説明

光フアイバ母材の製造方法およびターゲツト部材

【目的】 本発明は、外径変動の少ない光ファイバ母材を得る、光ファイバ母材の製造方法を提供することを目的とする。
【構成】 本発明は、かゝる目的を達成するため、回転するターゲット部材11の外周に当該ターゲット部材11の軸方向にトラバースする酸水素バーナ12によりガラス微粒子を吹きつけて堆積させ、ガラス微粒子堆積体13を得る光ファイバ母材の製造方法において、前記ターゲット部材11の製品ロッド部11aの両端に当該端部側に頂部を向けた円錐形状部11d,11dを設けて、ガラス微粒子を堆積させる光ファイバ母材の製造方法であって、これ円錐形状部11d,11dにより、外径変動の少ない光ファイバ母材を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ターゲット部材の外周にガラス微粒子を堆積させて、母材用のガラス微粒子堆積体(以下、スートという)を得るにおいて、外径変動の少ない光ファイバ母材の製造方法およびターゲット部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、光ファイバ母材を得るには、例えばCVD法などの外付け工程において、、図7に示したように製品ロッド部1aの両端にダミーロッド1b,1bを接続したターゲット部材1を用い、このターゲット部材1を回転させながら、この外周に、当該ターゲット部材1の軸方向に複数回トラバース(往復動)する酸水素バーナ2によりガラス微粒子を吹きつけて堆積させ、スート3を得ている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、この方法では、スート3の両端においてスート割れを起こすおそれがあるため、酸水素バーナ2が製品有効長さ(製品ロッド部1aの長さとほぼ同じ)の端にトラバースしてきたときに、原料の供給を絞るか、あるいは止めるなどして、スート表面温度を上げている。このため、この端部では、製品ロッド部1aの他の部分に堆積したスートに比べて比較的硬く密度の高いガラス微粒子が堆積させられ、外径が次第に細くなる円錐形状のテーパー部3a,3aが生じる。
【0004】したがって、このテーパー部3a,3aが、製品有効長さ内に入らないようにするには、上記ターゲット部材1のダミーロッド1b,1b上に当該テーパー部3a,3aが形成されるようにすればよいわけであるが、この方法によると、酸水素バーナ2のトラバース距離が長くなり、時間の無駄が避けられない。同時にまた、ダミーロッド1b,1b上へのスート3の形成自体も原料の無駄となる。さらに、この場合、比較的長いダミーロッド1b,1bが必要とされ、このロッド自体が結構高価であることから、この面からのコスト上昇も避けられない。
【0005】このため、実際の工程では、酸水素バーナ2のトラバース距離を極力短くして時間ロスを少なくしようとするので、出来上がったスート3にあっては、図7R>7に示したように、ダミーロッド1b,1bの接続部(ジョイント部)付近においては、製品ロッド部1aでもスート外径が細くなることが多い。つまり、製品ロッド部1aの中央と比較して端部では外径変動が起き易いという問題があった。したがって、製品ロッド部1aの有効長さがすべて製品として利用できず、歩留りの低下があった。また、このスート3の細くなった部分を紡糸して光ファイバとした場合、ファイバの長手方向の特性が悪化するなどの悪影響があった。
【0006】本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】かゝる本発明の特徴とする一つは、回転するターゲット部材の外周に当該ターゲット部材の軸方向にトラバースする酸水素バーナによりガラス微粒子を吹きつけて堆積させ、ガラス微粒子堆積体を得る光ファイバ母材の製造方法において、前記ターゲット部材の製品ロッド部の両端に当該端部側に頂部を向けた円錐形状部を設けて、前記ガラス微粒子を堆積させる光ファイバ母材の製造方法にある。
【0008】本発明のもう一つは、上記製造方法に用いる、ターゲット部材の製品ロッド部の両端に当該端部側に頂部を向けた円錐形状部を有するダミーロッドを設けた光ファイバ母材用のターゲット部材にある。
【0009】
【作用】先ず、上記本発明の製造方法では、ターゲット部材の製品ロッド部の両端に円錐形状部があるため、有効長さ端で原料を絞るか、あるいは止めて、硬く密度の高いガラス微粒子を堆積させても、円錐形状部が外側に向かって拡径していることから、スートの端部で細くなることはない。また、この製造方法に用いて有用なターゲット部材が得られる。
【0010】
【実施例】図1は、本発明に係る光ファイバ母材の製造方法の一実施例を示したものであって、この発明では、図2に示した如き、本発明に係るターゲット部材11を用いる。このターゲット部材11は、中央部分をなす製品ロッド部11aとその両端に接続したダミーロッド11b,11bからなるが、各ダミーロッド11b,11bの接続側には円柱状の拡径部11c,11cが形成してあって、さらに、この拡径部11c,11cの上記製品ロッド部11aの両端接続側には、当該接続側に頂部を向けて縮径する円錐形状部11d,11dを設けてある。
【0011】このダミーロッド11b,11bの製造にあたっては、特に限定されないが、例えば太径ガラス材からの研磨加工や、型成形と研磨加工の組み合わせなどにより得ることができる。
