説明

光ファイバ素線テープ心線の製造方法及び光ファイバ素線テープ心線の製造装置

【課題】容易に単心分離を行う光ファイバ素線テープ心線を得る。
【解決手段】一列に密接させて配列するように複数の光ファイバ素線3を集線する集線装置13と、互いに隣り合う光ファイバ素線3の少なくとも一方の配列平面側に隣り合う光ファイバ素線3同士を連結する硬化型接着樹脂5を塗布する接着樹脂塗布装置17と、硬化型接着樹脂5を硬化する樹脂硬化用照射装置27と、硬化型接着樹脂5の接着幅及び接着厚さを測定する接着樹脂外形測定装置29と、硬化型接着樹脂5の接着幅及び接着厚さに基づき、硬化型接着樹脂5が光ファイバ素線3の長さ方向に垂直な面において隣り合う光ファイバ素線同士を接着するテ−プ化樹脂と、さらに隣の光ファイバ素線を接着させるテ−プ化樹脂が接着せず、かつ、隣り合う2つの光ファイバ素線3の外周に接する接線より外側に飛び出る突出高さを有すべく制御する制御装置25とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ファイバ素線テープ心線の製造方法及びその装置に関し、特に隣り合う光ファイバ素線同士を一体的に接着する硬化型接着樹脂と光ファイバ素線を容易に分離できる光ファイバ素線テープ心線の製造方法及び光ファイバ素線テープ心線の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバ素線テープ心線は、単心の光ファイバ素線の全周にUV樹脂を塗布して複数本を並列にして形成されている。このように形成された光ファイバ素線テープ心線を単心分離するには、単心の光ファイバ素線の全周に付着したUV樹脂を除去する必要がある。しかし、UV樹脂を除去する際に、光ファイバ素線に捻り、曲げ、側圧等の過剰な力が加えられることになり、光ファイバ素線を劣化させてしまったり、分離作業自体に時間がかかってしまうという問題点があった。
【0003】
この問題を解決する光ファイバ素線テープ心線101としては、図7(A)に示されているように、光ファイバ素線103同士を連結しているテープ化材105を薄くしたものが製作されている。この光ファイバ素線テープ心線101は、図7(B)や図7(C)に示されているように、薄いテープ化材105を図示しない工具で容易に剥ぎ取ることにより単心分離を容易に行うことができる。
【0004】
また、図8を参照するに、他の光ファイバ素線テープ心線107としては、隣り合う光ファイバ素線103同士を連結用の樹脂で間欠的に連結することで、連結部109と分離部111を有する間欠固定テープ心線が製作されている。この光ファイバ素線テープ心線107は、光ファイバ素線103同士の間に切れ込み(分離部111)が入っているので、その切れ込みを利用して、分離工具113を分離部111に差し込んでからスライドさせることで、分離部111を広げて単心分離を容易に行うことができる。
【0005】
また、特許文献1では、ディスペンサー形態の方法を用いることにより、光ファイバ素線の全周にUV樹脂を塗布することなくテープ化し、薄型で単心分離が容易な光ファイバ素線テープ心線の製造方法が記載されている。すなわち、複数の光ファイバ素線を走行させながら密接させて一列に配列した前記複数の光ファイバ素線の少なくとも一方の配列平面側に、先端が細い円筒状のノズルよりエネルギー線硬化型樹脂を吐出して塗布し、この後、前記エネルギー線硬化型樹脂を硬化して前記複数の光ファイバ素線を接着一体化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−241041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の光ファイバ素線テープ心線において、例えばテープ化材105を薄くした光ファイバ素線テープ心線101は、テープ化材105を剥ぎ取る際に次の問題点があった。すなわち、(1)テープ化材105を剥ぎ取るまでの単心分離の作業時間がかかる。(2)テープ化材105を剥ぎ取るために、可とう性繊維やヤスリなどの複雑な工具が必要となる。(3)単心分離時に光ファイバ素線103に曲げ等の力が加わりやすいために、分割時のロス変動が大きい。
