管24の温度は特に限定されないが、例えば、拡径部材23aの挿入は、ガラス管24をガラス管24の軟化温度以上、ガラス管24の軟化温度よりも200℃高い温度以下の温度にまで加熱した状態で行うことが好ましい。拡径部材23aの挿入時におけるガラス管24のより好ましい温度は、ガラス管24の軟化点よりも50℃高い温度以上、ガラス管24の軟化点よりも100℃高い温度以下である。拡径部材23aの挿入時におけるガラス管24の温度が低すぎると、ガラス管24の貫通孔が好適に拡径されず、ガラス管24にクラックが生じたり、ガラス管24が破損したりする場合がある。一方、拡径部材23aの挿入時におけるガラス管24の温度が高すぎると、ガラス管24が自重により変形し、所望の形状の光ファイバ用毛細管1が得られない場合がある。また、ガラス管24と拡径部材23aとが融着しやすくなる傾向にある。
【0085】
また、本実施形態の製造方法により、光ファイバ用毛細管1を製造する場合、端部11における貫通孔12の直径が、中央部10における貫通孔12の直径の2倍以上10倍以下となるように、ガラス管24の貫通孔を拡径することが好ましい。ガラス管24の貫通孔を大きく拡径しすぎると、ガラス管24の端部における肉厚が薄くなりすぎ、強度及び剛性が低くなりすぎる場合があるからである。
【0086】
以下、上記第1の実施形態の変形例及び本発明を実施した好ましい形態の他の例について説明する。なお、以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0087】
(第1及び第2の変形例)
図8は、第1の変形例における光ファイバ用毛細管の略図的横断面図である。図9は、第2の変形例における光ファイバ用毛細管の略図的横断面図である。
【0088】
上記第1の実施形態では、貫通孔12の横断面形状が円形である場合について説明した。但し、本発明はこの構成に限定されない。貫通孔12は、例えば、図8に示すように、四辺形であってもよいし、図9に示すように、長円であってもよい。また、貫通孔12は、楕円形であってもよいし、多角形であってもよい。なお、「四辺形」には、少なくとも、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形が含まれるものとする。
【0089】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態に係る光ファイバ用毛細管の一部分を表す略図的縦断面図である。
【0090】
上記第1の実施形態では、貫通孔12がひとつのみ形成されている例について説明した。しかしながら、本発明は、この構成に限定されない。例えば、図10に示すように、光ファイバ用毛細管には、複数の貫通孔12が形成されており、それら複数の貫通孔12が光ファイバ用毛細管の端部11において合流し、ひとつの開口部を形成していてもよい。すなわち、光ファイバ用毛細管には、端部11以外の部分において、貫通孔を複数の貫通孔12に区画する区画壁15が設けられていてもよい。
【0091】
次に、本実施形態の光ファイバ用毛細管の製造方法について、図11〜図13を参照しながら説明する。
【0092】
まず、図11に示すように、複数の貫通孔31,32が形成されたガラス管30を用意する。次に、図12に示すように、ガラス管30の端部の外壁を覆うようにコーティング層36を設けた状態で、ガラス管30を溶解させる溶解液33が満たされた容器34にガラス管30の端部を浸漬する。これにより、図13に示すように、貫通孔31と貫通孔32との間の部分が溶解し、ガラス管30の端部において、貫通孔31と貫通孔32とが一体となる。
【0093】
その後、上記第1の実施形態で説明した要領と同様の要領で、ガラス管30の端部を拡径させることにより、図10に示す本実施形態の光ファイバ用毛細管を製造することができる。
【0094】
なお、コーティング層36は、溶解液33により溶解しないものであれば特に限定されない。また、溶解液33も、ガラス管30を溶解できるものであれば特に限定されない。溶解液33の具体例としては、例えば、フッ化水素水溶液(フッ酸)が挙げられる。溶解液33としてフッ酸を用いる場合には、コーティング層36は、例えば、エポキシ樹脂膜により構成することができる。
【0095】
(実施例)
上記第1の実施形態に記載の光ファイバ用毛細管1を以下の要領で作製した。具体的には、まず、外径1.8mm、内径0.252mmのガラス管(軟化温度:750℃)を用意した。用意したガラス管の両端面は、切断面であった。そのガラス管の両端部を図6に示す製造装置20を用いて拡径した。なお、加熱機構22としてはガスバーナーを用いた。拡径部材23aは、高さ5mm、底面における直径2mmの円錐状のカーボン部材を用いた。作製した光ファイバ用毛細管の写真を図14に示す。
【0096】
図14に示すように、ガラス管を加熱した状態で拡径部材23aを挿入して、ガラス管の貫通孔を拡径させることにより、端部において内径及び外径の両方が先端側に向かって大きくなっており、かつ端部の先端部の縦断面形状が略半球である光ファイバ用毛細管を製造できることが分かった。
【符号の説明】
【0097】
1…光ファイバ用毛細管
10…光ファイバ用毛細管の中央部
11…光ファイバ用毛細管の端部
11a…光ファイバ用毛細管の端部の内壁側角部
11b…光ファイバ用毛細管の端部の外壁側角部
12…貫通孔
13…外壁
14…内壁
15…区画壁
17…樹脂カバー
19…光ファイバ
20…製造装置
21…支持・回転機構
22…加熱機構
23…拡径機構
23a…拡径部材
23b…拡径機構本体
24…ガラス管
30…ガラス管
31,32…貫通孔
33…溶解液
34…容器
