説明

光ファイバ素線保持具

【課題】非常に細い光ファイバ素線を屋内の壁面などに沿って良好に配線することができる光ファイバ素線保持具を提供する。
【解決手段】コアとクラッドを有した光ファイバの外側に薄い被覆層を形成してなる光ファイバ素線Pを被取着面に沿って配線するための光ファイバ素線保持具である。可撓性を有し長尺帯状に形成された合成樹脂製の保持基台1と、保持基台1の底面に取着した剥離紙5付きの粘着材層4とを備える。保持基台1の上面に光ファイバ素線Pを嵌め込むための保持溝2が、光ファイバ素線Pの断面形状に近似した断面を持って長手方向に連続して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ素線を屋内配線する際、光ファイバ素線を保持するために使用する光ファイバ素線保持具に関する。なお、この明細書で、光ファイバ素線とは、コアとクラッドを有した光ファイバの外側に薄い被覆層を形成した外径約0.5〜1.2mmの細い素線を意味する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に使用されている光ファイバケーブルは、光ファイバの素線と補強用の金属線を共に合成樹脂の厚い被覆層で被覆してケーブル状に形成されており、このような光ファイバケーブルを屋内の壁、柱、梁などに沿って配線する場合、通常、下記特許文献1に記載されるような構造の光ファイバ線保持具が使用されている。
【特許文献1】特開2003−270451号公報
【0003】
この種の従来の光ファイバ保持具は、基本的には、光ファイバケーブルを直線状態で保持する構造であり、配線保持部材上に形成された溝状の保持用凹部内に光ファイバケーブルを直線状態で挿入し、その上に押え蓋部を被せ、押え蓋部の弾性押え部により光ファイバケーブルを押圧して保持するように使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年、光ファイバ技術の改良により、強度及び性能共に優れた光ファイバ素線(コアとクラッドを有した光ファイバの外側に薄い被覆層を形成した外径約0.5〜1.2mmの細い素線)が開発されており、この種の光ファイバ素線をそのまま屋内配線として使用することが可能となりつつある。
【0005】
しかしながら、この種の非常に細い光ファイバ素線を、従来の配線保持具を用いて保持する場合、配線保持部材の保持用凹部に挿入し、その上から押え蓋部の弾性押え部により押圧したとしても、光ファイバ素線の線径があまりに細いために、素線が軸方向に移動しやすく、確実に保持することが難しいという課題があった。
【0006】
また、光ファイバ素線を、従来の配線保持具を用いて、室内の壁面などに沿って配線した場合、非常に細い光ファイバ素線に対し形状の大きい配線保持具が、間隔を光ファイバ素線上に配置される形態となり、配線保持具が目立ち、室内の美観を損ねやすいという課題があった。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、非常に細い光ファイバ素線を屋内の壁面などに沿って良好に配線することができる光ファイバ素線保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の光ファイバ素線保持具は、コアとクラッドを有した光ファイバの外側に薄い被覆層を形成してなる光ファイバ素線を被取着面に沿って配線するための光ファイバ素線保持具であって、可撓性を有し長尺帯状に形成された合成樹脂製の保持基台と、該保持基台の底面に取着した剥離紙付きの粘着材層とを備え、該保持基台の上面に該光ファイバ素線を嵌め込むための保持溝が、該光ファイバ素線の断面形状に近似した断面を持って長手方向に連続して形成され、該保持溝の開口部の幅が該保持溝の内側の幅より狭く形成され、該保持溝内に該光ファイバ素線が嵌着されることを特徴とする。
【0009】
ここで、上記保持基台の両側に、薄肉部を延設して、保持基台の底面を拡幅することができる。
【0010】