【0008】
また、間欠固定テープ心線107は、予め入っている切れ込み(分離部111)が配線作業中に引っかかって断線等の不具合を起こす可能性があるという問題点があった。したがって、取り扱いに注意が必要であり、配線作業の効率低下の要因となっていた。
【0009】
また、特許文献1においては、単心に分割可能なテープ心線を作製するために、光ファイバ素線間にUV硬化樹脂を塗布して光ファイバ素線同士を連結させる方法であるが、UV硬化樹脂は液体であるために、塗布後しばらくすると、光ファイバ素線上に広がるので、UV硬化樹脂と光ファイバ素線との接着面積が広い状態になる。換言すれば、光ファイバ素線とUV硬化樹脂の接触角が一定の値になるまでUV硬化樹脂が広がることになる。
【0010】
樹脂塗布直後、すぐに硬化させるとテープ化材と光ファイバ素線の接着面積が小さいテープ心線ができるため、テープ心線としての強度が不足し、取り扱いが難しくなる。一方、接着面積が広がった状態でUV硬化樹脂を硬化させると、テープ化材と光ファイバ素線の接着面積が広くなり、光ファイバ素線間を接着させるための樹脂同士が接触してしまい分割性の悪いテープ心線が作製されることになる。しかし、吐出後のUV硬化樹脂の断面形状を目的の形状にすることができないという問題点があった。
【0011】
この発明は、光ファイバ素線間を接着させるための樹脂同士を接触させないようにすることにより、時間がかからず、容易に単心分離を行うことができる構造を有する光ファイバ素線テープ心線の製造方法及び光ファイバ素線テープ心線の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、この発明の光ファイバ素線テープ心線の製造方法は、少なくとも一方の配列平面側一列に2本以上の光ファイバ素線をテ−プ化材となる硬化型接着樹脂でテ−プ状に一体化した長尺の光ファイバ素線テープ心線の製造方法であって、硬化型接着樹脂は、隣り合う光ファイバ素線同士を接着するテ−プ化樹脂と、さらに隣の光ファイバ素線を接着させるテ−プ化樹脂が接着せず、かつ隣り合う2つの光ファイバ素線の外周に接する接線より外側に飛び出る突出高さを有する状態となった時に、樹脂硬化用照射線を照射して硬化せしめることを特徴とするものである。
【0013】
また、この発明の光ファイバ素線テープ心線の製造方法は、光ファイバ素線テープ心線の製造方法において、硬化型接着樹脂は、光ファイバ素線の長さ方向に連続に形成することが好ましい。
【0014】
この発明の光ファイバ素線テープ心線の製造装置は、複数の光ファイバ素線を走行させながら密接させて一列に配列し、テープ化材となる硬化型接着樹脂を塗布してテープ状に一体化する長尺の光ファイバ素線テープ心線の製造装置であって、 複数の光ファイバ素線を集線する集線装置と、この集線装置に集線された互いに隣り合う光ファイバ素線の少なくとも一方の配列平面側に隣り合う光ファイバ素線同士を連結する硬化型接着樹脂を滴下する吐出ノズルを有する接着樹脂塗布装置と、滴下された硬化型接着樹脂を硬化する樹脂硬化用照射装置と、この樹脂硬化用照射装置で硬化された硬化型接着樹脂の接着幅及び接着厚さを測定する接着樹脂外形測定装置と、この接着樹脂外形測定装置で測定された硬化型接着樹脂の接着幅及び接着厚さに基づいて、硬化型接着樹脂が、隣り合う光ファイバ素線同士を接着するテ−プ化樹脂と、さらに隣の光ファイバ素線を接着させるテ−プ化樹脂が接着せず、かつ、隣り合う2つの光ファイバ素線の外周に接する接線より外側に飛び出る突出高さを有すべく制御する制御装置と、を備えていることを特徴とするものである。