36…コーティング層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバが挿入される貫通孔を有する光ファイバ用毛細管であって、
少なくとも一方の端部は、内径及び外径の両方が先端側に向かって大きくなるように、先太り形状に形成されており、
かつ、前記少なくとも一方の端部の先端部は、R面取り状に形成されている光ファイバ用毛細管。
【請求項2】
縦断面において、前記少なくとも一方の端部の内壁側角部の表面が略円弧状である請求項1に記載の光ファイバ用毛細管。
【請求項3】
縦断面において、前記少なくとも一方の端部の外壁側角部の表面が略円弧状であり、前記少なくとも一方の端部の外壁側角部の曲率は、前記少なくとも一方の端部の内壁側角部の曲率よりも小さい請求項2に記載の光ファイバ用毛細管。
【請求項4】
前記少なくとも一方の端部の内壁は、略円錐面状である請求項1〜3のいずれか一項に記載の光ファイバ用毛細管。
【請求項5】
前記少なくとも一方の端部は、長さ方向において、略一定の肉厚を有している請求項1〜4のいずれか一項に記載の光ファイバ用毛細管。
【請求項6】
前記少なくとも一方の端部以外の部分において、前記貫通孔を複数の貫通孔に区画する区画壁を備える請求項1〜5のいずれか一項に記載の光ファイバ用毛細管。
【請求項7】
前記少なくとも一方の端部における前記貫通孔の直径は、前記少なくとも一方の端部以外の部分における前記貫通孔の直径の2倍以上10倍以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載の光ファイバ用毛細管。
【請求項8】
ガラス製である請求項1〜7のいずれか一項に記載の光ファイバ用毛細管。
【請求項9】
前記少なくとも一方の端部は、加熱された状態で、略円錐状の拡径部材を貫通孔内に挿入することにより形成されてなる請求項1〜8のいずれか一項に記載の光ファイバ用毛細管。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の光ファイバ用毛細管の製造方法であって、
貫通孔が形成されたガラス管の少なくとも一方の端部を加熱すると共に、前記ガラス管の少なくとも一方の端部に略円錐状の拡径部材を挿入することにより前記ガラス管の貫通孔を拡径し、前記光ファイバ用毛細管を得る光ファイバ用毛細管の製造方法。
【請求項11】
前記拡径部材は、実質的にカーボンからなる請求項10に記載の光ファイバ用毛細管の製造方法。
【請求項12】
前記拡径部材の挿入は、前記ガラス管を前記ガラス管の軟化温度以上、軟化温度よりも200℃高い温度以下の温度にまで加熱した状態で行う請求項10または11に記載の光ファイバ用毛細管の製造方法。
【請求項1】
光ファイバが挿入される貫通孔を有する光ファイバ用毛細管であって、
少なくとも一方の端部は、内径及び外径の両方が先端側に向かって大きくなるように、先太り形状に形成されており、
かつ、前記少なくとも一方の端部の先端部は、R面取り状に形成されている光ファイバ用毛細管。
【請求項2】
縦断面において、前記少なくとも一方の端部の内壁側角部の表面が略円弧状である請求項1に記載の光ファイバ用毛細管。
【請求項3】
縦断面において、前記少なくとも一方の端部の外壁側角部の表面が略円弧状であり、前記少なくとも一方の端部の外壁側角部の曲率は、前記少なくとも一方の端部の内壁側角部の曲率よりも小さい請求項2に記載の光ファイバ用毛細管。
【請求項4】
前記少なくとも一方の端部の内壁は、略円錐面状である請求項1〜3のいずれか一項に記載の光ファイバ用毛細管。
【請求項5】
前記少なくとも一方の端部は、長さ方向において、略一定の肉厚を有している請求項1〜4のいずれか一項に記載の光ファイバ用毛細管。
【請求項6】
前記少なくとも一方の端部以外の部分において、前記貫通孔を複数の貫通孔に区画する区画壁を備える請求項1〜5のいずれか一項に記載の光ファイバ用毛細管。
【請求項7】
前記少なくとも一方の端部における前記貫通孔の直径は、前記少なくとも一方の端部以外の部分における前記貫通孔の直径の2倍以上10倍以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載の光ファイバ用毛細管。
【請求項8】
ガラス製である請求項1〜7のいずれか一項に記載の光ファイバ用毛細管。
【請求項9】
前記少なくとも一方の端部は、加熱された状態で、略円錐状の拡径部材を貫通孔内に挿入することにより形成されてなる請求項1〜8のいずれか一項に記載の光ファイバ用毛細管。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の光ファイバ用毛細管の製造方法であって、
貫通孔が形成されたガラス管の少なくとも一方の端部を加熱すると共に、前記ガラス管の少なくとも一方の端部に略円錐状の拡径部材を挿入することにより前記ガラス管の貫通孔を拡径し、前記光ファイバ用毛細管を得る光ファイバ用毛細管の製造方法。
【請求項11】
前記拡径部材は、実質的にカーボンからなる請求項10に記載の光ファイバ用毛細管の製造方法。
【請求項12】
前記拡径部材の挿入は、前記ガラス管を前記ガラス管の軟化温度以上、軟化温度よりも200℃高い温度以下の温度にまで加熱した状態で行う請求項10または11に記載の光ファイバ用毛細管の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図14】
【公開番号】特開2011−48213(P2011−48213A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197614(P2009−197614)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]