また、上記構成の光ファイバ素線保持具には、入隅スペーサと出隅スペーサを具備させることができ、入隅スペーサは、凹状の入隅角部の被取着面にそって光ファイバ素線を配線する際、前記保持基台の底面と該被取着面との間に取着して使用され、この入隅スペーサは、入隅角部の略直角関係にある被取着面に取着される2つの取着平坦面を有すると共に、保持基台の底面に取着される凹状曲面を有して形成することができる。
【0011】
また、出隅スペーサは、凸状の出隅角部の被取着面にそって光ファイバ素線を配線する際、前記保持基台の底面と該被取着面との間に取着して使用され、この出隅スペーサは、出隅角部の略直角関係にある被取着面に取着される2つの取着平坦面を有する凹状直角部を設けると共に、該保持基台の底面に取着される凸状曲面を有して形成することができる。
【0012】
また、保持基台を薄肉部の幅方向に曲げる場合、保持基台の両側の薄肉部に複数のV字状切込み部を並設するようにカットして、保持基台を幅方向に曲げることができる。
【0013】
また、上記保持基台内には補強線材をその長手方向に埋設することができる。
【発明の効果】
【0014】
上記構成の光ファイバ素線保持具によれば、非常に細い光ファイバ素線を、可撓性を有した長尺帯状の保持基台の保持溝に嵌着し、保持基台の底面の剥離紙を剥がして、その底部の粘着材層を、配線する壁面に貼り付けるだけの簡単な作業で、光ファイバ素線を屋内に配線することができる。
【0015】
また、可撓性を有し合成樹脂製の保持基台の幅と高さ(厚さ)は、例えば数百μm〜数mmと非常に細く形成することができるため、保持基台付き光ファイバ素線を配線箇所に沿って、光ファイバ素線の最小曲げ曲率の許容範囲内で、良好に曲げて配線することができる。さらに、保持基台を透明合成樹脂材料などの目立たない色調の材料で成形した場合、透明の光ファイバ素線と共に、室内で全く目立たない存在となり、室内の美観を損ねることなく、光ファイバ素線の配線を良好に行なうことができる。
【0016】
また、光ファイバ素線は、保持基台の保持溝内に嵌め込まれ、素線の略全周部が保持溝に埋まり溝の壁部で包囲された状態となるため、外部から保持具に衝撃力が印加された場合でも、光ファイバ素線を安全に保護することができる。
【0017】
さらに、上記保持基台付き光ファイバ素線を、入隅または出隅の角部の被取着面にそって配線する場合、保持基台の底面と被取着面との間に入隅スペーサまたは出隅スペーサを介装するように、入隅スペーサまたは出隅スペーサを入隅または出隅の角部の被取着面に嵌め込んで取着し配線することができる。入隅スペーサ、出隅スペーサは、光ファイバ素線の保持基台を取着保持する凹状曲面または凸状曲面の曲率が、許容された光ファイバ素線の最小曲げ曲率以上に大きく設定され、これにより、光ファイバ素線が入隅、出隅の角部で最小曲げ曲率未満の曲げが生じないようにすることができる。
【0018】
また、保持基台を薄肉部の幅方向に曲げる場合、保持基台の両側の薄肉部に複数のV字状切込み部を並設するようにカットすれば、保持基台に捻り変形などを生じさせずに、保持基台を幅方向に良好に曲げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は光ファイバ素線保持具の平面図と断面図を示している。この光ファイバ素線保持具は、基本的には、可撓性を有し長尺帯状に形成された合成樹脂製の保持基台1と、保持基台1の底面に取着した剥離紙5付きの粘着材層4とを備える。
【0020】
そして、保持基台1の上面の突部内に、光ファイバ素線Pを嵌め込むための保持溝2が、光ファイバ素線Pの断面形状に近似した断面を持って長手方向に連続して形成される。保持基台1における保持溝2を設けた部位は肉厚に形成され、一方、保持基台1の両側には、薄肉部6が両側に張り出すように延設されている。保持溝2の開口部3の幅は保持溝2の内側の幅より狭く形成され、保持溝2内に光ファイバ素線Pが押し込まれて嵌着されるように構成される。
【0021】