【0015】
この発明の光ファイバ素線テープ心線の製造装置は、光ファイバ素線テープ心線の製造装置において、樹脂硬化用照射装置は、光ファイバ素線の走行方向に対して同方向に移動可能に設けられ、制御装置は、接着樹脂外形測定装置で測定された硬化型接着樹脂の接着幅及び接着厚さに基づいて、硬化型接着樹脂を適正に硬化せしめる位置へ樹脂硬化用照射装置を移動せしめる指令を与える指令部を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明の光ファイバ素線テープ心線の製造方法によれば、硬化型接着樹脂を光ファイバ素線の間に塗布(滴下)した後に、前記硬化型接着樹脂が隣り合う光ファイバ素線同士を接着するテ−プ化樹脂と、さらに隣の光ファイバ素線を接着させるテ−プ化樹脂が接着せず、かつ、隣り合う2つの光ファイバ素線の外周に接する接線より外側に飛び出る突出高さを有する状態となったときに、樹脂硬化用照射線を照射し、前記硬化型接着樹脂の表面を硬化させることで、光ファイバ素線とテープ化材となる硬化型接着樹脂の接着面積及び形状を任意に調節することができる。したがって、製造される光ファイバ素線テープ心線は、光ファイバ素線が変形することなく硬化型接着樹脂から光ファイバ素線を時間がかからず容易に分離することができる。しかも、光ファイバ素線とテープ化材の接着面積が適切であるので、光ファイバ素線に過剰な力が加わることなく分割することができるので、分割ロスが低く、分割作業にかかる時間が短いものとなる。
【0017】
また、この発明の光ファイバ素線テープ心線の製造装置によれば、光ファイバ素線の間に塗布、硬化した硬化型接着樹脂の接着幅及び接着厚さが、接着樹脂外形測定装置により測定され、この測定データに基づいて隣り合う光ファイバ素線同士を接着するテ−プ化樹脂と、さらに隣の光ファイバ素線を接着させるテ−プ化樹脂が接着せず、かつ、隣り合う2つの光ファイバ素線の外周に接する接線より外側に飛び出る突出高さを有する状態となったときに、樹脂硬化用照射線を照射し、前記硬化型接着樹脂の表面を硬化させることができる。したがって、製造される光ファイバ素線テープ心線は、光ファイバ素線が変形することなく硬化型接着樹脂から光ファイバ素線を時間がかからず容易に分離することができる。しかも、光ファイバ素線とテープ化材の接着面積が適切であるので、光ファイバ素線に過剰な力が加わることなく分割することができるので、分割ロスが低く、分割作業にかかる時間が短いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態の光ファイバ素線テープ心線の製造装置の概略的な説明図である。
【図2】制御装置の構成ブロック図である。
【図3】図1に示した装置で得られる光ファイバ素線テープ心線の一例の断面図である。
【図4】UV硬化樹脂の広がり状態を示す断面図である。
【図5】他の例の光ファイバ素線テープ心線の一例の断面図である。
【図6】この発明の他の実施の形態の8心テープ心線の斜視図である。
【図7】(A)は従来の4心テープ心線の断面図で、(B)、(C)は(A)の光ファイバ素線を分離する状態を示す断面図である。
【図8】従来の間欠固定テープ心線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1を参照するに、この実施の形態に係る光ファイバ素線テープ心線の製造装置1は、光ファイバ素線3の例えば4本を走行させながら密接させて一列に配列(並列)し、テープ化材となる硬化型接着樹脂としての例えばUV硬化樹脂5を塗布してテープ状に一体化して光ファイバ素線テープ心線7(以下、単に「テープ心線」という)を製造する装置である。
【0021】
なお、この実施の形態では、テープ心線7は例えば直径が250μmの光ファイバ素線3の4本を並列して一体化される構成である。