【0012】この他、図3〜図4に示したように、光ファイバの紡糸に際して生じる母材残部を利用することも可能である。例えば、光ファイバ母材を透明化し、紡糸した場合、図3に示したように母材Mの下端部分は鎖線のように無くなり、上端部分が実線の如く残る。この上端母材残部Mtが丁度上述したダミーロッド11bの形状に対応するため、そのままあまいは少々加工して、ダミーロッド11bとして転用することができる。同様にして、母材を紡糸用に加工する場合、図4に示したように、母材Mの下端部分を実線の如く、切断し除去するわけであるが、この下端母材残部Mdも、同様に転用することができる。
【0013】このような母材残部Mt,Mdを用いてターゲット部材11を作り、上記図1の方法を実施するには、このターゲット部材11を回転させると共に、その軸方向に酸水素バーナ12をトラバースさせ、ガラス微粒子を吹き付ける。この場合、酸水素バーナ12の移動ストロークをほぼ製品ロッド部11aの有効長さに合わせて行い、かつ、その端部では、スート割れを防止するため、原料の供給を絞り、あるいは止める。この絞りや止めにより、この端部付近では、硬くて密度の高いガラス微粒子が堆積され、スート13が細くなろうとするわけであるが、ここには、ダミーロッド11b,11bの円錐形状部11d,11dが近接して存在し、しかも、その外径が外側に向かって次第に拡径しているため、スート13の端部が殆ど細くならず、つまり、見掛け上縮径が補償されて、製品中央部とほぼ同径の太さのものが安定して得られる。
【0014】因に、本発明に係る円錐形状部11d,11dを両端に有するターゲット部材11と、従来の通常のターゲット部材1を用いた場合における、スート外径の変動について、測定したところ、図5〜図6の如くであった。図5は、本発明のターゲット部材11を用いた場合で、同図中、母材長さの0mm点である製品ロッド部とダミーロッドとの接続部付近においても、スート外径の変化が小さく、その変動幅は、スート外径平均値の約1%程度に納まっていることが確認できた。これに対して、図6は、通常のターゲット部材1を用いた場合で、上記と同様母材長さの0mm点である製品ロッド部とダミーロッドとの接続部付近においては、大きなスート外径の変化が見られた。つまり、外径変動領域Aの存在が明確に確認でき、その変動幅は、スート外径平均値の約5%程度にも達していた。
【0015】なお、本発明では、ダミーロッド11の円錐形状部11dの形成にあたって、太径ガラス材からの研磨加工や、型成形と研磨加工の組み合わせ、あるいは母材残部の利用により提供する場合について述べたが、本発明は、これに限定されず、従来と同様の棒状のダミーロッドに円錐キャップ(傘)を嵌めたもの、あるいは中空円錐台ブロックなども嵌めたものなどで提供することも可能である。
【0016】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明に係る光ファイバ母材の製造方法によれば、ターゲット部材の製品ロッド部の両端に円錐形状部を設けてあるため、ガラス微粒子の堆積時、ターゲット部材の製品ロッド部とダミーロッドとの接続部付近において外径変動、特にスート外径が細くなることはなく、全長にわたって均一な外径を有する光ファイバ母材が安定的に得られる。もちろん、この光ファイバ母材を用いれば、得られた光ファイバにおいて、長手方向の特性が悪化するなどの問題もない。
【0017】また、この方法の場合、酸水素バーナのトラバース距離が極力短くてよく、この結果、製品歩留りの向上、ロス時間の削減による生産性の向上、短いダミーロッドでの対応や母材残部の再利用による生産コストの低減が期待できる。さらに、円錐形状部によってダミーロッド上へ堆積されるスート形成量も減るため、原料節減によるコストダウンも可能となる。
【0018】さらにまた、本発明に係る光ファイバ母材用のターゲット部材によれば、上記製造方法に最適な優れたターゲット部材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光ファイバ母材の製造方法の一実施例を示した概略説明図である。
【図2】本発明に係る光ファイバ母材用のターゲット部材の一実施例を示した縦断面図である。
【図3】図2のターゲット部材に用いられる母材残部の一例を示した概略説明図である。
【図4】図2のターゲット部材に用いられる母材残部の別の例を示した概略説明図である。
【図5】本発明の製造方法による場合の母材長さとスート外径の関係を示したグラフである。
【図6】従来の製造方法による場合の母材長さとスート外径の関係を示したグラフである。
【図7】従来の光ファイバ母材の製造方法の一例を示した概略説明図である。
【符号の説明】
11 ターゲット部材
11a 製品ロッド部
11b ダミーロッド
11d 円錐形状部
12 酸水素バーナ
13 ガラス微粒子堆積体(スート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 回転するターゲット部材の外周に当該ターゲット部材の軸方向にトラバースする酸水素バーナによりガラス微粒子を吹きつけて堆積させ、ガラス微粒子堆積体を得る光ファイバ母材の製造方法において、前記ターゲット部材の製品ロッド部の両端に当該端部側に頂部を向けた円錐形状部を設けて、前記ガラス微粒子を堆積させることを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。
【請求項2】 ターゲット部材の製品ロッド部の両端に当該端部側に頂部を向けた円錐形状部を有するダミーロッドを設けたことを特徴とする光ファイバ母材用のターゲット部材。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図7】
image rotate


【図6】
image rotate