保持基台1は、軟質の透明合成樹脂により可撓性を有して、略同一の断面形状を有した長尺帯状に、成形されている。図1に示すように、保持基台1の両側に、薄肉部6が延設され、保持基台1の底面が両側の薄肉部6によって拡幅されるようにしている。保持基台1には、その上面中央に、1本の保持溝2が、光ファイバ素線Pの断面形状に近似した断面、つまり円形断面を持って長手方向に連続して形成される。この円形断面の上部が切り欠かれることにより、保持溝2の上面には、開口部3が長手方向に沿って形成される。
【0022】
開口部3の幅は、保持溝2の内側の幅(円形断面の内径)より狭く形成され、光ファイバ素線Pを保持溝2内に嵌め込む場合、開口部3を押し広げて(弾性変形させて)、光ファイバ素線Pを保持溝2内に嵌め込むことが可能で、光ファイバ素線Pを保持溝2内に確実に保持可能な大きさ及び形状に形成されている。
【0023】
光ファイバ素線Pは、コアとクラッドを有した光ファイバの外側に薄い被覆層を形成した外径約0.5〜1.2mmの細い素線として形成される。また、この光ファイバ素線Pは、例えば、フォトニック結晶ファイバを用いた所謂ホーリーファイバのように、コアの周囲のクラッド部に空孔を形成することにより、光ファイバを小さい曲率で曲げた場合でも、光伝送損失が増大しない構造の光ファイバを使用している。
【0024】
つまり、この光ファイバ素線Pは、光ファイバを例えば半径2.5mmの最小曲げ曲率で曲げた場合でも、光伝送損失が0.1dB以下であり、その最小曲率以上の曲率範囲内であれば、光伝送性能に殆ど悪影響を及ぼさない範囲での曲げとすることができる。
【0025】
保持基台1は、具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンなどの透明合成樹脂材料により、図1に示す断面形状を有した帯状に可撓性を有して成形される。例えば、光ファイバ素線Pの外径を約0.5mmとした場合、保持基台1には、この光ファイバ素線Pの外径と略同一の内径つまり、約0.5mmの内径を有する円形断面の保持溝2が形成されることになる。
【0026】
このような約0.5mmの外径の光ファイバ素線Pを嵌着して保持し且つ壁面に取着するために、保持基台1は、図1に示すような高さHと幅Wを有したプロポーションの断面形状をもって形成される。例えば、光ファイバ素線Pの外径が約0.5mmで、約0.5mmの内径を有する円形断面の保持溝2を形成した保持基台1の場合、その高さHは例えば1.2mm、その幅Wは薄肉部6を含めて例えば約6mmに形成することができる。このように合成樹脂により非常に薄く細く形成される保持基台1は、適度な可撓性を有し、最小曲率の範囲内で容易に曲げることができる。
【0027】
薄肉部6を含む保持基台1の底面には、剥離紙5付きの粘着材層4が取着形成される。保持基台1はこの粘着材層4を介して壁面に接着して使用され、粘着材層4の表面積に応じて保持基台1の取着力が略決定される。保持基台1は、被取着面が標準的な壁面の場合、図1に示すような断面形状を有し、上記のように、高さHが約1.2mm、幅Wが約6mmとなっている。保持基台1は、このような断面形状と寸法に形成されることにより、光ファイバ素線Pの最小曲げ曲率の範囲内で、保持基台1の厚さ方向に容易に曲げて配線を行なうことができる。
【0028】
また、上記のように、保持基台1は、両側に薄肉部6を延設することによって、その底面の幅Wが幅広く形成されて偏平形状となり、粘着材層4の面積を増大させて粘着力を高くしている。つまり、図1に示すように、保持基台11の高さHは、その幅Wの1/5程度であり、両側に薄肉部6が延設されることにより、偏平に幅広に形成されている。
【0029】
例えば、光ファイバ素線Pの外径が約0.5mmであり、約0.5mmの内径を有する円形断面の保持溝2を形成した保持基台1の場合、その高さ(厚さ)Hは例えば1.2mmであるが、その幅Wは薄肉部6を含めて例えば約6mmと少し幅広に形成されている。このため、保持基台1は、軟質合成樹脂で形成されることもあって、その上面又は底面方向には適度な可撓性を有し、容易に曲げることは可能である。
【0030】
なお、光ファイバ素線保持具が敷設される場所、その条件などにより、保持具の強度が不足する虞がある場合、図9のように、必要に応じて保持基台11の内部に補強線材12を入れて補強することができる。