【0022】
より詳しくは、光ファイバ素線テープ心線の製造装置1は、例えば4本の光ファイバ素線送出ボビン9から送出された例えば4本の光ファイバ素線3を走行させながら集線ガイドローラ11にて徐々に接近させた後に、複数の光ファイバ素線3を密接して一列に配列するように集線する集線装置13が備えられている。この集線装置13は、4本の光ファイバ素線3をガイドする図示しない複数のガイド溝を備えた平板状の集線ガイド15で構成されている。しかし、集線ガイド15に限らず、複数のガイド溝を備えた集線ガイドローラであっても良い。
【0023】
また、上記の集線装置13の上方には、集線ガイド15に集線された互いに隣り合う光ファイバ素線3同士を連結するための硬化型接着樹脂としての例えばUV硬化樹脂5を塗布する接着樹脂塗布装置17が備えられている。この接着樹脂塗布装置17は、互いに隣り合う光ファイバ素線3同士の間にUV硬化樹脂5を滴下して塗布するための吐出ノズル19を有している。図1では2本の光ファイバ素線3の間の上方に位置して1つの吐出ノズル19が配置されている。また、前記吐出ノズル19はUV硬化樹脂5の吐出を制御する樹脂供給制御装置21に樹脂供給管23を介して連通されている。さらに、前記樹脂供給制御装置21は、製造装置1全体を制御する制御装置25に接続されている。
【0024】
なお、他の実施の形態として、4本の光ファイバ素線3が並列する4心テープ心線7の場合は、隣り合う光ファイバ素線3の間の上方に位置して3つの吐出ノズル19が例えば図1は、製造ラインの構成を側面からみた構成を示しており、ラインは4本の光ファイバ3を並列にした状態で左から右に進んでいる。吐出ノズル19は、並列した光ファイバ3に合わせて一列に配列されている。さらに、8心テープ心線の場合は、7つの吐出ノズル19が例えば図1は、製造ラインの構成を側面からみた構成を示しており、ラインは8本の光ファイバ3を並列にした状態で左から右に進んでいる。吐出ノズル19は、並列した光ファイバ3に合わせて一列に配列されている。
【0025】
また、樹脂塗布する複数本のファイバ3が地面に対して垂直に進んでいる状態であれば,樹脂塗布をテープ心線7の表面と裏面に行うことが容易で、図3に示されているような光ファイバ素線テープ心線7となる。しかし、4本の光ファイバ3が地面に対して平行に進んでいる状態では、テープ心線7の下面から樹脂を塗布する必要があるが、樹脂塗布は可能である。したがって、例えば4心テープ心線7の場合、3つの吐出ノズル19が隣り合う光ファイバ素線3の間に上方と下方に交互に配置することもできる。なお、光ファイバ素線3に対して下方の吐出ノズル19は、集線装置13から外れた位置、つまり光ファイバ素線3の走行方向前方側に配置される。
【0026】
また、上記の樹脂供給制御装置21は、各吐出ノズル19から吐出されるUV硬化樹脂5の吐出量、吐出速度、吐出位置、吐出の開始と停止及びその時間などの種々の条件を制御するものである。
【0027】
また、上記の集線装置13に対して光ファイバ素線3の走行方向前方側には、上記の接着樹脂塗布装置17により互いに隣り合う光ファイバ素線3同士の間に塗布された硬化型接着樹脂であるUV硬化樹脂5を硬化するための樹脂硬化用照射装置としての例えばUVランプ27が設けられている。このUVランプ27は、光ファイバ素線3の走行方向に沿って移動調整可能に構成されており、制御装置25に接続され、UV照射量、UV照射開始及び停止、UV照射時間などの種々の条件が制御される構成である。
【0028】
なお、硬化型接着樹脂としては、樹脂硬化用照射線としての例えば紫外線のUV照射で硬化するUV硬化樹脂5に限定されず、例えば放射線、電子線等の樹脂硬化用照射線を照射することにより硬化する樹脂や、UV硬化樹脂5以外の熱硬化型接着樹脂を用いることができる。
【0029】
また、上記のUVランプ27に対して光ファイバ素線3の走行方向前方側には、UVランプ27によるUV照射により硬化されたUV硬化樹脂5の接着幅及び接着厚さを測定する接着樹脂外形測定装置29が設けられている。この実施の形態では、上記の接着樹脂外形測定装置29としては、光ファイバ素線3の上方から平面的に接着幅を測定する第1CCDカメラ31と、光ファイバ素線3の側方から側面的に接着厚さを測定する第2CCDカメラ33とで構成されている。なお、上記の第1、第2CCDカメラ31,33には、それぞれの第1、第2CCDカメラ31,33で撮像した画像を寸法測定可能に処理するための画像処理装置35が接続されており、この画像処理装置35は制御装置25に接続されている。なお、第2CCDカメラ33の代わりにテープ心線厚さを測定する厚さ測定計であっても構わない。
【0030】
また、上記の接着樹脂外形測定装置29に対して光ファイバ素線3の走行方向前方側には、光ファイバ素線3をガイドローラ37を経て引き取るキャプスタンローラ39が設けられており、図示しないダンサローラで張力調整されてから巻取ドラム41に巻き取られる構成である。なお、キャプスタンローラ39は制御装置25に接続されており、制御装置25によって回転速度が制御されることで、上述した光ファイバ素線3の走行速度が調整される構成である。
【0031】
図2を参照するに、制御装置25は、中央処理装置としてのCPU43が備えられており、このCPU43には、種々のデータやプログラム等を入力するキーボードやタッチパネルなどの入力装置45と、CRTや液晶などの表示装置47と、入力装置45から入力されたプログラムや種々の検出データなどを記憶するメモリ49が備えられている。
【0032】
さらに、前記CPU43には、上記の接着樹脂外形測定装置29である第1、第2CCDカメラ31,33で測定されたUV硬化樹脂5の接着幅及び接着厚さの測定データに基づいて、隣り合う光ファイバ素線3同士を接着したUV硬化樹脂5が、前記光ファイバ素線3の長さ方向に垂直な面において光ファイバ素線3の円周長の何%の長さで接着しているかを計算する第1演算装置51と、前記UV硬化樹脂5の頂点が隣り合う2つの光ファイバ素線3の外周に接する接線TL(図3参照)に対してどの位置にあるかを計算する第2演算装置53が備えられている。
【0033】
さらに、前記CPU43には、前記UV硬化樹脂5が、接着長さBLで接着し、かつ、隣り合う2つの光ファイバ素線3の外周に接する接線TLより外側に飛び出る突出高さH(図3参照)を有する適正状態にあるか否かを判断する比較判断装置55と、この比較判断装置55により前記UV硬化樹脂5が適正状態にあると判断するように、前記UV硬化樹脂5を適正に硬化せしめる位置へ前記UVランプ27を移動せしめる指令を与える指令部57が備えられている。
【0034】
上記構成に基づいて、この実施の形態に係る光ファイバ素線テープ心線の製造方法について説明すると、4本の光ファイバ素線3が2つの光ファイバ素線送出ボビン9から送出され、集線ガイドローラ11にて徐々に近接するように走行しながら集線装置13の集線ガイド15のガイド溝に集線されることで、4本の光ファイバ素線3が互いに密接して一列に配列される。この時の光ファイバ素線3の走行速度は制御装置25で制御されたキャプスタンローラ39により一定線速に保持されている。
【0035】
このように、2本以上の光ファイバ素線3が集線ガイド15により集線され、光ファイバ素線3同士が十分近づいている状態で、接着樹脂塗布装置17の吐出ノズル19から吐出されるUV硬化樹脂5が隣り合う光ファイバ素線3の間に滴下、塗布される。なお、塗布方法としては、上記のような微量のUV硬化樹脂5を吐出可能なディスペンサーの他に、光ファイバ素線3の間のみを狙ってUV硬化樹脂5を吐出可能なコーティングダイス等を拳げることができる。
【0036】