【0031】
補強線材12には、例えば外径0.3〜0.5mmのFRP線材(ガラス繊維補強プラスチック線材)を使用することでき、保持基台11の成形時にこのFRP線材をインサート成形する。これにより、補強線材12は、保持基台11内の保持溝2の下側にその長手方向に沿って埋設される。図9では、2本の補強線材12を挿入して保持具を補強しているが、1本または3本の補強線材12を挿入することもできる。このような補強線材12を保持基台11内に入れて補強した場合、光ファイバ素線保持具が配管内や壁孔内に敷設される際、そこで曲げ応力や引張応力が印加される場合でも、保持具を安全に敷設することが可能となる。
【0032】
上記のように構成される光ファイバ素線保持具は、屋内配線用の光ファイバ素線Pを、壁面、柱、天井などに沿って配線敷設する際に使用される。光ファイバ素線Pと保持基台1は、工場などにおいて、所定の長さに切断した光ファイバ素線Pを保持基台1の保持溝2に嵌め込んで嵌着し、ユーザー(配線業者)に提供することができる。また、光ファイバ素線Pは保持溝2に単に嵌着するのみではなく、接着剤を使用して接着することもできる。
【0033】
このように、光ファイバ素線Pは保持基台1の保持溝2内に嵌め込まれ、素線の略全周部分が保持溝2の壁部で包囲される状態となるため、外部から素線に衝撃力が加わった場合でも、素線を保護することができる。
【0034】
ユーザーに提供する際、保持基台1付きの光ファイバ素線Pは、工場などで、所定の長さ例えば10m〜25mの長さに切断し、且つその光ファイバ素線Pの端部にSCコネクタを接続した状態で、提供することができる。また、配線業者が、配線する現場で、保持基台1付き光ファイバ素線Pを必要な長さに切断し、その光ファイバ素線Pの端部にSCコネクタを接続することもできる。
【0035】
屋内の壁面などに光ファイバ素線Pを配線する場合、保持基台1付き光ファイバ素線Pの保持基台1の底部から剥離紙5を剥がし、粘着材層4を露出させて、配線しようとする壁面に粘着材層4を押し付けて貼着する。
【0036】
光ファイバ素線Pは、上述の如く、例えばフォトニック結晶ファイバのように、コアの周囲のクラッド部に、結晶格子の整然とならんだ空孔を形成することにより、光ファイバを小曲率で曲げた場合でも、光伝送損失が増大しない構造の光ファイバを有し、その外側に薄い被覆層を形成して例えば約0.5mm〜1.2mmの外径を持つ非常に細い光ファイバ素線である。また、光ファイバ素線Pが保持される保持基台1も、その断面形状の高さHが例えば約1.2mm、その幅が例えば約6mmと非常に薄く細く形成されるため、その高さH方向(厚さ方向)には、例えば光ファイバ素線Pの最小曲げ曲率半径5mm程度の曲げ曲率で曲げて配線することが可能である。
【0037】
一方、保持基台1の幅W方向に曲げる場合、図2に示すように、保持基台1の両側の薄肉部6に、複数のV字状切込み部7を並設するようにカットして切り込みを入れ、曲がりやすくする。V字状切込み部7は、両側の薄肉部6における光ファイバ素線Pを曲げて配線しようとする曲げ予定部位に、所定数のV字状切込みとして工具によりカットして形成される。そのカットは、配線する現場で行なわれるが、例えばニッパー状の工具を使用して、比較的簡単に薄肉部6にV字状切込み部7をカットすることができる。この場合、そのV字状切込み部7の幅D,歯部の幅E、曲げ部全体の幅Aは、各々、この部分を保持基台1の幅W方向に曲げたとき、曲折される光ファイバ素線Pの曲率半径が、予め決められた光ファイバ素線Pの最小曲げ曲率半径以上の曲率半径で光ファイバ素線Pが曲がるように形成される。
【0038】
つまり、図2、図3に示すように、両側の薄肉部6に例えば各々4個のV字状切込み部7を形成して、保持基台1を幅W方向に最小曲げ曲率半径Rmで曲げる場合、その曲げ部の外側円弧長が曲げ部全体の幅となり、最小曲げ曲率半径Rmと保持基台1の幅Wから、曲げ部の外側円弧長Aと内側円弧長Bが算出され、この外側円弧長の幅Aと内側円弧長Bの差を4で除算した値がV字状切込み部7の幅Dとなる。
【0039】