その後、滴下されたUV硬化樹脂5はUVランプ27でUV照射されることにより硬化することになる。しかし、このUV照射されるタイミングにより、UV硬化樹脂5の形状が変化することになる。
【0037】
詳しく説明すると、UV硬化樹脂5は、光ファイバ素線3の間に滴下、塗布した直後は、図4の(a)に示されているように液滴の形状のままである。しかし、UV硬化樹脂5は液体であるために、塗布後しばらくすると、時間の経過と共に図4の(b)〜(c)に示されているように光ファイバ素線3との一定の接触角になるまで光ファイバ素線3の表面へ広がることになる。このように広がっていくにつれて、UV硬化樹脂5と光ファイバ素線3との接着面積が広い状態になる。つまり、光ファイバ素線3の長さ方向に垂直な面において光ファイバ素線3の円周長に対する接着長さBLの割合(%)が大きくなり、隣の光ファイバ素線3間を接着させる樹脂と接触する。
【0038】
したがって、図4の(a)に示されているように、樹脂塗布直後、すぐに硬化させると、光ファイバ素線3の円周長に対する接着長さBLの割合(%)が小さくなる。
【0039】
一方、図4の(c)に示されているように、接着面積が広がった状態でUV硬化樹脂5を硬化させると、光ファイバ素線3の円周長に対する接着長さBLの割合(%)が大きくなり樹脂が接触する。
【0040】
光ファイバ素線3とテープ化材5の種類や組み合わせにより、光ファイバ素線3とテープ化材5の単位面積あたりの密着力が異なる。単位面積あたりの密着力の強さにより、接着長さBLを変更する必要がある。これは、密着力が弱い光ファイバ素線3とテープ化材5の種類や組み合わせにおいて、接着長さBLを長くしなければテープ心線7としての強度が不足してしまうためである。
【0041】
光ファイバ素線3とテープ化材5の種類により、適切な接着長さBLが異なるので、適切な接着長さBLになるよう調節する必要がある。また、接着長さBLが長くなると、隣の光ファイバ素線3間を接着させるためのテープ化樹脂と接触してしまう。
【0042】
テープ化樹脂同士を接触させない理由としては、テープ化樹脂を光ファイバ素線3から除去し単心分離する際に、2本以上の光ファイバ素線3を跨いでテープ化樹脂が広い面積に接着していると、除去に手間がかかるためである。
【0043】
突出高さHが必要な理由としては、光ファイバ素線3の直上にテープ化樹脂が存在しないため、光ファイバ素線3同士を積層した場合や光ファイバ素線3を高密度にケーブルに実装した場合、光ファイバ素線3に直接側圧が印加されたり、光ファイバ素線3への直接の外傷が発生する恐れがある。そこで、テープ化樹脂による突起を設ける必要がある。
【0044】
この実施の形態では、図4の(b)に示されているように、接着長さが(a)と(c)の間の長さであるBLで接着し、かつ、隣り合う2つの光ファイバ素線3の外周に接する接線TLより外側に飛び出る突出高さを有する状態を適正状態としている。この適正状態で、分割性(分離性)の良好でかつ強度が適正であるテープ心線7が作製されることになる。
【0045】
そこで、UV硬化樹脂5が図4の(b)のような適正状態で硬化せしめる位置へ前記UVランプ27を移動調整する必要がある。この実施の形態では、UV照射により硬化されたUV硬化樹脂5が接着樹脂外形測定装置29の第1、第2CCDカメラ31,33により接着幅と接着厚さが撮像され、画像処理装置35で画像処理される。さらに、前記画像処理データに基づいて制御装置25の第1演算装置51でUV硬化樹脂5の接着長さBLが光ファイバ素線3の円周長の何%であるか計算され、第2演算装置53でUV硬化樹脂5の高さが隣り合う2つの光ファイバ素線3の外周に接する接線TLに対してどの位置にあるか計算される。
【0046】
次に、制御装置25の比較判断装置55により、UVランプ27により硬化されたUV硬化樹脂5が、上記の適正状態にあるか否かが判断される。この判断に基づいて制御装置25の指令部57では前記UV硬化樹脂5を適正に硬化せしめる位置へ前記UVランプ27を移動せしめる指令を与えることになる。なお、指令部57では、吐出ノズル19の位置、UV硬化樹脂5の吐出量、吐出速度、吐出位置、吐出の開始と停止及びその時間などの種々の条件を制御するように、接着樹脂塗布装置17の樹脂供給制御装置21や吐出ノズル19に指令を与える。
【0047】
以上のようにして、隣り合う光ファイバ素線3の間に滴下したUV硬化樹脂5の硬化状態を制御することが可能となる。つまり、UV硬化樹脂5を光ファイバ素線3の間に滴下(塗布)した後に、前記UV硬化樹脂5が光ファイバ素線3の表面に目的の面積まで広がった時にUV照射し、UV硬化樹脂5の表面を硬化させる方法を用いることで、光ファイバ素線3とテープ化材となるUV硬化樹脂5の接着面積を任意に調節可能である。
【0048】
なお、UV硬化樹脂5が目的の接着面積まで広がるのに必要な時間は、UV硬化樹脂5の粘度等により決まる。しかし、この実施の形態では、上述したように硬化状態を測定した結果を反映してUVランプ27の照射位置を調整することにより、UV硬化樹脂5が目的の接着面積まで広がる時間的な要素は包含されることになる。
【0049】
また、UV硬化樹脂5の形状を固定するため必要なUV照射量は、用いたUV硬化樹脂5の硬化のし易さにより決まる。UV硬化樹脂の形状を固定するためには、塗布したUV硬化樹脂5のうち少なくとも表面が固まっていれば良い。また、塗布したUV硬化樹脂5の全体を硬化させるために、表面のみを硬化させた後に全体の硬化のための本UV照射を行っても良い。
【0050】
次に、上述したUV硬化樹脂5の形状の適正状態について、その理由を説明する。
【0051】
上記の光ファイバ素線テープ心線の製造装置1を用いて、条件を変えて種々の複数心テープ心線7を製造した。すなわち、複数心の光ファイバ素線3を任意の速度で移動させながら、光ファイバ素線3の間にUV硬化樹脂5を滴下して複数心テープ心線7を得た。各条件としては、UV硬化樹脂5の粘度が5.8〜8.0Pa・sで、UVの照度が180mW/cmで、UV硬化樹脂5の塗布量が約7.5mm/secである。なお、光ファイバ素線3の直径は例えば250μmである。それぞれの複数心テープ心線7を製造する際のUV照射までの時間と、光ファイバ素線3と、テープ化材5の接着面積との関係で表した。また、それぞれの複数心テープ心線7の分割実験を行った。その結果は、表1に示す通りである。
【表1】

【0052】
表1から分かるように、一本の光ファイバ素線3の円周長(表面積)に対して20〜30%の接着長さBL(面積)にUV硬化樹脂5(テープ化材)を塗布、硬化した場合に、テープ心線としての取り扱いに適した強度を持ち光ファイバ素線3の分割性が良好なテープ心線7を得ることができた。ただし、30%程度あると、分割後ファイバの変形が見られ、接着長さBLが40%以上のときは、テープ化樹脂同士が接触したため、光ファイバ素線3とテープ化材の密着度が大きすぎるため、光ファイバ素線3の分割は困難であった。すなわち、テープ心線7に捻り、曲げ、側圧等の力を印加してテープ心線7を単心に分割する際に、テープ化材5と光ファイバ素線3の接着面積が小さいほうがUV硬化樹脂5から光ファイバ素線3の取り外しが容易になる。
【0053】
この実施の光ファイバ素線テープ心線の製造方法で得られた光ファイバ素線テープ心線7の他の例としては、図5に示されているような光ファイバ素線テープ心線を得ることも可能である。
【0054】
この実施の形態のテープ心線7は、2心、4心、8心あるいはそれ以上の複数本数のテープ心線であっても、基本的な構成は前述した2心テープ心線7と同様である。図6は8心テープ心線7を示しているが、テープ化材としてのUV硬化樹脂5は、図6に示されているように連続的に形成したテープ心線7とすることができる。この点は、光ファイバ素線3の本数に関わりなくすべてのテープ心線7に適用される。