したがって、曲げようとする保持基台1の両側の薄肉部6の幅Aの部分において、4個のV字状切込み部7を幅Eの間隔で、幅Dをもってカットすることになる。したがって、光ファイバ素線Pを保持基台1の平面内で幅W方向に略直角に曲げて配線したい場合、幅DのVカットが可能な工具を用いて、現場で簡単に保持基台1の両側の薄肉部6にV字状切込み部7を形成して、光ファイバ素線Pと保持基台1をその幅W方向に曲げ、配線することができる。
【0040】
このように、所定の幅DのV字状切込み部7を所定の個数だけカットするだけで、光ファイバ素線Pを曲げる場合、予め決められた最小曲げ曲率半径Rm以上での曲げを行なって、光ファイバ素線Pの最小曲げ曲率半径を遵守することができる。また、曲げ部の薄肉部6にV字状切込み部7をカットし形成することにより、保持基台1を捻ることなく、保持基台1の平面内で、保持基台1の幅W方向に適正に曲げることができる。
【0041】
一方、図6に示すように、屋内配線する壁面に入隅K2の角部または出隅K1の角部があり、その入隅K2または出隅K1の角部にそって、保持基台1の高さ(厚さ)H方向に、つまり底面または平面側に曲げて配線する場合、図4、図5に示すような入隅スペーサ8または出隅スペーサ9が壁面との間に介装され、これにより、曲げられる光ファイバ素線Pの曲げ曲率半径が、予め設定された最小曲げ曲率半径より小さくならないように曲げ配線することができる。
【0042】
入隅スペーサ8は、図4に示すように、凹状の入隅K2の角部の被取着面にそって光ファイバ素線Pを配線する際、保持基台1の底面と被取着面との間に取着して使用され、入隅スペーサ8は、入隅角部の略直角関係にある被取着面に取着される2つの取着平坦面8a,8bを有すると共に、保持基台1の底面に取着される凹状曲面8cを有し、保持基台1の幅の2〜3倍の幅を持って合成樹脂により形成されている。なお、図示は省略されているが、入隅スペーサ8の取着平坦面8a,8bには、剥離紙付きの粘着材層が取着される。
【0043】
また、出隅スペーサ9は、図5に示すように、凸状の出隅K1の角部の被取着面にそって光ファイバ素線を配線する際、保持基台1の底面と被取着面との間に取着して使用され、出隅スペーサ9は、出隅角部の略直角関係にある被取着面に取着される2つの取着平坦面9b、9cを有する凹状直角部9aを設けると共に、保持基台1の底面に取着される凸状曲面9dを有し、保持基台1の幅の2〜3倍の幅を持って合成樹脂により形成されている。なお、入隅スペーサ9の取着平坦面9b,9cには、予め剥離紙付きの粘着材層が取着される。
【0044】
図6のように、保持基台付き光ファイバ素線を、壁部における入隅K2または出隅K1の角部の被取着面にそって配線する場合、保持基台1の底面と被取着面との間に入隅スペーサ8または出隅スペーサ9を介装するように貼着して配線する。
【0045】
入隅K2に沿って配線する場合、図7に示すように、入隅スペーサ8を、先ず配線予定箇所の入隅K2の角部の被取着面に、剥離紙を剥がしたその取着平坦面8a,8bの粘着材層を貼り付けて取着し、次に、その入隅スペーサ8の凹状曲面8cに、光ファイバ素線Pの保持基板1の底面の粘着材層4を貼り付けて配線する。
【0046】
また、出隅K1の場合、図8に示すように、出隅スペーサ9を、先ず配線予定箇所の出隅K1の角部の被取着面に、剥離紙を剥がしたその凹状直角部9aの取着平坦面9b、9cを貼り付けて取着し、次に、その出隅スペーサ9の凸状曲面9dに、光ファイバ素線Pの保持基板1の底面の粘着材層4を貼り付けて配線する。
【0047】
これにより、入隅スペーサ8及び出隅スペーサ9は、光ファイバ素線Pの保持基台1を取着保持する凹状曲面8cまたは凸状曲面9dの曲率が、許容された光ファイバ素線の最小曲げ曲率以上に大きく設定され、光ファイバ素線Pが入隅、出隅の角部で最小曲げ曲率未満の曲げを生じないようにすることができる。
【0048】
このように、屋内配線する壁面に入隅K2または出隅K1の角部がある場合でも、その壁面角部に沿って、或いは壁面の同一平面内でも、その壁面に沿って、保持基台1付き光ファイバ素線Pを適正に曲げ、保持基台底部の粘着材層4を壁面に貼着して配線することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の光ファイバ素線保持具の平面図(a)と断面図(b)である。