【符号の説明】
【0055】
1…光ファイバ素線テープ心線の製造装置
3…光ファイバ素線
5…UV硬化樹脂(テープ化材、硬化型接着樹脂)
7…光ファイバ素線テープ心線(テープ心線)
9…光ファイバ素線送出ボビン
11…集線ガイドローラ
13…集線装置
15…集線ガイド
17…接着樹脂塗布装置
19…吐出ノズル
21…樹脂供給制御装置
23…樹脂供給管
25…制御装置
27…UVランプ(樹脂硬化用照射装置)
29…接着樹脂外形測定装置
31…第1CCDカメラ
33…第2CCDカメラ
35…画像処理装置
37…ガイドローラ
39…キャプスタンローラ
41…巻取ドラム
43…CPU
45…入力装置
47…表示装置
49…メモリ
51…第1演算装置
53…第2演算装置
55…比較判断装置
57…指令部
BL…接着長さ
TL…接線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の配列平面側一列に2本以上の光ファイバ素線をテ−プ化材となる硬化型接着樹脂でテ−プ状に一体化した長尺の光ファイバ素線テープ心線の製造方法であって、
前記硬化型接着樹脂は、隣り合う光ファイバ素線同士を接着するテ−プ化樹脂と、さらに隣の光ファイバ素線を接着させるテ−プ化樹脂が接着せず、かつ前記隣り合う2つの光ファイバ素線の外周に接する接線より外側に飛び出る突出高さを有する状態となった時に、樹脂硬化用照射線を照射して硬化せしめることを特徴とする光ファイバ素線テープ心線の製造方法。
【請求項2】
前記硬化型接着樹脂は、光ファイバ素線の長さ方向に連続に形成することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ素線テープ心線の製造方法。
【請求項3】
複数の光ファイバ素線を走行させながら密接させて一列に配列し、テープ化材となる硬化型接着樹脂を塗布してテープ状に一体化する長尺の光ファイバ素線テープ心線の製造装置であって、
複数の光ファイバ素線を集線する集線装置と、
前記集線装置に集線された互いに隣り合う光ファイバ素線の少なくとも一方の配列平面側に隣り合う光ファイバ素線同士を連結する硬化型接着樹脂を滴下する吐出ノズルを有する接着樹脂塗布装置と、
前記滴下された硬化型接着樹脂を硬化する樹脂硬化用照射装置と、
前記樹脂硬化用照射装置で硬化された硬化型接着樹脂の接着幅及び接着厚さを測定する接着樹脂外形測定装置と、
前記接着樹脂外形測定装置で測定された硬化型接着樹脂の接着幅及び接着厚さに基づいて、前記硬化型接着樹脂が、隣り合う光ファイバ素線同士を接着するテ−プ化樹脂と、さらに隣の光ファイバ素線を接着させるテ−プ化樹脂が接着せず、かつ、隣り合う2つの光ファイバ素線の外周に接する接線より外側に飛び出る突出高さを有すべく制御する制御装置と、
を備えていることを特徴とする光ファイバ素線テープ心線の製造装置。
【請求項4】
前記樹脂硬化用照射装置は、光ファイバ素線の走行方向に対して同方向に移動可能に設けられ、
前記制御装置は、接着樹脂外形測定装置で測定された硬化型接着樹脂の接着幅及び接着厚さに基づいて、硬化型接着樹脂を適正に硬化せしめる位置へ前記樹脂硬化用照射装置を移動せしめる指令を与える指令部を備えていることを特徴とする請求項3に記載の光ファイバ素線テープ心線の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−185992(P2011−185992A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48088(P2010−48088)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】