【図2】曲げ予定の薄肉部にV字状切込み部を設けた光ファイバ素線保持具の平面図(a)と断面図(b)である。
【図3】曲げ予定部を設けた光ファイバ素線保持具の平面図(a)と左側面図(b)である。
【図4】入隅スペーサの正面図(a)と断面図(b)である。
【図5】出隅スペーサの正面図(a)と断面図(b)である。
【図6】使用状態を示し、壁面に保持基台付き光ファイバ素線を配線した状態の斜視図である。
【図7】入隅の角部に配線した状態の断面図である。
【図8】出隅の角部に配線した状態の断面図である。
【図9】他の実施形態の保持基台の断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 保持基台
2 保持溝
3 開口部
4 粘着材層
5 剥離紙
6 薄肉部
7 V字状切込み部
8 入隅スペーサ
9 出隅スペーサ
P 光ファイバ素線



【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアとクラッドを有した光ファイバの外側に薄い被覆層を形成してなる光ファイバ素線を被取着面に沿って配線するための光ファイバ素線保持具であって、
可撓性を有し長尺帯状に形成された合成樹脂製の保持基台と、
該保持基台の底面に取着した剥離紙付きの粘着材層と、
を備え、該保持基台の上面に該光ファイバ素線を嵌め込むための保持溝が、該光ファイバ素線の断面形状に近似した断面を持って長手方向に連続して形成され、該保持溝の開口部の幅が該保持溝の内側の幅より狭く形成され、該保持溝内に該光ファイバ素線が嵌着されることを特徴とする光ファイバ素線保持具。
【請求項2】
前記保持基台の両側に、薄肉部が延設されて保持基台の底面が拡幅されていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ素線保持具。
【請求項3】
凹状角部の被取着面に沿って光ファイバ素線を配線する際、前記保持基台の底面と該被取着面との間に入隅スペーサが介装して取着され、該入隅スペーサは、略直角断面形状の凸状直角部を有すると共に、該保持基台の底面に取着される凹状曲面を有していることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ素線保持具。
【請求項4】
凸状角部の被取着面に沿って光ファイバ素線を配線する際、前記保持基台の底面と該被取着面との間に出隅スペーサが介装して取着され、該出隅スペーサは、略直角断面形状の凹状直角部を有すると共に、該保持基台の底面に取着される凸状曲面を有していることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ素線保持具。
【請求項5】
前記保持基台を前記薄肉部の幅方向に曲げる場合、該保持基台の両側の薄肉部に複数のV字状切込み部を並設するようにカットして、該保持基台を幅方向に曲げることを特徴とする請求項2記載の光ファイバ素線保持具。
【請求項6】
前記保持基台内の長手方向に補強線材が埋設されたことを特徴とする請求項1記載の光ファイバ素線保持具。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−15151(P2009−15151A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178680(P2007−178680)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000143422)株式会社タカコム (4)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000102739)エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 (265)
【Fターム(参考)】